JP4278468B2 - 電池の正極材料及びそれを用いた空気電池 - Google Patents

電池の正極材料及びそれを用いた空気電池 Download PDF

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Description

本発明は、空気電池等の新しい正極材料及びそれを用いた空気電池に関するものであり、特に正極材料として、導電率が温度上昇とともに増大する特性を有する木炭(以下、半導体性木炭という。)を使用することに関する。
空気電池は、正極活物質として酸素を用いるもので古くから知られ実用化されている。又、備長炭などの金属性電気伝導特性を有する木炭(以下、金属性木炭、金属性電気伝導木炭又は電気伝導性木炭と略記することあり。)を正極とした空気電池が、多くの学校や教育機関などが主催する理科教室などで電池教材として利用されていることも知られている。
しかし、備長炭などを正極とした空気電池は、動作寿命が数時間、あるいは長くて1日程度であり、実用的な電池としては大きな課題があった。短時間で電池動作が終了する理由は、備長炭の外周壁や木炭内部の細孔壁に吸着により蓄積している酸素の大部分が電池動作に有効に利用できないことによる。つまり、金属性電気伝導である備長炭の場合、蓄積されている酸素の一部(高温焼成時に形成されたと思われる活性酸素)だけが空気電池動作に貢献しており、大部分の酸素は空気電池動作に必要な物理・化学反応(酸素気体から酸素原子への解離と、さらに酸素原子からOH- イオンへの電解液中への溶解反応)が効率的に進行しないことによると考えられる。
本発明は、上記課題、即ち寿命が短いという課題を解決した空気電池を提供しようとするものであり、又、長寿命特性を有する電池の正極材料を提供しようとするものである。
本発明は、金属よりなる負極と半導体性木炭(段落0001の中で定義したとおり、「導電率が温度上昇とともに増大する特性を有する木炭」をいい、以下同じ。)よりなる正極とを電解物質を介して設けたことを特徴とする空気電池を提供する。
金属よりなる負極の材料としては、従前の空気電池などにも使用されているアルミニウム、亜鉛をはじめとし、イオン化傾向の大きい金属ならその他の金属も勿論使用可能である。
電解物質としては、NaCl水溶液又はKCl水溶液は勿論、自然の海水等も使用可能である。
半導体性木炭は、上述の備長炭などの電気伝導特性とは異なり、上述の課題を有効に解決するもので、この半導体性木炭の製法の詳細、物理・化学的特性等については後述するが、「木材の製材あるいは加工で生じた屑」(以下、おがくずという。)の圧縮加工体を高温で焼成した炭化物とすれば良い。
本発明は又、半導体性木炭を空気電池をはじめとする電池の正極材料に使用することを特徴とする。
本発明は又、半導体性木炭を正極として使用した空気電池を用いたイルミネーション装置、照明装置又は循環水ポンプ装置、更に又、半導体木炭を正極材料とした電池の学習用
教材(教材キットを含む)を提供する。
これらの装置及び教材は、商用電源のない場所での各種装置の稼動を可能とし、又、電池機能が低下した場合でも、負極金属を交換、補給することで、電池機能を回復させることが可能であり、コスト及び環境面においても従来の電池より優れている。
本発明は、空気電池の正極材料として半導体性木炭を使用するので、酸素分子の吸着・脱離・解離反応を室温度で顕著に促進する触媒効果を有する。
この触媒効果は、半導体性木炭には正、負の2種類のキャリア(電子、正孔)が存在することにより、電池の物理・化学反応で必要な電荷の調整を効率的に進行させる機能から発現する。
したがって、本発明の空気電池の動作寿命は数ヶ月から年単位に及び、従前の備長炭などの木炭による空気電池の動作寿命(数時間〜数十時間)に比べて格段に寿命特性が良くなる。
本発明による空気電池の能力は、電界液に食塩水(NaCl溶液:10〜20%濃度)を使用し、負極にアルミニウム金属を使用した場合では、1セルにおいて、開放端起電力は0.6〜0.8V、負荷への放電電流能力は10〜50mAである(1セルにおける半導体性木炭空気極の体積は約150cm3)。
本発明のポイントである半導体性木炭について先ず説明する。
本発明で定義する半導体性木炭は基礎研究分野でも産業分野においてもまだ報告例はない。但し、木炭のなかに電気伝導において半導体的挙動を示す木炭が存在することの報告例として、本発明者らによる国際学会(5th Pacific Rim Bio−Based Composites Symposium ,Canberra Australia December 10−13th 2000)での報告がある。
木炭の精密な電気伝導特性の実験と解析の前に、本発明で実証した長寿命空気電池の正極に実際に使用した半導体性木炭の製造手法は、従来の金属性木炭などの炭化手法とは、少し異なるので、ここでは製造手法の一例を説明する。
(A) 炭化材料の出発原料は種々の木材の製材、あるいは加工で生じたひき屑、 す
なわちおがくずを用いている。このおがくずは、備長炭などの原木である硬質の
カシ、ナラ、クヌギなどの制限はなく、針葉樹のかんばつ材(杉、ヒノキなどの
軟質の木材)の製材や加工で生じるおがくずをも包含している。
(B) 上記おがくずを数日間自然乾燥させた後、粉体から硬質のバルク形状に加熱・
圧縮加工する。
(C) (B)の工程により、圧縮加工した材料を、耐火煉瓦よりなる高温の炭化炉に
おいて炭化焼成を行い、その焼成後、空気(酸素)を遮断して数時間かけて室温
まで徐冷して作製する。
木炭の電気伝導機構が金属性電気伝導であるか半導体性電気伝導であるかが、本発明の重要なポイントである。ここでは、金属性及び半導体性電気伝導機構の物理学的な意味と
、その検証実験の手法を詳細に説明する。
木炭の電気伝導機構が、金属性電気伝導であるか、半導体性電気伝導であるかの判定は一つの温度だけで導電率(抵抗率の逆数)を測定しても判定は困難であることは衆知であり、導電率の温度特性やホール測定を正確に行うことが必要である。
一般に金属の代表である銅や鉄などの導電率は、その温度が上昇することにより単調に減少し、温度が低下することにより増大する。一方、シリコンやゲルマニウムなどの半導体材料においては温度が上昇することにより導電率は(指数関数的に)増大し、温度の低下では(指数関数的に)減少する。
この特徴的な導電率(σ)の温度変化を基礎的な理論で説明するために、材料に外部から電界(E)を印加するとき、流れる定常の電流密度(J)が、次式のように表現されることを用いて説明する。
J = neμE = σE (1)
ここで、導電率σ = neμ, nはキャリア密度、eはキャリア(電子または正孔)の電荷、μはキャリア移動度である。
(1)式において導電率(σ)の温度変化を引き起こすファクターは、キャリア密度(n)とキャリア移動度(μ)であるが、金属では電荷を輸送するキャリアは電子だけであり、
その電子密度(ne)は室温近傍の温度変化では殆ど変化しない。
金属の場合、キャリアである自由電子の密度neが温度により変化しないことは、エネ
ルギーバンドの理論からは、最上位のエネルギーを持つ電子を格納するエネルギー帯(価電子帯)が、電子で完全に満たされていないことによる。この場合、温度変化による効果を考慮しなくてはならないファクターはキャリアである電子の移動度(μe)であるが、
温度上昇が原子の熱振動を激しく励起し、キャリアの散乱を増加させることを考えれば、キャリアの動きやすさの目安である移動度(μ)は温度上昇により低下することは明らかである。つまり、(1)式から、金属性電気伝導では、温度上昇に対して導電率(σ)は移動度の低下により単調に減少し、温度低下では増加する。この導電率(σ)の温度変化は金属性電気伝導材料の特徴である。
一方、半導体材料では導電率(σ)の温度特性は金属とは全く逆になる。つまり、σは
(2)式で表現されるように絶対温度Tの変化に対して指数関数的な変化を示す。
σ=A・exp{-ΔE/kT} (2)
(2)式から温度Tを下げると導電率は指数関数的に減少し、極低温では非常に小さな
値となる(絶縁体に近づく)。
(2)式はキャリア移動度(μ)が温度変化に依存しないことによる近似ではあるが、十分な精度で半導体としての電気伝導特性を判定しうる関係式である。(2)式においてAは移動度を含む半導体物質で決まる定数、△Eは電子や正孔などのキャリア生成における熱活性化エネルギー(バンドギャップやドナー、アクセプタ、その他不純物欠陥の熱活性化エネルギーに対応)、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。
半導体材料にみられるこの特異な温度変化は、エネルギーバンド構造で言えば、価電子帯が電子で完全に充満しており、キャリアを生成するためには、その直上に存在する禁止帯(バンドギャップ)を超えて、その上の伝導帯へ励起される必要があることを示している。不純物を含まない真性半導体でも、ドナーやアクセプタ不純物を含む半導体でもキャ
リア(電子、ホール)が熱励起で発生する事情は本質的に同じである。
要するところ、半導体の特徴は、温度変化に対して敏感に変化する因子は伝導帯に励起される自由電子密度と価電子帯に電子の抜け殻として生成される自由ホール密度である。
これらの2種類のキャリア(電子と正孔)の指数関数的な温度変化が導電率の温度特性に反映されることになる。
木炭の導電率及びその温度変化を比較するために、本発明の半導体性木炭と、その他数種類の電気伝導性を持つ木炭(備長炭などとして製造・販売されている木炭)の導電率を比較して調べた。
これらの木炭は不定形なため、全てのサンプルを直方体形状(5mm×5mm×10mm)に切り出し、その両端面に金属電極として金(Au)、または銀(Ag)を真空蒸着により形成した。試料形状と電極配置を図1(a)に示している。 図1(a)の木炭の両端面への金属電極の形成は、木炭の正確な導電率や導電率の温度変化を測定するために不可欠である。
ここで測定した木炭は、一般に備長炭などの名称で呼ばれている3種類の電気伝導性木炭と、本発明で使用する半導体性木炭である。それぞれの導電率(σ)の室温近傍(300K〜360K)における温度変化を図2に示す。図2では縦軸は導電率(σ)の対数で、横軸は絶対温度の逆数(1000/T)でプロットしている。尚、縦軸のスケールは左右2つあり、♯Dは左のスケール、♯A、♯B、♯Cは右のスケールを適用する。 3種類の備長炭は、#A(和歌山県産)、#B(岡山県産)#C(中国産)で、半導体性木炭は#Dで表して
いる。#Dは本発明で使用したおがくずから製造した半導体性木炭である。
図2からわかるように、測定した従来の3種類の備長炭(#A〜#C)全てが、温度増加に対して導電率(σ)が単調に低下していることが判る(温度軸は図2の上部に絶対温度(K)で目盛ってある)。これに対し、黒丸でプロットした#Dだけは、導電率の温度効果は全く逆で、温度増加により導電率は顕著に増加していることが判る。
図2から、従来の備長炭などの木炭は、金属性電気伝導になっていることが判定される。つまり、金属電気伝導性木炭では、キャリア(電子)の密度は温度に対してほとんど一定で、キャリア移動度だけが温度上昇で緩やかに低下するために、導電率(σ)が温度増加でゆるやかに減少しているのである。
#Dの木炭では導電率(σ)の温度変化がすべての備長炭とは逆であるが、その温度変
化は、以下に示すように、式(2)の指数関数的な温度変化であることが判る。
σ(実験値) = A・exp{-ΔE/kT}: A ≒4.4Ω-1・cm-1 , △E ≒ 33 meV (3)
(3)式のσの実験的な温度特性より、#Dのおがくずから製造した木炭は、半導体特有の電気伝導率の温度特性を有していることが確認される。これより、おがくずから作製した#Dの木炭は、キャリアの熱活性化エネルギー(ΔE)≒33meVの半導体性木炭であるこ
とがわかる。
#Dの木炭の半導体性電気伝導をさらに正確に確認する目的で、温度290Kと360Kにおい
てVan der pauw法による4端子ホール測定を実施した。測定した資料構造は10mm×10mm×1mm厚の試料(図1(b)参照)で行い、正方形試料の4角に金蒸着により電極を形成した。この測定の目的は、キャリア移動度(μ)の温度変化が緩やかであることを確かめるためである。290Kと360Kでのホール測定の結果より移動度(<0.5 cm2/V・sec)の温度変化は5%以下であることが判った。
これらの実験結果より、#Dの木炭の導電率(σ)の指数関数的温度変化はキャリア濃
度の温度変化を反映しており、半導体材料固有の電気伝導機構を有していることが判定される。
参考のために、ここで評価した従来の金属性電気伝導木炭(#A−#Cの市販の備長炭)と本発明で使用する#Dの半導体性木炭の300Kでの導電率(σ)を、代表的な金属材料(銅、アルミニウム)及び半導体材料(シリコン,ゲルマニウム)と比較した結果を図3に示す。
図3で示すように、300K(室温)においては、半導体性木炭と従来の備長炭の導電率(σ)は類似しており、銅、アルミニウムなどの金属か、シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)などの半導体に属するかは判定できないことが判る。しかし、σの精密な温度特性(図2)から、共に同じ電気伝導性木炭であっても、その電気伝導機構が全く異なる材料であることが検証できるのである。
以上、本発明において本質的に重要な役わりを果たす半導体性木炭(#D)の特性評価
結果を詳細に説明したが、この特異な半導体性木炭は、
(1) 酸素、水素などの分解や化学反応において重要な物理・化学反応における 有
効な触媒効果を持つこと、
(2) 比重は約1.1程度で1gあたり100〜200m2の内壁面積を持つ極めて多孔質
の材料であること、
(3) 高い強度を有し且つ、線状、板状や粉末などへ容易に加工できること、
などの優れた利点を有しており、空気電池や燃料電池などの正極材料として有用
な材料であることが判る(優れた反応触媒効果は、後で示す空気電池の正極とし
ての実験で実証されている)。
半導体性木炭を電池の正極材料へ応用するときの形態の数例を図4に示す。
図4(a)は、炭化焼成したままの半導体性木炭の形状(円筒状)で、円筒の外側の直径は4cmから5cm程度、内径は1cmから1.5cm程度である。これらの寸法は木材
のおがくずを加圧と加温により固体製形するときの装置に依存しており、ある程度自由に形状(外系、内径、高さ)を変えることが可能である。
図4(b)は、薄板状に加工した正極形状を示す。板の面積は任意性を持つが、板の厚さはバルク木炭から切り出すため5mm程度以上になる。しかし、半導体性木炭の出発原料である、おがくずを加圧と加温により固体状の薄板に製形して、炭化する手法を使用すれば、板状の半導体性木炭の厚さ(薄さ)の制御性を向上させることができる。
図4(c)は、形状の自由度を上げるために、半導体性木炭を粉末状にして金属やプラスチックのシートの上に分散させ固着させた形状である。この手法では木炭粉末をシート上に固着させるため、導電性のペーストを使用する。この形状の正極構造は、ロール形状にもでき大面積の正極に適している。
図4で示した半導体性電気伝導の炭化材料から構成する正極材料が、有効な触媒効果を持つことを実証するために、図4(a)の形状の木炭の正極を使用して実際に空気電池を作成し、電池特性を評価した。以下では、半導体性木炭と従来の金属性電気伝導木炭を同一の条件で簡易な空気電池を構成し、電池の動作特性の詳細な比較の結果を示す。
図5に、半導体性木炭を正極として構成した空気電池の基本構造を示す。本空気電池の正極1として、図4(a)に示した円柱状の半導体性木炭を使用している。円柱の中心部
にステンレス金属を挿入して半導体性木炭正極からの電流を収集する電極5としている。負極3はアルミニウムを使用した。
負極3の金属の選定に関して、亜鉛やその他の金属を使用した実験においても、電池の起電力の大きさを除いて基本的な電池特性に大差はなかった。正極と負極は電界液2である食塩水(10〜20%のNaCl水溶液)に対向配置し、電極絶縁用セパレータ4として樹脂の
メッシュを木炭陽極表面に配置している。尚、6は電池容器、7は電池(−)電極を示す。
電界液に食塩水(NaCl電解液)を使用した理由は、安価且つ無害な電界液であるためである。他のKCl水溶液などの電界液において同様の実験を行ったが、空気電池特性はここ
で示す結果と類似している。
本発明の半導体性木炭を正極に使用したときの空気電池の電池動作寿命の測定を図6に示す。図6には、従来の金属性電気伝導木炭(備長炭)を正極とする空気電池の動作結果を比較して示している。図6から、半導体性木炭でも金属性木炭の正極でも、空気電池の初期起電力の大きさは0.5〜0.6Vである。
半導体性木炭と金属性木炭の正極特性の違いは、電池動作寿命の顕著な違いである。従来の金属電気伝導性木炭の正極では、10mA放電条件では、電池の起電力は10時間程度で初期の0.6Vから半分の起電力(0.3V)へ低下し、さらに数10時間で0.2V以下となり、電池としての能力を完全に失う。
一方、半導体性木炭を正極とする本空気電池では、650時間経過したあとでも電池能力
、つまり10mAを駆動する起電力(0.6V)は全く劣化しないことを実験は示している。
図6では、金属性電気伝導木炭の正極との性能比較を明瞭にするため、650時間までの
放電特性で比較したが、後述の実験で示すように、本発明の半導体性木炭を正極とする空気電池では、空気中から酸素の自動補給を可能にした構成では千時間(数ヶ月)から1万時間(年単位)の長寿命動作を実現することが可能となる。
図7の破線で示した2つの放電特性(B)は、電池の正極である半導体性木炭を食塩水(電界液)中に完全に浸漬させ、外界の空気との接触を遮断する条件で空気電池の動作寿命を測定したものである。一方、実線で示した放電特性(A)は、半導体性木炭正極の上部半分を空気に接触させ、酸素の取り込みを可能にしている。電池の構成、電流駆動条件(10mA定電流放電)は図6の実験と同じである。
図7から判るように、正極を空気と遮断した条件では起電力は100時間程度で1/2まで低下する。しかし、正極が空気と接触した条件(A)では300時間以上でも0.5V以上の起電
力を維持している。
この結果は、半導体性木炭の正極は、大気中の酸素を自然に吸収し、継続的に電池動作をする機能を有していることを示すものである。この正極の機能をより正確に確認するために、以下の実験を進めた。
図8に示す結果は、半導体性木炭正極を一旦、電解液中に浸漬した条件(空気と遮断)で電池の放電を行い、350時間放電させ起電力が0.2Vまで低下した空気電池の正極を、再
び空気に接触させて起電力の回復を調べたものである。 空気と接触させたあと100時間
程度で、起電力は0.5V以上に回復することが確認される。
図6から図8までの実験結果より、半導体性木炭の正極は、従来の金属性電気伝導木炭の正極とは大きく異なり、室温においても空気から自然に酸素を取り込み、効率的な空気電池反応を持続させる能力を有していることが判明した。これらの顕著な違いは、半導体性木炭の有効な触媒効果によるものである。
本空気電池の動作(特に電池寿命)が従来の金属性電気伝導木炭の空気電池と大幅に異なることを示したが、その反応を正確に理解するために、木炭空気電池の酸素分子の物理・化学反応過程を正極と負極で整理しておく。
(正極での反応について)
O2(木炭細孔壁に吸着した酸素分子) → 2O (酸素原子への解離) (4)
(4)式の酸素原子は、電界液に以下の反応で(OH)-イオンとして溶解する
2O + 2(H2O) + 4e- → 4(OH)- (5)
この反応における4個の電子(e)は、半導体性木炭正極から受け取る。
(負極での反応について)
負極では、Al原子が3個の電子を金属に残し、電解液中へAl3+イオンとして溶解する過程(6)式で表現される。
Al → Al3+ + 3e- (6)
(4)式の反応で生じた電子は外部に接続された回路を通して半導体性木炭正極に供給され、(5)式で要求される電子として消費される。 つまり、(4)から(5)式の化学反応が循環し、外部回路に電流が流れることを示している。 全ての反応をまとめると、
2Al3+ + 6(OH)- → Al2O3 + 3H2O ・・・(7)
で記述され、この一連の反応が継続することで電池動作が継続する。尚、この空気電池の動作反応で生成される副産物は無害なAl2O3(アルミナ)である。
半導体性木炭による正極は電池の長期間の動作で劣化しないことから、本空気電池の動作寿命は、正極ではなく負極の金属材料の消耗により決定されることになる。このことは、負極であるアルミニウムや亜鉛などの金属を、長期の電池動作が終了した後でも、電池を破棄することなく、負極の金属の交換により継続して電池として使用できる利点をもっている。この利点は環境面からも重要な特性となる。
金属を負極、木炭を正極とする空気電池の一連の反応を(4)式〜(7)式で説明したが、半導体性木炭による正極は(4)式及び(5)式の酸素分子の原子への解離とOH-
イオンとしての電解液への溶解反応過程に対して顕著な効果を示す。(4)式及び(5)式の反応が、半導体性木炭のミクロな細孔内固相・気相・液相の境界で効率よく進行することが、本発明の重要な要素といえる。さらに、この反応は空気電池の場合だけでなく、類似の反応を伴う燃料電池等の正極(酸素極)の場合にも当てはまり、その場合においても半導体性木炭は有効な正極材料として働くことは明らかである。
以上、半導体性木炭の正極としての優れた特性を、従来の備長炭などの金属性電気伝導木炭の空気電池と比較して説明してきたが、以下では半導体性木炭の正極が、自然の海水を電界液とした空気電池においても有効であることの実験結果を説明する。
半導体性木炭を正極とした空気電池の動作を、海水を電界液として調べた結果を図9に示す。この実験では、電解液を海水に変えただけで、電極などの電池構成は図5に示したものと同一である。 海水のNaClの濃度は測定では4〜5%であるが、この程度のNaCl
濃度でも本発明の空気電池の基本的な能力(起電力、電流駆動能力、寿命)は、図6から
図8に示した空気電池の能力と遜色のない結果を確認した。
この実験は、自然の海水を利用して、大規模な木炭空気電池の発電が可能であることを示している。海水の利用は、密封系でも開放系でもともに可能であり、直接海洋に半導体性木炭(正極)と負極金属(アルミニウムなど)をセパレータで絶縁し海洋へ浸漬させる、簡単なセル構造で大規模な空気電池が可能となる。
以上、半導体性木炭を正極とする空気電池の特徴的な機能とその有用な正極材料としての特性を実施例により説明してきたが、以下では半導体性木炭正極による空気電池の応用技術の実施例を説明する。
1:イルミネーションおよび照明設備に関する応用実施例
本発明の空気電池を6個直列に集積して、約3.5Vの起電力の電源を構成し、低消費電力の発光ダイオード(LED)のイルミネーション装置を作製した。この空気電池は、プラス
チック性の電池ボックスに収容し、風雨のあたる屋外でも使用できるように設計している。このイルミネーション装置には光センサーを備えており、LEDは夜間のみの照明が出来
るようにしている。
上記、イルミネーション装置の動作実験を屋外で6ヶ月間連続でおこなった結果、電池動作の劣化はまったく生じず、実用的なイルミネーション設備の電源となりうることを確認した。
これらのLEDと本発明の空気電池の組み合わせは、商用電源のない、屋外庭園、公園、
海岸、山林、などにおける実用的なイルミネーションや照明装置に応用可能である。また、この装置の大きな特徴としては、数ヶ月の連続動作後に電池機能が低下した場合でも、負極金属(Al等)を交換・補給することで、電池機能を回復させることが可能であり、コストおよび環境面においても従来の電池より優れていることである。 2:自然海水を電界液にした空気電池による照明設備に関する応用実施例
この実験では、10個の木炭空気電池を海水に浸漬させ、300mA以上の電流を駆動できる
空気電池を作製した。半導体性木炭は図4(a)に示す正極の形状で、その大きさは、外形4cm、内径1cm、長さは30cmである。正極からの電流はステンレス線により取り出して
いる。空気中から酸素の自然補給ができるように木炭の上部10cm程度を空気中に露出させている。また、電解液となる海水を容器に入れるのではなく、自然の海中に開放した形で行っている。 照明は白色LEDを20個使用し、電池からの電圧をDC-DCコンバータにより昇圧する電源装置となっている。
この自然海水を利用した空気電池を電源とする照明装置は、海水の波や風雨の影響がほとんどなく、安定した照明装置として動作することが確認された。また本装置は、海水に浸漬したままで、数ヶ月以上の動作が可能であり、負極のアルミニウムなどの金属の交換・補給によりさらに長期間の動作が可能となる。
ここで示した応用実施例は、本発明の応用の一部であり、以下に示すような多岐に渡る応用も可能である:
・自然環境を重視する公園、森林、海洋、沿岸、船舶などの低コストかつクリーンな電源および照明装置。
・家庭や公共設備における、屋外での照明、イルミネーション設備、水循環ポンプの電源。
・海水利用による船舶、海岸の照明、海洋のブイなどの照明あるいは電子装置の電源・深海における電子デバイス装置の特殊電源装置など。
・半導体性木炭を正極した空気電池の学習用教材(教材キットを含む)。
本発明を説明するための導電率及びホール測定用試料の概観図である。 各種炭化材料の導電率の温度依存性を説明するための図である。 各種材料の導電率を比較して示す図である。 本発明の実施例で使用される半導体性木炭よりなる正極の形状例を示す図である。 本発明の一実施例における空気電池の構成例を示す図である。 電池起電力の放電時間による変化を示す図である。 空気電池の正極状態の違いによる放電特性を示す図である。 空気電池の正極の一部を大気に暴露した後の放電特性を示す図である。 本発明の一実施例における空気電池において、電解液として海水を用 いた場合における放電特性を示す図である。
符号の説明
1 正極(半導体性木炭)
2 電解液
3 負極

Claims (4)

  1. 木材の製材あるいは加工で生じた屑の圧縮加工体を高温焼成した炭化物であって導電率が温度上昇とともに増大する特性を有する木炭よりなる正極と、金属よりなる負極とを電解物質を介して設けたことを特徴とする空気電池。
  2. 木材の製材あるいは加工で生じた屑の圧縮加工体の高温焼成炭化物よりなり、かつ導電率が温度上昇とともに増大する特性を有する木炭よりなる電池の正極材料。
  3. 請求項1に記載の空気電池を用いたイルミネーション装置、照明装置又は循環水ポンプ装置。
  4. 請求項2に記載の正極材料を用いた電池の学習用教材。
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