JP4279980B2 - コークス製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃プラスチックをコークス炉に装入して乾留し、コークスを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック産業廃棄物、プラスチック一般廃棄物として大量に排出される廃プラスチックの処理に関しては、従来は大部分が埋め立てや一部焼却処理されている。廃プラスチックは、埋め立てにおいては土中の細菌やバクテリアで分解されず、焼却する場合は発熱量が大きく焼却炉に悪影響を及ぼすとともに、塩素を含む廃プラスチックの場合は排ガス中の塩素の処理が問題となっている。埋め立て処分場が将来不足することが予想されること、及び環境問題の高まりから廃プラスチックのリサイクルの促進が望まれている。リサイクルの方法としては、プラスチックとしての再利用のほか、燃焼時の熱の利用や熱分解で得られるガスや油を燃料や化学原料として利用する方法が考えられる。
【0003】
廃プラスチックをコークス炉に添加して処理する方法は、例えば、特開平4−41588号公報に、コークス炉で石炭を乾留後、廃プラスチックを炭化室上部空間部に装入してコークスを製造する方法が開示されている。この方法では、高温のコークス炉において廃プラスチックの大部分を熱分解させることが可能であり、その結果、水素、メタン、エタン、プロパン等を含む高カロリーの熱分解ガスが得られ、これらは石炭の熱分解によりコークス炉炭化室内で発生するコークス炉ガス中に含まれて回収され、エネルギー源として再利用される。
【0004】
しかし、コークス炉で石炭を乾留後、廃プラスチックを炭化室上部空間部に装入してコークスを製造する方法においては、場合により、コークス押出し時における発塵が大きかったり、コークス押出し時の押出し抵抗が大きくなるという問題点があった。
【0005】
コークス押出し時における発塵が大きいと、作業環境が悪化するとともに、集塵コストが増加するという点で、問題である。また、コークス押出し時の押出し抵抗が大きいと、コークス炉の炉壁に過大な負荷を加えることになり、コークス炉炉壁の劣化を早めたり、場合によっては炉壁の損傷につながることがあるという点で問題である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、コークス炉で石炭を乾留後、廃プラスチックを炭化室上部空間部に装入してコークスを製造する方法において、押出し時の発塵を抑制し、かつ押出し抵抗を低減する方法の開発が必要とされていた。
【0007】
本発明は、廃プラスチックを炭化室上部空間部に装入してコークスを製造する方法において、押出し時の発塵を抑制し、かつ押出し抵抗を低減するコークス製造方法を提示することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
【0010】
(1) コークス炉の炭化室に先にコークス原料を装入した後で、その後炉頂空間部に廃プラスチックを装入する方法において、予め、装入する廃プラスチックの種類および量に応じて、実際のコークス炉または試験コークス炉を用いて、(a)まず、廃プラスチックを装入しない状態で、火落ち後以降押出し時までにおけるコークスケーキ表面の高さ変化を一定時間ごとに測定し、(b)次に、同じコークス炉において、火落ち後に廃プラスチックを炭化室炉頂空間部に装入し、同様の方法で高さ変化を測定し、(c)両者の差により、廃プラスチック自体の装入高さ変化を求め、(d)廃プラスチックの高さが熱分解開始前の20%に到達するまでの時間、あるいは、廃プラスチックの高さ変化が、1時間あたり3%に低下するまでの時間の、どちらか短い方の時間を廃プラスチックの熱分解時間とし、廃プラスチックの熱分解時間を求め、コークス押出時より該熱分解時間前またはそれ以前に、廃プラスチックを装入することを特徴とする高炉用コークスの製造方法。
【0011】
(2) コークス炉の炭化室に先にコークス原料を装入した後で、その後炉頂空間部に廃プラスチックを装入する方法において、予め、装入する廃プラスチックの種類および量に応じて、実際のコークス炉または試験コークス炉を用いて、(a)まず、廃プラスチックを装入しない状態で、火落ち後以降押出し時までにおけるコークスケーキ表面の高さ変化を一定時間ごとに測定し、(b)次に、同じコークス炉において、火落ち後に廃プラスチックを炭化室炉頂空間部に装入し、同様の方法で高さ変化を測定し、(c)両者の差により、廃プラスチック自体の装入高さ変化を求め、(d)廃プラスチックの高さが熱分解開始前の20%に到達するまでの時間、あるいは、廃プラスチックの高さ変化が、1時間あたり3%に低下するまでの時間の、どちらか短い方の時間を廃プラスチックの熱分解時間とし、廃プラスチックの熱分解時間を求め、火落ち時以降に廃プラスチックを装入し、該熱分解時間以上保持した後にコークスを押し出すことを特徴とする高炉用コークスの製造方法。
【0012】
(3) コークス炉の炭化室に先にコークス原料を装入した後で、その後炉頂空間部に廃プラスチックを装入する方法において、予め、装入する廃プラスチックの種類および量に応じて、実際のコークス炉または試験コークス炉を用いて、(a)まず、廃プラスチックを装入しない状態で、火落ち後以降押出し時までにおけるコークスケーキ表面の高さ変化を一定時間ごとに測定し、(b)次に、同じコークス炉において、火落ち後に廃プラスチックを炭化室炉頂空間部に装入し、同様の方法で高さ変化を測定し、(c)両者の差により、廃プラスチック自体の装入高さ変化を求め、(d)廃プラスチックの高さが熱分解開始前の20%に到達するまでの時間、あるいは、廃プラスチックの高さ変化が、1時間あたり3%に低下するまでの時間の、どちらか短い方の時間を廃プラスチックの熱分解時間とし、廃プラスチックの熱分解時間を求め、(e)廃プラスチックの種類および量と、該廃プラスチックの熱分解時間との相間関係を求め、該相間関係から、廃プラスチック熱分解時間が操業条件によって決定される置時間の範囲内となるように、廃プラスチックの量を装入しようとする廃プラスチックの種類に応じて求め、求めた量以下の廃プラスチックを、火落ち時以降でかつ遅くともコークス押出時より該熱分解時間前に装入することを特徴とする高炉用コークスの製造方法。
【0013】
(4) 前記廃プラスチックが、減容固化した塊状物であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の高炉用コークスの製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、コークス炉の炭化室に先にコークス原料を装入した後で、その後炉頂空間部に廃プラスチックを装入してコークスを製造する方法において、コークス押出し時における発塵が大きくなるとともに、コークス押出し時の押出し抵抗が大きくなる原因について詳細に調べた。
【0015】
その結果、コークス押出し時における発塵が大きくなる原因は、熱分解していない廃プラスチックが押出し時に飛散するためであることをつきとめた。これは、コークス層の上の熱分解していない廃プラスチックは、コークスのような融着した塊状の固形物とはなっていないので、わずかな衝撃で崩れ、飛散するためである。
【0016】
また、コークス押出し時の押出し抵抗が大きくなる原因についても、廃プラスチックの熱分解が完了していないために、コークス押出し時に、コークスケーキと炉壁の隙間に、熱分解していない廃プラスチックが入り込み、コークスと炉壁間の摩擦抵抗が上昇するためであることがわかった。また場合によっては、熱分解が完了していない廃プラスチックの厚みが大きいために、押出し時にコークス炉の天井につかえてしまい、押出し抵抗が上昇することもあった。
【0017】
そこで、本発明者らは、押出し時における発塵を抑制し、押出し抵抗を抑制するため、押出し時において、コークス炉に装入した廃プラスチックの熱分解が完了していればよいことに気がついた。
【0018】
さらに、本発明者らは、コークス炉の炭化室に先にコークス原料を装入した後で、その後炉頂空間部に廃プラスチックを装入してコークスを製造する方法において、廃プラスチックの熱分解が完了するまでの時間について検討したところ、廃プラスチックの装入量により異なることを見出した。
【0019】
本発明は上記知見に基づいて完成された。
【0020】
すなわち、本発明は、コークス炉の炭化室に先にコークス原料を装入した後で、その後炉頂空間部に廃プラスチックを装入する方法において、
予め、廃プラスチックの種類および量と、該廃プラスチックの熱分解時間との相間関係を求め、
コークス押出時までに装入する廃プラスチックの熱分解が完了するように、当該廃プラスチックの種類、装入量、装入時期および置時間を設定することを特徴とするものである。
【0021】
これにより、例えば、事前に廃プラスチックの種類に応じて、後述する図2に示すような廃プラスチックの添加率と熱分解時間との相間図などを作成しておけば、▲1▼コークスの生産性や廃プラスチックの処理量などを考慮した上で、実際に装入する廃プラスチックの種類と装入量を最初に設定しさえすれば、作成した相関図などから熱分解時間が簡単に求まるので、この熱分解時間を確保し得るように、適当に装入時期、さらには置時間を設定することができるし、▲2▼同様に、コークスの生産性や廃プラスチックの処理量などを考慮した上で、実際に装入する廃プラスチックの装入時期や置時間を最初に設定し、コークス押出時までに完了する熱分解時間を決めさえすれば、作成した相関図からこの熱分解時間で処理可能な廃プラスチックの種類と装入量を設定することができるなど、事前に確認した廃プラスチックの種類および量と、熱分解時間との相間関係から、確実にコークス押出時までに実際に装入する廃プラスチックの熱分解が完了するように、その操業条件に適した当該廃プラスチックの種類、装入量、装入時期および置時間を設定することができるため、コークス押出時に廃プラスチックの熱分解が完了していないという事態は生じ得ず、コークス押出時の発塵および押出し抵抗の上昇という技術的課題を解決することができるものである。
【0022】
以下に、本発明の好適な実施形態につき、詳細に説明する。
【0023】
本発明の第1の実施態様として、装入する廃プラスチックの種類および量に応じ、廃プラスチックの熱分解時間をあらかじめ求めておき、コークス押出時より該熱分解時間前、またはそれ以前に、好ましくは火落ち時以降でかつ遅くともコークス押出時より該熱分解時間前に廃プラスチックを装入することを特徴とするものである。当該第1の実施態様によれば、押出し時において廃プラスチックの熱分解を完了させておくことが可能であり、押出し時における発塵増加の問題および押出し抵抗増加の問題、およびガス処理能力不足の問題が解決できる。
【0024】
廃プラスチックの装入時期については、コークス押出時より該熱分解時間前であれば特に規定はなく、コークス原料装入後であればよいが、好ましくは火落ち時以降である。また、廃プラスチックの装入の仕方は、一時に全量装入するのが望ましい。なお、分割して装入してもよいが、例えば、コークス原料の3質量%を一時に全量装入する場合に比して、コークス原料の3質量%を3回に分けて装入する場合には、同じ装入量であっても、熱分解時間が余分にかかる傾向がある(図2参照のこと)ほか、分解ガスが漏洩する可能性のある装入操作を数多く行わなければならない点に留意する必要がある。
【0025】
ここで、廃プラスチックの熱分解時間は、装入する廃プラスチックの種類および量に応じて、具体的には以下のような方法で求めればよい。
【0026】
一つの方法は、実際のコークス炉を用いて求める方法である。まず、廃プラスチックを装入しない状態で、火落ち後以降押出し時までにおけるコークスケーキの高さ変化を測定しておく。このためには、装入口より高さ測定用の棒を垂直におろし、コークスケーキ表面の高さ変化を一定時間ごとに測定すればよく、例えば特開平06−271865号公報にて開示されている方法を用いればよい。次に、同じコークス炉において、火落ち後に廃プラスチックを炭化室炉頂空間部に装入し、同様の方法で高さ変化を測定する。両者の差により、廃プラスチック自体の装入高さ変化を求め、廃プラスチックの高さが熱分解開始前の20%に到達するまでの時間、あるいは、廃プラスチックの高さ変化が、1時間あたり3%に低下するまでの時間の、どちらか短い方の時間を廃プラスチックの熱分解時間とする。
【0027】
ここで火落ちとは、石炭利用技術用語辞典(社団法人 燃料協会編、p.268)などにおいて定義されているようにコークス炉炭化室内の石炭が中心部まで全体が乾留の終了した状態であり、ここでは、乾留末期において発生ガスの温度が極大値を示す時間のこととする。
【0028】
もう一つの方法は、試験コークス炉を用いて求める方法である。ここでいう試験コークス炉とは、炉幅が実コークス炉炭化室と同じ400〜450mm、炉高が400mm以上、炉長が600mm以上であることが望ましい。この場合も実コークス炉と同様に、まず、廃プラスチックを装入しない状態で、火落ち後以降押出し時までにおけるコークスケーキの高さ変化を測定しておく。次に、同じ試験コークス炉において、火落ち後に廃プラスチックを炭化室炉頂空間部に装入し、同様の方法で高さ変化を測定する。両者の差により、廃プラスチック自体の装入高さ変化を求め、廃プラスチックの高さが熱分解開始前の20%に到達するまでの時間、あるいは、廃プラスチックの高さ変化が、1時間あたり3%に低下するまでの時間の、どちらか短い方の時間を廃プラスチックの熱分解時間とする。
【0029】
実コークス炉を用いる方法がよいか、試験コークス炉を用いる方法がよいかは場合によるが、使用する廃プラスチックの種類がほぼ同じで、コークス炉の操業条件(コークス炉の温度)が大きくかわらない場合には、実コークス炉で求めればよい。また、使用する廃プラスチックの種類が多岐にわたり、コークス炉の操業条件が大きく変わる場合には、使用する廃プラスチックの種類、およびコークス炉の操業条件ごとに、試験コークス炉を用いて熱分解時間を求めておくのがよい。
【0030】
廃プラスチックの高さが、熱分解開始前の20%以下になっていれば、廃プラスチックの質量は熱分解前の20質量%以下となっている。これは、熱分解による質量減少に伴い、廃プラスチックの体積が収縮するためである。また、廃プラスチックの高さ変化が1時間あたり3%以下になっていれば、廃プラスチックの質量変化は1時間あたり3%以下である。
【0031】
一般に廃プラスチックを熱分解すると、その多くは熱分解ガスとして揮発するために廃プラスチックの質量は減少するが、ある程度の量は残渣として残る。本発明者らの検討によると、廃プラスチックの質量が熱分解前の20質量%以下になっているか、あるいは、廃プラスチックの質量変化が1時間あたり3%以下になっていれば、ほとんど残りは残渣であり、廃プラスチックの熱分解は完了している。
【0032】
図1に実際のコークス炉を用いて求める方法の一例を示す。例は、コークス原料として配合炭を実コークス炉炭化室内に5000mmの装入高さまで装入して乾留し、火落ち後の高さ変化を30分毎に測定した結果である。装入密度は0.73t/m3であった。火落ち後4時間の置時間をおいた後における装入高さは火落ち時より150mm低かった。
【0033】
ここで置時間とは、火落ち時からコークス押出し時までの時間であり、火落ち時間(コークス原料装入時から火落ち時までの時間)と置時間の合計がコークス原料を装入してからコークスを押出すまでの総炭化時間である。
【0034】
また、同じ配合炭を用いて実コークス炉炭化室内に5000mmの装入高さまで装入して乾留し、火落ち時に、コークス原料(配合炭)質量の2質量%に相当する量の廃プラスチックを装入して、火落ち後の高さ変化を30分毎に測定した。ここで用いた廃プラスチックは、ポリエチレン約30質量%、ポリプロピレン約15質量%、ポリスチレン約30質量%、その他約25質量%の混合物を減容固化した平均粒度が約20mmの廃プラスチックである。火落ち後4時間の置時間をおいた後における装入高さは火落ち時より400mm低かった。
【0035】
図1に、廃プラスチックを装入しない場合と装入した場合における高さ変化の差より、廃プラスチック自身の高さ変化を求め、初期の廃プラスチック装入高さ(300mm)に対する100分率で表したものを示す。これより、火落ちから約3.2時間後に、廃プラスチックの高さが、熱分解開始前の20%以下になることがわかる。一方、廃プラスチックの高さ変化が1時間あたり3%以下に低下するまでの時間は、図1の廃プラスチック自身の高さ変化の曲線の接線から求めると約3.7時間であることがわかる。したがってこの場合、廃プラスチックの熱分解時間は、両者の短い方の時間を採用するとした本発明で定めたルールから、3.2時間と求めることができる。
【0036】
通常は、廃プラスチックをコークス炉で工業的な規模で処理する場合には、廃プラスチックの組成が、大きく変化することはあまりない。したがって、コークス工場において処理しようとする廃プラスチックについて、一度熱分解時間を求めておけば、十分である。
【0037】
また、廃プラスチックの組成が変化した場合についても、前述したような方法で廃プラスチックの種類ごとに熱分解時間を求めればよい。
【0038】
また、本発明者らの検討によると、装入する廃プラスチックの質量が多いほど、熱分解時間が長くなる傾向にあることが判明した。これは、装入量が少ないと廃プラスチックの装入高さが低く、上部から供給される熱により熱分解が促進されるためである。しかしながら、廃プラスチックの装入量が増すと、廃プラスチックの装入高さが高くなり、上部から供給される熱による熱分解促進の効果は小さくなる。
【0039】
例えば、実コークス炉炭化室内に装入密度0.73t/m3で5000mmの装入高さまでコークス原料として配合炭を装入して乾留する場合、装入密度0.25t/m3の廃プラスチックでは、装入量が対コークス原料1質量%で150mm、2質量%で300mmの装入高さ、3質量%で450mmの装入高さとなる。
【0040】
図2に、実コークス炉炭化室内に装入密度0.73t/m3で5000mmの装入高さまでコークス原料として配合炭を装入して乾留する場合において、廃プラスチックの対コークス原料あたりの添加率と熱分解時間の関係を示す。この場合、コークス炉炭化室に装入するコークス原料の量が一定の場合、対コークス原料あたり装入量が1質量%では熱分解時間は2時間、3質量%では4時間であった。
【0041】
このように、廃プラスチックの装入量と熱分解時間の関係を求めておけば、廃プラスチック装入量に応じた熱分解時間を決定することができる。その結果、実際に装入する廃プラスチックの熱分解が完了するように、当該廃プラスチックの種類、装入量、装入時期および置時間を設定することができる。
【0042】
あるいは、装入高さ150mmにおける熱分解時間を基準とすれば、廃プラスチック装入高さHmmと熱分解時間の間には、おおよそ下記の関係があることを本発明者らは見出した。
【0043】
(装入高さH[mm]における熱分解時間)=(装入高さ150mmにおける熱分解時間)×(炉幅[mm]+150)×H/(炉幅[mm]+H)/150
したがって、廃プラスチック装入高さ150mmにおける熱分解時間を求めておけば、上記関係式により、装入高さHmmにおける熱分解時間を求めることも可能である。この場合にも、実際に装入する廃プラスチックの熱分解が完了するように、当該廃プラスチックの種類、装入量、装入時期および置時間を設定することができる。
【0044】
廃プラスチックの装入は、上述したように火落ち時以後であることが望ましい。なぜならば、火落ち前においてはコークス原料の熱分解によるガス発生が多く、この時期に廃プラスチックを装入すると、廃プラスチックからの熱分解ガスが急激に発生し、コークス原料の熱分解ガスとあわせたトータルガス発生量が大きくなり、ガス処理能力を超える場合があるからである。また、火落後においては、コークス炉からの炉体放散熱が大きくなるのが通例であるが、この熱を廃プラスチックの熱分解に利用できるというメリットもあるからである。
【0045】
したがって、本発明の第2の実施態様としては、装入する廃プラスチックの種類および量より廃プラスチック熱分解時間を求め、火落ち時以降に廃プラスチックを装入し、該熱分解時間以上保持した後に、好ましくは火落ち時に廃プラスチックを装入し、該熱分解時間が置時間の範囲内の場合には置時間保持した後に、また該熱分解時間が置時間を超える場合には該熱分解時間保持した後にコークスを押し出すことを特徴とするものである。当該第2の実施態様によれば、押出し時における発塵増加の問題および押出し抵抗増加の問題、およびガス処理能力不足の問題が解決でき、炉体放散熱を有効利用することができる。
【0046】
さらに、コークス炉の操業においては、生産量が計画されており、これによって、コークス炉の操業条件、すなわち、火落ち時間と置時間が決められているのが通例である。したがって、廃プラスチックの処理を優先して、廃プラスチックの装入量より熱分解時間を決定し、火落ち時以降に廃プラスチックを装入して、該熱分解時間以上保持した後にコークスを押し出す時、場合によっては、熱分解時間が計画している置時間よりも長くなることがある。この場合、総炭化時間は計画よりも長くなり、コークスの生産量は計画よりも少なくなってしまう。
【0047】
上記のような課題を解決するには、本発明の第3の実施態様として、廃プラスチックの熱分解時間が生産計画および操業条件によって決定される置時間の範囲内となるように、廃プラスチックの量を、装入しようとする廃プラスチックの種類に応じて求め、求めた量以下の廃プラスチックを火落ち時以降でかつ遅くともコークス押出時より該熱分解時間前に、好ましくは求めた量の廃プラスチックを火落ち時に装入すればよい。これにより、計画通りにコークスを生産しながら、最大限の量の廃プラスチックを処理することが可能である。
【0048】
廃プラスチックの処理量を増加したい場合は前の方法である第2の実施形態を、コークス炉の生産性を維持したい場合は、後の方法である第3の実施形態を用いればよい。
【0049】
本発明の高炉用コークスの製造方法は、上述した第1〜3の実施形態に制限されるものではなく、事前に確認した廃プラスチックの種類および量と熱分解時間との関係から、実際に装入する廃プラスチックの熱分解が完了するように、その操業条件に適した廃プラスチックの種類、装入量、装入時期および置時間を設定し得るものであればよいことは言うまでもない。
【0050】
また、同じ炉団においても、ある炭化室では、所定置時間内に熱分解できる量の廃プラスチックを装入し、別の炭化室では装入した廃プラスチックを熱分解するのに必要な置時間をおいた後にコークスを押し出すような操業形態を選択することも可能である。同様に、廃プラスチックの装入量以外にも、廃プラスチックの種類や装入時期などを炭化室ごとに変更して、同じ炉団内で上記第1〜3の実施形態、さらには本発明の技術範囲内の他の実施態様を適当に組み合わせるようにしてもよい。さらには、炭化室ごとに先に装入するコークス原料の種類や装入量を変えてもよい。特に、同じ炉団内において押出機によるコークス押出操作が炭化室ごとに順次行われるような場合には、同じ炉団内でのコークス品質、生産効率および廃プラスチックの処理能力を高めることができるように、各炭化室ごとの最適な操業形態を選択することが望ましい。
【0051】
また、本発明で用いることのできる廃プラスチックの種類としては、特に制限されるものではなく、現在、回収可能な全てのプラスチック廃棄物はその対象となり得るものである。これは、廃プラスチックの焼却により発生する有害物質のダイオキシン類などの分解温度よりも遙かに高温で処理されるため、分解ガス中にこうした有害物質が混入されるおそれがないためである。
【0052】
また、廃プラスチックの粒度としては、現在、回収業者で行われている破砕作業でチップ化されて流通されている場合が多く、こうしたものを直接利用することができるものであることから、通常50mm以下である。ただし、5mm未満のものでは、炉頂空間部内の対流現象により装入と同時に廃プラスチックが巻き上げられ、発生ガスに混入したり、炭化室の天井部に付着しやすくなるため好ましくない。
【0053】
また、上述したように廃プラスチックの密度が高いほど、同じ装入高さに充填可能な廃プラスチックの質量は多くなる。廃プラスチックの密度は小さいのが通例であるが、例えば、減容固化した密度の高い塊状物の廃プラスチックを使用することにより、なるべく多くの廃プラスチックを処理することが可能である。ここでいう減容固化技術としては、特に制限されるものではなく、従来公知のものを適宜利用することができるものであり、例えば、廃プラスチックを破砕処理した後、熱により溶融または半溶融させた後に固化させることにより減容固化された粒状の塊状物に加工する方法、廃プラスチックを破砕し、該破砕片を圧縮し、その圧縮工程で発生する熱で破砕片中の熱硬化性樹脂を軟化させると共に破砕片中の容積を圧縮して塊状の減容固化体を形成する方法などが挙げられる。
【0054】
該廃プラスチックの塊状物の粒度としては、5〜150mm程度が好ましい。塊状物の粒度が5mm未満の場合には、炉頂空間部内の対流現象により装入と同時に廃プラスチックが巻き上げられ、発生ガスに混入したり、炭化室の天井(上面部)などに付着しやすくなるため好ましくない。一方、150mmを越える場合には、プラスチック搬送時において、装入ホッパー内で棚吊りしたり、ベルトコンベアーの乗り継ぎシュートに閉塞したりするなどのハンドリング上の問題が生じるため好ましくない。
【0055】
上記廃プラスチックの装入量は、コークス炉の炭化室にコークス原料を装入した後の炉頂空間部に装入可能な量の範囲内に制限されるものであり、上述したように生産性を重視し置時間の範囲内になるように制限してもよいし、廃プラスチックの処理量を重視し炉頂空間部に可能な限り装入し、置時間を延ばす方向で調整するようにしてもよい。
【0056】
また、本発明において、コークス炉の炭化室に先に装入するコークス原料としては、特に制限されるものではなく、通常用いられているところの、粘結性と石炭化度とが所望の範囲になるように数種の石炭の粉炭を配合してなる配合炭(通常、粒度3mm以下が75〜88%のもの)、粉炭を成型してなる成型炭(通常、粒度20mm以上のもの)、およびこれら配合炭と成型炭との混合物のほか、該配合炭および/または成型炭に廃プラスチックを適量配合したものなど適当に組み合わせて用いてもよい。
【0057】
また、ここでの廃プラスチックの配合量としては、後述する配合の仕方などにより異なるが、通常コークス原料全量に対して10質量%以下であることが好ましい。コークス原料に占める廃プラスチックの配合割合が、10質量%を越える場合には、廃プラスチック熱分解後の炉頂空間部が広くなり、炉壁へのカーボン付着問題が起こるため好ましくない。
【0058】
また、上記成型炭とは、石炭粉を一定の形状に成型したものである。
【0059】
また、コークス原料の装入の仕方としても、現在までに提案されてなる種々の装入方法を適宜利用できるものであるが、本発明者が提案する新規な方法である、(1)コークス炉炭化室に、先に予め成型炭(一部配合炭を用いてもよい)と混合した廃プラスチックを装入し、その後石炭(配合炭および/または成型炭)を装入する方法や、(2)コークス炉炭化室に予め成型炭(一部配合炭を用いてもよい)と混合した廃プラスチックを装入する方法と組み合わせることにより、コークス炉における廃プラスチックの処理量をさらに増加させることも可能である。
【0060】
【実施例】
実施例1
稼働率109%(総炭化時間22時間)で操業中のコークス炉(炭化室高さ6.5m、長さ15.7m、幅430mm)に、コークス原料として水分を4.5質量%含む原料炭を装入して乾留した。本実施例において使用した石炭の粒度は、3mm以下の割合が80質量%であり、揮発分は27.1質量%であった。また、炭化室1窯当たりの石炭の装入量は30tであり、平均火落時間は18.5時間、置時間は3.5時間であった。
【0061】
また、本実施例において使用した廃プラスチックは、ポリエチレン約30質量%、ポリプロピレン約15質量%、ポリスチレン約30質量%、その他約25質量%の混合物を減容固化したものであり、平均粒度が約20mmである。
【0062】
発明例1においては、前記装入炭に対して質量比で2質量%の廃プラスチックを処理することを計画した。炉幅400mm、炉高600mm、炉長600mmの試験コークス炉を用い、明細書中に記載の方法により、廃プラスチックの熱分解時間を求めたところ、熱分解時間は3.2時間であったので、押出し時より3.2時間前、すなわち火落ち時から0.3時間後に、30tの2質量%に相当する0.6tの廃プラスチックをコークス炉の炭化室上部の炉頂空間部に装入し、置時間3.5時間後にコークスを押し出した。
【0063】
一方、比較例1においては、同じく0.6tの廃プラスチックを火落ちから2時間後にコークス炉の炭化室上部の炉頂空間部に装入し、廃プラスチック装入から1.5時間後(すなわち置時間3.5時間後)にコークスを押し出した。
【0064】
発明例1においては、廃プラスチックを装入しない場合に比べて、押出し時の発塵性、および押出電流も変わらず、通常通りの操業ができた。
【0065】
一方、比較例1においては、発明例1に比べて、押出し時に発塵が多く見られ、また押出電流も250Aから260Aに10A上昇した。ここで、押出電流は押出機の駆動に要するものであり、押出電流が大きくなるほど、押出し抵抗が増加していることを意味する。以下同様。
【0066】
実施例2
稼働率109%(総炭化時間22時間)で操業中のコークス炉(炭化室高さ6.5m、長さ15.7m、幅430mm)に、コークス原料として水分を4.5質量%含む原料炭を装入して乾留した。本実施例において使用した石炭の粒度は、3mm以下の割合が80質量%であり、揮発分は27.1質量%であった。また、炭化室1窯当たりの石炭の装入量は30tであり、平均火落時間は18.5時間、置時間は3.5時間であった。
【0067】
また、本実施例において使用した廃プラスチックは、ポリエチレン約30質量%、ポリプロピレン約15質量%、ポリスチレン約30質量%、その他約25質量%の混合物を減容固化したものであり、平均粒度が約20mmである。
【0068】
発明例2においては、前記装入炭に対して質量比で3質量%の廃プラスチックを処理することを計画した。炉幅400mm、炉高600mm、炉長600mmの試験コークス炉を用い、明細書中に記載の方法により、廃プラスチックの熱分解時間を求めたところ、熱分解時間は4時間であった。そこで、火落ち時直後に、30tの3質量%に相当する0.9tの廃プラスチックをコークス炉の炭化室上部の炉頂空間部に装入し、置時間4時間後にコークスを押し出した。
【0069】
一方、比較例2においては、同じく0.9tの廃プラスチックを火落ち時に装入し、置時間3.5時間後にコークスを押し出した。
【0070】
発明例2においては、廃プラスチックを装入しない場合に比べて、押出し時の発塵性、および押出電流も変わらず、通常通りの操業ができた。
【0071】
一方、比較例2においては、発明例2に比べて、押出し時に発塵が多く見られ、また押出電流も250Aから255Aに5A上昇した。
【0072】
実施例3
稼働率114%(総炭化時間21時間)で操業中のコークス炉(炭化室高さ6.5m、長さ15.7m、幅430mm)に、コークス原料として水分を4.5質量%含む原料炭を装入して乾留した。本実施例において使用した石炭の粒度は、3mm以下の割合が80質量%であり、揮発分は27.1質量%であった。また、炭化室1窯当たりの石炭の装入量は30tであり、平均火落時間は18時間、置時間は3時間であった。
【0073】
また、本実施例において使用した廃プラスチックは、ポリエチレン約30質量%、ポリプロピレン約15質量%、ポリスチレン約30質量%、その他約25質量%の混合物を減容固化したものであり、平均粒度が約20mmである。
【0074】
発明例3においては、廃プラスチックの熱分解時間が置時間となるような、廃プラスチックの量を求めたところ、対石炭(コークス原料)あたり1.5質量%となった。そこで、火落ち時直後に、30tの1.5質量%に相当する0.45tの廃プラスチックをコークス炉の炭化室上部の炉頂空間部に装入し、置時間3時間後にコークスを押し出した。ここで廃プラスチックの熱分解時間は、炉幅400mm、炉高600mm、炉長600mmの試験コークス炉を用い、明細書中に記載の方法により求めた。
【0075】
一方、比較例3においては、0.9tの廃プラスチックを火落ち時に装入し、置時間3時間後にコークスを押し出した。
【0076】
発明例3においては、廃プラスチックを装入しない場合に比べて、押出し時の発塵性、および押出電流も変わらず、通常通りの操業ができた。
【0077】
一方、比較例3においては、発明例3に比べて、押出し時に発塵が多く見られ、また押出電流も260Aから270Aに10A上昇した。
【0078】
以上より、本発明により、コークス炉の炭化室に先にコークス原料を装入した後で、その後炉頂空間部に廃プラスチックを装入してコークスを製造する方法において、押出し時の発塵を抑制し、かつ押出し抵抗が低減できることがわかった。
【0079】
【発明の効果】
本発明により、コークス押出し時の発塵を抑制し、かつ押出し抵抗を従来レベルに維持しながら、廃プラスチックをコークス炉の炭化室上部の炉頂空間部に装入してコークスを製造することが可能となり、環境対策、および経済的効果に対して非常に価値の高い発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 火落ち時からの経過時間と装入物の高さ変化の関係を示す図である。
【図2】 廃プラスチック添加率と熱分解時間の関係を示す図である。
Claims (4)
- コークス炉の炭化室に先にコークス原料を装入した後で、その後炉頂空間部に廃プラスチックを装入する方法において、
予め、装入する廃プラスチックの種類および量に応じて、実際のコークス炉または試験コークス炉を用いて、(a)まず、廃プラスチックを装入しない状態で、火落ち後以降押出し時までにおけるコークスケーキ表面の高さ変化を一定時間ごとに測定し、(b)次に、同じコークス炉において、火落ち後に廃プラスチックを炭化室炉頂空間部に装入し、同様の方法で高さ変化を測定し、(c)両者の差により、廃プラスチック自体の装入高さ変化を求め、(d)廃プラスチックの高さが熱分解開始前の20%に到達するまでの時間、あるいは、廃プラスチックの高さ変化が、1時間あたり3%に低下するまでの時間の、どちらか短い方の時間を廃プラスチックの熱分解時間とし、廃プラスチックの熱分解時間を求め、
コークス押出時より該熱分解時間前またはそれ以前に、廃プラスチックを装入することを特徴とする高炉用コークスの製造方法。 - コークス炉の炭化室に先にコークス原料を装入した後で、その後炉頂空間部に廃プラスチックを装入する方法において、
予め、装入する廃プラスチックの種類および量に応じて、実際のコークス炉または試験コークス炉を用いて、(a)まず、廃プラスチックを装入しない状態で、火落ち後以降押出し時までにおけるコークスケーキ表面の高さ変化を一定時間ごとに測定し、(b)次に、同じコークス炉において、火落ち後に廃プラスチックを炭化室炉頂空間部に装入し、同様の方法で高さ変化を測定し、(c)両者の差により、廃プラスチック自体の装入高さ変化を求め、(d)廃プラスチックの高さが熱分解開始前の20%に到達するまでの時間、あるいは、廃プラスチックの高さ変化が、1時間あたり3%に低下するまでの時間の、どちらか短い方の時間を廃プラスチックの熱分解時間とし、廃プラスチックの熱分解時間を求め、
火落ち時以降に廃プラスチックを装入し、該熱分解時間以上保持した後にコークスを押し出すことを特徴とする高炉用コークスの製造方法。 - コークス炉の炭化室に先にコークス原料を装入した後で、その後炉頂空間部に廃プラスチックを装入する方法において、
予め、装入する廃プラスチックの種類および量に応じて、実際のコークス炉または試験コークス炉を用いて、(a)まず、廃プラスチックを装入しない状態で、火落ち後以降押出し時までにおけるコークスケーキ表面の高さ変化を一定時間ごとに測定し、(b)次に、同じコークス炉において、火落ち後に廃プラスチックを炭化室炉頂空間部に装入し、同様の方法で高さ変化を測定し、(c)両者の差により、廃プラスチック自体の装入高さ変化を求め、(d)廃プラスチックの高さが熱分解開始前の20%に到達するまでの時間、あるいは、廃プラスチックの高さ変化が、1時間あたり3%に低下するまでの時間の、どちらか短い方の時間を廃プラスチックの熱分解時間とし、廃プラスチックの熱分解時間を求め、(e)廃プラスチックの種類および量と、該廃プラスチックの熱分解時間との相間関係を求め、該相間関係から、
廃プラスチックの熱分解時間が操業条件によって決定される置時間の範囲内となるように、廃プラスチックの量を装入しようとする廃プラスチックの種類に応じて求め、
求めた量以下の廃プラスチックを火落ち時以降でかつ遅くともコークス押出時より該熱分解時間前に装入することを特徴とする高炉用コークスの製造方法。 - 前記廃プラスチックが、減容固化した塊状物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高炉用コークスの製造方法。
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