JP4273425B2 - マイクロ流路利用分子分析方法 - Google Patents

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Description

本発明は、マイクロ流体システムを利用して特定分子の定性又は定量分析を行う方法に関するものである。
遺伝子分野の研究においては、ヒトゲノムの配列解読がほぼ終了し、その成果を基に遺伝子発現、突然変異、一塩基多型などに係わる遺伝子の特定やその機能解析、さらにそれに伴うタンパク質の構造や機能の解析に研究の中心が移りつつある。
他方において、これら一連の研究成果を利用して、医療面、福祉面に役立たせるための技術開発も進められている。
ところで、このような研究に関連して開発された手法の1つに、生体分子のような検体分子をそれと複合体を形成する分子(以下プローブ分子という)との間の相互作用を利用して検出する方法がある。
この方法は、固相担体上に固定化されたプローブ分子が生体分子と特異的な相互作用により形成する複合体を、あらかじめラベル化しておいた蛍光物質や電気化学活性物質の発する信号により検出して生体分子の存在を定性的に検知したり、その定量を行うものである。
そして、この際の生体物質の検出方法としては、これまでに例えば、電気化学反応を利用する方法(非特許文献1参照)、水晶振動子を利用する方法(非特許文献2参照)、表面プラズモン共鳴を利用する方法(非特許文献3参照)などが知られている。
これらは、いずれも金表面に核酸断片やタンパク質などをプローブ分子として固定し、それと特異的な相互作用をもつ生体物質又はその関連物質を結合させ、その際に生じる電気化学的応答、水晶振動子の振動数変化、表面プラズモンによる屈折率変化を検知し、分析するものである。
しかしながら、これらの方法において高い精度で定量を行うには、固相担体上に固定化するプローブ分子の厳密な制御が必要とされるが、固相担体上へのプローブ分子の固定化効率の不均一性、低再現性、固液界面での物質拡散挙動の複雑性及び検体分子を作用させる際の作業者の熟練度の不足などにより、限界を生じるのを避けられなかった。
その他、プローブ分子又は検体分子のいずれも固相担体に固定化しないで行う手法、例えばポリメラーゼ連鎖(PCR)反応を利用する方法(非特許文献4参照)、モレキュラービーコンを利用する方法(非特許文献5参照)などが知られている。
しかしながら、PCR反応を利用する方法は、そのPCR反応自体が指数関数的に増幅される反応であるため、精度の高い定量を行うことは原理的に困難である。また、モレキュラービーコンを利用する方法は、蛍光部位と消光部位をプローブDNAの両末端に導入したものが、被検分子との複合体形成前は、自己相補配列をとるために折れ曲がって蛍光が消光するが、複合体形成後はプローブ分子により発光する性質を有することを利用して分析する方法であるが、この方法を行うには、プローブDNAの配列設計に制限がある上に、DNAやその他の核酸の分析にしか適用できないという欠点がある。
これらの従来方法における欠点を克服するために、本発明者らは、先にプローブ分子と検体分子との複合化を利用して、検体分子の定性、定量分析を行う方法、すなわちプローブ分子含有溶液と検体分子含有溶液とをマイクロ流路に流した場合、その両者が層流を形成し、たがいに混ざり合わない性質を有するので、両者の選択的相互作用の強弱によって、拡散度の差異を検出することにより固相担体への固定化なしに、しかも高い精度で生体分子のような検体分子を分析する方法を提案した(特許文献1参照)。
しかしながら、この方法では、分析対象である検体分子含有溶液は、精製や濃度、溶液の物理的性質の制御調製などの事前作業が必要であるという問題が残されていた。
特開2004−53417号公報(特許請求の範囲その他) 「アナリティカル・ケミストリー(Anal.Chem.)」、2000年、第72巻、p.1334−1341 「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)」、1992年、第114巻、p.8299−8300 永田,半田共著、「生体物質相互作用のリアルタイム解析実験法」、シュプリンガー・フェアラーク東京株式会社、1998年 「プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)」、1997年、第94巻、p.10756 「アナリティカル・ケミストリー(Anal.Chem.)」、2000年、第72巻、p.747A−753A
本発明は、このような事情のもとで、分析対象である検体分子含有液の事前調製作業を不要とし、濃度・粘性・夾雑物の存在など種々の変動ファクターをもつ検体含有液を直接的に分析し得る方法を提供することを目的としてなされたものである。
本発明者らは、マイクロ流路を使った分析方法において、検体含有液の事前調製作業を不要にし、濃度・粘性・密度・夾雑物など多様な性質をもつ検体含有液を直接的に分析する方法を開発するために鋭意研究を重ねた結果、プローブ分子含有液とさらに別に用意された調整液とを層流を形成させながらマイクロ流路に送入し、さらに、その2つの液の層流の間に挟み込むように検体分子含有液を送入することにより、必要最低限の検体含有液量だけで、当該分析方法がもつ簡易な操作性ならびに高い精度を維持しつつ、多様な性質をもつ検体含有液を直接的に分析できることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、プローブ分子含有液層流と調整液層流とをマイクロ流路に並行して送入するとともに、両層流の間に検体分子含有液層流を挟み込むように送入し、検体分子含有液層流又は調整液層流中へ拡散するプローブ分子の量あるいはプローブ分子含有液層流中の残存プローブ分子の量の変化を検出し、解析することを特徴とする検体分子の定性又は定量分析方法を提供するものである。
本発明方法においては、マイクロ流路にプローブ分子含有液と調整液とを層流を形成させながら送入するとともに、その2つの層流の間に挟み込むように検体分子含有液を層流として送入することにより、これらの層流が流れる間にプローブ分子と検体分子の間の特異的相互作用により形成される複合体の各層流への拡散度が、その複合化の量ならびに強弱によって変化するのを、プローブ分子の発する信号により検知し、その結果を解析することにより検体の分析を行うものである。
従来の方法においては、検体分子含有液の粘性や密度などの性質を考慮の上、前もっての調製作業を行なわなければ、この検体分子が重力の作用により、マイクロ流路内下部に沈下するなどの現象を生じ、正しい分析を行うことができなかった。
これに対し、本発明方法による、プローブ分子含有液と調整液の間に挟み込むように送入することにより、粘性や密度などの性質を調整しなくても、正しく分析することが可能となった。
本発明方法で用いるマイクロ流路は、不活性材料基板上に設けられていることが必要である。この不活性材料とは、プローブ分子や検体分子や使用される溶媒及び生成する複合体に対し、反応性を示さない材料のことであり、例えばガラス、石英、又はシリカ、Si/SiO2、マグネシア、ジルコニア、アルミナ、アパタイト、窒化ケイ素、及びチタン、アルミニウム、イットリウム、タングステンのような金属の酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、ケイ化物などのセラミックスを挙げることができる。
このほか上記の要件を満たすものである限り、金属、プラスチックなども用いることができる。このベースの形状としては、板状体が普通であるが、所望ならば弧状体、球体、粒体などのものを用いることができる。
これらの材料は、選択する手段、検体及びプローブ分子の種類、溶媒に応じて適宜選択されるが、光学的手段で検出する場合は、少なくとも検出部位においては使用する光の波長に対し、十分な透明性を示すものを用いる必要がある。
本発明におけるマイクロ流路は、流体工学的に、層流を形成する範囲の大きさ・形状である必要がある。すなわち、不活性材料基板に、幅10〜500μm、好ましくは50〜400μm、深さ10〜500μm、好ましくは50〜400μmの大きさで刻設される。このマイクロ流路の長さには特に制限はなく、滞留時間を考慮の上、適宜選ばれる。具体的には、使用される不活性材料の大きさに依存するが、通常100〜300mmの範囲で選ばれる。
また、流路に送入する複数の液が合流する以前の導入用流路の大きさは同一であっても異なっても差しつかえない。特に、検体分子含有液用流路は、他に比べて細い方が有利である。合流後の流路についても、常に一定の大きさの流路である必要はなく、例えば先細り型流路構造を設けることにより、反応の種類によってはその反応を促進することも可能である。
このようなマイクロ流路は、例えばマイクロドリルのような工作機械を用いる機械的手段により基板上に刻設するか、あるいは半導体集積回路製造などに用いられる光リソグラフィー技術により溝を形成させた後、別の基板を接着することにより製造することができる。もしくは、このようにマイクロ流路を刻設した基板を鋳型として、別の基板に転写することにより作製することもできる。
このような極細の流路を流れる流体は、たがいに可溶な溶媒であっても混ざり合うことなく、層流を形成したまま流れていく。そして、このような極細の流路は、物質の拡散距離が短いという特徴を有している。
次に、本発明方法においては、上記のマイクロ流路に送入し、層流を形成させるために3種の流体、すなわち検体分子含有液、プローブ分子含有液及び調整液が用いられる。この中の検体分子含有液は、分析の対象となる検体を溶解又は懸濁した液であり、担持媒体としては、水、生理的緩衝液、もしくはエタノール、プロパノールなどの有機溶剤が用いられる。
また、プローブ分子含有液は、上記の検体分子と複合体を形成する分子、すなわちプローブ分子を溶解又は懸濁した液であり、担持媒体としては検体分子含有液の担持媒体の例として挙げたものと同じものが用いられる。
他方、本発明方法の第三番目の層流を形成させるための調整液は、拡散度調整のための液であって、検体分子やプローブ分子あるいはこれらと反応するような分子を含まない限り、特に制限はないが、通常は純水もしくは緩衝液が用いられる。しかしながら、塩や酸や塩基その他の物質を添加して拡散度の調整を容易にすることもできる。
本発明方法においては、検体含有液を高濃度でマイクロ流路に送入することができ、プローブ分子含有液層流との界面付近で、複合体形成反応が促進されるという利点がある。
また、本発明方法におけるマイクロ流路への送入による層流形成は、プローブ分子含有液、調整液ならびに検体含有液の3層流形式のみに限定されるものではなく、例えば、同一若しくは異なる別のプローブ分子含有液、調整液、検体分子含有液を追加することによる多層流形式であってもよい。さらに、多数の液の層を並べる順序も限定されるものではなく、分析の目的によって適宜選ぶことができるが、検体分子含有液をその他の液で挟むような状態に配置するのが特に望ましい。
その多層流の形成のさせ方は、単に横に並べるように形成させる方法のほか、上下方向に形成させることができ、どのように並べるかは、分析の目的に応じ適宜選択される。
本発明方法では、プローブ分子含有液、調整液、検体含有液それぞれの送入速度は、同一であっても異なっても差しつかえない。これは分析の目的によって適宜選ぶことができるが、特に、プローブ分子含有液、調整液に対して、検体含有液を遅い流速で送入するのが有利である。
このように、検体含有液を遅い流速で送入することにより、分析に必要な液の必要量を少なく抑えることができる。
一般にマイクロ流路を流れる複数の層流の界面では、溶質は、溶媒に可溶であれば、もう一方の液の方へ自然に拡散していくが、プローブ分子と検体分子との間に特別な相互作用がある際には、その界面近傍でのみ複合体が発生し、その発生した複合体を流体操作により、所望の場所や方向に移動拡散させることができる。
そして、この現象を利用すれば、プローブ分子に導入した官能基の発する信号、もしくはプローブ分子自体のもつ特異的な特性(特定波長の光の吸収など)、若しくは形成された複合体に選択的に結合する物質の発する信号や特性を検出することができるので、自然拡散に上乗せされた余分の拡散量を知ることができ、その量により、検体の分析を行うことができる。
したがって、本発明方法は、プローブ分子と検体分子との間に特異的な相互作用が生じるような場合においては、一般的に利用可能である。すなわち、プローブとして核酸断片を用いれば、特異的配列をもつ核酸断片の検出や分析を行うことができる。また、プローブとして抗原もしくは抗体を用いれば、特定の抗体もしくは抗原などを検出することができるし、タンパク質をプローブとして用いれば、特定のタンパク質・酵素・核酸等を検出できるし、プロテアーゼ阻害活性を有するような各種ペプチドをプローブとして用いれば、特定の酵素の検出やその活性の評価を行うことができる。さらに、各種糖をプローブとして用いれば、それを特異的に認識する核酸やタンパク質を検出、定量することができるし、各種細胞をプローブとして用いれば、種々の天然又は人工薬剤、環境物質などの生体への影響をスクリーニングすることができる。
本発明方法においては、これらに限らず、プローブ分子と検体分子との間に特異的相互作用を生じるような組合せを選択すれば、あらゆる化合物の検出に利用することができる。また、上記の例では、化学的な意味での単一分子が用いられているが、これ以外にも細胞などやその他の物質一般への展開が可能である。
さらに、本発明方法において、一連の作業において、従来の方法のように作業者の熟練を必要とすることはなく、作業者の熟練度の差による分析結果の不確実性を排することができる。従来法では、例えば核酸断片検出の際のハイブリダイゼーション操作のような、プローブ分子と検体分子の複合体形成のための実験操作が必要となり、この実験操作における作業者の熟練度の差によってもたらされる分析結果の不確実性が問題となっていたが、本発明方法では、注射器などで液を流路内に流し込むだけであるため、熟練度は無関係であり、シリンジポンプなどの器具を用いれば、さらに作業者の熟練度の差を排することができる。
本発明方法における検出に要する時間は、マイクロ流路に送入した液が流路を流れるのに要する時間に相当するが、数百μm程度の大きさの極細の流路を流れるのに要する時間は、たとえその送液量が少なくとも短いものであり、そのため本発明方法における検出に要する時間は当然短くなる。この時間は、使用するマイクロ流路の寸法などに左右されるが、通常数秒から数十秒以内である。
本発明方法は、層流中における検体分子とプローブ分子との間で形成される複合体の拡散度の変化に基づいて検体分子の定性的又は定量的な分析を行うものである。すなわち、検体分子とプローブ分子との間の親和性がない場合には、両者は単に通常の混合挙動に基づく層流間の拡散度が検出されるだけであるが、両者の間で親和性を有する場合には、複合体が形成され、さらには流体操作により、それを所望の場所や方向へ移動拡散させることができ、増大された拡散度として検出することができる。したがって、このような拡散度の差異を対比することによって、プローブ分子に対する検体分子の作用を定量的に知ることが可能である。
そして、上記の検出は、測定しやすいということから、通常検体分子含有液若しくは調整液側へ拡散するプローブ分子の量を直接測定するか、あるいはプローブ分子液側のプローブ分子の量を測定することにより行われる。そして、この測定は、プローブ分子に付した特徴的な信号をセンサーで検出することにより行われるが、特にプローブ分子として蛍光性官能基を導入して蛍光性を付与したものを用い、その蛍光度の強弱を追跡して生成する複合体の拡散度の変化を求めるのが有利である。
そのほか、プローブ分子として、電気化学活性官能基を導入したものを用い、その電流量の変化を求める方法や、プローブ分子のもつ特異的な紫外光、可視光又は赤外光に対する吸収強度を測定する方法なども利用可能である。このようにして、プローブ分子に特異的な信号を得るための化学修飾を施すことなく、検体分子の分析を行うことができる。
また、複合体の拡散度の測定に先立って、あらかじめ知られた量について検量線を作成しておき、次いで検出結果をこれと対比すれば検体分子の濃度の定量分析をすることもできる。
以上は、検体分子含有液側へ拡散したプローブ分子の量を測定する場合であるが、所望ならばプローブ分子含有液側へ拡散した検体分子とプローブ分子との複合体を測定して、検体分子の量を検出することもできる。このように、本発明方法における検出手段には、特に制限はなく、プローブ分子と検体分子との複合体の拡散状況が分るものであればどのような手段でもよい。
次に、本発明方法において、マイクロ流路に各液を送入するには、例えば注射器を接続し、手動で行うことも可能であるが、シリンジポンプなどの機械的手段により送液速度、送液圧力などを制御しながら行うのが有利である。
例えば、マイクロ流路に検体分子含有液とプローブ分子含有液、調整液を同時に送入し、ある一定距離流路を通過した後、検出操作を行う。ここでは、検体分子含有液とプローブ分子含有液とは少なくとも1種類ずつ必要であるが、複数の液を同時に流すことにより、複数の情報を同時に得ることも可能である。
この際の検出は、例えば蛍光法で行う場合、検出部位にレーザー光又はその他の励起光源からの光を照射し、そこから発せられる蛍光の強度を測定する。検体含有液側から出る蛍光が強いほどプローブ分子の存在量が多いということであり、すなわちプローブ分子と検体との相互作用の強さならびに量を反映したものとなる。このようにして、目的の検体の有無や存在量を知ることができる。
次に、所定の配列のDNAの検出を、蛍光性官能基を導入したプローブ分子を用いて行った場合を例として、具体的に説明する。すなわち、検体DNA断片溶液と、プローブである蛍光性官能基導入DNA断片溶液を、マイクロ流路に送入する。ある一定距離流路を流れた後、サンプル溶液側にレーザー光などの励起光を照射する。そこから発せられる蛍光がないか弱いものであれば、プローブDNA断片と検体DNA断片の配列相補性はないものと判断される。逆にそこで検出される蛍光が強ければ、プローブDNA断片と検体DNA断片の配列相補性があると判断される。
この際、未知試料を検定する前に、既知試料について蛍光強度と相補性の度合いを調べておくことでより正確に分析することができると同時に、相補配列をもつDNA断片の量を定量することができる。
この場合、プローブ分子としてのDNAに代えて、DNA結合性ペプチド(DNAに類似した構造を持つペプチドで、DNAよりも配列認識能が高い)又はLNA(DNAのリボース環2´位と5´位を連結したもので配列認識能が高い)を使用することにより、さらに精度の高い分析を行うことが可能となる。また、PNAはDNAとは異なり、水以外の有機溶媒にも可溶であり、検体を水溶液とし、プローブPNAを有機溶媒に溶かして使用することにより、検体のプローブ溶液側への拡散を抑えることができ、さらに精度の高い分析を行うことが可能となる。
本発明によると、固相担体に固定することなしに、単にプローブ含有液と検体含有液、調整液を層流としてマイクロ流路に送入し、所定の位置でプローブ分子と検体分子との複合体の濃度を反映する拡散度を測定するだけで、高い精度により検体の定性及び定量分析を行うことができる。しかも、単純な操作で行われるため、作業者の熟練度の差による分析結果の誤差を最小限に抑制することができる上、適用しうる検体の分子種に制限がなく、さらに試料調製という事前作業が必要なく、広い範囲に応用することができるという利点がある。
次に、実施例により本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこれらの例によりなんら限定されるものではない。
実施例
図1に示すとおり、シリコンウェハー上に、ドライエッチング法によりマイクロ流路を刻設し、それを第一母型として、ポリジメチルシロキサン樹脂を流し込み、固めることにより第二母型とした。すなわち、この状態では、マイクロ流路となる部分は凸型形状をもつ。さらにこの第二母型にポリジメチルシロキサン樹脂を流し込み、固めることにより、マイクロ流路を作製した。この上に、別のポリジメチルシロキサン樹脂板を貼り付けることで、目的のポリジメチルシロキサン樹脂製マイクロ流路刻設マイクロリアクターを作製した。これは、横70mm、縦30mmの大きさをもつ板状であって、刻設されたマイクロ流路の大きさは、深さ200μm、幅300μmである。
次に、プローブ分子として、F−O−(N末端)−ATGCACGGC−Lys−(C末端)の構造をもつペプチド拡散(PNA)を使用して分析を行った。ここで、Fは蛍光物質のフルオレセイン、Oはリンカーとしてのエチレングリコール、Lysは水溶性確保のためのアミノ酸であるリジンを示す。
検体試料としては、195塩基対をもつPCR産物を用いた。そのDNA鎖の中央付近にプローブ分子と相補的配列をもつ野生型(WT)、ならびに、そのうちの塩基のひとつがグアニン(G)からアデニン(A)に変異した変異型のものを2例(MT1とMT2)の計3種類を用意した。
マイクロ流路への送入は、図1に示したa,b,cの個所からそれぞれプローブ分子含有液、検体分子含有液、調整液をシリンジポンプを用いて行った。その送液速度は、プローブ分子含有液と調整液が40μl/min、検体分子含有液が1μl/minであった。この実施例では、調整液として純水を使用した。プローブ分子含有液は、200fmol/μlの濃度の水溶液であった。
次に、図1中のAの場所におけるプローブ分子含有液流路側と調整液流路側にアルゴンガスレーザーの発する488nmの光を照射することにより蛍光を発生させ、その強度の比(調整液流路側/プローブ分子含有液流路側)を比較した。このように、比で評価するのは、レーザー強度の変動や機械設定により受ける分析値の影響を補正するためである。その結果を棒グラフとして図2に示す。このグラフは、10回測定した上記比の平均値であり、標準偏差の範囲をエラーバーにて示した。プローブPNA断片と相補的な塩基配列をもつWTのみが、ほかの2つの変異型配列試料よりも大きな値を得た。また、この分析に必要なPCR産物試料量は2〜3μl程度であった。この結果から、特別な相互作用を有するものが、分析可能であることが分かる。また、その測定結果は、変動係数にして2%程度であり、極めて高い再現性を示した。
本発明は、DNAやLNAのような微小試料を簡単に定性、定量分析しうるので、各種生体物質の解析に好適である。
本発明方法で用いるマイクロ流路の1例を示す平面図。 実施例の結果を示す棒グラフ。

Claims (6)

  1. プローブ分子含有液層流と調整液層流とをマイクロ流路に並行して送入するとともに、両層流の間に検体分子含有液層流を挟み込むように送入し、検体分子含有液層流又は調整液層流中へ拡散するプローブ分子の量あるいはプローブ分子含有液層流中の残存プローブ分子の量の変化を検出し、解析することを特徴とする検体分子の定性又は定量分析方法。
  2. プローブ分子含有液層流と調整液層流の流速を、検体分子含有液層流の流速よりも大きくする請求項1記載の定性又は定量分析方法。
  3. プローブ分子と検体分子との間で形成される複合体の量の変化をプローブ分子の量の変化で検出する請求項1又は2記載の定性又は定量分析方法。
  4. プローブ分子が蛍光性を有する請求項1、2又は3記載の定性又は定量分析方法。
  5. 複合体の拡散度をあらかじめ形成された検量線と対比することにより検体分子の濃度を求める請求項3記載の定性又は定量分析方法。
  6. 検体分子が特定配列をもつDNA断片である請求項1ないし5のいずれかに記載の定性又は定量分析方法。
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