JP4278909B2 - 微細作業用マイクロマニピュレーション装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、極めて微細な顕体試料を、顕微鏡の視野の中に捉えて、その画像を観察しながら該顕体試料の加工や移動等の微細作行を行なうための装置に関するものであり、更に詳しくは、マイクロプローブ先端の時間経過による微細な狂いを修正し、常時正確な作業が可能な微細作業用マイクロマニピュレーション装置を提供する。
【0002】
【従来技術】
近年、ナノテクノロジーの発達の中で、それを支える微細作業用マイクロマニピュレーション装置の重要性は益々斯界の着目をあびて来るようになっている。従来より、微小な顕体試料を、単に顕微鏡で観察するだけではなく、顕微鏡下で極めて微細な加工を行なうという所謂微細作業は、一般的に行なわれていた。しかしながら、特に近年、その対象物が益々微細化の方向に移行しつつあるのみならず、その分野もエレクトロニクス分野から、遺伝子組み替え技術等を含んだバイオ分野まで多様化しつつある。
【0003】
上述のような状況から、特に近年、マイクロマシンの開発と、顕体試料を顕微鏡視野の中に捉えてマニピュレータを用いて何らかの高度な加工を行なう技術に対する要求と重要性は、その精度の向上とともにいままで以上に高度化しつつある。この技術は、単に対象となる顕体試料の微小化に伴なう運動分解能の高精度化を要求するのみならず、極めて微小な顕体試料を顕微鏡視野の中で、特定部位を操作するハンドリング技術の高精度化と簡易化を要求するものであり、顕体試料側の動きの自由度を多くした上で微細作業の操作性、確実性を確保したものでなければならない。
【0004】
例えば電気的測定を目的とした半導体デバイスへのプロービング、あるいはバイオ操作を目的とした生体細胞へのプロービング等の微細作業をより正確に行なうためには、微細作業用のマイクロマニピュレーション装置の静止状態においてそのマイクロプローブの先端位置を安定に維持することにより、静的な微細作業や測定がより正確に行なうことができるようになる。
【0005】
顕微鏡の視野の下において、マイクロマニピュレータに取り付けられたマイクロプローブを操作して顕体試料の正確な移動や加工を行なう装置については、例えば特開平2000−221409号公報において、顕微鏡下での微細試料とマイクロプローブの動きを連動せしめ、三次元の方向での位置決め、移動や加工を行ない易くした装置が開示されている。更に、特開平2001−91857号公報においては、顕微鏡画像をテレビカメラの画像によってモニタリングする装置が開示されている。これらの装置は、顕微鏡の視野において、顕体試料とマイクロプローブの動きを正確にし、顕体試料の回転を含めた位置決め、マイクロプローブによる顕体試料の移動、加工等の操作を行なうことを可能にしたものである。
【0006】
即ち、これらの装置は、顕体試料を載置する作業台と複数のマニピュレータを各々独立した任意の方向への微細な動作を許容した上で、主たる動きが基本的に結合されたマイクロマニピュレーション装置である。このような装置であれば、試料とプローブ先端を顕微鏡の視野から外すことなく、より複雑な作業をより確実に精度よく行なうことができ、しかも顕微鏡画像をテレビカメラの画像によってモニタリングすることも可能にしているため、従来の装置が格段に向上されたことは明らかである。
【0007】
これらの装置においては、マイクロマニピュレータに取り付けられたマイクロプローブの動きによって、あるいは顕体試料を載せた作業台の動きによって、微小な作業に必要とされる変位が行なわれるのであり、その駆動用のアクチュエータとしては圧電(ピエゾ)素子が用いられることが一般的である。この圧電素子(以下ピエゾ素子と記す)にフィードバック用の変位検出機能を付加したものは数10μmレベルでの微小な移動も可能であり、変位検出手段を選択すれば、1nm以下の分解能も比較的容易に実現することも可能であって、従来の、精密ネジやサーボモーターをアクチュエータとして用いたものよりもはるかに精度の高いものである。
【0008】
このピエゾ素子とは、圧電性を有する結晶体に外部電界を与えることにより結晶体が変位を起こす効果(ピエゾ効果)を応用したものであり、これをアクチュエータとして応用した場合は、従来の精密ネジやサーボモーターをアクチュエータとして用いたものに対して以下の利点を有するものである。即ち、ピエゾ素子によるアクチュエータは、変位レンジは小さいが、高精度、高応答性があり、小型軽量であるにもかかわらず発生力が大きいことがその特徴であってマイクロマニピュレータ用アクチュエータとしての用途に好適である。これを用いたマイクロマニピュレータは、微細な作業を極めて高い分解能で行なうことができる。
【0009】
ピエゾ素子の動作原理は、素子を構成する結晶構造(結晶格子)が外部電界を与えられることによって伸び、その伸びによって変位量が得られる。すなわち、結晶粒子レベルでは、外部電界を加えた時点で分極され素子長が長くなるという現象に基づくものであり、外部電界を除くと未分極状態にもどり、素子長はもとの長さにもどる。しかしながら、この分極→未分極あるいは未分極→分極の状態変化にはクリ−プ現象が伴ない、変位が完全に終了するまでにある程度の時間が必要となる。そしてこの現象は応力、温度によって著しく左右される。
【0010】
従って、このピエゾ素子には結晶構造の変位に伴なうクリープ現象や残留変位の現象があり、これを例えばマイクロマニピュレータのマイクロプローブ用アクチュエータとして用いた場合、マイクロマニピュレータを制御的に静止状態にしてもマイクロプローブ先端の位置は時間とともに微小変化を起こす。そのため、時間経過に伴ない、マイクロプローブ先端の静止位置を維持することが難しいという点が、ピエゾ素子を用いたアクチュエータの問題点として指摘されていた。
【0011】
具体的影響として、例えば、半導体デバイスを対象としてマイクロマニピュレーション装置を用いて定点間の電気的測定や微細加工等を行なう場合で、複数位置でのプロービングが必要な場合は、その複数位置のそれぞれが顕微鏡の同一視野内にあるとは限らず、視野外に点在するような状態となる。同様なことがバイオ操作を目的とした生体細胞へのプロービングにおいてもいうことができる。前述のクリ−プ現象や残留変位の現象は、それぞれのプローブで起こる可能性があるため、このクリープ現象や残留変位現象に対する対策は、マイクロマニピュレーション装置による微細作業を確実に行なうために極めて重要なものである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、上述の問題点に鑑み、マイクロマニピュレーション装置による微細作業におけるマイクロプローブの先端位置の時間経過に伴なう微小変化に追随し、微細作業の操作性および確実性のより一層の向上が可能なマイクロマニピュレーション装置について鋭意検討を行なった結果、顕微鏡を用いてマイクロマニピュレータのマイクロプローブ先端を高倍率で観察し、その高倍率画像情報を基にビジュアルフィードバックを行なうことで対応が可能なことを見出し本発明を完成したものである。すなわち、本発明の目的は極微細領域での顕体試料の観察、加工、電気的測定等を時間経過に影響されることなく確実に行なうことのできる微細作業用マイクロマニピュレーション装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述の目的は、走査型電子顕微鏡画像を観察しながら顕体試料の観察、加工、電気的測定等の作業を行なう微細作業用マイクロマニピュレーション装置であって、ピエゾ素子を駆動用のアクチュエータとして用いる微細作業用マイクロマニピュレーション装置において、最初の顕微鏡観察画像からマイクロプローブ先端のパターンとその座標値を画像処理手法を用いて検出し、記憶させ登録しておき、実際の作業を行なう時点でのマイクロプローブ先端のパターンとその座標値をその時点での顕微鏡観察画像から画像処理手法を用いて検出し、検出されたマイクロプローブ先端の座標値を、すでに登録してあるマイクロプローブ先端の座標値と比較対比し、すでに登録してあるマイクロプローブ先端の座標値の登録値と一致させるようにピエゾ素子を制御することを特徴とする微細作業用マイクロマニピュレーション装置により達成される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の肝要は以下の点にある。即ち、マイクロマニピュレーション装置を操作して顕体試料の観察、加工、電気的測定等の微細作業を行なうにおいて、ピエゾ素子をアクチュエータとして用いてマイクロプローブの最初の静止位置の設定を行なうに際し、顕体試料とマイクロプローブ先端とを顕微鏡視野内に捉え、画像処理手法によりその静止位置でのマイクロプローブ先端のパターンと座標値を検出し、コンピュータに記憶させ登録する。ある一定時間経過後に次の操作を行なうにあたり、その時点でのマイクロプローブ先端のパターンとその座標値を再度画像処理手法により検出する。その座標値を予めコンピュータに登録してあった当初の静止位置での座標値にパターンマッチングし、両者の座標値に狂いがあった場合は、最初の静止位置に戻すようにピエゾ素子に指令を与えて位置制御を行なう。つまり、一定時間が経過する間にピエゾ素子のクリープ現象によりマイクロプローブ先端の位置が狂った場合は、最初登録した静止位置に戻すことができる。
【0015】
本発明にいう電気的測定とは、半導体デバイスの性能検査や不良解析作業において、固定点間の抵抗値、導電率や電流値あるいは電圧波形の測定、電圧印加、絶縁性の確認等の、従来の半導体検査工程で行われている測定を指すものであり、更には熔接、結節、熔断、切断等の微細加工作業をも含むものである。
【0016】
ピエゾ素子のクリープ現象や残留変位の程度は、それが置かれる環境温度および応力条件によって大きく影響を受けるものである。従って、その条件がまちまちで、一定でないような環境下でマイクロマニピュレーション装置による微細作業を行なう場合には、本発明の如くどのような変位量、変位方向にも対応可能な方式は極めて好適であり、また変位が止まらないような不安定な環境下で微細作業を行なう場合にも対応可能である。
【0017】
本発明になる微細作業用マイクロマニピュレーション装置においては、画像処理は画素単位で行なわれるため、観察倍率を上げて1画素における情報を多くすればそれだけパターンマッチングの精度を上げることができる。従って、顕微鏡を用いてのマイクロプローブ先端の観察は、特に限定を受けるものではないが、マイクロマニピュレータ位置決めの分解能で追随できる範囲で可能な限り高倍率で行なった方が好ましい。例えば半導体デバイス配線を作業対象に考えた場合は、具体的には10万倍程度の倍率で行なうことが好ましいが、通常の作業においては1万倍程度の倍率で行なうものである。また、数十倍程度の比較的低倍率でも勿論適用が可能である。
【0018】
本発明にいう画素とは、一般に画像処理用電子装置によって、独立な情報を担っているものとして取り扱われる原画の部分であり、電子的に符号化された画像の最小要素をいう。
【0019】
また、このパターンマッチングは、同一顕微鏡視野内で行なうことが前提条件であるため、マイクロプローブの数が複数の場合、視野を広くして、すなわち倍率を下げて複数のマイクロプローブ先端を同一顕微鏡視野内に捉えることが必要となり、高倍率で作業を行なうことが難しくなる。本発明においては、一つの顕微鏡を用いながら、例えば切り替え式監視カメラのように、多数箇所を観察することができるような方式とすることにより、倍率を下げることなく複数のマイクロプローブ先端を、それぞれの位置でパターンマッチングすることが可能となる。
【0020】
即ち、本発明においては、好ましくは顕微鏡として走査型電子顕微鏡(以下SEMと略記する)を使用することによりこの問題に対応することができる。顕微鏡としてSEMを使用するならば、鏡頭の追加やチャンバーへのCCD(電荷結合素子)拡大鏡の追加をすることで複数の視野を確保することが可能であり、また、ビームの走査箇所を時々刻々変えることによっても複数の視野を確保することが可能である。また顕微鏡としてSEMを使用した場合の半導体の不良解析とは、SEMの照射された電子線をもとに、半導体パターンに吸収されて流れる微小電流を吸収電流像として観察し、例えば高抵抗や断線の有無等の判断を行なうのであり、より正確な測定をすることが可能である。
【0021】
更に、本発明においては、レーザー顕微鏡も使用することもできる。レーザー型の顕微鏡であれば、検体資料を真空中に置く必要がなく、観察分解能を大気中で実現するという利点があるだけでなく、装置の面でも簡易化が可能である。更に、CCD方式に比べて、ピンぼけや漏れ光などによるノイズがなく、焦点位置が確定でき、透明体の膜厚のように計測が難しかったものに対しても簡単に対応することができる。また、超深度画像共焦点原理を採用した光学技術によって全体に焦点が合った画像を得ることができる。
【0022】
本発明の微細作業用のマイクロマニピュレーション装置は、前述の通りマイクロプローブを制御的静止状態においた時のプローブ先端の微小変位を効果的に是正するものであるが、結果的には、バイオ分野での対象物の状態変化観察を目的とした動的なプロービングにも対応できるし、また、状態保持による静的な微細作用も行なうことができるようになる。
【0023】
本発明の微細作業用のマイクロマニピュレーション装置の具体例を図面を用いて説明するが、これによって限定を受けるものではない。図1は半導体デバイスチップに対しての観察加工を示す例である。図1(a)においてまず顕微鏡視野内にマイクロプローブの先端針先1を静止させ、マイクロプローブ先端のパターンと座標値Aを検出し、記憶させ登録する。一定時間経過すると図1(b)に示すようにアクチュエータとして用いるピエゾ素子のクリープ現象や残留変位によりマイクロプローブの先端針先1は座標値Bの位置まで移動する。図1(c)において、パターンマッチングにより、登録した形状を画像処理で探索する。そして、図1(a)において、探索したパターンをBの座標位置から元の静止座標位置Aに戻すように駆動制御する。この一連の動作をサイクルで繰り返し行なうことによりマイクロプローブの先端針先1は常時静止座標位置Aにあるように制御される。
【0024】
図2は、本発明になる微細作業用マイクロマニピュレーション装置におけるピエゾ素子のクリープ現象、残留変位を制御するフロー図である。この制御はマイクロプローブを次に目標位置へ移動するという指令が来るまで繰り返され、マイクロプローブの先端針先は常時、当初設定した静止座標位置にあるように維持されている。マイクロプローブが次の静止位置に移動されると、新たにこのサイクルが繰り返され、その移動された静止位置を安定に維持するようにする。
【0025】
【発明の効果】
以上述べた通り、本発明になる微細作業用マイクロマニピュレーション装置を用いることにより、従来より問題点として指摘されていたアクチュエータとして用いるピエゾ素子のクリープ現象あるいは残留変位にともなう微細作業の位置決めの不正確さを是正することが可能になった。即ち、顕微鏡視野内に顕体試料を捉えてその作業点にマイクロプローブの先端針先を固定し、時間をおいてからその固定位置での何らかの作業を行なう際の位置のズレを補正してからその作業を行なうという煩雑さをなくし、作業の正確さを図ることが可能になったのである。つまり、従来のピエゾ素子をアクチュエータとして用いたマイクロマニピュレーション装置の位置決めの時間軸に対する狂いを是正することができたのであり、そのナノテクノロジーにおける評価は極めて多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の微細作業用マイクロマニピュレーション装置を用いて半導体デバイスチップに対しての観察加工を示す例である。
【図2】 本発明の微細作業用マイクロマニピュレーション装置の制御システムを示す説明図である。
Claims (3)
- 走査型電子顕微鏡画像を観察しながら顕体試料の観察、加工、電気的測定等の作業を行なう微細作業用マイクロマニピュレーション装置であって、ピエゾ素子を駆動用のアクチュエータとして用いる微細作業用マイクロマニピュレーション装置において、最初の顕微鏡観察画像からマイクロプローブ先端のパターンとその座標値を画像処理手法を用いて検出し、記憶させ登録しておき、実際の作業を行なう時点でのマイクロプローブ先端のパターンとその座標値をその時点での顕微鏡観察画像から画像処理手法を用いて検出し、検出されたマイクロプローブ先端の座標値を、すでに登録してあるマイクロプローブ先端の座標値と比較対比し、すでに登録してあるマイクロプローブ先端の座標値の登録値と一致させるようにピエゾ素子を制御することを特徴とする微細作業用マイクロマニピュレーション装置。
- 走査型電子顕微鏡が複数の鏡頭を備えたものであることを特徴とする請求項第1項に記載の微細作業用マイクロマニピュレーション装置。
- 走査型電子顕微鏡がCCD拡大鏡を備えたものであることを特徴とする請求項第1項に記載の微細作業用マイクロマニピュレーション装置。
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