JP4284751B2 - 送風装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は送風装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、機器の小形化、電子化により、電気回路の高密度実装が盛んに使用されるようになってきた。これに伴い電子機器の発熱密度も増加するため、機器冷却用に送風装置が使用されている。
【0003】
従来の送風装置は図11に示すように、ファン1の翼先端から間隔をあけて環状壁2が形成されており、モータ部3に通電した送風状態では、軸流ファン1が軸4を中心に回転し、吸引側から吐出側に向かう空気流5が発生する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の送風状態においては、翼先端の背圧側において空気流の速度が速くなり、これが圧力エネルギーに変換される翼後縁側に翼間二次流れの影響による低エネルギー領域が発生する。この部分は損失も大きく流れの剥離が生じ易く、空気流がブレード面より離脱してしまい、その離脱領域には渦発生が起き、これにより乱流騒音を増加させ、騒音レベルならびに風量−静圧特性の悪化を招く問題がある。
【0005】
この現象は、特に吐出流側に流動抵抗(システムインピーダンス)がかかった場合、翼先端の漏れ渦の発生が大きくなり、ファンとして失速状態を呈する状態に陥る場合に頻繁に見られる。
【0006】
この問題に対しては、本発明と同一出願人の先願特許(特願平8−174042号、特願平9−151450号、特願平9−260738号、特願平9−326843号、特願平9−359593号、特願平10−001950号)に記載の送風装置のように、送風状態において環状壁に設けたスリットから環状壁の内部へ空気を吸い込み、これにより翼先端漏れ渦および旋回失速が生じることを抑制することによって風量−静圧特性の向上と、静音化を図る方法が記載されている。
【0007】
図12は特願平9−359593号記載の送風装置を示した図である。(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ送風装置の側面図と正面図、断面図およびX−X’断面詳細図である。
【0008】
図12に示すとおり、この送風装置は、ファン1の周囲を取り巻く環状壁2にスリット6が形成されている。
【0009】
また、スリット6各部の流入抵抗が全周にわたってほぼ等しくなるように、スリット6の隙間の幅および、スリットの本数、あるいはそのいずれか一方を変化させることにより、環状壁2の外周形状の影響を打ち消し、特性を向上させている。
【0010】
図13は、この送風装置と従来スリットのない送風装置の同一回転数での特性を示したものである。
【0011】
図13より、上記特願平9−359593号記載の環状壁外周から空気を流入させた送風装置は、同一のサイズの従来型送風装置と比較して、高中圧時の風量、および騒音等には優れるものの、低圧時の風量が若干低く、またファンを同一回転数で駆動する際の仕事率(駆動トルクに回転数を乗した値、以下ファン駆動力と称する)が高いため、送風装置の静圧効率がかえって劣る場合があるという問題点を有していた。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の送風装置は、ファンの翼先端から間隔をあけて環状壁を形成し、前記環状壁には前記の翼先端と対向する部分に環状壁の内周部と外周部を連通するスリットを形成し、ファンの回転に伴って前記スリットから空気を環状壁の内周部に吸い込む送風装置において、ファン翼先端部から吸い込む空気流の分布に着目し、環状壁の形状を工夫することにより、更なる最適化を図り特性を向上するものである。
【0013】
この本発明によると、送風装置の効率を高めることができ、機器の消費エネルギーの低減、または冷却能力の向上等を実現することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明請求項1に記載の発明は、ファンの翼先端から間隔をあけて環状壁を形成し、前記環状壁には前記の翼先端と対向する部分に環状壁の内周部と外周部を連通するスリットを形成し、ファンの回転に伴って前記スリットから空気を環状壁の内周部に吸い込む送風装置であって、前記環状壁に設けたスリットは、吸引側のスリットの隙間の幅を広く、吐出側のスリットの隙間の幅を狭く設定したことを特徴とする送風装置である。
【0017】
本発明請求項2に記載の発明は、ファンの翼先端から間隔をあけて環状壁を形成し、前記環状壁には前記の翼先端と対向する部分に環状壁の内周部と外周部を連通するスリットを形成し、ファンの回転に伴って前記スリットから空気を環状壁の内周部に吸い込む送風装置であって、前記環状壁に設けたスリットは、吸引側のスリットの間隔を狭く、吐出側のスリットの間隔を広く設定したことを特徴とする送風装置である。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図1〜図7に基づいて説明する。
【0020】
(実施例1)
図1の(a)(b)(c)(d)は実施例1の送風装置の側面図と正面図、断面図およびX−X’断面詳細図を示す。
【0021】
図1の(d)に示すように、環状壁2は、吸引側の羽根先端とのクリアランスが実質広くなるように、内径を部分的に拡大させた第一領域と、羽根先端とクリアランスを小さくし、内周部と外周部を連通するスリット6を設けた第二領域とから構成されている。また、各スリット6は、各部の流入抵抗が全周にわたってほぼ等しくなるように、スリットの隙間の幅wを径方向および周方向に変化させている。
【0022】
この送風装置の原理について図2から図4を用いて説明する。
【0023】
図2は、環状壁の吸込み口側の形状を羽根先端とのクリアランスが広くなるように、内径を拡大させた場合を示している。
【0024】
このような構成にすると、ファン1が回転方向9の方向に回転駆動されることにより、吸引側から吐出側に向かう空気流5が発生するとともに、翼先端部分からも、空気流5が吸い込まれ、クリアランスが一定の場合と比較して、特に低圧状態において風量を増大させる効果がある。
【0025】
この部分は、翼先端とのクリアランスが広いため、空気の粘性の影響が少なく、空気が流入する際のエネルギー損失も小さく、効率的に風量を増大することができる。
【0026】
しかしながら、内径を拡大させた部分を設けると、低圧時には風量を増大できるものの、ある程度圧力が加わった状態で使用されると、図2に示すように、翼先端において正圧側から背圧側に流れる漏れ渦7が大きく成長し、空気流がブレード面より離脱してしまい、その離脱領域には乱流渦8が発生し、これにより乱流騒音を増加させ、騒音レベルならびに風量−静圧特性、風量−静圧特性が悪化し、風量および騒音が極端に悪化する。
【0027】
この翼先端漏れ渦7は、翼先端の吸引側では、あまり大きく成長することはなく、逆に、翼先端の中間部以降では、大きく成長しファンの性能に対して大きな影響を及ぼす。
【0028】
図3は、環状壁2の翼先端とのクリアランスを小さくして環状壁全体にスリットを設けた構成とした場合を示している。
【0029】
図3に示すように、ファン1が回転駆動されることによって、翼先端背圧側には負の圧力が発生し、環状壁2内外周の気圧差により、各スリット6から環状壁2内側に向って空気流5の流れ込みが発生する。スリット6の隙間の幅wを適切な値に設定することにより、各スリット6から流れ込む空気流5により、翼先端において正圧側から背圧側に流れる翼先端漏れ渦7が抑制され、背圧面での空気流の離脱が無くなり、風量−静圧特性の向上、ならびに騒音低減の効果がある。
【0030】
しかしながら、スリット6から空気流5を吸い込む際には、空気の粘性によるエネルギー損失が発生し、ファン駆動力が増加するために、送風装置の静圧効率が低下する傾向にある。
【0031】
図4は両方の特徴を取り入れた本実施例1の送風装置の場合を示している。
【0032】
図4に示したように環状壁2は、吸引側の翼先端とのクリアランスが実質広くなるように、内径を拡大させた第一領域と、羽根先端とクリアランスを小さくし、内周部と外周部を連通するスリット6を設けた第二領域とから構成されている。
【0033】
翼先端の吸引側では、元々翼先端漏れ渦7があまり大きく成長することはないため、この部分の内径を大きくし、より多くの空気を翼先端部から吸込むようにし、翼端漏れ渦が大きく成長する翼先端中間部以降に、スリット6を設けることにより、効果的に翼先端漏れ渦7が抑制され、ファン失速が抑制されトータルとしては性能が向上する。
【0034】
また、このスリット6を設けた部分についてはスリット各部の流入抵抗が全周にわたってほぼ等しくなるように、スリットの隙間の幅および、スリットの本数、あるいはそのいずれか一方を変化させることにより、環状壁外周形状の影響を打ち消し、翼にかかる周期的な負荷変動等を抑制し、特に騒音を低減する効果がある。
【0035】
本実施例では、環状壁の形状最適化のため、特に翼先端部とのクリアランスが実質広くなるように、内径を拡大させた、第一領域と、翼先端部とクリアランスを小さくし、内周部と外周部を連通するスリット6を設けた第二領域とを設けるとともに、この境界の翼先端に対する位置関係に着目し、実験によりこれらを最適化する条件を導き出した。
【0036】
図1(d)は試作を行った送風装置のX−X’断面詳細図である。図1(d)は内径を拡大させた第一領域と第二領域の境界をファン翼先端部の寸法tの吸引側から50%の位置に設定したもので、同様に20%から70%まで10%おきに変化させた送風装置を試作した。スリットについては、いずれもスリット本数2本でスリットの隙間の幅も同一寸法に設定した。
【0037】
図5から図7は、これらの送風装置を同一回転数で駆動した場合の特性を示している。
【0038】
図5は、これらの送風装置の風量−静圧特性である。図5に示したとおり、最大静圧付近の特性は大差ないものの、中低圧時の特性に大きな差が現れている。第一領域と第二領域の境界を風の吐出し方向に移動するに従い最大風量が大きくなる傾向にあるが、中圧時には50%前後を境として急激な風量の落ち込みが見られる。
【0039】
図6は、これらの送風装置の風量−ファン静圧効率特性である。図6に示したとおり、風量−ファン静圧効率曲線のピーク値、つまり最大効率は環状壁の第一領域と第二領域の境界が50%の位置にあるときが最大となった。境界が吸引側にある場合は、風量−静圧特性の落ち込み等もなく安定した効率を示すものの、同一回転数で回転駆動する際のファン駆動力が高いために全体的に効率が低くなってしまう。一方境界が吐出側にある場合は、風量−静圧特性の落ち込みにより極端に効率が下がる領域が存在し効率が低くなってしまう。
【0040】
図7は、環状壁の第一領域と第二領域の境界の位置とファンの最大効率の関係を表わしたグラフである。
【0041】
図7に示したとおり、環状壁の第一領域と第二領域の境界が50%の位置にあるときを頂点としてどちらに移動しても効率が低下する傾向が確認できる。
【0042】
なお、本実施例では、第一領域と第二領域の境界は、ファン翼先端部の寸法の吸引側から50%にしたときに効率が最大となったが、実際には羽根の形状等によりこのポイントは若干ながら前後する場合がある。したがって一般的には、この境界は、ファン翼先端部の寸法の吸引側から30%から60%の位置に設定することによりファンの最大静圧効率を高くすることができ、本実施例では最大静圧効率を約31%以上に向上することができる。
【0043】
なお更に望ましくは、環状壁の第一領域と第二領域の境界位置をファン翼先端部の寸法の吸引側から40%から60%の位置に設定することにより、図5で示すように風量−静圧特性において中風量領域での静圧の落ち込みのない特性とすることができる。しかも、図6で示すように、風量−静圧効率特性においても中風量領域での静圧効率の落ち込みの少ない特性とすることができ、より広い動作領域で静圧効率が優れた送風装置を提供できる。
【0044】
以上実施例1では環状壁2の吸引側には、羽根先端とのクリアランスが実質広くなるように、内径を拡大させたが、以下は別の方法で同様の効果が得られるようにした例を示す。
【0045】
(実施例2)
図8の(a)(b)(c)(d)は実施例2の送風装置の側面図と正面図、断面図およびX−X’断面詳細図を示す。
【0046】
図8の(d)に示すように、環状壁2に設けたスリット6a〜6dは、吸引側のスリット6aの隙間の幅を広く、吐出側のスリット6dの隙間の幅を狭く設定している。
【0047】
吸引側のスリット6aのように、スリットの隙間の幅を大きく設定すると、スリットによる空気流の整流作用が十分に得られなくなり、ファン失速の抑制効果が弱まるものの、吸引側のスリット6aの流入抵抗が小さくなるため、より多くの空気がこの吸引側のスリット6aから吸い込まれる。これにより環状壁の内径を大きくした場合と同じように翼先端部分からより多くの空気を吸い込むことができ、低圧時の風量が増加するとともに、吐出側の隙間の幅を小さく設定したスリット6dにより吸い込まれる整流された空気流によりファン失速を抑制できる。
【0048】
このような構成にすることにより、スリットの隙間の幅を、各部で最適な値に設定することにより、実施例1の場合と同様送風装置の特性を向上できる。
【0049】
(実施例3)
図9の(a)(b)(c)(d)は実施例3の送風装置の側面図と正面図、断面図およびX−X’断面詳細図を示す。
【0050】
図9の(d)に示すように、環状壁2に設けたスリット6a〜6dの隙間の幅は全て等しいものの、吸引側のスリット6a、6bの間隔は狭く、吐出側のスリット6c、6dの間隔は広く設定している。
【0051】
吸引側のスリット6a、6bのように、スリットの間隔を狭く設定すると、スリット一つ一つの流入抵抗は変わらないものの、全体としての流入抵抗が小さく収まる。吸引側のスリットの流入抵抗が小さくなるため、より多くの空気をこの吸引側のスリットから吸い込むようになり、実施例2とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0052】
(実施例4)
なお、上記実施例2および実施例3はスリットの隙間またはスリットの間隔の一方のみを変化させた場合を示しているが、図10に示すようにスリットの隙間の幅とスリットの間隔の両方を同時に変化させることもできる。この場合は、各部の流入抵抗の設計自由度が向上し、より特性の優れた送風装置が設計できることはいうまでもない。
【0053】
更に、実施例1のように環状壁の吸引側の内径を大きくしようとすると、図1に示したように部分的に内径を大きくするか、あるいは、送風装置全体のサイズを大きくする必要があるが、前者の場合は、形状が不均一になることにより翼に周期的な負荷変動が生じ、翼の振動等を起こし易く、騒音増加の原因となり、後者の場合は送風装置の大型化の原因となる。
【0054】
一方、実施例2、実施例3のようにスリットのみで構成した場合は、環状壁の半径方向長さに合わせてスリットの隙間の幅およびスリットの本数、またはそのいずれか一方を変化させることにより、各部の流入抵抗をほぼ等しく設定することができ、スリットから環状壁内部に流入する空気の流量を全周にわたってほぼ等しくできるために、環状壁外周形状の影響を打ち消し、環状壁外周形状によらず優れた性能を維持できるという特徴がある。
【0055】
また、上記の送風装置を機器に組み込んで使用することにより、送風能力が高い分、ファンの回転数を下げて使用することにより、機器の消費電力の低減、あるいは静音化等の効果が得られる。または、消費電力を合わせた場合は、機器の冷却性能の向上等の効果が得られる。
【0056】
【発明の効果】
上記実施例の記載から明らかなように、本発明によれば、翼先端部分からより多くの空気を取り込むとともに、スリットから流入した空気流によりファン失速を効果的に抑制し、送風装置の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の実施例1の送風装置の側面図
(b)同実施例の正面図
(c)同実施例の断面図
(d)同実施例のX−X’断面詳細図
【図2】同実施例の送風装置の空気の流れを示した説明図
【図3】同実施例の送風装置の空気の流れを示した説明図
【図4】同実施例の送風装置の空気の流れを示した説明図
【図5】同実施例の試作送風装置の風量−静圧特性図
【図6】同実施例の試作送風装置の風量−ファン静圧効率特性図
【図7】同実施例の試作送風装置の風量−ファン静圧効率特性図
【図8】(a)本発明の実施例2の送風装置の側面図
(b)同実施例の正面図
(c)同実施例の断面図
(d)同実施例のX−X’断面詳細図
【図9】(a)本発明の実施例3の送風装置の側面図
(b)同実施例の正面図
(c)同実施例の断面図
(d)同実施例のX−X’断面詳細図
【図10】(a)本発明の実施例4の送風装置の側面図
(b)同実施例の正面図
(c)同実施例の断面図
(d)同実施例のX−X’断面詳細図
【図11】従来の軸流形送風装置の断面図
【図12】(a)先行技術(特願平9−359593号記載)の送風装置の側面図
(b)同先行技術の正面図
(c)同先行技術の断面図
(d)同先行技術のX−X’断面詳細図
【図13】先行技術(特願平9−359593号記載)の送風装置の特性図
【符号の説明】
1 ファン
2 環状壁
3 モータ部
4 軸
5 空気流
6、6a、6b、6c、6d スリット
7 翼先端漏れ渦
8 乱流渦
9 ファン回転方向
Claims (2)
- ファンの翼先端から間隔をあけて環状壁を形成し、前記環状壁には前記の翼先端と対向する部分に環状壁の内周部と外周部を連通するスリットを形成し、ファンの回転に伴って前記スリットから空気を環状壁の内周部に吸い込む送風装置であって、
前記環状壁に設けたスリットは、吸引側のスリットの隙間の幅を広く、吐出側のスリットの隙間の幅を狭く設定したことを特徴とする送風装置。 - ファンの翼先端から間隔をあけて環状壁を形成し、前記環状壁には前記の翼先端と対向する部分に環状壁の内周部と外周部を連通するスリットを形成し、ファンの回転に伴って前記スリットから空気を環状壁の内周部に吸い込む送風装置であって、
前記環状壁に設けたスリットは、吸引側のスリットの間隔を狭く、吐出側のスリットの間隔を広く設定したことを特徴とする送風装置。
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