JP4275715B2 - 改良されたatp検出法 - Google Patents

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Description

関連出願の説明
仮出願でない本出願は、2001年2月16日出願のATPを測定する改良法(IMPROVED METHOD FOR MEASUREMENT OF ATP)と称する米国仮出願[事件整理番号10743/4]の優先権を主張する。仮出願には、発明者としてKeith Wood、Rita Hannah、Rich Moravecが記載されている。
本発明は、一般的には、細胞生物学と分子生物学の分野に関する。特に、本発明は、ATPの検出と定量化を改良する方法、組成物及びキットに関する。
生物学、生物医学、薬学の進歩によって、過去に類のない研究診断の進歩が加速されてきた。全ゲノム配列が迅速に継続的に利用できるようになったので、小分子の大ライブラリへのアッセンブル、また、医薬品開発、臨床診断試験、基礎研究を還元主義から全システムへ移行させるには、高処理能力分析が容易である分析が求められている。もはや、孤立したプロセスに対する分子の作用を単独で分析する必要はない。代って、いくつかの生物系に対する多くの分子の作用を同時に解析することができる − 適切な場合には、速やかで、信頼できる、正確な分析が利用できる。
細胞の健康状態を評価することを支援する好ましいバイオアッセイは、アデノシン三リン酸(ATP)を検出し定量する方法である。ATPの加水分解は細胞の生物化学過程の多くに動力を供給する。健康な生存細胞はATPが豊富であり、死んだ細胞又は死にかけている細胞はATPに乏しい。
細胞毒性物質又は細胞増殖物質を速やかに発見すること、および細胞に対する物質の細胞毒性作用又は細胞増殖作用を決定するために、効率が良く、信頼できる、正確な細胞生存度についてのアッセイを使用することができる。がんの医薬品研究では、がん細胞の主な特徴−急速に分裂する細胞−を選択的に死滅させる化合物を同定することがしばしば試みられている。有効な抗がん細胞毒性化合物が同定されてきたが、潜在的に価値のある数え切れない化合物が同定を必要としている。効率の良い細胞生存度アッセイと相まって化合物ライブラリの高処理能力スクリーニングがそのような化合物を速やかに同定し得る。体内のいくつかの系においては、制御された細胞死が適切な機能に極めて重要である。例えば、免疫系の発達−連続的過程−は、アポトーシス(プログラムされた細胞死)に左右される。免疫関連機能障害を治療する薬剤の発見は、細胞生存度を求めることにしばしば基づいている。ATP生産は代謝的に活性な(生きている)細胞にのみ認められ、細胞内の残留ATPは細胞死の時に、特に非アポトーシス(壊死)細胞死で速やかに分解するので、細胞生存度に対する候補化合物の効力はATPを検出することにより分析することができる。細胞生存度に対する物質の評価を容易にするだけでなく、数千の化合物を速やかに試験し得る高処理能力スクリーニングを可能にするアッセイシステムは、新規な薬剤発見を能率的にするものである。
臨床では、簡便で、正確で、安全な分析を用いると、多数の試料に対する診断試験が容易になる。その後、容易に病気治療を決定し開始することができる。
全ゲノム配列が利用可能になると、ATP生産に影響する遺伝子産物の同定が間接或いは直接に可能になり、そのようなタンパク質を同定する高処理能力スクリーニングが簡便で、迅速で、正確で、信頼できるATP分析によって容易になる。
微生物の存在又は不在を求めること又は微生物の混入が存在する量を求めること、例えば、最終製品の微生物混入の定量、衛生上の監視、生物致死剤の有効性、生物学的廃棄処理プロセスの成果等が重要となる数えきれない種類の測定にATP分析は有効である。
ATP分析は、ATPレベルを定性的に又は定量的にモニタするレポーター分子又は標識に左右される。そのような分析系におけるレポーター分子又は標識には、放射性同位体、蛍光物質、又はルシフェラーゼのような光生成酵素を含む酵素が含まれている。レポーター分子系の望ましい特性としては、安全で、迅速で、信頼できる適用と検出が含まれる。発光系は、例外的に安全でかつ鋭敏であるので特に最も望ましいものの一つである。
光生成酵素は、ある種の細菌、原生動物、腔腸動物、軟体動物、魚、多足類、ハエ、蠕虫、又は甲殻類から単離されている。甲虫、特にフォーチヌス(Photinus)属、フォーツリス(Photuris)属、ルシオラ(Luciola)属のホタルから、また、ピロフォールス(Pyrophorus)属のコメツキムシから単離された酵素はレポーター系における広範な用途が見見いだされている。これらの生物体の多くにおいて、ルシフェラーゼのような酵素が酸化還元を触媒し、自由エネルギー変化が基質分子を高エネルギー状態へ励起する。励起した分子が基礎状態に戻ったとき、可視光が放射され、即ち、これが“バイオルミネセンス”又は“ルミネセンス”である。特に、ATPをモニタ又は測定するためにバイオルミネセンスが用いられる分析系は、ATPP依存性生物発光酵素、例えば、甲虫ルシフェラーゼの活性を利用するものである。
ATPを検出させるためにルシフェラーゼと試料とを組み合わせる場合、典型的には、試料の内在性ATPアーゼを阻害することおよびATPを生成酵素を阻害することが望ましく、それによって検出されたATPが所望される時間に試料中のATPの実際量に対応することが保証されることが望ましい。多くのATPアーゼ阻害剤が既知であり、界面活性剤、特に正に荷電された界面活性剤が含まれる。しかしながら、ほとんどのATPアーゼ阻害剤は、試料(例えば、細胞又は細胞集団)内在性のATPアーゼを阻害するだけでなく、ルシフェラーゼのようなレポーター分子として用いることができるATPアーゼも排除する点で効果を生じる。更に、ATP生産を阻止するために、キナーゼのようなリン酸化する酵素の阻害剤が望ましい。しかしながら、フッ化ナトリウム(NaF)のようなこれらの阻害剤は、ルシフェラーゼ機能に影響するかもしれない。ルシフェラーゼを用いた試料中のATP検出を改良する試みは試料の内在性ATPアーゼ活性やATP産生活性を本質的に低下又は消失させる方法又は組成物に依存し、これによってルシフェラーゼ機能を混乱させることなく試料中に存在するATP量を組成物を添加したときに存在したATP量に安定化する。
細胞のATP検出法の多数の変法が現在用いられているが、すべて段階的方法で働くものである。そのような方法は、まず細胞を溶解し、試料の内在性ATPアーゼ活性を不活性化し(例えば、試料pHを上げることにより)、その後、ATPアーゼ阻害因子を中和し、これによって、ルシフェラーゼを添加しルミネセンス(lulminescence:発光)を検出するに先だって試料の環境をルシフェラーゼ活性に好ましいものに変える方法である。他の方法は、ATPアーゼ阻害因子の中和とルシフェラーゼの添加とを組み合わせる方法である。内在性ATPアーゼ活性を不活性化するとともに同じ環境内でルシフェラーゼ活性を検出することができる組成物又は方法を提供するATP検出システムはない。それ故、ATPを検出するためにルミネセンスを用いる現在の分析は、時間を要する逐次工程を必要とすることにより不利である。
本発明は、試料中のATPを検出し定量するために用いられる方法、組成物及びキットに関する。
本発明は、ルシフェラーゼと1種以上のATPアーゼ阻害因子を含む高安定性の性質をもつ組成物を提供し、その新規な組成物を用いて、細胞溶解工程と、内在性ATPアーゼ阻害工程と、基質とルシフェラーゼの添加工程とを単一工程に減らし、その後ルミネセンスを検出することにより、試料中のATPを検出する方法を提供する。本発明の実施態様が、ルシフェラーゼを添加する前にATPアーゼ阻害因子活性を中和する必要性を取り除くことによりATPのルシフェラーゼ仲介検出の時間と努力を著しく減少させるので、最後には高処理能力分析が効率良く実現し得る。
本方法は、ルシフェラーゼ酵素とATPアーゼ阻害因子を含む組成物(“試薬組成物”)を試料に添加することと、ルシフェラーゼによって基質を発光化合物に変えることにより該試料中に生じたルミネセンスを検出することとを含む。この試薬組成物は高安定性の性質をもち、よってルシフェラーゼ酵素を試料に添加するに先立って試料の内在性ATPアーゼを阻害する従来の工程が排除される。従って、ルシフェラーゼはATPアーゼとして機能するが、試薬組成物中では試薬組成物中に存在するATPアーゼ阻害因子の作用に抵抗性である。そのような安定な試薬組成物は、長時間にわたる試料中の多くのATP検出および長時間にわたる多くの試料中のATPの検出を容易にする。
一般的には、本方法は、ルシフェラーゼ(例えば、配列番号1〜4で例示されるが、これらに限定されない)と1種以上のATPアーゼ阻害因子を含む組成物(「試薬組成物」)を試料に添加することと、ルミネセンスを検出することとを含み、試薬組成物の活性は高安定性であり[即ち、試薬組成物は、試薬組成物の活性が生じるとき、即ち、ルシフェラーゼ酵素とATPアーゼ阻害因子とを混ぜた直後(0〜10分)の活性に相対して、少なくとも約30%、更に好ましくは少なくとも約60%の活性(試薬組成物と試料とを混ぜたときのルミネセンスによって測定した場合)を少なくとも1時間、更に好ましくは少なくとも70%、80%、90%、95%、99%以上の活性を少なくとも1時間、なお更に好ましくは少なくとも2時間、更に好ましくは少なくとも4時間維持することができる]、ATPアーゼ阻害因子は、ATPアーゼ阻害因子が存在しないときの試料のATPアーゼ活性に対して少なくとも約25%、更に好ましくは少なくとも約30%、更に好ましくは少なくとも約40%、更に好ましくは50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%以上試料の内在性ATPアーゼ活性を低下させるのに十分な濃度で試薬組成物中に存在する。この試薬組成物は、1種以上のATPアーゼ阻害因子を含む溶液を凍結乾燥ルシフェラーゼに添加することにより使用前に混合することができる。
安定性の消失は、活性の不可逆消失として定義される。試薬組成物は、時間経過と共に安定性を消失させ、活性の消失量は、具体的なルシフェラーゼ、ATPアーゼ阻害因子、存在する場合に用いられる酵素安定剤によって変動する。試薬組成物の安定性は、好ましくは約20℃〜約37℃の温度範囲で証明可能である。本発明の方法は任意量のATPを含む試料と共に用いることができるが、非飽和量のATPを含む試料を用いることが好ましい(即ち、ルミネセンスがATP濃度に直線的に比例する範囲)。
ルシフェラーゼ反応によって生成するルミネセンスは、典型的にはルミノメータで検出されるが、他の検出手段も用いることができる。バックグラウンドレベルより高い光の存在は、試料中のATPの存在を意味する。ルミネセンスのバックグラウンドレベルは、典型的には、試料が存在する同一マトリックス中(但し試料は存在しない)で測定される。適切な対照反応は、当業者によって容易に設計される。本発明の組成物及び方法に用いられる好ましいルシフェラーゼは、安定なシグナルを生成する。即ち、ルシフェラーゼ反応が開始した時間のルミネセンスに対してルミネセンスの消失が50%未満/時間として定義される、ルシフェラーゼ反応における増強されたルミネセンス持続性を示す。本発明の好ましいルシフェラーゼは、ルシフェラーゼとATPアーゼ阻害因子とを混ぜた1時間後、更に好ましくは2時間後、最も好ましくは4時間以上にわたって1試料の経時多重分析又は多数の試料の経時分析を可能にする。場合によっては、本発明の組成物及び方法に用いられるルシフェラーゼは、熱安定性の性質が向上しているものである。
放射される光線量を定量すると試料中のATP量が定量され、よって生細胞の量が定量される。定量的ATP値は、例えば、試験試料から放出された光量と対照試料から放出された光量とを又は既知量のATPと、同一のルシフェラーゼ、基質、反応条件(即ち、温度、pH等)を用いて求めた標準曲線とを比較したときに実現される。定量化はバックグラウンド値を差し引くことが必要であることは言うまでもない。定性的ATP値は、試料中に存在するATPの絶対量を知る必要がなく、例えば、試験化合物の存在下又は不在下の試料の比較で、一試料から放出されたルミネセンスと他の試料から放出されたルミネセンスとを比較したときに実現される。そのような多くの実験は、当業者によって容易に設計し得る。
ATPアーゼ阻害因子の例としては、界面活性剤、好ましくは陽イオン界面活性剤[例えば、DTAB(ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド)、CTAB(セチルトリメチルアンモニウム)又はBDDABr (ベンジルジメチルドデシルアンモニウムブロミド)]、陰イオン界面活性剤(例えば、SDS又はデオキシコール酸塩)、又は両性イオン界面活性剤(例えば、スルホベタイン3−10)のような荷電基を有する界面活性剤が挙げられる。本方法を容易にするために、ルシフェリンのような基質が試薬組成物中に含まれてもよい。試薬組成物の他の実施態様は、試料中のATPレベルの経時上昇を防止するNaFのような化合物を更に含んでいる。試料中のATPレベルの上昇を防止する他の化合物としては、バナジン酸塩やパラニトロフェニルリン酸塩が含まれる。試薬組成物の他の実施態様は、緩衝液とマグネシウムを更に含んでいる。マンガン又はカルシウムのような他の陽イオンがマグネシウムの適切な代用品であってもよいことは当業者に既知である。
反応組成物は、また、酵素安定剤を含むことができる。酵素安定剤は、ルシフェラーゼを分解から安定化するどのような化合物であってもよい。適切な酵素安定剤としては、タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン又はゼラチン)又は界面活性剤(好ましくは非イオン性界面活性剤、最も好ましくはTHESIT)が含まれる。
ATP(又は特定のATP:ADP比)の存在が生細胞の特性であることから、本発明は上記組成物を用いた生細胞の検出定量にも関する。ルミネセンス量は集団中の生存細胞数と相関し、ルミネッセンス量は、通常、本発明を適用しつつ細胞集団のアリコートを溶解するか、注目する細胞又は細胞集団からATPを抽出して測定される。
更に、本発明は、生細胞に対する小分子(有機分子、無機分子、合成分子、天然に存在する分子を含む)の作用を求めるのに用いられ、これは小分子が医薬品として機能することができるかを評価することを可能にする。従って、本発明は、第一細胞集団に対する化合物の作用を、第一細胞集団とある濃度の化合物とを接触させ、その後、第一細胞集団と本発明の組成物とを接触させ、第一集団のルミネセンス量と第二細胞集団のルミネセンス量とを検出比較する方法に関する。第二細胞集団は、第一細胞集団と接触している濃度より低い濃度の化合物と接触させ、又は化合物と接触させないことができる。第二集団と比較した第一集団から検出されたルミネセンスのより少ない量は、化合物が細胞毒性物質を含んでいることを意味し得る。このようにして、細胞毒性試薬を発見することができる。同様に、本発明は、細胞増殖試薬、即ち、細胞増殖を刺激する化合物を発見するために用いられる。上記例を用いれば、第一集団と比較した第二集団から検出されたルミネセンスのより少ない量は、化合物が細胞増殖物質を含むことを意味し得る。本発明は、細胞に対する同一濃度の異なる化合物の作用を比較するのに有用である。本発明は、また、異なる種類の細胞に対する化合物の作用を比較するのに有用である。当業者は、本発明が有用である他の多くの分析を開発することができる。
本発明は、また、本発明の構成要素をキットへ組み上げたものである。そのようなキットは、試料中のATPの存在、例えば、細胞集団内の細胞生存度の測定、又は細胞に対する化合物の作用の決定を求めるために設計される。キットは、1以上の目的が可能になり得るように多機能であってよい。一実施態様においては、試料中のATPを検出するために用いられるキットは、一容器内に凍結乾燥ルシフェラーゼを含むことができ、他の容器には再構成緩衝液が1種以上のATPアーゼ阻害因子とともに含まれてよい。ATPアーゼ阻害因子は、界面活性剤、好ましくは陽イオン界面活性剤(好ましくはDTAB又はBDDABr)、陰イオン界面活性剤(好ましくはSDS又はデオキシコール酸塩)又は両性界面活性剤(好ましくはスルホベタイン3-10)又はその組合わせを含むイオン基を有する界面活性剤であってもよい。
キットは、ルシフェリンのようなルシフェラーゼ基質を供給することもできる。キットは、マグネシウム、又はマンガン又はカルシウムのような他の陽イオンを供給することもできる。試料中のATPを定量するために用いられるキットの実施態様でのように既知濃度のATPによる対照実験の使用を容易にするために、ATPを有する容器がそのようなキット中で供給すされてもよい。キットは、また、試料中のATP量の経時増加を防止する化合物を供給することもできる(例えば、NaF)。キットは、また、細胞溶解剤又はATP抽出剤(例えば、TCA、DMSA、CTAB、エタノール等)を供給することもできる。キットは、また、緩衝液を供給することもできる。キットは、また、酵素安定剤、例えば、BSA又はゼラチン又はTHESITを供給することもできる。
キットの好適実施態様は、混ぜたときに、(i)試薬組成物と試料とを混ぜたときに、ルミネセンスで検出した場合、前記試薬組成物がアッセンブルされた直後(即ち、ルシフェラーゼを含む成分とATPアーゼ阻害因子を含む成分とを混ぜた0〜10分後)の活性に相対して少なくとも約30%(好ましくは少なくとも約60%、更に好ましくは少なくとも70%、80%、90%、95%、99%)の活性を少なくとも約1時間(好ましくは少なくとも2時間、更に好ましくは4時間)維持し、(ii)ATPアーゼ阻害因子が存在しないときの試料のATPアーゼ活性に相対して試料の内在性ATPアーゼ活性の少なくとも約25%又は少なくとも約30%(好ましくは少なくとも約40%、更に好ましくは少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%又はその中の増加分)を低下させる試薬組成物を生成する成分を含んでいる。
ATPアーゼ阻害因子を含む成分は、試薬組成物に許されるならば、1種より多くのATPアーゼ阻害因子を含むことができ、それらの合わさった作用がATPアーゼ阻害因子の存在しないときに試料のATPアーゼ活性に相対して試料の内在性ATPアーゼ活性の少なくとも約25%又は少なくとも約30%(好ましくは少なくとも約40%、更に好ましくは少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%又はその中の増加分)を低下させるような濃度で試薬組成物中に存在している。
最も好ましくは、キットは、pH約6.0〜pH約8.0の範囲のpHで試薬組成物中の濃度が約0.05%〜約2%(w/v)の範囲にあるDTABを含み、場合により約1mM〜約20mMの範囲にあるNaFを含み、任意により試薬組成物中の濃度が約1%〜約5%の範囲にあるTHESITを含む緩衝界面活性剤溶液を含む容器を含んでいる。キットは、更に凍結乾燥ルシフェラーゼ、好ましくは配列番号1、2、3、又は4、最も好ましくは配列番号2又は4の配列をもつルシフェラーゼを含む別個の容器を含んでいる。好ましくは、緩衝界面活性剤溶液と混ぜて試薬組成物を生成するときのルシフェラーゼは、濃度が1μg/ml以上、更に好ましくは濃度が80μg/ml以上である。好ましくは凍結乾燥ルシフェラーゼを含む容器は、凍結乾燥ルシフェリンを更に含んでいる。場合により、キットは、ATPを測定するためのキットの使用説明書を更に含んでいる。
本発明は、ルシフェラーゼと1種以上のATPアーゼ阻害因子を含む高安定性の性質をもつ組成物を提供する。本発明は、更に、細胞溶解剤と、ルシフェラーゼと、1種以上のATPアーゼ阻害因子を含む高安定性の性質をもつ組成物を提供する。本発明は、更に、この新規な組成物を用いて、細胞溶解工程と内在性ATPアーゼ阻害工程と、基板とルシフェラーゼの添加工程を単一工程に減らし、その後、生じたルミネセンスを検出することにより試料中のATPを検出する方法を提供する。また、細胞溶解は、細胞又は細胞集団からATPの抽出で置き換えることができる。好ましくは、本発明の組成物と試料との混合から生じるルミネセンスは長時間持続する。即ち、組成物と試料とを混ぜた直後のルミネセンスに対するルミネッセンスの消失が約50%未満/時間である。本発明の方法は、ルシフェラーゼを添加するに先立ってATPアーゼ阻害因子活性を中和する必要性を除去することにより試料中のATPのルシフェラーゼ仲介検出の時間と努力を著しく減少させる。
ATP検出法の多数の変法が現在用いられているが、すべて段階的様式で働くものである。そのような方法では、まず細胞を溶解し、試料の内在性ATPアーゼ活性を不活性化し(例えば、試料のpHを上げることにより)、その後、ATPアーゼ阻害因子を中和する方法であり、それによって、ATPアーゼ阻害に有利であってルシフェラーゼ活性に有利でない環境からルシフェラーゼ活性に有利な環境に試料の環境を変えてから、ルシフェラーゼを添加してルミネセンスを測定する。試料の環境をルシフェラーゼ酵素を添加したと同時にルシフェラーゼ活性に有利に変える類似の方法もある。内在性ATPアーゼ活性を不活性化するとともに同じ環境内でルシフェラーゼ活性を可能にすることができる組成物又は方法を提供するATP検出システムはない。また、細胞を溶解するか又は細胞のATPを抽出し、試料の内在性ATPアーゼ活性を阻害し、同じ環境内でルシフェラーゼ活性を可能にすることができる組成物又は方法を提供するATP検出システムはない。それ故、時間を要する逐次工程を必要とすることにより、ATPを検出するためにルミネセンスを用いる現在の分析は不利である。
好適実施態様においては、本発明は、ルミネセンスの測定に先立ち、試料中のATP検出に必要とされる操作を単一の工程に減らすものである。本発明の単一工程ATP分析においては、酵素、基質、ATPアーゼ阻害因子のようなATP依存性酵素(例えば、ルシフェラーゼ)の必要な成分すべてが試薬組成物の中に含まれ、試料に一度に添加される。一部の実施態様においては、試薬組成物は細胞溶解剤又は細胞からATPを抽出する試薬を更に含む。一部の実施態様においては、試薬組成物の成分の一つは試料中のATPレベルの経時上昇を防止する化合物(例えば、NaF)である。ATPレベルがある種の試料、例えば、リンパ系細胞(例えば、ジャーカット細胞)において経時上昇するメカニズムは十分理解されていないが、おそらく試料の内在性キナーゼ酵素の活性から生じるものである。一部の実施態様においては、試薬組成物の成分の一つは酵素安定剤である。
A. 定義
特にことわらない限り、すべての科学技術用語は本発明が属する当業者によって一般に理解される同じ意味を有する。引用される特許や文献はすべて特にことわらない限りその全体が本願明細書に含まれるものとする。
遺伝学に関連しているDemerec et al.,1966の命名法が本明細書に適応される。遺伝子(及び関連する核酸)とコードしているタンパク質とを区別するために、遺伝子の略号はイタリック体(又は下線)文字列で示され、タンパク質の略号は大文字から始まり、イタリック体ではない。従って、luc(イタリック体)又はLucはルシフェラーゼポリぺプチドすなわちLucをコードしているルシフェラーゼヌクレオチド配列を意味する。
“単離”又は“精製”ルシフェラーゼは、天然環境の成分から同定及び分離及び/又は回収したものである。
本明細書に用いられる“試料”という用語は、最も広い意味で用いられている。試料は、本発明を用いて分析するATPを含有することが疑われる組成物である。しばしば試料は細胞又は細胞集団(場合により増殖培地中)、又は細胞溶解物を含有すること又は含有することが疑われることを知られているが、試料は付着した細胞又は細胞集団を含有することが疑われる固体表面(例えば、綿棒、膜、フィルタ、粒子)であってもよい。そのような固体試料の場合、その固体を本発明の試薬組成物に又は本発明の試薬組成物が添加される他の水溶液に添加することにより水性試料が調製される。ときには、試料をつくるために、例えば、本発明の方法によって液体又は気体試料を試験する際には、ろ過が望ましい。多量の希釈した気体又は液体から試料を取る場合にはろ過が好ましい。
本明細書に用いられる“検出”という用語は、試料中の成分の有無を定性的に又は定量的に求めることを意味する。
“アミノ酸配列同一性パーセント(%)”は、2つの配列が最適に整列(アラインメント)された場合に、オーバーラップする領域において第二配列中のアミノ酸残基に同一である第一配列中のアミノ酸残基のパーセンテージ(%)として定義される。アミノ酸同一性%を求めるために、配列を局所的にアラインメントさせ、必要な場合には、ギャップを導入して最大の配列同一性%を得る。配列同一性を算出する場合に保存的置換は計数しない。同一性%を求めるためのアミノ酸配列アラインメントの手順は当業者に周知である。BLASTソフトウエア(NCBI、www.ncbi,nlm.nih.gov/BLAST/)のような公共のコンピュータソフトウエアをぺプチド配列を整列させるために用いることができる。当業者は、2つのアミノ酸配列の最適なアラインメントを得るために必要とされるアルゴリズムとパラメータを含むアラインメントを測定するのに適切なアルゴリズムとパラメータを求めることができる。
アミノ酸配列をアラインメントさせたときに、あるアミノ酸配列Aとあるアミノ酸配列Bとのアミノ酸配列同一性%(また、あるアミノ酸配列Bに対してある%のアミノ酸配列同一性を含むあるアミノ酸配列Aとして表すこともできる)は、下記のように算出することができる。
%アミノ酸配列同一性=(X/Y)・100
(ここで、Xは配列アラインメントプログラム又はアルゴリズムによるAとBの最適アラインメントにおいて同一マッチングとしてスコアリングされたアミノ酸残基数であり、Yはアラインメントしたアミノ酸位置の総数である。)
B. 試薬組成物
本発明の試薬組成物は、1種以上のATPアーゼ阻害因子、好ましくは界面活性剤と、非内在性ATP依存性酵素とを含み、該組成物は、酵素とATPアーゼ阻害因子とを混ぜた直後(0〜10分間)の活性と比べて少なくとも約30%の酵素活性を少なくとも約1時間、好ましくは少なくとも約2時間、更に好ましくは約4時間維持することができ、1種以上の該ATPアーゼ阻害因子はその全体で、ATPアーゼ阻害因子の存在しないときの試料の内在性ATPアーゼ活性に相対して少なくとも約25%、更に好ましくは少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%又はその中の増加分だけ試料の内在性ATPアーゼ活性を低下させるのに十分な濃度で組成物中に存在する。本発明の好適実施態様においては、非内在性ATP依存性酵素はルシフェラーゼである。
1.ルシフェラーゼ
触媒産物に光が含まれるルシフェラーゼ酵素は、鋭敏性、検出可能な産物を生じさせ、ATPの容易な測定を可能にする。しかしながら、ATP依存性であるどのようなルミネセンス産生酵素も本発明の方法と組成物に用いることができる。
最も基本的なレベルでのルシフェラーゼはルミネセンスを生成する能力で定義される。更に詳しくは、ルシフェラーゼは基質、ルシフェリンの酸化を触媒する酵素であり、オキシルシフェリンと光子を生成する。
いままでに5種類のルシフェラーゼが同定されている(Jones et al., 1999;Thomson et al., 1997)。これらのうち甲虫ルシフェラーゼ、例えば、一般的なホタル (ランピリデ(Lampyridae)科) のルシフェラーゼは、固有の発生起原をもつ異なるクラスを構成する(McElroy et al., 1969; White et al., 1969; White et al., 1975)。甲虫ルシフェラーゼは、文献ではホタルルシフェラーゼとしばしば呼ばれている。しかしながら、ホタルルシフェラーゼは、甲虫ルシフェラーゼ種のサブグループである。甲虫ルシフェラーゼは、甲虫自体のランタンから又は当該技術において周知のタンパク質発現系から精製することができる (Baldwin & Green, 2000; Beny & Dolivo, 1976; Branchini et al., 1980; Filippova et al., 1989)。
甲虫ルシフェラーゼ、特に北アメリカのホタルフォーチヌス・ピラリス (Photinus pyralis) 由来のホタルルシフェラーゼは、当該技術においてよく知られている。P. ピラリスルシフェラーゼ (LucPpy) は、遺伝子のヌクレオチド配列でコードされたタンパク質で計算したMr 61 kDaの約550アミノ酸からなる。しかしながら、他のホタルルシフェラーゼ、例えば、フォーツリス・ペンシルワニカ(Photuris pennsylvanica) ホタルルシフェラーゼ (LucPpe2; 545アミノ酸残基; GenBank 2190534, (Ye et al., 1997))も好ましい。LucPpe2由来の変異ルシフェラーゼ (例えば、LucPpe2m78 (78-0B10としても知られる)、配列番号1; LucPpe2m90 (90-1B5としても知られる)、配列番号2; LucPpe2m133 (133-1B2としても知られる)、配列番号3; LucPpe2m146 (146-1H2としても知られる)、配列番号4) が好ましい。しかしながら、本明細書に示される制約を満たすルシフェラーゼは本発明の組成物、方法及びキットに用いることができる。LucPpe2m78、LucPpe2m90、LucPpe2m133、LucPpe2m146の調製方法は、PCT出願第PCT/US99/30925号に開示されている。
典型的には単離及び/又は精製したルシフェラーゼが本発明に用いられる。天然環境の混入成分はルシフェラーゼの診断又は治療使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、又は他のタンパク様又は非タンパク様物質が含まれ得る。純度を確認する一手法は、クーマシーブルー又は銀染色を用いた非還元又は還元条件下でSDS-PAGE分析を用いるものである。ルシフェラーゼ天然環境の少なくとも1種の成分は存在しないので、単離ルシフェラーゼには組換え細胞内のin situルシフェラーゼが含まれる。ルシフェラーゼは、ルシフェラーゼを生産する生物学的試料から又は所望のルシフェラーゼをコードしている外因性ポリヌクレオチドを発現する細胞から単離し得る (例えば、78-0B10、90-1B5、133-1B2、又は146-1H2をコードしているヌクレオチド (それぞれ配列番号5〜8))。そのような手法は当業者に周知である。
甲虫ルシフェラーゼの天然に存在する基質は、ホタルルシフェリン、ポリテロサイクリック有機酸(polytherocyclic organic acid)、D-(-)-2-(6'-ヒドロキシ-2'-ベンゾチアゾイル)-Δ2-チアゾリン-4-カルボン酸 (ルシフェリン)である。ルシフェリンは、天然から (例えば、ホタルから) 単離されてもよく、合成されてもよい。合成ルシフェリンは、天然に存在するルシフェリンと同じ構造をもつことができ、同じように機能する限り誘導体化することもできる (Bowie et al., 1973; Branchini, 2000; Craig et al., 1991; Miska & Geiger, 1987; Yang & Thomason, 1993)。ルシフェリンの誘導体の例としては、D-ルシフェリンメチルエステル、D-ルシフェリル-L-フェニルアラニン、D-ルシフェリル-L-Nα-アルギニン、D-ルシフェリン-O-スルフェート又はD-ルシフェリン-O-ホスフェート(Miska & Geiger, 1987)、試料中の成分でルシフェリンに加水分解されるか又はエステラーゼにより作用するルシフェラーゼのエステル(Craig et al., 1991; Yang & Thomason, 1993)が挙げられる。有用ななルシフェリン類似体の他の例としては、ナフチルルシフェリンやキノリルルシフェリンが挙げられ、それぞれ緑色と赤色光スペクトルの光を出す(Branchini et al., 1989)。ルシフェリンの市販の供給元が多数ある (例えば、プロメガ社、ウィスコンシン州マディソン; モレキュラープローブス、オレゴン州ユージーン)。
ルミネセンスを生じる甲虫ルシフェラーゼ触媒反応(ルシフェラーゼ−ルシフェリン反応)には、ホタルルシフェリンと、アデノシン三リン酸(ATP)と、マグネシウムと、分子酸素が関与する。最初の反応では、ホタルルシフェリンとATPが反応して無機ピロリン酸を脱離したルシフェリルアデニル酸を形成する。ルシフェリルアデニル酸は、ルシフェラーゼの触媒部位に強固に結合したままである。この形の酵素が分子酸素にさらされると、酵素結合ルシフェリルアデニル酸は酸化されて電子的に励起した状態のオキシルシフェリンが得られる。励起した酸化ルシフェリンは、基底状態に戻ったときに光を出す。
Figure 0004275715
反応のATP機能はATP類似体 (例えば、dATP)によって行われ得ることが企図される。また、他のイオンがマグネシウムイオン (例えば、Mn2+ 又はCa2+) の代用品としての働きをし得ることも企図される。更に、酸素は反応の反応物である。それ故、反応は嫌気性条件下で行われるべきでない。しかしながら、空気中の存在を越えて酸素を供給することは本発明を実施する際に一般的には必要でない。反応溶液に十分な酸素がある限り、密閉容器内でも反応が起こり得る。
ほとんどのルシフェラーゼ−ルシフェリン反応は、短命のフラッシュ光を生成する。しかしながら、本発明の条件下で本発明と用いるのに好ましいルシフェラーゼの一部、例えば、LucPpe2m146やLucPpe2m90のルシフェラーゼは、試薬組成物を試料と混ぜた後に50%未満/時間のルミネセンス消失を有する“グロー型”発光シグナルを生成する。
本発明の試薬組成物中に用いられる場合にルミネセンスを生成する能力を保持するとともに試薬組成物本発明の安定性の要求を満たすことを妨げないルシフェラーゼ、ルシフェラーゼ変異体、ルシフェラーゼ断片、又は変異ルシフェラーゼ断片は、本発明に使用し得る。
完全長ルシフェラーゼ変異体は、天然ルシフェラーゼ完全長配列とのアミノ酸配列同一性が少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約81%、更に好ましくは少なくとも約82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、最も好ましくは少なくとも約99%であり、かつルミネセンス生成能を保持しているであろう。通常、変異ルシフェラーゼ断片は長さが少なくとも約50アミノ酸であり、しばしば長さが少なくとも約60アミノ酸であり、更にしばしば長さが少なくとも約70、80、90、100、150、200、300、400、500又は550アミノ酸であり、或いはそれ以上であり、ルミネセンスを生成能を保持している。ルシフェラーゼ、ルシフェラーゼ断片、ルシフェラーゼ変異体又は変異ルシフェラーゼ断片は、他のルシフェラーゼアミノ酸配列と連合させることができ、なお本発明において機能する。
本発明の組成物に用いられる完全長甲虫ルシフェラーゼ、甲虫ルシフェラーゼ断片、甲虫ルシフェラーゼ変異体、甲虫ルシフェラーゼ変異断片の酵素は、天然供給原から精製することができ、(1)化学合成、(2)ルシフェラーゼの酵素(プロテアーゼ)消化、(3)組換えDNA法、を含む多くの手法によって調製することもできる。プロテアーゼを用いて特定部位を切断する方法がそうであるように、化学合成法は当該技術においてよく知られている。ルシフェラーゼタンパク質セグメントを生産するために、ルシフェラーゼ又はルシフェラーゼ変異体のセグメントを作成し、その後、大腸菌(E. coli) のようなホスト微生物内で発現させることができる。エンドヌクレアーゼ消化又はポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) により当業者は十分に定義された断片の無限供給源を作成することができる。好ましくは、ルシフェラーゼ断片は天然ルシフェラーゼと少なくとも1種の生物活性および触媒活性を共有するが、活性レベルは天然ルシフェラーゼの活性と異なってもよい。
変異ルシフェラーゼを作成するためにアミノ酸置換、挿入又は欠失、又はその組合わせのいずれの種類も用いることができる。しかしながら、保存的アミノ酸置換をもつルシフェラーゼはより活性を保持しやすい。有効な保存的置換を表A“好適置換”に示す。一つのクラスのアミノ酸が同じタイプの他のアミノ酸で置換される保存的置換は、置換がルシフェラーゼ活性を損なわない場合には本発明の範囲内である。
Figure 0004275715
(1) β-シート又はα-らせんコンホメーションのようなポリぺプチド骨格の構造、(2) 電荷又は (3) 疎水性、又は (4) 標的部位の側鎖の嵩、に影響を与える非保存的置換は、ルシフェラーゼ機能を改変することがある。残基は表Bに示される一般的な側鎖特性に基づくグループに分かれる。非保存的置換は、こらのクラスの1種を他の種類に置き換えることを含む。
Figure 0004275715
変異ルシフェラーゼ遺伝子又は遺伝子断片は、オリゴヌクレオチド仲介 (部位特異的) 変異導入、アラニン走査、又はPCR変異導入のような当該技術において既知の方法を用いて調製することができる。ルシフェラーゼ変異DNAを作製するためにクローン化DNAに対して部位特異的変異導入(Carter, 1986; Zoller and Smith, 1987)、カッセット変異導入、制限選択変異導入(Wells et al., 1985)又は他の既知の手法を行うことができる(Ausubel et al., 1987; Sambrook, 1989)。
2. 好適ルシフェラーゼ
本発明の好適ルシフェラーゼは、ATPに依存し光子を放出する触媒活性を有する。本発明の好適ルシフェラーゼは、ATPアーゼ阻害因子の存在下で、P. ピラリス(pyralis) ルシフェラーゼ (LucPpy) の同一反応条件における化学安定性のレベルに対して増強された化学安定性を有する。本発明の組成物と方法に用いられる好適ルシフェラーゼは安定なシグナルを生成する。即ち、ルシフェラーゼ反応においてルミネセンスの持続時間が増加される(ルシフェラーゼ反応が開始されたときのルミネセンスに対して1時間あたりのルミンセッセンス消失が50%未満として定義される)。本発明の好適ルシフェラーゼは、ルシフェラーゼとATPアーゼ阻害因子とを混ぜた1時間後、更に好ましくは2時間後、最も好ましくは4時間後以上の時間にわたって1試料の多重分析又は多くの試料の経時分析を可能にする。場合により、本発明の組成物と方法に用いられるルシフェラーゼは熱安定性の特性が高められる。例示される好適ルシフェラーゼは、LucPpe2m146 (配列番号4)である。本発明に用いられる酵素の例としては、更にLucPpe2m78 (配列番号1)、LucPpe2m90 (配列番号2)、又はLucPpe2m133 (配列番号3)が含まれるがこれらに限定されない。
例示したルシフェラーゼ、LucPpe2m78 (配列番号1)、LucPpe2m90 (配列番号2)、LucPpe2m133 (配列番号3)、LucPpe2m146 (配列番号4)はP. ペンシルワニカ(pennsylvanica) (T249M)の変異体から作成した。このタンパク質をコードしている核酸配列を、再帰的変異導入を含む変異導入法に続いて熱安定性、シグナル安定性、基質結合のスクリーニングに供した。この核酸配列はWood & Hall (WO 9914336, 1999)に完全に記載されている。
化学安定性
本明細書に用いられる“化学安定ルシフェラーゼ”は、典型的には、ATPアーゼを阻害しLucPpyのような非化学安定性ルシフェラーゼの機能を破壊させる化合物又は条件の存在する場合に活性を保持するルシフェラーゼを定義するものである。上に示した例示的なルシフェラーゼ [(LucPpe2m78 (配列番号1)、LucPpe2m90 (配列番号2)、LucPpe2m133 (配列番号3、LucPpe2m146 (配列番号4))はATPアーゼ阻害因子に対して高化学安定性をもつことがわかった。
従って、好ましいルシフェラーゼとしては、ATPアーゼ阻害因子の存在しないときの試料の活性に対して少なくとも約25%(好ましくは少なくとも約30%、更に好ましくは少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%又はその中の増加分)試料の内在性ATPアーゼ活性を低下させるのに(全体として)十分な量のATPアーゼ阻害因子、好ましくは界面活性剤、例えば、陽イオン界面活性剤 (好ましくはDTAB又はBDDABr)、陰イオン界面活性剤 (好ましくはオキシコール酸塩又はSDS) 又は両性イオン界面活性剤 (好ましくはスルホベタイン3-10)又はその組合わせを接触させた後に、ルミネセンス測定によれば、少なくとも約30% (好ましくは少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、99%)の酵素活性を少なくとも1時間(好ましくは少なくとも2時間、更に好ましくは少なくとも4時間)維持するものが含まれる。
酵素の化学安定性は、また、活性の経時低下率で示すこともできる。例えば、ATPアーゼ阻害因子とルシフェラーゼを混合し、これによって試薬組成物を生成した後、短時間(0〜10分)後、続くいくつかの時点で前記試薬組成物のアリコートが試料に添加され、その後の短時間の相対光単位 (rlu) 測定値が得られる。これらの測定値はグラフ化して試薬組成物における酵素活性の経時低下傾向を求めることができる。
好ましい化学安定ルシフェラーゼ (例えば、Ppe2m78、Ppe2m90、Ppe2m133、Ppe2m146)は多重界面活性剤溶液中で活性を保持する。特に、0.01%、好ましくは0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、最も好ましくは0.25% CHAPS (3-([3-コールアミドプロピル]ジメチルアンモニオ)-1-プロパンスルホネート)を少なくとも0.01%、好ましくは0.05%、0.1%、0.2%、最も好ましくは0.3%又は1.0% BDDABr、タウロコール酸又はタウロコール酸、又はDTABと共に、又は0.01%、好ましくは0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、最も好ましくは1.0%のタウロコール酸又はタウロコール酸を少なくとも0.01%、好ましくは0.05%、0.1%、0.2%、最も好ましくは0.3%又は1.0% BDDABr、DTAB、又はCHAPSと共に含有する溶液。LucPpe2m78、LucPpe2m90、LucPpe2m133、LucPpe2m146が活性を保持する他の多重界面活性剤溶液としては、0.01%、好ましくは0.05%、最も好ましくは0.1% TRITON X-100と少なくとも0.01%、好ましくは0.05%、0.1%、0.2%、0.5%、最も好ましくは1.0% BDDABr、DTAB、又はCHAPS; 又は0.01%、好ましくは0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%最も好ましくは1.0%のタウロコール酸又はタウロコール酸と少なくとも0.01%、好ましくは0.05%、0.1%、0.2%、最も好ましくは0.3%又は1.0% BDDABr、DTAB、又はCHAPS; 又は0.05%、1.0%、2.0%、4.0%、好ましくは2%ポリエチレングリコール400ドデシルエーテル (THESIT)、と少なくとも0.05%、好ましくは0.1%、0.2%、最も好ましくは0.3%又は1.0% BDDABr、DTAB、又はCHAPSが含まれる。
熱安定性
いくつかの実施態様においては、ルミネセンスを生じる熱安定ルシフェラーゼ又は検出可能なシグナルを生じる他の熱安定ATP依存性酵素が望ましく、特にATP検出直前に熱で処理される試料においては望ましい。熱安定ポリぺプチドは、他のタンパク質を不活性化又は変性する温度で活性のままである。LucPpe2m78、LucPpe2m90、LucPpe2m133、LucPpe2m146の酵素は、天然に見られるルシフェラーゼ又は天然から単離されたポリヌクレオチドからコードされたルシフェラーゼと比べて熱安定性が高い。
シグナル安定性
本発明の組成物と方法に用いられる好ましいルシフェラーゼは、安定なシグナルを生成する。即ち、そのようなルシフェラーゼは、ルシフェラーゼ反応に用いられた場合、ルシフェラーゼ反応を開始したときのルミネセンスに対して、50%未満/時間のルミネセンスの消失として定義される持続性が増強されたルミネセンスを生じる。この性質をシグナル安定性と呼ぶ。本発明の好ましいルシフェラーゼは、ルシフェラーゼとATPアーゼ阻害因子とを混ぜた少なくとも1時間後、更に好ましくは少なくとも2時間後、最も好ましくは少なくとも4時間後以上試料の経時複数分析又は多くの試料の経時分析を可能にする。試薬組成物中のルシフェラーゼとATPアーゼ阻害因子との組合わせであって、前記ルシフェラーゼが試料中に存在するATP量を安定化するATPアーゼ阻害因子 (及び任意によりキナーゼ阻害因子) の存在下であっても持続性の増大したルミネセンスを生成することができる前記試薬組成物により、長時間にわたって細胞ATPを検出定量するための信頼できかつ効率のよい方法がもたらされる。
3. 他の望ましいルシフェラーゼ
ATP依存性様式で基質の酸化時に光子を放出しかつ化学安定である、即ち、本発明のATPアーゼ阻害因子の存在下で活性が保たれる、いかなるルシフェラーゼ、ルシフェラーゼ断片、又はその変異体も本発明に用いることができる。熱安定性やシグナル安定性のような他の望ましい特性も必須ではないが企図される。更に、ルシフェラーゼは他のアミノ酸配列に融合させることができ、本発明においてなお機能し得る。そのような酵素は、試験管内で合成することができ、他の微生物から単離することもできる。
他のルシフェラーゼは、細菌、単細胞藻類、腔腸動物、甲虫(P. ペンシルワニカ(pennsylvanica) 以外)、魚、他の生物体に見られる。化学的には、すべてのルシフェラーゼは分子酸素と種々のルシフェリンとの発エルゴン反応に関与し、結果として光子が生成される (Hastings, 1996; Hastings & Wilson, 1976; Wilson & Hastings, 1998; Wood et al., 1989)。好ましくは、他のルシフェラーゼも、ルシフェリンの酸化についてATP依存性であるか、または、バイオルミネセンス生成がATPに依存するように反応条件が操作されなければならない。当業者は、ルシフェラーゼ‐ルシフェリン反応のATP依存性を確かめることができる。
甲虫からのルシフェラーゼ以外のルシフェラーゼの使用には、酸化時に化学的かつ電気的に不安定な中間体又は検出可能な酵素産物を生じる適切なルシフェリン分子が必要である。他の基質、および、検出可能な酵素産物を生じる他のATP依存性酵素も用いることができる。検出可能な産物としては、光子、放射性標識産物、不溶性又は可溶性色素原、又は目視で又は装置の使用によって検出し得る他の産物が含まれる。
C. キット
本発明がキットとして供給される場合、組成物の異なる成分が別個の容器に包装され使用前に混合することができる。成分のそのような別個の包装は、ルシフェラーゼ‐ルシフェリン活性を消失させずに長時間の貯蔵を可能にする。しかしながら、キットの様々な構成部分を混合し、それによって "試薬組成物"を形成する場合、試薬組成物は配列番号1〜4で例示されるがこれらに限定されないようなルシフェラーゼと、1種以上のATPアーゼ阻害因子を含み、この試薬組成物は増強された安定性を有し[即ち、試薬組成物は、試薬組成物の活性が最初に生じるとき、即ち、ルシフェラーゼ酵素とATPアーゼ阻害因子とを混ぜた0〜10分後の試薬組成物の活性に対して少なくとも約30%、更に好ましくは約60%の活性を少なくとも1時間、更に好ましくは少なくとも70%、80%、90%、95%、99%又はそれ以上の活性を少なくとも1時間、更に好ましくは少なくとも2時間、なお更に好ましくは少なくとも4時間 (試薬組成物と試料とを混ぜたときのルミネセンスで測定した場合) 維持することができ、ATPアーゼ阻害因子が、ATPアーゼ阻害因子の存在しないときのATPアーゼ活性に対して少なくとも約25%、更に好ましくは少なくとも約30%、更に好ましくは少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%以上試料の内在性ATPアーゼ活性を低下させるのに十分な濃度で試薬組成物中に存在する。説明資料、また、キットの目的によっては標準又は対照として役立つことができる材料を、キット内に封入することもできる。
1. 試薬組成物
好適実施態様においては、本発明の試薬組成物の構成部分は、使用の少し前に混合される2つの部分、(1)ルシフェラーゼを含む部分と、(2)1種以上のATPアーゼ阻害因子を含む部分として供給することができる。そのような実施態様の例を表Cに示し、他は実施例で示す。ルシフェラーゼ成分はルシフェリンを更に含んでもよく、好ましくは凍結乾燥される。ルシフェラーゼ成分は、場合により、凍結乾燥用賦形剤、タンパク質 (ルシフェラーゼ) 安定剤、マグネシウム (又は他の陽イオン)、マグネシウムキレート化剤 (又は代替的陽イオンキレート化剤)を含む。ATPアーゼ阻害剤成分は、緩衝液、2価陽イオン金属キレート化剤、マグネシウム (又は代替的陽イオン)、消泡剤、抗ATP産生酵素剤(例えば、NaF)、酵素安定剤(例えば、THESIT)、細胞溶解剤又は細胞からATPを抽出する物質を更に含んでもよい。本発明の異なる成分は、これらの部分のサブセットを含むことができ、本発明の適用を容易にするか又は貯蔵寿命を延長するようないかなる方法によっても混合することができる。
Figure 0004275715
2. ルシフェラーゼ‐ルシフェリン成分
ATP依存性反応を触媒するとともにルミネセンスを生成するルシフェラーゼ、ルシフェラーゼ変異体、ルシフェラーゼ断片、変異ルシフェラーゼ断片すべてが本発明での使用に企図される。いくつかの実施態様にはルシフェリンが削除されている。例えば、使用者が彼/彼女の選択するルシフェリンを供給することを許し、又は、ルシフェリンは別個に供給することもできる。供給されるルシフェリンのタイプは異なってもよいが、供給されるルシフェラーゼに対する基質でなければならない。
一実施態様においては、キットは無水標品としてルシフェラーゼを供給する。ルシフェラーゼの無水標品は、水を減圧下で除去する凍結乾燥、フリーズドライの凍結乾燥、結晶化、又は他の水を除去する方法でルシフェラーゼを不活性化しない方法であってもよい。標品を増量するとともにルシフェラーゼを安定化する賦形剤、例えば、血清アルブミン又はプリオネックスを含むこともできる。他の実施態様においては、ルシフェラーゼはグリセロール又は酵素が安定である他の溶媒を含む水性組成物に懸濁させることができる。当業者は、本発明の組成物と方法に使用する種々の成分の量を容易に求めることができる。
3. ATPアーゼ阻害成分
好適実施態様においては、キットは、1種以上の溶液中のATPアーゼ阻害剤を含む構成成分を含み、その溶液は場合によっては他の機能成分、例えば、緩衝液、消泡剤、酵素安定剤等を含む。この構成成分は、実使用液として又は濃縮物として供給することができる。細胞溶解剤又は細胞ATP抽出を可能にする物質 (例えば、CTAB)は、ATPアーゼ阻害成分と別個に又は一緒に包装することができる。ATPアーゼ阻害剤は、上述したもののいずれであってもよい。この成分は、ルシフェラーゼ‐ルシフェリンを妨害し得る金属イオンをキレート化する物質 (例えば、EDTA、EGTA)、マグネシウム (好ましくは、塩、例えば、硫酸塩又は塩化物; 又は機能的に等価な他の陽イオンとして供給される)、消泡剤、ATP産生酵素 (例えば、NaF)を更に含むこともできる。使用液のpHを維持する緩衝液、例えば、クエン酸塩又はMES (塩、例えば、ナトリウム又は遊離酸又は塩基として供給することができる)又は他の適切な緩衝液を用いることもできる。
ATPアーゼ阻害剤
本発明の一側面は、ATPアーゼ阻害剤、好ましくはATPアーゼを阻害する界面活性剤、更に好ましくは荷電基をもつ界面活性剤、例えば、陽イオン界面活性剤 (好ましくはDTAB又はBDDABr)、陰イオン界面活性剤 (好ましくはデオキシコール酸塩又はSDS)又は両性イオン界面活性剤(好ましくはスルホベタイン3-10)である。そのような阻害剤は、ルシフェラーゼが試料中のATPをルシフェラーゼ‐ルシフェリン反応に使用するより前に試料の内在性ATPアーゼがATPをアデノシン二リン酸 (ADP)とアデノシン一リン酸 (AMP) にプロセッシングすることを防止する。ATPアーゼ阻害剤は、ATPアーゼを直接又は間接に不活性化することができる。ATP阻害剤はATPアーゼに結合あるいは活性部位でATPアーゼに結合することができ、よって基質結合を防止し、または、変性界面活性剤によるようにATPアーゼを変性することができ、ATPアーゼを基質から選択的に封鎖することもできる。
本発明の一実施態様は、ATPアーゼ阻害剤として作用するDTAB又はBDDABr界面活性剤のような陽イオン界面活性剤を用いるものである。しかしながら、他のATPアーゼ阻害剤、例えば、他の陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤 (例えば、SDS又はデオキシコール酸塩)又は両性イオン界面活性剤 (例えば、スルホベタイン3-10)も企図される。
DTAB又はBDDABrの場合、試薬組成物中の濃度は、好ましくは約0.02%〜約5.0%、更に好ましくは約0.05%、なお更に好ましくは約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%の範囲にあり、最も好ましくは約1.0%の最終濃度までである。
他の非陽イオン界面活性剤ATPアーゼ組成物も試薬組成物に含まれることが企図される。DTABのように、試薬組成物中に存在する場合に試料中の内在性ATPアーゼ活性の好ましくは少なくとも約25%、更に好ましくは少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、更に好ましくは少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、最も好ましくは約100%を阻害することが要求され、試薬組成物は、ルミネセンス測定によれば、、ルシフェラーゼとATPアーゼ阻害剤とを混ぜた直後の試薬組成物の活性に比較して、試薬組成物と試料とを混ぜた後に少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、更に好ましくは少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、最も好ましくは約100%の活性を少なくとも1時間、更に好ましくは少なくとも約2時間維持することができることが要求される。ATPアーゼ阻害剤として機能する潜在的に適した非陽イオン界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤 (好ましくはSDSやデオキシコール酸塩)、両性イオン界面活性剤 (好ましくはスルホベタイン3-10)が含まれる。具体的なATPアーゼ阻害剤の濃度は異なってもよく、用いられる阻害剤やある程度までは分析される試料に左右される。当業者は、試薬組成物に含まれるATPアーゼ阻害剤の適切な濃度を求める方法に明るい。例えば、候補ATPアーゼ阻害剤の種々の濃度をもつ試料と不明のATPアーゼ阻害剤を含む試料とを比較してルシフェリン‐ルシフェラーゼ由来シグナルを経時試験することができる。
異なる界面活性剤について、本発明の方法において最も好ましい濃度や機能する濃度範囲でさえ変動することは十分予想される。例えば、本発明において機能するSDS濃度は約0.002%である (実施例2と実施例3)。本発明に用いられる界面活性剤の機能濃度範囲は、本明細書に開示される方法を用いて当業者が容易に求めることができる。
いくつかのATPアーゼ阻害剤は、本発明において有用である濃度の一部において不溶性であってもよく、水性溶液中の溶解度が小さくてもよい。これらの化合物は、まず有機溶液 (例えば、ジメチルスルホキシド又はジメチルホルムアミド) に溶解することができ、その後、本発明の組成物と方法に用いられる試薬組成物に希釈することができる。
ATP産生酵素の阻害剤
いくつかの試料においては、キナーゼのような酵素が活性なことがあり、ATPの継続した生産が可能になっている。特定の時間にATP濃度が決定されるので、そのような酵素活性を調べないでおくと、ATP濃度の過剰定量がなされる。そのようなATP産生活性に対抗するために、ATP生産の阻害剤を使用することができる。特定の阻害剤の作用は完全に理解されていないが、それらの有用性が除去されることはない。有効な化合物の例としてはNaFであり、これは少なくとも1mM、好ましくは2 mM〜100 mM又はその中に含まれる増分濃度で有効であり、2 mMが最も好ましい。しかしながら、ルシフェラーゼに悪影響を及ぼして本発明の有用性の範囲外にしてしまわない限り、そのようなどんな阻害剤を用いることもできる。当業者は、阻害剤が新規であっても周知であっても阻害剤の適切な濃度をどのように求めるかを知っているであろう。ATP産生酵素の他の阻害剤としては、バナジン酸塩、パラニトロフェニルリン酸塩又はジクロロ酢酸が含まれるがこれらに限定されない (Kiechle et al., 1980)。
緩衝液
使用液に適したpHを維持するとともにルシフェラーゼ‐ルシフェリン反応を妨害しない緩衝液が企図される。好ましいpH範囲は、約pH 4.5〜pH 9.0、更に好ましくは約pH 6.0〜約pH 8.0である。MESやクエン酸緩衝液の他に、リン酸緩衝生理食塩水 (PBS)、トリス、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(2-エタンスルホン酸) (HEPES)、ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸) (PIPES)、ホウ酸塩、又は当業者に既知の他の緩衝液のような他の緩衝液も適切である。適切な緩衝液の選択は、pH緩衝能やルシフェラーゼ‐ルシフェリン反応による相互作用に依存する。
消泡剤、
消泡剤は、特にルミネセンスを定量する用途において、泡がバイオルミネセンス検出を妨害することを防止するために望ましい。MAZUのような物質は、有機系又はシリコーン系であってもよい。消泡剤の選択は、ルシフェラーゼ‐ルシフェリン反応を妨害せずに泡を排除する能力に左右される。
マグネシウム
甲虫ルシフェラーゼ‐ルシフェリン反応は、ATPにだけでなくマグネシウムイオンにも依存する。ルシフェラーゼ活性を確かめるために、マグネシウムを外因的に供給する。硫酸マグネシウムの他に、他のマグネシウム塩、例えば、塩化マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、臭化マグネシウム、炭酸マグネシウム等が企図される。いずれにしても、マグネシウム錯体は解離してルシフェラーゼが利用できるMg2+イオンを生じさせなければならず、ルシフェラーゼ‐ルシフェリン反応を妨害してはならない。当業者は、他の陽イオンがマグネシウムの代りに機能することができることを承知している。それらにはカルシウムやマンガンが含まれる。
いくつかの適用例では、内在性マグネシウムが十分でなければならず。その場合、外因性マグネシウムは排除することができる。
細胞溶解剤とATP抽出剤
細胞内に隔絶されたATPを遊離させ、試料中の細胞を溶解するために、非イオン性界面活性剤のような細胞溶解剤を含めることができる。他の非イオン性界面活性剤 (例えば、トリトン系からのもの)、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、又は両イオン界面活性剤、胆汁酸塩、カオトロピック剤、又はオキシリンのような細菌毒素を含む細胞膜を破壊する他の薬剤を含む細胞溶解剤も企図される。また、細胞からATP抽出を可能にする物質も企図される (例えば、CTAB)。細胞からATP抽出を可能にする物質には、細胞膜内に孔を開ける濃度で存在し、細胞内のATPが周囲の媒質に浸出することを可能するが、細胞溶解物を生じるような濃度では存在しない界面活性剤が含まれる。
安定剤
非イオン性界面活性剤の作用と両性イオン界面活性剤の低濃度に抵抗性であるが(Simpson & Hammond, 1991)、天然ホタルルシフェラーゼは陽イオン界面活性剤、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、CTAB (セチルトリメチルアンモニウム)、DTAB (臭化ドデシルトリメチルアンモニウム)、又は塩化メチルベンゼトニウム(Simpson & Hammond, 1991)によって不活性化される。
安定剤は、ルシフェラーゼを分解から安定化するどのような化合物であってもよい。適切な安定剤としては、タンパク質 (例えば、ウシ血清アルブミン又はゼラチン) 又は界面活性剤 (好ましくは非イオン性界面活性剤、最も好ましくはTHESIT)が含まれる。
他の物質
キットに含まれ得る他の物質としては、ルシフェラーゼ反応から生じるルミネセンスの持続性を高めることが知られている物質、例えば、補酵素 A (CoA)、チオール試薬、例えば、ジチオトレイトールやβメルカプトエタノール(Wood, 米国特許第5,283,179号, 1994; Wood, 米国特許第5,650,289号, 1997)、金属イオンキレート化剤、例えば、シグナルを延長するEDTAやプロテアーゼインヒビター(Scheirer, 米国特許第5,618,682号, 1997; Scheirer, 米国特許第5,866,348号, 1999)、又は高濃度の塩(Van Lune & Trer Wiel, 国際出願第00/18953号, 2000)が含まれる。
他のキット内容物
キットは、細胞生存度、細胞毒性、細胞増殖、又はATP濃度の定量のような個々の試験の実行を容易にする別個の容器内に試薬を含むことができる。例えば、標準曲線を内部対照として定量又は使用することができるようにATPを供給することができる。細胞に対して細胞毒性であることが既知である物質は、細胞生存度又は細胞に対する化合物の影響の試験において正の対照として使うために含めることができる。キットは、膜、フィルター又は綿棒のような試料収集用構成物品を供給することができる。
4. コンテナまたは容器
キットに含まれる試薬は、種々の成分の寿命が保持され、容器の材料によって吸着され又は変化しないようなどのような種類の容器に供給することもできる。例えば、密閉されたガラスアンプルは窒素のような中性の非反応性ガスのもとで包装された凍結乾燥ルシフェラーゼ又は緩衝液を含有することができる。アンプルは、適切な材料、例えば、ガラス、ポリカーボネート、ポリスチレン等の有機ポリマー、セラミック、金属又は試薬を保持するために典型的に用いられる他の材料からなるってもよい。適切な容器の他の例としては、アンプルと同様の物質から製造されてよい簡単なビンおよびアルミニウム又は合金のようなホイルで裏打ちされた内部からなってもよいエンベロープが含まれる。他の容器としては、試験管、バイアル、フラスコ、ビン、注射器等が含まれる。容器は、例えば、皮下注射針で穴を開けることができるストッパのあるビンのように、滅菌アクセスポートをもつことができる。他の容器は、2つのコンパートメントをもち、取り出すときに成分を混合することができる容易に除去できる膜で分けられていてよい。除去できる膜はガラス、プラスチック、ゴム等であってもよい。
5. 説明資料
キットは説明資料(Instruction materials)を供給することができる。説明書は、紙又は他の基質に印刷されてもよく、及び/又は電子読取り可能媒体、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ジップディスク、ビデオテープ、オーディオテープ等として供給されてもよい。詳細な説明書を、キットに物理的に付随させることができないことがある。代りに、使用者がキットの製造業者又は卸業者が指定するインターネットウェブサイトを指示されても良く、電子メールとして供給されてもよい。好適実施態様においては、説明書は、試薬組成物を試料に添加する前にルシフェラーゼとATPアーゼ阻害剤とを混ぜることを使用者に指示する。
D. 試薬組成物活性
ルミネセンスを測定し、それによって試薬組成物活性を決定するために、試薬組成物と試料とを混ぜた後の特定の時点でルシフェラーゼ反応によって生成された相対光単位 (rlu) 値を測定することができる。例えば、rlu値は、ATPアーゼ阻害剤を含む成分をルシフェラーゼを含む成分に添加することにより試薬組成物を生成した直後(0〜10分)に試薬組成物と混ぜられた既知濃度のATPを含む試料とから得られたルミネセンスを測定することにより得ることができる。これは、その条件下で100% 活性 (時間ゼロ) として考慮される。ATPアーゼ阻害剤を含む成分とルシフェラーゼを含む成分とを混ぜることにより試薬組成物を生成した後、時間0分析と同一条件下でルミネセンスを測定する前に試薬組成物を、好ましくは室温(約20℃〜約25℃)〜約37℃の温度範囲で2時間放置し、得られたrlu値が時間0で得られた値の60%より多い場合には、試薬組成物は少なくとも60%の活性を2時間保持したとする。
本発明の試薬組成物は、試薬組成物と試料とを混ぜた後にルミネセンスで測定した場合に30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はこれらの増分、最も好ましくは100%の活性を、配合したとき(時間ゼロ)−即ち、ATPアーゼ阻害剤を含む成分をルシフェラーゼを含む成分に添加した時間又はその後の短い時間(0〜10分間)−から少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間活性を保持する。
一つの好適実施態様においては、試薬組成物の使用貯蔵液は、DTAB又はBDDBrを約0.02% (好ましくは約0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%, 7%, 7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%又はこれらの増分、更に好ましくは約1%) の濃度で含み、少なくとも約30% (好ましくは少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%) の活性を配合後少なくとも約1時間 (好ましくは少なくとも約2) 保持する。
他の好適実施態様においては、試薬組成物は、スルホベタインを0.6%、0.7%、0.8%、0.9%又は1.0%又はこれらの増分の濃度で、SDSを0.001%、0.002%、0.003%、0.004%又は0.005%又はこえらの増分の濃度で、又はデオキシコール酸塩を0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%又はその中の増加分の濃度で含み、少なくとも約30% (好ましくは少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%) の活性を配合後少なくとも1時間 (好ましくは少なくとも2時間) 保持する。
E. ルシフェラーゼ‐ルシフェリン反応の産物を検出定量する
甲虫ルシフェラーゼ‐ルシフェリン反応の結果として光が生成する("ルミネセンス"(発光))。本発明は、ルミネセンスを測定することによるATP測定のための分析を提供する。使用者は、光の生成を確認するために試料反応を単に目視で調べることができる。しかしながら、より鋭敏な機器化はわずかなシグナルを検出するだけでなく、光シグナルの定量を可能にする。産物の種類によって、非発光産物が測定される反応も企図される。シグナルを生じるATP測定用分析は、本発明から利益を得ることができる。そのような産物に適切な機器と方法は、当業者には明らかである。
光が検出される場合には、専門機器、例えば、ルミノメータがルシフェラーゼ‐ルシフェリン反応の光産物を読取ることができる。ルシフェラーゼ‐ルシフェリン反応によって放出光を検出し得る機器を用いることができる。そのような機器は、単独に試料を読取ることができ、高スループットスクリーンでマイクロウェルプレートのウェル内にある多くの試料を読取ることもできる (6、24、48、96、384、1536等、ウェル形式)。放射光を測定するために用いられる装置によって本発明が制限されないことは明らかである。使用し得る他の装置としては、シンチレーションカウンタ (Nguyen et al., 1988)又はフォトメータのようなルミネセンスに感受性のあるように創案又は適合した機器(Picciolo et al., 1977)が含まれる。ルミネセンスを検出するために写真フィルム又はX線フィルムを用いることができる。更に、使用者は、ルミネセンスを定性的に評価するために試料を目視で調べることができる。
F. ATP依存性ルシフェラーゼ‐ルシフェリン反応の用途
甲虫ルシフェラーゼ‐ルシフェリン反応はATP依存性であるので、ATPを分析するためにルシフェラーゼを用いることができる。反応は顕著に高感度であり、10-16モル以下程度のATPを含有する試料においてATPを検出することができる。この鋭敏性は細胞生存度や外因性物質が細胞代謝や生存度に及ぼす影響を理解するために利用することができる。細胞との関連では、ATPは細胞代謝に動力を供給し、ATPの存在は活発に代謝している細胞と相関し、細胞は"生存可能"となる。
本発明は、ルシフェリンを酸化するために甲虫ルシフェラーゼのATP依存性を利用する、細胞ATPレベルを有効にかつ正確に検出定量するために用いられる方法、組成物及びキットに関する。
本発明は、ルシフェラーゼと少なくとも1種のATPアーゼ阻害剤を含む単一組成物 (試薬組成物) を添加し、その後ルミネセンスを検出することを含んでいる。場合によっては、キナーゼ阻害剤又はATPの蓄積を防止する化合物を試薬組成物に存在させることができる。更に、細胞溶解剤 (例えば、THESITのようなポリオキシエチレン) 又はATP抽出剤を組成物中に存在させることもできる。試薬組成物の添加に続いてルミネセンスを読取ることを含むこの単一工程は、ATPの分析において著しい進歩を示している。
1. ATPの検出
本発明の方法、組成物及びキットは、試料中のATP (又はルシフェラーゼ基質として機能し得るATP類似体) の簡便な定性的又は定量的検出を与える。好適実施態様においては、本発明を用いて試料中にルミネセンスを生成する簡便な定性実験はATPの存在を示すものである。LucPpe2m78、LucPpe2m90、LucPpe2m133又はLucPpe2m146のようなルシフェラーゼと、1種以上のATPアーゼ阻害剤を含む試薬組成物を用いてルミネセンスが生成される。更に、試薬組成物は、以下の成分の1種以上を更に含むことができる: 凍結乾燥標品から再構成することができるルシフェリン、(或いは適切なルシフェリン類似体基質)、ATPアーゼ阻害剤、キナーゼのようなATP産生酵素の阻害剤 (例えば、マグネシウム)、酵素安定剤、緩衝液、細胞溶解剤、細胞ATP抽出剤。
試料は、ATP又はATP類似体を含むことが疑われるもの、例えば、細胞溶解物、無傷細胞、生検物、食品、飲料、動物、植物、又は無生物物体のような表面上で拭き取った綿棒等であってもよい。試料の他の例としては、既知のATP濃度を有する組成物が含まれる。細胞又は細胞溶解物は、原核生物或いは真核生物いずれの生物からのものであってもよい。原核細胞の例としては、大腸菌(E. coli)、P. エルジノーサ(aeruginosa)、B. サチリス(subtilis)、又はS. チフィムリウム(typhimurium) が挙げられる。真核細胞は、植物、動物、真菌、昆虫等又はそのような生物体由来の培養細胞からのものであってもよい。例としては、A. タリアナ(thaliana) やブラシカ種(Brassica sp.)、クラミドモナス種(Chlamydomonas sp.) やボルボクス種(Volvox sp.) (植物)、H. サピエンス(sapiens) やムス種(Mus sp.) (動物)、サッカロミセス種 (Saccharoymyces sp.) (特に、セレビセ(cerevisae) やポンベ(pombe)) やニューロスポラ種 (Neurospora sp.) (真菌)、D. メメラノガスター(melanogaster) やC. エレガンス(elegans) (昆虫)、植物からの試験管内培養カルス細胞、生物体から試験管内で培養した初代細胞 (例えば、げっ歯類からの器官外植片)、マディン‐ダービーイヌ腎 (MDCK) やチャイニーズハムスター卵巣 (CHO) の細胞のような哺乳動物細胞系又はZ細胞のような昆虫細胞系が含まれる。これらの例は、例としてのみ示され、限定することを意味しない。
細胞溶解物は、もはや識別できるインタクトな細胞構造へ組織化されない細胞成分を含んでいる。細胞溶解物は、可溶性成分と不溶性成分を含んでよく、いずれも溶解物を用いる前に除去することができる。溶解物は、音波処理、ダウンス、乳鉢、乳棒を用いた物理的破壊、冷凍‐解凍サイクル、又は細胞の物理的完全さを破壊する他の装置又は方法を含む手段; 又はLucPpe2m146が活性を保持するような界面活性剤、例えば、両性イオン界面活性剤や非イオン性界面活性剤、又は陽イオン界面活性剤DTAB又はCTABによる溶解によって調製することができる。好ましくは、細胞溶解物は、ATP濃度の完全さが細胞を回収したときに保存されているようにして作製される。試料中のATPを正確に検出するために、細胞ATPを分解する酵素又はATPを産生する酵素は阻害されることが好ましい。そのような阻害剤の存在しないとき、ATP濃度の不正確な定量が行われる恐れがある。DTABのような阻害剤はATPアーゼを不活性化し、NaFのような他の分子はATP産生酵素活性を不活性化する。よく分かっていないが、NaFが有効である細胞の種類の場合 (例えば、リンパ系細胞)、NaFは潜在的にキナーゼを阻害するように作用する仮説が立てられる。
ATP産生酵素、産物又は副産物としてATPを有する酵素、例えば、キナーゼの活性の阻害剤は、試薬組成物の中に組込まれてもよい。有効な阻害剤の例はNaFである(Bostick et al., 1982)。そのような組成物は、NaFを少なくとも0.5mM、好ましくは少なくとも1 mM、更に好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、953、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100 mM又はその中の増加分の濃度で含み; 2 mMが最も好ましい。ATP産生酵素の他の阻害剤としては、他のキナーゼ阻害剤、例えば、バナジン酸塩、AMP、DAPP(Bostick et al., 1982)又はジクロロ酢酸(Kiechle et al., 1980)が含まれる。
2. ATPの定量
本発明の組成物、方法及びキットは、使用者がルミネセンス量を定量することによりATP量を定量することを可能にする。本発明は、注目する試料、また、既知のATP量を含有する試料 (対照)に適用される。不明のATP濃度の試料に本発明を適用することから生成されたシグナルは、内部対照 (既知量のATPを試料に添加し、続いてルミネセンスを測定する) か又は既知のATP濃度のいくつかの試料のルミネセンスを測定し、グラフにプロットすることにより作成した外部標準曲線により生成したシグナルと相関関係が決定される。そのような方法は当業者に既知である(Moyer and Henderson, 1983; Ronner et al., 1999; Stanley, 1989; Wood et al., 1989)。
3. 細胞生存度
真核細胞又は原核細胞中のATPの存在は、活性な代謝過程を示し、生存可能な細胞を意味する。本発明の組成物、方法及びキットは、細胞生存度を分析するために使用し得る (Cree, 1998; Jassim et al., 1990; Petty et al., 1995)。細胞生存度の正確な基準は、細胞に対する物質の影響の正確な評価を可能にする。細胞生存度を求める他の目的は当業者に周知である。
細胞生存度を決定することは、例えば、細胞毒性、細胞増殖、生物学的現象、壊死、又は細胞代謝の変化を求めるために有効である。細胞生存度分析は、細胞集団の全体の生存度を求めることもできる。
細胞生存度を決定するためにATPが測定される試料は、生存細胞自体、細胞溶解物又は細胞を含む疑いのある他の試料であってもよい。細胞を用いる場合、膜透過性である修飾した甲虫ルシフェラーゼを用いることができる (例えば、(Craig et al., 1991)を参照のこと)。しかしながら、多くの場合、細胞溶解物が好ましい。
4. 細胞に対する化合物の影響
本発明の組成物、方法及びキットは、試料と接触させた場合に細胞代謝に対して無機物、低分子有機物、ぺプチド、タンパク質又はポリぺプチドのような化合物の影響を決定するために適用し得る(Aiginger et al., 1980; Andreotti et al., 1995; Bradbury et al., 2000; Cree & Andreotti, 1997; Crouch et al., 1993; Kangas et al., 1984)。細胞に対する化合物の影響を求めると、潜在的医薬組成物の有効性の尺度が評価され得る。細胞毒性化合物−細胞を死滅させる化合物−は、がん細胞の治療に、特に急速に分裂する細胞を選択的に死滅させる場合には有効であり得る。他の場合に、細胞毒性作用が所望されない場合には他のある有用性をもつ化合物を否定されことがある。ATPは細胞の"代謝"健康状態の尺度であるので、ATP還元の異常な急増又は降下は、細胞ホメオスタシスの変化を意味する。細胞と接触する化合物は、多くのメカニズム、特に細胞死と細胞増殖によってATP産生に影響し得る。これらの化合物は、化合物ライブラリ中でカタログ化されてもよく、単独で試験されてもよい。本発明のそのような適用はATP代謝に対する作用が既知である対照物質と試料を接触させる対照にもあてはまる。また好ましくは、対照には、化合物自体がルシフェラーゼ活性に直接影響しないことを保証するためにルシフェラーゼと化合物が一緒に存在している試料が含まれる。
本発明のいくつかの具体的な実施態様の例を以下に示す。
(1)試料中のATPを検出する方法であって、
(a)試料に1種以上の界面活性剤とルシフェラーゼとを含む試薬組成物を添加する工程であって、
該試薬組成物が、該ルシフェラーゼと1種以上の該界面活性剤とを混ぜた直後の該試薬組成物の活性と比べて、ルミネセンスで測定した場合、該試薬組成物と該試料とを混ぜた後に少なくとも約30%の活性を少なくとも1時間維持することができ、該試薬組成物中に存在する1種以上の該界面活性剤が全体で、1種以上の該界面活性剤の存在しないときの該試料のATPアーゼ活性に相対して少なくとも約25%該試料の内在性ATPアーゼ活性を低下させることができるものである前記工程と、
(b)ルミネセンスを検出する工程と
を含む、前記方法。
(2)試薬組成物中の少なくとも1種の界面活性剤が陽イオン界面活性剤である、(1)記載の方法。
(3)試薬組成物中の少なくとも1種の界面活性剤が陰イオン界面活性剤である、(1)記載の方法。
(4)試薬組成物中の少なくとも1種の界面活性剤が両性イオン界面活性剤である、(1)記載の方法。
(5)試薬組成物がルシフェリンを更に含む、(1)記載の方法。
(6)試薬組成物が細胞溶解剤を更に含む、(1)記載の方法。
(7)試薬組成物がATP抽出剤を更に含む、(1)記載の方法。
(8)試薬組成物が酵素安定剤を更に含む、(1)記載の方法。
(9)試薬組成物が、該ルシフェラーゼと1種以上の該界面活性剤とを混ぜた直後の該試薬組成物の活性と比べて、ルミネセンスで測定した場合、該試薬組成物と該試料とを混ぜた後に少なくとも約60%の活性を少なくとも1時間維持することができ、該試薬組成物中に存在する1種以上の該界面活性剤が全体で、1種以上の該界面活性剤の存在しないときの該試料のATPアーゼ活性に相対して少なくとも約40%該試料の内在性ATPアーゼ活性を低下させることができる、(1)記載の方法。
(10)試薬組成物が、該ルシフェラーゼと1種以上の該界面活性剤とを混ぜた直後の該試薬組成物の活性と比べて、ルミネセンスで測定した場合、該試薬組成物と該試料とを混ぜた後に少なくとも約30%の活性を少なくとも2時間維持することができ、該試薬組成物中に存在する1種以上の該界面活性剤が全体で、1種以上の該界面活性剤の存在しないときの該試料のATPアーゼ活性に相対して少なくとも約40%該試料の内在性ATPアーゼ活性を低下させることができる、(1)記載の方法。
(11)試薬組成物が、該ルシフェラーゼと1種以上の該界面活性剤とを混ぜた直後の該試薬組成物の活性と比べて、ルミネセンスで測定した場合、該試薬組成物と該試料とを混ぜた後に少なくとも約60%の活性を少なくとも2時間維持することができ、該試薬組成物中に存在する1種以上の該界面活性剤が全体で、1種以上の該界面活性剤の存在しないときの該試料のATPアーゼ活性に相対して少なくとも約40%該試料の内在性ATPアーゼ活性を低下させることができる、(1)記載の方法。
(12)試薬組成物が、該ルシフェラーゼと1種以上の該界面活性剤とを混ぜた直後の該試薬組成物の活性と比べて、ルミネセンスで測定した場合、該試薬組成物と該試料とを混ぜた後に少なくとも約60%の活性を少なくとも1時間維持することができ、該試薬組成物中に存在する1種以上の該界面活性剤が全体で、1種以上の該界面活性剤の存在しないときの該試料のATPアーゼ活性に相対して少なくとも約60%該試料の内在性ATPアーゼ活性を低下させることができる、(1)記載の方法。
(13)陽イオン界面活性剤が該試薬組成物中に少なくとも0.1%(w/v)の濃度で存在する、(2)記載の方法。
(14)陽イオン界面活性剤が、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド及びベンジルジメチルドデシルアンモニウムブロミドからなる群より選ばれる、(2)記載の方法。
(15)ルシフェラーゼが、配列番号1、2、3、及び4からなる群より選ばれたアミノ酸配列を含む、(1)記載の方法。
(16)ルシフェラーゼが、ルミネセンスの消失が50%未満/時間であるルミネセンスを生じる、(1)記載の方法。
(17)試薬組成物が少なくとも1種の陽イオン界面活性剤を含み、ルシフェラーゼが該陽イオン界面活性剤を含む溶液中で凍結乾燥ルシフェラーゼを再構成することにより調製される、(1)記載の方法。
(18)試薬組成物がNaFを更に含む、(1)記載の方法。
(19)試薬組成物が少なくとも0.1%のベンジルジメチルドデシルアンモニウムブロミドを含み、少なくとも50%の試薬組成物活性を維持する、(1)記載の方法。
(20)試料中のATPを検出する方法であって、
(a)試料に1種以上の界面活性剤とルシフェラーゼを含む試薬組成物を添加する工程であって、
該試薬組成物が、該ルシフェラーゼと1種以上の該界面活性剤とを混ぜた直後の該試薬組成物の活性と比べて、ルミネセンスで測定した場合、該試薬組成物と該試料とを混ぜた後に少なくとも約30%の活性を少なくとも1時間維持することができ、該試薬組成物中に存在する1種以上の該界面活性剤が全体として、1種以上の該界面活性剤の存在しないときの該試料のATPアーゼ活性に相対して少なくとも約25%だけ該試料の内在性ATPアーゼ活性を低下させることができるものである前記工程と、
(b)ルミネセンスを定量する工程と
を含む、前記方法。
(21)定量したルミネセンスと、既知の濃度のATPを含む試料によって生じたルミネセンスを定量することにより求めた別の定量値とを比較する工程を更に含む、(20)記載の方法。
(22)既知の濃度のATPを該試料に添加する工程を更に含む、(20)記載の方法。
(23)試薬組成物中の少なくとも1種の界面活性剤が陽イオン界面活性剤である、(20)記載の方法。
(24)試薬組成物中の少なくとも1種の界面活性剤が陰イオン界面活性剤である、(20)記載の方法。
(25)試薬組成物中の少なくとも1種の界面活性剤が両性イオン界面活性剤である、(20)記載の方法。
(26)試薬組成物がルシフェリンを更に含む、(20)記載の方法。
(27)試薬組成物が細胞溶解剤を更に含む、(20)記載の方法。
(28)試薬組成物がATP抽出剤を更に含む、(20)記載の方法。
(29)ルシフェラーゼが、ルミネセンスの消失が50%未満/時間であるルミネセンスを生じる、(20)記載の方法。
(30)試薬組成物がNaFを更に含む、(20)記載の方法。
(31)試薬組成物が酵素安定剤を更に含む、(20)記載の方法。
(32)細胞集団内の細胞生存度を測定する方法であって、
(a)細胞集団と、1種以上の界面活性剤とルシフェラーゼとを含む試薬組成物とを接触させる工程であって、
該試薬組成物が、該ルシフェラーゼと1種以上の該界面活性剤とを混ぜた直後の該試薬組成物の活性と比べて、ルミネセンスで測定した場合、該試薬組成物と該細胞集団とを混ぜた後に少なくとも約30%の活性を少なくとも1時間維持することができ、該試薬組成物中に存在する1種以上の該界面活性剤が全体で、1種以上の該界面活性剤の存在しないときの該細胞集団のATPアーゼ活性に相対して少なくとも約25%該細胞集団の内在性ATPアーゼ活性を低下させることができる前記工程と、
(b)ルミネセンスを検出し、検出したルミネセンス量が該集団内の該細胞の生存度に比例している工程と
を含む、前記方法。
(33)細胞の生存度が該細胞集団内の生存可能な細胞数をほぼ示している、(32)記載の方法。
(34)試薬中の少なくとも1種の界面活性剤が陽イオン界面活性剤である、(32)記載の方法。
(35)試薬中の少なくとも1種の界面活性剤が陰イオン界面活性剤である、(32)記載の方法。
(36)試薬中の少なくとも1種の界面活性剤が両性イオン界面活性剤である、(32)記載の方法。
(37)試薬組成物がルシフェリンを更に含む、(32)記載の方法。
(38)試薬組成物が細胞溶解剤を更に含む、(32)記載の方法。
(39)試薬組成物がATP抽出剤を更に含む、(32)記載の方法。
(40)ルシフェラーゼが、ルミネセンスの消失が50%未満/時間であるルミネセンスを生じる、(32)記載の方法。
(41)試薬組成物が酵素安定剤を更に含む、(32)記載の方法。
(42)試薬組成物がNaFを更に含む、(32)記載の方法。
(43)第一細胞集団に対する化合物の作用を求める方法であって、
(a)該第1細胞集団と、ある濃度の該化合物とを接触させる工程と、
(b)引き続き、該第一細胞集団と1種以上の界面活性剤とルシフェラーゼとを含む試薬組成物とを接触させる工程であって、
該組成物が、該ルシフェラーゼと1種以上の該界面活性剤とを混ぜた直後の該試薬組成物の活性と比べて、ルミネセンスで測定した場合、該試薬組成物と該第1細胞集団とを混ぜた後に少なくとも約30%の活性を少なくとも1時間維持することができ、該試薬組成物中に存在する1種以上の該界面活性剤が全体で、1種以上の該界面活性剤の存在しないときの該第一細胞集団のATPアーゼ活性に相対して少なくとも約25%該細胞集団の内在性ATPアーゼ活性を低下させることができる前記工程と、
(c)ルミネセンス量を検出する工程と、
(d)該第一集団内の該ルミネセンス量と第二細胞集団内のルミネセンス量とを比較する工程と
を含む、前記方法。
(44)第二細胞集団内の該ルミネセンス量を検出する前に、第一細胞集団と接触させた濃度と異なる濃度の該化合物と該第二細胞集団とを接触させる、(43)記載の方法。
(45)第二集団と接触させる該化合物の濃度が、第一集団と接触させた化合物の濃度より低い、(43)記載の方法。
(46)化合物の細胞毒性効果が測定される、(43)記載の方法。
(47)化合物の細胞増殖効果が測定される、(43)記載の方法。
(48)試薬組成物中の少なくとも1種の界面活性剤が陽イオン界面活性剤である、(43)記載の方法。
(49)試薬組成物中の少なくとも1種の界面活性剤が陰イオン界面活性剤である、(43)記載の方法。
(50)試薬組成物中の少なくとも1種の界面活性剤が両性イオン界面活性剤である、(43)記載の方法。
(51)試薬組成物がルシフェリンを更に含む、(43)記載の方法。
(52)試薬組成物が細胞溶解剤を更に含む、(43)記載の方法。
(53)試薬組成物がATP抽出剤を更に含む、(43)記載の方法。
(54)ルシフェラーゼが、ルミネセンスの消失が50%未満/時間であるルミネセンスを生じる、(43)記載の方法。
(55)工程(a)〜(d)を小分子のライブラリ中の1種以上の化合物について繰り返される、(43)記載の方法。
(56)ATP依存性酵素反応の産物が光である、(43)記載の方法。
(57)ATP依存性酵素がルシフェラーゼである、(43)記載の方法。
(58)試薬組成物が酵素安定剤を更に含む、(43)記載の方法。
(59)試薬組成物がNaFを更に含む、(43)記載の方法。
次の実施例は、本発明を具体的に説明するものであり、限定するものではない。
実施例 1 I. ATPアーゼを阻害する界面活性剤
本実施例は細胞の内在性ATPアーゼ活性を阻害する種々の界面活性剤の能力を試験するとともにそれらの阻害レベルを示すように設計した。4つのクラスの界面活性剤のそれぞれについて3つの別々の界面活性剤: 陰イオン界面活性剤 [SDS (ドデシル硫酸ナトリウム)、バイオタージ(Bioterge) (αオレフィン硫酸塩)、デオキシコール酸ナトリウム]、非イオン性界面活性剤 [TRITON X-100、BigCHAP (N,N-ビス(3-D-グルコンアミドプロピル)コールアミド)、THESIT (ポリエチレングリコール 400ドデシルエーテル、フルカ, #88315)]、陽イオン界面活性剤 [BDDABr (ベンジルジメチルドデシルアンモニウムブロミド)、CTAB (セチルトリメチルアンモニウムブロミド)、DTAB (ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド)]、両性イオン界面活性剤 [CHAPS (3[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ] プロパンスルホン酸)、CHAPSO (3-([3-コールアミドプロピル]ジメチルアンモニオ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート)、スルホベタイン3-10 (N-ドデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート)]を試験した。界面活性剤はシグマ、フルカ、アルドリッチから入手した。
10% ウマ血清 (ハイクローン(Hyclone), SH30074)を含むF12/DMEM (ハイクローン, SH30023) 中のL929細胞 (ATCC CCL-1; 1.5×105細胞/ml) を冷凍と解凍を4サイクルして細胞溶解物を生成した。次に50μlの界面活性剤貯蔵液 [10%、5.0%、1.0%、0.5% (w/v)] を450μlの細胞溶解物に別々に添加し、細胞溶解物試料中、それぞれ1.0%、0.5%、0.1%、0.05%の最終界面活性剤濃度にした (これらの%値は下記表Dと表Eに用いられるものである)。対照試料は、溶解物のみか又は1.0μM ATP/15 mM HEPES緩衝液 (pH 7.5)を含有させた。試料は、実験期間中、すべて22℃ (室温)でインキュベートした。
いろいろな時点で、各試料/界面活性剤混合液からの20μlを96ウェルルミノメータプレートに3回の実験において添加し、次に各ウェルに25 mM HEPES緩衝液 (pH 7.5)、40μg ルシフェラーゼ酵素LucPpe2m146 (プロメガ、E140)、100μM ルシフェリン (プロメガ)、10 mM MgSO4を含む100μlの溶液 (“ルシフェラーゼ-ルシフェリン”又は“L/L 試薬”)を添加した。L/L 試薬を実験期間は4℃℃貯蔵し、次に分析直前に周囲温度にした。プレートの内容物を混合した後、光の出力をダイネックス(Dynex) MLXマイクロタイタープレートルミノメータ (バージニア州シャンティリイ)、0.5秒読取り/ウェルで測定した。最初の測定は界面活性剤溶液と試料とを混ぜた5分後にした。相対光単位の平均と測定した時点 (rlu; 表D)とその時点でルシフェラーゼ活性が残っている% (表 E)を記録した。対照は示された実験条件の各設定で行った。陽イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤を一組の対照と共に1日に分析した。両性イオン界面活性剤と非イオン性界面活性剤を別の日に別の組の対照と共に分析した。0.5%のDTABを両日 (1日目と2日目)に分析した。表Dに示されたもとの平均rlus が5.0より小さい場合には、界面活性剤がルシフェラーゼ活性を著しく破壊した濃度で存在すると決定したので、もとの活性値の%は表Eに記録しなかった。
表D. 相対光単位平均値
Figure 0004275715
表D.つづき
Figure 0004275715
表D.つづき
Figure 0004275715
表E. 残存しているATP%
Figure 0004275715
表E.つづき
Figure 0004275715
データから、試験した陰イオン界面活性剤については、0.05%濃度のSDSと0.5%と0.1%濃度のデオキシコール酸塩が細胞溶解物中の内在性ATPの分解を緩慢にし、界面活性剤が存在しないときよりも存在するときの4時間後の試料中に存在するATPが約3〜約20倍になり、試料の内在性ATPアーゼの阻害を示すことが明らかにされる。非イオン性界面活性剤は、たとえあるにしても、界面活性剤が存在しないときよりも界面活性剤の存在下の4時間後に試料中に存在する追加のATPがほとんどなく、これらの界面活性剤は内在性ATPアーゼを阻害しないことを示す。試験した両性イオン 界面活性剤は、界面活性剤が存在しないときよりも存在するときの4時間後の試料中に存在するATPが3〜4倍であった。最も顕著な結果は、陽イオン界面活性剤が細胞溶解物とインキュベートしたときに見られた。0.5%濃度のBDDABrと、0.5%と1.0%の濃度のDTABの各々は、界面活性剤を含まない試料よりも4時間後の試料に存在するATPが少なくとも25倍以上であった。0.05%濃度のCTABは、界面活性剤が存在しないときよりも存在したときの4時間後に試料中に存在するATPが約4倍以上であった。
実施例 2 II. ATPアーゼを阻害する界面活性剤
本実施例は、上記実施例1においてATPアーゼ活性を阻害することが示された7種類の界面活性剤を以前に試験したよりも低いパーセンテージで試験したものである。実験は、実施例1で詳述したように行った。平均光単位値とATP残存値のパーセンテージをそれぞれ下記表Fと表Gに示す。
表 F 相対光単位平均値
Figure 0004275715
表 G ATP残存%
Figure 0004275715
表Eと表Gからの最初の時点値後に残存しているATP%の対数をy 軸にとり、時間(分)をx軸にとりプロットした。界面活性剤の存在下にこれらの値によって作成された線の傾きを界面活性剤の存在しないときの値 (溶解物の対照)によって作成された線の傾きで割り、下記表Hに示される相対ATPアーゼ活性を得た。
表H. 相対ATPアーゼ活性
Figure 0004275715
表H.つづき
Figure 0004275715
表H.つづき
Figure 0004275715
相対活性値1.0以上は、試験した界面活性剤濃度における100% 細胞ATPアーゼ活性を意味する。相対活性値0.5 は、界面活性剤の存在しないときのATPアーゼ活性レベルに比べたときに、試験した界面活性剤濃度での細胞ATPアーゼ活性レベルが1/2 に (又は50%) 低下したことを意味する。相対活性値0.2 は、界面活性剤の存在しないときのATPアーゼ活性レベルに比べたときに、試験した界面活性剤濃度でのATPアーゼ活性レベルが1/5 に (又は80%) 低下したことを意味する。
試験した陽イオン 界面活性剤の場合、相対ATPアーゼ活性が25%以上低下した反応条件は、0.05%濃度以上のDTAB; 0.02%濃度以上のCTAB; 0.02%濃度以上のBDDABrであった。それ故、本分析において0.05%濃度以上で試験した陽イオン 界面活性剤すべてが 細胞ATPアーゼ活性を25%以上低下させた。試験した陰イオン 界面活性剤の場合、界面活性剤の存在しないときの反応に比べて相対ATPアーゼ活性が25%以上低下することになる反応条件は、0.01%濃度以上のSDSと0.1%濃度以上のデオキシコール酸塩であった。 試験した非イオン性界面活性剤はいずれも細胞ATPアーゼ活性レベルが25%以上低下しなかった。試験した両性イオン 界面活性剤の場合、1%濃度以上のスルホベタインのみが界面活性剤の存在しないときの反応に比べてATPアーゼ活性を25%以上低下させることができた。
これらの値を図1(非イオン性界面活性剤と両性イオン界面活性剤) と図2(陽イオン 界面活性剤と陰イオン界面活性剤)にグラフ化する。
実施例 3 試薬組成物の安定性 (室温)
試料中の内在性ATPアーゼ活性の阻害に用いられる界面活性剤は、ルシフェラーゼの活性にも影響する。本実施例は、異なるルシフェラーゼ酵素を含むとき及び上記実施例1と実施例2に示されたように試料の内在性ATPアーゼ活性を顕著に阻害する濃度でATPアーゼ阻害剤が存在するときに試薬組成物 ("試薬組成物")の経時安定性と機能性を試験するために設計した。最後にはATPアーゼ組成物とルシフェラーゼ酵素を含む試薬組成物の安定性が延長され、1つ又は複数の試料においてATPを長時間にわたって測定するのに用いられる組成物を与える。そのような試薬組成物に用いるのに最も好ましいルシフェラーゼは、ATPアーゼ阻害剤の存在下でそのATPアーゼ阻害剤が試料の内在性ATPアーゼ活性を少なくとも30%阻害することができる濃度で試薬組成物中に存在するときに安定性の低下がごく僅かであるルシフェラーゼである。
本実験においては、野生型LucPpyを含む試薬組成物の安定性を、LucPpe2m146を含む試薬組成物の安定性と約23℃(室温)において比較した。種々の試薬組成物は種々の界面活性剤濃度を有した。試験した種々の界面活性剤は、ATPアーゼ阻害活性が顕著である上記実施例1と実施例2に示されたものとした。
2種の溶液を下記のように生成した。一方はルシフェラーゼ、ルシフェリン、MgSO4、緩衝液 (試薬組成物)を含有させた。もう一方は培地+ATP(培地溶液)を含有させた。
試薬組成物:
50μg/ml酵素 (LucPpyはプロメガカタログNo.E170Aである)
50mM Hepes緩衝液 (pH 7.0)
100mM NaCl
1.0mM EDTA
0.1% ゼラチン
10mM MgSO4
1.0mM ルシフェリン
界面活性剤 (種々の濃度で、下記表を参照のこと)
ナノピュア水を最終容量2.5 mlまで添加した。
培地溶液:
F12/DME培地 (シグマD-6905) 最終容量 15 ml
1.0μM ATP
各試薬組成物については、ルシフェラーゼ酵素を除くすべての成分を一緒にした。次に最初のルミネセンスの読取りにかかる直前に酵素を添加した。各試薬組成物に酵素を添加した直後とその後の各時点に、100μlアリコートの試薬組成物を96ウェルマイクロタイタールミノメータプレートのウェルに3つ組で添加した。これらにATPを含有する100μlの培地溶液を添加した。次にダイネックスMLXマイクロタイタープレートルミノメータ、0.5秒読取り/ウェルでルミネセンスを直ちに読取った。相対光単位平均値と反応半減期を下記表I に示し、各時点に残存する最初のルミネセンス%を下記表J に示す。欄の上の時点は、その欄内の試料の最初の rlu 測定が読取られた時間を意味する。いくつかの試料については測定時間が欄の上の時間とかなり異なる場合にその時間が示されている。表I に示される時間は表J と同じである。スルホベタインとCTABの値は異なった日に作成し、同じ実験で作成した対照値と示されている。0.5%デオキシコール酸塩を含有する試料ではかなりの沈殿があり、0.1%デオキシコール酸塩を含有する試料ではわずかな沈殿があった。このため、これらの試料の測定は信頼できない結果となった。
表I. 相対光単位の平均
Figure 0004275715
表I.つづき
Figure 0004275715
表I.つづき
Figure 0004275715
*pptは試料中に界面活性剤が沈殿したことを示す。
表J. 残存するルミネセンス%
Figure 0004275715
表J.つづき
Figure 0004275715
いずれかのルシフェラーゼを用いた各濃度の界面活性剤について、表Jからのデータを用いて、ある活性半減期を有するとして試薬組成物の安定性を記載することができる。半減期は、表Jの相対ルミネセンス値の対数を従属変数とし、各測定の時間を独立変数として、データに直線回帰を適用することにより求められる。次にln(0.5)/(傾き)として直線回帰から半減期を計算する。この方法を用いて、試薬組成物の安定性を表Kに示す。界面活性剤濃度は% (w/v)として示され、活性半減期値は分で示す。ルミネセンス活性が信頼性をもって測定され得るものより小さい場合、半減期は"非活性"として示される。いくつかの試薬組成物は非常に不安定であり、活性半減期が10分未満である。これらは正確に定量することが難しいので、"<10"とのみ示されている。対照的に、いくつかの試薬組成物は安定性が高く、活性半減期が1000分より長く (即ち、16時間より長い)。試料を5時間より短い時間に測定したことから、半減期の正確な定量は難しく、">1000"とのみ示されている。
表Kにおいては、横線の下の値 (太字) は、実施例1と実施例2において内在性ATPアーゼ活性を少なくとも25%阻害した各界面活性剤の濃度を示す。試薬組成物は、LucPpyを含み、界面活性剤濃度が内在性ATPアーゼ活性の少なくとも25%を阻害することができる場合に非常に不安定であることは明らかである。対照的に、LucPpe2m146および同じ界面活性剤濃度を含む試薬は、一般的には、中程度からかなりの安定性を有する。ときには、界面活性剤の存在によってルシフェラーゼ活性が阻害されるが、それにもかかわらず安定な組成物が得られた。2種の界面活性剤、CTABとデオキシコール酸塩は、測定の過程で溶液から沈殿した。このことはCTABが最も顕著であり、LucPpe2m146は界面活性剤によって非常に不活性化したが、界面活性剤が溶液から沈殿するにつれて活性が徐々に回復した。この挙動は、半減期がCTABを含む試薬組成物を評価することを不可能にした。その作用はデオキシコール酸塩においても少し見られた。
表K.発光活性の半減期(分単位で測定)
Figure 0004275715
*沈殿形成
実施例4 22℃および37℃におけるATPアーゼ阻害
細胞溶解物を実施例1に記載されたように調製した。内在性ATPアーゼ (即ち、試料中に存在するATPアーゼ) を阻害する1% DTABの能力を22℃ (室温)と37℃の両温度において完全な試薬組成物中で経時測定した。3種の細胞溶解物試料を調製した。試料1 は、4.0 ml L929 細胞溶解物+4.0 ml 25 mM Hepes, pH 7.5を含有させた。試料2は、4.0 ml L929 細胞溶解物+4.0 ml 界面活性剤緩衝溶液 (40 mMクエン酸塩 (pH 6.0)、110 mM MES (pH 6.0)、450 mM KPO4 (pH 6.0)、2.0 mM EDTA、0.2% Mazu DF-204 (PPGインダストリーズ)、2.0 mM NaF、1.0% DTAB、2% THESIT 界面活性剤緩衝溶液の最終pHを6.0に調整した)を含有させた。試料3は、0.1μM ATP+4.0 ml 25 mM Hepes (pH 7.5)を含む4.0 ml DMEM/F12培地 (無血清) を含有させた。試料を半量に分けた。半量を22℃でインキュベートし、半量を37℃でインキュベートした。それぞれの水槽中で37℃にて10分間インキュベートして溶液をこの温度に到達させ(この時点を時間= 10分とする)、100μlの各試料を96ウェルルミノメータプレートのウェルに別々に4つ組にして移した。100μlの各試料にルシフェリン (12.5 mM)/ルシフェラーゼ (200μg/ml LucPpe2m146)/MgSO4 (50 mM) 溶液を含む20μlの溶液を添加した。得られた相対光単位を、0.5秒読取りを用いたダイネックスルミノメータにより測定した。これを5時間までいくつかの時点で繰り返した。得られた相対光単位平均値(表 L)と残存しているATPパーセンテージ(表 M) は次の通りである。
表 L. 相対光単位平均値
温度 時間 (分)
37℃ 10分 60分 110分 180分 240分 300分
試料1 12371.2 3141.2 930.0 270.7 127.4 55.1
試料2 781.3 792.3 777.5 748.9 728.2 713.4
試料3 2937.2 2815.0 2869.2 2592.3 2046 1953.4

22℃ 10分 60分 110分 180分 240分 300分
試料1 13073.4 5551.8 2766.29 1121.5 541.8 273.7
試料2 606.6 615.5 630.0 615.7 616.4 626.0
試料3 2603.4 2527.0 2533.0 2321.9 2052.8 1917.3
表 M. 残存するATP %
温度 相対光単位
37℃ 10分 60分 110分 180分 240分 300分
試料1 100 25.39 7.52 2.19 1.03 0.44
試料2 100 101.41 99.51 95.86 93.20 91.31
試料3 100 95.84 97.69 88.26 69.68 66.51

22℃ 10分 60分 110分 180分 240分 300分
試料1 100 42.47 21.16 8.58 4.14 2.09
試料2 100 101.46 103.86 101.5 101.62 103.21
試料3 100 97.07 97.30 89.19 78.85 73.65
このアッセイの条件下、注目する温度で5時間まで溶液をインキュベートした場合でさえ、1% DTABにより、22℃においてはATPが消失せず (即ち、試料の内在性ATPアーゼの完全な阻害)、 37℃においては消失はごくわずかであった。これらのデータから、内在性ATPアーゼ阻害がほぼ完全であり、ATPが少なくとも5時間安定である反応条件が明らかにされる。
実施例5 III. 試薬組成物の安定性
実施例4の結果を用いて、本実験はルミネセンスの経時測定による、37℃での安定性と比較した22℃での完全な試薬組成物の安定性を明らかにするために設計した。完全な試薬組成物を生成するために、10 mlの緩衝界面活性剤 (36 mMクエン酸ナトリウム、2 mM EDTA、20 mM MgSO4、2 mM NaF、1% DTAB、2% THESIT、0.2% Mazu、最終pH 6.0に緩衝させた) を凍結乾燥LucPpe2m146、D-ルシフェリン、MgSO4、CDTAに添加し、試薬組成物の最終ルシフェラーゼ濃度は80μg/mlとし、最終ルシフェリン濃度を5mMとした。
試薬組成物を半量に分け、一方の半量を22℃でインキュベートし、もう一方の半量を水浴中で37℃にインキュベートした。いろいろな時点で、100μl試料を試薬組成物を取り出し (4つ組)、96ウェルルミノメータプレートに移した。次に、各100μl試料に100μlの1.0μM ATP/DPBS (ダルベッコのリン酸緩衝食塩水、シグマ社、ミズーリ州セントルイス)を添加した。プレートを回転振盪器により700 rpmで30秒間振盪し、次にダイネックスMLXマイクロタイタープレートルミノメータ、0.5秒読取り/ウェルでルミネセンスを読取った。相対光単位平均値を下記表Nに、残存しているATPパーセンテージおよび半減期値を下記表Oに示す。
表 N. 相対光単位の平均
時間 (min.): 0 23 60 120 185 240 300
22℃ 695.4 763.0 741.8 683.8 675.9 664.4 681.4
37℃ ---- 757.7 722.3 614.4 575.0 544.2 526.1
表 O. 残存しているATP%
時間 (min.): 0 23 60 120 185 240 300 半減期
22℃ 100 109.7 106.7 98.3 97.2 95.5 98.0 >1000分
37℃ 100 108.9 103.9 88.4 82.7 78.2 75.7 573 min
実施例6 種々のルシフェラーゼを含む試薬組成物の安定性に対するDTABの影響(37℃)
LucPpe2ルシフェラーゼを含む試薬組成物の安定性とLucPpe2m90を含む試薬組成物およびLucPpe2m146を含む試薬組成物とを0.1%DTABの存在下および不在下に比較した。これらの変異ルシフェラーゼは熱安定性であり、1999年12月22日出願のPCT出願第PCT/US99/30925号に詳述されている。
各酵素を、25 mM HEPES、pH 8.0又は20 mMクエン酸塩、pH 6.0中共に100 mM NaCl、1 mM EDTA、0.1% ゼラチン、5%グリセロールを含む最終容量1.0 mlに0.05 mg/mlまで希釈した。試料の半量には0.1% DTABを添加した。酵素溶液 ("試薬組成物") を37℃でインキュベートした。
いろいろな時点で、10μlの酵素溶液を96ウェルルミノメータプレートに3つ組で移した。次に、3つ組で、各10μlの酵素溶液アリコートに100μlの室温ルシフェラーゼ分析試薬 (50 mM HEPES中1 mM ルシフェリン、0.2 mM ATP、10 mM MgSO4、pH 8.0) を添加し、混合し、直ちにダイネックスMLXマイクロタイタープレートルミノメータで読取った。ルシフェラーゼ分析試薬中のATPは飽和濃度である。ルミネセンスで測定した場合の試薬組成物活性の半減期であるrlu平均値を記録する (表P)。時間 (x軸)に対してrluの対数値をプロットしたデータの傾きから、式 log(0.5)/傾き を用いて半減期を計算した。時間ゼロは、実際には酵素と基質の混合の約2〜3分後である。このことはDTABの存在しないときより時間0のDTABの存在するときの方が数が小さいことの理由となり得る。
Figure 0004275715
*時間ゼロは酵素と基質を混合した約2〜3分後である。
実施例 7. ルミネセンス持続の増強とATP測定に対する種々の培地と血清の影響
いくつかの実施態様においては、本発明の組成物を無傷細胞に添加して溶解し、次にATPを検出した。他の実施態様においては、条件培地自体についてATPを分析した。しかしながら、緩衝液、糖質、アミノ酸、pH指示薬、塩のような種々の培地成分および血清(ウマ、ウシその他)中に見られる種々の因子はルシフェラーゼ活性を阻害し得る。本実施例は、試薬組成物とATPを供給する試料とを混合した場合に、ATPアーゼ阻害剤DTABの存在下における試薬組成物やルミネセンス持続(本明細書では“シグナル安定性”と言う)に対する細胞培地と血清の影響を明らかにするものである。
下記表Q に示される次の試薬組成物を調製した: 40 mMクエン酸緩衝液 (pH 6.0)、110 mM MES緩衝液 (pH 6.0)、0.2 mM EDTA、100μg/ml ルシフェラーゼ (LucPpe2m146、37.8 mg/mlの貯蔵液から希釈)、5 mM ルシフェリン、300 mM NaCl、20 mM MgSO4、0.05% Mazu DF-204、種々の濃度DTAB。DTABの最終濃度を種々に変化させた(下記表Qに示される)100μlの試薬組成物と、血清を含む100μlの細胞培地とを混ぜ、96ウェルマイクロタイタルミノメータプレートのウェル中の各反応液に1.0μM ATPプラスまたはマイナス10μMピロリン酸ナトリウムを添加することによりルシフェラーゼ‐ルシフェリン反応を開始させた。各実験条件は3つ組で調製した。反応開始後のいろいろな時点で、オリオンマイクロプレートルミノメータ (ベルトールド ディテクション システムズ(Berthold Detection Systems); ドイツ国プフォルツハイム) を用いてrlu値を記録した。rluの平均とシグナル安定性 (半減期によって測定) を表Q に示す。試験したすべての培地において、Ppiが存在する場合のDTABは、Ppiが存在しない場合のDTABより半減期が長くなった。分析に用いた培地の種類は、シグナル安定の変化にほとんど寄与しなかった。シグナル安定性の半減期を、時間0(A)と、最初の値として時間10分(B)から計算した。Ppiは、ルミネセンスを約1/10以下に減少させた。
表Q. ルシフェラーゼ‐ルシフェリン反応に対する培地と結合性の影響
Figure 0004275715
表Q.つづき
Figure 0004275715
実施例 8. 細胞数は光出力と相関する
本実験は、本発明の方法における試薬組成物の使用によって生成されるルミネセンスが生存細胞数と直接相関することを明らかにするものである。既知の生細胞数と実験で求めたルミネセンス間の簡単な相関が確立された。
ジャーカット細胞 (ATCC, CRL-1990) を5% CO2/95% 空気中、湿度100%、37oCで増殖させ、10% FBS (ハイクローン #SH30070)、1X非必須アミノ酸 (ハイクローン SH30238)、1 mMピルビン酸ナトリウム (ハイクローン #SH30239)を含有するRPMI培地 (シグマ、R-8005)中で維持した。細胞を新しい完全培地中に5×105/mlで懸濁し、1:2 の連続希釈液を調製した。次に、100μl の細胞希釈液を96ウェルマイクロタイタープレートのウェルに添加し、0〜50,000細胞/ウェルになった。4つ組の複製物を調製した。次に、プレートを37℃、5% CO2で45分間インキュベートした。次に、プレートを22℃で30分間平衡化した。次に、100μlの試薬組成物 (40 mMクエン酸緩衝液 (pH 6.0)、110 mM MES緩衝液 (pH 6.0)、2 mM EDTA、450 mM KPO4、0.4% プリオネックス(Prionex)、80μg/ml ルシフェラーゼ (LucPpe2m146、37.8 mg/mlの貯蔵液から希釈した)、5 mM ルシフェリン、2% THESIT、20 mM NaF、20 mM MgSO4、0.2% Mazu DF-204、1.0% DTAB)を各ウェルに添加し、プレートを2分間穏やかに振盪させ、ダイネックスMLXプレートルミノメータで10分間インキュベートした。次に、光出力を、0.5秒の合計呼びかけ信号パルスで読取った。得られたrlusの平均を下記表Rに示す。
表 R. ルミネセンスと細胞数との相関
Figure 0004275715
実施例 9. NaFで試験したリンパ細胞
リンパ細胞(例えば、ジャーカット細胞)のようないくつかの細胞においては、試薬組成物溶液の存在下にルミネセンスの経時増強が見られる。このルミネセンス増強の基礎にあるメカニズムは不明であるが、この細胞型においてATP産生酵素の機能から生じることが推定される。そのような酵素の活性を調べずにおくと、分析のときに試料中のATPを過剰定量する結果となる。この実験は、リンパ系細胞を用いたときのルミネセンスに対するフッ化ナトリウムの影響を試験するために設計した。実験は、また、本発明の組成物と方法においてLucPpe2m146によって産生されるルミネセンスの持続増強を明らかにするものである。
ジャーカット細胞 (ATCC, CRL-1990) を5% CO2/95% 空気中、湿度100%、37oCで増殖させ、10% FBS (ハイクローン #SH30070)、1X非必須アミノ酸 (ハイクローン SH30238)、1 mMピルビン酸ナトリウム (ハイクローン #SH30239)を含有するRPMI培地 (シグマ、R-8005)中で維持した。細胞を96ウェルマイクロタイタールミノメータプレートにおいて100μlの培地中0、12500、25000、50000細胞/ウェルで播種した。4つ組で複製物を調製した。ウェルの各々に試薬組成物 (試薬組成物 = 40 mMクエン酸緩衝液 (pH 6.0)、110 mM MES緩衝液 (pH 6.0)、0.2 mM EDTA、0.2% ゼラチン、100μg/ml ルシフェラーゼ (LucPpe2m146、37.8 mg/ml貯蔵液から希釈した)、100μM ルシフェリン、300 mM NaCl、20 mM MgSO4、0.05% Mazu DF-204, 0.6% DTAB)を添加した。更に、「KPO4無し」対照試料以外はすべて60 mM KPO4緩衝液 (pH 6.0)を含有させた。次に、上記溶液に種々の濃度のNaFを最終濃度0、1.0、2.0、4.0、10.0 mMまで添加した。1つの条件は10.0 mM NaFを含むがKPO4を含まない。
全反応容量/ウェルは、100μlの細胞+培地とKPO4及び/又はNaFを含む100μlの試薬組成物からなる200μlとした。光出力をダイネックスマイクロタイタープレートルミノメータにより0.5秒の読取り時間で測定した。4つ組のウェルから得られたrlusの平均と半減期値によって測定した場合の計算されたシグナル安定性を表Sに示す。.
データから、NaFを添加すると、本発明の方法においてジャーカット細胞を用いた場合に見られるルミネセンス増強が阻止され得ることが明らかになる。
表S. ジャーカット細胞ルミネセンスに対するNaFの影響
Figure 0004275715
表S.つづき
Figure 0004275715
*nc−経時rlu値が大きいために計算不能。
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試料中の相対的ATPアーゼ活性に対する種々の非イオン性界面活性剤と両性イオン界面活性剤の濃度増加の作用を示すグラフである。 試料中の相対的ATPアーゼ活性に対する種々の陽イオン界面活性剤又は陰イオン界面活性剤の濃度増加の作用を示すグラフである。

Claims (23)

  1. 化学安定ルシフェラーゼおよび界面活性剤を含む試薬組成物であって、ルミネセンスによって測定した場合、前記化学安定ルシフェラーゼは、化学安定ルシフェラーゼが、フォーツリス・ペンシルワニカホタルルシフェラーゼまたはLucPpe2由来の変異ルシフェラーゼであり、前記試薬組成物をATPを含むサンプルと一緒にした後、最初に前記界面活性剤と一緒にしたときの前記化学安定ルシフェラーゼの活性に比較して、pH4.5〜9.0の範囲で少なくとも30%の活性を少なくとも一時間維持することができ、前記界面活性剤は1種以上の陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両イオン性界面活性剤または非イオン界面活性剤を含み、前記組成物中の前記1種以上の界面活性剤は全体として、前記1種以上の界面活性剤が存在しない場合の前記サンプル中の内在性ATPアーゼと比較してサンプル中の前記内在性ATPアーゼ活性を少なくとも25%低下させることができる、前記試薬組成物。
  2. ルミネセンスによって測定した場合、化学安定ルシフェラーゼが、前記試薬組成物をATPを含むサンプルと一緒にした後、最初に前記界面活性剤と一緒にしたときに比較して、pH6.0〜8.0の範囲で少なくとも30%の活性を少なくとも一時間維持することができる、請求項1記載の試薬組成物。
  3. 界面活性剤が陽イオン界面活性剤である、請求項1記載の試薬組成物。
  4. 試薬組成物中0.05%〜2%(w/v)の濃度のDTABを含む緩衝化界面活性剤溶液である、請求項1記載の試薬組成物。
  5. 試薬組成物中の界面活性剤が以下のいずれかを含む、請求項1記載の試薬組成物:
    (a)DTAB、CHAPS、CHAPSO、スルホベタイン3-10、TRITON X-100、BigCHAP、THESIT、バイオタージおよびBDDABrからなる群より選ばれる、濃度0.05%〜1.00%(w/v)の界面活性剤;
    (b)濃度0.05%〜0.5%(w/v)のデオキシコール酸塩またはBDDABr;
    (c)濃度0.05%〜0.1%(w/v)のバイオタージまたはCTAB;または、
    (d)濃度0.05%(w/v)SDS。
  6. 更にATPアーゼ阻害剤を含む、請求項1記載の試薬組成物。
  7. 更にNaFを1mM〜20mMの濃度で含む、請求項1記載の試薬組成物。
  8. 総濃度が試薬組成物1mLあたり0.05〜400μgの化学安定ルシフェラーゼを含む、請求項1記載の試薬組成物。
  9. ルミネセンス半減期が10分間よりも長いことによって特徴づけられる安定性を有する、請求項1記載の試薬組成物。
  10. 試薬組成物1mLあたり50μgの化学安定ルシフェラーゼおよび1.0 mMのルシフェリンを含み、界面活性剤が以下からなる群より選ばれる場合、ルミネセンス半減期が10分間よりも長いことによって特徴づけられる安定性を有する、請求項記載の試薬組成物:
    (a)0.1%〜1.0%のDTAB;
    (b)0.02%〜0.5%のBDDABr;
    (c)0.1%〜0.5%のデオキシコール酸塩;および、
    (d)1.0%のスルホベタイン。
  11. 化学安定ルシフェラーゼが配列番号1、2、3または4記載の少なくとも一つの配列を含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の試薬組成物。
  12. a.全体で、界面活性剤の存在しないときの試料の内在性ATPアーゼ活性に相対して少なくとも25%前記試料の前記ATPアーゼ活性を低下させることができる1種以上の界面活性剤、および
    b.試薬組成物1mLあたり総濃度0.05〜400μgの化学安定ルシフェラーゼ、
    を含む請求項2記載の試薬組成物。
  13. 更に1mM〜10mMの濃度のNaFおよび1%〜5%の濃度のTHESITを含む、請求項10記載の試薬組成物。
  14. 界面活性剤が0.1%〜1.0%の濃度のDTABであり、化学安定ルシフェラーゼが配列番号2の配列を含む、請求項1記載の試薬組成物。
  15. 試料中のATPを検出する方法であって、
    a.化学安定ルシフェラーゼを緩衝化界面活性剤溶液とpH4.5〜9.0の範囲で合わせて試薬組成物を形成させる工程であって、前記試薬組成物中に存在する1種以上の界面活性剤は、全体として前記1種以上の界面活性剤の存在しないときの試料の内在性ATPアーゼ活性に相対して少なくとも25%前記試料の前記ATPアーゼ活性を低下させることができる界面活性剤であり、前記化学安定ルシフェラーゼが、フォーツリス・ペンシルワニカホタルルシフェラーゼまたはLucPpe2由来の変異ルシフェラーゼである、前記工程、
    b.前記試薬組成物を前記試料中に添加する工程であって、前記試薬組成物は、ルミネセンスにより測定した場合、前記試薬組成物を試料とを一緒にした後、前記ルシフェラーゼを前記1種以上の界面活性剤と一緒にした直後の前記試薬組成物の活性と比べて、少なくとも30%の活性を少なくとも1時間維持することができる、前記工程、および、
    c.前記合わされた試料と試薬組成物中のルミネセンスを検出する工程、
    を含む前記方法。
  16. 試薬組成物を添加する前およびルミネセンスを検出する際に試料を4.5〜9.0のpHに維持する、請求項15記載の方法。
  17. 緩衝化界面活性剤溶液が陽イオン界面活性剤を含む、請求項15記載の方法。
  18. ルミセンスにより測定した場合、化学安定ルシフェラーゼが、試薬組成物をATPを含むサンプルと合わせた後、最初に界面活性剤と合わさったときの化学安定ルシフェラーゼの活性と比較して、pH 6.0〜8.0の範囲で少なくとも30%の活性を少なくとも1時間維持することができる酵素である、請求項15記載の方法。
  19. 試薬組成物が、1種以上の界面活性剤および配列番号1、2、3または4から選ばれるアミノ酸配列を含む化学安定ルシフェラーゼを含み、pH6.0〜8.0の範囲のpHを有し、以下からなる群より選ばれる界面活性剤中で少なくとも30%の活性を維持することができる、請求項15記載の方法:ドデシル硫酸ナトリウム、αオレフィン硫酸塩、デオキシコール酸ナトリウム、N,N-ビス(3-D-グルコンアミドプロピル)コールアミド、ポリエチレングリコール 400ドデシルエーテル、ベンジルジメチルドデシルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、3[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ] プロパンスルホン酸、3-([3-コールアミドプロピル]ジメチルアンモニオ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート、およびN-ドデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート。
  20. 細胞集団内の細胞生存度を測定する方法であって、
    a.化学安定ルシフェラーゼと緩衝化界面活性剤溶液とをpH4.5〜9.0の範囲のpHにて合わせて試薬組成物を形成させる工程であって、前記化学安定ルシフェラーゼが、フォーツリス・ペンシルワニカホタルルシフェラーゼまたはLucPpe2由来の変異ルシフェラーゼであり、前記試薬組成物中に存在する1種以上の界面活性剤は、全体として前記1種以上の界面活性剤の存在しないときの試料の内在性ATPアーゼ活性に相対して少なくとも25%前記試料の前記ATPアーゼ活性を低下させる界面活性剤である、前記工程、
    b.前記試薬組成物を前記試料に添加する工程であって、前記試薬組成物は、ルミネセンスにより測定した場合、前記試薬組成物を試料と一緒にした後、前記ルシフェラーゼを前記1種以上の界面活性剤と一緒にした直後の前記試薬組成物の活性と比べて、少なくとも30%の活性を少なくとも1時間維持することができる、前記工程、
    c.前記一緒にした試料と試薬組成物中のルミネセンスを検出する工程であって、前記検出されたルミネセンスの量が細胞集団中の細胞の生存度に比例する、前記工程。
  21. 化学安定ルシフェラーゼが配列番号1、2、3または4から選ばれるアミノ酸配列を含み、界面活性剤が陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤または両イオン界面活性剤を含む、請求項20記載の方法。
  22. 界面活性剤が以下からなる群より選ばれる、請求項21記載の方法:ドデシル硫酸ナトリウム、αオレフィン硫酸塩、デオキシコール酸ナトリウム、N,N-ビス(3-D-グルコンアミドプロピル)コールアミド、ポリエチレングリコール 400ドデシルエーテル、ベンジルジメチルドデシルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、3[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ] プロパンスルホン酸、3-([3-コールアミドプロピル]ジメチルアンモニオ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート、およびN-ドデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート。
  23. 界面活性剤が以下からなる群より選ばれる、請求項1記載の試薬組成物:
    a)以下からなる群より選ばれる、陽イオン界面活性剤:
    DDABR(ベンジルジメチルドデシルアンモニウムブロミド)、CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)およびDTAB(ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド);
    b)以下からなる群より選ばれる陰イオン界面活性剤:
    SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、バイオタージ(オレフィン硫酸塩)、およびデオキシコール酸ナトリウム;
    c)以下からなる群より選ばれる両イオン界面活性剤:
    CHAPS(3[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ] プロパンスルホン酸)、CHAPSO(3-([3-コールアミドプロピル]ジメチルアンモニオ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート)およびスルホベタイン3-10(N-ドデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート)。
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