JP4283905B2 - 血小板の安定化方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機能的に活性な血小板プレパレーション、および凍結乾燥によってこれらの機能的に活性な血小板を安定化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
機能的に活性な血小板は、診断および治療の両者に関連して価値がある。機能的に活性な血小板プレパレーションを用いる態様の一例には、血小板機能の診断のための対照材料としてのプレパレーションの使用がある。血小板凝集測定法はこの診断に最も重要な役割を果たしている。この診断は、一般に富血小板血漿として存在する新鮮な血小板の、様々な凝集促進剤、とくにADP、アドレナリン、アラキドン酸、コラーゲンおよびトロンビンに対する反応性の測定を包含する。反応は通常、既知の濁度測定法を用いて測定される。凝集誘発剤(アドレナリンを除く)はまず最初に、細胞の形状に変化をもたらし、この変化は吸光度の一過性の上昇によって認知可能である。ついで凝集が起こる。二相性の凝集曲線を生じることが多い。第二相は放出反応およびプロスタグランジンの合成に密接に関連する。アラキドン酸およびコラーゲンは不可逆性の凝集の表現として単相性の凝集曲線しか誘発しない。
【0003】
血小板機能の検討は今日では、合理化と正確さのために広範囲に自動化されている。結果の評価には品質管理戦略が絶対的に必要である。この診断を管理するために選択できることは、従来「正常」ドナーからのサンプルのプールの使用しかなかった[Abernathyら(1978) Throm. Haemostas. 39, p.246]。臨床検査室でこの管理材料を準備するには、莫大な努力と経費がかかりすぎる。確定された一定の性質を有し、安定で機能的に活性な血小板プレパレーションが血小板機能の管理には望ましいが、このようなプレパレーションはこれまでなかった。
【0004】
安定で機能的に活性な血小板の使用の他の態様には、血小板が試剤の一つとして用いられる診断試験法におけるそれらの使用がある。このような方法の一例としては、ヘパリン関連血小板減少症(HAT)の診断のための試験がある。これは稀(約5%)ではあるが、ヘパリンによる抗血栓療法における重大な併発症である。非免疫型(HAT I)は、免疫によって決定される型(HAT II)とは区別される。医薬により誘発され、一般に出血の併発症を惹起する他の血小板減少症の場合とは異なり、HATは大血管の閉塞にまで及ぶ血栓塞栓症の併発を生じる。II型HATの早期診断には様々な診断アプローチが使用される。初期の予備的試験である血小板の計数や標準方法としてのセロトニン放出試験は別として、ヘパリン誘発血小板凝集(HIPA)の試験は、感度および特異性の点で標準方法に近く、とくに適している[Greinacherら (1991) Thromb. Haemostas. 66 (6), 734;Greinacherら(1994) Transfusion 34, p.381]。この試験は患者の血漿が健康なドナーからの血小板を適当な条件(低ヘパリン濃度)下に凝集させることができるかどうかを検討する。数例の健康なドナーから富血小板血漿をプールする必要がある血小板の準備は、臨床検査室にとっては経費と時間がかかりすぎて、この試験を臨床検査室の定常検査に導入することをこれまで阻んできた。適当な条件下に凝集できる程度までの機能的活性をまだ維持している安定な血小板プレパレーションがあれば、この試験の実施は実質的に単純化され、加速される筈である。
【0005】
治療的には、血小板濃縮物は様々な原因による血小板の機能障害の処置に使用できる。血小板濃度70,000/μl未満は血小板減少症と呼ばれる。血小板減少症は、血小板の不十分な産生、これらの細胞の分解の促進、または血小板の異常な分布のいずれかによって起こる[Colmanら(1987) Haemostasis and Thrombosis(J.B.Lipincott. Co.) 2版, 28章]。原理的には、不適切な血小板機能は遺伝的に決定される(たとえば、グランツマン血小板無力症またはベルナール・スリエ症候群)か、または後天的に獲得される(たとえば、悪性疾患、化学療法または播種性血管内凝固症候群に伴う骨髄不全)。多くの薬物、医薬および電離放射線が後天的な血小板減少症を招来し得る。
【0006】
血小板減少症に冒されている患者には血友病に類似する出血傾向がある。一般に、出血は毛細血管から起こり、典型的な例は粘膜への比較的軽度の出血である(点状出血)。正常の場合は、毛細血管に対する軽度の傷害は血小板の凝集によって閉鎖される。
【0007】
現在、血小板数の低い患者は濃厚血小板の輸血によって処置される。これらの濃縮物は通常、血漿約50ml中に6×1010個の血小板を含有する。これらは、抗凝固剤処理された血液を段階的に遠心分離し、沈降血小板を再度血漿に取って調製される。別法として、濃厚血小板は、血液から血小板を直接分離する血液成分分離装置を用いて調製することができる。適当な条件(室温)下に、濃厚血小板は7日まで保存できる。保存時には、濃縮物を含む袋は絶えず運動させていなければならない。濃厚血小板をさらに長期間保存できることは望ましいが、これはこれまで達成されていない。
【0008】
診断または治療の目的での濃厚血小板の耐久性を増大させるために可能な第一の戦略は、血小板を活性化する特定の機構のスイッチを切ることである。これは血小板がそれらの濃縮および保存過程によって早期に活性化されて含有成分を分泌し凝集しないことの保証を意図するものである。この種の様々な戦略が文献に記載されている。これらの戦略は、特定の洗浄操作から特異的阻害剤の添加にまで及んでいる。たとえば、
−血小板凝集のアクティベーターであるカルシウムは、たとえばEDTAのようなキレート剤により錯体として封鎖できる。
−アクティベーターADPは酵素アピラーゼの添加により完全にAMPに分解することができる。
−血小板の活性化に寄与すると考えられる血漿因子は血小板の洗浄によって除去できる。
−トロンビンはヒルジンまたはヘパリン/アンチトロンビンIIIの添加によって阻害できる。
−プロスタサイクリン(PGI2)の添加は細胞のアデニレートシクラーゼを刺激することにより血小板の凝集を防止する。
−アスピリンまたはインドメタシンは、血小板のシクロオキシゲナーゼを阻害し、それによってトロンボキサンの合成経路を不可逆的に遮断する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実際上、阻害剤の添加は血小板を不可逆的に損傷するかまたはそれらの機能を強力に阻害することが見出されている。これらの細胞を、それらの機能を有意に損なうことなく穏和な様式で安定化する方法が必要とされる。
【0010】
安定化方法は、血小板がその全過程を通じてある程度の機能活性を維持することを保証するものでなければならない。これは濃縮物の調製および安定化時に、たとえば、血小板が形状を変えないこと、アクティベーターを分泌しないこと、および凝集しないことの保証を包含する。安定な血小板プレパレーションでは、血小板は大部分が平円盤状の形状を有する個々の細胞として存在しなければならない。その機能活性には、ある種の細胞小器官(たとえば、a−顆粒)の保持、および分子レベルで、細胞表面のある種の受容体、たとえばフォンビルブラント因子の受容体として働く糖タンパク質Ib/IXまたはフィブリノーゲンの受容体として働く糖タンパク質IIb/IIIaの維持が必須条件である。さらに、受容体へのリガンドの結合に応答してメッセンジャー物質を放出しまた生理的過程たとえばa−顆粒からの分泌を始動する代謝経路が、無傷に維持されていることを必要とする。
【0011】
凍結乾燥により安定化された血小板は既に記載されているが、これらの血小板はフォンビルブラント因子による活性化に対して適切に反応するのみである。
【0012】
したがって、本発明は、上述の要求に合致する血小板プレパレーションを利用可能にすることを目的とするものであった。
【0013】
【課題を解決するための手段】
個々の細胞として存在し、機能的に活性な血小板が、驚くべきことに、特定の阻害剤または安定化剤の添加後に凍結乾燥することによって得られることが見出された。
【0014】
本発明の意味において、「機能的に活性」の語は、安定化され再構築された血小板が、以下の物質の添加に対して、少なくとも血小板特異的物質の分泌、それらの幾何学的形状の変化、凝集または細胞集合によって反応することを意味する。
【0015】
上述の添加物質は、ADP、カルシウム、コラーゲン、アラキドン酸、トロンビン、血小板の構成成分に対する抗体、および血液凝固カスケードからの血小板アクティベーターである。血小板はまた、このリストからの個々の物質またはそれらの選ばれた組合せに特異的に反応することが好ましい。血小板はヘパリンの添加に反応することがとくに好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
したがって、本発明は、最初にまず血液を採血し、抗血液凝固剤と混合することによる機能的に活性な血小板を得る方法に関する。この関連で適当な抗血液凝固剤は、一般に用いられている抗血液凝固剤たとえばクエン酸塩またはEDTAであり、これらは通例用いられる濃度で使用される。好ましい様式においては、阻害剤は採血メジウム中に包含される。たとえば、トロンビン阻害剤を、血液中で形成できるすべてのトロンビンが確実に阻害される濃度で包含させることが有利である。ヒルジンを最終濃度1単位/ml〜10単位/mlで使用することがとくに有利である。また、血小板機能阻害剤を包含させることも可能である。上述の血小板機能の特異的な阻害剤に加えて、驚くべきことに物質ヒドロキシクロロキン硫酸塩が血小板機能の阻害剤としての使用に適している。クロロキンおよびヒドロキシクロロキンは抗マラリヤ剤として知られている。これらは細胞膜を完全に通過できる陽イオン型両親媒性薬物である。ミリモル濃度のヒドロキシクロロキン硫酸塩、好ましくは0.1〜5g/リットル、とくに好ましくは5g/リットルが血小板の安定化に適している。
【0017】
血小板は、抗血液凝固剤処理された血液から、たとえば本技術分野の熟練者には既知の方法を用い、連続遠心分離により分離される。最初の工程では遠心分離はたとえば、3000×gで45分間行われる。血小板をバッフィーコートから分離して得、抗血液凝固剤の緩衝溶液中に取る。この材料を200×gで20分間遠心分離して他の血液細胞と分離する。血小板は上清を形成する。
【0018】
これらの血小板をついで、過剰の洗浄緩衝液で数回洗浄する。洗浄緩衝液は抗血液凝固剤、緩衝物質および安定化剤を含有する。適当な抗血液凝固剤の例にはEDTAまたはクエン酸塩がある。緩衝もクエン酸で行うことができるし、また他の緩衝系(HEPESまたはリン酸塩)を使用することもできる。洗浄緩衝液は好ましくは以下の組成:クエン酸ナトリウム32.2g/リットル、ヒドロキシクロロキン硫酸塩5g/リットル、pH7.4とすることができる。
【0019】
ついで、血小板懸濁液に凍結乾燥のためのケーキ形成剤をさらに加える。多糖たとえばマンニトール、またはタンパク質たとえばポリゲリンもしくは血清アルブミンが有利である。好ましくは血清アルブミンを最終濃度0.1〜100g/リットル、さらに好ましくは10〜70g/リットル、とくに好ましくは50g/リットルで使用される。
【0020】
最終的に、血小板は104/μl〜108/μl、好ましくは107/μlの濃度に調整される。
【0021】
血小板は、室温(10〜40℃、好ましくは20〜25℃)で5〜60分、好ましくは10〜40分、とくに好ましくは約30分インキュベートするのが有利で、ついで残留水分含量0%〜10%、好ましくは約3%が達成されるように凍結乾燥する。
【0022】
阻害剤とケーキ形成剤を合わせて添加するのがとくに有利である。これによって、凍結し凍結乾燥したのち血小板が生理学的なアクティベーターにより活性化可能であるという意味において、血小板は明らかに安定化される。
【0023】
再構築には、凍結乾燥血小板濃縮物を活性化緩衝液中に再構築するのが有利である。この緩衝液には、たとえば、
−グルコース0g/リットル〜100g/リットル、好ましくは1g/リットル〜10g/リットル、とくに好ましくは約2.4g/リットルの濃度、
−マグネシウム塩、好ましくは塩化マグネシウム0g/リットル〜100g/リットル、好ましくは1g/リットル〜5g/リットル、とくに好ましくは約1.2g/リットルの濃度、
−カリウム塩、好ましくは塩化カリウム0g/リットル〜100g/リットル、好ましくは1g/リットル〜5g/リットル、とくに好ましくは約1.6g/リットルの濃度、
−ナトリウム塩、好ましくは食塩0g/リットル〜100g/リットル、好ましくは0.5g/リットル〜5g/リットル、とくに好ましくは約0.6g/リットルの濃度
を含有させる。
【0024】
血小板機能の阻害剤を除去するためには、血小板を上述の活性化緩衝液中で、たとえば懸濁し、約2400×gで遠心分離して沈降させることによって洗浄することもできる。
【0025】
これらの工程ののちに、血小板濃縮物は、血小板機能試験のための標準材料または診断試験のための試剤として使用することができる。
【0026】
凍結乾燥した血小板は+4℃で少なくとも6カ月保存できる。この保存は凝集測定法で測定される血小板のアクティベーター、たとえばコラーゲンまたはトロンビンに対する反応性を損なうことがない。したがって、安定性は、血小板濃厚液の耐久性(7日)に比較して少なくともファクターで30改善される。
【0027】
凍結乾燥した血小板は、血小板欠損または血小板機能異常の処置のための医薬としても使用できる。
【0028】
治療的に使用できる組成物を調製するためには、血小板を適当な形態に処方しなければならない。この目的では、熟練者にはそれ自体周知の医薬的に使用可能な担体系が用いられる。好ましくは、血小板は滅菌懸濁液として静脈内に投与される。凍結乾燥された材料は、治療的に活性な材料として活性化可能な血小板、さらに安定化剤として、ヒドロキシクロロキン硫酸塩および血清アルブミンから構成される。医薬的にそのまま使用できる薬剤は、注射用滅菌水に再懸濁することによって既に得られている。ヒドロキシクロロキン硫酸塩および血清アルブミンは両者とも、ヒトにおける広範な使用経験がある。ヒドロキシクロロキン硫酸塩は古くから知られているマラリヤ治療用の薬物である[Webster (1988) in: The Pharmacological Basis of Therapeutics; L.S.Goodman & A.Gilman, 8版]。その使用経路は一般に経口であるが、静脈内への使用も可能である[White (1990)Eur. J. Clin. Pharm. 34 (1), p.1-14]。使用に好ましいヒドロキシクロロキン硫酸塩の濃度約5g/リットルおよび血小板の濃度107/μlにおいて、血液1リットル中に通常含まれる血小板数の輸血ではヒドロキシクロロキン硫酸塩250mgの摂取を伴うことになる。マラリヤ治療時には1日にこの物質は500mgまで使用される。0.8mg/kg/時の静脈内投与は毒性学的に無害である(White, 1988)。したがって、血小板へのヒドロキシクロロキン硫酸塩の添加は毒性学的に無害であると考えられる。
【0029】
ヒト血清アルブミンはよく知られた毒性学的に無害の安定化剤であり、多くの承認された薬剤に含有されている。
【0030】
凍結乾燥した血小板を注射用滅菌水に溶解後そのまま輸血する方法のほかに、患者に使用するための他の血小板処方の採用も可能である。すなわち、最初に水に再懸濁した血小板を、たとえば数回適当に洗浄して、ヒドロキシクロロキンを除去することができる。このためには、約2400×gで遠心分離して血小板を沈降させ、ついで医薬的に適当なメジウム中に取る。原理的には、この場合の医薬的に適当なメジウムはこの目的のために熟練者にはそれ自体周知のすべての溶液であり、たとえば、滅菌塩溶液(たとえば、等張性NaCl溶液もしくは他の塩溶液)、滅菌緩衝溶液(クエン酸塩、TrisもしくはHEPES)および安定化剤(タンパク質、たとえばヒト血清アルブミンもしくは他のタンパク質、または糖たとえばマンニトールもしくは他の糖)の滅菌溶液である。
【0031】
【実施例】
以下の実施例は本発明をさらに明瞭にすることを意図するものである。
実施例1.1:加クエン酸血液から血小板濃縮物の調製
健康ドナーから静脈穿刺により血液を採取し、直ちに抗血液凝固剤と混合する。これは、濃厚クエン酸塩緩衝液(39.6g/リットル クエン酸ナトリウム+0.26g/リットル クエン酸、pH7)50mlを予め加えたフラスコを、気泡の形成を避けながら、血液500mlで満たすことによって行われる。内容物を混合するために、フラスコを注意深く振盪する。血液をステンレス鋼製の容器に移し、12〜18℃において、約3000×gで45分間遠心分離する。上層の血漿を捨てる。直下の細胞層、すなわちバッフィーコートを洗浄緩衝液(32.2g/リットルのクエン酸ナトリウム、5g/リットルのヒドロキシクロロキン硫酸塩、pH7.4)に取り、200×gで20分間の遠心分離を2回して白血球を分離する。上清が血小板懸濁液を形成する。ついで細胞をさらに2回洗浄緩衝液で洗浄する。このためには懸濁液を最初に2400×gで20分間遠心分離して沈降させたのち、各場合毎に洗浄緩衝液に再懸濁する。
【0032】
実施例1.2:血小板濃縮物の凍結乾燥
血小板懸濁液を実施例1に記載のように調製する。
血小板密度を自動カウンター(Moelab, Hilden, Germany)を用いて測定する。ついで懸濁液を洗浄緩衝液により5×107/μlに調整する。
懸濁液1mlあたり50mgのウシ血清アルブミンを加える。ついでこの懸濁液を適当な容器に充填し、穏和な条件下に凍結乾燥する。最高温度は40℃に設定し、乾燥は計25時間続ける。この過程は残留水分含量が約1〜2%になるように行う。
【0033】
実施例2:凍結乾燥後、コラーゲンによる血小板の凝集
血小板は、実施例1に記載のように、調製し凍結乾燥する。凍結乾燥物を元の容量の蒸留水中に再構築する。
血小板を2500×gで10分間遠心分離して沈降させ、同容量の等張性食塩溶液中に取り、ついでこの溶液で2回洗浄する。次に、血小板を活性化緩衝液(2.4g/リットル グルコース、0.6g/リットル NaCl、1.2g/リットルMgCl2、1.6g/リットルKCl)に取り、この緩衝液を用いて濃度を4.6×105/μlに調整する。血小板を自動カウンター(Moelab, Hilden, Germany)を用いて計数する。
【0034】
富血小板加クエン酸血漿(健康ドナーからプール)を、寡血小板血漿で4.8×105/μlに調整して陽性対照として使用する。4%ホルマリン中に固定したのち凍結乾燥した血小板を陰性対照として用いる。これらの血小板は等張性NaCl溶液中に再構築して4.9×105/μlに調整する。
【0035】
1000μlの血小板を、ヒト胎盤コラーゲン(1mg/ml, Behring Diagnostics, Marburg, Germany)100μlまたは対照として100μlの等張性NaClと混合し、37℃で15分間インキュベートする。混合物をついで40×gで10分間遠心分離して凝集体を分離する。
【0036】
上清中の血小板の密度を各場合について測定し、凝集できない血小板の比率の指標とする。
【表1】
Figure 0004283905
【0037】
富血小板血漿からの血小板および凍結乾燥された血小板は、選択された条件下に、ほぼすべてが分離可能な集合体の形態で存在するが、ホルマリン固定血小板は凝集させることができない。
【0038】
実施例3:凍結乾燥後、トロンビンによる血小板の凝集
血小板は、実施例1に記載のように、調製し凍結乾燥する。凍結乾燥物を元の容量の蒸留水中に再構築する。
血小板を2500×gで10分間遠心分離して沈降させ、同容量の等張性食塩溶液中に取り、ついでこの溶液中で2回洗浄する。次に血小板を活性化緩衝液(2.4g/リットル グルコース、0.6g/リットル NaCl、1.2g/リットル MgCl2、1.6g/リットル KCl)に取り、この緩衝溶液を用いて濃度4.6×105/μlに調整する。血小板を自動カウンター(Moelab, Hilden, Germany)を用いて計数する。
【0039】
4%ホルマリン中に固定したのち凍結乾燥した血小板を陰性対照として使用する。これらの血小板は等張性NaCl溶液中に再構築して4.7×105/μlに調整する。
【0040】
1000μlの血小板を、37℃で15分間プレインキュベートする。ついで精製したウシトロンビン(100μl, 3IU/ml;Behring Diagnostics)または100μlの等張性NaClを添加する。インキュベーションは37℃で15分間実施する。混合物をついで40×gで10分間遠心分離して凝集体を分離する。
【0041】
上清中の血小板の密度を各場合について測定し、凝集できない血小板の比率の指標とした。
【表2】
Figure 0004283905
【0042】
凍結乾燥された血小板の約2/3は、選択された条件下に、分離可能な集合体として存在するが、ホルマリン固定化血小板は凝集させることができない。

Claims (29)

  1. クロロキン、ヒドロキシクロロキン、カモキン、キナクリンおよびプロカインの群から選ばれる少なくとも1種の血小板機能阻害剤の添加後に凍結乾燥によって安定化された機能的に活性な血小板。
  2. 哺乳動物血液から単離された請求項1記載の血小板。
  3. 採血した血液を採血メジウムと混合し、採血メジウムは抗血液凝固剤を含む請求項2記載の血小板。
  4. 少なくとも1種の血小板機能阻害剤を採血メジウムに添加する請求項3記載の血小板。
  5. 採血メジウムは、最終濃度0.1U/ml〜10U/mlのヒルジンを含む請求項3記載の血小板。
  6. 採血メジウムは、最終濃度1U/ml〜4U/mlのヒルジンを含む請求項3記載の血小板。
  7. 採血メジウムは、最終濃度約2U/mlのヒルジンを含む請求項3記載の血小板。
  8. 採血メジウムは、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、カモキン、キナクリンおよびプロカインの群から選ばれる物質の1種を含む請求項4記載の血小板。
  9. ヒドロキシクロロキンを0.1g/リットル〜100g/リットルの濃度で使用する請求項8記載の血小板。
  10. ヒドロキシクロロキンを1g/リットル〜10g/リットルの濃度で使用する請求項8記載の血小板。
  11. ヒドロキシクロロキンを約5g/リットルの濃度で使用する請求項8記載の血小板。
  12. 凍結乾燥の前に洗浄緩衝液で洗浄される請求項1記載の血小板。
  13. 洗浄緩衝液は抗血液凝固剤を含む請求項12記載の血小板。
  14. 抗血液凝固剤はクエン酸塩である請求項13記載の血小板。
  15. 洗浄緩衝液は、以下の物質:クロロキン、ヒドロキシクロロキン、カモキン、キナクリンおよびプロカインの群から選ばれる血小板機能阻害剤を含む請求項12記載の血小板。
  16. ヒドロキシクロロキンを0.1g/リットル〜100g/リットルの濃度で使用する請求項15記載の血小板。
  17. ヒドロキシクロロキンを1g/リットル〜10g/リットルの濃度で使用する請求項15記載の血小板。
  18. 凍結乾燥の前に少なくとも1種の安定化剤を添加する請求項1記載の血小板。
  19. 安定化剤として、以下の物質:血清アルブミン1g/リットル〜100g/リットルの濃度、炭水化物1mg/リットル〜100g/リットルの濃度、またはポリゲリン1mg/リットル〜100g/リットルの濃度の1種が添加される請求項18記載の血小板。
  20. 炭水化物がマンニトールである請求項19記載の血小板。
  21. 凍結乾燥の前に104/μl〜109/μlの濃度に調整される請求項1記載の血小板。
  22. 凍結乾燥は残留水分含量0%〜10%が達成されるように行われる請求項1記載の血小板。
  23. 約3%の残留水分含量が達成される請求項22記載の血小板。
  24. 凍結乾燥後に活性化緩衝液中に再構築される請求項1記載の血小板。
  25. 活性化緩衝液は以下の物質:グルコース1mg/リットル〜100g/リットルの濃度、さらにマグネシウム塩1mg/リットル〜100g/リットルの濃度、さらにカリウム塩1mg/リットル〜100g/リットルの濃度、およびナトリウム塩1mg/リットル〜100g/リットルの濃度、を含む請求項24記載の血小板。
  26. マグネシウム塩が塩化マグネシウムである請求項25記載の血小板。
  27. カリウム塩が塩化カリウムである請求項25記載の血小板。
  28. ナトリウム塩が塩化ナトリウムである請求項25記載の血小板。
  29. 請求項1記載の血小板の治療量および医薬的に許容される担体材料を含む、患者の不適切な血小板機能を処置するための医薬組成物。
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