JP4282350B2 - 画像読取装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は画像読取装置に関し、詳細にはフラットベットスキャナにおいて有用な画像評価・補正に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開平9−6827号公報
【特許文献2】
特開2000−163567号公報
フラットベットスキャナにおいて有用な画像評価・補正を行う際に、撮像素子と光学系と処理回路を有する電子撮像素子を対象にシミュレーションする方法及び装置が上記特許文献1に提案され、任意の被写体に対する取得画像の算出を行っている。
【0003】
また、上記特許文献2には、ブラックストライプを有する較正板を走査して、既知のブラックストライプの物理的位置と比較して、各ブラックストライプに対する変形量を計算し、画像歪を補償する画像読取装置が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1,2における従来の画像読取装置では、走行体の走査による振動あるいは光学部材の位置決め誤差などの機械的な要因によって本来出力されるべき画像位置から画像の出力位置がずれるといった画像ゆらぎが存在する。また、製造段階では検査工程において、光学部材の調整を行って、実機の読取画像を取得し、得られた画像を評価して、また調整を行うといった繰り返し作業を行っており時間がかかっていた。更に、決まった位置での画像を取得するのみで、原稿全体の画像を見ているわけではなかった。また、経時変化によって光学部材の微小な位置ずれが生じ画像に影響を及ぼすことがあった。
【0005】
本発明はこれらの問題点を解決するためのものであり、画像ゆらぎを補正でき、かつ製造段階においては調整する時間を短縮し、使用時では経時的な読取画像の劣化を補正できる、画像読取装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記問題点を解決するために、本発明の画像読取装置は、被写体を照明する光源から出射した光を反射、集光する光学系部材を有する照明手段と、照明手段を被写体に対して相対的に走査させるために走査移動する第1の走行体と、被写体からの反射光を撮像する撮像素子と、被写体からの反射光を撮像素子に導く反射部材と、反射部材の両端に反射治具を有し、かつ反射部材の走査変位を少なくとも2点で計測し変位データとして出力する変位計測手段と、反射部材を搭載して第1の走行体と連動して移動する第2の走行体と、第1の走行体が走査して撮像素子に被写体の像が結像することで被写体の画像を読み取る画像読取手段と、画像読取手段より出力される信号から画像信号を生成する信号処理手段とを含んで構成されている。そして、本発明の画像読取装置は、変位計測手段から出力された変位データと反射治具間の距離とに基づき反射部材の傾き量を計算し、反射部材間の距離及び傾き量に基づいて計算された画像読取位置に基づき画像位置を補正することに特徴がある。よって、画像ゆらぎを補正でき、光学部材の傾きや振動による読取位置のずれを補正することができる。
【0007】
また、反射部材間の距離と傾き量とに基づき、座標変換及び幾何光学的な演算によって画像読取位置を計算することにより、光学部材の傾きや振動による読取位置のずれを補正することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の画像読取装置は、被写体からの反射光を撮像素子に導く反射部材の両端に反射治具を有し、かつ反射部材の走査変位を少なくとも2点で計測し変位データとして出力する変位計測手段から出力された変位データと反射治具間の距離とに基づき反射部材の傾き量を計算し、反射部材間の距離及び傾き量に基づいて計算された画像読取位置に基づき画像位置を補正する。
【0014】
【実施例】
図1は本発明に係る画像読取装置の構成を示す透視斜視図である。また、図2は図1の画像読取装置の構成を示す概略断面図である。
【0015】
はじめに、本発明に係る画像読取装置の構成について図1を用いて説明すると、本発明の画像読取装置10は、画像原稿を設置する原稿台である原稿設置場所11と、当該原稿設置場所11を副走査方向に走査する走行体12と、走行体12と垂直方向に列を成す、例えばラインCCDの1次元撮像素子13と、原稿設置場所11を1次元撮像素子13上に像を結合するレンズ14と、走行体12に追従して副走査方向に走査して原稿からの反射像をレンズ14を介して1次元撮像素子13上に適切に結像させるための走行体15と、走行体12が原稿設置場所11を副走査方向に走査することで、原稿設置場所11に設置された画像を線順次に画像を取込み、走査することで2次元画像として読取り、当該画像信号を出力する画像信号出力ポート16と、走行体12、15を駆動させる駆動手段17とを含んで構成されている。なお、図1の画像読取装置10は、読取部走査型のフラットタイプスキャナであるが、これに限定する必要はなく、原稿台走査型や相対走査型のスキャナであってもよい。また、デジタルカメラ等の画像形成装置でもよい。更に、1次元撮像素子13の画像解像度と、フラットベットスキャナ自身の持つ画像解像度は一致しない。通常、フラットベットスキャナの画像解像度はDPI(ドット/inch)で表され、300〜800DPI程度である。
【0016】
次に、本発明に係る画像読取装置の動作について図2を用いて説明すると、コンタクトガラス18上に基準となる原稿19を設置し、原稿19を照明する光源であるランプ20がリフレクターで反射されて撮像領域21に光を照射する。そして、走行体15とそれを追従する走行体12が原稿19の先頭から終わりまで走査することで折り返しミラー12−1,15−1やレンズ14を反射光が通過して、1次元撮像素子13で光電変換されることにより、原稿の全面で一連の作用が行われ2次元画像の画像信号として取り込まれ、図1の画像信号出力ポート16から出力される。
【0017】
図3は本発明の画像読取装置に設けられた変位計測装置の構成例を示す透視斜視図である。同図において、図2と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図における変位計測装置30は、反射ミラー31もしくは反射ミラー32あるいは反射ミラー33の両端に反射治具34を取り付け、非接触変位計35の測定光36をその反射治具34に当て、非接触変位計35に再び光が戻るようにセットする。これによって副走査方向の変位を測定できる。非接触変位計35は画像読取装置の筺体に固定されている。一方、反射ミラー31もしくは反射ミラー32あるいは反射ミラー33の両端に非接触変位計37を取り付け、副走査方向に対して垂直方向に測定光36をスライドレール38上に当て非接触変位計37に再び光が戻るようにセットする。これによって副走査方向に対し垂直方向の変位を測定できる。
【0018】
なお、反射治具34及び非接触変位計37はそれ自体の質量が反射ミラーのたわみや挙動に影響を及ぼすため、できるだけ小さくしたほうがよく、あるいは反射ミラーに直接取り付けたほうがよい。また、微小な反射ミラーの傾きを測定するため、2つの反射治具34あるいは非接触変位計37との間はなるべく離したほうがよい。更に、副走査方向の反射ミラーの部分的な傾きを得るためには3つ以上の反射治具を取り付け、治具間の部分的な傾きを計算することで、より精密な反射ミラーの傾き測定が可能となる。非接触変位計としてはレーザ測長機や静電容量式、うず電流式などの変位計を用いることができる。レーザ式の場合は反射治具34及びスライドレール38の反射率を高くしておく必要がある。また、静電容量式あるいはうず電流式の非接触変位計を用いる場合には反射治具34及びスライドレール38を導電性のある金属面にする必要がある。更に、非接触変位計の代わりに小型レーザドップラー振動計を用いることもできる。この場合には測定された速度変動データを積分し変位に直してから計算する。また、加速度ピックアップで加速度を測定してもよい。この場合は反射ミラーに加速度ピックアップを直接固定する。加速度を測定する場合は2階積分して変位に直す必要がある。
【0019】
次に、図4は別の発明の一実施例に係る画像位置補正方法を適用した画像位置補正回路の構成を示すブロック図である。同図に示すように、上記画像読取装置41はデータバス42に接続され、トリガ信号によって走査が可能な機能を持ち、画像信号を送出する。画像信号を演算する画像演算部43はデータバス42に接続されている。画像演算部43は画像信号を元に画像処理を行い、最終的な画像データを計算する。図3の非接触変位計35,37及び反射治具34からなる変位計測装置44は画像読取装置41の走査によって移動する反射ミラーの変位を計測する装置であり、その制御部45は演算処理部46に接続され、さらにデータバス42に接続されている。演算処理部46はコンピュータで構成され、データバス42を通して画像読取装置41から送られてきた走査信号に同期して、制御部45にデータ取得指令を出し、図3の非接触変位計35,37を制御してデータ取得を行う。変位計で計測されたデータは制御部45で電気信号に変換、増幅され、変位データとして演算処理部46へと送られる。このとき使用される非接触変位計は1列の走査時間及び原稿面上換算でのCCD画素サイズから計算される走査周波数よりも応答周波数が高いものを選ぶ必要がある。演算処理部46は変位データを記憶する機能を持つ。また、受け取られた変位データを元に演算を行い、原稿画像の読取位置を計算し、画像演算部43で計算された画像データの読取位置を補正する機能を持つ。
【0020】
次に、図5は本実施例の画像位置補正装置の動作を示すフローチャートである。同図において、先ず、図4の画像読取装置41に駆動指令が出ると、同時に図4の変位計測装置44に対してもデータ取得指令が出て、画像読取装置41が走査を開始する(ステップS101)。変位計測装置44が反射ミラーの変位計測を開始する(ステップS102,S103)。図4の演算処理部46の走査の順番は列カウンタによって数えられる。この列カウンタと変位計測装置44から転送された変位データとをペアにして演算処理部46内の記憶装置に記憶する(ステップS104〜S106)。画像読取装置41が全領域を走査したら(ステップS107;YES)、計測を終了する。演算処理部46内で記憶されたデータは、速度データの場合は1回積分し、加速度の場合は2回積分して、変位データに変換される。変位データを測定した場合はそのままである。変位データと、2つの反射治具間の距離からミラーの傾き量が計算される。図4の走行体12,13は同一のワイヤあるいはベルトによって駆動されているので、走行体12の速度は走行体13の速度の2倍となる関係がある。したがって、例えば反射ミラー32の計測された変位に対し、反射ミラー31の変位は2倍の変位を持つ。このようにして得られたミラー間距離と傾きを元に座標変換及び幾何光学的な演算を行うことで、画像読取位置を計算する(ステップS108〜S111)。計算の詳細については以降に説明する。反射ミラーが傾いていない場合の理想的な画像読取位置は光学系の設計データから計算する。これはレンズの設計倍率から求めることも可能であり、あるいは以下に説明する光線追跡手法でも計算できる。各列に対応した理想的な画像読取位置は予め計算しておき、図4の演算処理部46内にデータテーブルとして用意しておくことが望ましい。理想的な画像読取位置を基準とし、ミラーが傾いたときとの画像読取位置の差分を列カウンタに対応した位置で計算することで読取位置ずれが計算する。更に、図4の画像演算部43で計算された各列カウンタに対応した画像位置データから上記で計算された読取位置ずれを差し引くことで最終的な画像位置の補正を行うことができる(ステップS112,S113)。列カウンタの値を元に計測データの最後まで順次、この計算を行う(ステップS114)。これらの計算は演算処理部46内に組み込まれたソフトウェアによって行われる。
【0021】
ここで、ミラーの位置とミラー傾きによる結像位置変化は、光線追跡手法によって計算されることが多い。しかし、光線追跡ソフトウェアは汎用のものが多く、他の計測システムと組み合わせて使用することは困難であった。そこで、反射ミラーの位置と反射ミラー傾きによる入射光束と反射ミラー面での反射光束の関係を幾何光学的な一般式にすることで光線追跡を行う。
【0022】
図6は反射ミラーの座標変換の概念を示す図である。同図において、原点62と、その原点62を含む原点平面61を考え、それぞれの直交座標系を図4のように決める。ここで、原点平面61は原稿面に等しいと考える。反射ミラーを反射面63と考えると、画像読取装置を構成する反射面はZ軸周りにβ回転し、Y軸方向にK2、X軸方向にK1平行移動したものと考えることができる。このとき、反射面は反射ミラー傾きによりY軸周りに微小回転する。また、X軸周りの回転も考慮する。これらは3次元のアフィン変換と考えることができる。原点平面41上のある点[x,y,z,1]を4次の同次座標系として表現し、変換後の座標を[xR,yR,zR,1]とすると
【0023】
[xR,yR,zR,1]=[x,y,z,1][C] (1)
【0024】
で表現される。ここで[C]は回転及び並進行列であり、以下のように表現される。
【0025】
【数1】
【0026】
次に、出射光束と反射の様子を示す図7のように、原点平面61上のある点P(xs,ys、zs)から出射した出射光束ベクトルが反射面のどこに当たるかを考える。出射光束ベクトルは単位ベクトルQ方向に進行し点K(xp,yp,zp)で反射し、反射光束ベクトルQ'方向に反射すると考える。PK=lとすると、以下の連立方程式が成り立つ。
【0027】
xp=xs+lQx (3)
yp=ys+lQy (4)
zp=zs+lQz (5)
Exp+Fyp+Gzp+H=0 (6)
【0028】
ここで、(6)式は反射面の方程式であり、E,F,G,Hは定数である。
(6)式に式(3),式(4),式(5)を代入し、整理すると以下の式が得られる。
【0029】
l=−(xsE+ysF+zsG+H)/(QxE+QyF+QzG)
(7)
【0030】
求められたlを(3)〜(5)式に代入することで点Kの座標を求めることができる。
【0031】
一方、反射法線単位ベクトルE'は出射面の法線ベクトルEを用いて以下のように表すことができる。
【0032】
E'=C・E (8)
【0033】
出射光束ベクトルの単位ベクトル[Qx,Qy,Qz]を用いると、反射方向を示す反射光束ベクトル[Q'x,Q'y,Q'z]は反射行列を用いて、以下のように表すことができる。
【0034】
【数2】
【0035】
次に、出射光束と反射の様子を示す図8に示されるように、反射面63上の点Kから出射した出射光束単位ベクトルQ'が反射面64のM点に当たって反射光束ベクトルQ'’の方向に反射する。これは上記(1)式〜(9)式の計算を行うことで反射光束ベクトルQ'’の位置及び方向を求めることができる。
【0036】
以上のような一連の計算を順次各反射面に対して行っていく。その一連の計算の一例を図9に示す。同図において、原稿面平面61上の点Pから出射した光束は反射面63上の点Kに当たり、反射されて、反射面64上の点Mに当たって、Q'’の方向に反射する。更に、反射面65上の点Nに当たってQ’’’方向に反射する。結像レンズ66による屈折作用は光線追跡手法によって計算されることが多い。
【0037】
しかし、光線追跡ソフトウェアは汎用のものが多く、他の計測システムと組み合わせて使用することは困難であった。また、従来のソフトウェアは屈折界面での屈折の組み合わせで記述されており、レンズという部品単位での計算はできなかった。
【0038】
そこで、結像レンズ毎での屈折を幾何学的な一般式にすることで結像レンズを通過する光束の光線追跡を行って、結像位置を求める。結像レンズの傾き・並進は結像レンズ自身の組付け精度と画像読取装置への組付け精度によって決まる。結像レンズ自身の持つ反射偏心あるいは透過偏心は、レンズ偏心測定機等で測定可能で、画像読取装置への組付けは組付け治具の精度で決まる。実際には結像レンズ自身の傾き・並進公差と画像読取装置への組付け公差の積上げ公差を考慮して計算を行い、最終的な読取位置の誤差を見積もった方がよい。
【0039】
次に、図10の(a)〜(f)を用いてレンズの屈折による結像位置算出手順について説明する。
図10の(a)に示すように、反射面71の点V(Vx,Vy,Vz)から反射した出射光単位ベクトルS(=Q''')はレンズ面72上の交点K(Xk,Yk,Zk)上で屈折する。このときのKの座標と屈折方向を求める。レンズ面72は元座標系に対して回転もしくは並進された状態を考える。これはレンズの取り付け誤差を考慮するためである。この場合は図10の(b)のように座標系をレンズ面72の回転もしくは並進に合わせた座標変換を行う。元座標系のままでレンズ面の回転もしくは並進を考える方法もあるが、レンズ面が非球面である場合を考えると変換座標系に変換して計算を実行する方が計算式は簡単になる。元座標系をXYZとし、それぞれの軸回りの回転をγ,α,β、並進をUx,Uy,Uzとする。なお、図10の(a),(b)では回転角がβ、並進量がUyの状態を示している。並進及び回転成分を加えると、座標変換後の点V'(V'x,V'y,V'z)及び出射光ベクトルS'(S'x,S'y,S'z)は以下のように表現される。
【0040】
[V'x V'y V'z]=[Vx−Ux Vy−Uy Vz−Uz][R] (10)
[S'x S'y S'z]=[Sx Sy Sz][R] (11)
【0041】
ここで[R]は回転行列であり、以下のように表現される。
【0042】
【数3】
【0043】
出射光ベクトルS'は並進の影響は受けないので回転行列のみを作用させる。
【0044】
次に、変換座標系での出射光とレンズ面72との交点K'(X'k,Y'k,Z'k)を求める。
【0045】
【数4】
【0046】
とすると以下の連立方程式が成り立つ。
【0047】
X'k=V'x+mS'x (13)
Y'k=V'y+mS'y (14)
Z'k=V'z+mS'z (15)
【0048】
【数5】
【0049】
ここで、(16)式は非球面曲面の方程式である。CnはConic定数であり、Cnの値により曲面の形が変化する。(Cn>0:楕円、Cn=0:放物面、Cn<0:双曲面、Cn=1:球面)rはレンズ面1の曲率半径である。
【0050】
上記(13)式〜(16)式を解いてmを求め、(13)式〜(15)式に代入することで交点K'の座標を求めることができる。
【0051】
次に、レンズ面での屈折方向を計算する。図10の(c)に示されるように、出射光ベクトルV'は屈折率Nの媒質中を伝播し、屈折率N'のレンズ面72で屈折して屈折光ベクトルT'(T'x,T'y,T'z)の方向に屈折する。
【0052】
そして、図10−(d)のように、交点K'におけるレンズ面72上の法線ベクトルE'(E'x,E'y,E'z)を考える。このときレンズ面72への入射角をi、屈折光ベクトルと法線ベクトルの成す角をi'とする。(16)式をX'kについて変形すると下記の(17)式を得る。
【0053】
【数6】
【0054】
法線ベクトルの各成分は勾配を取ることで計算できる。
【0055】
【数7】
【0056】
とすると以下のようになる。
【0057】
E'x=1 (19)
E'y=−Y’k/Br (20)
E’z=−Z'k/Br (21)
E'・S'=cos i及びE'・T'=cos i' なる関係を用いてスネルの法則
【0058】
|N|(E'×S')=|N'|(E'×T') (22)
【0059】
を変形すると、屈折光ベクトルT'(T'x,T'y,T'z)は以下のように求まる。
【0060】
T’=NS’/N’+E’(cos i'− Ncos i/N’) (23)
ここで cos i'は以下のように計算できる。
【0061】
【数8】
【0062】
sign(cos i)はcos iの正負によって+1もしくは−1の値を取る関数である。
【0063】
以上(10)式〜(24)式を用いてレンズ面72での交点K'及び屈折光ベクトルT'が求まる。これら一連の計算を次の面に対しても同様に行う。
【0064】
図10−(e)に示されるようにレンズ面72の後面にレンズ面73を考え、レンズが存在する場合は前記で求まった交点K'を出射点座標、屈折光ベクトルT'を出射光ベクトルと考えて同様の計算を行うことでレンズの屈折計算を行う。
このようにして最終的にレンズから出射する交点K'1(X'k1,Y'k1,Z'k1)及び屈折光ベクトルT'1(T'x1,T'y1,T'z1)が求まる。
【0065】
次に、図10−(f)に示されるように、座標系X'Y'Z'を元座標系XYZに戻す。回転行列を[R]とすればレンズの傾きのみを元の座標系に戻すと以下のようになる。
【0066】
[Xs Ys Zs]=[R]−1[X'k1 Y'k1 Z'k1] (25)
【0067】
このとき[R]−1は以下のように与えられる。
【0068】
【数9】
【0069】
並進成分を元に戻せば、交点K1は以下のようになる。
【0070】
[Xk1 Yk1 Zk1]=[Xs+Ux Ys+Uy Zs+Uz] (27)
【0071】
また、屈折光ベクトルT1は以下のように元の座標系に戻すことができる。
【0072】
[Tx1 Ty1 Tz1]=[R]−1[T'x1 T'y1 T'z1] (28)
【0073】
屈折光ベクトルT1は並進の影響を受けないので回転行列のみを作用させる。
【0074】
このようにして、レンズでの屈折を計算することができる。レンズが複数ある場合も(10)式〜(28)式の計算を繰り返し実行することで計算することができる。
【0075】
次に、結像位置の座標を求める。結像面74での結像位置Pi[Xi,Yi,Zi]は
【0076】
【数10】
【0077】
とすると以下の連立方程式が成り立つ。
【0078】
Xi=Xk1+nTx1 (29)
Yi=Yk1+nTy1 (30)
Zi=Zk1+nTz1 (31)
E2Xi+F2Yi+G2Zi+H2=0 (32)
ただし、E2、F2、G2、H2は定数である。
【0079】
(32)式に(29)式,(30)式,(31)式を代入し整理してnを求める。
求まったnを(29)式〜(31)式に代入することで結像位置Pi[Xi,Yi,Zi]の座標を求めることができる。このようにして最終的に結像面での座標が計算できる。結像面での座標を元にレンズの結像倍率から画像読取位置が計算される。レンズの結像倍率をVとすれば、画像読取位置[Xg,Yg,Zg]はそれぞれ以下のように計算できる。
【0080】
Xg=Xi/V (33)
Yg=Yi/V (34)
Zg=Zi/V (35)
【0081】
また、光線の伝播は可逆性が成り立つので、結像面側から光線追跡を行って、画像読取位置を計算することもできる。主光線のみを考えればこの方法は直接、画像読取位置を求めることができる。
【0082】
次に、図3のように反射ミラー32の両端に反射治具34を取り付け、非接触変位計35の測定光36をその反射治具35に当て、非接触変位計35に再び光が戻るようにセットする。これによって副走査方向の変位を測定し、反射ミラー32の副走査方向の傾きを計算する。反射ミラー33も同様の傾きを持つと考える。反射ミラー31は反射ミラー32の2倍の変位を持つと考えられるが、正確には反射ミラー31の変位を測定することが望ましい。一方、反射ミラー32の両端に非接触変位計37を取り付け、副走査方向に対して垂直方向に測定光36をスライドレール38上に当て非接触変位計37に再び光が戻るようにセットする。これによって副走査方向に対し垂直方向の変位を測定し、その傾きを計算する。反射ミラー33も同様の傾きを持つと考える。反射ミラー31は反射ミラー32の2倍の変位を持つと考えられるが、正確には反射ミラー31の変位を測定することが望ましい。
【0083】
以上の一連の測定及び計算をA3原稿全面分の走査範囲にわたって実行し、主走査及び副走査方向に関して読取り位置の変化をプロットしたものを図11に示す。左表は副走査位置での図3の反射ミラー31の傾き量を示している。反射ミラーの傾きが走査とともに変動するため、読取位置が変化し、画像ゆらぎが発生することを示している。この図の画像ゆらぎ量は主走査及び副走査方向に対して拡大表示をしている。原稿全面に渡って画像ゆらぎを補正すると長方形状の結果が得られる。
【0084】
図12は本実施例の画像位置補正装置を適用した読取位置評価装置の構成を示す透視斜視図である。同図において、図3と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。ここで、反射ミラー32の挙動を計測するためには反射ミラー32に反射治具34を取り付けるのが良いが、実際には走行体13が存在するために反射ミラー32に直接、反射治具を取り付けるのは難しい。そこで走行体12もしくは走行体13に反射治具34を取り付ける。同図に示す例では走行体13に反射治具34を取り付けている。非接触変位計35の測定光をその反射治具34に当て、非接触変位計35に再び光が戻るようにセットする。これによって副走査方向の変位を測定できる。非接触変位計35は画像読取装置の筺体に固定されている。反射ミラー32,33は走行体13に取り付けられており、走行体13は剛体と考えてよいので反射ミラー32,33は走行体13と同じ動きをすると考えることができる。すなわち反射ミラー32,33は同位相で走行体13と同じ動きをすると考えてよい。
【0085】
一方、走行体12もしくは走行体13の両端に非接触変位計37を取り付け、副走査方向に対して垂直方向に測定光36をスライドレール38上に当て非接触変位計37に再び光が戻るようにセットする。この例では走行体13に非接触変位計を取り付けている。これによって副走査方向に対し垂直方向の変位を測定できる。この場合も同様に走行体と反射ミラーは同じ動きをすると考えられるので、この変位は反射ミラーの変位に相当すると考えてよい。反射治具34及び非接触変位計37はそれ自体の質量が走行体のたわみや挙動に影響を及ぼすため、できるだけ小さくしたほうがよく、微小な走行体の傾きを測定するため、2つの反射治具あるいは非接触変位計37間はなるべく離したほうがよい。更に、副走査方向の走行体の部分的な傾きを得るためには3つ以上の反射治具を取り付け、治具間の部分的な傾きを計算することで、より精密な走行体の傾き測定が可能となる。
【0086】
また、走行体単体での固有モードを測定あるいは計算し、反射ミラー32,33の取り付け部分の挙動及び位相から反射ミラー32,33の動きを推定することもできる。この場合は最も振幅の大きい1次モードなどを用いれば反射ミラー32,33の相対的な挙動をつかむことが可能になる。固有モードの挙動は有限要素解析やモーダル解析の手法を用いて捉えることができる。
【0087】
非接触変位計としてはレーザ測長機や静電容量式、うず電流式などの変位計を用いることができる。レーザ式の場合は反射治具及びスライドレールの反射率を高くしておく必要がある。また静電容量式あるいはうず電流式の変位計を用いる場合には反射治具及びスライドレールを導電性のある金属面にする必要がある。また、変位計の代わりに小型レーザドップラー振動計を用いることもできる。この場合には測定された速度変動データを積分し変位に直してから計算する。また、加速度ピックアップで加速度を測定してもよい。この場合は反射ミラーに加速度ピックアップを直接固定する。加速度を測定する場合は2階積分して変位に直す必要がある。
【0088】
次に、本実施例の画像位置補正装置の別の画像位置補正動作について説明すると、別の画像位置補正方法は反射ミラーまでの光線追跡部分までは上述した動作と同様である。その以降の結像レンズによる屈折作用の計算部分が異なる。結像レンズによる屈折作用は光線追跡手法によってレンズ毎の屈折計算を行う方法が多いが、レンズ枚数が多い場合には計算時間がかかるという問題がある。また、レンズ自身は筺体に固定されているため、位置決めが正確にされていれば傾きや並進は微小で経時的な変化もない。そのような状態で主光線のみで考えれば、以下のような方法でレンズによる屈折作用を計算することができる。
【0089】
図13は別の画像位置補正の様子を示す図である。ここでは説明の便宜上、光路を直線上に配置した形で説明する。図13の(a)に示すように、反射面83の点Nから反射した反射光単位ベクトルQ’’’は結像面85上の点Piに結像する。このPiの座標を求める。次に、図13の(b)に示すように、反射光単位ベクトルQ’’’と逆方向に逆伝搬単位ベクトル
【0090】
【数11】
【0091】
を考え、反射面82及び反射面83を取り去った状態で原稿面81上の出射点Rの座標を光線追跡によって求める。出射点Rから結像レンズ86の中心を通る主光線87は結像面85上の点Piに結像する。すなわち反射光単位ベクトルQ’’’と主光線87は同じ点Piに結像する。これは反射面81の傾きが微小であれば結像関係が崩れないことを利用している。したがって、図13の(c)に示されるように出射点Rから出射した主光線87の単位ベクトルを光線追跡し、結像位置Piを求めることで反射光単位ベクトルQ’’’の結像位置を求めることができる。
【0092】
図14は別の画像位置補正方法を説明する図である。同図において、原稿面81上の出射点は原稿面平面の方程式と逆伝搬単位ベクトルから計算することができる。原稿面平面の方程式は以下のように得られる。
【0093】
E1XR+F1YR+G1ZR+H1=0 (36)
ただし、E1、F1、G1、H1は定数である。
【0094】
次に、出射点Rの座標を求める。点T(Xt,Yt,Zt)から
【0095】
【数12】
【0096】
方向に出た光は原稿面上の出射点R(XR,YR,ZR)に当たる。
【0097】
【数13】
【0098】
であり、
【0099】
【数14】
【0100】
とすると以下の式が成り立つ。
【0101】
【数15】
【0102】
(40)式に(37)式、(38)式、(39)式を代入し整理する。
【数16】
【0103】
(41)式よりmを求め、(37)式〜(39)式に代入することでR点の座標が求まる。同様の手順で出射点(XR,YR,ZR)から出た主光線2ベクトル(Rx,Ry,Rz)が結像する結像位置(Xi,Yi,Zi)を求めることができる。
【0104】
【数17】
【0105】
とすると
【0106】
Xi=XR+nRx (42)
Yi=YR+nRy (43)
Zi=ZR+nRz (44)
E2Xi+F2Yi+G2Zi+H2=0 (45)
ただし、E2、F2、G2、H2は定数である。
【0107】
(45)式に(42)式、(43)式、(44)式を代入し整理する。
【0108】
n=−(XRE2+YRF2+ZRG2+H2)/(RxE2+RyF2+RzG2)
(46)
【0109】
(46)式よりnを求め、(42)式〜(44)式に代入することで点Piの座標が求まる。
【0110】
このようにして最終的に結像面での座標が計算できる。このときレンズ作用は主光線のみを簡易的に考えれば結像面の像高に対して線形であると考える。結像面での座標を元にレンズの結像倍率から画像読取位置が計算される。
【0111】
一方、ミラーが傾いていない理想的な結像位置を計算し、その座標を元にレンズの結像倍率から理想状態の画像読取位置が計算される。この位置とミラーが傾いたときの画像読取位置の差を計算することで、原稿面での読取位置の変化が計算される。
【0112】
次に、図15は本発明の画像位置補正方法の各実施例を実行するプログラムを起動するための具体的な装置の構成を示すブロック図である。つまり、同図は上記実施例における画像位置補正方法によるソフトウェアを実行するマイクロプロセッサ等から構築されるハードウェアを示すものである。同図において、画像位置補正システムはインターフェース(以下I/Fと略す)91、CPU92、ROM93、RAM94、表示装置95、ハードディスク96、キーボード97及びCD−ROMドライブ98を含んで構成されている。また、汎用の端末装置を用意し、CD−ROM99などの読取可能な記憶媒体には、本発明の画像位置補正方法を実行するプログラムが記憶されている。更に、I/F91を介して外部装置から制御信号が入力され、キーボード97によって操作者による指令又は自動的に本発明のプログラムが起動される。そして、CPU92は当該プログラムに従って上述の画像位置補正方法に伴う制御処理を施し、その処理結果をRAM94やハードディスク96等の記憶装置に格納し、必要により表示装置95などに出力する。以上のように、本発明の画像位置補正方法を実行するプログラムが記憶した媒体を用いることにより、既存の端末装置を変えることなく、画像位置補正システムを汎用的に構築することができる。
【0113】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。
【0114】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の画像読取装置は、被写体を照明する光源から出射した光を反射、集光する光学系部材を有する照明手段と、照明手段を被写体に対して相対的に走査させるために走査移動する第1の走行体と、被写体からの反射光を撮像する撮像素子と、被写体からの反射光を撮像素子に導く反射部材と、反射部材の両端に反射治具を有し、かつ反射部材の走査変位を少なくとも2点で計測し変位データとして出力する変位計測手段と、反射部材を搭載して第1の走行体と連動して移動する第2の走行体と、第1の走行体が走査して撮像素子に被写体の像が結像することで被写体の画像を読み取る画像読取手段と、画像読取手段より出力される信号から画像信号を生成する信号処理手段とを含んで構成されている。そして、本発明の画像読取装置は、変位計測手段から出力された変位データと反射治具間の距離とに基づき反射部材の傾き量を計算し、反射部材間の距離及び傾き量に基づいて計算された画像読取位置に基づき画像位置を補正することに特徴がある。よって、画像ゆらぎを補正でき、光学部材の傾きや振動による読取位置のずれを補正することができる。
【0115】
また、反射部材間の距離と傾き量とに基づき、座標変換及び幾何光学的な演算によって画像読取位置を計算することにより、光学部材の傾きや振動による読取位置のずれを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る画像読取装置の構成を示す透視斜視図である。
【図2】図1の画像読取装置の構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明の画像読取装置に設けられた変位計測装置の構成例を示す透視斜視図である。
【図4】別の発明の一実施例に係る画像位置補正方法を適用する画像位置補正回路の構成を示すブロック図である。
【図5】本実施例の画像位置補正装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】反射ミラーの座標変換の概念を示す図である。
【図7】出射光束と反射の様子を示す図である。
【図8】出射光束と反射の様子を示す図である。
【図9】反射光束ベクトルQ'’の位置及び方向の計算の一例を示す図である。
【図10】レンズの屈折による結像位置算出手順を示す図である。
【図11】主走査及び副走査方向に関して読取り位置の変化を示す図である。
【図12】本実施例の画像位置補正装置を適用した読取位置評価装置の構成を示す透視斜視図である。
【図13】別の画像位置補正の様子を示す図である。
【図14】別の画像位置補正方法を説明する図である。
【図15】本発明の画像位置補正方法の各実施例を実行するプログラムを起動するための具体的な装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
10,41;画像読取装置、11;原稿設置場所、12,15;走行体、
13;1次元撮像素子、14;レンズ、16;画像信号出力ポート、
17;駆動手段、18;コンタクトガラス、19;原稿、20;ランプ、
21;撮像領域、31〜33;反射ミラー、34;反射治具、
35,37;非接触変位計、38;スライドレール、42;データバス、
43;画像演算部、44;変位計測装置、45;制御部、
46;演算処理部、61;原点平面、62;原点、63〜65;反射面、
66;結像レンズ、67;結像面、71;反射面、72;レンズ面、
73;レンズ、74;結像面、81;原稿面、82〜84;反射面、
85;結像面、86;結像レンズ、87;主光線。
Claims (2)
- 被写体を照明する光源から出射した光を反射、集光する光学系部材を有する照明手段と、該照明手段を前記被写体に対して相対的に走査させるために走査移動する第1の走行体と、前記被写体からの反射光を撮像する撮像素子と、前記被写体からの反射光を前記撮像素子に導く反射部材と、該反射部材の両端に反射治具を有し、かつ前記反射部材の走査変位を少なくとも2点で計測し変位データとして出力する変位計測手段と、前記反射部材を搭載して前記第1の走行体と連動して移動する第2の走行体と、前記第1の走行体が走査して前記撮像素子に前記被写体の像が結像することで前記被写体の画像を読み取る画像読取手段と、該画像読取手段より出力される信号から画像信号を生成する信号処理手段とを含んで構成されている画像読取装置において、
前記変位計測手段から出力された変位データと前記反射治具間の距離とに基づき前記反射部材の傾き量を計算し、前記反射部材間の距離及び前記傾き量に基づいて計算された画像読取位置に基づき画像位置を補正することを特徴とする画像読取装置。 - 前記反射部材間の距離と前記傾き量とに基づき、座標変換及び幾何光学的な演算によって画像読取位置を計算することを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
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