本発明の一実施形態について図1ないし図9に基づいて説明すると以下の通りである。図2は、ある材料から製造される製品の品質を表示する品質表示システムの概略構成を示している。図2に示されるように、品質表示システム1は、3つの第1製造設備3・第2製造設備4・第3製造設備6と、製造途中の中間製品の品質特性を測定する第1測定設備5と、製造された製品の最終品質特性を測定する第2測定設備7と、各種の設備3〜7からデータを収集し、収集したデータに基づいて、品質の変動を表示する品質変動表示装置10とを備える構成である。
一般に、製品8は、ワーク2に対し多数の処理工程を経て製造されるが、本実施形態では、本発明の理解を容易にするため、下記のように製造されるものとする。すなわち、ワーク2に対し、第1製造設備3および第2製造設備4がそれぞれの処理を順次行い、その後、第1測定設備5が中間品質特性の測定を行い、さらに、第3製造設備6が処理を行った後、第2測定設備7が製品8の品質特性の測定を行うものとする。第1製造設備3,第2製造設備4,第1測定設備5,第3製造設備6,第2測定設備7が製造ラインを形成している。
製造設備3・4・6は、複数のワーク2に対して所定の処理を行い、複数の製品8を順に製造するものである。製造設備3・4・6は、処理内容の条件である生産条件の変更を示す生産条件情報を、品質変動表示装置10に出力する。生産条件とは、例えば、製品仕様、成形金型などの備品種別などである。
なお、製品仕様とは、製造する製品8に関する仕様であり、製品8の仕様を変更する際に、第1製造設備3に入力される。ここで、製品仕様を全ての製造設備3・4・6に入力してもよいが、製品仕様は全製造設備に共通のため、第1の製造設備にのみ入力するだけで足りる。
また、製造設備3・4・6は、設置された備品(以下、例として成形金型とする)に付けられた各金型を識別するための金型識別番号を読み取る。成形金型が変更された場合、製造設備3・4・6は、新たに設置された成形金型から読み取った金型識別番号を品質変動表示装置10に出力する。金型識別番号は、例えば、各成形金型に記されたバーコードで表されている。そして、製造設備3・4・6は、該バーコードを読み取ることで、設置されている成形金型に対応する金型識別番号を認識する。
測定設備5・7は、上記各製造設備3・4・6で順に製造された各製品の品質特性を同じ順で測定し、測定結果を品質変動表示装置10に出力するものである。個々の製品の品質特性とは、例えば、製品の寸法、電気的特性、重量などである。また、測定設備5・7の各々は、複数の品質特性を測定してもよい。例えば、測定設備5が中間製品の寸法、電気的特性の両方を測定する。
なお、通常は、或るワーク2に対し、各設備3〜7が処理を行う時刻にタイムラグが発生する。つまり、該タイムラグは、各製造設備3・4・6で製造する時点から、各測定設備5・7で測定する時点までの所要時間に相当する。このタイムラグ(所要時間)を以下では「無駄時間」と称する。図2に示される場合では、第1製造設備3で処理が開始される時刻と、第2製造設備4で処理が開始される時刻との間に無駄時間Td1(ここでは、例えば6分)が発生し、第2製造設備4で処理が開始される時刻と、第1測定設備5で測定される時刻との間に無駄時間Td2(ここでは、例えば3分)が発生し、第1測定設備5で測定される時刻と、第3製造設備6で処理が開始される時刻との間の無駄時間Td3(ここでは、例えば5分)が発生し、第3の製造設備6で処理が開始される時刻と、第2の測定設備で測定される時刻との間の無駄時間Td4(ここでは、例えば4分)が発生することになる。該無駄時間は、各設備3〜7の設置条件によって定められるものである。
次に、品質変動表示装置10について説明する。図1に示されるように、品質変動表示装置10は、品質データ取得部(品質データ取得手段)11、品質データ入力部(品質データ取得手段)12、品質データ格納処理部13、品質データ記憶DB(品質データ記憶部)14、生産条件情報取得部(製造データ取得部)15、作業内容情報入力部(製造データ取得部)16、製造データ格納処理部17、製造データ記憶DB(製造データ記憶部)18、タイマー19、表示パラメータ入力部20、区間統計量算出部21、時間情報付加部22、製造データ付加部23、因果関係・無駄時間情報記憶DB(因果関係情報記憶部、所要時間記憶部)24および表示部25を備える。
品質データ取得部11は、第1測定設備5及び第2測定設備7から、第2製造設備4で製造された順に各製品から測定された各品質項目の測定結果を取得する。なお、取得する品質項目は、各測定設備から一つとは限らない。一つの測定設備から複数の品質項目に関する測定値を取得してもよい。例えば、品質データ取得部11は、第1測定設備5から品質項目5a,5b,…の測定値を取得し、第2測定設備7から品質項目7a,7b,…の測定値を取得する。
品質データ入力部12は、測定された測定値を、作業員が入力するためのものである。品質項目によっては、人間の目による測定の方が精度が高い場合がある。例えば、製品の外観不良の有無などである。このような場合、第1測定設備5又は第2測定設備7が測定を行う際に製品の拡大画像を作業員に表示させ、作業員が各製品の外観不良の有無を測定する。品質データ入力部12は、このような人間によって測定される品質項目の測定結果を入力する際に使用される。また、品質データ入力部12は、測定設備5・7と品質変動表示装置10との通信に故障が生じた場合、もしくは、通信機能を有していない測定設備で測定された測定結果を作業員により入力するために使用されてもよい。
品質データ格納処理部13は、各品質項目の測定結果と測定時刻とを対応付けて記憶する処理を行うものである。各測定設備5・7は製造された順に各製品の品質を測定するものであるから、品質データ格納処理部13は、各品質項目の測定結果と測定時刻とを対応付けて記憶することで、各品質項目の測定結果を、製造順に格納することとなる。
品質データ格納処理部13は、品質データ取得部11が第1測定設備5及び第2測定設備7から各品質項目の測定結果を取得すると、取得した時刻をタイマー19から読み取り、読み取った時刻を測定時刻として、該測定結果と対応付ける。そして、品質データ格納処理部13は、各品質項目の測定結果と測定時刻とを対応付けた品質データを、品質データ記憶DB14に格納する。
同様に、品質データ格納処理部13は、品質データ入力部12に各品質項目の測定結果が入力されると、入力された時刻をタイマー19から読み取り、読み取った時刻を測定時刻として、該測定結果と対応付ける。そして、品質データ格納処理部13は、測定結果と測定時刻とを対応付けた品質データを、品質データ記憶DB14に格納する。
なお、品質データ格納処理部13は、第1測定設備5に関する測定結果に対応する品質データと、第2測定設備7に関する測定結果に対応する品質データとを別個のテーブルとして、品質データ記憶DB14に格納する。
品質データ記憶DB(データベース)14は、測定設備5・7で測定された各製品の品質項目の測定結果を製造順序と対応付けて記憶するものである。具体的には、品質データ記憶DB(データベース)14は、品質データ記憶部と各品質項目の測定結果と、該測定結果を取得した時刻(測定時刻に対応する)または該測定結果が入力された時刻(測定時刻に対応する)とを対応付けた品質データを、品質項目ごとに記憶する。
図3は、品質データ記憶DB14が記憶する第1測定設備5に関する品質データの一例を示す図である。図3に示されるように、品質データ記憶DB14は、第1測定設備5が測定した品質項目5a,5b,…ごとに、測定結果と測定時刻とを対応付けて記憶している。
生産条件情報取得部15は、各製造設備3・4・6において各種の生産条件が変更された場合、その旨及び新たに設定された生産条件を示す生産条件情報を取得する。例えば、生産条件取得部15は、各製造設備3・4・6で使用される成型金型が変更された場合、その旨及び新たに設置された成形金型に対応する金型識別番号を各製造設備3・4・6から取得する。
作業内容情報入力部16には、各製造設備における作業内容に関する作業内容情報が入力される。作業内容とは、例えば、製造設備に何らかの故障が発生したときの故障修理や、製造設備に含まれる工具汚れの清掃、治具の位置調整などである。これら作業内容情報は、作業終了時において、作業員により作業内容入力部16に入力される。
製造データ格納処理部17は、上記生産条件情報及び作業内容情報と、該生産条件の変更及び作業の発生時刻とを対応付けた製造データを記憶する処理を行うものである。
製造データ格納処理部17は、生産条件情報取得部15が各製造設備3・4・6から生産条件情報を取得すると、取得した時刻をタイマー19から読み取り、読み取った時刻を生産条件変更の発生時刻として、該生産条件情報と対応付けた製造データを製造データ記憶DB18に格納する。
同様に、製造データ格納処理部17は、作業内容情報入力部16に作業内容情報が入力されると、入力された時刻をタイマー19から読み取り、読み取った時刻を作業の発生時刻として、該作業内容情報と対応付けて製造データを製造データ記憶DB18に格納する。
製造データ記憶DB18は、製造設備3・4・6における生産条件の変更を示す生産条件情報と該生産条件の変更の発生時刻とを対応付けた製造データ、または、前記製造設備における作業の内容を示す作業内容情報と該作業の発生した発生時刻とを対応付けた製造データを、製造装置3・4・6毎に記憶するものである。
図4は、製造データ記憶DB18が記憶する第1製造装置3に関する製造データの一例を示す図である。図4に示されるように、製造データ記憶DB18は、生産条件情報として、時刻09:36:08に成型金型が「#3」に変更されたことを記憶している。さらに、製造データ記憶DB18は、作業内容情報として、時刻10:04:56に冶具の位置調整が行われたこと、および、時刻13:11:32に工具汚れの清掃が行われたことを記憶している。
表示パラメータ入力部20は、表示部25に表示させる品質データの各種パラメータを入力するものである。
品質データのパラメータとは、品質項目種別、表示範囲(時間を指定した表示範囲(例えば、最近8時間)と、製品個数を指定した表示範囲(例えば、最近の製品個数10000個)との両者を含む)、表示する品質変動グラフにおける区間個数(以下、区間幅とする)及び区間のシフト個数、各区間において表示すべき統計量の種別、測定結果の良品範囲を示す上限規格値・下限規格値などである。
なお、統計量とは、例えば、各区間に含まれる製品の測定結果の平均値、各区間に含まれる製品の測定結果の中央値、各区間に含まれる製品の測定結果の標準偏差σもしくは分散もしくは6×σ、各区間に含まれる製品の測定結果における信頼区間(例えば、平均値±3×標準偏差)である。
ここで、信頼区間とは、予め任意に設定された確率を示す信頼度1−αが与えられたときに、品質データxに関する確率関数Pr(x1<x<x2)が1−αとなる、区間(x1,x2)である。ここで、確率関数Pr(x1<x<x2)は、品質データxの度数分布において、品質データxがx1からx2の範囲に含まれる確率を示している。
例えば、信頼度1−αが99.74%であり、品質データxが正規分布に従う場合、信頼区間は、(平均値−3×標準偏差,平均値+3×標準偏差)となることが知られている。
なお、本実施形態では、区間統計量算出部21は、品質データの度数分布が正規分布に近似することを前提として、信頼度99.74%の信頼区間(平均値−3×標準偏差,平均値+3×標準偏差)を算出するものとする。
区間統計量算出部21は、表示パラメータ入力部20に入力されたパラメータに応じて、一定の区間個数の製品に対応する区間を一定のシフト個数ずつずらし、区間ごとに統計量を求めて、該統計量を等間隔に製造順に示した品質変動グラフを作成する。
つまり、区間統計量算出部21は、表示パラメータ入力部20に入力されたパラメータに応じて、一定の区間個数の製品に対応する区間を一定のシフト個数ずつずらし、区間ごとに統計量を求める統計量算出手段(図示しない)と、該統計量を等間隔に製造順にプロットしたグラフを作成する統計量プロット手段(図示しない)とを含むものである。
具体的には、区間統計量算出部21は、表示パラメータ入力部20に入力された品質項目種別に対応する品質データを、品質データ記憶DB14より読み出す。
さらに、区間統計量算出部21は、表示パラメータ入力部20に入力された表示範囲に含まれる品質データを、表示パラメータ入力部20に入力された区間幅およびシフト個数に従って、製造順に連続した該区間幅を有するとともに、該シフト個数ずつずらした複数の区間に割り振る。さらに、区間統計量算出部21は、表示パラメータ入力部20に入力された統計量の種別に応じて、各区間に含まれる品質データの測定結果の統計量を算出する。
そして、区間統計量算出部21は、区間ごとに算出した統計量を、測定時刻順に(つまり、製造された順に)等間隔にプロットした品質変動グラフを作成する。すなわち、各区間の統計量は、シフト個数を一単位とする個数基準軸上にプロットされる。
また、このとき、区間統計量算出部21は、表示パラメータ入力部20に入力された上限規格値・下限規格値を示すラインを品質変動グラフに加える。
そして、区間統計量算出部21は、作成した品質変動グラフと、各区間における中央製品(区間の真ん中で測定された製品)に対応する測定時刻とを時間情報付加部22に出力する。
例えば、表示範囲に対応する製品が1から10000番の製品であり、区間幅が50個、シフト個数が25個である場合、区間統計量算出部21は、1番から50番,26番から75番,51番から100番,・・・,9551番から10000番を表示すべき各区間に含まれる製品と決定する。
また、表示パラメータ入力部20に入力された統計量が平均値である場合、区間統計量算出部21は、各区間に含まれる製品(第1の区間の場合、1番から50番の製品)の測定結果の平均値を算出する。
また、区間統計量算出部21は、各区間における中央製品(例えば、第1の区間の場合、25番の製品)に対応する測定時刻とを時間情報付加部22に出力する。
時間情報付加部22は、区間統計量算出部21が作成した品質変動グラフに対して、測定時刻軸を付加するものである。これにより、各統計量と測定時刻との関係を確認することができる。
ここで、測定時刻軸の目盛間隔を等時間にすることが好ましい。これにより、測定時刻の経過を容易に認識できる。
時間情報付加部22は、予め定められた基準範囲と測定時刻軸の目盛間隔との対応テーブルを予め記憶しており、該基準範囲と区間統計量算出部21が作成した品質変動グラフの表示範囲とを比較することで、付加する測定時刻軸の目盛間隔を決定する。例えば、時間情報付加部22は、基準範囲:T1(1時間)以下と目盛間隔5分、基準範囲T1からT2(3時間)と目盛間隔20分、基準範囲T2からT3(10時間)と目盛間隔1時間、…、を予め記憶している。そして、例えば、区間統計量算出部21が作成した品質変動グラフの表示範囲に対応する時間が8時間である場合、時間情報付加部22は、測定時刻軸の目盛間隔を1時間と決定する。
時間情報付加部22は、決定した測定時刻軸の目盛の時刻に対応する、品質変動グラフの個数基準軸上の位置座標を算出する。具体的には、時間情報付加部22は、区間統計量算出部21から出力された各区間の中央製品の測定時刻を基に、個数基準軸上の位置座標と測定時刻との対応を示す近似式を求める。そして、時間情報付加部22は、決定した測定時刻軸の目盛の時刻に対応する、個数基準軸上の位置座標を算出する。そして、時間情報付加部22は、測定時刻軸の目盛の時刻と、個数基準軸上における位置座標とを対応付けた時間データを生成する。
図5は、時間情報付加部22が生成した時間データの一例を示す図である。図5に示されるように、時間情報付加部22は、測定時刻軸の目盛の時刻9:00:00に対応して、第1測定設備5における個数基準軸上の位置座標が9.8であることを示す時間データを生成している。
さらに、時間情報付加部22は、生成した時間データと、個数基準軸上の位置座標および測定時刻の対応を示す近似式とを基に、一定時間を間隔とする目盛を付した測定時刻軸生成し、生成した測定時刻軸を付加した品質変動グラフを製造データ付加部23に出力する。
因果関係・無駄時間情報記憶DB24は、各製造設備3・4・6と各品質項目との因果関係の有無を記憶するとともに、該因果関係が有の場合、さらに製造設備の処理開始時刻と品質データの測定時刻とのタイムラグを示す無駄時間を記憶している。なお、製造設備3・4・6における処理が品質データに影響を及ぼす場合を因果関係が有るとし、何ら影響を及ぼさない場合には因果関係が無いとしている。該因果関係の有無は、製造設備3・4・6の処理内容と測定項目とを基に、予め決定されている。さらに、無駄時間についても、製造ラインの設計時点において予め定められている。
図6は、因果関係・無駄時間情報記憶DB24における一記憶例を示している。図6において、「−1」は、因果関係「無」を示しており、「−1」以外の数字は、因果関係「有」を表すとともに、無駄時間を示している。図6に示されるように、例えば、因果関係・無駄時間情報記憶DB24は、第1測定設備5における測定項目5aに対して、第1製造設備3及び第3製造設備6が因果関係「無」であることを記憶するとともに、第2製造設備4が因果関係「有」であり、その無駄時間が「3分」であることを記憶している。また、因果関係・無駄時間情報記憶DB24は、図6(a)(b)に示されるように、各測定設備5・7に関する因果関係・無駄時間を別個のテーブルで記憶している。これにより、各測定設備5・7の因果関係・無駄時間を容易に読み出すことができる。
製造データ付加部23は、因果関係・無駄時間情報記憶DB24が記憶する情報を基に、時間情報付加部22から出力された品質変動グラフに製造データを付加するものである。
製造データ付加部23は、因果関係・無駄時間情報記憶DB24から、品質変動グラフに含まれる品質項目と因果関係を有する製造設備名と、該製造設備の無駄時間とを読み出す。そして、製造データ付加部23は、読み出した製造設備名に対応する製造データを製造データ記憶DB18から読み出し、該製造データを品質変動グラフに付加する。このとき、製造データ付加部23は、因果関係・無駄時間情報記憶DB24から読み出した無駄時間を測定時刻軸の目盛から減算することで目盛を調整した製造時刻軸を生成し、生成した製造時刻軸を品質変動グラフに付加する。
さらに、製造データ付加部23は、製造データに含まれる発生時刻に対応する製造時刻軸を有する軸上に、生産条件情報及び作業内容情報を付加する。そして、製造データ付加部23は、測定時刻軸,製造時刻軸,生産条件情報及び作業内容情報が付加された品質変動グラフを表示部25に表示させる。
これにより、作業内容情報及び/又は生産条件情報と、品質項目の測定結果とを、無駄時間を考慮することなく対応付けることができる。
なお、製造データ付加部23は、因果関係の有無に関わらず、第1製造設備3に対応する製造データから製品仕様の変更に関する製造データのみを読み出し、因果関係を有する製造設備名に対応する製造データと同様に、該製品仕様の変更情報を品質変動グラフに付加してもよい。これにより、製品仕様の変更時点を認識することができる。
表示部25は、品質データを表示させるものであり、例えば、液晶パネルにより構成されている。
次に、上記品質変動表示装置10における処理の流れと表示例とについて説明する。図7は、品質変動表示装置10における処理の流れを示すフローチャートである。また、図8及び図9は、表示部25における表示例を示している。
まず、品質データ取得部11は、第1測定設備5及び第2測定設備7から、品質項目ごとに測定結果を取得する。または、品質データ入力部12には、作業員より中間製品の測定結果が入力される。なお、ここでは、品質データ取得部11が測定結果を取得したとする。そして、品質データ格納処理部13は、品質データ取得部11が測定結果を取得した時刻を測定時刻としてタイマー19から読み取るとともに、読み取った測定時刻と該測定結果とを対応付けた品質データを作成する。さらに、品質データ格納処理部13は、作成した品質データを品質データ記憶DB14に格納する(S1)。
次に、表示パラメータ入力部20は、表示すべき品質データに関する各種のパラメータの入力を受け付ける(S2)。
続いて、区間統計量算出部21は、表示パラメータ入力部20に入力された品質項目種別に対応する品質データを品質データ記憶DB14から読み出す。
そして、区間統計量算出部21は、表示パラメータ入力部20に入力された表示範囲に含まれる品質データを、表示パラメータ入力部20に入力された区間幅およびシフト個数に従って、製造順に連続した該区間幅を有するとともに、該シフト個数ずつずらした複数の区間に割り振る。
さらに、区間統計量算出部21は、表示パラメータ入力部20に入力された統計量の種別に応じて、各区間に含まれる品質データの測定結果の統計量を算出する。そして、区間統計量算出部21は、区間ごとに算出した統計量を、測定時刻順に(つまり、製造された順に)等間隔にプロットした品質変動グラフを作成する(S3)。すなわち、各区間の統計量は、シフト個数を一単位とする個数基準軸上にプロットされる。
このとき、区間統計量算出部21は、表示パラメータ入力部20に入力された上限規格値・下限規格値を品質変動グラフに加える。これにより、不良品の増大/減少の動向を容易に認識できる。
また、区間統計量算出部21は、作成した品質変動グラフと、該品質変動グラフの個数基準軸の各区間における中央製品の測定時刻を時間情報付加部22に出力する。
図8は、区間統計量算出部21が作成した品質変動グラフの例を示す図である。
図8の上段は、表示パラメータ入力部20に品質項目:5b,表示範囲:8時間,区間幅:1個,シフト個数:1個、統計量種別:平均値が入力された場合に、区間統計量算出部21が作成した品質変動グラフの一例を示している。図8の上段に示されるように、区間統計量算出部21は、シフト個数1個を区間間隔とする個数基準軸を作成し、該個数基準軸上に、各製品の品質項目5bの測定結果(区間幅に含まれる製品が1個であるため、該製品の測定結果が区間の平均値に相当する)をそのままプロットしている。この結果、区間統計量算出部21が作成した品質変動グラフは、各製品の測定結果を、一定個数(ここでは1個)を等間隔にプロットしているため、例えば3個に1個の割合で品質が変動するような個数基準の周期変動を即座に確認することができる。
なお、図8の上段において、図示されている目盛の間隔を5区間に分割する目盛が存在するが、簡略化するために該目盛の図示を省略している。
一方、図8の中段は、表示パラメータ入力部20に品質項目:5b,表示範囲:8時間、区間幅:50個、シフト個数:25個、統計量種別:平均値・信頼区間(ここでは、平均値±3×標準偏差)・6×標準偏差が入力された場合に、区間統計量算出部21が作成した品質変動グラフの一例を示している。
図示されるように、区間統計量算出部21は、表示パラメータ入力部20に入力されたパラメータに従って、区間幅50個及びシフト個数25個の個数基準軸を作成する。さらに、表示パラメータ入力部20に入力された表示範囲(ここでは、8時間)に対応する製品が1番から550番の製品である場合、区間統計量算出部21は、1番から50番,26番から75番,51番から100番,・・・,501番から550番を割り振られた各区間に含まれる製品と決定する。そして、区間統計量算出部21は、第1の区間(1番から50番の製品)、第2の区間(26番から75番の製品)、…における品質項目5bの測定結果から算出した平均値・信頼区間(ここでは、平均値±3×標準偏差)・6×標準偏差を、製造された順(つまり、第1の区間,第2の区間,…の順)に、等間隔にプロットする。
これにより、各区間に含まれる製品から求められた平均値・信頼区間(ここでは、平均値±3×標準偏差)・6×標準偏差は、一定個数(ここでは、25個)を等間隔としてプロットされる。その結果、品質変動グラフは、図8の上段と同様に、個数基準の周期変動を確認することができる。
また、図8の中段に示されるような品質変動グラフは、区間個数およびシフト個数が図8の上段と比較して大きいため、測定誤差によるノイズ変動や、個数基準における短い周期変動による成分を除去することができる。その結果、特に突発的事象(例えば、工具汚れ清掃時における取り付け位置ずれ)に起因する品質変動の有無を容易に確認することができる。また、品質データが正規分布に近似することを前提として平均値±3×標準偏差の信頼区間を品質変動グラフに含めることで、不良率の増加/減少を確認することができる。
さらに、図8の下段は、表示パラメータ入力部20に品質項目:5b,表示範囲:8日間、区間幅:500個、シフト個数:250個、統計量種別:平均が入力された場合に、区間統計量算出部21が作成したグラフの一例を示している。
図中において「平均」(図中実線)とは、区間幅500個及びシフト個数250個のときの各区間における平均値を示している。「平均(比較用)」(図中点線)とは、区間幅50個シフト個数25個としたときの各区間における平均値(つまり、図8中段における平均値)であり、「平均」で示された折れ線による効果を明確にするために比較として追加したものである。
図示されるように、区間幅及びシフト個数を増加させることで、長期的な品質変動の傾向を容易に確認することができる。これにより、例えば、各製造設備3・4・6における搬送ベルトの磨耗のような長期的な設備変動と、品質変動との関係を容易に理解することができる。
なお、搬送ベルトの交換のような突発的な事象による品質変動を確認するには、図8の中段に示したように、比較的短い区間幅及びシフト個数の個数基準軸を有する品質変動グラフが望ましい。
さらに、搬送ベルトの交換のような消耗備品の交換を行う場合には、該交換前の品質変動を図8の下段のように長い区間幅及びシフト個数の個数基準軸を有する品質変動グラフを表示させることが好ましい。これにより、消耗備品の消耗度に応じた品質変動を確認することができる。
次に、区間統計量算出部21が作成した品質変動グラフに対して、時間情報付加部22は、時間情報である測定時刻軸を付加する(S4)。具体的には、時間情報付加部22は、区間統計量算出部21が作成したグラフの表示範囲と予め定められた基準範囲とを基に、付加する測定時刻軸の目盛間隔を決定する。例えば、区間統計量算出部21が作成したグラフの表示範囲が8時間に対応する場合、時間情報付加部22は、測定時刻軸の目盛間隔を1時間に決定する。
そして、時間情報付加部22は、区間統計量算出部21から出力された各区間の中央製品の測定時刻を基に、個数基準軸上の位置座標と測定時刻との対応を示す近似式を求め、測定時刻軸の目盛の時刻に対応する個数基準軸上の位置座標を算出する。時間情報付加部22は、決定した測定時刻軸の目盛間隔の時刻と、個数基準軸上の位置座標とを対応付けた時間データを生成する。
さらに、時間情報付加部22は、生成した時間データと、個数基準目盛を有する軸上の位置座標および測定時刻の対応関係を示す近似式とを基に、一定時間を間隔とする目盛を有する測定時刻軸を生成する。そして、時間情報付加部22は、生成した測定時刻軸を区間統計量算出部21が作成した品質変動グラフに付加する。
図9中のB部は、時間情報付加部22が付加した測定時刻軸の一例を示している。図示されるように、時間情報付加部22が付加する測定時刻軸の目盛間長さは等間隔ではない。例えば、図中の時刻10:00から11:00の目盛間隔の長さは、時刻12:00から13:00の長さよりも長くなっている。このような測定時刻軸の目盛間隔長さの大小は、製造ラインの滞留の有無を表している。
すなわち、測定時刻軸の目盛間長さが小さい場合、単位時間当たりの測定個数が少なく、製造ラインの滞留が発生している。一方、測定時刻軸の目盛間長さが大きい場合、単位時間当たりの測定個数が大きく、製造ラインがスムーズに流れている。このように、測定時刻軸の目盛間隔長さの大小を見ることで、製造ラインの滞留の有無を容易に確認することができる。
上記S1〜S4の処理と並行して、S5の処理が行われる。すなわち、生産条件情報取得部15は、第1製造設備3,第2製造設備4及び第3製造設備6から、例えば製品仕様や成形金型の変更に関する生産条件情報を取得する。さらに、作業内容情報入力部16には、作業員より各製造設備3・4・6における作業内容情報が入力される。
そして、製造データ格納処理部17は、生産条件情報取得部15が生産条件情報を取得した時刻をタイマー19から読み取るとともに、読み取った時刻と該生産条件情報とを対応付けた製造データを作成する。同様に、製造データ格納処理部17は、作業内容情報入力部16に作業内容情報が入力された時刻をタイマー19から読み取るとともに、読み取った時刻と該作業内容情報とを対応付けた製造データを作成する。そして、製造データ格納処理部17は、作成した製造データを製造データ記憶DB18に格納する。
続いて、製造データ付加部23は、測定時刻軸が付加された品質変動グラフに対して、製造データを付加する処理を行う(S6)。具体的には、製造データ付加部23は、品質変動グラフに表示されている品質項目と因果関係がある製造設備名および無駄時間を、因果関係・無駄時間情報記憶DB24から読み出す。例えば、製造データ付加部23は、図6(a)に示すような因果関係・無駄時間情報記憶DB24から、品質項目5bと因果関係がある製造設備名として「第1製造設備5」と、該第1製造設備5の無駄時間9分とを読み出す。
さらに、製造データ付加部23は、読み出した製造設備名に対応する製造設備の製造データを製造データ記憶DB18から読み出す。例えば、製造データ付加部23は、読み出した製造設備名「第1製造設備5」に対応する製造データとして、図4に示すような製造データを読み出す。
製造データ付加部23は、因果関係・無駄時間情報記憶DB24から読み出した無駄時間を測定時刻軸の目盛から減算した目盛を有する製造時刻軸を生成し、生成した製造時刻軸を品質変動グラフに付加する。
さらに、製造データ付加部23は、製造時刻軸上に、製造データ記憶DB18から読み出した製造データを付加する。例えば、図4に示されるような製造データを読み出した場合、製造データ付加部23は、製造時刻軸上において、発生時刻09:36:08に成形金型が「#3」に変更されたことを付加するとともに、発生時刻10:04:56に「冶具の位置調整」、及び、発生時刻13:11:32に「工具汚れの清掃」が行われたことを付加する。
そして、製造データ付加部23は、測定時刻軸、製造時刻軸、生産条件情報及び作業内容情報が付加された品質変動グラフを表示部25に表示させる。
図9中のC部は、製造データ付加部23が付加した測定時刻軸、製造時刻軸及び生産条件情報及び作業内容情報の一例を示している。図示されるように、例えば、製造データ付加部23は、測定時刻軸の目盛から無駄時間9分を減算した目盛を有する製造時刻軸を生成するとともに、該製造時刻軸上に、図6に示すような製造データに含まれる生産条件情報及び作業内容情報を付加している。
なお、成形金型や製品仕様の変更を示す生産条件情報によれば、次に変更されるまでの区間は、同じ成形金型や製品仕様が適用されることを認識できる。そのため、図示されるように、製造データ付加部23は、生産条件情報である製品仕様や成形金型に関して、変更時点の前後の区間を分けた区間表示を行っている。これにより、どの区間でどのような生産条件が適用されているのかを容易に理解することができる。
また、図示されるように、製造データ付加部23は、主に突発的に発生する作業内容情報に関して、該作業内容情報を表す文字と、該作業内容が発生した時点を示す矢印とで表現している。これにより、どのような作業内容がどの時点で発生したかを容易に理解できる。
さらに、図9中のC部のように、測定時刻軸の目盛から無駄時間9分を減算した目盛を有する製造時刻軸上に生産条件情報及び作業内容情報を表示することで、生産条件情報及び/又は作業内容情報と品質変動との関係を即座に理解することができる。この結果、品質変動がいずれの生産条件の変更又は作業内容に起因するのか容易に突き止めることができる。例えば、図9では、不良の増加原因として、作業内容「工具汚れの清掃」が有力な候補であると判断できる。
また、製造データ付加部23は、表示する品質変動グラフの品質項目と因果関係を有する製造設備3・4・6に関する製造データのみを付加する。そのため、品質変動と因果関係のない余計な情報が表示されないため、品質変動の原因追及を容易に行うことができる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、本実施形態では、3台の製造設備3・4・6と2台の測定設備5・7とを利用しているが、これらの台数は一つでも複数でもよい。
また、製造データ付加部23は、製造時刻軸を付加するものとした。しかしながら、製造データ付加部23は、製造時刻軸を付加せず、製造データの発生時刻に無駄時間を加算することで該発生時刻を調整し、調整後の発生時刻に対応する上記測定時刻軸の座標位置に生産条件情報または作業内容情報を付加してもよい。すなわち、製造データ付加部23は、因果関係・無駄時間情報記憶DB24が記憶する無駄時間を基に製造データの発生時刻を調整し、調整後の発生時刻と前記測定時刻軸とを基に、該発生時刻に対応する生産条件情報または作業内容情報を前記グラフに付加すればよい。これにより、該品質変動グラフを見ることで、生産条件情報または作業内容情報と品質変動との関係を、無駄時間を考慮することなく確認することができる。
また、本実施形態では、品質データ格納処理部13及び製造データ格納処理部17は、同一のタイマー19により、測定時刻と、生産条件の変更および作業の発生時刻を設定している。これにより、品質データに含まれる測定時刻と、製造データに含まれる発生時刻との対応付けが正確になる。しかしながら、タイマー19が品質変動表示装置10の外部に存在し、各測定装置5・7が各製品の測定時刻をタイマー19から読み取り、測定結果と測定時刻とを品質変動表示装置10に出力してもよい。同様に、各製造設備3・4・6は、生産条件の変更があった場合、その発生時刻をタイマー19から読み取り、生産条件情報と該発生時刻とを、品質変動表示装置10に出力してもよい。
また、本実施形態では、時間情報付加部22は、各区間における中央製品の測定時刻を基に、個数基準軸上の位置座標と測定時刻との対応を示す近似式を求めるとしたが、時間情報付加部22は、各区間の最初の製品または各区間に含まれる製品の測定時刻の平均(平均測定時刻)を基に、上記近似式を求めてもよい。各区間を代表する測定時刻は、各区間において同一の基準で算出されていればよい。
なお、各区間に含まれる製品の測定時刻の平均は、区間統計量算出部21にて算出されるものとする。
なお、上記実施形態では、区間統計量算出部21が、品質データの度数分布が正規分布に近似することを前提として、信頼度99.74%に対応する信頼区間(平均値−3×標準偏差,平均値+3×標準偏差)を算出する例について説明した。
しかしながら、信頼度は、予め任意に設定された値でもよく、例えば、99.5%などである。
また、品質データxの度数分布が正規分布に近似しない場合には、該品質データxの平均値xave、標準偏差xσから算出した信頼区間(例えば、信頼度99.74%に対しては、信頼区間(xave−3×xσ,xave+3×xσ)が、所望の信頼度(例えば、99.74%)に対応しないこととなる。これについて、図10を参照しながら以下に説明する。
図10の上段は、この50個の製品の品質データxの度数分布を示している。図示されるように、品質データxの度数分布は、xの値が高い側に裾の広がった形状をしており、正規分布に近似していない。このような場合に、区間統計量算出部21が品質データxの平均値xaveおよび標準偏差xσを用いて信頼区間を算出しても、算出した信頼区間は、所望の信頼度に対応する信頼区間にならない。
例えば、信頼度99.74%に対応する信頼区間として、(xave−3×xσ,xave+3×xσ)を算出したとする。なお、図10の上段において、xave、xave±3×xσは、一点鎖線で示されている。図10の上段に示されるように、品質データxの度数分布が右側に裾が広がった形状であるため、xaveは、ピーク位置よりも右側にずれていることがわかる。また、xave+3×xσより大きな値を持つ個数が多く、信頼区間(xave−3×xσ,xave+3×xσ)が所望の信頼度99.74%に対応していないことがわかる。
これは、品質データxが正規分布に近似していないためである。信頼区間(平均値−3×標準偏差,平均値+3×標準偏差)が信頼度99.74%に対応することは、度数分布が正規分布に近似することを前提としている。
したがって、区間統計量算出部21が全ての品質データに対して一律に、信頼度99.74%に対応する信頼区間として(平均値−3×標準偏差,平均値+3×標準偏差)を算出した場合、正規分布に近似しない品質データについては、本来とは大きくずれた信頼区間を表示してしまうことになる。これによって、製造管理者は、例えば、信頼区間が下限規格値に対して近くなっているとともに、上限規格値に対して余裕があるという間違った判断をする可能性がある。
そこで、区間統計量算出部21は、正規分布に近似するように品質データの変換(変数変換)を行った上で、変換後品質データに対する平均値及び各種統計量を算出し、算出した平均値及び各種統計量に対して逆変換をおこなうことで、品質データの平均値及び各種統計量を求めることが好ましい。
ここでは、上記変数変換の一例として、ベキ変換について説明する(非特許文献1の30頁参照)。ベキ変換は、左右非対称の歪んだ度数分布を、左右対称の度数分布に変換する目的で用いられる。
以下に、区間統計量算出部21におけるベキ変換を用いた平均値及び各種統計量の算出手順について説明する。
なお、品質変動表示装置10は、各品質データの分布の傾向および物性に基づいて予め決定されたベキ変換における指数部の値を記憶する変換方式記憶部を備えている。変換方式記憶部は、品質データの項目と、該品質データに適した指数部の値とを対応付けて記憶している。ここでは、一例として、変換方式記憶部は、品質データxに対する指数部の値として「1/2」を記憶しているとする。このことは、ベキ変換後の変数y=f(x)=x1/2が正規分布に近似することを示している。
まず、区間統計量算出部21は、正規分布に近似しない品質データxに対して、変換方式記憶部から読み出した指数部の値(ここでは、1/2)に従ったベキ変換を行い、変換後の変数y=f(x)=x1/2の度数分布を求める。
図10の下段は、変換後の変数yの度数分布を示すグラフである。図示されるように、変数yの度数分布は、左右対称の正規分布に近似している。
次に、区間統計量算出部21は、変数yの度数分布から、変数yに対する平均値yave、各種統計量(標準偏差yσ、信頼区間(y1,y2)など)を求める。
ここで、変数yの度数分布が正規分布に従うことから、区間統計量算出部21は、例えば信頼度99.74%に対する信頼区間(y1,y2)について、y1=yave−3×yσ、y2=yave+3×yσによって容易に算出することができる。
図10の下段に示されるように、区間統計量算出部21が算出した信頼区間(y1,y2)は、ほぼ信頼度99.74%に対応している。
その後、区間統計量算出部21は、変数yに対して算出した平均値及び統計量を逆変換f−1した値を、品質データxの平均値及び統計量とする。例えば、区間統計量算出部21は、f−1(yave)=yave 2を、品質データxの平均値とする。また、区間統計量算出部21は、(f−1(y1),f−1(y2))、すなわち(y1 2,y2 2)を、品質データxの信頼区間とする。
図10の上段において、破線は、区間統計量算出部21が逆変換により算出した平均値と信頼区間の上限界及び下限界を示している。図示されるように、区間統計量算出部21が逆変換により算出した平均値は、品質データxの度数分布のほぼピーク付近に位置する。さらに、区間統計量算出部21が逆変換を用いて算出した信頼区間は、裾が広がっている右側(品質データxの値が大きい側)において広く、左側(品質データxの値が小さい側)において狭くなっており、所望の信頼度99.74%にほぼ対応したものになっていることがわかる。
図11は、図10に示した製品50個の品質データxを、製造順にプロットしたグラフを示している。なお、図11において、一点鎖線は、品質データxの度数分布が正規分布に近似すると仮定した場合に該品質データxの度数分布から求めた平均値及び信頼区間(信頼度99.74%に対応するもの)を示している。一方、破線は、上述のように、一度品質データxを変数yに変換し、正規分布に従う変数yの度数分布から求めた平均値及び信頼区間の限界を逆変換することで得られた平均値と信頼区間の上側及び下側の限界である。
図11でも示されるように、変数変換および逆変換を用いて算出した場合の信頼区間から外れる個数が、品質データxが正規分布に近似すると仮定した場合の信頼区間から外れる個数よりも小さくなっていることがわかる。これは、変数変換および逆変換を用いて算出した場合の信頼区間に含まれる確率が、所望の信頼度により近くなっているためである。
このように、区間幅50個の製品に対して変数変換および逆変換を用いて算出した平均値および統計量がプロットされた品質変動グラフを表示することで、製造管理者は、品質の優劣や変動傾向をより正確に判断することが可能となる。
なお、ここでは、変数変換及び逆変換に関してベキ変換を説明したが、変換方式はこれに限られない。各品質データの物性を基に、変換後の変数の度数分布がより正規分布に近くなるような変換方式を予め決定しておき、その変換方式を該品質データの項目に対応付けて変換方式記憶部に格納しておけばよい。そして、区間統計量算出部21は、品質データに対応する変換方式を変換方式記憶部から読み出し、読み出した変換方式に従って平均値及び各種統計量を求めればよい。
また、品質変動表示装置10の各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
すなわち、品質変動表示装置10は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM、上記プログラムを展開するRAM、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである品質制御装置10の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記品質制御装置10に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
また、品質変動表示装置10を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された搬送波あるいはデータ信号列の形態でも実現され得る。
以上のように、上記の課題を解決するために、本発明の品質変動表示装置は、製造設備で製造された複数の製品における所定の品質の変動を表示する品質変動表示装置であって、測定設備で測定された各製品の測定結果を製造順序と対応付けて記憶する品質データ記憶部と、製造順に連続した一定の区間個数の製品に対応する区間を一定のシフト個数ずつずらし、区間ごとに統計量を求めて、該統計量を製造順に等間隔に示したグラフを作成するグラフ作成手段と、前記グラフ作成手段が作成したグラフを表示する表示部とを備えている。
また、上記の課題を解決するために、本発明の品質変動表示方法は、製造設備で製造された複数の製品における所定の品質の変動を表示する品質変動表示装置の品質変動表示方法であって、測定設備で測定された各製品の測定結果を製造順序と対応付けて記憶する品質データ記憶ステップと、製造順に連続した一定の区間個数の製品に対応する区間を一定のシフト個数ずつずらし、区間ごとに統計量を求めて、該統計量を製造順に等間隔に示したグラフを作成するグラフ作成ステップと、前記グラフ作成手段が作成したグラフを表示する表示ステップとを含んでいる。
上記の構成または方法によれば、製造順に連続した一定の区間個数の製品に対応する区間を一定のシフト個数ずつずらし、区間ごとに統計量を求めて、該統計量を等間隔に製造順に示したグラフを作成する。すなわち、各区間に対応する統計量は、等間隔に示される。また、ある区間とそれに隣接区間とは一定のシフト個数だけずらされている。したがって、示された統計量間の間隔は、一定のシフト個数に対応する。これにより、統計量は、一定個数を等間隔にする軸上にプロットされた状態となる。その結果、表示部で表示されたグラフを視ることで、例えばある個数に1個の割合で不良が発生するなどの、個数基準における品質の周期的変動を認識することができる。
また、表示されたグラフを分析することで、様々な異常原因に応じた上記周期的変動の複数の周波数成分を確認することができる。
ここで、統計量とは、例えば、区間個数が1個の場合には該製品個数自体の測定結果であり、区間個数が複数である場合にはこれらの測定結果の平均値や中央値などである。
また、区間個数が1個であり、かつ、シフト個数が1個である場合、グラフ作成手段が作成するグラフは、各製品の上記所定の品質の測定結果が、製造順に等間隔に示されたグラフとなる。
また、区間個数が複数であり、統計量が区間に含まれる製品に対応する上記測定結果の平均値である場合、グラフ作成手段が作成するグラフは、製造順に並べられた各製品の上記所定の品質の移動平均を示すものとなる。
なお、上記シフト個数とは、ある区間に含まれる製品のうち最先に製造された製品の製造順番と、該区間に隣接する区間に含まれる製品のうち最先に製造された製品の製造順番との差に相当するものである。
さらに、上記の構成に加えて、本発明の品質変動表示装置は、前記測定設備が前記所定の品質を製造順に測定するものであり、前記品質データ記憶部は、前記測定結果を、測定時刻と対応付けて記憶するものであって、前記品質データ記憶部が記憶する前記測定時刻を基に測定時刻軸を作成するとともに、該測定時刻軸を前記グラフ作成手段が作成したグラフに対して付加する時間情報付加手段を備えることを特徴としている。
上記の構成によれば、上記所定の品質に対応する統計量を、一定個数間隔で確認できるとともに、各製品の測定時刻経過を視覚的に確認することができる。例えば、グラフ上で大きな品質変動が生じた測定時刻を特定することができる。
さらに、上記の構成に加えて、本発明の品質変動表示装置は、前記時間情報付加手段は、前記測定時刻軸に、一定時間間隔の目盛を付すものであることが好ましい。
なお、上記目盛の間隔は、例えば、1時間や10分などであり、限定されるものではない。また、目盛の表示形態は、例えば、軸に対して交差する線やグラフの内側に向かう線などであり、限定されない。
上記の構成によれば、測定時刻軸の目盛間隔長さの大小が製造ラインの滞留の有無を表すこととなる。すなわち、測定時刻軸の目盛間隔長さが小さい場合、単位時間当たりの測定個数が少なく、製造ラインの滞留が発生していることとなる。一方、測定時刻軸の目盛間隔長さが大きい場合、単位時間当たりの測定個数が大きく、製造ラインがスムーズに流れていることを示す。このように、測定時刻軸の目盛間隔長さの大小を見ることで、製造ラインの滞留の有無を容易に確認することができる。
さらに、上記の構成に加えて、本発明の品質変動表示装置は、前記製造設備における生産条件の変更を示す生産条件情報と該生産条件の変更の発生時刻とを対応付けた製造データ、または、前記製造設備における作業の内容を示す作業内容情報と該作業の発生した発生時刻とを対応付けた製造データを記憶する製造データ記憶部と、製造設備で製造する時点から、測定設備で測定する時点までの所要時間を予め記憶する所要時間記憶部と、前記所要時間記憶部が記憶する前記所要時間を前記製造データの発生時刻に加えた調整時刻を求め、該調整時刻と前記測定時刻軸とを基に、生産条件情報または作業内容情報を前記グラフに付加する製造データ付加手段とを備えることを特徴としている。
ここで、製造設備で製造する時点から、測定設備で測定する時点までの所要時間とは、例えば、ある製品が、製造設備で製造が開始される時間と、測定設備で測定が開始される時間とのタイムラグ(時間差)を示している。
上記の構成によれば、製造データ付加手段は、前記所要時間を前記製造データの発生時刻に加えた調整時刻を求め、該調整時刻と前記測定時刻軸とを基に、生産条件情報または作業内容情報を前記グラフに付加する。そのため、該グラフを視ることで、上記所要時間を考慮することなく、生産条件情報または作業内容情報と統計量との対応関係を容易に理解することができる。これにより、例えば、統計量が大きく変動した原因が、どの生産条件の変更または作業内容に因るものであるかを容易に認識できる。
さらに、上記の構成に加えて、本発明の品質変動表示装置は、前記製造設備が複数であり、前記所定の品質と因果関係を有する製造設備を特定するための因果関係情報を記憶する因果関係情報記憶部を有し、前記製造データ付加手段は、前記因果関係情報記憶部が記憶する因果関係情報を基に、前記所定の品質と因果関係を有する製造設備に対応した生産条件情報または作業内容情報のみを前記グラフに付加することが好ましい。
上記の構成によれば、製造データ付加手段は、所定の品質と因果関係を有する製造設備に対応した生産条件情報または作業内容情報のみをグラフに付加する。これにより、品質と因果関係のない余計な情報が表示されないため、グラフに示された統計量の変動原因の追及を容易に行うことができる。
さらに、上記の構成に加えて、本発明の品質変動表示装置は、前記区間個数及び前記シフト個数が入力され、入力された該区間個数及びシフト個数を前記グラフ作成手段に出力するパラメータ入力手段を備えることが好ましい。
上記の構成によれば、ユーザは、パラメータ入力手段に区間個数及びシフト個数を入力することで、所望の区間個数及びシフト個数のグラフを確認することができる。
個数基準における品質の周期的変動の周波数成分は、様々な異常原因に応じて、長短様々である。長い周波数成分の周期的変動を確認したい場合、短い周波数成分の周期的変動はノイズとして作用する。このような場合、区間個数とシフト個数を増やすことで、短い周波数成分を除去することができ、長い周波数成分の周期的変動を容易に確認することができる。
また、区間個数を1個、シフト個数を1個とする場合、測定誤差等の影響が大きくなることがある。このような場合には、区間個数及びシフト個数を1より大きな値にすることで、測定誤差等の影響を除去することができる。
さらに、上記の構成に加えて、本発明の品質変動表示装置は、前記統計量は、各区間に含まれる製品の測定結果の平均値、各区間に含まれる製品の測定結果の中央値、各区間に含まれる製品の測定結果の標準偏差もしくは分散、各区間に含まれる製品の測定結果における信頼区間のうち少なくとも1つである。
ここで、信頼区間とは、測定結果xに関する確率関数Pr(x1<x<x2)が予め任意に設定された確率を示す信頼度となるときの、区間(x1,x2)である。
上記の構成によれば、各区間に含まれる製品の測定結果の平均値、各区間に含まれる製品の測定結果の中央値、各区間に含まれる製品の測定結果の標準偏差もしくは分散、各区間に含まれる製品の測定結果における信頼区間の変動を確認することができる。
さらに、上記の構成に加えて、本発明の品質変動表示装置は、前記統計量が前記信頼区間を含み、前記グラフ作成手段は、製品の測定結果に対して、度数分布が正規分布に近似するような所定の変換を行い、変換後の測定結果に対応する変換対応信頼区間を逆変換することで前記信頼区間を算出することを特徴としている。
上記の構成によれば、製品の測定結果の度数分布が、例えば左右非対称の形状であり、正規分布に近似しない場合であっても、製品の測定結果に対して、度数分布が正規分布に近似するような所定の変換を行い、変換後の測定結果に対応する変換対応信頼区間を逆変換することで前記信頼区間を算出する。これにより、算出された信頼区間は、より正確に所望の信頼度に対応するようになる。その結果、算出された信頼区間と上下限の規格値とを比較することで、製品の不良率の判定を正確に行うことができる。
さらに、上記の構成に加えて、本発明の品質変動表示装置は、前記品質変動グラフ作成手段は、前記品質変動グラフに、前記所定の品質の上限規格値及び下限規格値の少なくとも一方を示すラインを付加することが好ましい。
上記の構成によれば、上限規格値または下限規格値を超えた不良製品の発生の有無を即座に確認することができる。