JP4290231B2 - 角膜障害症治癒促進剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、角膜障害症治癒促進剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
角膜は、上皮細胞層、ボーマン膜、実質層、デスメ膜、及び内皮細胞層の5層からなる。角膜の上皮細胞層が、角膜ヘルペス、外傷、酸、アルカリ等により傷害を受けて、上皮細胞層が欠損することがある。このような場合通常は、感染や乾燥を防止して外部の刺激から防御することにより自然治癒を期待するという消極的な治療法が行われてきたにすぎない。しかし、角膜障害が遷延化する症例も多く、そのような症例に対してはフィブロネクチンや角膜障害症治癒促進効果を示すヒアルロン酸塩の点眼(特公平7−23317号公報)による治療が試みられてきた。しかし、フィブロネクチンは不安定であるため、その効果を持続することが困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の理由から、難治性角膜障害症を含む角膜障害症の治癒を効果的に促進する、安全性の高い角膜障害症治癒促進剤の開発が期待されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、グリコサミノグリカンを構成するグリコサミン及びその誘導体に角膜の障害症の治癒を促進する効果を認めるに至った。また、グリコサミン又はその誘導体にウロン酸等の物質を添加すると、その角膜障害症治癒促進効果が増強されることも見い出した。更に、硫酸基を有するグリコサミン又はその誘導体である単糖を構成単糖として有する糖鎖を角膜障害症に適用したところ、角膜障害症に対する顕著な治癒促進効果が認められた。更にまた、グリコサミン又はその誘導体の細胞増殖・伸展促進活性は、該物質が高濃度であっても低下することがなく、有効濃度範囲が広いため、投与時の条件(涙液分泌量等)による活性の変化が少ないことも認められ、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明の第一の要旨は、グリコサミンもしくはその誘導体又は薬理学的に許容されうるそれらの塩を有効成分として含有する角膜障害症治癒促進剤(以降、角膜障害症治癒促進剤1とする)であり、特にN−アシルグリコサミン又はその誘導体を有効成分として含有し、角膜細胞の細胞増殖・伸展を促進する角膜障害症治癒促進剤である。これに治癒促進効果増強物質としてウロン酸等を添加することにより、グリコサミンもしくはその誘導体又は薬理学的に許容されうるそれらの塩が有する治癒促進効果が更に増強された角膜障害症治癒促進剤が提供される。
【0006】
また、本発明の第二の要旨は、硫酸基を有するグリコサミンもしくはその誘導体を構成単糖として有する糖鎖もしくはその誘導体又は薬理学的に許容されうるそれらの塩を有効成分として含有する角膜障害症治癒促進剤(以降、角膜障害症治癒促進剤2とする)であり、例えば硫酸基を有するグリコサミン又はその誘導体を構成単糖として含み、ウロン酸又はガラクトース等を他の構成単糖として含む、ケラタン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン又はヘパラン硫酸もしくはそれらの誘導体又は薬理学的に許容されうるそれらの塩を有効成分として含有する角膜障害症治癒促進剤である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の角膜障害症治癒促進剤について詳細に記載する。
(1) 角膜障害症治癒促進剤1
本発明の角膜障害症治癒促進剤1は、グリコサミンもしくはその誘導体又は薬理学的に許容されうるそれらの塩を有効成分として含有する。更にウロン酸等の治癒促進効果増強物質を含有していてもよい。
【0008】
1. グリコサミン又はその誘導体
本発明の角膜障害症治癒促進剤1に含まれるグリコサミンもしくはその誘導体又は薬理学的に許容されうるそれらの塩は、非修飾のグリコサミン又はアミノ基、水酸基等の官能基が修飾されたグリコサミンあるいはそれらの塩であり、グリコサミノグリカン(以下GAGとも記載する)を構成するグリコサミンもしくはその誘導体又は薬理学的に許容されうるそれらの塩であれば限定はされない。グリコサミンとしては例えばグルコサミン、ガラクトサミン、マンノサミン等が挙げられるが、その中でも特にグルコサミンが好ましい。誘導体としての修飾の形態としては、グリコサミンがN位に有するアミノ基が修飾されたものが好ましく、N−アシルグリコサミン、N−硫酸化グリコサミン等が好ましい。N−アシルグリコサミンとしては、炭素数1〜6の低級アシル基で修飾されたグリコサミンが好ましく、N−アセチルグリコサミンが特に好ましい。例えば、グリコサミンの好ましい形態であるグルコサミンの例えばN位にアセチル基が結合して修飾されたN−アセチルグルコサミン(以下GlcNAcとも記載する)が、グリコサミン誘導体として好ましい。グリコサミンの塩としては、上記の物質の塩酸塩、硫酸塩が挙げられ、特に塩酸塩が好ましい。
【0009】
2. 角膜障害症治癒促進剤1の添加物
本発明の角膜障害症治癒促進剤1は、グリコサミンもしくはその誘導体又は薬理学的に許容されうるそれらの塩のほか、その角膜障害症治癒促進効果を増強する物質として、ウロン酸もしくはその誘導体又は薬理学的に許容されうるそれらの塩を含むのが好ましい。ウロン酸としてはヘキスロン酸が好ましく、例えばGAGを構成するヘキスロン酸であるD−グルクロン酸、L−イズロン酸等が挙げられるが、D−グルクロン酸(以下GlcAとも記載する)が特に好ましいが、これに限定はされない。また、ウロン酸誘導体の修飾形態としては、硫酸化されたウロン酸等が挙げられ、例えば2−O−硫酸化ヘキスロン酸、3−O−硫酸化ヘキスロン酸等が挙げられる。更に、薬理学的に許容されうる塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩等が挙げられるが、好ましくはナトリウム塩であり、D−グルクロン酸ナトリウムが最も好ましい。
【0010】
(2) 角膜障害症治癒促進剤2
本発明の角膜障害症治癒促進剤2は、硫酸基を有するグリコサミンもしくはその誘導体(グリコサミンもしくはその誘導体は前記と同義)を構成単糖として有する糖鎖もしくはその誘導体又は薬理学的に許容されうるそれらの塩を有効成分として含有する。
【0011】
1. 糖鎖
本発明の角膜障害症治癒促進剤2に含まれる糖鎖は、硫酸基を有するグリコサミン又はその誘導体を構成単糖として有するので、ヒアルロン酸の糖鎖とは明確に区別される。糖鎖に含有される硫酸基を有するグリコサミン誘導体としては、N−硫酸化グリコサミンが好ましく、この様な物質としては、N−硫酸化ガラクトサミン、N−硫酸化グルコサミン等が挙げられる。これらを構成単糖として含有する糖鎖としては、ヘパラン硫酸やヘパリンのほか、ケラタン硫酸、コンドロイチン硫酸又はデルマタン硫酸を脱N−アセチル化後にN−硫酸化して得られるN−硫酸化ケラタン硫酸、N−硫酸化コンドロイチン硫酸又はN−硫酸化デルマタン硫酸が挙げられる。上記糖鎖を脱N−アセチル化する方法としては、例えばMagnus H., Johan R., and Ulf L., Anal. Biochem., 119, 236-245(1982) の方法を応用した方法が挙げられ、また、この様にして得られた脱Nアセチル化糖鎖を例えば、Lynn A. and Arther S. P., Carbohydrate Res., 145, 267-277(1986) の方法を応用した方法によりN−硫酸化してN−硫酸化糖鎖を得ることができる。この様な糖鎖の中でも特にヘパラン硫酸が好ましい。
【0012】
該糖鎖の誘導体としては、例えばその一部の硫酸基を脱硫酸化した糖鎖、硫酸基を付加して過硫酸化した糖鎖、特定の官能基を修飾した糖鎖等が挙げられるが、一部の硫酸基を脱硫酸化して得た糖鎖が好ましい。また更に、これらの糖鎖の薬理学的に許容されうる塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩等が挙げられ、中でもナトリウム塩が好ましい。
【0013】
本発明の角膜障害症治癒促進剤2に含まれる糖鎖の平均分子量は、好ましくは、10,000以上、より好ましくは20,000〜40,000、最も好ましくは25,000〜35,000である。
【0014】
(3) 添加物
本発明の上記の角膜障害症治癒促進剤1及び2は、有効成分のほか、薬理効果を増強する目的で有効成分と同様の薬理効果を有する物質、有効成分と共存することにより該有効成分の効力増強作用を示す物質、あるいは製剤学的に通常使用される物質と共に医薬組成物とすることができる。例えば、ヘパラン硫酸と共存することによりその効力増強作用を示す物質としては、成長因子である線維芽細胞増殖因子やフィブロネクチン等が挙げられる。その他の添加物として、例えば塩類、保存剤、抗生物質、抗炎症剤、成長因子の混合又は組み合わせ投与も可能である。塩類としては、例えば硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等、保存剤としては、例えばパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、塩化ベンザルコニウム等、抗生物質としては、例えばオキシテトラサイクリン等、抗炎症剤としては、例えばジクロフェナック等が挙げられる。また、本発明の角膜障害症治癒促進剤1及び2はその物自体が安定性の高い物質であるため、通常の医薬組成物を製造する際に使用する賦形剤、安定化剤等の製剤補助剤も何ら支障無く使用することができる。
【0015】
(4) 剤型
本発明の上記の角膜障害症治癒促進剤1及び2は、本発明の目的に適合する限り、眼科用の医薬品製剤として、眼部に外用的に適用しうる剤型の製剤として使用される。例えば点眼剤、眼軟膏剤等の剤型で用いることができるが、好ましくは有効成分のみ、又は有効成分の治癒促進効果を増強するための物質(前述のウロン酸等)を添加した水溶液等として直接点眼する点眼剤、又は当該水溶液を患部装着剤に含有させて用いることができる。水溶液として使用する際のグリコサミンもしくはその誘導体又は薬理学的に許容されうるそれらの塩の濃度は、好ましくは0.1〜50mg/ml であり、更にウロン酸もしくはその誘導体又は薬理学的に許容されうるそれらの塩を含有する場合は、その濃度は、好ましくは0.1〜50mg/ml である。有効成分が糖鎖である場合は、その濃度は、好ましくは0.1〜10mg/ml である。点眼剤として使用する際は、1日1〜10回、1回当たり1〜3滴(およそ0.05〜0.2ml)を点眼して使用する。患部装着剤としては治療用コンタクトレンズ等が挙げられ、好ましく、治療用コンタクトレンズとしては例えばヒアルロン酸分子どうしを架橋剤等を使用して架橋させた架橋ヒアルロン酸、デルマタン硫酸分子どうしを架橋剤等を使用して架橋させた架橋デルマタン硫酸等の徐放性の素材により作成したものが好ましく、当該治療用コンタクトレンズに上記水溶液状の角膜障害症治癒促進剤を含有させて当該コンタクトレンズを介して患部に角膜障害症治癒促進剤を投与することが可能である。また、本発明の角膜障害症治癒促進剤を眼軟膏等の点眼薬等の液状以外の外用剤として使用する際のグリコサミンもしくはその誘導体又は薬理学的に許容されうるそれらの塩の濃度は、好ましくは0.1〜50mg/gであり、更にウロン酸もしくはその誘導体又は薬理学的に許容されうるそれらの塩を含有する場合は、その濃度は、好ましくは0.1〜15mg/gである。有効成分が糖鎖である場合、その濃度は、好ましくは、0.1〜5mg/gである。眼軟膏剤等の点眼薬以外の外用剤として使用する場合は、1日1〜3回に分けて投与することも可能である。
【0016】
(5) 適応症
本発明の上記の角膜障害症治癒促進剤1及び2は、ヒトを含む哺乳動物の角膜障害症、すなわち眼球乾燥症(ドライアイ)、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、点状表層角膜炎(SPK)、角膜上皮びらん、角膜上皮欠損、角膜潰瘍等の角膜の障害症の治癒を促進する薬剤として、疾患部位に局所的に投与する薬剤として使用される。これらの疾患が内因性疾患であっても外因性疾患であっても特に限定はされず、本発明角膜障害症治癒促進剤1及び2を使用することが可能である。また、本発明の角膜障害症治癒促進剤は、眼科手術による術創の早期治癒を促すために、当該分野における手術時に使用する患部洗浄液等へ添加して使用することも可能である。
【0017】
(6) 毒性
本発明の角膜障害症治癒促進剤1の有効成分であるグリコサミンもしくはその誘導体又は薬理学的に許容されうるそれらの塩の毒性は、非常に低い。例えばグルコサミンの塩酸塩であるGlcN・HClのマウスにおける急性毒性試験によるLD50は、経口投与で150,000mg/kg 以上、皮下又は腹腔内投与で6,200mg/kg 以上、静注で1,100mg/kg 以上、また、ガラクトサミンの塩酸塩であるGalN・HClのラットにおける急性毒性試験によるLD50は、皮下又は腹腔内投与で135,000mg/kg 以上、当該物質のマウスにおける急性毒性試験によるLD50は、皮下又は腹腔内投与で2,660mg/kg 以上であることが知られている。本発明の角膜障害症治癒促進剤1の投与時のこれらの有効成分の濃度は、上記の毒性試験値と比較して極めて低いため、本発明の角膜障害症治癒促進剤1の有効成分であるグリコサミン又はその誘導体の安全性の高いことは明らかである。
【0018】
本発明の角膜障害症治癒促進剤2の有効成分の糖鎖として例えばヘパリンもしくはその誘導体又は薬理学的に許容されうるそれらの塩を使用した際の安全性も高い。例えばヘパリンのマウスにおける急性毒性試験によるLD50は、経口投与で5,000mg/kg 以上、皮下又は腹腔内投与で2,500mg/kg 以上、静注で1,000mg/kg 程度であることが知られている。ヘパリンを本発明角膜障害症治癒促進剤2の有効成分として使用した際も、その薬剤としての適用時の濃度は上記数値と比較しても極めて低く安全性は高い。ヘパラン硫酸はヘパリンと比較して硫酸化率が低く、その為ヘパリンの持つ抗血液凝固作用が著しく低下しているので、本発明の角膜障害症治癒促進剤2の有効成分としてヘパラン硫酸を使用した際は、更に安全性は高い。また、ヘパラン硫酸又はその誘導体についての安全性(毒性・非炎症性)については既に確認されている(加島ら、基礎と臨床、23, 6121(1989)、井上ら、基礎と臨床、23, 6227(1998))。これらのことからも本発明角膜障害症治癒促進剤2の好ましい有効成分であるヘパラン硫酸又はその誘導体の安全性の高さは明らかである。
【0019】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
試験例1
N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)とD−グルクロン酸(GlcA)の角膜上皮細胞由来培養細胞の増殖に対する作用
96穴マルチプレートにウサギ角膜上皮細胞を1ウエル当たり1×104 個の割合で撒き、24時間培養後、表1に示す濃度のGlcNAc又はGlcAを含有する培地と交換し、更に72時間培養を続けた。その後、MTT溶液(2mg/ml)を1ウエル当たり50μl 添加し、5時間のインキュベート後、2−プロパノールでMTTホルマザンを溶解した。550nmの吸光度を測定して細胞増殖活性とした(表1、図1、図2)。その結果、GlcNAcを添加した際に顕著な細胞増殖促進活性が観察された。
【0021】
【表1】
【0022】
一群8サンプルの550nmの吸光度(OD550nm)の平均値±標準誤差(S.E.)で示した。
【0023】
試験例2
ヘパラン硫酸、GlcNAc及びGlcAの角膜上皮修復に対する作用
ヘパラン硫酸、GlcNAc及びGlcAのウサギ角膜上皮創傷の修復に対する影響を調べた。内径8mmのトレパン及びマイクロ剪刀を用いて、SPFグレードのJW系雌性ウサギ70匹の角膜の中央部上皮を剥離し、右眼を対照として、左眼に試験物質を150μl ずつ点眼した。試験物質としては、ヘパラン硫酸(HS)ナトリウム(牛腎由来:生化学工業(株))10mg/ml(HSナトリウムに含まれるGlcNAc、GlcA、及びNa2 SO4 量は各々約20mMに対応する)、GlcNAc(生化学工業(株))(4.4、8.8、17.6及び35.2mg/ml の4濃度(各々20、40、80及び160mM))、及びGlcA・Na(Aldrich Chemical Company. Inc.)(Na塩の水和物として4.6、9.2、18.4及び36.8mg/ml の4濃度(各々20、40、80及び160mM))を、各々リン酸緩衝生理食塩液(PBS)に溶解して使用した。対照薬としてはPBSを使用した。1日目は剥離後1時間より3時間毎に計2回点眼し、2日目は3時間毎に計4回点眼した。3日目は3時間毎に計2回点眼した。剥離1時間後と最終点眼3時間後に、PBSに溶解した0.2%フルオロセインナトリウムで染色し、紫色灯下で写真撮影した。本方法により撮影した写真を画像解析装置を用いて解析し、上皮欠損部位の面積を測定した。剥離1時間後と最終点眼3時間後の解析結果を比較し、再被覆された修復面積を算出した。左右の眼を比較し、同数から構成される対応あるstudent のt−検定で評価を行った(表2、図3)。その結果、GlcNAcには創傷治癒促進効果が観察され、GlcNAcとGlcAを混合して投与した際は、GlcNAcの創傷治癒促進効果が顕著に増強されたのが観察された。
【0024】
【表2】
【0025】
一群5〜6匹の検体を用い、促進効果の平均値(%)±標準誤差(S.E.)で示した。ただし、1%ヘパラン硫酸(HS)ナトリウムに含まれるGlcNAc、GlcA、Na2 SO4 量は各々約20mMに対応する。
【0026】
試験例3
ヘパラン硫酸の角膜上皮修復に対する作用
ヘパラン硫酸のウサギ角膜障害の修復に対する影響を調べた。内径8mmのトレパン及びマイクロ剪刀を用いて、SPFグレードのJW系雌性ウサギ12匹の角膜の中央部上皮を剥離し、右眼を対照として、左眼に試験物質を150μl ずつ点眼した。試験物質としては、ヘパラン硫酸(HS)ナトリウム(牛腎由来:生化学工業(株))10mg/ml 溶液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解)を使用した。対照薬としてはPBSを使用した。1日目は剥離後1時間より3時間毎に計4回点眼し、2日目は3時間毎に4回点眼した。3日目は3時間毎に計2回点眼した。剥離1時間後と最終点眼3時間後に、PBSに溶解した0.2%フルオロセインナトリウムで染色し、紫色灯下で写真撮影した。本方法により撮影した写真を画像解析装置を用いて解析し、上皮欠損部位の面積を測定した。剥離1時間後と最終点眼3時間後の解析結果を比較し、再被覆された面積を算出した。左右の眼を比較しながら、解析結果を比較し、同数から構成される対応あるstudent のt−検定で評価を行った(表3、図4)。その結果、ヘパラン硫酸には角膜障害症の治癒促進効果が観察された。
【0027】
【表3】
【0028】
一群6匹の検体を用い、その平均値(mm2)±標準誤差(S.E.)で示した。
【0029】
試験例4
ヘパラン硫酸とフィブロネクチンの共存下における細胞増殖作用
フィブロネクチンによるヘパラン硫酸の細胞増殖促進作用の変化を調べた。フィブロネクチン溶液(30μg/ml)50μl /ウエルにより一晩コートした96穴マルチプレートと、非コートの96穴マルチプレートに、正常ウサギ角膜上皮細胞(Lot No. 35:国際試薬)を1ウエル当たり1×104 個の割合で撒き、24時間後に、培地をヘパラン硫酸(牛腎由来:生化学工業(株))0、1、10、100、又は1,000μg/mlを含む培地と交換し、更に48時間培養を続けた。その後、〔6− 3H〕−チミジン0.5μCi/ウエルにより5時間標識し、細胞を0.5N のNaOHに溶解し、得られた溶液をガラス繊維紙に吸着させ、該紙を5%トリクロロ酢酸及びエタノールで洗浄し、ACS−II(アマシャム)を添加し、液体シンチレーションカウンターで放射活性を測定した。フィブロネクチンコートあるいは非コートのヘパラン硫酸非添加群を対照群とし、F−検定により分布に一様性が認められた場合にはstudent のt−検定を、一様性が認められなかった場合にはcochran のt−検定を用いて統計処理を行い、有意差検定を行った(図5)。その結果、フィブロネクチン非コート条件下では、10μg/ml以上のヘパラン硫酸濃度で、角膜上皮細胞の増殖が促進された。また、フィブロネクチンコートを施した条件下では、1μg/ml以上のヘパラン硫酸濃度で細胞増殖が促進され、当該活性は非コート条件下よりも顕著であった。
【0030】
製剤例
(1)点眼剤
▲1▼塩化ナトリウム900mg、パラオキシ安息香酸メチル26mg及びパラオキシ安息香酸プロピル14mgに滅菌精製水80mlを加え、加熱溶解し、当該溶液を室温に戻した後に、GlcNAc3,000mgを加えて溶解し、滅菌精製水を加えて全量を100mlとした。これを10mlずつ容器に分注して点眼剤を製造した。
▲2▼上記▲1▼の点眼剤のGlcNAc量を500mgとし、更にGlcA500mgを添加して点眼剤を製造した。
▲3▼上記▲1▼の点眼剤のGlcNAcをヘパラン硫酸ナトリウム100mgに変更して点眼剤を製造した。
▲4▼上記▲1▼の点眼剤のGlcNAcをヘパラン硫酸ナトリウム100mgに変更して、更にフィブロネクチン10μg を添加して点眼剤を製造した。
▲5▼上記▲1▼の点眼剤のGlcNAcをヘパラン硫酸ナトリウム100mgに変更して、更に線維芽細胞増殖因子10μg を添加して点眼剤を製造した。
【0031】
(2)眼軟膏剤
▲1▼精製ラノリン10g及び黄色ワセリン80gを合わせて加熱融解し、流動パラフィン適量を加えて100gとし、熱混合物を保温漏斗を用いてろ紙で濾過し、150℃で1時間滅菌した。当該混合物を室温に戻した後、GlcNAc3,000mg及び保存剤としてパラオキシ安息香酸メチル100mgを添加して均一になるように混合した。当該混合物を10gずつ容器に充填して軟膏剤を製造した。
▲2▼上記▲1▼の軟膏剤のGlcNAc量を500mgとし、更にGlcA500mgを添加して軟膏剤を製造した。
▲3▼上記▲1▼の軟膏剤のGlcNAcをヘパラン硫酸ナトリウム100mgに変更して軟膏剤を製造した。
▲4▼上記▲1▼の軟膏剤のGlcNAcをヘパラン硫酸ナトリウム100mgに変更して、更にフィブロネクチン10μg を添加して軟膏剤を製造した。
▲5▼上記▲1▼の軟膏剤のGlcNAcをヘパラン硫酸ナトリウム100mgに変更して、更に線維芽細胞増殖因子10μg を添加して軟膏剤を製造した。
【0032】
【発明の効果】
本発明の角膜障害症治癒促進剤により、難治性角膜障害症を含む角膜障害症の治癒を、効果的かつ安全に促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】MTT試験法による培養細胞の増殖に対するGlcNAcの影響を示す。
【図2】MTT試験法による培養細胞の増殖に対するGlcAの影響を示す。
【図3】ヘパラン硫酸、並びにGlcNAc及びGlcAの角膜障害症治癒促進効果を示す。
【図4】ヘパラン硫酸による修復面積に対する影響を示す。
【図5】ヘパラン硫酸の細胞増殖促進効果に対するフィブロネクチンの影響を示す。
Claims (6)
- N−アシルグリコサミン又は薬理学的に許容されうるそれらの塩を有効成分として含有することを特徴とする角膜障害症治癒促進剤。
- N−アシルグリコサミンが、N−アセチルグリコサミンである、請求項1記載の角膜障害症治癒促進剤。
- 治癒促進効果増強物質としてウロン酸もしくはその誘導体又は薬理学的に許容されうるそれらの塩を更に含有する、請求項1〜2のいずれか1項記載の角膜障害症治癒促進剤。
- ウロン酸が、グルクロン酸又はイズロン酸である、請求項3記載の角膜障害症治癒促進剤。
- 請求項1〜4のいずれか一項記載の角膜障害症治癒促進剤を有効成分として含有する医薬組成物。
- 角膜障害症治癒促進剤の効力増強作用を有する物質として更にフィブロネクチンを含む、請求項5記載の医薬組成物。
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