しかしながら、特許文献1に記載された技術によれば、レンズパターン付近にスペーサが配置された場合、マイクロレンズのレンズ曲面を有する凹部にスペーサが入り込んでしまい、レンズ特性が低下してしまう問題点がある。例えば、マイクロレンズを通過した光の光路を該凹部に入り込んだスペーサが遮断してしまう問題点がある。
そこで、本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、マイクロレンズが備える透明基板とカバー基板とを接着する接着層の厚みを均一にしつつ、このためにマイクロレンズのレンズ特性の低下を犠牲にすることがないマイクロレンズ、及びその製造方法、並びに、該マイクロレンズを備える電気光学装置及び電子機器を提供することを課題とする。
本発明に係るマイクロレンズの製造方法は上記課題を解決するために、透明基板の一面におけるレンズ形成領域に、マイクロレンズのレンズ曲面を形成するレンズ曲面形成工程と、前記透明基板の一面における前記レンズ形成領域の周辺に位置する非レンズ形成領域の一部をエッチングすることによって、前記非レンズ形成領域に、前記透明基板の基板本体と一体的に柱状のスペーサを形成するスペーサ形成工程と、前記透明基板に対向配置された透明なカバー基板及び前記透明基板を前記スペーサによって層厚が規定される透明な接着層を介して接着する接着工程とを備える。
本発明に係るマイクロレンズの製造方法によれば、透明基板の一面のレンズ形成領域にマイクロレンズのレンズ曲面を形成する。透明基板の一面のレンズ形成領域の周辺に位置する非レンズ形成領域は、該透明基板の一面内の領域であり、柱状のスペーサは、非レンズ形成領域の一部をエッチングすることによって基板本体と一体的に形成される。本発明において「基板本体と一体的に柱状のスペーサを形成する」とは、透明基板とは別の部材を非レンズ形成領域に配置することによって柱状のスペーサを形成するのではなく、透明基板の一面における非レンズ形成領域の一部をエッチングすることによって基板本体と同一の材質を用いて柱状のスペーサを形成することを意味する。したがって、柱状のスペーサは元々透明基板の一部であり、エッチングによって柱状のスペーサを形成した場合、該スペーサは透明基板の基板本体に固定されている。このようなスペーサによれば、透明基板とカバー基板とを接着する際に、スペーサがレンズ形成領域のレンズ曲面に入り込むことを無くすることが可能であり、レンズ曲面に入射する光、或いはレンズ曲面から出射される光がスペーサによって遮られることを無くすることができる。
上記柱状のスペーサは、透明基板とカバー基板との間に介在する透明な接着層の層厚を規定することができる。例えば、透明基板とカバー基板との間に十分な量の接着剤を供給しておけば、該カバー基板と透明基板とを接着する際に、スペーサによって層厚が規定され、均一な層厚を有する接着層を形成することができる。接着層の層厚を均一にすることによって、接着層の層厚がばらつくことに起因するレンズ特性の低下を抑制することが可能である。本発明において「層厚を規定する」とは、接着層の層厚を均一にすることを含むだけでなく、スペーサの高さを設定することによって接着層の層厚を調整することを含んでいてもよい。
カバー基板及び接着層は透明であることから、カバー基板及び接着層が光路を遮ることがなく、レンズ曲面に充填される接着層によってマイクロレンズが形成される。接着層の層厚に合わせて非レンズ形成領域をエッチングしておけば、柱状のスペーサによって接着層の層厚を設定することも可能であり、接着層の層厚を調整することによってレンズ特性に優れたマイクロレンズを製造することも可能である。
ここで、本発明において「層厚」とは、レンズ曲面内の空間に充填されきれなかったものが該レンズ曲面の上側に形成する接着層の厚み及び非レンズ形成領域に形成された接着層の厚みのことを意味する。接着層は、レンズ曲面内の空間のみに接着剤を充填しただけではレンズ曲面の境界の存在等によってカバー基板との接着面積を十分に得ることができない場合がある。そこで、レンズ形成領域及び非レンズ形成領域において均一、且つ所要の層厚を有する接着層を介して透明基板及びカバー基板を接着することによって、マイクロレンズ全体でカバー基板に対する接着層の接着面積を増大させることができ、透明基板とカバー基板との接着力を増大させることができる。つまり、レンズ形成領域の接着層の厚みと非レンズ形成領域の接着層の厚みがばらつきなくそれぞれ均一であり、且つ各領域の接着層の上面が面一であればよい。したがって、層厚が規定された接着層による接着力の増大により、機械的強度に優れ、且つ信頼性の高いマイクロレンズを製造することが可能である。
仮に、カバー基板と透明基板とを隙間無く接着しようとすれば、基板の一面に渡って接着剤を過不足無く(レンズ曲面のみに)充填することが実践上殆ど不可能であることから、接着層の層厚は、基板面内で無視し得ない程にばらつく。よって、接着層が透明媒質として構成されるマイクロレンズの特性が、基板面内でばらつくことになる。これに対して、本発明によれば、均一な層厚の接着層によりマイクロレンズ特性の基板面内のばらつきを無くすことができる。
本発明に係るマイクロレンズの一の態様においては、前記レンズ曲面形成工程は、前記スペーサ形成工程と少なくとも部分的に同一のエッチング処理で前記レンズ形成領域をエッチングすることによって、前記レンズ曲面を形成する。
この態様によれば、レンズ曲面形成工程とスペーサ形成工程とを同一のエッチング処理によって行うことができる。すなわち、レンズ曲面形成工程及びスペーサ形成工程は、順次行われる別々の工程に限定されない。例えば、レンズ曲面形成工程で行われるエッチング処理によってスペーサを形成することによって、マイクロレンズの製造工程を大きく変更することなく、レンズ特性等を高めるためのスペーサを形成することができる。また、レンズ曲面形成工程及びスペーサ形成工程において別々にエッチング処理を行う場合に比べて、効率良くマイクロレンズを製造することができ、且つ工程を簡略化することも可能である。
この態様においては、前記スペーサ形成工程は、前記レンズ形成領域から前記非レンズ形成領域に渡って複数の開口部を有するマスク層を形成する工程と、前記複数の開口部から臨む前記一面に等方性エッチングを施すことにより、前記レンズ形成領域にマイクロレンズのレンズ曲面を有する複数の凹部を形成すると共に前記非レンズ形成領域に前記スペーサを形成する工程とを含んでいてもよい。
この態様によれば、前記レンズ形成領域から前記非レンズ形成領域に渡って形成されたマスク層の複数の開口部から透明基板の一面を等方性エッチングすることによって、前記レンズ形成領域にマイクロレンズのレンズ曲面を有する複数の凹部を形成すると共に前記非レンズ形成領域に前記スペーサを形成することが可能である。複数の開口部に臨む一面に等方性エッチングを施すことによって該一面を深くエッチングした場合には、マスク層によって保護された非レンズ形成領域の一部はエッチングされることがなく、非レンズ形成領域にスペーサが形成される。この結果、透明基板の一面を深くエッチングした場合には、スペーサの上端の位置は、複数の凹部のそれぞれの境界を構成する縁部の上端の位置より高くなる。したがって、レンズ曲面を有する複数の凹部に接着層が充填されると共に、スペーサは接着層の層厚を規定することが可能である。この態様によれば、マイクロレンズのレンズ曲面を有する複数の凹部とスペーサとを同時に形成することができ、レンズ特性に優れたマイクロレンズを効率良く製造することが可能である。
本発明に係るマイクロレンズの製造方法の他の態様においては、前記スペーサ形成工程は、前記レンズ形成領域にマイクロレンズのレンズ曲面を有するように複数の凹部を形成する工程と、前記複数の凹部を覆うように第1の保護膜を形成する工程と、前記非レンズ形成領域に所要の形状にパターニングされた第2の保護膜を形成する工程と、前記非レンズ形成領域のうち前記第2の保護膜が形成されていない非保護領域をエッチングすることによって前記非レンズ形成領域に前記スペーサを形成する工程とを含む。
この態様によれば、先ず、前記レンズ形成領域にマイクロレンズのレンズ曲面を有するように複数の凹部を形成する。その後、複数の凹部を覆うように第1の保護膜を形成し、非レンズ形成領域に所要の形状にパターニングされた第2の保護膜を形成する。非レンズ形成領域のうち第2の保護膜が形成されていない非保護領域をエッチングすることによって、すでに形成された複数の凹部をエッチングすることなく非レンズ形成領域にスペーサを形成することができる。この態様では、所要の形状にパターニングされた第2の保護膜を形成しておくことによって、非レンズ形成領域の所要の領域にスペーサを形成することが可能であるとともに、複数の凹部を形成するためのエッチング条件に左右されることなく、非レンズ形成領域に所要の高さを有するスペーサを形成することが可能である。したがって、スペーサは、複数の凹部を形成するためのエッチング条件に左右されることなく、接着層の層厚を規定することが可能であり、例えば、接着層の層厚を均一にすることができる。
本発明に係るマイクロレンズの製造方法の他の態様においては、前記スペーサ形成工程は、前記非レンズ形成領域の一部を除去することによって前記スペーサを形成する工程と、前記スペーサを保護するスペーサ保護膜を形成する工程と、前記レンズ形成領域に複数の開口部を有するマスク層を形成する工程と、前記複数の開口部から臨む前記一面に等方性エッチングを施すことにより、前記レンズ形成領域にマイクロレンズのレンズ曲面を有する複数の凹部を形成する工程とを含む。
この態様によれば、レンズ形成領域に複数の凹部を形成する前に、非レンズ形成領域の一部を除去することによってスペーサを形成することができる。例えば、非レンズ形成領域の一部をエッチングすることによってスペーサを形成しておくことができる。スペーサ保護膜でスペーサを保護した後、マスク層の複数の開口部から透明基板の一面を等方性エッチングすることによって、すでに形成されたスペーサをエッチングすることなく、レンズ形成領域に複数の凹部を形成することが可能である。所要のレンズ曲面を形成するためにレンズ形成領域を深くエッチングした場合には、複数の凹部が有するレンズ曲面の位置をスペーサより低い位置に形成することも可能である。スペーサと複数の凹部とはそれぞれ別の工程で形成されることから、スペーサの高さを複数の凹部とは別に設定することもできる。したがって、所要の高さに設定されたスペーサは、接着層の層厚を規定することによって、例えば、該接着層の層厚を均一することが可能である。
本発明に係るマイクロレンズの製造方法に他の態様においては、前記透明基板は、前記透明基板の一面において前記レンズ形成領域と前記非レンズ形成領域とをそれぞれ含む複数のチップ領域を備え、前記チップ領域に含まれる前記非レンズ形成領域に前記スペーサを形成する。
この態様によれば、例えばマザー基板或いは大型ウエーハ等の透明基板上における、複数のチップ領域に含まれる非レンズ形成領域に設けられたスペーサは、該チップ領域に含まれるレンズ形成領域の接着層の層厚をチップ領域毎に規定することができる。したがって、透明基板の一面の端に位置する非レンズ形成領域にのみスペーサを設ける場合に比べて、透明基板の一面全体において接着層の層厚を規定することができ、接着層の層厚をより均一にすることも可能である。チップ領域を互いに分離して複数のマイクロレンズを形成する場合でも、これらマイクロレンズを一括して形成する際に、予めこれらマイクロレンズが備える接着層の層厚を個別に規定しておくことができる。したがって、例えば、一枚の透明基板から複数のマイクロレンズを形成する場合でも、これらマイクロレンズが備える接着層の層厚を精度良く規定することができ、該接着層の層厚を均一にすることも可能である。
本発明に係るマイクロレンズの製造方法の他の態様においては、前記スペーサは複数のスペーサであり、前記複数のスペーサのうち少なくとも一のスペーサを、前記透明基板の一面において他の一のスペーサの位置に対して前記レンズ形成領域を中心とする対称な位置に形成してもよい。
この態様によれば、透明基板及びカバー基板を接着するためにこれら基板の両側から荷重を加えた場合でも、レンズ形成領域を中心とする対称な位置に配置された一のスペーサ及び他のスペーサによって透明基板及びカバー基板に対して不均一に荷重が加わることを改善することができ、これら基板の反り等を無くすることができる。よって、レンズ形成領域の接着層の層厚をこれらスペーサによって規定し、該層厚を均一にすることができる。
本発明に係るマイクロレンズの製造方法は上記課題を解決するために、透明基板の一面におけるレンズ形成領域に、マイクロレンズのレンズ曲面を形成するレンズ曲面形成工程と、前記透明基板に対向配置される透明なカバー基板の前記透明基板に面する側の一面のうち、前記透明基板の一面において前記レンズ形成領域の周辺に位置する非レンズ形成領域に対応する位置にスペーサを設けるスペーサ形成工程と、前記カバー基板及び前記透明基板を前記スペーサによって層厚が規定される透明な接着層を介して接着する接着工程とを備える。
本発明に係るマイクロレンズの製造方法によれば、透明基板の一面において前記一面のレンズ形成領域にマイクロレンズのレンズ曲面を有するように複数の凹部を形成する。続いて、透明板状部材を用いて構成されるカバー基板の前記透明基板に面する一面にスペーサを設ける。スペーサは、カバー基板の前記透明基板に面する一面のうち、前記透明基板の一面において前記レンズ形成領域の周辺に位置する非レンズ形成領域に対応する位置に設けられる。ここで、本発明において「前記透明基板の一面において前記レンズ形成領域の周辺に位置する非レンズ形成領域に対応する位置」とは、カバー基板及び透明基板を接着する際にカバー基板の前記透明基板に面する側の一面のうち、透明基板の非レンズ形成領域に臨む位置のことである。すなわち、カバー基板及び透明基板を接着する際に、カバー基板に設けられたスペーサは透明基板の非レンズ形成領域と当接することになる。カバー基板のこのような位置に設けられたスペーサによれば、レンズ形成領域にスペーサが入り込むことがないうえ、接着層の層厚を規定することが可能である。このようなスペーサは、カバー基板に固定されていればよく、例えば、カバー基板の透明基板に面する一面をエッチング等することによって該カバー基板と一体的に形成されたものでもよいし、スペーサとして好適なサイズ及び形状を有する部材を平坦なカバー基板の透明基板に面する側の一面に後付けしたものでもよい。
本発明に係るマイクロレンズの製造方法の一の態様においては、前記透明基板は、前記透明基板の一面において前記レンズ形成領域と前記非レンズ形成領域とをそれぞれ含む複数のチップ領域を備え、前記カバー基板の前記透明基板に面する側の一面において、前記チップ領域に含まれる前記非レンズ形成領域に対応する位置に前記スペーサを設ける。
この態様によれば、カバー基板の前記透明基板に面する一面において、複数のチップ領域に含まれる非レンズ形成領域の位置に対応する位置に設けられたスペーサは、前記透明基板と前記カバー基板とを前記透明接着層を介して接着する際に、前記チップ領域に含まれる前記非レンズ形成領域に当接し、該チップ領域に含まれるレンズ形成領域の接着層の層厚を規定する。したがって、このようなスペーサによれば、カバー基板の一面のうち、透明基板の一面の端に位置する非レンズ形成領域に対応した位置にのみスペーサを設ける場合に比べて、透明基板の一面全体において接着層の層厚を規定することができる。また、これらチップ領域を互いに分離してそれぞれ個別のマイクロレンズとする場合には、これらマイクロレンズのそれぞれの層厚が個別に規定されることになる。
本発明に係るマイクロレンズの製造方法の他の態様においては、前記スペーサは複数のスペーサであり、前記複数のスペーサのうち少なくとも一のスペーサと他の一のスペーサとを、前記カバー基板の前記透明基板に面する側の一面のうち、前記透明基板の一面において前記レンズ形成領域を中心とする対称な位置に対応する位置にそれぞれ設けてもよい。
この態様によれば、透明基板及びカバー基板を接着するためにこれら基板の両側から荷重を加えた場合でも、レンズ形成領域を中心とする対称な位置に配置された一のスペーサ及び他のスペーサによって透明基板及びカバー基板に対して不均一に荷重が加わることを改善することができ、これら基板の反り等を無くすることができる。よって、レンズ形成領域の接着層の層厚をこれらスペーサによって規定することができる。したがって、スペーサは該層厚を均一にすることも可能である。
本発明に係るマイクロレンズは上記課題を解決するために、透明基板の一面のレンズ形成領域においてマイクロレンズのレンズ曲面を有する複数の凹部と、前記一面において前記レンズ形成領域の周辺に位置する非レンズ形成領域の一部をエッチングすることによって、前記非レンズ形成領域に、前記透明基板の基板本体と一体的に形成された柱状のスペーサと、前記透明基板に対向配置された透明なカバー基板及び前記透明基板を接着し、且つ前記スペーサによって層厚が規定される透明な接着層とを備えている。
本発明に係るマイクロレンズによれば、非レンズ形成領域に位置するスペーサによってこれら基板を接着する接着層の層厚が規定される。該接着層の層厚が均一になることから、該層厚がばらつくことによるレンズ特性を抑制することができる。また、層厚が均一である接着層を介することによって透明基板及びカバー基板の接着強度が高められており、マイクロレンズ全体の機械的強度を高めることも可能である。したがって、本発明に係るマイクロレンズは、レンズ特性に優れているだけでなく、マイクロレンズ全体の機械的強度も高められていることになる。さらに、記透明基板の基板本体と一体的に形成された柱状のスペーサは該透明基板に固定されている。よって、カバー基板及び透明基板を接着する際に、スペーサがレンズ形成領域に移動することがないため、マイクロレンズに入射する光或いはマイクロレンズから出射される光がスペーサによって遮られることをなくすことが可能である。
本発明に係るマイクロレンズは上記課題を解決するために、透明基板の一面のレンズ形成領域においてマイクロレンズのレンズ曲面を有する複数の凹部と、前記透明基板に対向配置される透明なカバー基板の前記透明基板に面する側の一面のうち、前記透明基板の一面において前記レンズ形成領域の周辺に位置する非レンズ形成領域に対応する位置に設けられた柱状のスペーサと、前記カバー基板及び前記透明基板を接着し、且つ前記スペーサによって層厚が規定される透明な接着層とを備える。
本発明に係るマイクロレンズによれば、非レンズ形成領域に位置するスペーサによってこれら基板を接着する接着層の層厚が規定される。該接着層の層厚が均一になることから、該層厚がばらつくことによるレンズ特性を抑制することができる。また、層厚が均一である接着層を介することによって透明基板及びカバー基板の接着強度が高められており、マイクロレンズ全体の機械的強度を高めることも可能である。したがって、本発明に係るマイクロレンズは、レンズ特性に優れているだけでなく、マイクロレンズ全体の機械的強度も高められていることになる。さらに、記透明基板に対向配置されるカバー基板の前記透明基板に面する側の一面のうち、前記透明基板の一面において前記レンズ形成領域の周辺に位置する非レンズ形成領域に対応する位置に設けられた柱状のスペーサは、カバー基板に固定されている。よって、カバー基板及び透明基板を接着する際に、スペーサがレンズ形成領域に移動することがないため、マイクロレンズに入射する光或いはマイクロレンズから出射される光がスペーサによって遮られることをなくすことが可能である。
本発明に係る電気光学装置は上記課題を解決するために、上述したマイクロレンズと、前記マイクロレンズに重ねて配置され、電気光学物質を封止する封止部が前記スペーサの位置と対応した位置に設けられている電気光学パネルとを備える。
本発明に係る電気光学装置によれば、マイクロレンズが備えるスペーサによって該マイクロレンズの機械的強度が高められる。電気光学物質を封止する封止部を備えた電気光学パネル及びマイクロレンズを重ねて荷重を加えた場合には、マイクロレンズの電気光学パネルと接する面内のうち該封止部の下側の領域において他の領域より大きな荷重が加わる傾向がある。例えば、封止部は、電気光学パネルにおける基板間ギャップを規定する粒状スペーサを含むシール材から構成される。このような場合、マイクロレンズの電気光学パネルと接する面内のうち大きな荷重が加わる領域が該荷重によってつぶれてしまう場合がある。そこで、電気光学パネルの封止部の位置に対応する位置にスペーサが位置することによって、マイクロレンズの機械的強度を高め、該マイクロレンズがつぶれることを抑制することができる。例えば、液晶を封止するためのシール材と対応する位置にスペーサが位置していることによって、液晶パネル及びマイクロレンズを重ねて液晶装置を製造する際に該マクロレンズがつぶれることを抑制し、液晶装置の製造プロセスにおける歩留まりを向上させることもできる。
また、本発明に係る電気光学装置は、上述したようにレンズ特性に優れたマイクロレンズを具備してなるので、マイクロレンズにより光の利用効率を高めることができ、且つ各画素における光透過率及びコントラストを向上させることも可能である。したがって、本発明に係る電気光学装置によれば、高品質の画像表示を行うことができる。
本発明に係る電子機器は上記課題を解決するために、上述した電気光学装置を備える。
本発明に係る電子機器によれば、上述した本発明に係る電気光学装置を具備してなるので、高品位の表示が可能な、投射型表示装置、液晶テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明に係る電子機器として、例えば電子ペーパなどの電気泳動装置の他に、電子放出素子を利用した表示装置(Field Emission Display及びSurface-Conduction Electron-Emitter Display)等も実現することが可能である。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
以下、本発明に係るマイクロレンズの製造方法及びマイクロレンズ、並びに電気光学装置及び電子機器について図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
先ず、図1及び図2に本発明に係るマイクロレンズの製造方法の一実施形態であるマイクロレンズ板の製造方法について説明する。本実施形態に係るマイクロレンズ板の製造方法は、マイクロレンズのレンズ曲面を有する複数の凹部と、接着層の層厚を規定するスペーサとを同時に形成することができる点に特徴を有する。図1は、本実施形態に係るマイクロレンズ板の製造方法に係る一連の工程断面図であり、図2は、透明基板にスペーサが形成された状態を示す透明基板の平面図である。
図1(a)において、透明基板1上に、レンズ形成領域1aから非レンズ形成領域1bに渡ってマスク層2を形成する。マスク層2として、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)等によりアモルファスシリコン膜を形成する。マスク2は耐フッ酸性を有するCr膜、ポリシリコン膜等でも良い。
マスク層2は、後述する複数の凹部を形成するための複数の開口部2aがレンズ形成領域1aに形成され、透明基板1の一面においてレンズ形成領域1aの周辺に位置する非レンズ形成領域1bに開口部2aより大きめの開口部2bが形成されている。例えば、開口部2a及び2bは、フォトリソグラフィ法等によってマスク層2をパターニングすることによって形成される。
図1(b)において、複数の開口部2a及び2bが形成されたマスク層2を介して、透明基板1に対して等方性エッチングを施すことにより、複数の凹部3と該複数の凹部3より広めに開口する凹部4とを形成する。等方性エッチングは、好ましくは、フッ酸系などのエッチャントを用いたウエットエッチングにより行われる。複数の凹部3の内表面は、球面の一部をなし、該球面がマイクロレンズのレンズ曲面をなす。
図1(c)において、エッチングされずに残った透明基板の一部、すなわち、マスク層2の下側の透明基板1の一部は、柱状のスペーサ5a及び5bになる。スペーサ5aは、レンズ形成領域1aを囲む壁状のスペーサであり、該スペーサ5aの断面形状は柱状である。スペーサ5bは、透明基板1の一面において互いに離間するように形成され柱状のスペーサである。よって、透明基板1をエッチングする際には、スペーサ5bが互いに離間された状態で透明基板1上に形成されるように、マスク層2がパターニングされていることになる。また、透明基板1の平坦な面にマスク層2が形成されることから、スペーサ5a及び5bの上面が面一である。
ここで、透明基板1の一面におけるスペーサ5a及び5bの配置について説明する。
図2において、透明基板1の一面においては、レンズ形成領域1aの周囲を囲むようにスペーサ5aが形成されている。スペーサ5aより外側の非レンズ形成領域1bには、スペーサ5bが離間された状態で形成されている。本実施形態においては、スペーサ5bは、非レンズ形成領域1bのうちレンズ形成領域1aを中心とする対称な位置に形成されているが、スペーサ5bは非対称な位置に形成されていてもよい。なお、図1(c)に示す工程断面図は、図2に示すC−C´線断面図である。
再び、図1(d)において、複数の凹部3及び凹部4に透明な接着剤を充填とし、該接着剤よりなる接着層8によって透明基板1及びカバーガラス7を接着する。以上の工程によって、マイクロレンズアレイ板6を形成する。
接着層8の層厚は、スペーサ5a及び5bに規定されることによってマイクロレンズアレイ板6内でばらつきなく均一とされる。したがって、接着層8は、マイクロレンズアレイ板6のレンズ特性を低下させることなく、透明基板1及びカバーガラス7との接着面積を増大させることができ、接着力を高めることが可能である。さらに、スペーサ5a及び5bは透明基板1と一体的に形成されていることから、透明基板1及びカバーガラス7を接着する際にこれらスペーサがレンズ形成領域1aに移動することによってレンズ特性を低下させることを低減することが可能である。加えて、本実施形態に係るマイクロレンズの製造方法は、レンズ曲面の形成とスペーサの形成とを同時に行うことができ、高品質のマイクロレンズを効率よく製造することが可能である。
なお、続く第2の実施の形態から第5の実施の形態で参照する各工程断面図においては、第1の実施形態で説明したマイクロレンズのレンズ形成領域の近傍を主に図示しながら説明する。第2の実施の形態から第5の実施の形態で参照する各工程断面図において、カバーガラス及び透明基板を接着する接着層は、非レンズ形成領域、及び非レンズ形成領域に対応する位置にも形成される。レンズ形成領域に形成された接着層と非レンズ形成領域のうちスペーサが設けられた領域以外の領域に形成された接着層とが、スペーサによって層厚が規定された状態でカバー基板及び透明基板を接着してもよいことは第1の実施形態と同様であることは言うまでもない。
[第2の実施の形態]
次に、図3乃至図8を参照しながら、本発明に係るマイクロレンズの一例であるマイクロレンズアレイ板及び該マイクロレンズアレイ板の製造方法について説明する。本実施形態に係るマイクロレンズ板の製造方法は、第1の実施の形態で説明したマイクロレンズ板の製造方法と同様の工程を備えており、特に、レンズ形成領域とその周辺に形成された壁状のスペーサとを含むマイクロレンズアレイ板の製造方法である。したがって、本実施形態に係るマイクロレンズは、第1の実施の形態で説明したスペーサ5bが設けられた非レンズ形成領域を取り除いた構造を備えるマイクロレンズアレイ板の一例である。
(マイクロレンズアレイ板の構成)
図3は、マイクロレンズアレイ板20の構成を説明するための図であり、図3(a)はマイクロレンズアレイ板20の斜視図であり、図3(b)はマイクロレンズアレイ板20のA−A´線断面図である。
図3(a)及び(b)において、本実施形態のマイクロレンズアレイ板20は、例えば石英板等からなる透明基板210、本発明における「透明なカバー基板」の一例であるカバーガラス200、及び、透明基板210とカバーガラス200とを接着する接着層230を備えている。多数のマイクロレンズ500は、マイクロレンズアレイ板20のレンズ形成領域20aにおいて、マトリクス状に平面的に配列されている。
図3(b)において、透明基板210の一面のレンズ形成領域20aに形成された複数の凹部500aは、透明基板210の一面においてマトリクス状に配列されている。レンズ形成領域20aは、マイクロレンズアレイ板20において、実質的にマイクロレンズとして機能するレンズ曲面が設けられる領域である。非レンズ形成領域20bはレンズ形成領域20aの周辺に位置する。スペーサS1は、透明基板210の一面において、レンズ形成領域20aを除く非レンズ形成領域20bに設けられている。
スペーサS1は非レンズ形成領域20bに形成され、透明基板210及びカバーガラス200を接着した際に接着層230の層厚dを均一にする。例えば、透明基板210とカバーガラス200との間に十分な量の接着剤を供給し、複数の凹部500aに接着剤を充填しておけば、該カバーガラス200と透明基板210とを接着する際に、スペーサS1によって接着層230の層厚dが規定され、接着層230の層厚dを均一にすることができる。したがって、接着層230の層厚dがばらつくことに起因するレンズ特性の低下を抑制することが可能である。また、スペーサS1を形成する際に、スペーサS1の高さを調整しておくことによって、層厚dを調整することも可能である。
層厚dは、レンズ曲面を有する複数の凹部500aに充填された接着剤のうち、複数の凹部500a内の空間に充填されきれなかったものがこれら凹部500aの上側に形成する接着層230の厚みのことである。層厚dを所要寸法だけ確保し、且つ該層厚dを均一にすることによって、複数の凹部500aの内部の空間のみに接着層を形成する場合に比べて、カバーガラス200に対する接着層230の接着面積を増大させることができる。したがって、透明基板210とカバーガラス200との接着力を増大させることができる。なお、スペーサS1の外側、すなわち非レンズ形成領域20bのうち図示しない領域にもスペーサを形成し、該スペーサによってスペーサS1の外側に形成された接着層の層厚を規定してもよい。さらに、このような接着力の増大により、機械的強度に優れ、且つ信頼性の高いマイクロレンズアレイ板20が形成される。
スペーサS1は、非レンズ形成領域20b内の透明基板210の一部をエッチングすることによって透明基板210の基板本体と一体的に形成された柱状のスペーサである。スペーサS1は、透明基板210とは別の部材を非レンズ形成領域20bに配置することによって形成されたものではなく、元々透明基板210の一部であり、透明基板210の基板本体と同一の材質で構成されている。透明基板210をエッチングすることによってスペーサS1を形成した場合、スペーサS1は、非レンズ形成領域20bの基板本体のうち該スペーサS1となる部分の周囲が除去された結果残される部分である。よって、スペーサS1は透明基板210に固定されている。スペーサS1によれば、透明基板210とカバーガラス200とを接着する際に、スペーサS1がレンズ形成領域20aに入り込むことがなく、レンズ曲面に入射する光、或いはレンズ曲面から出射される光がスペーサS1によって遮られることを無くすることができる。したがって、透明基板210と別個に設けられたスペーサによって層厚dを規定する場合に比べて、マイクロレンズ500のレンズ特性を高めることが可能である。加えて、スペーサS1により、接着層230を汚染することもない。
スペーサS1は、マイクロレンズアレイ板20の断面上で柱状である。スペーサS1は非レンズ形成領域20b内において互いに分離された別個のスペーサであってもよいし、非レンズ形成領域20bにおいてレンズ形成領域20aを囲む一体型の壁状のスペーサであってもよい。
スペーサS1は、透明基板210の一面においてレンズ形成領域20aを中心とする対称な領域に形成されている。このような領域に形成されたスペーサS1は、カバーガラス200の一面を偏りなく支持することができ、マイクロレンズアレイ板20内で透明基板210とカバーガラス200との間隔を均一に維持することができる。したがって、スペーサS1は、透明基板210とカバーガラス200との間に介在する接着層230の層厚dを均一にすることができる。
接着層230は、カバーガラス200と透明基板210とを相互に接着する。接着層230は、例えば、透明基板210の屈折率よりも高い屈折率を有する接着剤を複数の凹部500aに充填することによって形成されている。接着層230は、例えば、感光性樹脂材料からなる接着剤をレンズ曲面を有する複数の凹部500aに充填した後、この接着剤を硬化させることによって形成される。マイクロレンズ500は、複数の凹部500aに充填された接着層230によって形成されている。
本実施形態では特に、後述のごとく本発明独自の製造方法により製造されるため、各マイクロレンズ500は次のような構成となっている。
図4は、マイクロレンズ500の構造を説明するための図であり、図4(a)はマイクロレンズ500の平面形状を示す図であり、図4(b)は、マイクロレンズ500の拡大断面図であり、図4(c)はレンズ曲面側から見たマイクロレンズ500の立体的な形状を概略的に示した図である。
図4(a)において、各マイクロレンズ500の平面的な形状は好ましくは矩形である。各マイクロレンズ500の平面的な形状は、凹部の縁部によって規定されている。図4(a)に示す一のマイクロレンズ500が形成される凹部は、他のマイクロレンズ500が形成された凹部と縁部を共有して隣接する。
図4(b)において、各マイクロレンズ500の曲面は、相互に屈折率が異なる透明基板210と接着層230とにより概ね規定されている。より具体的には、各凹部500aは、マイクロレンズ500の、球面或いは非球面であるレンズ曲面を有している。そして、各マイクロレンズ500は、凹部500aによって規定されるレンズ曲面を有する、球面或いは非球面の平凸状のレンズとして構築されている。
図4(c)において、互いに隣接する4つのマイクロレンズ500は、互いにレンズ曲面が繋がっている。従って、隣接するマイクロレンズ500間に柱が設けられる場合と比較して、各マイクロレンズ500は、レンズとして有効な領域を広くとることが可能である。
図5は、マイクロレンズ500の断面形状の一具体例を説明するための図であり、図5(a)はマイクロレンズ500の断面形状を模式的に示した図であり、図5(b)は他のマイクロレンズの断面形状を模式的に示した図である。
図5(a)において、マイクロレンズ500のレンズ曲面は、半径Rの半球の球面の一部を構成する。マイクロレンズ500の断面形状は、半球Rの半円の弧の一部である曲線及び該曲線の両端を結ぶ直線によって規定される弓形状であり、マイクロレンズ500の厚さaは半径Rより小さい。このようなマイクロレンズ500の断面形状を規定する凹部500aは、後述するように透明基板210に対して等方性エッチングを施すことにより形成される。
図5(a)及び(b)において、通常、等方性エッチングにより、各凹部500aの深さを図5(a)に示すマイクロレンズ500の厚さaとして形成しようとする場合、図5(b)に示すように、凹部500bの深さの値はaとなり、且つ半径aの半球を構成するレンズ曲面が該凹部500bに形成される。しかしながら、本実施形態に係るマイクロレンズの製造方法によれば、各凹部500aが有するレンズ曲面がつながるように透明基板210の一面を深く等方性エッチングすることによって、図5(b)に示す比較例に対して、曲率半径が大きく且つ厚さが薄いマイクロレンズ500を形成することが可能である。各マイクロレンズ500は、図5(b)に示す比較例に比べて曲率半径の大きいレンズであり、該マイクロレンズ500における収差が無くされることになる。
(マイクロレンズアレイ板の製造方法)
次に、図6乃至図8を参照しながら、本実施形態に係るマイクロレンズの製造方法について説明する。本実施形態に係るマイクロレンズの製造方法は、マイクロレンズのレンズ曲面を形成すると共に、接着層の層厚を規定するためのスペーサを形成することが可能である点に特徴を有している。したがって、本実施形態に係るマイクロレンズの製造方法によれば、レンズ曲面を形成する工程とは別にスペーサを形成する工程を経ることなく、接着層の層厚が均一にされたマイクロレンズを製造することができる。
図6及び図7は、本実施形態に係るマイクロレンズの製造方法に係る一連の工程断面図であり、図8は複数の凹部を形成する際に用いられるマスクの構成を示す平面図である。
図6(a)において、透明基板210上に、レンズ形成領域20aから非レンズ形成領域20bに渡ってマスク900を形成する。マスク900として例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)等によりアモルファスシリコン膜を形成する。マスク900は耐フッ酸性を有するCr膜、ポリシリコン膜等でも良い。
図6(b)において、複数の開口部902をマスク900に形成する。複数の開口部902は、マスク900において図6(c)に示す凹部500aの形成位置に対応する個所に形成される。複数の開口部902は、例えば該マスク900に対するフォトリソグラフィ法を用いたパターニングによって形成される。
ここで、図8を参照しながら、マスク900の平面的な構成について説明する。図8は、レンズ形成領域20aと各開口部902との配置関係、及び各開口部902の形状を説明するための図である。
図8に示すように、マスク900において、複数の開口部902はレンズ形成領域20aに対応する領域に形成される。各開口部902は、平面的に円形状として、且つ該開口部902に対応する凹部500aより小さいサイズとして形成される。レンズ形成領域20aは、矩形状のマスク900の面内の中央付近を占める領域に相当する。非レンズ形成領域20bはレンズ形成領域20aの周辺に位置し、マスク900の面内でレンズ形成領域20aを囲む枠状の領域である。
再び、図6(c)において、複数の開口部902が形成されたマスク900を介して、透明基板210に対して等方性エッチングを施すことにより、複数の凹部500aを形成する。より具体的には、該等方性エッチングは、好ましくは、フッ酸系などのエッチャントを用いたウエットエッチングにより行われる。この際、上下又は左右に隣接する凹部500aが接触するまでは、凹部500aの平面的な形状は円となる。そして、ウエットエッチングを続ければ、平面的な形状は円が繋がった矩形形状に近付き、更に、斜めに隣接する凹部500aが接触すると、それ以降は、凹部500aの平面的な形状は、矩形形状となる。また、いずれの段階においても、凹部500aの内表面は、球面の一部をなし、エッチングを続ける程に、その球面の曲率半径は大きくなる。該曲率半径が大きくなればなる程、凹部500aの深さは深くなる。この際、スペーサS1が非レンズ形成領域20bに形成される。レンズ形成領域20aの最も端に形成される凹部500aの一部が非レンズ形成領域20bに広がるが、凹部500aの内表面のうち非レンズ形成領域20bに広がる部分はレンズ曲面として用いられない。
凹部500aは、その縁部501を含めて、非レンズ形成領域20bよりも透明基板210上における高さが低くなる。即ち、凹部500aのエッチングが進むに連れて、レンズ形成領域20aの全域が非レンズ形成領域20bより低く窪んだ平面形状となる。より具体的には、各凹部500aをつなぐ縁部501の上端の位置は非レンズ形成領域20bに形成されたスペーサS1の上端の位置より低くなる。したがって、後の工程で透明基板210の上側にカバーガラス200を配置した際、スペーサS1の上端がカバーガラスの一面に当接し、接着層230の層厚が規定されることになる。
マスク900は、上述したようにレンズ形成領域20aから非レンズ形成領域20bに渡って形成されるため、ウエットエッチングが進行するにつれて、該マスク900が破損される事態を防止することが可能となる。また、等方性エッチングをドライエッチングにより行うようにしてもよい。
図7(a)において、マスク層900をエッチング処理によって除去する。
図7(b)において、接着剤が充填された複数の凹部500aの上側にカバーガラス200を重ねて配置し、接着剤を硬化させる。これにより、層厚が均一にされた接着層230が形成され、接着層230によって透明基板210とカバーガラス200とが接着されたマイクロレンズアレイ板20を形成することができる。
本実施形態に係るマイクロレンズの製造方法によれば、透明基板及びカバーガラスをレンズ特性を低下させることなく、接着層の層厚を均一にすることができる。さらに、本実施形態に係るマイクロレンズの製造方法は、レンズ曲面の形成とスペーサの形成とを同時に行うことができ、高品質のマイクロレンズを効率よく製造することが可能である。
[第3の実施の形態]
次に、図9乃至図10を参照しながら、本発明に係るマイクロレンズの製造方法の他の実施形態について説明する。図9は本実施形態に係るマイクロレンズの製造方法の工程断面図であり、図10は、透明基板に形成されたスペーサの配置の一例を示す平面図である。本実施形態に係るマイクロレンズの製造方法は、非レンズ形成領域の所要の位置にスペーサを形成することができる点に特徴がある。
(マイクロレンズアレイ板の製造方法)
図9(a)において、透明基板610の一面のレンズ形成領域120aに複数の凹部600aを形成する。複数の凹部600aを覆うように、本発明における「第1の保護膜」の一例である保護膜640aを形成し、透明基板610の一面における非レンズ形成領域120bに、本発明における「第2の保護膜」の一例である保護膜640bを形成する。
保護膜640aは、例えば、樹脂を複数の凹部に充填した後、該樹脂を硬化させることによって形成することができる。保護膜640bは、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)等によりアモルファスシリコン膜、耐フッ酸性を有するCr膜、ポリシリコン膜等である。保護膜640bは、透明基板610の一面における非レンズ形成領域120bのうち、スペーサを形成する領域に合わせて所要の形状にパターニングされている。なお、透明基板610に複数の凹部600aを形成するまでの工程は、第2の実施形態において参照した図6及び図7に示した工程と同様であることから、詳細な説明は省略する。
図9(b)において、透明基板610の一面における非レンズ形成領域120bのうち、保護膜640bで保護されていない非保護領域をエッチングしてスペーサS2を形成する。スペーサS2は、非レンズ形成領域120bの一部に形成され、透明基板610と一体的に形成される。スペーサS2を形成するためのエッチングは、ウエットエッチング及びドライエッチングのうち何れのエッチング方法を用いてもよく、保護膜640bの下側の透明基板610の一部がエッチングされることなく突起部として残り、該突起部がスペーサS2として機能すればよい。保護膜640aは、例えば、透明基板610とエッチングレートが同じ材料を主たる材料として形成されている。保護膜640aは、スペーサS2を形成する際に、非レンズ形成領域120bの非保護領域と共にエッチングされる。
図9(c)において、保護膜640a及び640bを除去する。
図9(d)において、複数の凹部600a及び非レンズ形成領域120bに接着剤を充填し、透明基板610及びカバーガラス600が接着層630によって接着されたマイクロレンズアレイ板120を形成する。なお、接着剤は、スペーサS2の周辺にも十分供給され、透明基板610とカバーガラス600との間に、隙間なく均一な層厚を有する接着層630が形成される。すなわち、マイクロレンズアレイ板120全体で接着層630の層厚ばらつきがなく、該層厚が均一とされる。
(スペーサの配置)
図10を参照しながらスペーサの位置について詳細に説明する。図10(a)はスペーサの配置を説明するための図であり、マザー基板上に形成されたスペーサの配置の一例を示す図であり、図10(b)は、チップ領域内に形成されたスペーサの配置の一例を示す図である。ここで、マザー基板とは、マイクロレンズの製造プロセスにおいて、マイクロレンズのレンズ曲面を有する複数の凹部が形成される透明基板の一例であり、該マザー基板は、個別のマイクロレンズを含む領域として互いに分離されるチップ領域を複数含む。
図10(a)において、マイクロレンズアレイ板が備える透明基板の一例であるマザー基板160の一面は、マイクロレンズアレイ板が形成されるレンズ形成領域160aと、レンズ形成領域160aを除く非レンズ形成領域160bとに分けられる。
レンズ形成領域160aは、さらに複数のチップ領域151を備える。例えば、レンズ形成領域160aは、マザー基板160の一面における矩形状の領域であり、複数のチップ領域151は、レンズ形成領域160a内に平面的に配列された矩形状の領域である。
スペーサS11,S12,・・・,S18は、非レンズ形成領域160bに形成される。スペーサS11,S12,・・・,S18は、例えば、上述した本実施形態に係るマイクロレンズの製造方法によって形成される。したがって、スペーサS11,S12,・・・,S18を、マザー基板160の一面における非レンズ形成領域160bの所要の位置に形成することができる。例えば、本例のように、非レンズ形成領域160b内で互いに離間された8つのスペーサS11,S12,・・・,S18を形成することができる。互いに離間されたスペーサS11,S12,・・・,S18によれば、マザー基板160とカバーガラス150とを接着層を介して接着した場合でも、該接着層の層厚をマザー基板160の全面で均一にすることができる。なお、非レンズ形成領域160bに形成されるスペーサの個数や位置は、本例のスペーサの個数や位置に限定されるものでなく、スペーサの個数や位置は接着層の層厚を均一にするように便宜設定すればよい。
スペーサS11,S12,・・・,S18は、マザー基板160の一面においてレンズ形成領域160aを中心とした対称な位置に形成されている。例えば、スペーサS11とスペーサS16とは、レンズ形成領域160aを中心とする対称な位置にそれぞれ形成されている。同様に、スペーサS12及びS15等も、対称な位置に配置されている。このような位置に形成されたスペーサS11,S12,・・・,S18は、マザー基板160とカバーガラス150とを重ねて接着する際にマザー基板160及びカバーガラス150に加わる荷重を偏りなく受け止めることができる。特に、大型サイズのマザー基板160及びカバーガラス150を用いてマイクロレンズを製造する際には、マザー基板160及びカバーガラス150の反りの発生を無くすることができ、接着層の層厚をマザー基板160の全面で均一にすることが可能である。レンズ形成領域160aを中心とする対称な位置にそれぞれ形成されるスペーサの組は少なくとも一組あればよいが、このようなスペーサを複数組設けることによって、接着層の層厚をさらに均一に規定することも可能である。なお、非レンズ形成領域160bに形成されるスペーサの位置は上述した位置に限定されるものではないことは勿論である。
図10(b)において、チップ領域151は、該チップ領域151の中央付近を占めるレンズ形成領域160a´と、レンズ形成領域160a´の周辺に位置する非レンズ形成領域160b´を備える。
チップ領域151はマザー基板160上の一部の領域であり、マザー基板160から互いに分離される個別のマイクロレンズをそれぞれ含む領域である。マザー基板160全体にカバーガラス150を接着した後、チップ領域151を互いに分離して一のマイクロレンズとしてもよいし、予めチップ領域151を互いに分離した後、カバーガラスを接着して個別にマイクロレンズを形成してもよい。
非レンズ形成領域160b´に複数のスペーサS21,・・・,S24が形成されている。レンズ形成領域160a´には、図示しない複数の凹部が形成されている。レンズ形成領域160a´に形成された複数の凹部は、マイクロレンズのレンズ曲面を有している。
スペーサS21,・・・,S24は、マザー基板160の非レンズ形成領域160bに形成されたスペーサS11,S12,・・・,S18と同時に形成されてもよい。スペーサS21,・・・,S24は、チップ領域151内においてレンズ形成領域160a´を中心とする対称な位置にそれぞれ形成されている。例えば、本例に係るチップ領域151においては、矩形状であるチップ領域151の四隅に形成されている。スペーサS21,・・・,S24によれば、チップ領域151毎に接着層の層厚を規定することができ、チップ領域151毎に接着層の層厚を均一にすることができる。なお、非レンズ形成領域160b´に形成されるスペーサの位置は、レンズ形成領域160a´を中心とする対称な位置に限定されるものでない。
本実施形態に係るマイクロレンズの製造方法によれば、透明基板とカバーガラスとを接着する接着層の層厚をマイクロレンズ内で均一にするように、透明基板の所要の位置にスペーサを形成することができる。本実施形態に係るマイクロレンズの製造方法は、第2の実施形態に係るマイクロレンズの製造方法に比べて、マイクロレンズのレンズ曲面を形成する工程に制約されることなく、スペーサの配置を変更することが可能である。
尚、図10(b)に示した如きスペーサS21,・・・,S24を形成せずとも、図10(a)に示したスペーサS11,S12,・・・,S18を形成して、マザー基板160とカバーガラス150とを貼り合せる際に、両者間の接着層を均一にする効果は、相応に得られえる。即ち、図8(b)に示した如きスペーサS21,・・・,S24を形成せずとも、本発明の一態様は成立する。
[第4の実施の形態]
次に、図11及び図12を参照しながら、本発明に係るマイクロレンズの製造方法の他の実施形態について説明する。本実施形態に係るマイクロレンズの製造方法は、第3の実施形態に係るマイクロレンズの製造方法と同様に、マイクロレンズのレンズ曲面を形成する工程とは別の工程によってスペーサを形成することができる点に特徴がある。図11及び図12は、本実施形態に係るマイクロレンズの製造方法の工程断面図である。
(マイクロレンズアレイ板の製造方法)
図11(a)において、透明基板710の非レンズ形成領域220bにマスク層740bを形成する。
図11(b)において、透明基板710の一面のうちマスク層740bが形成されていない領域を一様にエッチングする。マスク層740bの下側の透明基板710はエッチングされないことから、マスク層740bの下側の部分がエッチング面711に対して突き出した突起部となり、該突起部がスペーサS3になる。マスク層740bは、続く工程において、本発明に係る「スペーサ保護膜」の一例とされる。
図12(a)において、本発明における「マスク層」の一例であるマスク層740aを形成する。マスク層740aは、複数の開口部742を有しており、続く工程で開口部742から透明基板710をエッチングする。
図12(b)において、複数の開口部742に臨むエッチング面711を等方性エッチングすることによって、マイクロレンズのレンズ曲面を有する複数の凹部700aを形成する。より具体的には、該等方性エッチングは、好ましくは、フッ酸系などのエッチャントを用いたウエットエッチングにより行われる。この際、第1の実施形態で説明した場合と同様に、レンズ形成領域220aの全域が非レンズ形成領域220bに対して低く窪んだ平面形状となる。複数の凹部700aを形成した後、マスク層740b及びマスク層740aを除去する。
図12(c)において、複数の凹部700aに接着剤を充填し、透明基板710にカバーガラス700を重ねて配置する。透明基板710及びカバーガラス700の間に介在する該接着剤を硬化させることによって接着層730を形成し、マイクロレンズアレイ板220を形成する。接着層730は、透明基板710及びカバーガラス700を接着し、スペーサS3は接着層730の層厚を均一にする。
本実施形態に係るマイクロレンズの製造方法によれば、第2の実施形態に係るマイクロレンズの製造方法に比べて、マイクロレンズのレンズ曲面を形成する工程に制約されることなく、スペーサの配置を変更することが可能であり、所要の位置にスペーサを設けることができる。
[第5の実施の形態]
次に、図13乃至図15を参照しながら、本発明に係るマイクロレンズの製造方法の他の実施形態について説明する。本実施形態に係るマイクロレンズの製造方法は、透明基板に接着されるカバー基板の一例であるカバーガラスにスペーサを設けることができる点に特徴がある。
(マイクロレンズアレイ板の製造方法)
図13及び図14は、本実施形態に係るマイクロレンズの製造方法の工程断面図である。
図13(a)において、透明基板310の一面にマイクロレンズのレンズ曲面を有する複数の凹部300aを形成する。複数の凹部300aは、レンズ形成領域320aに形成されており、例えば、第1の実施の形態で説明した複数の凹部500aを形成する工程と同様の工程によって形成される。
図13(b)において、保護材料として例えばレジストを用いて構成される保護膜311を、各凹部300aを覆うように連続して形成する。これにより、保護膜311は、各凹部300aに充填された保護材料によってレンズ形成領域320aに形成されると共に、該レンズ形成領域320aから非レンズ形成領域320bに渡って形成される。
図13(c)において、保護膜311のうち、各凹部300a外に形成された部分を除去して、保護膜311のうち各凹部300a内に形成された部分を残存させる。その結果、非レンズ形成領域320bの透明基板310が露出する。
図13(d)において、透明基板310に対して、研磨処理として例えば化学的機械研磨(CMP)処理が行われる。研磨処理によって、透明基板310における非レンズ形成領域320bに加えて保護膜311も研磨されることにより後退し、複数の凹部300aの縁部312が露出する。即ち、非レンズ形成領域320bが複数の凹部300aの縁部312の高さまで研磨されると、複数の凹部300aの縁部312が格子状に露出することになる。このように、研磨処理によって、透明基板310の一面における非レンズ形成領域320bを後退させることによって、各凹部300aの深さを浅くすることができる。また、保護膜311が形成されているため、研磨処理において、各凹部300aにおけるレンズ曲面の形状を変化させることなく、非レンズ形成領域320bを後退させることができ、且つ凹部300a内にごみが付着するのを防止することができる。
尚、非レンズ形成領域320bを、図13(a)におけるエッチングにより後退させることも可能である。
図14(a)において、研磨処理後、各凹部300a内から保護膜311を除去する。
図14(b)において、スペーサS4が設けられたカバーガラス400を透明基板210に対向配置する。スペーサS4は、カバーガラス400の透明基板310に面する側の面のうち、カバーガラス200と透明基板310とを接着した際に透明基板210の非レンズ形成領域320bに対応する位置に設けられている。したがって、カバーガラス400と透明基板310とを接着した際に、スペーサS4が透明基板310のレンズ形成領域320aに重なることがない。本実施形態においては、スペーサS4は、カバーガラス400に固定されていればよい。スペーサS4は、例えば、カバーガラス400の一面に後付けされたスペーサである。このようなスペーサS4を、例えば、インクジェット方式やディスペンサによって後付けすることもできる。スペーサS4は、インクジェット方式やディスペンサによる後付けのものに限定されず、カバーガラス400の一部をエッチングすることによって、カバーガラス400と一体的に形成されていてもよい。
図14(c)において、カバーガラス400及び透明基板310を接着層330を介して接着し、マイクロレンズアレイ板320を形成する。カバーガラス400に形成されたスペーサS4は、透明基板310の非レンズ形成領域320bに当接する。したがって、スペーサS4は、接着層330の層厚を規定し、該層厚を均一にすることができる。
(スペーサの配置)
図15を参照しながら、カバーガラスに形成されるスペーサの位置について詳細に説明する。図15(a)はスペーサの配置を説明するための図であり、図15(a)は、カバーガラス上に形成されたスペーサの配置の一例を示す図であり、図15(b)は、チップ領域付近のカバーガラスに形成されたスペーサの配置の一例を示す図である。
図15(a)において、カバーガラス460のマザー基板450に面する側の一面のうち、非レンズ形成領域450bに対応する位置にスペーサS31,S32,・・・,S38が設けられている。スペーサS31,S32,・・・,S38は、カバーガラス460に固定されており、且つカバーガラス460及びマザー基板450を接着する際にマザー基板450のチップ領域451に重なることがない。したがって、スペーサS31,S32,・・・,S38は、マイクロレンズアレイ板を形成した際に、マイクロレンズの光路を遮ることがなく、該マイクロレンズレンズのレンズ特性を低下させることない。さらに、スペーサS31,S32,・・・,S38は、マザー基板450の非レンズ形成領域450bに接することによってカバーガラス460及び該マザー基板450の間に介在する接着層全体の層厚を均一にすることができる。なお、図15(a)に示したスペーサの個数及び位置は、カバーガラスに設けられるスペーサの好適な一例であり、本発明におけるスペーサの位置及び個数は本例に限定されるものではない。
図15(b)において、チップ領域451は、該チップ領域451の中央付近を占めるレンズ形成領域451a´と、該レンズ形成領域の周辺を囲む非レンズ形成領域451b´とを備える。チップ領域451は、分離されてそれぞれマイクロレンズとして機能する領域である。レンズ形成領域451a´には、図示しない複数の凹部が形成されている。レンズ形成領域に形成された複数の凹部は、マイクロレンズのレンズ曲面を有している。
スペーサS41,S42,・・・,S44は、カバーガラス460の透明基板に面する側の一面のうち非レンズ形成領域451b´に対応した位置にそれぞれ形成されている。したがって、チップ領域451a´毎に形成されるマイクロレンズにおいてもスペーサS41,S42,・・・,S44がレンズ形成領域451a´に入り込むことがなく、スペーサS41,S42,・・・,S44がマイクロレンズの光路を遮ることがない。
スペーサS41,S42,・・・,S44は、チップ領域451のレンズ形成領域451a´を中心とした対称な位置に対応する位置に形成されている。スペーサS41,S42,・・・,S44によれば、チップ領域451毎に接着層の層厚を規定することができ、チップ領域毎に形成されるマイクロレンズにおいても該マイクロレンズが備える接着層の層厚を均一にすることができる。なお、カバーガラス460に設けられるスペーサ41,S42,・・・,S44は、カバーガラスに後付けされたものでもよいし、カバーガラス460をエッチングすることによってカバーガラス460と一体的に形成されたものでもよい。また、カバーガラスに設けられるスペーサの個数や位置は、本例の如き個数や位置に限定されるものでなく、接着層の層厚をカバーガラス全体で均一にすることができれば如何なるものでもよい。
本実施形態に係るマイクロレンズの製造方法によれば、カバーガラスにスペーサを設けることができ、透明基板にマイクロレンズのレンズ曲面等を加工するための工程を変更することなく、別途カバーガラスにスペーサを形成する工程を行うことができる。したがって、予めカバーガラスにスペーサを設けておけば、第3及び第4の実施形態に係るマイクロレンズの製造方法に比べてマイクロレンズの製造に要する時間を短縮することが可能である。
[第6の実施の形態]
次に、図16乃至図17を参照しながら、本発明に係る電気光学装置及びこれを備えた電子機器について説明する。
(電気光学装置)
図16及び図17を参照しながら、本実施形態に係る電気光学装置の一例である液晶装置について詳細に説明する。図16は、液晶装置80をマイクロレンズアレイ板60側から見た図であり、図17は、図16のH−H'断面図である。なお、液晶装置80は、駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置である。液晶装置80は、TFTアレイ基板10の上に形成された各構成要素と、TFTアレイ基板10の対向基板として用いられるマイクロレンズアレイ板60とを備えている。
図16及び図17において、液晶装置80は、本発明における「電気光学パネル」の一例である液晶パネル90と、液晶パネル90が備えるTFTアレイ基板10に対向配置されるマイクロレンズアレイ板60とを備えている。液晶パネル90及びマイクロレンズアレイ板60は重ねて配置された後、接着されている。
マイクロレンズアレイ板60は、透明基板61、透明基板61に接着されたカバーガラス64、及び接着層63を備える。透明基板61は、透明基板61のレンズ形成領域60aに形成されたマイクロレンズ、レンズ形成領域60aの周辺の非レンズ形成領域に設けられたスペーサS5を備える。接着層63の層厚は、スペーサS5によって規定され、均一とされる。マイクロレンズアレイ板60は、第1の実施形態乃至第4の実施形態において説明したマイクロレンズアレイ板のうち何れかのマイクロレンズアレイ板60と同様の構造を有していればよい。なお、図17においては、透明基板のレンズ形成領域60aに形成されているマイクロレンズは図示していない。
液晶パネル90は、本発明に係る「電気光学物質」の一例である液晶を封止する、本発明に係る「封止部」の一例を構成するシール材52、該シール材52によって液晶が封止されてなる液晶層50、及びTFTアレイ基板10を備える。
シール材52は、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられている。シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10とマイクロレンズアレイ板60との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。即ち、本実施形態に係る電気光学装置は、プロジェクタのライトバルブ用として小型で拡大表示を行うのに適している。
スペーサS5は、シール材52の位置に合わせてマイクロレンズアレイ板60に設けられている。より具体的には、マイクロレンズアレイ板60の面内におけるスペーサS5の位置と、液晶パネル90の面内におけるシール材52の位置とは一致する。すなわち、マイクロレンズアレイ板及び液晶パネルを重ねて配置した際に、スペーサ及びシール材52の位置が重なることになる。このような位置にそれぞれ設けられたスペーサS5及びシール材52によれば、液晶装置80を製造する際に、マイクロレンズアレイ板60の液晶パネル90に面する側の面のうち液晶パネル90と接する領域に集中して荷重が加わった場合でも、該荷重によってマイクロレンズアレイ板60がつぶれることを無くすることが可能である。したがって、マイクロレンズアレイ板60は、スペーサS5を設けない場合に比べて機械的強度が高められていることになる。液晶パネル90の面内におけるシール材52の位置とマイクロレンズアレイ板60の面内におけるスペーサS5の位置とが対応していることによって、製造プロセスにおいて液晶装置の歩留まりを向上させることができる。
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、マイクロレンズアレイ板60側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。また、走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、前記額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、前記額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
マイクロレンズアレイ板60の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらのコーナー部に対向する領域において上下導通端子が設けられている。これらにより、TFTアレイ基板10とマイクロレンズアレイ板60との間で電気的な導通をとることができる。
TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜が形成されている。マイクロレンズアレイ板60上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23、更には最上層部分に配向膜が形成されている。また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
なお、TFTアレイ基板10上には、データ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
(電子機器)
上述した電気光学装置をライトバルブとして用いた電子機器の一例たる投射型カラー表示装置の実施形態について、その全体構成、特に光学的な構成について説明する。ここに、図18は、投射型カラー表示装置の図式的断面図である。
図18において、投射型カラー表示装置の一例たる液晶プロジェクタ1100は、駆動回路がTFTアレイ基板上に搭載された液晶装置を含む液晶モジュールを3個用意し、それぞれRGB用のライトバルブ100R、100G及び100Bとして用いたプロジェクタとして構成されている。液晶プロジェクタ1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から投射光が発せられると、3枚のミラー1106及び2枚のダイクロックミラー1108によって、RGBの三原色に対応する光成分R、G及びBに分けられ、各色に対応するライトバルブ100R、100G及び100Bにそれぞれ導かれる。この際特に、B光は、長い光路による光損失を防ぐために、入射レンズ1122、リレーレンズ1123及び出射レンズ1124からなるリレーレンズ系1121を介して導かれる。そして、ライトバルブ100R、100G及び100Bによりそれぞれ変調された三原色に対応する光成分は、ダイクロックプリズム1112により再度合成された後、投射レンズ1114を介してスクリーンにカラー画像として投射される。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うマイクロレンズの製造方法、該製造方法により製造されるマイクロレンズ、該マイクロレンズを備えた電気光学装置及び該電気光学装置を具備してなる電子機器もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
透明基板 61,210,310,610,710、カバーガラス 64,150,200,400,460,600,700、接着層 63,230,330,630,730、マイクロレンズアレイ板 20,60,120,220,320、液晶装置 80、液晶プロジェクタ 1100