JP4284510B2 - 重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆立方晶窒化硼素基焼結材料製切削工具 - Google Patents

重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆立方晶窒化硼素基焼結材料製切削工具 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、硬質被覆層がすぐれた高温強度を有し、かつ高温硬さと耐熱性、さらに高温耐酸化性にもすぐれ、したがって特に各種の鋼や鋳鉄などの切削加工を、高負荷のかかる高切り込みや高送りなどの重切削条件で行なった場合にも、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆立方晶窒化硼素基焼結材料製切削工具(以下、被覆BN基工具という)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、被覆BN基工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップや、前記スローアウエイチップを着脱自在に取り付けて、面削加工や溝加工、さらに肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミルなどが知られている。
【0003】
また、被覆BN基工具として、すぐれた高温硬さおよび耐熱性を具備する反面、高温強度の低いものであるために、切削速度は高いが、切り込みや送りを著しく小さくした条件の高速表面仕上げ加工にしか用いられていなかった立方晶窒化硼素基焼結材料からなる切削工具を基体(以下、BN基基体という)とし、このBN基基体の表面に、切削工具自体の強度向上を図る目的で、
組成式:(Ti1−X Al)N(ただし、原子比で、Xは0.45〜0.65を示す)、
を満足するTiとAlの複合窒化物[以下、(Ti,Al)Nで示す]からなる硬質被覆層を0.5〜10μmの平均層厚で物理蒸着して、各種の鋼や鋳鉄などの連続切削加工や断続切削加工を行なっても、切刃部に欠けやチッピング(微小欠け)などが発生しないようにした被覆BN基工具が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
さらに、上記の被覆BN基工具が、例えば図2に概略説明図で示される物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレーティング装置に上記のBN基基体を装入し、ヒータで装置内を、例えば505℃の温度に加熱した状態で、アノード電極と所定組成を有するTi−Al合金がセットされたカソード電極(蒸発源)との間に、例えば電流:145Aの条件でアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して、例えば2Paの反応雰囲気とし、一方上記BN基基体には、例えば−95Vのバイアス電圧を印加した条件で、前記BN基基体の表面に、上記(Ti,Al)N層からなる硬質被覆層を蒸着することにより製造されることも知られている。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−119774号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
近年の切削加工装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は高切り込みや高送りなどの重切削条件で行なわれる傾向にあるが、上記の従来被覆BN基工具においては、これを通常の切削加工条件で用いた場合には問題はないが、切削加工を、高負荷なかかる高切り込みや高送りなどの重切削条件で行なった場合には、特に硬質被覆層の高温強度不足が原因で切刃部にチッピング(微小割れ)が発生し易くなることから、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、特に鋼や鋳鉄などの重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆BN基工具を開発すべく、上記の従来被覆BN基工具を構成する硬質被覆層に着目し、研究を行った結果、
(a)上記の図2に示されるアークイオンプレーティング装置を用いて形成された従来被覆BN基工具の硬質被覆層を構成する(Ti,Al)N層は、層厚全体に亘って実質的に均一な組成を有し、したがって均質な高温硬さと耐熱性、および高温強度を有するが、例えば図1(a)に概略平面図で、同(b)に概略正面図で示される構造のアークイオンプレーティング装置、すなわち装置中央部にBN基基体装着用回転テーブルを設け、前記回転テーブルを挟んで、一方側に相対的にAl含有割合の高いTi−Al−B合金、他方側に相対的にAl含有割合の低いTi−Al−B合金をカソード電極(蒸発源)として対向配置したアークイオンプレーティング装置を用い、この装置の前記回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に、外周部に沿って複数のBN基基体をリング状に装着し、この状態で装置内雰囲気を窒素雰囲気として前記回転テーブルを回転させると共に、蒸着形成される硬質被覆層の層厚均一化を図る目的でBN基基体自体も自転させながら、前記の両側のカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間にアーク放電を発生させて、前記BN基基体の表面にTiとAlとB(ボロン)の複合窒化物[以下、(Ti,Al,B)Nで示す]からなる硬質被覆層を形成すると、この結果の(Ti,Al,B)N層においては、回転テーブル上にリング状に配置された前記BN基基体が上記の一方側の相対的にAl含有割合の高いTi−Al−B合金のカソード電極(蒸発源)に最も接近した時点で層中にAl最高含有点が形成され、また前記BN基基体が上記の他方側の相対的にAl含有割合の低いTi−Al−B合金のカソード電極に最も接近した時点で層中にAl最低含有点が形成され、上記回転テーブルの回転によって層中には層厚方向にそって前記Al最高含有点とAl最低含有点が所定間隔をもって交互に繰り返し現れると共に、前記Al最高含有点から前記Al最低含有点、前記Al最低含有点から前記Al最高含有点へTiおよびAlの含有割合がそれぞれ連続的に変化する成分濃度分布構造をもつようになること。
【0008】
(b)上記(a)の繰り返し連続変化成分濃度分布構造の(Ti,Al,B)N層において、例えば対向配置のカソード電極(蒸発源)のそれぞれの組成を調製すると共に、BN基基体が装着されている回転テーブルの回転速度を制御して、
上記Al最高含有点が、
組成式:[Ti1−(X+Z) Al]N(ただし、原子比で、Xは0.45〜0.65、Zは0.002〜0.10を示す)、
上記Al最低含有点が、
組成式:[Ti1−(Y+Z) Al]N(ただし、原子比で、Yは0.10〜0.35、Zは0.002〜0.10を示す)、
をそれぞれ満足し、かつ隣り合う上記Al最高含有点とAl最低含有点の厚さ方向の間隔を0.01〜0.1μmとすると、
上記Al最高含有点部分では、高温硬さおよび耐熱性向上効果を有するAlの含有割合が上記の従来(Ti,Al)N層におけるAlの含有割合と同等のものとなるので、前記従来(Ti,Al)N層のもつ高温硬さおよび耐熱性と同等のすぐれた高温硬さと耐熱性を有し、一方上記Al最低含有点部分では、前記Al最高含有点部分に比してAl含有割合が低く、Ti含有割合の高いものとなるので、相対的にきわめて高い高温強度が確保され、さらにこの場合B含有によって硬質被覆層全体の高温耐酸化性が向上し、これが耐摩耗性向上に寄与し、かつこれらAl最高含有点とAl最低含有点の間隔をきわめて小さくしたことから、層全体の特性として、上記従来(Ti,Al)N層と同等のすぐれた高温硬さおよび耐熱性を具備した状態で、Bの作用ですぐれた高温耐酸化性を有し、かつ前記従来(Ti,Al)N層より一段と高い高温強度を具備するようになり、したがって、硬質被覆層がかかる構成の(Ti,Al,B)N層からなる被覆BN基工具は、特に各種の鋼や鋳鉄などの切削加工を、高負荷のかかる高切り込みや高送りなどの重切削条件で行なった場合にも、硬質被覆層がチッピングの発生なく、すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するようになること。
以上(a)および(b)に示される研究結果を得たのである。
【0009】
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、装置中央部にBN基基体装着用回転テーブルを設け、前記回転テーブルを挟んで、一方側にAl最高含有点形成用Ti−Al−B合金、他方側にAl最低含有点形成用Ti−Al−B合金をカソード電極(蒸発源)として対向配置したアークイオンプレーティング装置を用い、この装置の前記回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に、外周部に沿って複数の前記BN基基体をリング状に装着し、この状態で装置内雰囲気を窒素雰囲気として前記回転テーブルを回転させると共に、前記BN基基体自体も自転させながら、前記の両側のカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間にアーク放電を発生させて、前記BN基基体の表面に、(Ti,Al,B)Nからなる硬質被覆層を0.5〜10μmの平均層厚で蒸着してなる被覆BN基工具にして
上記硬質被覆層が、層厚方向にそって、Al最高含有点とAl最低含有点とが所定間隔をおいて交互に繰り返し存在し、かつ前記Al最高含有点から前記Al最低含有点、前記Al最低含有点から前記Al最高含有点へTiおよびAlの含有割合がそれぞれ連続的に変化する成分濃度分布構造を有し、
さらに、上記Al最高含有点が、
組成式:[Ti1−(X+Z)Al]N(ただし、原子比で、Xは0.45〜0.65、Zは0.002〜0.10を示す)、
上記Al最低含有点が、
組成式:[Ti1−(Y+Z)Al]N(ただし、原子比で、Yは0.10〜0.35、Zは0.002〜0.10を示す)、
をそれぞれ満足し、かつ隣り合う上記Al最高含有点とAl最低含有点の間隔が、0.01〜0.1μmである、
重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆BN基工具に特徴を有するものである。
【0010】
つぎに、この発明の被覆BN基工具において、これを構成する硬質被覆層の構成を上記の通りに限定した理由を説明する。
(a)Al最高含有点の組成
(Ti,Al,B)N層において、上記の通りTiは高温強度を向上させ、Alは高温硬さおよび耐熱性を向上させ、さらにBは高温耐酸化性を向上させる作用を有するものであり、したがってAl成分の含有割合が上記の従来(Ti,Al)N層におけるそれと同等なので、Al最高含有点では上記の従来(Ti,Al)N層と同等のすぐれた高温硬さおよび耐熱性を有するが、Alの含有割合を示すX値がTiとBの合量に占める割合(原子比、以下同じ)で0.45未満では所望の高温硬さおよび耐熱性を確保することができず、摩耗の進行が速くなり、一方前記X値が同じく0.65を越えて高くなると、高い高温強度を有するAl最低含有点が隣接して存在しても層自体の高温強度の低下は避けられず、この結果チッピングなどが発生し易くなることから、X値を0.45〜0.65と定めた。
また、Bの含有割合を示すZ値がTiとAlの合量に占める割合が0.002未満では所望の高温耐酸化性向上効果が得られず、硬質被覆層の摩耗進行抑制作用が不十分であり、一方前記Z値が0.10を越えると高温強度が急激に低下するようになることから、Al最高含有点におけるZ値を0.002〜0.10と定めた。
【0011】
(b)Al最低含有点の組成
上記の通りAl最高含有点は相対的に高い高温硬さおよび耐熱性を有するが、反面高温強度の劣るものであるため、このAl最高含有点の高温強度不足を補う目的で、Alに比して相対的にTiの含有割合を高くして、高温強度を一段と向上せしめたAl最低含有点を厚さ方向に交互に介在させ、高負荷のかかる重切削条件でもチッピングなどの発生が起らないようにするものであるが、Alの含有割合を示すY値がTiとBの合量に占める割合で0.10未満になると、Al最低含有点の高温硬さおよび耐熱性が低くなり過ぎ、これが摩耗促進の原因となり、一方前記Y値が0.35を越えると、高温強度が急激に低下し、切刃部にチッピングが発生し易くなることから、Y値を0.10〜0.35と定めた。
さらに、Bの含有割合を示すZ値を0.002〜0.10としたのは、上記のAl最高含有点におけると同じ理由によるものである。
【0012】
(c)Al最高含有点とAl最低含有点間の間隔
その間隔が0.01μm未満ではそれぞれの点を上記の組成で明確に形成することが困難であり、この結果層に所望の高温硬さと耐熱性、さらにすぐれた高温強度を確保することができなくなり、またその間隔が0.1μmを越えるとそれぞれの点がもつ欠点、すなわちAl最高含有点であれば高温強度不足、Al最低含有点であれば高温硬さおよび耐熱性不足が層内に局部的に現れ、これが原因で切刃にチッピングが発生し易くなったり、摩耗が促進されるようになることから、その間隔を0.01〜0.1μmと定めた。
【0013】
(d)硬質被覆層の平均層厚
その平均層厚が0.5μm未満では、所望の耐摩耗性を確保することができず、一方その平均層厚が10μmを越えると、切刃部ににチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を0.5〜10μmと定めた。
【0014】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明の被覆BN基工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも0.5〜4μmの範囲内の平均粒径を有する立方晶窒化硼素(以下、c−BNで示す)粉末、炭化チタン(以下、TiCで示す)粉末、窒化チタン(以下、TiNで示す)粉末、炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)粉末、炭化タングステン(以下、WCで示す)粉末、Al粉末、Co粉末、TiとAlの金属間化合物粉末であるTi3Al粉末、TiAl粉末、およびTiAl3粉末、さらに組成式:Ti2AlNを有する複合金属窒化物粉末、硼化チタン(以下、TiB2で示す)粉末、窒化アルミニウム(以下、AlNで示す)粉末、硼化アルミニウム(以下、AlB2で示す)粉末、酸化アルミニウム(Al23で示す)粉末を用意し、これら原料粉末を表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで80時間湿式混合し、乾燥した後、120MPaの圧力で直径:50mm×厚さ:1.5mmの寸法をもった圧粉体にプレス成形し、ついでこの圧粉体を、圧力:1Paの真空雰囲気中、900〜1300℃の範囲内の所定温度に60分間保持の条件で焼結して切刃片用予備焼結体とし、この予備焼結体を、別途用意した、Co:8質量%、WC:残りの組成、並びに直径:50mm×厚さ:2mmの寸法をもったWC基超硬合金製支持片と重ね合わせた状態で、通常の超高圧焼結装置に装入し、通常の条件である圧力:5GPa、温度:1200〜1400℃の範囲内の所定温度に保持時間:0.6時間の条件で超高圧焼結し、焼結後上下面をダイヤモンド砥石を用いて研摩し、ワイヤー放電加工装置にて一辺3mmの正三角形状に分割し、さらにCo:5質量%、TaC:5質量%、WC:残りの組成およびCIS規格SNGA120412の形状(厚さ:4.76mm×一辺長さ:12.7mmの正三角形)をもったWC基超硬合金製チップ本体のろう付け部(コーナー部)に、質量%で、Cu:30%、Zn:28%、Ni:2%、Ag:残りからなる組成を有するAg合金のろう材を用いてろう付けし、所定寸法に外周加工した後、切刃部に幅:0.15mm、角度:25°のホーニング加工を施し、さらに仕上げ研摩を施すことによりISO規格SNGA120412のチップ形状をもったBN基基体A〜Pをそれぞれ製造した。
【0015】
ついで、上記のBN基基体A〜Pのそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示されるアークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に、外周部に沿って所定間隔をもって設けた多段回転支持板上に載置し、一方側のカソード電極(蒸発源)として、種々の成分組成をもったAl最低含有点形成用Ti−Al−B合金、他方側のカソード電極(蒸発源)として、種々の成分組成をもったAl最高含有点形成用Ti−Al−B合金を前記回転テーブルを挟んで対向配置し、まず装置内を排気して0.5Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を420℃に加熱した後、Arガスを導入して1.5PaのArガス雰囲気とし、前記回転テーブル上で自転しながら回転するBN基基体に−820Vの直流バイアス電圧を印加して、前記BN基基体表面をArボンバード洗浄し、ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転するBN基基体に−25Vの直流バイアス電圧を印加して、それぞれのカソード電極(前記Al最低含有点形成用Ti−Al−B合金およびAl最高含有点形成用Ti−Al−B合金)とアノード電極との間に125Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記BN基基体の表面に、層厚方向に沿って表2,3に示される目標組成のAl最低含有点とAl最高含有点とが交互に同じく表2,3に示される目標間隔で繰り返し存在し、かつ前記Al最高含有点から前記Al最低含有点、前記Al最低含有点から前記Al最高含有点へAlおよびTiの含有割合が連続的に変化する成分濃度分布構造を有し、かつ同じく表2,3に示される目標層厚の硬質被覆層を蒸着形成することにより、本発明被覆BN基工具1〜16をそれぞれ製造した。
【0016】
また、比較の目的で、上記のBN基チップ基体A〜Pの表面への硬質被覆層の形成を、図2に示される通常のアークイオンプレーティング装置を用い、カソード電極(蒸発源)として種々の成分組成をもったTi−Al合金およびTi−Al−B合金をそれぞれ装着し、装置内を排気して0.5Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、Arガスを装置内に導入して2.5PaのAr雰囲気とし、この状態でBN基基体に−800Vのバイアス電圧を印加してBN基基体表面をArガスボンバード洗浄し、ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して3.5Paの反応雰囲気とすると共に、前記BN基基体に印加するバイアス電圧を−80Vに下げて、前記カソード電極とアノード電極との間にアーク放電を発生させる条件にて行なって、前記BN基基体A〜Pのそれぞれの表面に、表4,5に示される目標組成および目標層厚を有し、かつ上記の従来被覆BN基工具を構成する硬質被覆層に相当する(Ti,Al)N層、すなわち層厚方向に沿って実質的に組成変化のない(Ti,Al)N層、および同じく層厚方向に沿って実質的に組成変化のない(Ti,Al,B)N層からなる硬質被覆層を蒸着形成する以外は、上記の本発明被覆BN基工具1〜16の製造条件と同じ条件で比較被覆BN基工具1〜16をそれぞれ製造した。
【0017】
つぎに、上記本発明被覆BN基工具1〜16および比較被覆BN基工具1〜16について、これを工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SCM435の浸炭焼入れ丸棒(表面硬さ:HRC58)、
切削速度:130m/min.、
切り込み:0.53mm、
送り:0.07mm/rev.、
切削時間:20分、
の条件での浸炭焼入れ合金鋼の乾式連続高切り込み切削加工試験(通常の切り込み量は0.10mm)、
被削材:JIS・S22Cの高周波焼入れ丸棒(表面硬さ:HRC54)、
切削速度:135m/min.、
切り込み:0.11mm、
送り:0.55mm/rev.、
切削時間:20分、
の条件での高周波焼入れ炭素鋼の乾式連続高送り切削加工試験(通常の送り量は0.10mm/rev.)、さらに、
被削材:JIS・FC250の丸棒、
切削速度:590m/min.、
切り込み:0.62mm、
送り:0.15mm/rev.、
切削時間:30分、
の条件での鋳鉄の乾式連続高切り込み切削加工試験(通常の切り込み量は0.20mm)を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表2〜5に示した。
【0018】
【表1】
Figure 0004284510
【0019】
【表2】
Figure 0004284510
【0020】
【表3】
Figure 0004284510
【0021】
【表4】
Figure 0004284510
【0022】
【表5】
Figure 0004284510
【0023】
この結果得られた本発明被覆BN基工具1〜16を構成する硬質被覆層におけるAl最高含有点とAl最低含有点の組成、並びに比較被覆BN基工具1〜16の硬質被覆層の組成について、厚さ方向に沿ってTi、Al、およびB成分の含有量をオージェ分光分析装置を用いて測定したところ、本発明被覆BN基工具1〜16の硬質被覆層では、Al最高含有点とAl最低含有点とがそれぞれ目標値と実質的に同じ組成および間隔で交互に繰り返し存在し、かつ前記Al最高含有点から前記Al最低含有点、前記Al最低含有点から前記Al最高含有点へTiおよびAl成分の含有割合がそれぞれ連続的に変化する成分濃度分布構造を有することが確認され、また硬質被覆層の平均層厚も目標層厚と実質的に同じ値を示した。
一方前記比較被覆BN基工具1〜16の硬質被覆層では厚さ方向に沿って組成変化が見られず、かつ目標組成と実質的に同じ組成および目標層厚と実質的に同じ平均層厚を示すことが確認された。
【0024】
【発明の効果】
表2〜5に示される結果から、硬質被覆層が層厚方向にAl最低含有点とAl最高含有点とが交互に所定間隔をおいて繰り返し存在し、かつ前記Al最高含有点から前記Al最低含有点、前記Al最低含有点から前記Al最高含有点へAlおよびTiの含有割合がそれぞれ連続的に変化する成分濃度分布構造を有する本発明被覆BN基工具は、いずれも各種の鋼や鋳鉄などの切削加工を、高負荷のかかる高切り込みや高送りなどの重切削条件で行なった場合にも、切刃部にチッピングの発生なく、すぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、硬質被覆層が層厚方向に沿って実質的に組成変化のない(Ti,Al)N層または(Ti,Al,B)N層からなる比較被覆BN基工具においては、前記硬質被覆層が高温硬さと耐熱性を有するものの、十分な高温強度を具備するものでないために、チッピングが発生し、これが原因で比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆BN基工具は、通常の条件での切削加工は勿論のこと、特に各種の鋼や鋳鉄などの切削加工を重切削条件で行なった場合にも、すぐれた耐チッピング性を発揮し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を示すものであるから、切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の被覆BN基工具を構成する硬質被覆層を形成するのに用いたアークイオンプレーティング装置を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略正面図である。
【図2】比較被覆BN基工具を構成する硬質被覆層を形成するのに用いた通常のアークイオンプレーティング装置の概略説明図である。

Claims (1)

  1. 装置中央部に立方晶窒化硼素基焼結材料基体装着用回転テーブルを設け、前記回転テーブルを挟んで、一方側にAl最高含有点形成用Ti−Al−B合金、他方側にAl最低含有点形成用Ti−Al−B合金をカソード電極(蒸発源)として対向配置したアークイオンプレーティング装置を用い、この装置の前記回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に、外周部に沿って複数の前記基体をリング状に装着し、この状態で装置内雰囲気を窒素雰囲気として前記回転テーブルを回転させると共に、前記基体自体も自転させながら、前記の両側のカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間にアーク放電を発生させて、前記基体の表面に、TiとAlとB(ボロン)の複合窒化物層からなる硬質被覆層を0.5〜10μmの平均層厚で蒸着してなる表面被覆立方晶窒化硼素基焼結材料製切削工具にして
    上記硬質被覆層が、層厚方向にそって、Al最高含有点とAl最低含有点とが所定間隔をおいて交互に繰り返し存在し、かつ前記Al最高含有点から前記Al最低含有点、前記Al最低含有点から前記Al最高含有点へTiおよびAlの含有割合がそれぞれ連続的に変化する成分濃度分布構造を有し、
    さらに、上記Al最高含有点が、
    組成式:[Ti1−(X+Z)Al]N(ただし、原子比で、Xは0.45〜0.65、Zは0.002〜0.10を示す)、
    上記Al最低含有点が、
    組成式:[Ti1−(Y+Z)Al]N(ただし、原子比で、Yは0.10〜0.35、Zは0.002〜0.10を示す)、
    をそれぞれ満足し、かつ隣り合う上記Al最高含有点とAl最低含有点の間隔が、0.01〜0.1μmであること、
    を特徴とする重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆立方晶窒化硼素基焼結材料製切削工具。
JP2003189308A 2003-07-01 2003-07-01 重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆立方晶窒化硼素基焼結材料製切削工具 Expired - Lifetime JP4284510B2 (ja)

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