JP4287689B2 - 車両用ドア - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、剛性と緩衝性とを備えた車両用ドアに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の剛性を備えた車両用ドアとしては、ドア本体部の上部の強度を確保するために、ドア本体の上部に前後方向に延設されたインナフレーム(インナリインフォースメント)を設けた車両用ドアの補強構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この車両用ドアの補強構造は、アウタドアパネルの上端部に設置したアウタリインフォースメントと、インナドアパネルの上端部に設置したインナリインフォースメントとからなる。アウタリインフォースメントおよびインナリインフォースメントは、アルミニウム等の軽合金により押し出し成形材で形成された筒状(閉断面形状)のものからなる。
【0003】
また、従来の軽量化した車両用ドアとしては、ドアの軽量化を図るために、ドア本体の前縁を形成する前枠部材(ドアインナ前方部材)と、ドア本体の後縁を形成する後枠部材(ドアインナ後方部材)と、前記前枠部材と後枠部材とを連結したインナフレーム(ウエスト補強部材、シル押出材)とからなるドア骨格構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
このドア骨格構造におけるインナフレーム(ウエスト補強部材)は、インナウエストレインフォースとアウタウエストレインフォースとからなる。インナウエストレインフォースとアウタウエストレインフォースとは、アルミニウム等の軽合金により押し出し成形材で形成された中空部を有する略筒状(中空断面)のものからなる。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−334955号公報(第4〜5頁、図3および図4)
【特許文献2】
特開2001−341529号公報(第4頁、図11〜図15)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1の車内側に配設されたインナリインフォースメントにあっては、剛性を確保するために比較的大きな断面形状を有するため、ドア全体の厚さが厚くなるという問題点があった。
また、特許文献1および2の車内側に配設されたインナリインフォースメントおよびインナウエストレインフォースにあっては、剛性を確保するために中空部を有する閉断面形状をしている。このため、車両の衝突時に乗員がインナリインフォースメントおよびインナウエストレインフォースに衝突した場合、インナリインフォースメントおよびインナウエストレインフォースは、筒状の中空部があるため、変形し難いものであった。
【0006】
ドア本体の車内側に設けられたインナフレームにあっては、ドア本体を補強するための剛性と、衝突時に乗員を保護するための緩衝性を備えていることが望まれている。
【0007】
本発明は、その剛性と緩衝性とを備えた車両用ドアを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車両用ドアは、ドア本体の車内側に設けられ、車両の前後方向に伸びるインナフレームを有する車両用ドアであって、前記インナフレームは、長手方向に伸びる開口部と、車内側に湾曲して形成された屈曲部と、当該インナフレームの上部および下部から前記開口部の内方に向かって伸び、基端部が前記屈曲部よりも小さな屈曲半径で屈曲させて平らに形成された一対のフランジ部と、を有するとともに、断面が略C字状に形成されて、前記開口部が車外側に向くよう前記ドア本体に配設されたことを特徴とする。
なお、特許請求の範囲での「車内側」とは、窓ガラスが配置されている部分に対して、車室の内側寄りに配置されることをいう。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、車両が衝突してドアに衝突荷重が負荷された場合、ドア本体は、車両の前後方向に伸びるインナフレームを有することにより、インナフレームが衝突時の圧縮荷重、引張荷重および捩れ荷重を受け止め、ドア本体の剛性を増す。このとき、乗員が車内側からインナフレームに衝突したとき、インナフレームは、開口部を有するとともに、断面が略C字状に形成されていることにより、閉断面形状より比較的屈曲変形し易いため、緩衝性を有し、乗員を衝撃から保護することができる。これにより、インナフレームは、剛性と適度な緩衝性を兼ね備えることができる。
【0010】
請求項2に記載の車両用ドアは、車両の前方側に設けた前枠部材と、車両の後方側に設けた後枠部材と、前記前枠部材と前記後枠部材とを車内側で連結するインナフレームと、を有するドア本体を備える車両用ドアであって、前記インナフレームは、長手方向に伸びる開口部と、車内側に湾曲して形成された屈曲部と、当該インナフレームの上部および下部から前記開口部の内方に向かって伸び、基端部が前記屈曲部よりも屈曲半径で屈曲させて平らに形成された一対のフランジ部と、を有するとともに、断面が略C字状に形成されて、前記開口部が車外側に向くよう前記ドア本体に配設されたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、本体ドアは、前枠部材と、後枠部材と、前枠部材と後枠部材とを連結するインナフレームとを有することにより、ドア本体を骨格構造に形成することができるため、アルミニウムやマグネシウム等のプレス成形性に劣る材料であってもそれらの部材を連結してドアを容易に作ることができる。これにより、ドアは、軽合金で形成することが可能となり、車両全体の軽量化と燃費の向上を図ることができる。
また、車両が衝突してドアに衝突荷重が負荷された場合、ドア本体は、前枠部材と後枠部材とがインナフレームで連結されていることにより、インナフレームが衝突時の圧縮荷重、引張荷重および捩れ荷重を受け止めるため、ドア本体が座屈することを阻止する。したがって、ドアは、インナフレームによって補強され、剛性を増す。また、そのとき、乗員が車内側からインナフレームに衝突した場合、断面が略C字状に形成されたインナフレームが、開口部が車外側に向くよう前記ドア本体に配設されていることにより、その開口部の上下の縁や、インナフレームの開口部より車内側の箇所が所定以上の衝撃が負荷されると屈曲するため、緩衝性が備わって、乗員を衝撃から保護することができるようになる。
【0012】
請求項3に記載の車両用ドアは、請求項1または請求項2に記載の車両用ドアであって、前記フランジ部の各上下幅は、前記断面が略C字状の部分を構成する基体部の上下幅の1/4〜1/2の長さに設定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、インナフレームは、開口部の内方に向かって伸びる一対のフランジ部の各上下幅が、基体部の上下幅の1/4〜1/2の長さに形成されていることにより、インナフレームの横断面積が広く形成されるため、剛性が備わっている。例えば、車両の正面方向から衝撃力を受ける衝突をした場合、インナフレームは、前記フランジ部を有することにより、剛性があるため、圧縮荷重や捩れ荷重や引張荷重を受けても、屈曲および捩れ変形し難くなり、ドアを適度に補強することができる。
【0014】
請求項4に記載の車両用ドアは、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両用ドアであって、前記インナフレームの車幅方向の幅は、前記断面が略C字状の部分を構成する基体部の上下幅の1/6〜1/1の長さに設定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、インナフレームは、このインナフレームの車幅方向の幅が基体部の上下幅の1/6〜1/1の長さに形成されていることにより、曲げモーメントを受け易くなっているため、車幅方向に適度な剛性と緩衝性を得ることができる。例えば、車両が衝突して乗員が車内側からドアに衝突した場合、インナフレームは、前記車幅方向の幅を有することにより、所定以上の車幅方向の衝撃力が負荷されると、この車幅方向の幅を有する箇所等が乗員に押されて曲がって衝撃を緩衝し、乗員を衝撃から保護することができるようになる。
【0016】
請求項5に記載の車両用ドアは、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の車両用ドアであって、前記インナフレームは、車内側の側面と、この側面の上下端部から車外側に伸びる上下の脚部との連結部分が湾曲して形成されたことを特徴とする。
なお、前記した湾曲して形成された連結部分は、曲率半径5mm以上の曲面で形成されることが望ましい。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、車両の衝突時に乗員が車内側からインナフレームに衝突した場合、インナフレームは、車内側の側面と、この側面の上下端部から車外側に伸びる上下の脚部との連結部分が湾曲して形成されていることにより、連結部分で応力が集中することを避けることができるので、確実に荷重を受けとめることができる。また、中空状の膨らみを有するため、乗員をソフトに受け止めることができる。
また、請求項6に記載の車両用ドアは、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の車両用ドアであって、前記インナフレームは、前記ドア本体の上部の最も車室側寄りに設置されていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、車両の衝突時に乗員が車内側からインナフレームに衝突した場合、インナフレームは、乗員に押されて潰れて、衝撃を緩衝し、乗員を衝撃から保護することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係る車両用ドアを説明する。
なお、本発明の実施形態では、「前」は車両の進行方向側、「後」は車両の後退方向側、「上」は鉛直上方側、「下」は鉛直下方側、「左右」は車幅方向側とする。
【0019】
まず、図1および図2を参照してドアについて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用ドアを示す図で、ドアの一部断面を有する側面図である。図2は、本発明の実施の形態に係る車両用ドアを示す分解斜視図である。
【0020】
図1および図2に示すように、ドアDは、例えば、車体の左右または後端部に配置されるヒンジ式ドアやスライド式ドアやガルウイング式ドア等からなる。なお、このドアDの形式は、特に限定しない。
以下、ヒンジを中心として回動して後開きする左前のヒンジ式のドアDを例にして本発明を説明する。
【0021】
図2に示すように、ドアDは、ドア本体1と、このドア本体1の車外側に設置されるアウタパネル2と、ドア本体1に設置され、窓ガラス31を昇降させるためのウインド装置3と、ドア本体1の車室R(図1参照)内側に設置されるライニング4と、このライニング4に設置されるインサイドハンドル5と、ドアDを施錠・解錠するドアロック装置6と、スピーカ7と、ドアDに設置されたスピーカ7やウインド装置3等の電装品を電気的に接続するためのハーネス類8と、ドアDの全周に設置されるゴム枠9等とを備えてなる。
【0022】
次に、図2〜図5を参照してドア本体1を説明する。
図3は、本発明の実施の形態に係る車両用ドアを示す図で、車外側から見たドア本体の拡大斜視図である。図4は、本発明の実施の形態に係る車両用ドアを示す図で、車内側から見たドア本体の拡大斜視図である。図5は、本発明の実施の形態に係る車両用ドアを示す図で、ドア本体の拡大分解斜視図である。
【0023】
図2に示すように、ドア本体1は、ドアDの骨格となる部材であり、例えば、アルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽金属から形成されている。
図3〜図5に示すように、ドア本体1は、車両の前方側に設けた前枠部材11と、車両の後方側に設けた後枠部材12と、前枠部材11と後枠部材12とを連結して車内側に設けられると共に車両の前後方向に伸びるアッパインナフレーム13と、アッパインナフレーム13の車外側に設けられるアッパアウタフレーム14と、窓ガラス31(図2参照)を支持する外側ドアサッシ15と、前枠部材11と後枠部材12とを連結する下部フレーム16と、ドア本体1の補強部材としてのドアビーム17と、ドア本体1を車体に回動自在に設置するためのヒンジ部材18,18とから構成されている。ドア本体1は、前枠部材11と、後枠部材12と、アッパインナフレーム13およびアッパアウタフレーム14と、下部フレーム16とで井桁状の枠体を形成している。ドア本体1のこの井桁状の枠体箇所の周縁部には、ヘミング加工と構造用接着剤S(図9および図10参照)によってアウタパネル2が固着されている。
なお、アッパインナフレーム13は、特許請求の範囲における「インナフレーム」に相当する。
【0024】
次に、ドア本体1を構成する各部材を説明する。まず、図5〜図9を参照して前枠部材11を説明する。
図5に示すように、前枠部材11は、ドア本体1の前側の骨格を構成する部材であり、例えば、アルミダイキャスト型で成形したアルミダイキャスト品等の軽金属により形成されている。この前枠部材11は、外側ドアサッシ15が固着されるサッシ取付部11aと、アッパインナフレーム13が固着される係合溝11bと、アッパアウタフレーム14およびアウタパネル2(図2参照)が固着される固着面11cと、ドアビーム17が固着されるブラケット19と、下部フレーム16が固着される連結部11eと、ヒンジ部材18,18が設けられる前側面11fと、アウタパネル2(図2参照)が固着される外側周縁部11hとを有してなる。前枠部材11の上端部には、サッシ取付部11a、係合溝11b、固着面11c、ブラケット19および上側のヒンジ部材18が配設され、前枠部材11の下端部には、連結部11eおよび下側のヒンジ部材18が配設され、前枠部材11の前側最端および下端には、外側周縁部11hが配設されている。
【0025】
サッシ取付部11aは、外側ドアサッシ15の前側下端部15aが前枠部材11の上端部に係合され、構造用接着剤S(図9および図10参照)で固着される箇所である。そのサッシ取付部11aには、外側ドアサッシ15の前側下端部15aが嵌入される切欠部11g(図6参照)が形成されている。このサッシ取付部11aには、構造用接着剤Sが塗付され、この構造用接着剤Sによって外側ドアサッシ15が固定されている。
なお、構造用接着剤S(図9および図10参照)とは、例えば、エポキシ系等のアルミニウム合金用接着剤である。
【0026】
図6は、本発明の実施の形態に係る車両用ドアを示す図で、車外側から見たアッパインナフレームと前枠部材との連結状態を示す要部拡大斜視図である。図7は、本発明の実施の形態に係る車両用ドアを示す図で、アッパアウタフレームを離脱したときのアッパインナフレームと前枠部材との連結状態を示す要部拡大斜視図である。図8は、図1のH部拡大図である。図9は、図6のA−A拡大断面図である。
【0027】
図7、図8および図9に示すように、係合溝11bは、前記サッシ取付部11aの近傍の下側後方部に形成された略U字状の溝であり、アッパインナフレーム13の前端部13aを係合して保持するための溝である。この係合溝11bには、アッパインナフレーム13の前端部13aが構造用接着剤Sを介して嵌着されるとともに、さらにリベットによって固着されている。
【0028】
図5に示すように、固着面11cは、前記係合溝11bの前側に形成された平らな面であり、この固着面11cには、アッパアウタフレーム14の前端部およびアウタパネル2の上端部が構造用接着剤Sを介して接着されるとともに、さらにリベットにより固着されている。
【0029】
連結部11eは、前枠部材11の下端部から後枠部材12に向けて突出形成された突出片からなり、この連結部11eには、下部フレーム16の前端部が構造用接着剤Sを介して接着されるとともに、さらにリベットにより固着されている。
【0030】
前側面11fは、ドア本体1の前側側面を形成する箇所であり、この前側面11fには、上下に2つのヒンジ部材18がねじ止めされている。
【0031】
外側周縁部11hは、ドア本体1の前側面および前側下端に位置する箇所であり、この外側周縁部11hには、アウタパネル2(図2参照)が構造用接着剤Sおよびヘミング加工によって取り付けられる。
【0032】
ブラケット19は、前枠部材11の係合溝11bの下方に溶接等によって一体に固着され、このブラケット19には、ドアビーム17の前端部17aが溶接等によって固着されている。
【0033】
次に、図3、図5および図10を参照して後枠部材12を説明する。
図3に示すように、後枠部材12は、ドア本体1の後側の骨格を形成する部材であり、例えば、アルミダイキャスト型で成形したアルミダイキャスト品等の軽金属により形成されている。この後枠部材12は、外側ドアサッシ15が固着されるサッシ取付部12aと、アッパインナフレーム13が固着される係合溝12bと、ドアビーム17が固着される固着面12cと、下部フレーム16が固着される連結部12dとを有してなる。後枠部材12は、上端部にサッシ取付部12a、係合溝12bが配設され、下端部に固着面12cおよび連結部12dが配設されている。
【0034】
図10は、図3のB−B拡大断面図である。
図10に示すように、サッシ取付部12aには、外側ドアサッシ15の後側下端部15bに形成した接合面12eが後枠部材12の上端部に接合され、構造用接着剤Sで接着されるとともに、さらにリベットによって強固に固着されている。このサッシ取付部12aに固着された外側ドアサッシ15の後側下端部15bには、アッパアウタフレーム14がマスチックシーラ等の接着性シール部材Mによって固着されている。
【0035】
図5に示すように、係合溝12bは、前記サッシ取付部12aの近傍の前方部に形成された略U字状の溝であり、アッパインナフレーム13の後端部13bを係合して保持するための溝である。この係合溝12bには、アッパインナフレーム13の後端部13bが嵌合されるとともに、構造用接着剤Sによって固着されている。
固着面12cは、後枠部材12の下側前端部に形成された平らな面であり、この固着面12cには、ドアビーム17の後端部17bが構造用接着剤Sによって固着されている。
連結部12dは、後枠部材12の下端部から前枠部材11に向けて突出形成された突出片からなり、この連結部12dには、下部フレーム16の後端部16bが構造用接着剤Sを介して接着されるとともに、さらにリベットにより固着されている。
【0036】
次に、図5、図8および図9を参照してアッパインナフレーム13を説明する。
図5に示すように、アッパインナフレーム13は、アルミニウム合金またはマグネシウム合金等の軽合金の押し出し型材等からなる。このアッパインナフレーム13は、横断面が略C字状の基体部13jと、この基体部13jの上端から窓ガラス31(図8参照)に沿って上方に延設されたガイド部13kとを一体形成してなる。このアッパインナフレーム13は、一端を前枠部材11に連結し、他端を後枠部材12に連結すると共に、車体の前後方向に延設されている。
基体部13jは、前枠部材11に固着される前端部13aと、後枠部材12に固着される後端部13bと、車幅方向の車外側に開放する開口部13cと、車内側に形成された側面13dと、この側面13dの上下端部から車外側に伸びる上下の脚部13m,13nと、前記側面13dとその脚部13m,13nとの連結部分に形成されるとともに、車内側に湾曲して形成された屈曲部13g,13hと、前記開口部13cに臨んで上下幅方向の内方に互いに伸びる一対の内向きのフランジ部13e,13fとを一体形成してなる。基体部13jは、車内側に、湾曲して形成された屈曲部13g,13hを有し、車幅方向に弾性を備えている。
図8に示すように、開口部13cは、横断面が略C字状に形成されて長手方向に伸びた状態で前枠部材11と後枠部材12との間に介在されるとともに、車外側に向くようにドア本体1に配設されている。
フランジ部13e,13fの上下幅L2は、基体部13jの上下幅L1の1/4〜1/2の長さに設定されている。その基体部13jの上下幅L1は、例えば、約105mm、フランジ部13e,13fの上下幅L2は、約25mmである。フランジ部13e,13fの基端部は、屈曲部13g,13hに対して、比較的小さな屈曲半径で屈曲させて平らに形成されている。フランジ部13e,13fは、図2に示すウインド装置3のガイドレール34やハーネス類8を取り付け易くするために、内向きに広い平面を形成してなる。
アッパインナフレーム13の車幅方向の幅L3は、基体部13jの上下幅L1の1/6〜1/1の長さに設定されている。アッパインナフレーム13の車幅方向の幅L3は、例えば、約22mmである。
図8および図9に示すように、上側の屈曲部13gは、アッパインナフレーム13の側面13dに対して鈍角に湾曲させて形成されている。このため、脚部13m,13nが、車幅方向に対して車外側に向うにつれて拡開して形成される。図9に示すように、この脚部13mは、車内側に設置される前枠部材11に対して、容易に係合させて組み付けることができるように、先細状に傾斜して形成されている。
下側の屈曲部13hは、アッパインナフレーム13の側面13dに対して直角に湾曲させて形成されている。このため、脚部13nは、車内側に設置される前枠部材11の係合溝11bの内壁に、容易に載置して支持できるように、車外側方向に水平に形成される。
【0037】
図5に示すように、アッパアウタフレーム14は、例えば、車体の前後方向に延設されたアルミニウム合金の押し出し型材等からなる部材で、アッパインナフレーム13の車外側に略平行に配置されている。アッパアウタフレーム14は、前枠部材11に固着される前端部14aと、後枠部材12に固着される後端部14bと、アウタパネル2をヘミング加工して取り付ける上端部14cと、複数箇所に設けられた接着性シール部材Mによってアウタパネル2に固着される下端部14dとを有してなる。
【0038】
次に、図1および図5を参照して外側ドアサッシ15、下部フレーム16およびドアビーム17を順に説明する。
図5に示すように、外側ドアサッシ15は、アルミニウム合金の押し出し型材等の軽金属からなる上側サッシ部材151と後側サッシ部材152とを上端で溶接によって連結してなる。なお、この上側サッシ部材151と後側サッシ部材152とは、一体形成されたものであってもよい。また、後側サッシ部材152は、後枠部材12の上方に一体形成したものであってもよい。
【0039】
下部フレーム16は、アルミニウム合金等の軽合金からなる圧延板材または押し出し型材であり、井桁状のドア本体1の下枠部分を構成している。下部フレーム16は、前端部16aを前枠部材11に、後端部16bを後枠部材12に構造用接着剤Sとリベットとにより連結されている。図2に示すように、下部フレーム16は、下面をアウタパネル2の延出部2aにより覆われている。
【0040】
図5に示すように、ドアビーム17は、例えば、アルミニウム合金等の軽金属からなる補強部材であり、このドアビーム17は、ドア本体1に対して斜めに配置した断面が略四角形な管状部材から形成されている。ドアビーム17は、前端部17aが後端部17bより高くして前枠部材11に連結され、後端部17bが後枠部材12に連結されている。
【0041】
次に、図2を参照してドア本体1以外のドアDの各部を説明する。
アウタパネル2は、例えば、アルミニウム合金等の軽合金からなる圧延板材からなり、プレス加工によって成形されている。このアウタパネル2は、ドア本体1の井桁状の枠部分の周縁にヘミング加工と構造用接着剤Sとによって取り付けられる。すなわち、アウタパネル2は、上端部にアッパアウタフレーム14にヘミング加工と構造用接着剤Sを併用して固着された状態で、前端部および下端部が前枠部材11にヘミング加工と構造用接着剤Sを併用して固着され、後端部および下端部が後枠部材12にヘミング加工と構造用接着剤Sを併用して固着され、延出部2aが下部フレーム16にヘミング加工と構造用接着剤Sを併用して固着されている。
【0042】
ウインド装置3は、ドア本体1の車内側に設置され、窓ガラス31と、この窓ガラス31を支持するガイド部材32,33と、窓ガラス31の昇降をガイドするガイドレール34と、窓ガラス31を昇降させるためのウインドレギュレータ装置35とからなる。ガイド部材32は、アルミニウム合金等の軽金属からなり、前枠部材11の車内側に固着されている。ガイド部材33は、アルミニウム合金等の軽金属からなり、後枠部材12の車内側に固着されている。ガイドレール34は、アルミニウム合金等の軽金属からなり、上端がアッパインナフレーム13に固着され、下端が下部フレーム16に固着されている。ウインドレギュレータ装置35は、ガイドレール34に設置されている。
【0043】
ライニング4は、ドアDの内装を構成する板材であり、このライニング4には、インサイドハンドル5、スピーカ7およびハーネス類8が設置され、ドア本体1の車内側に固着されている。ドアロック装置6はドア本体1に予め取付けられており、ライニング4の組付け時にインサイドハンドル5、ハーネス類8が接続される。
【0044】
次に、図1、図3、図4および図8を参照して発明の実施の形態に係る車両用ドアの作用を説明する。
図1に示すように、ドアDに車内側に乗員Gが乗ると、乗員Gの最も車室Rの外側に位置する肩および腕は、アッパインナフレーム13の車内側に位置する。例えば、図4に示すように、車両が正面衝突してドアDに車両前方向(矢印E方向)から衝突荷重が負荷された場合、ドアDには、圧縮荷重、捩れ荷重あるいは引張荷重が負荷される。それらの荷重は、特にドア本体1に前後方向を向いて配設されたアッパインナフレーム13、アッパアウタフレーム14、下部フレーム16およびドアビーム17に負荷される。
【0045】
ドアDは、ドア本体1にアッパインナフレーム13を設置したことにより、前枠部材11と、後枠部材12と、アッパインナフレーム13と、アッパアウタフレーム14、下部フレーム16とからなる井桁状の枠体を形成していることにより補強されている。このため、ドア本体1は、剛性を増すことができる。アッパインナフレーム13は、前枠部材11と後枠部材12との間に、荷重の方向(矢印E方向)と同じ車両の前後方向に向けて配設されているとともに、その前枠部材11と後枠部材12とに連結されている。このため、アッパインナフレーム13は、前枠部材11に負荷された矢印E方向の荷重を受け止める突支棒の役目を果す。
【0046】
図8に示すように、アッパインナフレーム13は、フランジ部13e,13fの上下幅L2が、基体部13jの上下幅L1の1/4〜1/2の長さで、基体部13jの車幅方向の幅L3が、上下幅L1の1/6〜1/1の長さに設定され、断面が略C字状をしている。このため、アッパインナフレーム13は、横断面積が広く形成されていることにより、矢印E方向(図4参照)の圧縮荷重や捩れ荷重や引張荷重を受けたときに、座屈し難く、剛性を備えている。
【0047】
そして、図4に示すように、アッパインナフレーム13の前端部13aの近傍には、前枠部材11と後枠部材12との間に斜めに下がるようにドアビーム17が配設されている。このため、ドア本体1は、このドアビーム17があることにより、ドアビーム17によっても矢印E方向の圧縮荷重や捩れ荷重や引張荷重の負荷に対して、更に剛性を有する。したがって、矢印E方向の荷重を受けたとしても、ドア本体1の井桁状の枠形状が崩され難くなり、下部フレーム16や外側ドアサッシ15を補強して、衝撃によってそれらが変形することを防止することができる。
【0048】
例えば、図1に示すように、車両が側面衝突して車幅方向の車外側から車内方向(矢印F方向)にドアDに衝突荷重が負荷された場合、ドアDには、まず、アウタパネル2に荷重が負荷される。次に、図3に示すように、衝突荷重は、アッパアウタフレーム14、ドアビーム17、下部フレーム16、前枠部材11および後枠部材12等に負荷される。そして、アッパアウタフレーム14の車内側には、アッパインナフレーム13が設置されていることにより、アッパアウタフレーム14が衝突荷重で車内方向に変形することを受け止めることができるため、乗員G(図1参照)を保護することができる。
【0049】
また、図8に示すように、衝突時に乗員G(図1参照)が車内側からアッパインナフレーム13に衝突した場合、アッパインナフレーム13は、車内側に設けた屈曲部13g,13h、フランジ部13e,13fおよび開口部13cを有するとともに、基体部13jの断面が略C字状に形成されていることにより、その開口部13cに縁や基体部13jの中央部分の側面13dに所定以上の衝撃力が負荷されると圧潰変形または座屈変形するため、緩衝性を備えている。また、アッパインナフレーム13は、基体部13jの車幅方向の幅L3が上下幅L1の1/6〜1/1の長さになっていることにより、基体部13jが乗員G(図1参照)に押されて潰れるため、基体部13jで衝撃を緩衝して、乗員Gを衝撃から保護することができる。
【0050】
このように、ドアDを構成する各部材は、ドア本体1を構成するアッパインナフレーム13等が剛性を有するとともに、ドア本体1が前枠部材11、後枠部材12、アッパアウタフレーム14および下部フレーム16からなる枠体を構成していることにより、ドアDが骨格構造になっているため、このドアDをアルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽合金によって容易に形成することができる。ドアDは、アルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽合金から形成することにより、スチール製のドアと比較してドアD全体の重量を約2/3に減量することができるため、車体全体の軽量化および燃費の向上に寄与する。また、リサイクルに当たっては、アルミニウムが鉄よりも少ないエネルギーでリサイクルが可能であるなど地球環境への負荷が低減できる。
【0051】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されものではなく、その技術思想の範囲内で種々の改造および変更が可能であり、本発明はこれら改造および変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1に記載の車両用ドアによれば、ドア本体は、車両の前後方向に伸びるインナフレームを有することにより、インナフレームが衝突時の圧縮荷重、引張荷重および捩れ荷重を受け止め、ドア本体の剛性を増すことができる。このため、ドアは、アルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽合金で形成することが可能となり、車両全体の軽量化と燃費の向上を図ることができる。インナフレームは、開口部を有するとともに、断面が略C字状に形成されていることにより、その開口部の縁が比較的屈曲変形し易いため、緩衝性を有し、乗員を衝撃から保護することができる。これにより、インナフレームは、剛性と適度な緩衝性を兼ね備えることができる。
【0053】
本発明の請求項2に記載の車両用ドアによれば、本体ドアは、前枠部材と、後枠部材と、前枠部材と後枠部材とを連結するインナフレームとを有することにより、ドア本体を骨格構造に形成することができるため、アルミニウムやマグネシウム等のプレス成形性に劣る材料であってもそれらの部材を連結してドアを容易に作ることができる。これにより、ドアは、軽合金で形成することが可能となり、車両全体の軽量化と燃費の向上を図ることができる。
また、そのとき、乗員が車内側からインナフレームに衝突した場合、断面が略C字状に形成されたインナフレームは、開口部が車外側に向くよう前記ドア本体に配設されていることにより、その開口部の上下の縁や、インナフレームの開口部より車内側の箇所が所定以上の衝撃が負荷されると屈曲し、乗員を広い面で受け止めるため、緩衝性が備わって、乗員を衝撃から保護することができるようになる。
【0054】
本発明の請求項3に記載の車両用ドアによれば、インナフレームは、開口部の内方に向かって伸びる一対のフランジ部の各上下幅が、基体部の上下幅の1/4〜1/2の長さに形成されていることにより、インナフレームの横断面積が広く形成されるため、剛性を備えることができる。また、車両が正面方向から衝撃力を受ける衝突をした場合、インナフレームは、フランジ部を有することにより、剛性があるため、圧縮荷重や捩れ荷重や引張荷重を受けても、屈曲および捩れ変形し難くなり、ドアを適度に補強することができる。
【0055】
本発明の請求項4に記載の車両用ドアによれば、インナフレームは、車幅方向の幅が基体部の上下幅の1/6〜1/1の長さに形成されていることにより、曲げモーメントを受け易くなっているため、車幅方向に適度な剛性と緩衝性を得ることができる。例えば、車両が衝突して乗員が車内側からドアに衝突した場合、インナフレームは、前記車幅方向の幅を有することにより、所定以上の車幅方向の衝撃力が負荷されると、この車幅方向の幅を有する箇所等が乗員に押されて曲がって衝撃を緩衝し、乗員を衝撃から保護することができるようになる。
【0056】
本発明の請求項5に記載の車両用ドアによれば、インナフレームは、車内側の側面と、この側面の上下端部から車外側に伸びる上下の脚部との連結部分が湾曲して形成されていることにより、連結部分で応力が集中することを避けることができるので、確実に荷重を受けとめることができる。また、中空状の膨らみを有するため、乗員をソフトに受け止めて、衝撃を吸収し、乗員を衝撃から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用ドアを示す図で、ドアの一部断面を有する側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る車両用ドアを示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る車両用ドアを示す図で、車外側から見たドア本体の拡大斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る車両用ドアを示す図で、車内側から見たドア本体の拡大斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る車両用ドアを示す図で、ドア本体の拡大分解斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る車両用ドアを示す図で、アッパアウタフレームを離脱したときのアッパインナフレームと前枠部材との連結状態を示す要部拡大斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る車両用ドアを示す図で、車内側から見たアッパインナフレームと前枠部材との連結状態を示す要部拡大斜視図である。
【図8】図1のH部拡大図である。
【図9】図6のA−A拡大断面図である。
【図10】図3のB−B拡大断面図である。
【符号の説明】
1 ドア本体
2 アウタパネル
11 前枠部材
12 後枠部材
13 アッパインナフレーム(インナフレーム)
13c 開口部
13d 側面
13e,13f フランジ部
13g,13h 屈曲部
13j 基体部
13m,13n 脚部
14 アッパアウタフレーム
D ドア
G 乗員
L1 アッパインナフレームの上下幅
L2 フランジ部の幅
L3 アッパインナフレームの車幅方向の幅
Claims (6)
- ドア本体の車内側に設けられ、車両の前後方向に伸びるインナフレームを有する車両用ドアであって、
前記インナフレームは、長手方向に伸びる開口部と、
車内側に湾曲して形成された屈曲部と、
当該インナフレームの上部および下部から前記開口部の内方に向かって伸び、基端部が前記屈曲部よりも小さな屈曲半径で屈曲させて平らに形成された一対のフランジ部と、
を有するとともに、断面が略C字状に形成されて、前記開口部が車外側に向くよう前記ドア本体に配設されたことを特徴とする車両用ドア。 - 車両の前方側に設けた前枠部材と、車両の後方側に設けた後枠部材と、前記前枠部材と前記後枠部材とを車内側で連結するインナフレームと、を有するドア本体を備える車両用ドアであって、
前記インナフレームは、長手方向に伸びる開口部と、
車内側に湾曲して形成された屈曲部と、
当該インナフレームの上部および下部から前記開口部の内方に向かって伸び、基端部が前記屈曲部よりも小さな屈曲半径で屈曲させて平らに形成された一対のフランジ部と、
を有するとともに、断面が略C字状に形成されて、前記開口部が車外側に向くよう前記ドア本体に配設されたことを特徴とする車両用ドア。 - 前記フランジ部の各上下幅は、前記断面が略C字状の部分を構成する基体部の上下幅の1/4〜1/2の長さに設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用ドア。
- 前記インナフレームの車幅方向の幅は、前記断面が略C字状の部分を構成する基体部の上下幅の1/6〜1/1の長さに設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両用ドア。
- 前記インナフレームは、車内側の側面と、この側面の上下端部から車外側に伸びる上下の脚部との連結部分が湾曲して形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の車両用ドア。
- 前記インナフレームは、前記ドア本体の上部の最も車室側寄りに設置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の車両用ドア。
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