JP4290962B2 - インク供給機構 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録装置において記録ヘッドへインクを供給するためのインク供給機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常インクジェット記録装置における記録ヘッドノズル面(メニスカス)に対しては、ノズルプレ−ト上の残滴による影響や、吐出インクの拡散を防ぐために負圧を加え該ノズルプレ−トに対し凹状にて形成される。
【0003】
このような負圧を形成する手段として例えば図6に示す様にインクタンク601内に下部が連通した隔壁602を設け、純粋なインクのみ貯蔵するインク室604と吸収体605の毛管力によってヘッド607のノズル部に負圧を発生させる吸収体室603を持たせる方法等がある。
【0004】
606は大気連通口である。
(例えば特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−347684(第1−5頁、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記吸収体方式においては、インクを該吸収体に含ませて貯蔵するため、インクタンクの内部容積に対する純粋な使用可能インクの割合(以下:使用効率と述べる)は70[ % ]程度と低くなる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本出願に係る発明は、インクタンク〜記録ヘッド間に外部からの負圧を加えられた時に、該負圧を自己で保持する弁を設け、さらに負圧量の低下を軽減するためのバッファを備えたインク供給機構を提供する。
【0008】
インクタンク内に吸収体等を設けない純粋なインク貯蔵室で構成し使用効率を向上させる作用と、インクタンクと記録ヘッドの配置に関しても制約はない。
又負圧維持弁での微小リ−ク、インク中溶存ガスの気化及び、外部ガスの透過による負圧量の低下等に対する信頼性が高まった。
【0009】
【発明の実施の形態】
<第1の実施例>
図1に本発明による第1実施例を示す。
【0010】
インクタンク120にはインク104が充填され、上部には大気開放口121が設けられている。
【0011】
大気開放口121は輸送時には封止するが、使用状態では開放される。
【0012】
さらに記録装置への挿入時には記録装置本体側にある中空状に形成された針106がインクタンク120に圧入される封止用の弾性体105を貫通することで、記録ヘッド111との流路が接続される。
【0013】
この時点で記録ヘッドのインク吐出ノズル112にインクタンク120内のインク104からの水頭差による正圧が加わるが、負圧維持弁107によりインクタンク120〜記録ヘッド111間の流路を遮断するため、前記インクタンク120からインク104が流出することは無い。
【0014】
負圧維持弁107は圧縮バネ117、封止ボ−ル108、密閉弾性体109から構成される。
【0015】
ここで、該負圧維持弁107の流量特性を流量×負圧量の関係にて図2に示す。
【0016】
すなわち弁内部液室110の負圧量がP0に達した時点で(封止ボ−ル108、密閉弾性体109の間に隙間が生じ)インクタンク120から記録ヘッド111にインクが流出しはじめる。
【0017】
これ以後の負圧量は記録ヘッド111で消費されるインク量に比例して増大するが、例えば記録ヘッド111が備える全吐出ノズルからインクが吐出された場合の最大吐出インク流量Qmaxに対応する負圧量をPmaxとする。
【0018】
ところで、記録ヘッドノズル112に加える負圧量についてその適正値は対象となる記録ヘッドによって異なるが、図2において上限負圧値はP2で表され、これ以上の負圧量がインク吐出ノズル112に加わるとメニスカスが壊れ、具体的にはノズルにエアが入りこむ。
【0019】
逆に下限負圧値はP1で表され、ヘッドが基本的に固定されるラインヘッドによるインクジェット記録装置において、該値は0値に近い負圧値だが、記録ヘッドが移動するキャリッジに搭載され、シリアルスキャンされるシリアルプリンタにおいては、記録ヘッドを搭載するキャリッジの加減速によるイナーシャを加味しても、ノズルに正圧を生じないような下限負圧値P1として設定する。
【0020】
すなわちノズルに加えるべき負圧量範囲はP1〜P2内で定められ、これらの値に対して負圧維持弁107の流路特性で、前記開閉ポイント圧P0は前記下限負圧値P1以上、さらに記録ヘッド111に備わる全ノズルよりインクの吐出がおこなわれた場合のインク流量Qmax時に発生する負圧量Pmaxは前記上限負圧量P2以下が必須条件となり、これらに弁の能力公差を見込んで設定される。
【0021】
結果、記録動作中に記録ヘッド111のインク吐出ノズル112に加わる負圧量は記録画像によって(吐出されるインクの量によって)P0〜Pmax間で変動する。
【0022】
ここで、実機上の制御シ−ケンスに基づきインク吐出ノズル112に加わる負圧量を時間×負圧量の関係にて図3で説明する。
【0023】
まず、デフォルトの負圧量を0と仮定する。
【0024】
ここでまず必要な負圧量を得るために、記録ヘッド111のキャッピング機構114にインク吐出ノズル112からインクを吐出する。
【0025】
もしくはノズルプレ−ト113をキャッピング機構114にて密閉した上で吸引ポンプ115により該インク吐出ノズル112からインクを吸引してもよい。
【0026】
これら排出されたインクは吸引ポンプ115により廃インクタンク116に圧送、貯蔵される。
【0027】
かかる手段によって記録ヘッド111の液室内のインクが消費されるが、インクタンク120からの新たなインクの流入は(封止ボ−ル108、密閉弾性体109間の隙間が閉じて)負圧維持弁107が遮断されるため弁内部液室110〜インク吐出ノズル112に加わる負圧量は増大していくが(a)、該負圧量が該負圧維持弁107の開放圧力P0を超えた時点で(封止ボ−ル108、密閉弾性体109の間に隙間が生じ)インクタンク120からインク104の流入が始まる(b)。
【0028】
少なくともこのようなインクの流入が始まった後に前記記録ヘッド111からのインク排出動作を停止する。
【0029】
すると負圧量は減少に転じるが(c)、負圧維持弁107の開閉ポイントである負圧量P0まで減少した時点で(封止ボ−ル108、密閉弾性体109間の隙間が閉じて)インクの流入が遮断され、負圧維持弁107〜インク吐出ノズル112は負圧量P0に保たれる(d)。
【0030】
この後、Job(記録動作)が行われるが、該Jobにおける記録ヘッド111のインク吐出量に応じて図2に示される流量×負圧量グラフに対応して値が変動する(e)。
【0031】
該Job終了後は、前述したように負圧維持弁107〜インク吐出ノズル112間は該負圧維持弁107の開放ポイントである負圧量P0まで減少(f)した後維持され、次のJobに備え、待機状態となる(g)。
【0032】
ただし、前記待機状態中、次のJobまでの待機時間が長期に及ぶ場合には、封止ボ−ル108、密閉弾性体109による封止部からインクの微小リ−クや、前記負圧発生弁107〜記録ヘッド迄のインク溶存ガスの気化及び、外部ガスの透過によって、待機時の負圧量P0が徐々に失われることがある。
【0033】
負圧量がインク吐出ノズル112の記録特性に影響を及ぼす量まで減少し、且つ所定時間以上経過した場合、自動シ−ケンスによって次のJob開始前にインク吐出ノズル112からのインクの強制的な排出によって、再び負圧量P0まで回復される。
【0034】
尚、本実施例による負圧維持弁の構成によると前記開閉ポイント圧P0は主に圧縮バネ117のバネ圧及び、封止ボ−ル108部の流路断面積によって設定される。
【0035】
また該開閉ポイント圧P0を始点として最大流量Qmaxの時に前記上限圧力P2を超えないようなるべく特性線の傾きを緩やかにすることが望ましいが、これは主に封止ボ−ル108と密閉弾性体109の接触線長を長くとることで行われ、全体として前記負圧量の許容範囲P1−P2を十分満たすように適時設定される。
【0036】
図3において前記負圧量が負圧維持弁107の開放圧力P0を超えた(b)後で記録ヘッドノズル112からのインク排出動作を停止せしめれば、結果負圧維持弁107〜記録ヘッドノズル112間は負圧量P0に保たれる(d)。
【0037】
この過程でエアバッファ101内も管状流路103を介して同様に負圧量P0まで減圧せしめられ、圧縮性流体であるエア−102もその体積が増大する。
【0038】
ここで、Job間、(d)、(g)において、負圧維持弁107からの微小リ−ク、インク中の溶存ガスの気化もしくは外部ガスの透過等の要因により、負圧維持弁107〜記録ヘッドノズル112間の流路中にインク及びガスが流入すると負圧量は低下してしまうが、その低下量はエアバッファ101によって暖和される。
【0039】
詳細には、前記微小リ−ク等の要因によるインクもしくはエアーの流入により負圧維持弁107〜記録ヘッドノズル112間に新たな体積が加わるが、エアバッファ101内の前記膨張されたエアー102の収縮により該負圧量の減少を暖和することができる。
【0040】
端的に述べれば、これらインク及びガスの流入量の合計体積が、負圧発生過程でエアバッファ101内のエアー102体積の増大量であるVに達するまでは前記負圧維持弁107〜記録ヘッドノズル112間は負圧を保ち続ける。
【0041】
さらに該負圧維持弁107は本実施例に述べたような記録ヘッド側に構成されなくてもよく、例えばインクタンク側もしくは、記録ヘッド、インクタンクより独立させたものであっても良い。
【0042】
さらに負圧維持弁は記録装置に採用される記録ヘッド固有の負圧許容範囲を満たす流量特性を持てばかかる構成を限定するものではない。
【0043】
<第2の実施例>
第1実施例においては弁内部液室より管状流路によって独立したエアバッファを設けたが、図4に示すように弁内部液室110に直接エア溜り401を設けても良い。
【0044】
負圧維持弁107上部にエアーを安定量保持するエアー室401を設け、負圧を発生させるため既述したように記録ヘッドノズル112からインクを排出させると、該負圧量によって第1実施例で述べた過程と同様にエアー室401に溜められたエアーが体積膨張し、該膨張量によって、Job間の待機時に、外部からのインク及び、ガスの流入、もしくはインク中に溶存したガスの気化による負圧量の減少を暖和する。
【0045】
さらに好的には、機器が輸送中に天地逆さまにされた場合でもエア−室401内のエア−が流失しないようインクがメニスカスを張る形状にすると良い。
【0046】
<第3の実施例>
本発明の実施例1,2では、負圧維持弁とエアバッファを組み合わせた実施形態について説明したが、負圧維持弁の負圧量減少を暖和する為の組み合わせはエアバッファ形態に限定されるものではない。
【0047】
流路内を非圧縮性流体であるインクのみで構成する実施形態を図5に示す。
【0048】
本実施例では、負圧維持弁107〜記録ヘッドノズル112部との間、弁内部液室110から管状流路103を介して、変形自在かつ該変形によって内部容積も変化する弾性部材502を外膜とするバッファ501が連結される。
【0049】
該弾性部材502内には圧縮バネ503があり、常にバッファ−501内部容積が最大となる方向に、弾性部材502に付勢力を与える。
【0050】
ここで、バッファ501内部圧力、すなわち、弁内部液室110の圧力が0のとき最大内部容積Vを持つものとする。
【0051】
ただし、この時、圧縮バネ503は自由長にあるか、もしくは不図示のストッパにより、弾性部材502には抗力を与えていない。
【0052】
このような構成において記録ヘッドノズル112よりインクを吐出するか、もしくは吸引ポンプ115によってインクを吸引した場合、弁内部液室110〜記録ヘッドノズル112間には負圧が加わり、該負圧量も増大していくが、同時に弾性部材502も圧縮バネ503の付勢力に抗して収縮し、結果バッファ501内部容積も減少する。
【0053】
図3で説明した通り、前記負圧量が負圧維持弁107の開放圧力P0を超えた(b)後で記録ヘッドノズル112からのインク排出動作を停止せしめると、結果負圧維持弁107〜記録ヘッドノズル112間は負圧量P0に保たれる(d)。
【0054】
この過程でバッファ−501内も同様に負圧量P0まで減圧せしめられ、バッファ−内部容積も、例えばその体積をV→x/Vに減少される。
【0055】
ここで、Job間、(d)、(g)において、負圧維持弁107からの微小リ−ク、インク中の溶存ガスの気化もしくは外部ガスの透過等の要因により、負圧維持弁107〜記録ヘッドノズル112間の流路中にインク及びガスが流入すると負圧量は低下してしまうが、それに伴い、圧縮バネ503によって弾性部材502が押し広げられ、負圧維持弁107〜記録ヘッド間に流入したインクもしくは、エア−の体積に応じてバッファ−501内部の容積を再び増加させることによって負圧量の低下は暖和される。
【0056】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明による流路特性を持つ弁と圧縮性流体を封入したバッファもしくは、圧力による変形が可能な弾性部材で構成されるバッファとを設けることで、インクの使用効率の高い純粋なインク液室を持つインクタンクを実現でき、且つインクタンクと記録ヘッドの配置上の制約を殆ど受けずに信頼性の高いインク供給機構を提供できる。
【0057】
さらに加えて本発明の実施によって、記録ヘッドノズルに長期に渡り必要な負圧量が保たれ、待機後のJob(記録動作)開始前に記録ヘッドノズルからのインクの排出による、負圧量を復元する(クリーニング)動作の回数低減が見込め、インク消費量の減少及び、記録動作開始迄のスル−プットが向上する。
【0058】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例を適用したインク流路図である。
【図2】 負圧維持弁の流量対負圧量の関係を示す図である。
【図3】 記録ヘッドのノズルに加わる負圧量の時間的変化を示す図である。
【図4】 本発明の第2実施例を適用したインク流路図である。
【図5】 本発明の第3実施例を適用したインク流路図である。
【図6】 従来のインク流路例を示す図である。
【符号の説明】
101 エアバッファ
102 エア
103 管状流路
107 負圧維持弁
108 封止ボ−ル
109 密閉弾性体
111 記録ヘッド
112 インク(吐出)ノズル
120 インクタンク
121 大気開放(連通)口
401 エア溜り
501 バッファ
502 弾性部材
503 圧縮バネ

Claims (4)

  1. インクを吐出する複数のノズルを持つ記録ヘッドにインクを供給するインク供給機構であって、前記記録ヘッドにインクを供給するインクタンクと、前記記録ヘッドと前記インクタンク間の流路に設けられ、前記インクタンクからのインクの流れを制御する弁と、当該弁を収容し前記記録ヘッドに加わる圧力を調整する液室と、前記液室に接続された圧力バッファと、を備え、前記圧力バッファ内部の気体が負圧に設定されていることを特徴とするインク供給機構。
  2. 前記圧力バッファは、前記液室内の圧力変化を緩和すること特徴とする請求項1に記載のインク供給機構。
  3. 前記圧力バッファは、前記液室に維持する負圧の減少を緩和するものであることを特徴とする請求項1、2いずれかに記載のインク供給機構。
  4. 前記圧力バッファは、圧縮性流体の圧力変動による体積変化によるものであることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載のインク供給機構。
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