JP4281341B2 - 潤滑油組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は摩擦係数を低下させた潤滑油組成物に関する。より詳細には、省燃費性に優れたエンジンオイル等の内燃機関用潤滑油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の燃費の改善は重要な技術課題となっており、このための潤滑油の改良検討が進められている。潤滑油による省燃費対策としては、(1)流体潤滑下における摩擦損失の低減を意図した低粘度化、並びに(2)混合潤滑下および境界潤滑下における摩擦損失の低減を意図した摩擦低減剤の添加等が検討されている。
【0003】
また、摩擦特性を改善するものとして液晶が従来から検討されている。例えばアイデンシンクルドルフは液晶のサーモトロピック液晶相とアイソトロピック相間の転移を利用して、可変摩擦下での機械部分に使用する流体有機体として、液晶を潤滑油組成物として使用することを提案している(特開平2−503326号公報)。
【0004】
この他に、基油と液晶と摩擦調整剤とを含む潤滑油組成物が知られているが(特許文献1参照)、特許文献1に開示された潤滑油組成物は摩擦特性を改善する効果はあるものの、摩擦係数の絶対値が高いという問題がある。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−128582号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記課題を解決し、摩擦低減効果に優れ、省燃費性エンジンオイル等として有用な潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、基油に液晶及び有機モリブデン化合物を添加した潤滑油組成物が摩擦係数を大幅に低減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)基油と有機モリブデン化合物と液晶とを含有する潤滑油組成物。
(2)液晶がディスコチック液晶である前記(1)記載の潤滑油組成物。
(3)有機モリブデン化合物がジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンである前記(1)又は(2)記載の潤滑油組成物。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の潤滑油組成物について詳細に説明する。
本発明の潤滑油組成物は基油と液晶と有機モリブデン化合物とを含有することを特徴とする。
【0010】
本発明で用いられる基油としては、特に限定されるものではなく、潤滑油の基油として通常使用されているものであれば、鉱油系、合成系を問わず本発明の潤滑油基油に使用できる。使用可能な鉱油系潤滑油基油としては、例えば、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理等を適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系、又はこれらの混合系炭化水素油等の油が挙げられる。
【0011】
また、使用可能な合成系潤滑油基油としては、例えば、ポリα−オレフィン、ジエステル、ポリオールエステル、トリメリット酸エステル等のポリエステル、リン酸エステル、アルキルベンゼン及びアルキルナフタレン、ポリオキシアルキレングリコール、シリコーン油、フッ素油、アルキルフェニルエーテル油、アルキルビフェニル油、ポリフェニルエーテル油等が挙げられる。
【0012】
前記ポリα−オレフィンとしては、炭素数2〜14、好ましくは4〜12の範囲の分岐を有する、或いは有しないオレフィン炭化水素から選択された任意の1種の単独重合体又は2種以上の共重合により得られるものであり、平均分子量100〜約2000、好ましくは200〜約1000の生成物から選択されるが、特に水素化によって不飽和結合を除去したものが好ましい。好ましいオレフィンオリゴマーとしては、例えばポリブテン、α−オレフィンオリゴマー、エチレン・α−オレフィンオリゴマー、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等である。ポリブテンとしては、例えばイソブテンを主体とし、ブテン−1、及びブテン−2の単量体混合物を共重合させて得られるものが好ましい。また、α−オレフィンオリゴマーとしては、炭化水素の熱分解又は低級オレフィンの3量化〜6量化により得られる炭素数6〜12のα−オレフィン混合物を共重合したものを使用することができる。また、デセンのごとき単独モノマーから得られるオリゴマーも好適である。
【0013】
オレフィンオリゴマーは、塩化アルミニウム、フッ化硼素等のフリーデルクラフト型触媒、チーグラー触媒及び酸化クロム等の酸化物触媒等を使用して製造することができる。又オレフィンオリゴマーの水素化は反応生成物から触媒を除去した後、加温、加圧下において、例えばニッケル−モリブデン/アルミナのような水素化触媒と接触させることにより行うことができる。
【0014】
前記ジエステルエステルとしては、炭素数4〜14の脂肪族二塩基酸あるいは芳香族二塩基酸と炭素数4〜14の脂肪族アルコールとを反応させて得られるものがある。このようなジエステルとしては、例えばジオクチルアジペート、ジ−(1−エチルプロピル)アジペート、ジ−(3−メチルブチル)アジペート、ジ−(1,3−ジメチルブチル)アジペート、ジ−(2−エチルブチル)アジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジ−(イソオクチル)アジペート、ジ−(イソノニル)アジペート、ジ−(3,5,5トリメチルヘキシル)アジペート、ジ−(イソデシル)アジペート、ジ−(ウンデシル)アジペート、ジ−(トリデシル)アジペート、ジ−(イソテトラデシル)アジペート、ジ−(2、2、4−トリメチルペンチル)アジペート、ジ−〔混合(2−エチルヘキシル、イソノニル)〕アジペート、ジ−(1−エチルプロピル)アゼレート、ジ−(2−エチルブチル)アゼレート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジ−(イソオクチル)アゼレート、ジ−(イソノニル)アゼレート、ジ−(3,5,5トリメチルヘキシル)アゼレート、ジ−(イソデシル)アゼレート、ジ−(トリデシル)アゼレート、ジ−〔混合(2−エチルヘキシル、イソノニル)〕アゼレート、ジ−〔混合(2−エチルヘキシル、デシル)〕アゼレート、ジ−〔混合(2−エチルヘキシル、イソデシル)〕アゼレート、ジ−〔混合(2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチル)〕アゼレート、ジ−〔混合(2−エチルヘキシル、デシル)〕アゼレート、ジ−(n−ブチル)セバケート、ジ−(イソブチル)セバケート、ジ−(1−エチルプロピル)セバケート、ジ−(3−メチルブチル)セバケート、ジ−(1,3−ジメチルブチル)セバケート、ジ−(2−エチルブチル)セバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジ−〔2−(2’−エチルブトキシ)エチル〕セバケート、ジ−(2,2,4−トリメチルペンチル)セバケート、ジ−(イソノニル)セバケート、ジ−(3,5,5トリメチルヘキシル)セバケート、ジ−(イソデシル)セバケート、ジ−(イソウンデシル)セバケート、ジ−(トリデシル)セバケート、ジ−(イソテトラデシル)セバケート、ジ−〔混合(2−エチルヘキシル、イソノニル)〕セバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)グルタレート、ジ−(イソウンデシル)グルタレート及びジ−(イソテトラデシル)グルタレート、ジ−n−ブチルフタレート、ジ−n−ヘキシルフタレート、ジ−n−ヘプチルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレート、オクチルデシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート等が挙げられる。
【0015】
前記ポリオールエステルとしては、炭素数5〜9のネオペンチルポリオール、例えばネオペンチルグリコール(NPG)、トリメチロールプロパン(TMP)又はペンタエリスリトール(PE)等と炭素数4〜18の有機酸との合成によって作られる。このようなポリオールエステルの具体例としては、NPG・ジ−(ヘプタノエート)、NPG・ジ−(2ーエチルブチレート)、NPG・ジ−(シクロヘキサノエート)、NPG・ジ−(ヘプタノエート)、NPG・ジ−(イソヘプタノエート)、NPG・ジ−(オクタノエート)、NPG・ジ−(2−エチルヘキサノエート)、NPG・ジ−(イソオクタノエート)、NPG・ジ−(イソノナノエート)、NPG・ジ−(イソデカノエート)、NPG・ジ−{混合(ヘキサノエート,ヘプタノエート)}、NPG・ジ−{混合(ヘキサノエート,オクタノエート)}、NPG・ジ−{混合(ヘキサノエート,ノナノエート)}、NPG・ジ−{混合(ヘプタノエート,オクタノエート)}、NPG・ジ−{混合(ヘプタノエート,ノナノエート)}、NPG・ジ−{混合(ヘプタノエート,イソオクタノエート)}、NPG・ジ−{混合(ヘプタノエート,イソノナノエート)}、NPG・ジ−{混合(イソオクタノエート,イソノナノエート)}、NPG・ジ−{混合(ブタノエート,トリデカノエート)}、NPG・ジ−{混合(ブタノエート,テトラデカノエート)}、NPG・ジ−{混合(ブタノエート,ヘキサデカノエート)}、NPG・ジ−{混合(ブタノエート,オクタデカノエート)}、NPG・ジ−{混合(ヘキサノエート,イソオクタノエート,イソノナノエート)}、NPG・ジ−{混合(ヘキサノエート,イソオクタノエート,イソデカノエート)}、NPG・ジ−{混合(ヘプタノエート,イソオクタノエート,イソノナノエート)}、NPG・ジ−{混合(ヘプタノエート,イソオクタノエート,イソデカノエート)}、NPG・ジ−{混合(オクタノエート,イソノナノエート,イソデカノエート)}、TMP・トリ−(ペンタノエート)、TMP・トリ−(ヘキサノエート)、TMP・トリ−(ヘプタノエート)、TMP・トリ−(オクタノエート)、TMP・トリ−(ノナノエート)、TMP・トリ−(イソペンタノエート)、TMP・トリ−(2−エチルブチレート)、TMP・トリ−(イソペンタノエート)、TMP・トリ−(イソオクタノエート)、TMP・トリ−(2−エチルヘキサノエート)、TMP・トリ−(イソノナノエート)、TMP・トリ−(イソデカノエート)、TMP・トリ−〔混合(ブチレート、オクタデカノエート)〕、TMP・トリ−〔混合(ヘキサノエート、ヘキサデカノエート)〕、TMP・トリ−〔混合(ヘプタノエート、トリデカノエート)〕、TMP・トリ−〔混合(オクタノエート、デカノエート)〕、TMP・トリ−〔混合(オクタノエート、ノナノエート)〕、TMP・トリ−〔混合(ブチレート、ヘプタノエート、オクタデカノエート)〕、TMP・トリ−〔混合(ペンタノエート、ヘプタノエート、トリデカノエート)〕、TMP・トリ−〔混合(ヘキサノエート、ヘプタノエート、オクタノエート)〕、TMP・トリノナノエート、TMP・トリ−〔混合(ヘプタノエート、ノナノエート)〕、TMP・トリ−〔混合(ヘプタノエート、オクタノエート、ノナノエート)〕、又、PE・テトラ(ペンタノエート)、PE・テトラ(ヘキサノエート)、PE・テトラ(イソペンタノエート)、PE・テトラ(2−エチルブチレート)、PE・テトラ(ヘプタノエート)、PE・テトラ(イソヘプタノエート)、PE・テトラ(イソオクタノエート)、PE・テトラ(2−エチルヘキサノエート)、PE・テトラ(ノナノエート)、PE・テトラ(イソノナノエート)及びPEと炭素数4〜9の直鎖状又は分岐状カルボン酸の混合物とのエステル等である。
【0016】
また、NPG、TMP及びPE以外のネオペンチルポリオール、例えば2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパンジオール、トリメチロールエタン及びトリメチロールヘキサンと有機酸単独、又は混合したポリオールエステル等も挙げられる。
【0017】
前記リン酸エステルとしては、トリクレジルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、プロピルフェニルジフェニルフォスフェート、ジプロピルフェニルフェニルフォスフェート、トリプロピルフォスフェート、ジブチルフェニルフェニルフォスフェート、ブチルフェニルジフェニルフォスフェート、トリブチルフェニルフォスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)フォスフェート、トリアルキルフェニルフォスフェート、アルキルフェニルフェニルフォスフェート等が挙げられる。
【0018】
前記アルキルベンゼン又はアルキルナフタレンは、分岐又は直鎖のα−オレフィンとベンゼン、トルエン又はナフタレン等の芳香族炭化水素をフッ化水素、硫酸、塩化アルミニウム等の触媒を用いてアルキル化して得られ、主としてジアルキル化芳香族炭化水素を含む油である。アルキル基としては、主としてC12のもので直鎖又は分岐のいずれのものもこれに属する。
【0019】
前記ポリオキシアルキレングリコールとしては、アルキレン基の炭素数が2〜5、好ましくは2〜3の直鎖状又は分岐状アルキレンオキシドの開環重合体である。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、或いはそれらの混合物、好ましくはプロピレンオキシドであり、好ましくはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールを挙げることができ、分子量範囲100〜2000のもの、好ましくは200〜1000のものである。分子の両端がアルキル基のもの、片端がアルキル基で片端がヒドロキシル基のもの、両端ともヒドロキシル基のものが含まれる。このアルキル基は通常C1 〜C18の範囲のものである。
【0020】
本発明で用いられる潤滑油基油は、2種以上の鉱油系基油又は合成油系基油の混合物であって差し支えなく、鉱油系基油と合成油系基油の混合物であっても差し支えない。そして、上記混合物における2種以上の基油の混合比は、任意に選ぶことができる。本発明で使用する潤滑油基油には、粘度に関して特別な限定条件はないが、通常は40℃における動粘度が1〜1000mm2/sの範囲にあることが好ましく、5〜800mm2/sの範囲にあることがより好ましい。
【0021】
本発明で用いられる有機モリブデン化合物としては、摩擦低減効果を有するものであれば特に限定されない。有機モリブデン化合物の具体例としては、例えば、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)、ジアルキルジチオリン酸モリブデン(MoDTP)モリブデン酸アミン塩等が挙げられるが、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンが好ましい。ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンの化学構造は下記の一般式(I)で示される。
【0022】
【化1】
(式中、R1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜18、好ましくは炭素数4〜13の直鎖又は分枝の炭化水素基であり、飽和炭化水素でも不飽和炭化水素でもよい。X1、X2、Y1、及びY2はそれぞれ独立に酸素原子又はイオウ原子である。)
【0023】
前記炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、ノニル基、2−エチルヘキシル基、イソトリデシル基、ラウリル基等のアルキル基、アルキルアリール基、アリールアルキル基が挙げられる。また、上記一般式(I)におけるX1、X2、Y1、及びY2は、個別に、硫黄原子または酸素原子を示しているが、優れた摩擦低減効果を付与できることから、X1、X2、Y1、及びY2の少なくとも1個は硫黄原子であることが好ましい。
【0024】
ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンの具体例としては、例えば、ジブチルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジペンチルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジヘキシルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジヘプチルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジオクチルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジノニルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジデシルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジウンデシルジチオカルバミン酸硫化モリブデン、ジドデシルジチオカルバミン酸モリブデン、ジトリデシルジチオカルバミン酸モリブデン、ジブチルジチオカルバミン酸硫化オキシモリブデン、ジペンチルジチオカルバミン酸硫化オキシモリブデン、ジヘキシルジチオカルバミン酸硫化オキシモリブデン、ジヘプチルジチオカルバミン酸硫化オキシモリブデン、ジオクチルジチオカルバミン酸硫化オキシモリブデン、ジノニルジチオカルバミン酸硫化オキシモリブデン、ジデシルジチオカルバミン酸硫化オキシモリブデン、ジウンデシルジチオカルバミン酸硫化オキシモリブデン、ジドデシルジチオカルバミン酸硫化オキシモリブデン、及びジトリデシルジチオカルバミン酸硫化オキシモリブデン等を挙げることができる。
【0025】
本発明で用いられる有機モリブデン化合物の配合量は、本発明の潤滑油組成物中にMo基準で通常100〜1000ppm、好ましくは600〜1000ppm、さらに好ましくは600〜700ppmである。配合量が少ないと十分な摩擦低減効果が得られず、また、多すぎると潤滑油の酸化安定性に影響を及ぼしたり、スラッジや沈殿が生成する原因となる。
有機モリブデン化合物はそれぞれ単独で用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明で用いられる液晶としてはサーモトロピック型の液晶が好ましく、例えば、ディスコチック液晶、ネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶等を使用することができ、ディスコチック液晶が特に好ましい。ディスコチック液晶の具体例としては、例えば、トリフェニレン系化合物、トルキセン系化合物、フタロシアニン系化合物、トリアジン系化合物、長鎖テトラフェニルポルフィリン系化合物等が挙げられ、下記式で表される液晶化合物が好ましい。
【0027】
【化2】
【0028】
本発明ではこれらの液晶を単独で、又は2種以上を混合して用いてもよい。液晶の配合量は、本発明の潤滑油組成物中に通常1重量%以上、好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であるが、液晶の配合量が多くなりすぎるとと摩擦係数が高くなるので、その上限は30重量%以下とすることが好ましい。
また、液晶の配向を安定させるために公知の液晶配向剤、例えばオクダデシルトリメトキシシラン、ポリビニルアルコール、ポリイミド等を添加してもよい。
【0029】
本発明の潤滑油組成物に他の摩擦調整剤を添加してもよく、そのような摩擦調整剤として、例えば、極圧剤、摩耗防止剤、油性剤が挙げられる。
前記極圧剤及び磨耗防止剤としては、例えば、硫黄系化合物やリン系化合物等が挙げられる。硫黄系化合物としては、例えば、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類が、またリン系化合物としては、例えば、リン酸モノエステル類、リン酸ジエステル類、リン酸トリエステル類、亜リン酸モノエステル類、亜リン酸ジエステル類、亜リン酸トリエステル類、及びこれらのエステル類とアミン類、アルカノールアミン類との塩等が挙げられる。
【0030】
より具体的には、前記硫黄系化合物としては、一般式(RO)3P=S (式中Rはアルキル基、アリル基、フェニル基であり、同一又は異種でもよい)で示される化合物(例えば、トリアルキルフォスフォロチオネート、トリフェニルフォスフォロチオネート、アルキルジアリルフォスフォロチオネート等)、一般式 R1−Sx−R2 (式中、xは1〜8の整数、R1 、R2 は炭素数4〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基を表す)で表される硫化オレフィン(例えば、ジイソブチルジサルファイド、ジオクチルポリサルファイド、ジ−t−ノニルポリサルファイド、ジ−t−ブチルポリサルファイド、ジベンジルポリサルファイド、ジフェニルサルファイド、ジフェニルジサルファイド)、ポリイソブチレン又はテルペン類等のオレフィン類を硫黄等の硫化剤で硫化した硫化オレフィン類、スルファライズドスパームオイル及びスルファライズドジペンテン等の硫化油脂類、キサンチックジサルファイド等のチオカーボネート類、一級アルキルジチオリン酸亜鉛、二級アルキルジチオリン酸亜鉛、アルキル−アリルジチオリン酸亜鉛、アリルジチオリン酸亜鉛等のジチオリン酸亜鉛系添加剤等が挙げられる。
【0031】
前記リン系化合物の具体例としては、例えば、ベンジルジフェニルフォスフェート、アリルジフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、エチルジフェニルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、ジブチルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、ジクレジルフェニルフォスフェート、エチルフェニルジフェニルフォスフェート、ジエチルフェニルフェニルフォスフェート、プロピルフェニルジフェニルフォスフェート、ジプロピルフェニルフェニルフォスフェート、トリエチルフェニルフォスフェート、トリプロピルフェニルフォスフェート、ブチルフェニルジフェニルフォスフェート、ジブチルフェニルフェニルフォスフェート、トリブチルフェニルフォスフェート等のリン酸エステル、トリイソプロピル亜リン酸エステル、ジイソプロピル亜リン酸エステル等の亜リン酸エステル、ヘキサメチルフォスフォリックトリアミド、n−ブチル−n−ジオクチルホスフィネート、ジ−n−ブチルヘキシルホスホネート、アミンジブチルホスホネート、ジブチルホスホロアミデート等を挙げることができる。
また上記の硫黄系、ジチオリン酸亜鉛系、リン系化合物等は単独で使用してもよいが、二種以上組み合わせて添加してもよい。
【0032】
油性剤としては、脂肪族モノカルボン酸、例えばカプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられ、また脂肪族ジカルボン酸としてはアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、その他C15〜C30の脂肪族ジカルボン酸、及びこれら脂肪族(ジ)カルボン酸のエステル、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪族アミン塩、脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0033】
これらの油性剤は単独又は混合してよい。油性剤は機械的摩擦部表面に吸着し、単に、摩擦・摩耗性を改善しうるのみでなく、液晶と協同して潤滑性をより向上させることができる。
【0034】
さらに、本発明の潤滑油組成物に慣用の潤滑油添加剤、例えば、酸化防止剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、錆止め剤、腐食防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、ゴム膨潤剤、消泡剤、着色剤等を単独で、又は数種類組み合わせて添加してもよい。
【0035】
前記酸化防止剤としては、フェノール系化合物やアミン系化合物など、潤滑油に一般的に使用されているものであればいずれのものでも用いることができ、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどのアルキルフェノール類、メチレン−4,4−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)などのビスフェノール類、フェニル−α−ナフチルアミンなどのナフチルアミン類、ジアルキルジフェニルアミン類、ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛などのジアルキルジチオリン酸亜鉛類、フェノチアジン類等が挙げられる。
【0036】
前記金属系清浄剤としては、例えば、アルカリ土類金属スルフォネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリチレート、アルカリ土類金属ホスフォネート等が挙げられる。
【0037】
前記無灰分散剤としては、例えば、アルケニルコハク酸イミド、ベンジルアミン、アルキルポリアミン、又はそのこれらのホウ素化合物や硫黄化合物による変性品、アルケニルコハク酸エステル等が挙げられる。
【0038】
前記錆止め剤としては、例えば、アルケニルコハク酸、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル、石油スルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート等が挙げられる。
前記腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系の化合物等が挙げられる。
【0039】
前記粘度指数向上剤としては、非分散型粘度指数向上剤や分散型粘度指数向上剤が使用でき、具体的には、ポリメタクリレート類や、エチレン−プロピレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリスチレン、スチレン−ジエン共重合体等のオレフィンコポリマー類等が挙げられる。
【0040】
前記流動点降下剤としては、例えば、使用する潤滑油基油に適合するポリメタクリレート系のポリマーなどが使用できる。
前記消泡剤としては、例えば、ジメチルシリコーンやフルオロシリコーンなどのシリコーン類が使用可能である。
【0041】
これらの添加剤の添加量は任意であるが、通常、潤滑油組成物全量基準で、消泡剤の含有量は0.0005〜1質量%、粘度指数向上剤の含有量は1〜30質量%、腐食防止剤の含有量は0.005〜1質量%、その他の添加剤の含有量は、それぞれ0.1〜15質量%程度である。
【0042】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、本実施例において「%」は「重量%」を意味する。
【0043】
(実施例1)
トヨタ純正キャッスル SL 5W−20(東燃ゼネラル石油(株)製、基油:鉱油)にMoDTCを添加して、Mo含量を700ppm(Mo元素量換算)としたMoDTC含有API/SL ILSAC/GF-3 SAE/5W-20油を調製した。このMoDTC含有API/SL ILSAC/GF-3 SAE/5W-20油(以下、「Mo含有油」という)と下記式で示されるディスコチック液晶(FFL Funktionsfluid Gmbh社製):
【0044】
【化3】
とを、それぞれ(i)90%:10%及び(ii)80%:20%の比で配合して本発明の潤滑油組成物を調製した。
【0045】
SRV型往復動式摩擦試験機(試験片φ15円筒/円盤(材質SUJ-2相当鋼)、周波数50Hz、振幅1.0mm、荷重400N、温度40〜120℃)を用いて上記潤滑油組成物(i)及び(ii)の摩擦係数を測定した。その結果を、以下の表1に示す。
【0046】
また、比較例として、(iii)上記のMo含有油、(iv)液晶、(v)Mo非含有油(前記(iii)のMo含有油からMoDTCのみを取り除いたもの)、及び(vi)Mo非含有油+液晶D1(配合比80%:20%)のそれぞれについても同様にしてSRV型往復動式摩擦試験機を用いて同条件で摩擦係数を測定した。その結果を以下の表1に併せて示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示されるとおり、(iii)Mo含有油単独及び(iv)液晶単独の場合と比較して、Mo含有油と液晶とを組合せた試料油(i)又は(ii)は、各温度条件下での摩擦係数を大幅に低下させることができる。
また、MoDTCを含有しない潤滑油組成物(v)及び(vi)の場合では、液晶を配合しても摩擦係数は低下せず、むしろ増大することがわかる。
【0049】
【発明の効果】
基油にMoDTC等の有機モリブデン化合物と液晶とを組合せて配合した潤滑油組成物とすることにより、それぞれ単独で配合した潤滑油組成物と比較して境界潤滑領域での摩擦係数を大幅に低減した潤滑油組成物を提供できる。
本発明の潤滑油組成物は、例えば省燃費性が要求される内燃機関用潤滑油等に有用である。
Claims (1)
- 基油と有機モリブデン化合物と液晶とを含有する潤滑油組成物であって、有機モリブデン化合物がジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンであり、液晶が
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