JP4274616B2 - 溶融金属供給装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋳造等の分野において、溶融金属を所定の位置に供給する溶融金属供給装置に関し、特に、柄杓等により溶融金属槽の溶融金属の液面部分で溶融金属を汲み出し、所定の位置に供給するのに当たり、溶融金属を汲み出す溶融金属槽の液位を最適に制御することが可能な溶融金属供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋳造の分野において、砂型や金型等の鋳型に溶融したアルミニウム等の溶融金属を鋳込む場合、溶融金属を貯えた溶融金属槽から柄杓により溶融金属を汲み上げ、溶融金属の自重等により所定の鋳型へ送り込んでいた。また、溶融金属を供給する他の手段としては、溶融金属槽の中の溶融金属に浸漬型電磁ポンプを浸漬し、この電磁ポンプを介して所定の鋳型に溶融金属を供給することも行われている。
【0003】
従来において、溶融金属を汲み出す溶融金属槽は単一の槽からなり、浸漬ヒータ等により溶融金属を加熱・溶融した状態で貯えておく。そして、この溶融金属槽から柄杓で溶融金属を汲み出すことにより、溶融金属槽の中の溶融金属が少なくなったときは、金属のインゴットを溶融金属槽の中に投入し、金属を溶かして溶融金属槽の中の溶融金属の量を維持するようにしている。
【0004】
前記従来の溶融金属供給手段では、溶融金属槽からの柄杓による溶融金属の汲み出しと、溶融金属槽への金属インゴットの投入とに伴い、溶融金属槽における溶融金属の液位の上下が激しく変動し、これにより様々な問題が起こる。
第一に、溶融金属槽の中の溶融金属の液位が上下すると、溶融金属の液面で溶融金属を汲み上げようとする柄杓の角度がその都度変わるので、常に一定量の溶融金属を汲み上げることが出来なくなる。これにより、溶融金属の供給量が変動する。また、電磁ポンプで溶融金属を送る場合も、溶融金属槽の中の液面が変動することにより吐出量が変化し、さらに電磁ポンプからの溶融金属の吐出圧にも変動を生じる。
【0005】
第二に、溶融金属槽の中の溶融金属の液位が上下すると、溶融金属槽の壁面に溶融金属の液位の上下による液面差だけ酸化スラグが付着する。このため、溶融金属の液面に生じるスラグの発生が多く、溶融金属の液位が上下する度にスラグの除去を行う必要がある。
そこでこのような課題に対し、溶融金属槽から溶融金属を柄杓や電磁ポンプで汲み上げて供給する場合、従来から溶融金属の液位の変動に対する対策が講じられてきた。
【0006】
例えば、柄杓で溶融金属槽から溶融金属を汲み出す場合、柄杓を上下動できるようにすると共に、柄杓と共に上下動する電極を設けている。そして、柄杓を溶融金属の液面より高い位置から下降させ、前記電極が溶融金属の液面に接触したとき、柄杓の下降を停止させることにより、溶融金属の液面に対し、柄杓が常に一定の高さで停止するようにし、そこで柄杓を回転させて溶融金属の汲み上げを行っている。
【0007】
また、電磁ポンプを用いて溶融金属を汲み上げる場合、溶融金属槽に液位センサを設け、この液位センサにより測定される溶融金属の液位が所定の高さ以上のときのみ電磁ポンプで溶融金属を汲み上げ、液位センサにより測定される溶融金属の液位が所定の高さ以下のときは、警告音等を発して金属インゴットの投入等を促すような工夫がなされている。
【0008】
【発明が解決しようとしている課題】
しかし前者の場合、溶融金属の液位を検知する電極の先端に溶融金属の滴が付着し、これが硬化したりすると、電極が実際の長さより長くなってしまった状態となり、溶融金属の液位を正確に検知することができなくなる。そのため、電極の先端を常に清浄にする等のメンテナンスが必要となり、多くの手数がかかることになる。
【0009】
また後者の場合、溶融金属槽の溶融金属の液位が下がると、金属インゴットを投入した後、それが溶解するまで溶融金属の供給ができなくなる。このため、鋳造機の稼働率が下がってしまう等の課題がある。
本発明では、従来の溶融金属装置における前述のような課題に鑑み、溶融金属を汲み上げる溶融金属槽の液位を常に一定に維持し、これにより、定常的且つ安定的に溶融金属の供給を行うことができる溶融金属装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明では、前記の目的を達成するため、溶融金属槽1を、溶融金属aを供給する第一の溶融金属槽2と、溶融金属aを汲み上げる側の第二の溶融金属槽3とからなる2槽式とし、これら第一と第二の溶融金属槽2、3を連通する溶融金属通路6を設けた。さらに、この溶融金属通路6の中に電磁ポンプ9を差し込んで配置し、この電磁ポンプ9で溶融金属通路6にある溶融金属aに推力を与えて、第一の溶融金属槽2側から第二の溶融金属槽3側に溶融金属aを送り出したり、逆に押し戻したりすることにより、第二の溶融金属槽3の溶融金属aの液位を制御するようにした。
【0011】
すなわち、本発明による溶融金属供給装置は、溶融金属aを貯えた第一の溶融金属槽2と、溶融金属aを汲み出す側の第二の溶融金属槽3と、第一の溶融金属槽2と第二の溶融金属槽3とを連通し、第一の溶融金属槽2側から第二の溶融金属槽3側に溶融金属aを送る溶融金属通路6と、この溶融金属通路6の中に差し込んで配置され、同溶融金属通路6にある溶融金属aに推力を与えて、第一の溶融金属槽2側から第二の溶融金属槽3側に溶融金属aを送り出し或いは押し戻すことにより、第二の溶融金属槽3の溶融金属aの液位を制御する電磁ポンプ9とを有することを特徴とするものである。
【0012】
電磁ポンプ9は、溶融金属aに対して熱的及び化学的に耐性を有する保護管8の内部の下端部に配置され、この保護管8の下端が溶融金属aに浸漬された状態で溶融金属通路6に配置されている。
ここで、溶融金属通路6の周囲に、同通路6に配置された電磁ポンプ9を囲むように磁性体の外部コア13が設けることもできる。また、溶融金属通路6の底部側に弁座22を設けると共に、電磁ポンプ9を収納した保護管8を上下させ、この保護管8の下端を前記弁座22に当接または離間させることで、溶融金属通路6を開閉する弁を構成してもよい。
【0013】
このような溶融金属供給装置では、第一の溶融金属槽2側で金属と溶解し、これを第二の溶融金属槽3側に送り出し、この第二の溶融金属槽3で溶融金属aを汲み上げ、所定の鋳型等に送り込む。このとき、電磁ポンプ9で溶融金属通路6にある溶融金属aに推力を与え、第一の溶融金属槽2側から第二の溶融金属槽3側に溶融金属aを送り出したり、逆に押し戻したりすることにより、第二の溶融金属槽3の溶融金属aの液位を一定に制御することができる。これにより、第一の溶融金属槽2の中の溶融金属aの量が変動しても、溶融金属aを汲み上げる第二の溶融金属槽3では溶融金属の液位を一定に維持することができ、安定した溶融金属の供給が行える。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について、具体的且つ詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態による溶融金属供給装置を模式的に示したものである。
溶融金属槽1は、第一の溶融金属槽2と第二の溶融金属槽3の2つに区画されており、これら第一と第二の溶融金属槽2、3は、溶融金属通路6により連通している。
【0015】
第一の溶融金属槽2は、上面が閉じられた部屋からなり、上壁10の一部に金属インゴットを投入するために開口部12が設けられ、この開口部12は蓋11により閉じられる。第一の溶融金属槽2の底部には、浸漬ヒータ7が配置され、これにより第一の溶融金属槽2の中の溶融金属が加熱され、金属の溶融状態が維持される。
【0016】
第二の溶融金属槽3は、上面を開口した開放形の槽であり、その中の溶融金属aの液面の上に、溶融金属aを汲み上げる柄杓4が設けられている。さらに、この第二の溶融金属槽3の溶融金属aの中に液位計5が浸漬され、これにより第二の溶融金属槽3内の溶融金属aの液位を測定し、検知することができる。
【0017】
第一と第二の溶融金属槽2、3を連絡する溶融金属通路6は、第一の溶融金属槽2の底部縦方向に貫通し、さらに第二の溶融金属槽3の底部横方向に貫通している。
溶融金属通路6の前記第一の溶融金属槽2の底面に貫通した部分の中に電磁ポンプ9が差し込んで配置されている。この電磁ポンプ9は、リニア誘導型のものであり、その概略を図3に示す。図示はないが、2つの溶融金属槽の連通管部を横にして、電磁ポンプを炉の横からさし込む方式も考えられる。
【0018】
すなわち、この電磁ポンプ9は、フェライト系磁性体等の高透磁率材料や積層鋼鈑により形成されたステータコア16にコイル17を巻回した誘導子15を有する。この誘導子15は、ステータコア16に設けたフランジにより上下に複数組のコイル17を分離して巻回している。この誘導子15は、その中心軸上に貫通した誘導子支持管19の下端側に固定されている。
【0019】
この電磁ポンプ9の誘導子15を支持した誘導子支持管19は、下端を閉じた円筒形の保護管8の中に収納されている。誘導子支持管19の上端側は、保護管8の上端を閉じた蓋板21の中心からから吊り下げ、固定されており、この蓋板21の外周側は、固定リング20により、保護管8の上端外周部に固定されている。これにより、誘導子支持管19が保護管8の中心軸上に固定され、誘導子支持管19の下端に取り付けた電磁ポンプ9が保護管8の下端部に収納・固定されている。電磁ポンプ9のコイル17から引き出されたコイルリード14は、前記蓋板21を通して保護管8の外部に引き出され、図示してない電源に接続される。
【0020】
図1に示すように、このように構成された溶融金属供給装置では、第一と第二の溶融金属槽2、3の中に熔解した溶融金属aを入れ、この溶融金属aを第二の溶融金属槽3側から柄杓4を使用して汲み上げる。柄杓4は遠隔から操作される。このとき、前記溶融金属通路6に配置した電磁ポンプ9に交流電流を通電し、コイル17に移動磁界を発生させる。これにより、溶融金属通路6にある溶融金属aに推力を与え、液位計5で第二の溶融金属槽3の液位を測定しながら、第二の溶融金属槽3側の溶融金属aの液位を調整する。
【0021】
すなわち、図1に示すように、第一の溶融金属槽2側の溶融金属aの量が十分あり、第二の溶融金属槽3側の溶融金属aの液位を第一の溶融金属槽2側の溶融金属aの液位より低くする場合、電磁ポンプ9で溶融金属aに第二の溶融金属槽3側から第一の溶融金属槽2側へ向けて推力を与え、第二の溶融金属槽3の溶融金属aの液位を維持する。これとは逆に、第一の溶融金属槽2側の溶融金属aの量が少なく、第二の溶融金属槽3側の溶融金属aの液位を第一の溶融金属槽2側の溶融金属aの液位より高くする場合、電磁ポンプ9で溶融金属aに第一の溶融金属槽2側から第二の溶融金属槽3側へ向けて推力を与え、第二の溶融金属槽3の溶融金属aの液位を維持する。そして、第一の溶融金属槽2の溶融金属aの量が少ないときは、蓋11を開口部12から外して、この開口部12から金属インゴットを投入し、溶解する。これらの操作により、常に第二の溶融金属槽3の溶融金属aの液位を一定に維持することができる。
【0022】
次に、図2に示した本発明の実施形態について説明すると、この実施形態による溶融金属供給装置は、溶融金属通路6の周囲に、同通路6に配置した電磁ポンプ9を囲むようにリング状の外部コア13を設けたものである。この外部コア13は透磁率が高くキュリー点の高い、例えばFe−Co系磁性体等からなる。これにれより、溶融金属通路6の周囲に磁路を形成しやすくなり、効率的な電磁ポンプ9の運転が可能となる。
【0023】
次に、図4に示した本発明の実施形態について説明すると、この実施形態による溶融金属供給装置では、溶融金属通路6の底部側に弁座22を設けると共に、電磁ポンプ9を収納した保護管8を上下動することができるようにしている。保護管8が下降し、その下端が弁座22に当接することにより、溶融金属通路6が閉じられ、保護管8が上昇し、その下端ば弁座22から離れることにより、溶融金属通路6が開く。すなわち、電磁ポンプ9による第二の溶融金属槽3側の溶融金属aの液位制御に加え、保護管8の上下動による弁作用によっても第二の溶融金属槽3側の溶融金属aの液位が制御できる。
なお、この実施形態において、溶融金属通路6の周囲に、図2に示したような外部コア13を設けることができることは言うまでもない。
【0024】
次に、図5に示した本発明の実施形態について説明すると、この実施形態による溶融金属供給装置では、第二の溶融金属槽3から溶融金属aを汲み上げるのに、柄杓に代えて電磁ポンプ23を使用した例である。この電磁ポンプ23は浸漬型の誘導電磁ポンプであり、溶融金属を導入する下端側を第二の溶融金属槽3の溶融金属aに浸漬している。そして、コイルリード24を介して図示してない電源から電磁ポンプ23のコイルに電流を流し、移動磁界を発生することにより、第二の溶融金属槽3から溶融金属aを汲み上げ、矢印で示すように所定の位置に溶融金属を供給する。
【0025】
この実施形態による溶融金属供給装置は、第二の溶融金属槽3からの溶融金属aの汲み上げ手段が異なるだけで、他の構成は図1に示したものと同様である。しかし、溶融金属aの液位制御用の電磁ポンプ9とその周囲の溶融金属通路6の部分は、図2や図4に示したのと同様の構成にすることができるのは言うまでもない。
【0026】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明による溶融金属供給装置では、溶融金属aを汲み上げる第二の溶融金属槽3側で、溶融金属aの液位の変動が無くなるように制御することができる。これにより、常に安定して溶融金属aを汲み上げることができ、溶融金属aの定常的且つ安定的な溶融金属aの供給が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による溶融金属供給装置を示す概略縦断側面図である。
【図2】本発明の他の実施形態による溶融金属供給装置を示す概略縦断側面図である。
【図3】これらの実施形態による溶融金属供給装置に使用される溶融金属の液位調整用の電磁ポンプを示す概略縦断側面図である。
【図4】本発明の他の実施形態による溶融金属供給装置を示す概略縦断側面図である。
【図5】本発明の他の実施形態による溶融金属供給装置を示す概略縦断側面図である。
【符号の説明】
1 溶融金属槽
2 第一の溶融金属槽
3 第二の溶融金属槽
4 柄杓
6 溶融金属通路
8 保護管
9 電磁ポンプ
13 外部コア
22 弁座
23 電磁ポンプ
a 溶融金属
Claims (3)
- 溶融金属(a)を貯えた溶融金属槽(1)から溶融金属(a)を汲み出して所定の位置に供給する溶融金属供給装置において、溶融金属(a)を貯えた第一の溶融金属槽(2)と、溶融金属(a)を汲み出す側の第二の溶融金属槽(3)と、第一の溶融金属槽(2)と第二の溶融金属槽(3)とを連通し、第一の溶融金属槽(2)側から第二の溶融金属槽(3)側に溶融金属(a)を送る溶融金属通路(6)と、この溶融金属通路(6)の中に差し込んで配置され、同溶融金属通路(6)にある溶融金属(a)に推力を与えて、第一の溶融金属槽(2)側から第二の溶融金属槽(3)側に溶融金属(a)を送り出し或いは押し戻すことにより、第二の溶融金属槽(3)の溶融金属(a)の液位を制御する電磁ポンプ(9)とを有し、この電磁ポンプ(9)は、溶融金属(a)に対して熱的及び化学的に耐性を有する保護管(8)の下端部分に収納され、この保護管(8)の下端が溶融金属(a)に浸漬された状態で溶融金属通路(6)に配置されていることを特徴とする溶融金属供給装置。
- 溶融金属通路(6)の周囲には、同通路(6)に配置された電磁ポンプ(9)を囲むように磁性体の外部コア(13)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の溶融金属供給装置。
- 溶融金属通路(6)の底部側に弁座(22)が設けられ、電磁ポンプ(9)を収納した保護管(8)が、前記弁座(22)に当接または離間して溶融金属通路(6)を開閉する弁を兼ねていることを特徴とする請求項1または2に記載の溶融金属供給装置。
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