JP4272111B2 - 標的分子操作装置及び標的分子操作方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高周波の電磁波の応用技術に関し、特に生物の細胞を構成する分子に電磁波を照射し、選択的に分子を操作する標的分子操作装置及び標的分子操作方法に関する。
癌化学療法では、副作用がかなり現れる程度の使い方をしないと効果は期待できず、実際には副作用が強ければ中止せざるを得ず、治療効果も上がらない。このため、癌で死亡したのではなく、抗癌剤の副作用で死亡したという実例も多い。
癌治療の他、ダウン症、そううつ病、ぜんそく、リウマチ、心筋梗塞、更には種々の慢性病において、遺伝子治療が注目されている。現在行われている遺伝子治療は、異常になった遺伝子を直接的に正常化するのではなく、免疫反応を誘発する遺伝子を無毒化したウィルスに組み込み、このウィルスを癌細胞に「感染」させる「ウィルス治療」と呼ぶべきものである。ウィルスは自分の遺伝子を細胞内に注入し、遺伝子発現を起こす性質があり、遺伝子の運び屋(ベクター)として働き、「免疫誘導物質」が癌細胞の表面に発現する。免疫誘導物質として、インターロイキンなどのサイトカイン(情報伝達物質)や、HLAなどの細胞の標識物質が利用される。例えば、ベクターに"p53"という癌抑制遺伝子を運ばせて、癌細胞に遺伝子が組み込まれると、正常に働いていない癌細胞で、正常なp53蛋白質が作られ、癌細胞がアポトーシス(遺伝子プログラムによる細胞の自殺)を起こして、自爆する効果を期待している。
しかしながら、現在の遺伝子治療では、組み込んだ遺伝子がどこにいくか分からないので、治療の効果に再現性が期待できない。例えばp53遺伝子を組み込んだとしても、その遺伝子は、本来p53遺伝子があるべきところに、組み込まれるわけではない。こうした遺伝子組み込みの不確定性は、治療効果の不確定性に繋がる。又、遺伝子組み込みが思いもよらない異常をもたらす可能性もある。又、アデノウイルスにしてもリポソームにしても、遺伝子を組み込ませるのは、癌細胞と正常細胞とを、現状では選ばないので、副作用等の好まない結果が生じる。このため、癌細胞に選択的に組み込ませるベクターが待望されている。
p53蛋白質は細胞分裂が正常に行われているかを、監視及びコントロールする働きがあるとされており、これに破錠をきたしているのが癌細胞である。癌が発見されたときには、大多数の細胞に既に分裂を繰り返した状況であり、p53以外の遺伝子もボロボロに傷ついた細胞がいくつもある。現在の治療方法では、これらのすべてを治療するのは困難である。
275KHz〜1.01MHzの中波(MF)帯の電磁波を被測定対象物に照射し、この微生物の放射する電磁波の周波数と同一の周波数の電磁波を照射又は印加することによる単一種又は複数種の特定微生物(ウィルスを含む)を選択的に殺滅する方法が提案されている(特許文献1参照。)。特許文献1に記載の技術では、特に、生体内の沈着金属元素に対して、この金属の放射する電磁波の周波数と同一の周波数の電磁波を照射又は印加することによる単一種又は複数種の特定金属元素を選択的排泄を促進する方法により、生体内の単一又は複数の特定微生物の選択的殺滅、生体内に沈着した単一又は複数の特定金属元素の選択的体外排除促進、更に生体内の複数の微生物の差別的殺滅が期待されている。
しかしながら、3MHz〜30MHzの短波(HF)帯、30MHz〜300MHzの超短波(VHF)帯、300MHz〜3GHzの極超短波(UHF)帯、更には3GHz以上のマイクロ波(SHF)帯等の高周波における電磁波の微生物に対する影響や、微生物の固有の振動数等は知られていない。特に、従来、有効な電磁波発生手段や測定手段がなく、電波の暗黒地帯と呼ばれるテラヘルツ帯における生物学的な分子振動のデータは皆無に等しい。
特開2000−245813号公報
本発明は、上記した従来技術の欠点を除くためになされたものであって、その目的とするところは、テラヘルツ帯及びこの近傍の超高周波の電磁波を有効に利用し、生物学的な分子構造を制御性良く活性化、変態、若しくは破壊できる標的分子操作装置及び標的分子操作方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の第1の特徴は、(イ)0.01THz〜200THzの範囲において、生物学的な標的分子の固有振動数に等しい周波数の電磁波を照射し、標的分子を活性化、変態若しくは破壊する電磁波照射手段と、(ロ)電磁波照射手段に、周波数の電磁波を供給する電磁波発生手段と、(ハ)標的分子を透過した電磁波、若しくは標的分子から反射した電磁波を測定して、電磁波の照射による標的分子の変化状態を検出する操作結果測定手段とを備える標的分子操作装置であることを要旨とする。
「生物学的な標的分子」の一例は、細胞であり、更に細胞を覆う細胞膜や、細胞膜中の細胞質や核も他の例である。核は、核の周りの細胞質とは核膜で隔てられているが核膜も生物学的な標的分子の一例である。細胞内の細胞質には、更に生物学的な標的分子の一例として、小胞体、ゴルジ装置(体)、リソソーム、ミトコンドリア、ペリオキソーム等のオルガネラと総称される種々の小器官が存在している。植物細胞も基本構造は同じだが、葉緑体や液胞を含み、細胞膜の外側は更に細胞壁によって覆われるが、細胞壁も生物学的な標的分子の一例である。例えば、細菌類の細胞膜を構成するペプチドグリカンを考えてみる。このペプチドグリカンは、N−アセチルグルコサミン(GlcNAC)とN−アセチルムラミン酸(MurAC)が交互にβ−1,4結合し、長い糖鎖であるグリカン鎖を形成している。アミノ酸はN−アセチルムラミン酸の乳酸残基にアミド結合し、4個のアミノ酸[L−Ala−D−Glu−DAP(Lys)−D−Ala]からなるペプチドを構成している。この基本単位が数個〜数十個つながり長い鎖状構造をとっている。細胞壁中のグリカン鎖は互いに平行に走り、ペプチド鎖同士の結合で架橋し、巨大分子を作っている。
細胞の核の中にはデオキシリボ核酸(DNA)がぎっしり詰まっており、DNAは分子量(分子の数)数百億を超える超巨大分子で、細胞の核の中に棍棒状にまとまった「染色体」としてしまわれている。このDNAは「ヌクレオチド」と呼ばれる構成単位が連なってできている。ヌクレオチドは、リン酸及びデオキシリボースという2種類の分子と、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種の塩基分子のいずれか一つからできている。又、もう一種類の核酸であるRNA(リボ核酸)のペントースはリボースであり,塩基分子もチミン(T)の代わりにU(ウラシル)を含んでいる。図1及び図2に本発明者が初めて明らかにしたアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)、チミン(T)の振動特性である。図1(a)に示すように、アデニン(A)は1.7THz、2.1THz、3.0THz、4.2THzに吸収ピークを有する。図1(b)に示すように、グアニン(G)は2.6THz、3.0THz、4.3THz、4.8THz、5.5THz、図1(c)に示すように、シトシン(C)は1.6THz、2.9THz、3.4THz、4.3THz、5.3THzに、それぞれ顕著な吸収ピークを持つ。更に、図2(d)に示すように、チミン(T)は2.3THz、3.0THzに、図2(e)に示すようにU(ウラシル)は3.33THz、3.8THzにそれぞれ顕著な吸収ピークを持つことが分かり、これらの吸収ピークがそれぞれの塩基分子の固有の振動数を示している。
DNA/遺伝子は、遺伝情報をアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種の塩基分子の組み合わせで構成されるので、DNA/遺伝子も固有の振動を有する。これらの振動数は、図1及び図2と同様に、テラヘルツ帯の電磁波の測定システムで、測定可能である。又、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)のそれぞれの振動のデータから分子振動論を用いて計算できる(具体的にはMOPACやアブ・イニシオ等の種々のプログラムを用いて分子振動を計算できる。)。実際には、4種の塩基分子3つが組み合わさって「コドン」と呼ばれる情報単位を作り、一つのコドンがある一つのアミノ酸の生産を指示する。4種の塩基分子3つが組み合わさるので、4の3乗=64種類までのアミノ酸を表し、生産を指定できる。更にコドンは多数集まり、遺伝子を構成して蛋白質の生産を指示する。
実際には、図3(a)に示すように、ヌクレオチドは2列になりその間を4種の塩基分子が梯子状に結び、これが螺旋状にねじれている。この梯子が螺旋状にねじれた構造が、「DNAの二重ラセン」構造である。図3(b)に示すように、アデニンはチミンと、図3(c)に示すように、グアニンはシトシンと必ず向かい合って塩基対を構成している。 これらの塩基分子、これを含むヌクレオチド、ヌクレオチドの組み合わせからなるコドン、コドンの結合であるDNA、RNA、DNAがヒストンと呼ばれる蛋白質を規則的に巻き付けたヌクレオソーム、ヌクレオソームからなる螺旋状ヌクレオソーム、螺旋状ヌクレオソームからなる染色質、染色質が凝集した染色体、蛋白質等も生物学的な標的分子の一例である。
細胞壁、細胞膜やDNA等の生物学的巨大分子は、構成する分子鎖状構造に応じて、種々の振動モードと異なる固有振動が存在する。例えば、3個の分子の変角振動と5個の分子の間の伸縮振動は、異なる固有振動である。その他回転しながら特定のボンドの周りを踊る環変角振動等もある。この様に、生物学的な標的分子の振動のモードに応じて、テラヘルツ帯に種々の固有振動数が存在する。更に、縦波の振動か横波の振動かの相違や、基本振動であるか高調波の振動であるかでも異なるので、テラヘルツ帯やテラヘルツ帯の近傍の高周波帯に多くの固有振動が存在する。
DNAは、2倍に増えるときは、もとのDNAとそのコピーのDNAとがそれぞれ娘細胞に分配されるのではなく、もとのDNA半分とコピーDNA半分からできたDNA分子が娘細胞に分配される。ところが、糸状のDNA分子の末端部分はどうしても複製できず、複製できなかった部分は短くなる。末端部分のDNAはテロメアと呼ばれ、特殊な塩基配列を持っており、固有の振動数を有する。この線状DNAの末端にあるテロメアは、細胞分裂の度に短縮するので、一定の回数になると、細胞は分裂することはできず、死滅する。但し、生殖細胞は、無限の増殖が可能で、これはテロメアを作って補うテロメラーゼという酵素があるからである。癌細胞のように無限に分裂する細胞にもテロメラーゼがある。テロメアの長さは分裂の激しい癌では一般に短くなるが、それでも生存できるのはテロメラーゼが発現してその消耗を補っているからである。癌細胞の集団は必ず染色体数、形態が不安定となり、無数の異なった異常染色体と表現形質を持った癌細胞の集合体である。この異型性が癌細胞の特徴であって、染色体構造を安定化しているテロメアの極度の短縮による染色体相互の結合や転座が頻繁に起こると考えられるのである。電磁波の照射により、生物学的な標的分子としてのテロメラーゼを破壊すれば、テロメアがなくなり癌細胞は生存できないので、癌の発現が止まる。
又、癌細胞は、癌細胞の浸潤や転移の形成に有利に働くものと考えられるプラスミノーゲンアクチベーターやコラゲナーゼ等のプロテアーゼを分泌している。このため、これらのプロテアーゼを生物学的な標的分子として、これらに固有の振動数の電磁波を照射し、プロテアーゼを破壊若しくは変態すれば、癌細胞の浸潤や転移を抑制できる。
特許文献1に記載のような中波(MF)帯の電磁波を癌細胞に照射した場合は、細胞膜等の巨大分子が破壊され、癌細胞は細胞壊死(ネクローシス)に陥る。ネクローシスの場合は細胞の崩壊によって、流出した細胞内容物により周辺に白血球が集積して炎症反応が起こることが特徴であり、これらが更に癌悪疫質の原因にもなる問題がある。これに対して、テラヘルツ帯の電磁波を癌細胞の標的分子(生物学的な標的分子)に照射した場合は、癌細胞はアポトーシスに誘導される。アポトーシスの場合は断片化した細胞がマクロファージなどに貪食されて処理されるため、炎症反応を伴わず、生体への侵襲がほとんどないので効果的である。アポトーシスは元来形態学的に定義された概念であり、ネクローシスと対照的な細胞死の様式である。アポトーシスに陥った細胞は収縮し、核が濃縮し断片化する。断片化した核が細胞膜に包まれたアポトーシス小体が形成され、これは食細胞により処理される。この過程は一連の遺伝子により制御され、エネルギーを消費し能動的に遂行される。ネクローシスと異なり原則的に炎症を惹起しないという性質より、生体内の細胞環境のホメオスターシスを維持する重要なメカニズムである。
原理的には、本発明の第1の特徴に係る標的分子操作装置は、数十kHz程度の低周波からテラヘルツ帯の高周波までの電磁波が使用可能である。しかしながら、凝縮染色分体の固有振動やたわみ振動の固有振動等は、微生物や細胞の個体としての大きさ等に依存するので周波数の調整が複雑になる。一方、生物学的な標的分子の細胞を構成する分子振動による固有振動は、生物学的な標的分子の種類が決まれば、境界条件を一定とすればほぼ一定とすることが可能であるので、調整が容易である。このため、実用上はテラヘルツ帯やテラヘルツ帯の近傍の高周波帯の電磁波を用いるのが好ましい。
本発明の第1の特徴によれば、生物学的な標的分子の固有振動数に等しい周波数の電磁波が、細管の先端にある電磁波照射端子から出射される。生物学的な標的分子の固有振動数に等しい周波数の電磁波は、目的とする生物学的な標的分子を共鳴振動するように選択的に励起させるので、生物学的な標的分子の周辺にある細胞等が破壊されることなく、生物学的な標的分子のみを死滅させることができる。したがって、生物学的な標的分子が原因となる感染症等の病気を効果的に治療することができる。上述したように、生物学的な標的分子の固有振動数は一般に複数存在するので、同時に複数の固有振動数に等しい異なる周波数の電磁波を、電磁波照射端子から出射しても共鳴振動を起こしても良い。
更に、電磁波のエネルギーを吸収して、生物学的な標的分子の温度が局所的且つ選択的に上昇することを利用して、局所的な反応を活性化し、これにより抗癌剤等の投与量を減らし、正常細胞に副作用を生じさせないようにして、癌治療等をすることが可能である。温度上昇により、生物学的な標的分子の固有振動数が変化する場合は、それに追随して電磁波の周波数を変化させ、共鳴振動状態を維持すれば良い。
本発明の第2の特徴は、(イ)DNAを所望の切断箇所で切断する段階と、(ロ)切断箇所の端部に存在する端部コドン若しくはこの端部コドンを構成する端部塩基分子の固有振動数に等しい周波数の電磁波を照射し、端部コドン若しくは端部塩基分子を選択的に活性化し、切断箇所に他のコドンを接続する段階とを含み、DNAの塩基配列を変更する標的分子操作方法であることを要旨とする。
本発明の第2の特徴によれば、DNAの切断箇所に、自在且つ高い再現性で他のコドンを組み込むことが可能になる。
以上より、本発明によれば、テラヘルツ帯及びこの近傍の超高周波の電磁波を有効に利用し、生物学的な分子構造を制御性良く活性化、変態、若しくは破壊できる標的分子操作装置及び標的分子操作方法を提供できる。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、形状や寸法等は現実のものとは異なることに留意すべきである。又、以下に示す第1〜第4の実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る標的分子操作装置は、図4及び図5に示すように、0.01THz〜200THzの範囲において、生物学的な標的分子の固有振動数に等しい周波数の電磁波Φを照射し、標的分子を活性化、変態若しくは破壊する電磁波照射手段7aと、標的分子を透過した電磁波Φ、若しくは標的分子から反射した電磁波Φを測定して、電磁波Φの照射による標的分子の変化状態を検出する操作結果測定手段7bと、電磁波照射手段7aと操作結果測定手段7bとを制御する治療条件制御装置1aとを備える医療機器である。図5及び図6においては、電磁波照射手段7aは、照射用細管(照射用プローブ)7aとして示され、操作結果測定手段7bは、モニタ用細管(モニタ用プローブ)7bとして示されている。
照射用細管7aとモニタ用細管7bの外径は、治療される側に負担、苦痛或いは不快感を与えないように、治療を施す部位に応じて0.1mm〜20mm程度に設けるのが良い。例えば、大腸や小腸等の消化器官に挿入する内視鏡の場合等には、10mm〜20mm程度の外径で良く、胃カメラのように口から挿入する内視鏡の場合は1mm〜10mm程度が好ましい。図4及び図5において、照射用細管7aとモニタ用細管7bは腹腔鏡下胆のう摘出手術等に用いられる照射用腹腔鏡プローブ7a及びモニタ用腹腔鏡プローブ7bとして説明するが、前立腺癌等の外科手術に用いられる針状の器具(ニードル)、血管や体腔等に挿入するためのカテーテルと同様な構造でも良い。
照射用腹腔鏡プローブ7aは、図5に示すように、生体の内部に挿入するチューブ77の中に、電磁波を伝送する高周波伝送線路70a、生体に光を照射するライトガイド72及び被治療対象の温度を検出する温度検出手段(温度検出端子)73、生体の内部の映像情報を取得するCCDカメラ71を有する。高周波伝送線路70aの先端には、高周波伝送線路70aを伝搬してきた電磁波を、被治療対象に対して照射する電磁波照射端子74aを備える。CCDカメラ71、ライトガイド72、温度検出端子73及び高周波伝送線路70aはチューブ77の中を長手方向に沿ってそれぞれ配置されており、図6に例示するように、それぞれの一端が照射用腹腔鏡プローブ7aの先端に露出されている。
図6ではCCDカメラ71、ライトガイド72、温度検出端子73及び電磁波照射端子74aが一列に並んでいるが、一列に並ぶ必要はなく、他の配置が採用できることは勿論である。例えば、高周波伝送線路70として同軸ケーブルを用いた場合、同軸ケーブルの絶縁層の内部に同軸ケーブルの信号線を囲むように、CCDカメラ71、ライトガイド72、温度検出端子73を配置し、一番外側に同軸ケーブルのグランド側の配線を設ける構造でも良い。
CCDカメラ71、ライトガイド72及び温度検出端子73の他端は、図4に示す腹腔鏡制御装置18aに接続されている。CCDカメラ71は、照射用腹腔鏡プローブ7aの被治療対象に挿入される側の一端に対物レンズを有するのが好適である。ライトガイド72は、可視光の光ファイバが用いられる。ライトガイド72は、照明光を通過させることだけでなく、映像を透過させても良い。即ち、ライトガイド72を介して得られる映像をビームスプリッター等で分離し、その分離後にCCDカメラで映像情報を取得するようにすれば、図5のCCDカメラ71は不要である。映像情報の伝送線路として用いるためには、ライトガイド72の屈折率の分布が中心軸上で高く、外周側で低くなるような放物線型の分布の、いわゆる「収束性光伝送線路(グレーデッドインデックスファイバ)」にすれば良い。温度検出端子73は、T型(Cu−Co)熱電対等でも良く、赤外線光ファイバを介して光学的に温度測定をしても良い。光学的に温度測定をする場合、ライトガイド72の材料を可視光及び赤外光の透過する材料に選べば、ライトガイド72が温度検出端子73を兼ねることができる。
照射用腹腔鏡プローブ7aの先端部に設けられた電磁波照射端子74aとしては、パラボラアンテナ、ホーンアンテナ、ループアンテナ等が使用可能である。電磁波照射端子74aは、テラヘルツ帯の電磁波を伝送可能な導波管型の可とう性中空導光路、同軸ケーブル、マイクロストリップ線路、コプレーナ導波路などの高周波伝送線路70の先端部が利用して、パラボラ形状、ホーン形状、ループ形状に加工すれば良い。
周知のように、ループアンテナでは電磁波の波長λより十分離れた遠方界領域では、ループ面の方向に最大の電力が放射され、ループ面に垂直方向の電力は最小となるので、アンテナの指向性を考慮してループ面の方向を選択すれば良い。ループアンテナの大きさは、放射効率を高めるために、ループ長を電磁波の共振波長λに近づけることが良い。30GHz〜300GHzのミリ波(EHF)帯以上の高周波にすることにより、ループ径を簡単に1mm以下にでき、照射用腹腔鏡プローブ7aの小型化、特に、照射用腹腔鏡プローブ7aの外形の小型化が可能になる。照射用腹腔鏡プローブ7aの外形が0.3mm以下好ましくは0.25mm以下になれば、患者への負担を少なくして、臓器の内部に照射用腹腔鏡プローブが挿入できる(現在、世界最小の注射針の外径は0.15mmである)。ループアンテナを囲む絶縁物の屈折率を2とすれば、30GHzの電磁波の波長は5mmであり、ループアンテナの直径は1.6mmとなる。但し、ループアンテナの形状は、特に限定はなく、同軸線と結合した円形、楕円形、扁平円形、矩形、三角(デルタ)形、五角形以上の多角形等の種々の形状のループアンテナが使用できる(多角形は正多角形である必要はない。)。ループアンテナが小型化した場合は、高周波伝送線路を構成する信号線の先端をフォトリソグラフィの技術で、円形、楕円形、扁平円形、矩形、三角形、五角形以上の多角形等の種々の形状にパターニングすれば良い。ループアンテナの外径だけでなく、高周波伝送線路の寸法も、伝搬する電磁波の波長の影響を受ける場合があるので、ミリ波(EHF)帯以上の高周波の電磁波を用いることにより、照射用腹腔鏡プローブ7aの外形を小さくでき、患者への負担を少なくできる。
サブミリ波帯よりも高周波の電磁波であれば、高周波伝送線路70としての可とう性導波管(中空導光路)の直径は1mm以下にすることが可能である。電磁波照射端子74aは、高周波伝送線路70としての遠赤外線光ファイバの先端部に設けられた遠赤外用レンズであっても良い。遠赤外線光ファイバとして、KRS−5(TlBrI),TlBr,AgCl,AgBr,酸化ゲルマニウムガラス、フッ素ガラス等の材料が使用できる。又、浅い順位の不純物の含まれない高純度のシリコン等の半導体材料も、遠赤外線光ファイバの材料として使用できる。高周波伝送線路70として遠赤外線光ファイバを用いる場合は、高周波伝送線路70aの電磁波照射端子74aに対向する他端にも、遠赤外用レンズ等が設けられ、光学的に電磁波が高周波伝送線路70に導入され、高周波伝送線路70を伝搬後、電磁波照射端子74aから出射する。
ライトガイド72の材料を可視光から遠赤外光まで透過するダイアモンド等の材料や中空導光路(導波管)に選べば、ライトガイド72と高周波伝送線路70とを兼ねても良い。この場合は、ライトガイド72を介して光学的に温度測定も可能なので、ライトガイド72が高周波伝送線路70及び温度検出端子72を兼ねることが可能である。電磁波照射端子74aの近傍には、高周波伝送線路70に接続されたインピーダンス調整用の可変スタブ87が設けられる。可変スタブ87は、マイクロアクチュエータ88を介して高周波伝送線路70に接続され、マイクロアクチュエータ88により駆動される。詳細な構造を示していないが、可変スタブ87は導波管、同軸ケーブル、マイクロストリップ線路、コプレーナ導波路などの高周波伝送線路の構造に合わせて選べば良い。上述したように、ライトガイド72を照明光用のみに使うのではなく、映像情報の伝送線路として用いれば、CCDカメラ71は不要である。したがって、ライトガイド72が可視光から遠赤外光まですべて透過するワイドバンドな材料であれば、図5においてCCDカメラ71、高周波伝送線路70、温度検出端子73は省略できる。この様な構造にすれば、外径が0.1mm以下の照射用腹腔鏡プローブが実現できる。
モニタ用腹腔鏡プローブ7bは、図4及び図7に示すように、照射用腹腔鏡プローブ7aの先端に対向する位置に電磁波検出端子74bを配置する。即ち、照射用腹腔鏡プローブ7aの先端の電磁波照射端子74aとモニタ用腹腔鏡プローブ7bの先端の電磁波検出端子74bとで被治療対象を挟み込み、被治療対象を透過した電磁波をモニタ用腹腔鏡プローブ7bの先端により検出するものである。
モニタ用細管(モニタ用腹腔鏡プローブ)7bの外径は、0.1mm〜20mm程度に設けるのが良いと述べたが、治療の現状を考慮すると、一般的には、モニタ用腹腔鏡プローブ7bの外径は、照射用腹腔鏡プローブ7aよりも細く、0.1mm〜10mm程度が好ましい。特に、モニタ用腹腔鏡プローブ7bの使用態様としては、被治療対象となる臓器の内部まで、先端が挿入される場合が多いので、そのような場合は、その外径は0.8mm以下、更には0.5mm以下が好ましい。例えば、先端部に電磁波検出端子74bとしてシリコンボロメータ等のテラヘルツ帯電磁波検出器を設けた構造のような単純構造にすれば、モニタ用腹腔鏡プローブ7bの外径は、0.2〜0.1mm以下にすることが可能である。被治療対象となる臓器の内部まで先端を挿入するためには、モニタ用腹腔鏡プローブ7bの先端は注射針の先端のような鋭角なテーパ形状にしておけば良い。もっとも、照射用腹腔鏡プローブ7aもモニタ用腹腔鏡プローブ7bも両方とも臓器の内部に挿入するような場合は、どちらのプローブ7a、7bも注射針の外径より細い方が患者の負担は小さい。
モニタ用腹腔鏡プローブ7bは、図7に示すような電磁波検出端子74bとしてのホーンアンテナと導波管からなる高周波伝送線路70bを内蔵するように構成しても良い。又、導波管70b以外の、マイクロストリップ線路、薄膜ストリップ線路、コプレーナ導波路、同軸線路等の高周波伝送線路を内蔵してモニタ用腹腔鏡プローブ7bを構成しても良い。例えば、図8に示すように、モニタ用腹腔鏡プローブ7bの先端部において、フォトリソグラフィの技術で、電磁波検出端子74bとしてのループアンテナを端面に形成しても良い。更に、ショットキーダイオードやボロメータ等のテラヘルツ帯電磁波検出器をモニタ用腹腔鏡プローブ7bの内部に設けても良い。
上述したように、ループアンテナではループ面の方向に最大の電力が放射され、ループ面に垂直方向の電力は最小となるので、アンテナの指向性を考慮すれば、ループ面がモニタ用腹腔鏡プローブ7bの先端の端面と平行に設けるようにすれば、図4及び図8のように、照射用腹腔鏡プローブ7aの軸方向とモニタ用腹腔鏡プローブ7bの軸方向とが直交する配置で、被治療対象2を透過した電磁波をモニタ用腹腔鏡プローブ7bの先端のループアンテナで検出することができる。電磁波検出端子74bとしてのループアンテナの寸法(ループ長)も、検出感度を高めるためには共振波長λとなる寸法が良いが、ループ面積が透過波を受信できる範囲で、λ/3以下、或いはλ/7以下のループ長となるような微少ループアンテナでも良い。ミリ波(EHF)帯以上の高周波の電磁波、特にテラヘルツ帯の電磁波を用いることにより、モニタ用腹腔鏡プローブ7bの外形を小さくでき、患者への負担を少なくして、臓器の内部に挿入できる。
なお、モニタ用腹腔鏡プローブ7bの先端部に電磁波検出端子74bとしてボロメータアレイ等のテラヘルツ帯イメージセンサを備えて、被治療対象(臓器)の透過したテラヘルツ帯の電磁波の透過2次元像を撮像するようにしても良い。
治療条件制御装置1aは、図4に示すように、腹腔鏡制御装置18a、電磁波発生手段13,及び透過電磁波処理手段14、分子振動データ記憶装置15,入力装置11、表示装置16,出力装置17を備える。
腹腔鏡制御装置18aは、図4に示すように、照射用腹腔鏡プローブ7aの内部にあるCCDカメラ71及び温度検出端子73に接続された信号処理部80、信号処理部80の出力側に接続されたモニタ制御部86、照射用腹腔鏡プローブ7aの内部にあるライトガイド72に接続された光源82を有する。信号処理部80は、更に映像処理部81と温度信号処理部83とを有する。映像処理部81及び温度信号処理部83は、映像解析処理装置及び温度測定装置が利用可能である。光源82は、可視光半導体レーザ、可視光発光ダイオード、放電管、蛍光ランプ等が用いられる。可視光半導体レーザや可視光発光ダイオードは、プローブの先端に設けれも良い。又可視光半導体レーザや可視光発光ダイオードは、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色を混合した白色光でも良く、被治療対象が最も良識別できる波長に調整しても良い。
電磁波発生手段13は、対象となる被治療対象の固有振動数に等しい周波数の電磁波を発生し、照射用腹腔鏡プローブ7aに供給する手段である。例えば電磁波発生手段13は、図4に示すように、被治療対象の固有振動数に等しい周波数の電磁波Φを発生する比較的ワイドバンドの電磁波発生装置35と、被治療対象の固有振動の変化に追随して被治療対象に照射する電磁波の周波数を変化させる周波数調整部(周波数調整装置)34とで構成される。この場合、周波数調整装置34には非線形光学素子等が用いられる。
電磁波発生装置35は、例えば図10及び図11に示すような、2つのポンプ光の差の周波数を取り出すテラヘルツ帯電磁波発生装置を利用しても良い。図10においては、第1ポンプ光51としてNd:YAGレーザ49の波長1.064μmの光を用い、第2ポンプ光52としては、Nd:YAGレーザ49で励起された光パラメトリック発信器(OPO)50の1.03〜1.06μmの可変波長を用いている。第1ポンプ光51は、Nd:YAGレーザ49を出射後、反射鏡M、反射鏡M2、3mmΦのピンホールH2、反射鏡M3、反射鏡M4、λ/2波長板P2、偏光ビームスプリッター(グランプリズム)GP2、反射鏡M5、反射鏡M6を経由してポンプ光制御部54に入射する。第2ポンプ光52は、光パラメトリック発信器50を出射後、λ/2波長板P1、3mmΦのピンホールH1、偏光ビームスプリッター(グランプリズム)GP1、反射鏡M7を経由してポンプ光制御部54に入射する。ポンプ光制御部54は、第1ポンプ光51と第2ポンプ光52を、それぞれ、合成光53a,53bとして出射する。ポンプ光制御部54は、例えば、偏光ビームスプリッター(グランプリズム)が用いられる。ポンプ光制御部54から出射した合成光53a,53bは、図11に示すように、電磁波発生部55の入射端面56に垂直入射し、電磁波発生部55は、第1ポンプ光51と第2ポンプ光52との周波数の差に等しい周波数の電磁波(テラヘルツ帯の電磁波)Φを出射端面57から出射する。
図11に示すように、電磁波発生部55は、入射端面56と、入射端面56に対向した出射端面57と、入射端面56と出射端面57の間に位置し特定のミラー指数で表現される単結晶の結晶方位に沿った光導波路58とを有する。入射端面56及び出射端面57は、例えばSiO−TiO多層蒸着膜によりコーティングがされている。光導波路58は、例えば、リッジ構造からなるGaPコア層とGaPコア層の周囲に形成されたAlGa1−XP層からなるクラッド層とから構成されたリッジ型光導波路である。合成光53a,53bが入射端面56のGaPコア層に入射すると、TOフォノンと結合した差周波光が励起され、出射端面57から第1周波数と第2周波数との差に等しい周波数を持つ電磁波Φが発生する。
図10及び図11に示す電磁波発生装置35においては、ポンプ光制御部54の角度を変えることにより、第1ポンプ光51と第2ポンプ光52の入射ベクトルの方向を変え、電磁波発生部55の出射端面57から出射する第1周波数と第2周波数との差の周波数を可変にする。更に大きくは、光パラメトリック発信器(OPO)50により第2ポンプ光52の周波数を可変としてワイドバンド化している。即ち、ポンプ光制御部54と光パラメトリック発信器(OPO)50とで、図4に示す電磁波発生手段13の周波数調整部(周波数調整装置)34を構成している。光パラメトリック発信器(OPO)50としては、種々のパラメトリックレーザが使用可能である。例えば半導体GaP結晶のパラメトリック効果により0.2THzから7THzに至るテラヘルツ周波数領域において任意の周波数の単一可変周波数テラヘルツ波を発生させることができる。一方誘電体LiNbOsのパラメトリック効果を利用した場合は、0.5THzから3THzの範囲内の周波数領域において単一可変数テラヘルツ波を発生することができる。光パラメトリック発信器(OPO)50の代わりに、半導体や誘電体を利用したラマンレーザを用いても、同様に、テラヘルツ帯の可変周波数電磁波を発生させることができる。
電磁波照射端子74aに接続された高周波伝送線路70aの他端は、図4の治療条件制御装置1aに内蔵された腹腔鏡制御装置18aに必ずしも接続されている必要はない。例えば、図12に示すように、高周波伝送線路70aの他端には、電磁波として図4の電磁波発生手段13の出力が入射可能なように、電磁波入力端子76aが設けられている。
図12は、電磁波入力端子76aとしてループアンテナが設けられた場合である。例えば、周波数調整部(周波数調整装置)34として、ポンプ光制御部54の角度を変えると、電磁波発生部55から出射するテラヘルツ帯の電磁波の方位が変化するので、図12では、1対のオフアクシス・パラボラ鏡59a,59bを用いて、一定方向にテラヘルツ帯の電磁波が出射するように光学系を構成している。そして、この一定方向に沿って、電磁波入力端子76aとしてのループアンテナのループ面が位置するようにし、高周波伝送線路70aの他端からテラヘルツ帯の電磁波が入射できるようにしている。但し、電磁波入力端子76aは、ループアンテナに限定される必要はなく、パラボラアンテナやホーンアンテナ等他の手段でも構わない。そして、高周波伝送線路70aを伝搬し、電磁波照射端子74aから被治療対象2に対し出射される電磁波の周波数や強度は、図4に示した腹腔鏡制御装置18aにより制御される。
なお、図11に示した光導波路58として、他にテルル化亜鉛(ZnTe)やニオブ酸リチウム(LiNbO)等の材料が用いられても良い。又、第1ポンプ光51及び第2ポンプ光52は、図10に例示した以外の、単一モードのレーザダイオード、分布帰還(DFB)型半導体レーザ、共振器とグレーディングを備えた可変波長半導体レーザを用いた光源から発振されても良い。
図4に示す電磁波発生装置35の他の例としては、マグネトロン、進行波管、クライストロン、カルシノトロン等の電子管、HOレーザ、OOレーザ、HCNレーザ、DCNレーザ等の気体レーザ等のミリ波帯から遠赤外領域における各種の電磁波発生装置でも良い。更に、電子管、気体レーザ等に比べて、小型、軽量、低電圧、低消費電力等の点で優れた機能を有するテラヘルツ帯の固体発振素子も使用可能である。但し、固体発振素子を用いた共振器は、周波数が高くなると出力が低下し、雑音特性が大きくなると共に周波数が不安定になる。雑音特性の増大及び周波数不安定化の問題を解決する固体発振器用共振器の条件は、(1)高いQ値を持っている、(2)同期発振、電力合成が可能な構造である、(3)共振器の大きさが波長に比べて大きいこと、等が挙げられる。この様なテラヘルツ帯の電磁波発生装置35として、準光学的共振器を用いた発振器が使用可能である。例えば、凹面鏡と回折格子を用いた準光学的なファブリペロ共振器を用いた発振器でガンダイオード、タンネット、理想型SIT等のテラヘルツ帯発信素子による同期発振、電力合成を行っても良い。電磁波発生手段13にスピン・フリップ・ラマンレーザなどの波長可変な電磁波発生装置35を用いれば、周波数調整装置34は省略可能である。更に複数の周波帯に対応してそれぞれの電磁波発生装置35を用意し、最終的に電磁波発生手段13がカバーする周波数領域の帯域を拡大しても良い。又、既に述べたように、被治療対象の固有振動は特定の被治療対象のそれぞれに複数存在するので、それぞれの固有振動に応じて複数の電磁波発生装置35を用意し、同時に複数の周波数の電磁波を照射可能にしても良い。複数の電磁波発生装置35に対応して、複数の周波数調整装置34が用意される。 図4に示す透過電磁波処理手段14は、モニタ用腹腔鏡プローブ7bの先端に設けられたテラヘルツ帯電磁波検出器からの出力信号を処理し、被治療対象を透過した電磁波Φの吸収スペクトルを解析する回路である。例えば、テラヘルツ帯電磁波検出器の出力を増幅する低雑音増幅器41,低雑音増幅器41の出力をディジタル信号に変換するA−D変換器42,このディジタル信号を用いて吸収スペクトルを解析する吸収スペクトル解析部43とを備える。モニタ用腹腔鏡プローブ7bの先端に受信アンテナのみが備えられ、テラヘルツ帯電磁波検出器を有しないときは、透過電磁波処理手段14の初段にテラヘルツ帯電磁波検出器を備え、このテラヘルツ帯電磁波検出器の出力を低雑音増幅器41で増幅するようにすれば良い。
図4に示す治療条件制御装置1aの分子振動データ記憶装置15には、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)及びU(ウラシル)の5つの塩基分子、これを含むヌクレオチド、ヌクレオチドの組み合わせからなるコドン、コドンの結合であるDNA、RNA、DNAがヒストンと呼ばれる蛋白質を規則的に巻き付けたヌクレオソーム、ヌクレオソームからなる螺旋状ヌクレオソーム、螺旋状ヌクレオソームからなる染色質、染色質が凝集した染色体、蛋白質等の実験的に前もって測定された分子振動のデータが記憶されている。更に、癌細胞の無限に分裂する細胞の原因となるテロメラーゼ、癌細胞の浸潤や転移の形成に有利に働くものと考えられるプラスミノーゲンアクチベーターやコラゲナーゼ等のプロテアーゼの分子振動のデータが記憶されている。更に、癌細胞に固有な還元グルコース分子振動のデータ等、実験的に得られた被治療対象に固有な各種の分子振動のデータも記憶している。分子振動データ記憶装置15には、静的なデータだけでなく、時系列で変化する動的なデータも記憶される。例えば、癌治療であれば、治療を行う前に、予め、同種の癌で、進行状態の異なる細胞を複数用意し、それぞれを1mm程度の厚さに輪切りにした試料を用意して、その試料を透過する電磁波の吸収特性を測定し、その癌細胞に固有振動の周波数を測定しておけば良い。図9のT3,T2,T1は、この様に予め実験的に測定された、胃癌の癌細胞が癌の進行に伴い、吸収ピークの変化を示すものである。胃癌の癌細胞は、室温で1.37THzに吸収ピークAを生ずる還元グルコースを多量に含み、正常組織の細胞は室温で1.5THzにピークBを生ずる通常のグルコースを多く含む。このため、図9は、癌の進行とともにピークAの強度がT3→T2→T1へと順次増大し、ピークBが順次減少する様子を示す(図9のデータは、癌の進行の程度を知ることができ、人間ドック等の検診にも適用できる。)更に、時系列的なデータ以外に、被治療対象となる細胞の温度変化に伴う分子振動の周波数の変化のデータも予め、実験的に測定し、これをデータベースとして分子振動データ記憶装置15に格納する。癌細胞について例示的に説明したが、分子振動データ記憶装置15には、微原菌等の微生物の塩基分子、ヌクレオチド、コドン、DNA分子振動のデータを記憶しても良い。細胞の蛋白質を構成するアミノ酸は20種類あるがいずれもテラヘルツ帯に固有の振動吸収ピークを有しているのでこれらの分子振動のデータを記憶しても良い。更に、これらの要素の個別振動スペクトルだけでなく細菌や癌細胞自体の全体的な振動も一個の巨大分子としての固有のスペクトルを生ずるので、これを分子振動のデータとしてを分子振動データ記憶装置15に記憶しても良い。
固有振動の周波数は、図9に示すような電磁波の透過特性の測定の他、反射率測定器等により被治療対象に照射する電磁波の定在波比(VSWR)を測定して、分子振動データ記憶装置15に格納しても良い。或いは、被治療対象にパルス波を照射し、その透過波若しくは反射波の周波数応答測定により決定して、分子振動データ記憶装置15に格納しても良い。更に、被治療対象が微生物等のように動作を伴う場合は、微生物等に電磁波Φを照射し、微生物等の動作や状態の変化をライトガイド72を介して、顕微鏡等によりその場観察(インシツ・モニタ)して固有振動数を特定して、分子振動データ記憶装置15に格納しても良い。本発明者の知見によれば、これらのデータの多くは0.01THz〜200THzの範囲に存在する。
図4に示す治療条件制御装置1aのCPU12は、分子振動解析部21,治療周波数決定部22,治療効果決定部23を備える。例えば、遺伝子治療であれば、分子振動解析部21は、分子振動データ記憶装置15から塩基分子、ヌクレオチド、コドン等の分子振動のデータを読み込み、これを用いて、遺伝子組み替えに必要なDNAの切断箇所のコドンの分子振動を、分子振動理論を用いて計算するソフトウェアプログラムである。分子振動解析部21が計算した各種の分子振動のデータもデータベースとして分子振動データ記憶装置15に格納される。分子振動解析部21は、被治療対象となる細胞の温度変化に伴う分子振動の周波数の変化をも計算し、これをデータベースとして分子振動データ記憶装置15に格納する。例えば、細胞の温度変化に伴う分子振動の周波数の変化のデータが飛び飛びのポイントで実験的に得られている場合は、これを内挿した連続的なデータとして得て、これをデータベースとして分子振動データ記憶装置15に格納する。
治療周波数決定部22は、分子振動解析部21が計算した分子振動のデータ、或いは,分子振動データ記憶装置15から読み出したテロメラーゼ、プラスミノーゲンアクチベーターやコラゲナーゼ等のプロテアーゼ、癌細胞に固有な還元グルコース等各種の分子の分子振動のデータから、治療条件として用いる周波数を決定し、この決定結果により、電磁波発生手段13の周波数調整装置34を制御するソフトウェアプログラムである。
治療効果決定部23は、透過電磁波処理手段14から被治療対象を透過した電磁波Φの吸収スペクトルを得て治療効果を確認するソフトウェアプログラムである。例えば、図9に示す胃癌の治療の場合であれば、照射用腹腔鏡プローブ7aから出射した電磁波の照射とともにピークAの強度がT1→T2→T3の時間の経過と共に、順次減少することがモニタ用腹腔鏡プローブ7bを介して検出され、治療の効果を確認できる。この際、吸収ピークAの1.37THzの電磁波(治療用電磁波)と同時に、参照電磁波として吸収ピークBの1.5THzの電磁波も同時に照射用腹腔鏡プローブ7aから照射し、モニタ用腹腔鏡プローブ7bの先端で、1.37THzの治療用電磁波と1.5THzの参照電磁波の両方を検出するようにすれば、ピークBの1.5THzの参照電磁波強度が、T1→T2→T3の時間の経過と共に、順次増大することがモニタ用腹腔鏡プローブ7bを介して確認できる。或いは、1.37THzの治療用電磁波と1.5THzの参照電磁波を差動増幅するように検出しても良い。なお、図9から分かるように、還元グルコースは室温で1.37THz以外に1.95THzに強い吸収ピークを持っている。更に、図示を省略しているが、還元グルコースは2.46THz、3.0THz、4.17THz、5.13THzにも強い吸収ピークを持つ。一方グルコースは図9に示した1.5THz以外に、2.17THz、2.75THz、3.0THz、3.4THz、3.8THz、4.6THzに強い吸収ピークを持っている。これらの吸収ピークのデータは、本発明者が、テラヘルツ帯の電磁波発生手段と電磁波測定手段を用いて初めて得た知見であるが、胃癌の治療であれば、1.95THz、2.46THz、3.0THz、4.17THz、5.13THzのいずれか若しくはこれらの複数の周波数の組み合わせを治療用電磁波とし、2.17THz、2.75THz、3.0THz、3.4THz、3.8THz、4.6THzのいずれか若しくはこれらの複数の周波数の組み合わせを参照電磁波として使用することが可能である。
更に、治療効果決定部23は、分子振動データ記憶装置15に格納されたデータと、透過電磁波処理手段14からのデータを用いて、癌細胞だけでなく特定ウィルス、特定バクテリア等の微原菌のDNAピークの強度変化を測定し、細胞への感染を検知することができる。
細胞の蛋白質を構成するアミノ酸は20種類あるがいずれもテラヘルツ帯に固有の振動吸収ピークを有している。モニタ用腹腔鏡プローブ7bが検出するこれらの要素の個別振動スペクトルだけでなく細菌や癌細胞自体の全体的な振動も一個の巨大分子としての固有のスペクトルも、治療効果の確認や検診の判断資料になるのである。
図4に示す治療条件制御装置1aにおいて、入力装置11はキーボード、マウス、ライトペン又はフレキシブルディスク装置などで構成される。入力装置11より標的分子操作実行者は、入出力データを指定したり、病気の種類、部位や患者の体力的な状態等種々のデータを設定できる。更に、入力装置11より出力データの形態等の解析パラメータを設定することも可能で、又、演算の実行や中止等の指示の入力も可能である。又出力装置17及び表示装置16は、それぞれプリンタ装置及びディスプレイ装置等により構成されている。表示装置16は入出力データや分子振動解析結果や分子振動解析パラメータ等の表示の他、照射用腹腔鏡プローブ7aのCCDカメラ71で撮像された被治療対象(臓器)の映像等を、腹腔鏡制御装置18aのモニタ制御部86に制御されて表示する。モニタ用腹腔鏡プローブ7bの先端部にボロメータアレイ等のテラヘルツ帯イメージセンサを備える場合は、テラヘルツ帯イメージセンサで撮像された被治療対象(臓器)の透過像を表示装置16に表示しても良い。
次に、本発明の第1の実施の形態に係る標的分子操作装置を用いて治療を、腹腔鏡下手術を例に、その手順を図4〜図11を用いて説明する。
(イ)先ず、患者の体内に存在する被治療対象の場所を特定する。具体的には、図4に示すように、被治療対象にトラカール等(図示せず)を穿刺して照射用腹腔鏡プローブ7aを挿入する。この場合、生体の皮膚に5〜20mmの小さい切開を3〜4ヶ所作り、切開部分から専用の専用の細長い鉗子や鋏などの手術機器と細管(腹腔鏡)を入れる。なお、図示を省略した他の鉗子等を用いて、炭酸ガス(CO2)を腹腔内に導入、加圧し、図4に示すように腹腔内を膨張させ、手術(操作)が容易になるようにする。炭酸ガス(CO2)で加圧することにより、腹腔内を表示装置16の画面上に映し出すことができる。即ち、光源82が生成した光を図5に示すライトガイド72を介して照射用腹腔鏡プローブ7aの先端から照射し、照射用腹腔鏡プローブ7aの先端付近の映像を取得する。映像はCCDカメラ71により取得され、図4に示す映像処理部81により画像解析された後、表示装置16に表示される。なお、表示装置16に表示された映像は、被治療対象の識別がし易いように特定の色彩のみを強調するような加工が施されるのが好ましい。例えば、特定の色彩をより明瞭に描出するIHB色彩強調処理、粘膜行動態画像処理等が行われるのが好適である。或いは、レーザ顕微鏡のように特定の色のレーザ光を半導体レーザから照射することにより、被治療対象を特定し易くしても良い。
(ロ)次に、表示装置16の映像を観察しながら被治療対象の発生箇所を確認し、図11に示すように、照射用腹腔鏡プローブ7aの先端を被治療対象の表面に近づけ、モニタ用腹腔鏡プローブ7bの先端を被治療対象の裏面に近づける。即ち、照射用腹腔鏡プローブ7aの先端とモニタ用腹腔鏡プローブ7bの先端とで被治療対象を挟み込む。或いは、モニタ用腹腔鏡プローブ7bの先端を注射針のように臓器の内部に差し込んで、照射用腹腔鏡プローブ7aの先端とモニタ用腹腔鏡プローブ7bの先端とで被治療対象を挟み込む。そして、照射用腹腔鏡プローブ7aの温度検出端子73及び電磁波照射端子74aを被治療対象に接近させる。被治療対象の温度情報は温度検出端子73により検出され、図4に示す温度信号処理部83に解析処理された後、表示装置16に表示される。次に、分子振動データ記憶装置15に蓄積された実験的に求められた分子振動のデータをもとに、或いは分子振動解析部21が計算した分子振動のデータをもとに、治療周波数決定部22が、被治療対象の温度に対応する周波数を決定する。本発明者の知見によれば、これらの周波数は、0.01THz〜200THz、好ましくは0.1THz〜10THz程度の範囲の値である。
(ハ)次に、図11に示すように、照射用腹腔鏡プローブ7aの先端に設けられた電磁波照射端子74aから治療周波数決定部22が決定した周波数の電磁波Φを照射し、被治療対象の分子構造に共鳴振動を生じさせる。この際、マイクロアクチュエータ88により、可変スタブ87が駆動され、高周波伝送線路の終端のインピーダンスが調整され、被治療対象に電磁波Φのパワーが照射される。被治療対象を構成する細胞は細胞膜に覆われ、中に細胞質と細胞質で囲まれた核を有する。核や細胞質に含まれる小胞体、ゴルジ装置(体)、リソソーム、ミトコンドリア、ペリオキソーム等のオルガネラはそれぞれ分子構造を有し、細胞膜やDNAも分子構造を有している。このため、被治療対象となる癌細胞に固有の分子振動の周波数の電磁波を照射すれば、その分子構造のみを標的として選択的に破壊若しくは変態させることが可能である。例えば、癌細胞のテロメラーゼの共振周波数の電磁波を照射し、テロメラーゼの分子構造を破壊すれば、DNA末端部分のテロメが細胞分裂の度に短縮し、癌細胞が増殖できないので、癌の発現が止まる。或いは、プラスミノーゲンアクチベーターやコラゲナーゼ等のプロテアーゼの共振周波数の電磁波を照射し、プロテアーゼの分子構造を破壊すれば、癌細胞の浸潤や転移の形成が抑制される。被治療対象にヘリコバクターピロリ等の細菌類が寄生して発病している場合は、細菌類固有の分子振動の周波数の電磁波Φを照射することにより、細菌類は、電磁波Φのエネルギーにより励振され、共鳴振動状態になるため、細胞膜や鞭毛等が大きく振動する。共鳴振動により、大きく振動した細菌類は、その細胞を構成する分子構造のみを標的として破壊若しくは変態されるため、最終的には死滅する。
(ニ)照射用腹腔鏡プローブ7aの先端とモニタ用腹腔鏡プローブ7bの先端とで被治療対象を挟み込んでいるので、照射用腹腔鏡プローブ7aの先端から出射した電磁波は、被治療対象を透過後、モニタ用腹腔鏡プローブ7bの先端により検出される。例えば、図9に示す胃癌の治療の場合であれば、電磁波の照射とともにピークAの強度がT1→T2→T3の時間の経過と共に、順次減少することを検出して治療の効果を確認できる。この際、吸収ピークAの1.37THzの電磁波(治療用電磁波)と同時に、参照電磁波として吸収ピークBの1.5THzの電磁波も同時に照射し、モニタ用腹腔鏡プローブ7bの先端で、1.37THzの治療用電磁波と1.5THzの参照電磁波の両方を検出し、透過電磁波処理手段14を介して吸収スペクトルの変化として治療効果を確認するするようにすれば、ピークBの1.5THzの参照電磁波強度が、T1→T2→T3の時間の経過と共に、順次増大することが確認できる。或いは、1.37THzの治療用電磁波と1.5THzの参照電磁波を差動増幅するように検出しても良い。なお、これ以外の複数の周波数の組み合わせを用い、透過電磁波処理手段14を介して吸収スペクトルの変化として治療効果を確認するするようにすれば、より正確な治療効果が確認できる。複数の電磁波を照射する場合は、電磁波発生手段13からそれぞれの固有振動数に対応させ、複数の互いに異なる周波数の電磁波を同時に電磁波照射端子74aに供給し、被治療対象に照射するようにしても良いが、周波数多重分割通信と同様に、パルスにして時間分割し、電磁波照射端子74aから一定の順序で繰り返し照射しても良い。なお、電磁波Φが照射された被治療対象は、電磁波が照射されることで運動エネルギーが増大するので、被治療対象自体の温度が上昇する。したがって、予め測定され、分子振動データ記憶装置15に格納された被治療対象の固有振動数の変化の温度依存性のデータ、若しくはこれをもとに分子振動解析部21が計算した分子振動の温度変化のデータに基づいて、治療周波数決定部22が照射する電磁波Φの周波数を決定し、周波数調整装置34により調整する。又、温度変化に伴う周波数の変化と共に高周波伝送線路70の終端インピーダンスが変化するので、マイクロアクチュエータ88で可変スタブ87を駆動し、インピーダンス調整をするのが好ましい。電磁波Φの照射は、表示装置16で直接被治療対象の動きをその場観察(インシツ・モニタ)しながら行うことも可能であるので、被治療対象の動きの変化を観察することにより被治療対象の共振状態を把握し、周波数調整装置34により照射する電磁波Φの周波数を適宜変化させることもできる。
本発明の第1の実施の形態に係る標的分子操作方法によれば、標的となる被治療対象の分子構造に共鳴振動を生じさせ、被治療対象の分子構造のみを選択的に破壊若しくは変態し、分子構造の異常に起因した病気を効果的に治療することができる。特に、DNA末端部分のテロメアを作って補うテロメラーゼを標的分子としてこれを分子的に選択破壊するので、テロメアがなくなり癌細胞は次第に生存できなくなるので、癌の発現が止まる。又、プラスミノーゲンアクチベーターやコラゲナーゼ等のプロテアーゼを標的分子としてこれを分子的に選択破壊するので、癌細胞は、癌細胞の浸潤や転移の形成を抑制できる。
既に述べたように、中波(MF)帯の電磁波を癌細胞に照射した場合は、細胞膜等の巨大分子が破壊され、癌細胞は壊死に陥る。壊死の場合は細胞の崩壊によって、流出した細胞内容物により周辺に白血球が集積して炎症反応が起こり、これらが更に癌悪疫質の原因にもなる問題がある。これに対して、本発明の第1の実施の形態に係る標的分子操作方法は、テラヘルツ帯の電磁波を癌細胞の標的分子(生物学的な標的分子)に照射するので、癌細胞はアポトーシスに誘導される。アポトーシスの場合は断片化した細胞がマクロファージなどに貪食されて処理されるため、炎症反応を伴わず、生体への侵襲がほとんどないので非常に効果的である。
又、患者の体内に寄生する微生物(細菌)の分子構造のみを標的とし、これを選択的に破壊し、微生物(細菌)が原因となる感染症の進行を効果的に阻止することができる。
外科手術には、15mm前後の傷をつけて外科医の手で直接癌を取ってくる開腹手術、内視鏡(胃カメラ)で癌を取ってくる内視鏡的手術、同様に腹部に孔をいくつか開けて癌を取ってくる腹腔鏡下手術等がある。上記において、腹腔鏡下手術について説明したが、第1の実施の形態に係る標的分子操作方法は、腹腔鏡下手術に限定されるものではなく、腹腔鏡下手術以外の種々の手術方法に適用可能である。肺癌の場合は、気管支鏡を図5及び図6に示すような構造にし、気管支鏡の先端から電磁波を標的となる被治療対象に照射すれば良い。更には、開腹手術と腹腔鏡下手術とを合わせ、腹部の傷は7mm位にし、腹腔鏡の補助の下で手術をする腹腔鏡補助下手術でも良い。なお、厳密には、頭蓋骨を広範囲に開窓する「開頭手術」、胸壁を切開し胸腔に達する方法により行われる「開胸手術」及び腹壁を切開し腹腔に達する方法により行われる「開腹手術」とは区別されるが、本明細書では総称的に「開腹手術」と呼ぶこととする。
第1の実施の形態に係る標的分子操作方法は、テラヘルツ帯の電磁波を用いる場合は、電磁波の浸透深さを考慮すると、リンパ節に転移がない、臓器の表層に癌細胞がある場合に好適である。例えば、早期の胃癌や大腸癌では、内視鏡による癌組織の切除が行われている。胃癌や大腸癌のポリープには隆起型と平坦型があり、隆起型ポリープは切除が容易であるが、平坦型ポリープの切除は困難で、穿孔事故も多い。しかし、平坦型ポリープは隆起型に比べ、癌化し易く、癌化した場合は短期間の内に下に浸潤し転移し易いので、平坦型こそ積極的に内視鏡切除すべき病変である。平坦な癌組織を選択的に摘出するためには、従来、癌組織の下の部分に生理食塩水などを注入し、粘膜をその下の粘膜下層から浮かせ、内視鏡の先端から輪の形をしたワイヤを出して浮き上がらせた癌組織を囲み、高周波電流で焼き切る方法や、浮き上がらせた癌組織の近くに開けた小さな孔からITナイフを差し込み、浮き上がらせた癌組織の周囲を切開する方法が用いられていた。第1の実施の形態に係る標的分子操作方法によれば、癌組織の下の部分に生理食塩水などを注入しなくても、電磁波の波長を選択することにより、選択的に癌組織を破壊することが可能であり、穿孔事故等の不安もない。
又、進行癌の場合のように、臓器の一部を一括切除した場合も、切除されずに残った残余の部分の表面に電磁波を照射することにより、残余の部分に癌細胞が生じるのを防ぐことが可能である。
(第1の実施の形態の変形例)
本発明の第1の実施の形態の変形例に係る標的分子操作装置の腹腔鏡制御装置18bは、図4に示したハードウェア構成に加え、図13に示すように、薬液注入部75に接続された薬液供給部85とを有する。そして、図14及び図15に示すように、照射用腹腔鏡プローブ7aは、CCDカメラ71、ライトガイド72、温度検出端子73、及び電磁波照射端子74aに並行して薬液注入部75を有する点が図5及び図6に示す照射用腹腔鏡プローブ7aとは異なる。更に、第1の実施の形態の変形例に係る照射用腹腔鏡プローブ7aは、照射用腹腔鏡プローブ7aの内部の先端側にモノリシック集積回路78とを配置している点も図4〜図6に示す標的分子操作装置の照射用腹腔鏡プローブ7aと異なる点である。モノリシック集積回路78は、図13に示した治療条件制御装置1bのモノリシック集積回路制御部13bに接続され、これにより制御される。モノリシック集積回路78の出力は、照射用腹腔鏡プローブ7aの先端の電磁波照射端子74aに接続されている。
図14に示すモノリシック集積回路78は、テラヘルツ帯の電磁波発生手段として機能する。モノリシック集積回路78には、電源配線79を介して直流バイアスや必要な信号等が供給される。このモノリシック集積回路78は、被治療対象の分子の固有振動数に等しい周波数の電磁波を発生する比較的ワイドバンドの増幅回路と周波数チューナーを備えるのが好適である。モノリシック集積回路78には、理想型SIT等のテラヘルツ帯増幅発振素子(能動素子)を使用することができる。薬液注入部75は、薬液供給部85から供給される薬品を被治療対象の組織に注入する。注入する薬品としては、癌治療であれば、シスプラチン、イリノテカン、タキソテール、タキソール等の種々の抗癌剤の他、イレッサ(一般名ゲフィチニブ)、グリペック、ハーセプチン等の分子標的治療薬を用いることができる。
例えば、ゲフィチニブは、血管新生因子である上皮成長因子受容体(EGFR)を抑制する薬剤で、通常は、1日1錠程度の内服をするが、薬液注入部75を介して、被治療対象の組織に注入しても良い。ゲフィチニブは、癌の増殖に伴う血管の新生をブロックし、癌の増殖・転移を防ごうという薬剤で、劇的に効く患者がいる半面、強い副作用を起こし、多数の死者を出している。EGFRの固有振動数と等しい周波数の電磁波を照射して、EGFRの活性を阻害、若しくはEGFRを変態させながら、ゲフィチニブを投与することにより、副作用を抑制しつつ、より効果的な治療が可能になる。癌の増殖・転移を防ぐためには、薬液注入部75を介しての注入をせず、ゲフィチニブを通常通り内服投与して、EGFRの固有振動数と等しい周波数の電磁波を照射しても良く、この場合、EGFRの活性を直接電磁波の照射により阻害することができるので、内服投与量を減らし、副作用も抑制できる。臨床上、ゲフィチニブが効く患者は、EGFRで突然変異を起こしている場合が多いことが分かっているが、EGFRの共振周波数の電磁波を照射することにより、EGFRでの突然変異を誘起させることが可能である。
ミリ波(EHF)帯以上の高周波の電磁波、特にテラヘルツ帯の電磁波を用いることにより、照射用腹腔鏡プローブ7a及びモニタ用腹腔鏡プローブ7bの外形を、注射針の外径と同程度若しくは、それより小さくできるので、患者の腹部等に照射用腹腔鏡プローブ7a及びモニタ用腹腔鏡プローブ7bを差し込んだ状態を数日以上維持して、長期の治療をしても、患者への負担を少なくできる。このため、内服投与薬剤の効果を確認しながらの治療も可能になる。
ゲフィチニブは、当初、正常細胞には影響がないといわれていたが、現実には、皮膚や消化管にも、そのEGFRが存在するために副作用が出る。例えば、癌細胞に含まれる還元グルコースの共振周波数である、1.37THz、1.95THz、2.46THz、3.0THz、4.17THz、5.13THz等のテラヘルツ帯の電磁波を照射し、癌細胞のみを他の正常細胞より高温状態若しくは活性状態に局所的に励起して、癌細胞のみにゲフィチニブの薬効があるようにすれば、副作用を抑制できる。標的とする細胞のみを、他の正常細胞より高温状態若しくは活性状態に局所的に励起できる利点は、ゲフィチニブの薬効のみに限らず、他の種々の治療にも同様に有効である。
又、患者の体内に寄生する微生物(細菌)を標的とする場合は、目的とする細胞の種類に応じて選択される。例えば、バクテリア等の被治療対象を蛍光させ、被治療対象の位置を特定し易くするように、光線力学的診断(PDD)又は光線力学的治療(PDT)に使用されるポルフィマーナトリウム等の光感受性物質が好適である。
図15ではCCDカメラ71、ライトガイド72、温度検出端子73及び電磁波照射端子74a、薬液注入部75が一列に並んでいるが、一列に並ぶ必要はなく、他の配置が採用できることは勿論である。
本発明の第1の実施の形態の変形例に係る標的分子操作装置によれば、目的とする被治療対象の治療効果を有する薬品や、微生物の殺菌効果を有する薬品を注入しながら、電磁波を照射するので、電磁波の照射による被治療対象の破壊、変態、反応の抑制若しくは促進等の分子操作をより有効に行うことができる。更に、第1の実施の形態の変形例に係る標的分子操作装置によれば、被治療対象に光感受性物質等の薬品を注入するので、被治療対象の特定をし易くすることもできる。
なお、標的とする細胞のみを、他の正常細胞より高温状態若しくは活性状態にする特徴は、薬液注入部75から薬液を被治療対象の組織に注入しない、内服治療にも有効であるのは、上述した通りである。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る標的分子操作装置は、図16に示すように、アンテナ保持部60と、アンテナ保持部60の壁面に配置された複数のアンテナ(パッチアンテナ)61a,61b,61c,・・・・・と、生物学的な標的分子(病原生物学的な標的分子)の固有振動数に等しい周波数の電磁波Φa,Φb,Φc,・・・・・をアンテナに供給する電磁波発生手段13とを備える分子標的治療装置である。アンテナ保持部60と複数のパッチアンテナ61a,61b,61c,・・・・・は、アンテナアレイ6を構成している。アンテナ保持部60は筒形形状を有しており、その筒の内部に生体が収納される。図17に示すように、アンテナ保持部60の内壁面には複数個のパッチアンテナ61a,61b,61c,・・・・・がマトリクス状に配置されている。この複数個のパッチアンテナ61a,61b,61c,・・・・・は、図18に示すように、それぞれ高周波伝送線路62に接続され、図16に示す周波数調整装置34及び電磁波発生装置35に接続されている。電磁波発生装置35から発生した電磁波は、図17に示すように、パッチアンテナ61a,61b,61c,・・・・・61tからアンテナアレイ6の中心へ向かって電磁波Φa,Φb,Φc,・・・・・Φtとして出射される。高周波伝送線路62としては、同軸ケーブル、ストリップ線路、コプラナ線路等が用いられる。他は、図4に示す構成と同様であるので、重複した記載を省略する。なお、図16において、アンテナ保持部60は、人間の体の全体が入る大型のアンテナ保持部60を示したが、腕部又は脚部のみが入る小型のものでも良い。更に指1本が入る程度の大きさであっても良い。
本発明の第2の実施の形態に係る標的分子操作装置を用いて治療を行うには、図16において先ず、被治療対象の皮膚等に発生した壊死又は腫れ等の被治療部位を特定し、被治療部位に存在する生物学的な標的分子(病原生物学的な標的分子)の固有振動数を測定する。固有振動数の測定は第1の実施の形態で示した測定方法と同様に、直接的な吸収スペクトルの測定やラマン分光で求めても良く、反射率測定器等を利用し生物学的な標的分子のVSWRを測定すること等により可能である。
次に、図16に示すように、被治療対象をベッド63に載せ、アンテナ保持部60の内部に被治療対象を挿入する。次に、電磁波発生装置35が被治療対象に存在する生物学的な標的分子の固有振動数に近い周波数帯の電磁波、例えば0.01THz〜200THz、好ましくは0.1THz〜10THz程度の電磁波を発生し、周波数調整装置34がその周波数を生物学的な標的分子の固有振動数に等しくなるように調整する。次に、アンテナアレイ6の内壁に設けられたパッチアンテナ61a,61b,61c,・・・・・61tが、電磁波Φa,Φb,Φc,・・・・・Φtを被治療対象に照射する。被治療対象に存在する生物学的な標的分子は、共振周波数に等しい電磁波のエネルギーが与えられるので励振し、細胞膜、細胞質内の核やミトコンドリア等種々の小器官、或いは核内の染色体、染色質、DNA、更にはDNAを構成するコドンや塩基分子等が破壊若しくは変態する、或いは細胞分裂が停止する。一方、被治療対象の正常な細胞は、生物学的な標的分子とは異なる固有振動数を有するので励起状態にならず、細胞膜等の破壊や変態、細胞分裂の停止が生じない。
本発明の第2の実施の形態に係る標的分子操作装置によれば、正常な細胞の固有振動数とは異なり、且つ生物学的な標的分子の固有振動数に等しい周波数の電磁波Φa,Φb,Φc,・・・・・Φtが、アンテナ保持部60の内壁面にマトリクス状に配置されたパッチアンテナ61a,61b,61c,・・・・・61tから被治療対象にそれぞれ照射される。このため、正常な細胞を破壊することなく、生物学的な標的分子を共鳴振動させ、特定の生物学的な標的分子のみを選択的に励振させ、破壊することができる。
図16に示す標的分子操作装置においては、例えば被治療対象をアンテナ保持部60の内部に挿入する前に、治療の対象でない部分を予めシールドしておくのが好ましい。又、治療部分の被治療対象表面からの深度により、パワーレベルを調節するのが好ましい。或いは各パッチアンテナ61a,61b,61c,・・・・・61tのそれぞれにスイッチを設け、特定のパッチアンテナ61a,61b,61c,・・・・・61tからのみ選択的に電磁波が出射されるようにしても良い。
なお、図示を省略しているが、第1の実施の形態に係る標的分子操作装置と同様に、第2の実施の形態に係る標的分子操作装置においても、標的分子を透過した電磁波、若しくは標的分子から反射した電磁波を測定して、電磁波の照射による標的分子の変化状態を検出する操作結果測定手段を備えることが好ましい。この場合、操作結果測定手段としては、電磁波を検出する電磁波検出端子を先端部に有する外径0.1mm〜0.4mm程度の注射針より細い程度のモニタ用細管7bを肉腫の下若しくは皮下に注射して測定すれば良い。
一般に生体の組織に電磁波を照射する場合は、電磁波のエネルギーが組織に吸収されるので、電磁波が組織中を伝搬すると同時に次第に減衰する現象を考慮しなくてはならない。生体の組織を誘電体とみなすと、組織中を電磁波が伝搬する際の減衰定数γは次式で表される。
γ=jω(εμ)1/2{1-j(σ/ωε)}1/2 ・・・・・(1)
(1)式において、σは組織の導電率、εは誘電率、μは透磁率、ωは角周波数である。p=σ/ωεの値は、生体組織で0.1<p<10程度であるので、(1)式の実部をαとすると、次式が得られる。
α=ω[(με/2){(1+p2)1/2-1}]1/2 ・・・・・(2)
(2)式において、周波数fが高い場合を考慮すると、
α=ω{(με/2)p}1/2 ・・・・・(3)
となる。組織への浸透の程度は、電力密度がe−2に減衰する距離δを用いて表される。δはαの逆数で与えられ、「表皮の深さ」或いは「浸透の深さ」と呼ばれる。(3)式において、δ=1/αであるので、
δ=(1/πfμσ)1/2 ・・・・・(4)
という式が近似的に得られる。生体は水の誘電率と同程度であり、生体を構成する分子のほとんどが非磁性体と考えられるので、εr≒80[F/m],μr≒1[H/m]程度と推察できる。真空中での誘電率及び透磁率は、ε0≒8.8542×10-12[F/m],μ0≒4π×10-7[H/m]である。図16に示す標的分子操作装置において、(5)式を利用すると、周波数が3THzの電磁波を生体に照射した場合はδ=70μm程度、周波数1.2THzの電磁波を照射した場合では、δ=115μm程度となる。なお、ガンジー(Gandhi)らの23GHzにおけるウサギの皮膚のデータ及びデバイ緩和に基づく複素誘電率の式から算出したデータによると、周波数が300GHzの電磁波を照射した場合は、浸透深さδ=231μm程度となる。
被治療対象が、導電性を有しない誘電体と見なせる場合は、誘電体損失を検討する必要がある。誘電体損失は、複素誘電率εを用いて示される。通常の誘電率は実数であるが、複素誘電率を用いる場合は、
ε=ε'−jε" ・・・・・(5)
となり、実数部が通常の誘電率、虚数部が損失を示す項になる。これを用いると、遠方界領域(フラウンホーファー領域)において、物質中を伝搬する平面波の減衰定数αは
α≒(π/λ)・(ε"/(ε')1/2) ・・・・・(6)
となる。ε'及びε"は、周波数の関数となっており一定値ではないので、広い周波数範囲にわたって減衰定数αを数式で表現することは一般には難しい。しかし、それらの値がほぼ一定と見なせる範囲では、使用する周波数の増大(波長の減少)と共に減衰定数αは増大するので、(4)式で示した浸透の深さδiと類似な扱いができるが、無理がある。(6)式から、一般に周波数の増大と共に損失が大きくなるので、損失が大きい場合には、大電力の発信器が必要になる。
以上のように、マイクロ波以上の高周波の電磁波を照射した場合は、電磁波の浸透の深さが体表付近しか到達しないことが分かる。図16に示す標的分子操作装置においては、表皮近傍に被治療対象がある場合の治療が好ましい。
本発明の実施の形態に係る標的分子操作装置においては、1THz以下の周波数の電磁波を使用することも可能で、例えば細胞内の染色体等に対して数十kHz程度の低周波の電磁波を照射して染色体を振動させ、細胞分裂を抑制することも可能である。
なお、生物学的な標的分子の固有振動数は、特定の生物学的な標的分子に対して複数個存在することを考慮すれば、第1の実施の形態と同様に、電磁波発生手段13が複数の電磁波発生装置35を備え、互いに異なる周波数を同時に発振するようにしても良い。
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る標的分子操作装置は、図19に示すように、被治療対象となる生体の血液を採血する採血ライン93及び血液を生体に返血する返血ライン94を有する血液洗浄装置9と、採血ライン93の血液中に存在する生物学的な標的分子の固有振動数に等しい周波数の電磁波を照射する電磁波照射部(アンテナアレイ)6と電磁波を電磁波照射部(アンテナアレイ)6に供給する電磁波発生手段13とを備える分子標的治療装置である。電磁波発生手段13は、図4に示す構成と同様であるので、重複した記載を省略する。
血液洗浄装置9は、図19に示すように、採血ライン93、採血ライン93の下流側に配置されたアンテナアレイ6、アンテナアレイ6の下流側に配置された返血ライン94を有する。採血ライン93は、採血口91、採血口91の下流側に配置された血流ポンプ95、血流ポンプ95の更に下流側に配置されたチャンバー96を有する。返血ライン94は、アンテナアレイ6の下流側に配置されたチャンバー97、チャンバー97の下流側に配置された返血口92を有する。採血ライン93及び返血ライン94は、シリコン製のチューブが用いられている。図20に示すように、採血ライン93及び返血ライン94のチューブの外周を取り囲むように電磁波照射部(アンテナアレイ)6が配置されている。アンテナアレイ6は、前述した図17及び図18と同様な構成で内径や長さを小さくしたものと等価であり、内壁面に設けられたマトリクス状のパッチアンテナ(図示せず)が採血ライン93及び返血ライン94のチューブの外周のほぼ全面に配置されている。アンテナアレイ6は、図19に示すように、高周波伝送線路62を介して周波数調整装置34及び電磁波発生装置35に接続されている。既に述べたように、3THzの電磁波の血液中の浸透深さδ=70μm程度であるので、この場合のチューブの外径は140μm以下が好ましいことになる。一定の血液の流量を流すためには、外径140μm以下のチューブを複数本束にした構造で、それぞれのチューブに電磁波照射部6から電磁波が照射される。或いは、内径が2δ程度の孔が多数開いたハニカム構造のチューブにしてそれぞれの孔の内壁にパッチアンテナを設けても良い。あまりチューブの内径が狭くなると現実的ではなくなるので、2δよりも大きな内径のチューブを蛇行させ、チューブの中央付近を通過する血液がチューブの内壁に複数回衝突するようにしても良い。
図19及び図20では比較的長さの短いアンテナアレイ6を図示しているが、照射の効果を高めるためには、血液の流れの方向に沿って長いアンテナアレイ6を構成すれば良いことは勿論である。10THz以上の高周波では、遠赤外線としての性質が強くなるので、シリコンからなるマイクロミラーアレイや遠赤外用のシリンドリカルレンズで、血液の流れの方向に沿って長く照射すれば良い。
なお、図示を省略しているが、第1の実施の形態に係る標的分子操作装置と同様に、第3の実施の形態に係る標的分子操作装置においても、標的分子を透過した電磁波、若しくは標的分子から反射した電磁波を測定して、電磁波の照射による標的分子の変化状態を検出する操作結果測定手段を備えることが好ましい。この場合、操作結果測定手段としては、図19及び図20に示したアンテナアレイ6の下流側に、対向配置したループアンテナを設けて、測定するようにして、一方のループアンテナから出射した電磁波を他方のループアンテナで検出するようにしても良い。
次に、本発明の第3の実施の形態に係る標的分子操作装置を用いて治療を行う手順を図19を用いて説明する。
先ず、採血口91を被治療対象の動脈に穿刺し、返血口92を生体(被治療対象)の静脈に穿刺する。採血口91から被治療対象(生体)の血液が採血され、血流ポンプ95を介してチャンバー96へと流れる。チャンバー96で空気や異物が除去された血液は、アンテナアレイ6が配置された側へ流れる。次に、電磁波発生装置35が、血液に存在する生物学的な標的分子の固有振動数に等しい周波数の電磁波を発生し、周波数調整装置34及び高周波伝送線路62を介してアンテナアレイ6に電磁波を供給する。電磁波が供給されたアンテナアレイ6は、その電磁波を採血ライン93及び返血ライン94のチューブの外周から血液に向かって照射する。電磁波が照射された血液中の生物学的な標的分子は、運動エネルギーが与えられることにより共鳴振動を生じ、細胞膜、細胞質内の核やミトコンドリア等種々の小器官、或いは核内の染色体、染色質、DNA、更にはDNAを構成するコドンや塩基分子等が破壊若しくは変態、細胞分裂の停止等が生じる。一方、血液中の正常な細胞は、生物学的な標的分子と異なる固有振動数を有するので励振されず、細胞破壊が生じない。
なお、アンテナアレイ6から供給する電磁波の周波数は、予め被治療対象となる生体の血液を採血し、直接的な吸収スペクトルの測定やラマン分光等を用いて目的とする生物学的な標的分子の固有振動数を測定しておくことで決定可能である。
本発明の第3の実施の形態に係る標的分子操作装置によれば、血液中の正常な細胞を破壊することなく、血液中に存在する生物学的な標的分子を選択的に励振し、破壊することができる。なお、第1及び第2の実施の形態と同様に、電磁波発生手段13が複数の電磁波発生装置35を備え、互いに異なる周波数を同時に発振するようにしても良い。
(第4の実施の形態)
2本鎖のDNAを切断する制限酵素は、必須因子や切断様式により3種類に大別されるが、その内のII型酵素が遺伝子組み換えに多用される。多様な制限酵素の認識する塩基配列のパターンはそれぞれ異なっている。制限酵素はDNA中にあるそのパターンを認識し、その付近或いはその配列の内部で切断する。切断された切り口には2種類あり、その形状により平滑末端と粘着末端と呼ばれる。II型制限酵素によって認識される塩基配列のパターンの多くはパリンドローム(回文)になっており、5’端側から読んでも、その相補鎖の5’端から読んでも同じ配列になっている。例えば、EcoRIという制限酵素は5’−GAATTC−3’という塩基配列を認識し、始めのグアニン(G)とアデニン(A)との間に切れ目を入れる。又、HindIIIという制限酵素は5’−AAGCTT−3’という配列を認識し、最初の2つのAの間に切れ目を入れる。そして、DNAリガーゼという酵素を使えば、同じ形の末端を持つDNA同士を接続でき、遺伝子を組み替えることができる。しかし、現在の遺伝子組み替え技術は特定の塩基配列のパターンにおいてしか実現できず、その再現性も低い場合がある。
本発明の第4の実施の形態に係る標的分子操作装置は、図22に示すように、アクチュエータ基板101と図示を省略したカバーガラスとを備えたマイクロTASである。アクチュエータ基板101は、シリコン(Si)等の半導体基板が使用可能で、アクチュエータ基板101の表面には、生体から取り出したリンパ球等の細胞をリンガー液と共に注入し、一時収納する被処理生物分子注入槽111b、制限酵素をリンガー液と共に注入し、一時収納する制限酵素注入槽111c、新たに組み込みたい塩基配列(コドン)とリガーゼを、リンガー液と共に注入し、一時収納するリガーゼ注入槽111a、及び処理の終わった細胞とリンガー液を一時保存し、排出する排出槽114が形成されている。被処理生物分子注入槽111bと排出槽114との間には、幅1μm〜1mm、好ましくは幅数μm〜数百μm、深さ1μm〜数百μm、好ましくは深さ数μm〜数十μmの流路(マイクロ流路)116a〜116fが形成され、生体から分離・採取した細胞がリンガー液と共に、この流路(マイクロ流路)116a〜116fを流れる。「リンガー液」は、細胞を生体外で生きた状態に維持するために用いられる液体で、ナトリウム、カリウム、カルシウム、塩素のイオンを含む。被処理生物分子注入槽111bの近傍の流路116aには入口側マイクロバルブ112b及び入口側マイクロポンプ113bが配置されている。制限酵素注入槽111cには、マイクロ流路である制限酵素流路116bが接続されている。制限酵素注入槽111cの近傍の制限酵素流路116bには入口側マイクロバルブ112c及び入口側マイクロポンプ113cが配置されている。リガーゼ注入槽111aには、マイクロ流路であるリガーゼ流路116eが接続されている。リガーゼ注入槽111aの近傍のリガーゼ流路116eには入口側マイクロバルブ112a及び入口側マイクロポンプ113aが配置されている。排出槽114の手前の流路116fには出口側マイクロバルブ115が配置されている。
アクチュエータ基板101の材料としては、Si基板等の半導体基板、石英ガラス等のガラス基板、アルミナ(Al23)等のセラミック基板の他、アクリル等のプラスティック(高分子材料)からなる基板や金属基板等が採用可能である。フォトリソグラフィ技術による法微細加工の容易性やMEMS技術の適用性を考慮すると、半導体基板、ガラス基板、セラミック基板等が好ましい。但し、基板材料に応じて、フォトリソグラフィ技術以外のレーザ加工、電磁波加工、放電加工、プラズマ加工、ダイヤモンドドリル等による微細機械加工法も適用可能である。例えば、アクチュエータ基板101がSi基板の場合は、流路(マイクロ流路)116a〜116fは、水酸化カリウム(KOH)水溶液、エチレンジアミン水溶液、若しくは、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等によるSi基板の異方性エッチング等で形成できる。異方性エッチングによれば、(100)面のSi基板であれば、(100)面に約55°で交わる(111)面からなるV字型溝として流路(マイクロ流路)116a〜116fを形成できる。その他、反応性イオンエッチング(RIE)やイオンミリング等種々の方法で、垂直側壁を有するU字型の流路(マイクロ流路)116a〜116fを形成できる。
中間マイクロポンプ119bと中間マイクロバルブ118cとの間の流路116cが第1の標的分子選択操作部(塩基配列切断部)を、中間マイクロポンプ119eと中間マイクロバルブ118fとの間の流路116fが第2の標的分子選択操作部(塩基配列組み替え部)を構成している。第1標的分子選択操作部の両側には、第1の電磁波発生部55aと第1の電磁波検出部33aが、アクチュエータ基板101に埋め込まれて配置され、第2標的分子選択操作部の両側には、第2の電磁波発生部55bと第2の電磁波検出部33bが、アクチュエータ基板101に埋め込まれて配置されている。電磁波発生部55a、55bとしては、GaP等の半導体結晶が使用可能である。アクチュエータ基板101自身をこれらの半導体結晶で構成しても良い。電磁波検出部33a,33bとしてはSiボロメータ等が使用可能である。
図22に示すように、集合流路116aに、制限酵素が流れる制限酵素流路116bが合流している。即ち、集合流路116aの第1生物分子解析部107aが配置された領域の下流側には、中間マイクロバルブ118a及び中間マイクロポンプ119aが配置され、この中間マイクロポンプ119aの下流側に制限酵素流路116bが合流している。更に、集合流路116cの第1の電磁波発生部55aと第1の電磁波検出部33aが配置された領域の下流側において、更に、リガーゼが流れるリガーゼ流路116eが合流している。即ち、集合流路116cの第1の電磁波発生部55aと第1の電磁波検出部33aが配置された領域の下流側には、中間マイクロバルブ118c及び中間マイクロポンプ119cが配置され、この中間マイクロポンプ119cの下流側にリガーゼ流路116eが合流している。
細胞流路116aと制限酵素流路116bとの合流点近傍の集合流路116cには、第1攪拌槽117aが配置されている。第1攪拌槽117aは、例えばマイクロスクリューをマイクロアクチュエータで駆動するような構造が採用可能である。第1攪拌槽117aの下流側で、第1攪拌槽117aの近傍の集合流路116cには、中間マイクロバルブ118b及び中間マイクロポンプ119bが配置されている。更に、集合流路116cとリガーゼ流路116eとの合流点近傍の集合流路116dには、第2攪拌槽117bが配置されている。第2攪拌槽117bは、第1攪拌槽117aと同様な、マイクロスクリューをマイクロアクチュエータで駆動するような構造が採用可能である。第2攪拌槽117bの下流側の第2攪拌槽117bの近傍の集合流路116dには、中間マイクロバルブ118e及び中間マイクロポンプ119eが配置されている。
図22に示すように、細胞流路116aの入口側マイクロポンプ113bの下流側に、癌細胞やウィルスや細菌に侵されている細胞を見分ける第1生物分子解析部107aが設けられている。第1生物分子解析部107aの下流側には中間マイクロバルブ118aが配置されている。又、第1の標的分子選択操作部の下流側には、中間マイクロバルブ118c及び中間マイクロポンプ119cが配置され、更にその下流側には、第2生物分子解析部107bが配置されている。第2生物分子解析部107bの下流側には中間マイクロバルブ118dが配置されている。更に、第2の標的分子選択操作部の下流側には、中間マイクロバルブ118f及び中間マイクロポンプ119fが配置され、更にその下流側には、第3生物分子解析部107cが配置されている。第3生物分子解析部107cの下流側の排出槽114の手前には出口側マイクロバルブ115が配置されている。第1生物分子解析部107a、第2生物分子解析部107b及び第3生物分子解析部107cは、細胞の3次元構造を得るCT(コンピュータ・トモグラフィー)部分であるが、ここで顕微鏡観察をしても良い。
集合流路116cの制限酵素流路116bの合流点以降の断面積は、細胞流路116aと制限酵素流路116bの2本のマイクロ流路の断面積の合計程度にすれば良い。又、リガーゼ流路116eの合流点以降の集合流路116dの断面積は、細胞流路116a、制限酵素流路116bとリガーゼ流路116eの3本のマイクロ流路の断面積の合計程度が好ましい。但し、上流側から3本のマイクロ流路の断面積の合計程度の均一の断面積のマイクロ流路としても構わない。
入口側マイクロバルブ112a〜112c、中間マイクロバルブ118a〜118f及び出口側マイクロバルブ115としては、ダイアフラム型(メンブレン型)、圧電素子型、静電型、電磁バルブ型やバイメタル・形状記憶合金型等の種々のマイクロバルブが使用可能である。入口側マイクロポンプ113a〜113c及び中間マイクロポンプ119a〜119fとしては、圧電素子型、静電型、電磁バルブ型やバイメタル・形状記憶合金型等の種々のマイクロポンプが使用可能である。更には、熱膨張や加熱による流体飽和蒸気圧の温度依存性と相変化による比容積の変化を利用するマイクロポンプ、磁性流体に磁場を印加するマイクロポンプ、高電界中で発生する電界と流体間の特殊な相互作用を利用したEHDポンプ等も使用可能である。
又、図22では、図示を省略しているが、アクチュエータ基板101には、貼り合わせ法(直接接合法)等でカバーガラスが貼り合わせられている。このカバーガラスには、アクチュエータ基板101の被処理生物分子注入槽111b、制限酵素注入槽111c、リガーゼ注入槽111a及び排出槽114の位置に対応して、細胞注入口、制限酵素注入口、リガーゼ注入口及び排出口が設けられている。これらの、細胞注入口、制限酵素注入口、リガーゼ注入口及び排出口は、カラス基板に化学エッチングで開口しても良く、或いはレーザドリルで孔を開けても良い。アクチュエータ基板101とカバーガラスとは、例えば、加熱しながら電圧を印加して接着する陽極融着法等の貼り合わせ法(直接接合法)で貼り合わせられている。
第4の実施の形態に係る標的分子操作方法は、図22に示す標的分子操作装置を用い、以下のような手順で行えば良い:
(イ)先ず、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)及びU(ウラシル)の5つの塩基分子、これを含むヌクレオチド、ヌクレオチドの組み合わせからなるコドン等の分子振動のデータから切断したい箇所の塩基配列の分子振動を決定しておく。これらの分子振動のデータは、第1の実施の形態で説明したように、実験的に前もってテラヘルツ帯の測定技術で測定すれば良い。或いは、実験的に得られたデータを基礎として、分子振動理論から計算される値を用いても良い。又、切断した箇所に、新たに組み込みたい塩基配列(コドン)も用意する。新たに組み込みたい塩基配列の分子振動も、実験的に前もってテラヘルツ帯の測定技術で測定するか、分子振動理論から計算しておく。この際、対応する制限酵素及びリガーゼがあればこれを用意する。これらの準備ができたら、生体からリンパ球等の細胞を分離・採取する。
(ロ)次に、図22に示す標的分子操作装置の入口側マイクロバルブ112bを閉じた状態で、生体から分離・採取した細胞をリンガー液と共に、被処理生物分子注入槽111bへ注入する。更に、入口側マイクロバルブ112cを閉じた状態で、制限酵素をリンガー液と共に、制限酵素注入口から制限酵素注入槽111cへ注入する。同様に、入口側マイクロバルブ112aを閉じた状態で、新たに組み込みたい塩基配列(コドン)とリガーゼをリンガー液と共に、リガーゼ注入口からリガーゼ注入槽111aへ注入する。そして、中間マイクロバルブ118aを閉じた状態で、入口側マイクロバルブ112bを開き、入口側マイクロポンプ113bを作動させ、被処理生物分子注入槽111bから細胞をリンガー液と共に細胞流路116aを介して、第1生物分子解析部107aに注入する。第1生物分子解析部107aにおいては、図示を省略した回転テーブルにより、細胞を回転させながら、光又は電子線を照射し、その検出器からの信号を計算機処理することで、細胞の3次元構造を得る。細胞の3次元構造が得られたら、中間マイクロバルブ118bを閉じた状態で、中間マイクロバルブ118aを開き、中間マイクロポンプ119aを作動させ、細胞をリンガー液と共に細胞流路116aの更に下流の集合流路116cに向けて放流する。
(ハ)一方、中間マイクロバルブ118bを閉じた状態で、入口側マイクロバルブ112cを開き、入口側マイクロポンプ113cを作動させ、制限酵素注入槽111cから制限酵素をリンガー液と共に制限酵素流路116bに注入する。この結果、細胞と制限酵素とは、集合流路116cで混合される。その後、中間マイクロバルブ118bを閉じた状態で、第1攪拌槽117aを作動させ、制限酵素と細胞を均一になるまで十分に攪拌し、必要に応じて攪拌培養をする。
(ニ)制限酵素と細胞とが十分に攪拌された後、中間マイクロバルブ118cを閉じた状態で、中間マイクロバルブ118bを開き、中間マイクロポンプ119bを作動させ、制限酵素を集合流路116cの下流に放流する。制限酵素が集合流路116cの下流に放流されると同時に、電磁波発生部55を動作させる。そして、予め求めておいた、切断したい箇所の塩基配列(コドン)の分子振動の周波数の電磁波を、細胞に照射する。この結果、集合流路116c中の細胞中のDNAは、特定の塩基配列で共振し、切断される。切断したい箇所の塩基配列(コドン)の分子振動の周波数の電磁波を、細胞に照射することにより、希望の切断箇所で再現性良、確実にDNAが切断される。
(ホ)細胞への電磁波の照射によるDNAの切断が終了したら、中間マイクロバルブ118dを閉じた状態で、中間マイクロバルブ118cを開け、中間マイクロポンプ119cを作動させ、DNAの切断した細胞をリンガー液と共に第2生物分子解析部107bへ移動する。第2生物分子解析部107bにおいては、図示を省略した回転テーブルにより、細胞を回転させながら、光又は電子線を照射し、その検出器からの信号を計算機処理することで、DNAの切断した細胞の3次元構造を得る。細胞の3次元構造が得られたら、中間マイクロバルブ118eを閉じた状態で、中間マイクロバルブ118dを開き、中間マイクロポンプ119dを作動させ、DNAの切断した細胞をリンガー液と共に細胞流路116cの更に下流の集合流路116dに向けて放流する。
(ヘ)一方、中間マイクロバルブ118eを閉じた状態で、入口側マイクロバルブ112aを開き、入口側マイクロポンプ113aを作動させ、リガーゼ注入槽111aから新たに組み込みたい塩基配列(コドン)とリガーゼをリンガー液と共にリガーゼ流路116eに注入し、第2攪拌槽117bに収納する。この結果、DNAの切断した細胞、新たに組み込みたい塩基配列(コドン)及びリガーゼとは、第2攪拌槽117bで混合される。その後、中間マイクロバルブ118eを閉じた状態で、第2攪拌槽117bを作動させ、DNAの切断した細胞、新たに組み込みたい塩基配列(コドン)及びリガーゼを均一になるまで十分に攪拌し、必要に応じて攪拌培養をする。
(ト)DNAの切断した細胞、新たに組み込みたい塩基配列(コドン)及びリガーゼが混合生成された後、中間マイクロバルブ118fを閉じた状態で、中間マイクロバルブ118eを開き、中間マイクロポンプ119eを作動させ、組み替えDNAを集合流路116cの下流に放流する。DNAの切断した細胞、新たに組み込みたい塩基配列(コドン)及びリガーゼが集合流路116cの下流に放流されると同時に、第2の電磁波発生部55bを動作させ、予め求めた特定の周波数の電磁波を、組み替えDNAに照射する。即ち、DNAの切断部のコドンの分子振動及び新たに組み込みたいコドンの分子振動に対応する周波数の電磁波を第2の電磁波発生部55bからDNAの切断した細胞、新たに組み込みたい塩基配列(コドン)及びリガーゼの混合液に照射する。この場合は、一般には複数のテラヘルツ帯の電磁波が同時に照射される。この場合のテラヘルツ帯の電磁波の強度は、DNAの切断時の強度よりも弱くし、リガーゼがコドンの接着剤として機能する際の触媒的なエネルギーが付与できるように設定する。DNAの切断部のコドンの分子振動及び新たに組み込みたいコドンの分子振動に対応する周波数の電磁波を照射することにより、再現性良高い収率で遺伝子組み替えが可能となる。
(チ)出口側マイクロバルブ115を閉じた状態で、中間マイクロバルブ118fを開け、中間マイクロポンプ119fを作動させ、組み替えDNAをリンガー液と共に、第3生物分子解析部107cへ送り込む。第3生物分子解析部107cにおいては、図示を省略した回転テーブルにより、細胞を回転させながら、光又は電子線を照射し、その検出器からの信号を計算機処理することで、細胞の3次元構造を得る。細胞の3次元構造が得られたら、出口側マイクロバルブ115を開け、組み替えDNAをリンガー液と共に、排出槽114へ送り込み、排出槽114から排出口を介して所定の容器へ排出する。
第4の実施の形態に係る標的分子操作方法によれば、切断したい箇所の塩基配列(コドン)の分子振動の周波数の電磁波を、細胞に照射することにより、希望の切断箇所で再現性良、確実にDNAが切断される。又、DNAの切断部のコドンの分子振動及び新たに組み込みたいコドンの分子振動に対応する周波数の電磁波を照射することにより、再現性良高い収率で遺伝子組み替えが可能となる。
従来の制限酵素とリガーゼを用いた遺伝子組み替え技術では、リガーゼを用いた遺伝子組み込みの段階のみで1昼夜程度の長時間の処理が必要で、確実性にも乏しい。第4の実施の形態に係る標的分子操作方法によれば、極めて短時間で組み替えが確実にできる利点を有する。
更に、第4の実施の形態に係る標的分子操作方法においては、制限酵素とリガーゼを用いた例を示したが、これらの制限酵素及びリガーゼは補助的に用いているのであり、一定の場合は、制限酵素及びリガーゼは用いなくても良い。制限酵素及びリガーゼは用いない場合は、第1攪拌槽117aや第2攪拌槽117bを用いた攪拌培養等の懸濁培養も不要となるので、極めて短時間で遺伝子組み替えが可能になる。
図23は、本発明の第4の実施の形態の変形例に係る標的分子操作装置の鳥瞰図で、中間マイクロポンプ119bと中間マイクロバルブ118cとの間の流路116cが構成する第1の標的分子選択操作部(塩基配列切断部)の両側に、第1の電磁波照射端子152aと第1の電磁波検出端子153aが配置されている。又、中間マイクロポンプ119eと中間マイクロバルブ118fとの間の流路116fが構成する第2の標的分子選択操作部(塩基配列組み替え部)の両側に、第2の電磁波照射端子152bと第2の電磁波検出端子153bが配置されている。電磁波照射端子152a、152bには、アクチュエータ基板101を絶縁体として、マイクロストリップ線路の信号線151a,151bを介してテラヘルツ帯の電磁波が供給される。図示を省略しているが、アクチュエータ基板101の裏面には、マイクロストリップ線路を構成するように接地板が設けられている。電磁波検出端子153a,153bで検出されたテラヘルツ帯の電磁波は、アクチュエータ基板101を絶縁体とするマイクロストリップ線路の信号線154a,154bを介して、Siボロメータ等の電磁波検出部(図示省略。)に導かれる。図23では、第1の電磁波照射端子152a及び第2の電磁波照射端子152bとしてループアンテナが設けられた場合を説明したが、電磁波照射端子152a,152bは、ループアンテナに限定される必要はなく、パラボラアンテナやホーンアンテナ等他の手段でも構わない。又、電磁波検出端子153a,153bも、図23に示したループアンテナに限定される必要はなく、パラボラアンテナやホーンアンテナ等が使用可能であり、これらのアンテナを省略してSiボロメータ等の電磁波検出部を電磁波検出端子153a,153bに配置しても良い。又、テラヘルツ帯用ショットキーダイオードの髭(ホイスカー)状アンテナを電磁波検出端子153a,153bに配置し、直接テラヘルツ帯用ショットキーダイオード検出しても良い。他は、図22に示した標的分子操作装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1〜第4の実施の形態によって、標的分子操作装置を医療機器に適用する場合について記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、第1の実施の形態に係る標的分子操作装置及び標的分子操作方法は、癌治療を主に説明したが、癌治療に必要な臨床データを測定する装置及び方法としても良く、癌細胞等異常細胞の発見用の検診装置としても良いことは、以上の説明から明らかであろう。
更に、第1の実施の形態において、電磁波照射端子74aは、照射用細管(照射用腹腔鏡プローブ)7aの先端に設けられる必要はなく、照射用腹腔鏡プローブ7aと同様な細管の先端に設けられても良い。更に、鉗子等の手術機器の先端に電磁波照射端子74aを設けても良い。照射用腹腔鏡プローブ7aの先端に、振動数検出端子等が設けられることにより、電磁波照射端子74aから照射する電磁波Φの周波数を測定可能な構成であっても良い。
又、第1の実施の形態において、照射用細管7aとモニタ用細管7bとを別体として説明したが、先端がU字若しくはV字型等に2分岐したプローブの先端に電磁波照射端子74aと電磁波検出端子74bを対向させた構造や、クランプ状にして、2分岐したプローブの先端の距離が可変な状態として、電磁波照射端子74aと電磁波検出端子74bを対向させた構造でも良い。例えば、「ピンセット」若しくは「やっとこ鋏」の刃先の内側に電磁波照射端子74aと電磁波検出端子74bを対向させて配置した一体物でも構わない。
更に、第1の実施の形態においては、被治療対象を透過した電磁波Φを検出する方法を例示したが、反射型の電磁波測定でも良く、この場合は、1本の細管の内部に電磁波照射端子と電磁波検出端子74bを備えることができる。反射型の電磁波検出の場合は、電磁波照射端子と電磁波検出端子74bとを同一の端子(アンテナ若しくはレンズ)で兼ねることも可能である。
更に、第1の実施の形態において、治療条件制御装置1aのCPU12が分子振動解析部21,治療周波数決定部22,治療効果決定部23を備えるコンピュータによる処理を例示的に示したが、これらの演算や判断の一部又は全部を人間が行っても構わないことは勿論である。
第2の実施の形態に係る標的分子操作装置では、筒形形状のアンテナ保持部60を例示したが、電気こたつや電気ヒータのような片面照射タイプでも構わないことは勿論である。
第3の実施の形態においては、アンテナアレイ6から血液に電磁波を照射すると同時に、血液中の血球に薬剤を含有させても良い。
本発明の第3の実施の形態に係る標的分子操作装置は、第4の実施の形態と同様に、マイクロ機器を一つのチップにまとめたマイクロTASを用いても構成できる。即ち、マイクロTASの構造で、血液をシリンジ・ポンプからの圧力によって様々な細管に正確に導き、健康な血液は流体回路から外に流され、微生物に犯された血液は、マイクロリアクターに集め、微生物の固有振動数の電磁波を照射するようにしても良い。更に、血液だけでなく、細胞群をリンガー液とともに流し、健康な細胞は流体回路から外に流され、微生物に犯された細胞は、マイクロリアクターに集め、微生物の固有振動数の電磁波を照射するようにしても良い。
第1〜第4の実施の形態においては、電磁波発生装置35のGaPコア層が、テルル化亜鉛(ZnTe)やニオブ酸リチウム(LiNbO3)等が利用されても良い。電磁波発生装置35から取り出される電磁波Φは、パラメトリック発振により得られても良い。又、第1〜第4の実施の形態において、予め生体の治療を行う前に、光感受性物質等の薬剤を投与しておき、微生物(病原微生物)の存在する位置を特定し易くするのが好適である。微生物の種類や場所を特定する手段として、核磁気共鳴イメージング装置(MRI)や、光トポグラフィー装置、機能的MRI(FMRI)、近赤外光断層イメージング装置(CT)等を併用しても良い。微生物の寄生又は細胞の突然変異により発生した異常細胞の固有振動数に等しい電磁波を発生させて治療を行うことも可能である。
なお、第1〜第4の実施の形態においては、電磁波発生手段13の内部に複数の電磁波発生装置35を有する場合に付いて述べたが、電磁波発生手段13が複数の構成でも良い。この場合は、複数の電磁波発生手段13が複数の周波数を同時に発振することが可能になる。
更に、本発明の標的分子操作装置は、エアコンなどの空気清浄機に、第1〜第4の実施の形態において説明した電磁波発生装置35を接続又は組み込み、インフルエンザウィルスなど空気中に浮遊するウィルスの固有振動数に等しい周波数の電磁波を照射したり、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの病原性細菌の固有振動数に等しい周波数の電磁波を照射することにより、これらのウィルスや病原性細菌の増殖・感染能力を失わせることもできる。具体的には、図16や図17と同様なパッチアンテナ61a,61b,61c,・・・・・61tをエアコンなどの空気清浄機に組み込めば良い。又、夏風邪の原因の一つであるコクサッキーウイルスや、院内感染の代表的な原因とされるMRSA、大腸菌や黒カビについても同様に、これらの固有振動数に等しい周波数の電磁波を照射することにより、これらの微生物の表面の蛋白質を分子レベルで破壊し、大気中の微生物駆除技術として有効である。
食中毒の病因物質は、細菌、ウィルス、化学物質、自然毒等があるが、その内の80パーセント以上は細菌である。例えば、腸炎ビブリオは、日本においてサルモネラと並ぶ代表的な食中毒原因菌であり、生体内毒素型の食中毒原因菌として最も発生頻度が高い。腸炎ビブリオは海水を最も好適な棲息地とするので、海水温度が上昇する夏期になると盛んに増殖し、海産魚介類を高い頻度で汚染する。汚染された魚介類を摂取した人間は、下痢や腹痛、発熱、嘔吐等の症状を起こし、場合によっては死に至ることもある。例えば、冷蔵庫の内部や食品保存庫の内部、若しくは調理台等に、図16や図17と同様なパッチアンテナ61a,61b,61c,・・・・・61tを配置し、食中毒原因菌の固有振動数に等しい周波数の電磁波の照射部を設けておけば、食中毒原因菌を選択的に殺すことが可能である。
この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
「生体」とは、生物の生きている体の意であり、生活現象を行うあらゆる動物及び植物を含む。特に、脊椎動物門の軟骨魚綱、硬骨魚綱、両生綱、爬虫綱、鳥綱、哺乳綱の動物の生体内において、微生物の寄生した場合の治療、或いは、細胞の突然変異により発生した異常細胞の治療に利用可能である。例えば、SARSウィルスと同科同属で、表面構造も一致する鳥コロナウィルス(鶏伝染性気管支炎ウィルス)の固有振動数を前もって調べておけば、これらのウィルスを選択的に死滅させることが可能である。更に、これらの医療分野の医療機器として利用できる。更に、植物に寄生した微生物も選択的に駆逐できるので、農業や食品加工の分野にも利用可能である。更に、エアコンなどの空気清浄機等の分野にも採用可能である。
本発明の第1〜第4の実施の形態の基礎となるアデニン(A)、グアニン(G)及びシトシン(C)のテラヘルツ帯における振動特性である。 本発明の第1〜第4の実施の形態の基礎となるチミン(T)及びウラシル(U)のテラヘルツ帯における振動特性である。 DNAの構造を示す模式図である。 本発明の第1の実施の形態に係る標的分子操作装置の概略図である。 本発明の第1の実施の形態に係る照射用腹腔鏡プローブの断面図である。 本発明の第1の実施の形態に係る照射用腹腔鏡プローブの先端を示す概略図である。 本発明の第1の実施の形態に係る標的分子操作装置を用いた治療方法を示す概略図である。 本発明の第1の実施の形態の変形例に係るモニタ用腹腔鏡プローブを用いた場合の治療方法を示す概略図である。 本発明の第1の実施の形態に係る標的分子操作装置を用いた癌治療の効果を説明するテラヘルツ帯における吸収スペクトルである。 本発明の第1の実施の形態に係る電磁波発生装置の概略図である。 本発明の第1の実施の形態に係る電磁波発生装置の電磁波発生部を説明する概略図である。 本発明の第1の実施の形態に係る照射用腹腔鏡プローブの電磁波入力端子を説明する概略図である。 本発明の第1の実施の形態の変形例に係る標的分子操作装置の概略図である。 本発明の第1の実施の形態の変形例に係る照射用腹腔鏡プローブの断面図である。 本発明の第1の実施の形態の変形例に係る照射用腹腔鏡プローブの先端を示す概略図である。 本発明の第2の実施の形態に係る標的分子操作装置を示す概略図である。 本発明の第2の実施の形態に係るアンテナアレイのA−A方向に沿った断面図である。 本発明の第2の実施の形態に係るアンテナアレイの内壁面を示す概略図である。 本発明の第3の実施の形態に係る標的分子操作装置を示す概略図である。 本発明の第3の実施の形態に係る標的分子操作装置の拡大図である。 ヘリコバクター・ピロリの概略図である。 本発明の第4の実施の形態に係る標的分子操作装置を示す鳥瞰図である。 本発明の第4の実施の形態の変形例に係る標的分子操作装置を示す鳥瞰図である。
符号の説明
1a,1b…治療条件制御装置
6…電磁波照射部(アンテナアレイ)
7a…照射用細管(照射用腹腔鏡プローブ)
7b…モニタ用細管(モニタ用腹腔鏡プローブ)
8…腹腔鏡制御装置
9…血液洗浄装置
11…入力装置
12…CPU
13…電磁波発生手段
13b…モノリシック集積回路制御部
14…透過電磁波処理手段
15…分子振動データ記憶装置
16…表示装置
17…出力装置
18a,18b…腹腔鏡制御装置
21…分子振動解析部
22…治療周波数決定部
23…治療効果決定部
33a…第1の電磁波検出部
33b…第2の電磁波検出部
34…周波数調整装置
35…電磁波発生装置
41…低雑音増幅器
42…A−D変換器
43…吸収スペクトル解析部
49…YAGレーザ
50…光パラメトリック発信器
51…第1ポンプ光
52…第2ポンプ光
53a,53b…合成光
54…ポンプ光制御部
55…電磁波発生部
55a…第1の電磁波発生部
55b…第2の電磁波発生部
56…入射端面
57…出射端面
58…光導波路
60…アンテナ保持部
61a,61b,61c,…パッチアンテナ
62、70…高周波伝送線路
63…ベッド
70b…高周波伝送線路(導波管)
71…CCDカメラ
72…ライトガイド
72…温度検出端子
73…温度検出端子
74a…電磁波照射端子
74b…電磁波検出端子
75…薬液注入部
77…チューブ
78…モノリシック集積回路
79…電源配線
80…信号処理部
81…映像処理部
82…光源
83…温度信号処理部
85…薬液供給部
86…モニタ制御部
87…可変スタブ
88…マイクロアクチュエータ
91…採血口
92…返血口
93…採血ライン
94…返血ライン
95…血流ポンプ
96,97…チャンバー
101…アクチュエータ基板
107a…第1生物分子解析部
107b…第2生物分子解析部
107c…第3生物分子解析部
111a…リガーゼ注入槽
111b…被処理生物分子注入槽
111c…制限酵素注入槽
112a〜112c…入口側マイクロバルブ
113a〜113c…入口側マイクロポンプ
114…排出槽
115…出口側マイクロバルブ
116a…細胞流路(集合流路)
116b…制限酵素流路
116c…細胞流路(集合流路)
116d…集合流路
116e…リガーゼ流路
116f…流路
117a…第1攪拌槽
117b…第2攪拌槽
118a〜118f…中間マイクロバルブ
119a〜119f…中間マイクロポンプ
1,H2…ピンホール
1〜M7…反射鏡
1,P2…λ/2波長板
Φ,Φa,Φb,Φc,・・・・・Φt…電磁波

Claims (8)

  1. 0.01THz〜200THzの範囲において、生物学的な標的分子の固有振動数に等しい周波数の電磁波を照射し、前記標的分子を活性化、変態若しくは破壊する電磁波照射手段と、
    前記電磁波照射手段に、前記周波数の電磁波を供給する電磁波発生手段と、
    前記標的分子を透過した前記電磁波、若しくは前記標的分子から反射した前記電磁波を測定して、前記電磁波の照射による前記標的分子の変化状態を検出する操作結果測定手段
    とを備えることを特徴とする標的分子操作装置。
  2. 前記電磁波照射手段は、前記電磁波を出射する電磁波照射端子を先端部に有し、内部に前記電磁波を伝搬させる高周波伝送線路を有する外径0.1mm〜20mmの照射用細管を備えることを特徴とする請求項1に記載の標的分子操作装置。
  3. 前記操作結果測定手段は、前記電磁波を検出する電磁波検出端子を先端部に有する外径0.1mm〜10mmのモニタ用細管を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の標的分子操作装置。
  4. 前記照射用細管は、前記標的分子の温度を検出する温度検出手段を更に有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の標的分子操作装置。
  5. 前記電磁波発生手段は、前記固有振動の変化に追随して前記生物学的な標的分子に照射する前記電磁波の周波数を変化させる周波数制御装置を更に備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の標的分子操作装置。
  6. 前記電磁波発生手段は、それぞれ異なる複数の周波数の電磁波を同時に発生可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の標的分子操作装置。
  7. DNAを、所望の切断箇所で切断する段階と、
    前記切断箇所の端部に存在する端部コドン若しくは該端部コドンを構成する端部塩基分子の固有振動数に等しい周波数の電磁波を照射し、前記端部コドン若しくは前記端部塩基分子を選択的に活性化し、前記切断箇所に他のコドンを接続する段階
    とを含み、前記DNAの塩基配列を変更することを特徴とする標的分子操作方法。
  8. 前記切断箇所のコドン若しくは該コドンを構成する塩基分子の固有振動数に等しい周波数の電磁波を照射し、前記コドン若しくは前記塩基分子を選択的に励起し、前記DNAを切断することを特徴とする請求項7に記載の標的分子操作方法。
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