JP4282253B2 - ベルト伝動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、エンジンの始動時、及びエンジンによる補機駆動時の回転力をベルトを用いて伝動するベルト伝動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
特開平8−14145号公報には、エンジンのクランク軸に取り付けられたクランクプーリと、エンジンの周辺に配された各補機にそれぞれ取り付けられたプーリと、始動用電動機に取り付けられたプーリとをベルトで連結して、始動用電動機によりベルトを介してエンジンを始動させるとともに、エンジン始動後はエンジンのクランク軸に取り付けられたクランクプーリによって、ベルトを介して各補機を駆動するベルト伝動装置が示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来のベルト伝動装置は以上のように構成されているので、始動用電動機によりベルトを介してエンジンを始動するときには、大きな伝達トルクを必要とする為、ベルトに高い張力を掛ける必要があるが、エンジン始動後も必要以上に高い張力がべルトに継続してかかることになるので、ベルトの寿命が著しく低下するという問題点があった。
また、そのベルト張力が他の補機に取り付けられたプーリにもかかってしまうため、補機の軸及び軸受、その支持構造の強度を増加させることが必要になり、補機の大型化及び高コスト化を招くという問題点もあった。
【0004】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであって、オートテンショナの設定張力を、エンジンの始動時と、始動後の補機駆動時において、それぞれ最適な張力に可変し得るべルト伝動装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明の請求項1に係るベルト伝動装置は、エンジンに始動用動力を伝達する回転電機に取り付けられた回転電機用プーリと、始動用動力をエンジンに伝達するとともに、エンジンの回転動力を補機に伝達するエンジン用プーリと、このエンジン用プーリからの動力で回転して補機を駆動する補機用プーリと、回転電機用プーリ、エンジン用プーリ及び補機用プーリに連続して巻き掛けられたベルトと、このベルトを押圧してベルト張力を調整するベルト張力調整装置を備えたものであって、ベルト張力調整装置は、ベルトが掛けられるとともに回転自在に支持されたテンションプーリと、このテンションプーリを押圧するバネ定数の異なった第1、第2、第3のスプリングと、第1、第2、第3のスプリングを同心円状に直列結合させる2つの円筒状の連結プレートと、テンションプーリを移動させる推力シャフトとから構成され、更に第1、第2、第3のスプリングのバネ定数を装置としての共振点を回避するように調整するとともに、バネ定数の大きさの順番に内側から外側ヘ、あるいは外側から内側へ連結プレートを介して軸方向に順番にずらして配置したものである。
【0008】
この発明の請求項2に係るベルト伝動装置におけるベルト張力調整装置は、アームプレートのスプリング当接面及びシリンダに設けられたフランジ部のスプリング当接面に緩衝部材を設けたものである。
【0009】
この発明の請求項3に係るベルト伝動装置におけるベルト張力調整装置は、電動機により回転させられる回転シャフトのネジ部と推力シャフトのネジ部をネジ結合することにより、回転シャフトの回転トルクを推力シャフトの軸方向の力に変換するものである。
【0010】
この発明の請求項4に係るベルト伝動装置におけるベルト張力調整装置は、ベルトから反力を受けたとき、テンションプーリが押し戻されるのをブロックするための弾性部材を設けたものである。
【0012】
この発明の請求項5に係るベルト伝動装置は、エンジンの回転数、エンジン始動信号、車速、ベルト張力並びにテンションプーリの位置信号の情報を処理するCPUからの指令により、ベルト張力を調整するものである。
【0013】
この発明の請求項6に係るベルト伝動装置は、始動時には回転電機のベルト張り側、始動後にはエンジン用プーリのベルト緩み側になる位置にベルト張力調整装置が設置されるものである。
【0014】
この発明の請求項7に係るベルト伝動装置は、エンジンとして車両用エンジンを用いたものである。
【0015】
この発明の請求項8に係るベルト伝動装置は、回転電機として電動発電機を用いたものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の一実施形態を図に基づいて説明する。
図1はこの発明の実施の形態1によるエンジンを中心としたベルト伝動装置全体を示す平面図、図2はテンションプーリユニットが最も突き出た状態のベルト張力調整装置を示す平面断面図、図3は同じく側面断面図、図4は推力シャフトが電動機側に移動して、第3のスプリングがアームプレートの端面から離れる直前の状態のベルト張力調整装置を示す平面断面図、図5は同じく側面断面図、図6は推力シャフトがさらに電動機側に移動して、第2のスプリングがアームプレートの端面から離れる直前の状態のベルト張力調整装置を示す平面断面図、図7は同じく側面断面図、図8は推力シャフトが電動機側に最も移動した状態のベルト張力調整装置を示す平面断面図、図9は同じく側面断面図、図10は第l、第2、第3スプリング単品の撓み量とバネ荷重との関係、及びこれら3つのスプリングを下記のごとく構成した場合の撓み量とバネ荷重との関係を示すグラフである。
【0017】
図において、1はエンジン、2はエンジンlのクランク軸に取り付けられたエンジン用プーリであるクランクプーリ、3,4は補機A、補機Bにそれぞれ取り付けられた補機用プーリ、5,6は各プーリのベルト巻き角を調整してベルトスリップを抑制するための固定テンショナプーリ、7は回転電機である始動電動発電機に取り付けられた回転電機用プーリ、8はベルト張力調整装置9に設けられ、ベルト10が巻かれるテンションプーリユニットであり、ベルト10はクランクプーリ2から反時計回りに、固定テンショナプーリ5、補機用プーリ3、補機用プーリ4、固定テンショナプーリ6、回転電機用プーリ7、ベルト張力調整装置9に設けられたテンションプーリユニット8の順に巻き掛けられており、このベルト張力調整装置9は、ベルト10の張力を連続的に可変することができるように構成されている。
【0018】
固定テンショナプーリ5,6は、クランクプーリ2、補機用プーリ3,4、回転電機用プーリ7に掛かるベルト10のベルト巻き角を大きくして、ベルトスリップが発生しないように設定されている。
また、ベルト張力調整装置9も同様に、回転電機用プーリ7及びクランクプーリ2のベルト巻き角を大きくして、ベルトスリップが発生しないようにしているとともに、ベルト10の張力を予め設定した一定張力に維持するように動作している。
【0019】
図2、図3において、テンションプーリユニット8は、外周にベルト10が掛けられる円筒状のテンションプーリ11と、この内周側に嵌合固定されたベアリング12と、このベアリング12の内径側に圧入嵌合されたブッシユ13と、ブッシユ13に挿入されるとともにベアリング12の内輪端面に当接するスペーサ14と、テンションプーリllに嵌合したベアリング12をブッシユ13とスペーサ14を介して保持するとともに、その両側をボルト15で挟持締結したコの字状のアームプレート16から構成されている。
テンションプーリ11は、ベアリング12によってブッシユ13あるいはボルト15と同軸的に回転自在に構成されている。
【0020】
17は上記アームプレート16と溶接、カシメなどの結合手段によって結合固定されたピストン、18はその内径円筒部でピストン17と滑らかに摺動するシリンダ、19はピストン17に嵌合されるとともに、ピンガイド18a内を移動することによりシリンダ18との相対回転を規制するピン、18bはシリンダ18の端部に構成されたフランジ部であり、このフランジ部18bとアームプレート16の間に装着された第1のスプリング20a、第2のスプリング20b及び第3のスプリング20cと、これらを直列に連結する第1の連結プレート21a及び第2の連結プレート21bとによって、オートテンショナ機能を有する多段階のスプリング弾性力発生部を構成している。シリンダ18の底部を構成する弾性部材22は、ピストン17の動きを規制すると同時に緩衝機能をも有するゴム系の材料などから構成される。
又、23はフランジ部18bのスプリング当接面に設けられた緩衝部材、24はアームプレート16のスプリング当接面に設けられた緩衝部材である。
【0021】
上記シリンダ18及びフランジ部18bは推力シャフト25の一部分を構成しており、この推力シャフト25の円柱部25aは電動機26の回転シャフト27の内周円筒部27aと滑らかに摺動可能であり、かつ回転シャフト27のネジ部27bと推力シャフト25のネジ部25bはネジ結合されており、回転シャフト27からの回転トルクを軸方向の力に変換して推力シャフト25に伝達することにより、シリンダ18の左右方向の移動を可能にしている。
【0022】
次に、電動機26の構成について説明する。28は、永久磁石などにより構成され、磁束を作る働きをする界磁磁極、29は磁路を構成するヨーク、30は磁路を構成するコア部、31は図示していない電機子スロット部に巻回されている電機子コイル、32はこの電機子コイル31に通電する電流を切り換えるコンミテータであり、これらの部品と回転シャフト27とから電機子33が構成されている。
【0023】
さらに、34は回転シャフト27をスペーサ35と止め輪36との共同で軸方向に固定するとともに、挿嵌支持しているフロント側ベアリング、37はこのフロント側ベアリング34を嵌合支持しているフロント側ブラケット、38は回転シャフト27のリヤ側を挿嵌支持しているリヤ側ベアリング、39はこのリヤ側ベアリング38を嵌合支持しているリヤ側ブラケット、40はコンミテータ32と摺動して給電するブラシ、41はブラシ40を保持するブラシホルダーである。
【0024】
本実施形態においては、電動機26がフロント側ブラケット37を介してボルト42によって図示しないエンジンブラケットに締め付け固定されている。
又、ピン19とピンガイド18aは、ピストン17とシリンダ18が相対回転しないように設けられたものであり、ガイド棒43とフランジ部18bの一端に設けられたスリット18cは、ネジ部27bとネジ部25bとの摩擦力によって、回転シャフト27と推力シャフト25が共回りしないように設けられたものである。
【0025】
44は、エンジン回転数センサによって取得される外部信号であるエンジン回転数信号、エンジン始動信号、車速センサによって計測される車速信号、電動機回転数センサによって計測される電動機回転数信号、補機負荷レベル信号、ブレーキペダル位置信号(図示せず)、アクセルペダル位置信号(図示せず)、ベルト張力値信号(図示せず)あるいはテンションプーリ11の位置信号などが伝達されるCPU(中央演算処理装置)であり、CPU44では、信号処理並びに演算処理が行われ、処理された制御信号が電動機制御回路45に伝えられる。46は電動機制御回路45から電動機制御信号が伝えられる電動機駆動回路であり、その制御信号に基づき、電動機駆動回路46により電動機26の通電制御が行われる。
【0026】
次に、上記構成のベルト伝動装置の動作について説明する。
図1において、エンジン1が停止した状態からエンジン1を始動させる時、車のキースイッチか、あるいは所定の始動条件下で図示していない始動電動発電機によって回転電機用プーリ7が時計回りに回転させられ、この回転駆動力がベルト10を介してクランクプーリ2に伝達され、クランクプーリ2が回転してエンジン1が始動する。
【0027】
この時、ベルト10を介して回転電機用プーリ7からクランクプーリ2に大きな伝達トルクをベルトスリップが生じない状態で伝達させる必要があるので、回転電機用プーリ7とクランクプーリ2との間のベルト張り側領域に設置したベルト張力調整装置9によって、エンジン始動前にベルト10の張力を予め高めの設定張力に切り換えておく。
そして、エンジン1の始動後は、ベルト張力調整装置9によって、エンジン1が補機を駆動する時の通常のベルト10の張力に設定張力が切り換えられる。ここで、ベルト張力調整装置9は、始動前は回転電機用プーリ7のベルト張り側にあり、始動後はクランクプーリ2のベルト緩み側に位置することになる。
【0028】
ベルト10の設定張力の切り換え制御は、次のようにして実施される。
まず、外部信号であるエンジン回転数信号、エンジン始動信号、車速信号、電動機回転数信号、補機負荷レベル信号、ブレーキペダル位置信号(図示せず)、アクセルペダル位置信号(図示せず)、ベルト張力値信号(図示せず)あるいはテンションプーリ11の位置信号などがCPU44に伝えられる。CPU44では信号処理、演算処理され、処理された制御信号が電動機制御回路45に伝えられる。
次に、電動機制御回路45から電動機制御信号が電動機駆動回路46に伝えられ、その制御信号に基づき電動機駆動回路46により電動機26の通電制御が行われる。
【0029】
次に、ベルト張力調整装置9の動作について説明する。
まず、図lにおいて、ベルト張力調整装置9のテンションプーリユニット8がベルト10を右斜め上方向に押圧することにより、ベルト10の張力は調整されている。
図2、図3は始動電動発電機によってエンジンを始動させる場合のベルト張力調整装置9の状態を示しており、ベルト張力調整装置9のテンションプーリユニット8が最も押し出された時のベルト張力調整装置9の内部状態を示している。
【0030】
エンジン始動時に必要な大きなベルト張力に調整するために、テンションプーリユニット8を押し出す方向に電動機26を回転させるように、電動機駆動回路46からブラシ40、コンミテータ32を介して電機子コイル31に通電される。
電機子33に回転力が発生すると、回転シャフト27のネジ部27bと推力シャフト25のネジ部25bのネジ締結部で、電機子33の回転力が推力シャフト25を押し出す力に変換されて、推力シャフト25はフロント側に押し出される。
【0031】
推力シャフト25が押し出されると、フランジ部18b、第3のスプリング20c、第2の連結プレート21b、第2のスプリング20b、第lの連結プレート21a及び第lのスプリング20aを介して、テンションプーリユニット8が第1、第2及び第3のスプリング20a,20b,20cのバネ特性で設定される弾性力でベルト10を押圧する。
この場合、推力シャフト25が押し出され、第l、第2及び第3のスプリング20a,20b,20cは大きく圧縮されるので、バネ弾性力も大きく、テンションプーリユニット8がベルト10を押圧する力も大きくなり、ベルト10の張力も増加し、始動に必要な張力に調整される。この時、ピストン17の先端はシリンダ18の底に装着されている弾性部材22にわずかな距離まで近づく位置に調整される。
【0032】
次に、始動電動発電機が始動されると、ベルト張力調整装置9側のベルト10は、ベルト張り側となる為さらに張力が増加し、テンションプーリ11がベルト10からの反力で押し戻されようとするが、前記ピストン17の先端と弾性部材22が当接して、テンションプーリユニット8が押し戻されるのをブロックするので、通常のオートテンショナの如くテンションプーリ11が押し戻されて、張力が低下してしまい、負荷に駆動力を伝達できないというような不具合は発生しない。
尚、図3のピン19とピンガイド18aは、ピストン17とシリンダ18が相対回転しないように設けられたものであり、ガイド棒43とフランジ18bのスリット18cは、ネジ部27bとネジ部25bの摩擦力によって、回転シャフト27と推力シャフト25が共回りしないように設けられたものである。
【0033】
図4,図5は、エンジン始動後、ベルト張力調整装置9のテンションプーリユニット8が戻され、第3のスプリング20cが伸びて、ちょうどアームプレート16の端面から第3のスプリング20cが離れる直前の状態を示している。
図6,図7は、さらにベルト張力調整装置9のテンションプーリユニット8が戻され、第2のスプリング20bも伸びて、ちょうどアームプレート16の端面から第2のスプリング20bが離れる直前の状態を示している。
図8,図9は、エンジン始動後、ベルト張力調整装置9のテンションプーリユニット8が最大まで戻されて、通常の補機駆動時の位置に達したときの状態を示している。
【0034】
図4〜図9に示されるように、エンジン始動後は、図2、図3の時とは逆回転の方向に電機子33が回転するような制御信号がCPU44で生成され、この制御信号がCPU44から電動機制御回路45、電動機駆動回路46を経て通電制御される。
そして、この信号に基づき推力シャフト25が戻されるとともに、テンションプーリユニット8もベルト反力により押し戻され、直列に接続した第1、第2、第3のスプリング20a,20b,20cのバネ弾性力とベルト10からの反力が釣り合う位置にベルト張力が調整される。
【0035】
図10は、第1、第2、第3のスプリング20a,20b,20cそれぞれのたわみ量とバネ荷重との関係、及び本発明に示すように、第1、第2、第3のスプリング20a,20b,20cを同心円状に直列結合した場合のバネのたわみ量とバネ荷重との関係を同ーグラフ上に示したものである。
図10において、本発明が示す第l、第2、第3のスプリング20a,20b,20cを同心円状に直列結合した場合のたわみ量とバネ荷重の関係を示す曲線のA点は、図2及び図3に示す状態に対応しており、始動直前あるいは始動開始時のスプリングのたわみ量とバネ荷重の関係状態を示している。
同じく、B点は図4及び図5が示す状態に対応し、C点は図6及び図7が示す状態に対応し、更にD点は図8及び図9が示す状態に対応している。
【0036】
尚、第l、第2、第3のスプリング20a,20b,20cのバネ定数をそれぞれk1,k2,k3とした場合、A点とB点の間のバネ定数X3は、
X3=k3
であり、B点とC点の間のバネ定数X2は、
X2=k2・k3/(k2+k3)
であり、C点とD点の間のバネ定数X1は、
X1=k1・k2・k3/(k1+k2+k3)
となり、3段階に変化する。
従って、本発明は、バネのたわみ量によって、バネ荷重及びバネ定数を連続的に複数段階に変化させることが可能であることがわかる。
【0037】
上記構成のベルト伝動装置では、エンジン始動時の高トルク伝達が必要なときのみ、ベルト10の張力を大きくし、始動後は補機駆動に必要な通常の適正な一定張力に調整できるので、ベルト10の寿命を低下させること無く、補機に与える悪影響も最小限に抑えることができる。
尚、図2から図9までに示したものでは、スプリングが3個直列に結合した場合を示しているが、エンジン始動時、及び始動後の補機駆動時だけの切り換えならば、第1及び第3のスプリングの2個だけで構成しても良い。そして、スプリングを3個直列に結合した場合には、例えば、補機駆動動力の大小によって、張力を木目細かく変化させることができ、又、ベルト10の共振を回避するために、バネ定数を変化させたりすることができる。
【0038】
以上のように、複数の円筒状連結プレート21a,21bによりバネ定数の異なる複数のスプリング20a,20b,20cを同心円状に直列結合することができるので、複数のスプリング20a,20b,20cを直線状に結合した場合と同等となり、軸方向に長くなることなく、軸方向にコンパクトな構成が得られる。
【0039】
又、上記構成では、バネ定数の異なる複数のスプリング20a,20b,20cを、バネ定数の大きさの順番に同心円状配置の内側から外側に配置した例を示したが、逆に外側から内側へ順番に結合してもよい。
このように構成することにより、スプリングが撓んだり、あるいは伸びるに従って、バネ定数が連続的に変化し、スプリングの撓みの大きさによってバネ定数を選択設定できるため、バネ定数及びバネの強さを適宜適切に調整でき、たとえば、システムとしての共振点を回避するようにバネ定数を調整して、共振に起因する不具合発生を防止することができる。
【0040】
更に、複数のスプリング20a,20b,20cを軸方向に順番にずらして配置することにより、スプリングが撓んだり、あるいは伸びるに従って、バネ定数が連続的に変化し、スプリングの撓みの大きさによってバネ定数を選択設定できるため、バネ定数及びバネの強さを適宜適切に調整でき、たとえば、システムとしての共振点を回避するようにバネ定数を調整して、共振に起因する不具合発生を防止することができる。
【0041】
又、アームプレート16または推力シャフト25のフランジ部18bのスプリング当接面に緩衝部材23,24を設けており、このように構成することにより、スプリングの撓みに従って、複数のスプリングが順番にアームプレート16の端面に当接していくが、スプリングの撓みの振幅が大きい場合には、スプリングがアームプレート16の端面に連続的に接離を繰返し、衝突騒音を発生する場合があり、スプリング当接面に緩衝部材23,24を設けることにより、騒音発生の不具合を防止できる効果がある。
【0042】
更に、始動時には回転電機のベルト張り側、始動後にはクランクプーリ2のベルト緩み側になる位置にベルト張力調整装置9を設置しており、エンジン始動後は、クランクプーリ2のベルト緩み側に位置するので、ベルトスリップ防止に最も効果があり、ベルト寿命の向上を図ることができる。
そして、ベルト張力調整装置9は、エンジン用プーリであるクランクプーリ2によって、補機を駆動するときにベルト10に生じる緩みが最大となるベルト最緩み領域に配置されるようにしたので、エンジン始動後、ベルト10の最緩み領域で所定のベルト張力が一定に維持され、エンジンからの駆動動力が、ベルト10を介して確実に補機に伝達され、またベルトスリップも防止できる。
【0043】
更に、ベルト張力調整装置9は、ベルト10から大きな反力を受けたときには、弾性部材22によりテンションプーリユニット8が押し戻されるのをブロックするように構成されており、エンジン始動時は、ベルト張力調整装置9が配置されているベルト領域は、ベルト張り側になるため、テンションプーリユニット8はベルト10から大きな反力を受けるが、弾性部材22によってテンションプーリユニット8が押し戻されるのをブロックするので、テンションプーリユニット8が押し戻され、ベルト張り側の張力が低下して、ベルト10が動力を伝達できないというような不具合を防止できる。
【0044】
又、ベルト張力調整装置9は、電動機26の回転力をテンションプーリユニット8の直進方向に移動させる推力に変換するためのネジ式推力機構を備えているので、簡単な構造で、かつ小さな回転トルクで、比較的大きなベルト10の張力設定が可能である。
【0045】
更に、少なくともエンジンの回転数、エンジン始動信号、車速、ベルト張力あるいはテンションプーリユニット位置の情報を処理するCPU44の信号により、弾性変形手段に連結された電動機26の回転を制御するようにしたので、CPU44が、ベルト張力の切り換えとタイミングを効率よく的確に判断して制御でき、ベルトスリップ防止とベルト寿命向上を図ることができる。
【0046】
実施の形態2.
上記実施の形態1においては、シリンダ18の底部に弾性部材22を装着して、テンションプーリユニット8がベルト10から大きな反力を受けた場合のストッパーとした場合を示したが、例えば、油圧ダンパー構造のような弾性流体を用いても良い。
即ちベルト張力調整装置9は、ベルト10から大きな反力を受けたときには、弾性流体の弾性反力により、テンションプーリユニット8が押し戻されるのをブロックすることができる。
【0047】
エンジン始動時は、ベルト張力調整装置9が配置されているベルト領域は、ベルト張り側になるため、テンションプーリユニット8はベルト10から大きな反力を受けるが、弾性流体の弾性反力によって、テンションプーリユニット8が押し戻されるのをブロックするので、テンションプーリユニット8が押し戻されて、ベルト張り側の張力が低下して、ベルト10が動力を伝達できないというような不具合を防止できる。
【0048】
又、上記エンジン1として車両用エンジンを用いることができる。
即ち、エンジン1は車両用エンジンであるので、車両用ベルトの寿命向上が図られるとともに、車両用補機の軸、軸受並びにその支持構造の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0049】
更に、回転電機として電動発電機を使用したので、エンジン1に始動用動力を安定、確実に供給することができるとともに、エンジン始動後には発電機機能により補機あるいはバッテリに電力を供給することができる。
【0050】
【発明の効果】
この発明の請求項1に係るベルト伝動装置によれば、エンジンに始動用動力を伝達する回転電機に取り付けられた回転電機用プーリと、始動用動力をエンジンに伝達するとともに、エンジンの回転動力を補機に伝達するエンジン用プーリと、このエンジン用プーリからの動力で回転して補機を駆動する補機用プーリと、回転電機用プーリ、エンジン用プーリ及び補機用プーリに連続して巻き掛けられたベルトと、このベルトを押圧してベルト張力を調整するベルト張力調整装置を備えたものであって、ベルト張力調整装置は、ベルトが掛けられるとともに回転自在に支持されたテンションプーリと、このテンションプーリを押圧するバネ定数の異なった第1、第2、第3のスプリングと、第1、第2、第3のスプリングを同心円状に直列結合させる2つの円筒状の連結プレートと、テンションプーリを移動させる推力シャフトとから構成され、更に第1、第2、第3のスプリングのバネ定数を装置としての共振点を回避するように調整するとともに、バネ定数の大きさの順番に内側から外側ヘ、あるいは外側から内側へ連結プレートを介して軸方向に順番にずらして配置したので、3つのスプリングを直線状に結合することによって軸方向に長くなることなく、軸方向にコンパクトな構成が得られるとともに、スプリングが撓んだり、あるいは伸びるに従ってバネ定数が連続的に変化し、スプリングの撓みの大きさによってバネ定数を選択設定できるため、バネ定数及びバネの強さを適宜適切に調整でき、更には共振に起因する不具合発生を防止することができる。
【0053】
この発明の請求項2に係るベルト伝動装置におけるベルト張力調整装置によれば、アームプレートのスプリング当接面及びシリンダに設けられたフランジ部のスプリング当接面に緩衝部材を設けたので、騒音発生を防止できる効果がある。
【0054】
この発明の請求項3に係るベルト伝動装置におけるベルト張力調整装置によれば、電動機により回転させられる回転シャフトのネジ部と推力シャフトのネジ部をネジ結合することにより、回転シャフトの回転トルクを推力シャフトの軸方向の力に変換するようにしたので、簡単な構造で、かつ小さな回転トルクで比較的大きなベルトの張力設定が可能となる。
【0055】
この発明の請求項4に係るベルト伝動装置におけるベルト張力調整装置によれば、ベルトから反力を受けたとき、テンションプーリが押し戻されるのをブロックするための弾性部材を設けたので、テンションプーリが押し戻されてベルト張り側の張力が低下して、ベルトが動力を伝達できないというような不具合を防止できる。
【0057】
この発明の請求項5に係るベルト伝動装置によれば、エンジンの回転数、エンジン始動信号、車速、ベルト張力並びにテンションプーリの位置信号の情報を処理するCPUからの指令により、ベルト張力を調整するので、中央処理装置(CPU)がベルト張力の切り換えとタイミングを効率良く的確に判断して制御でき、ベルトスリップ防止とベルト寿命向上を図ることができる。
【0058】
この発明の請求項6に係るベルト伝動装置によれば、始動時には回転電機のベルト張り側、始動後にはエンジン用プーリのベルト緩み側になる位置にベルト張力調整装置が設置されるので、ベルトスリップ防止に最も効果があり、ベルト寿命の向上を図ることができる。
【0059】
この発明の請求項7に係るベルト伝動装置によれば、エンジンとして車両用エンジンを用いたので、車両用ベルトの寿命向上が図られるとともに、車両用補機の軸、軸受並びにその支持構造の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0060】
この発明の請求項8に係るベルト伝動装置によれば、回転電機として電動発電機を用いたので、エンジンに始動用動力を安定、確実に供給することができるとともに、エンジン始動後には発電機機能により、補機あるいはバッテリに電力を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1によるエンジンを中心としたベルト伝動装置全体を示す平面図である。
【図2】 テンションプーリユニットが最も突き出た状態のベルト張力調整装置を示す平面断面図である。
【図3】 テンションプーリユニットが最も突き出た状態のベルト張力調整装置を示す側面断面図である。
【図4】 推力シャフトが電動機側に移動して、第3のスプリングがアームプレートの端面から離れる直前の状態のベルト張力調整装置を示す平面断面図である。
【図5】 推力シャフトが電動機側に移動して、第3のスプリングがアームプレートの端面から離れる直前の状態のベルト張力調整装置を示す側面断面図である。
【図6】 推力シャフトがさらに電動機側に移動して、第2のスプリングがアームプレートの端面から離れる直前の状態のベルト張力調整装置を示す平面断面図である。
【図7】 推力シャフトがさらに電動機側に移動して、第2のスプリングがアームプレートの端面から離れる直前の状態のベルト張力調整装置を示す側面断面図である。
【図8】 推力シャフトが電動機側に最も移動した状態のベルト張力調整装置を示す平面断面図である。
【図9】 推力シャフトが電動機側に最も移動した状態のベルト張力調整装置を示す側面断面図である。
【図10】 第1、第2、第3のスプリングを同心円状に直列結合した場合のたわみ量とバネ荷重の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 エンジン、2 エンジン用プーリ、3,4 補機用プーリ、7 回転電機用プーリ、9 ベルト張力調整装置、10 ベルト、11 テンションプーリ、16 アームプレート、18 シリンダ、18b フランジ部、20a,20b,20c スプリング、21a,21b 連結プレート、22 弾性部材、23,24 緩衝部材、25 推力シャフト、25b,27b ネジ部、27 回転シャフト、44 CPU。
Claims (8)
- エンジンに始動用動力を伝達する回転電機に取り付けられた回転電機用プーリと、始動用動力を上記エンジンに伝達するとともに、エンジンの回転動力を補機に伝達するエンジン用プーリと、このエンジン用プーリからの動力で回転して上記補機を駆動する補機用プーリと、上記回転電機用プーリ、エンジン用プーリ及び補機用プーリに連続して巻き掛けられたベルトと、このベルトを押圧してベルト張力を調整するベルト張力調整装置を備えたベルト伝動装置において、上記ベルト張力調整装置は、上記ベルトが掛けられるとともに回転自在に支持されたテンションプーリと、このテンションプーリを押圧するバネ定数の異なった第1、第2、第3のスプリングと、上記第1、第2、第3のスプリングを同心円状に直列結合させる2つの円筒状の連結プレートと、上記テンションプーリを移動させる推力シャフトとから構成され、更に上記第1、第2、第3のスプリングのバネ定数を装置としての共振点を回避するように調整するとともに、バネ定数の大きさの順番に内側から外側ヘ、あるいは外側から内側へ上記連結プレートを介して軸方向に順番にずらして配置したことを特徴とするベルト伝動装置。
- ベルト張力調整装置は、アームプレートのスプリング当接面及びシリンダに設けられたフランジ部のスプリング当接面に緩衝部材を設けたことを特徴とする請求項1記載のベルト伝動装置。
- ベルト張力調整装置は、電動機により回転させられる回転シャフトのネジ部と推力シャフトのネジ部をネジ結合することにより、回転シャフトの回転トルクを推力シャフトの軸方向の力に変換することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のベルト伝動装置。
- ベルト張力調整装置は、ベルトから反力を受けたとき、テンションプーリが押し戻されるのをブロックするための弾性部材を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のベルト伝動装置。
- エンジンの回転数、エンジン始動信号、車速、ベルト張力並びにテンションプーリの位置信号の情報を処理するCPUからの指令により、ベルト張力を調整することを特徴とする詰求項1から請求項4のいずれか1項に記載のベルト伝動装置。
- 始動時には回転電機のベルト張り側、始動後にはエンジン用プーリのベルト緩み側になる位置にベルト張力調整装置が設置されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のベルト伝動装置。
- エンジンとして車両用エンジンを用いたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のベルト伝動装置。
- 回転電機として電動発電機を用いたことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のベルト伝動装置。
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