JP4271455B2 - 嵩高い炭化水素基の結合した第3級ホスフィンの製造方法 - Google Patents

嵩高い炭化水素基の結合した第3級ホスフィンの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は立体的に嵩高い炭化水素基が結合した第3級ホスフィンの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は有機合成反応において遷移金属触媒の配位子として有用である、立体的に嵩高い炭化水素基が結合した第3級ホスフィンを、工業的規模で、簡便かつ安全な操作により、高収率かつ高純度で製造する方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
近年、パラジウムのような遷移金属にtert−ブチル基やアダマンチル基のような立体的に嵩高い炭化水素基を有する第3級ホスフィンを配位させ、こうして得た遷移金属触媒を利用した有機合成反応が多数報告されている(例えば、特許文献1、2および非特許文献1、2参照)。
【0003】
従来、嵩高い炭化水素基としてtert−ブチル基が結合した第3級ホスフィン化合物類の合成法としては、例えば以下の▲1▼〜▲8▼の文献に記載されているように、ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドと、アルキルリチウム試薬あるいはアルキルまたはアリールのグリニヤール試薬とを反応させる方法が知られている。
【0004】
特に、ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドに第3級アルキル基を導入する場合には、その立体障害が大きいためにアルキルグリニヤール試薬では反応性が低く、非特許文献3に記載された方法のようにアルキルリチウム試薬のみが用いられている。
▲1▼ 非特許文献3には、ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドとtert−ブチルリチウムとをベンゼン−ペンタン混合溶媒中で反応させ、収率50%でトリ−tert−ブチルホスフィンが得られることが記載されている。
【0005】
しかし、この方法では、原料として第3級アルキルリチウムであるtert−ブチルリチウムを使用しており、その製造方法および取り扱い方法には下記(i)、(ii)のような問題点があり、工業的な製造方法として簡便とはいえない。
(i)第3級アルキルリチウムを製造するには、高活性なリチウム微分散体を高温(約200℃)で生成させ、それをアルゴン気流下、低沸点の炭化水素を溶媒として用い、第3級アルキルハライドと反応させなければならない。このため特殊な容器での反応が要求され、また、反応操作には十分な注意が必要とされる。
(ii)生成した第3級アルキルリチウムは、空気と接触すると自然発火する、危険性の高い試薬である。
【0006】
▲2▼ 特許文献3には、α,α’−ジクロロ−o−キシレンとマグネシウムからテトラヒドロフラン溶媒中で調製したグリニヤール試薬と、4当量のジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドとを50℃で24時間反応させることにより、収率61.8%でα,α’−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−o−キシレンが得られることが記載されている。
【0007】
この方法では、原料のグリニヤール試薬に対して4当量のジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドを必要としているが、目的物の収率が低く、工業生産を考えた場合にコスト面で不利である。
▲3▼ 非特許文献3には、イソプロピルブロマイドとマグネシウムから調製したグリニヤール試薬と、ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドとを反応させることにより、ジ−tert−ブチルイソプロピルホスフィンが得られることが記載されている。
【0008】
この方法では、反応が完結せず、目的物は原料のジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドとの混合物としてしか得られない。
▲4▼ 非特許文献4には、1−(ブロモメチル)−o−カルボランとマグネシウムから調製したグリニヤール試薬と、ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドとをエーテル中で還流下で2時間反応させることにより、収率39%で1−(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)−o−カルボランが得られることが記載されている。
【0009】
この方法では、低い収率でしか目的物が得られていない。
▲5▼ 非特許文献1には、2−ブロモビフェニルとマグネシウムからテトラヒドロフラン中で調製したグリニヤール試薬に、2−ブロモビフェニルに対して1.05モル倍の塩化銅(I)と、1.20モル倍のジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドとを還流下で8時間反応させ、室温でヘキサンおよびエーテルを添加した後、目的物の銅錯体を固体として一旦取り出してから、ヘキサン、酢酸エチルおよびアンモニア水溶液の混合液で処理して、収率67%で2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニルが得られることが記載されている。
【0010】
この方法では、2−ブロモビフェニルに対して1.05モル倍の塩化銅(I)を使用し、反応後は目的物を固体の銅錯体として一旦系外に取り出した後、その銅錯体を分解するために、毒性が高く、環境汚染の原因となるアンモニア水で処理している。このため、この方法は反応操作が煩雑であり、作業の安全面でも問題がある。その上、銅とアンモニアを含む大量の廃液が発生し、工業的製法としては好ましくない。
【0011】
▲6▼ 特許文献4には、例えば2−ブロモ−4’−トリフルオロメチル−ビフェニルとマグネシウムから調製したグリニヤール試薬に、ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドに対して0.91モル倍の塩化銅(I)と、ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドとを加えて加熱条件下で14時間反応させた後、反応混合物をエーテルで希釈した懸濁液をろ過して得た固体を、酢酸エチルとアンモニア水で処理することにより、収率31%で2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−4’−トリフルオロメチル−ビフェニルが得られるなど、ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドに対してほぼ等モル量の塩化銅(I)を用いてジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドとアリールグリニヤール試薬とを反応させることが実施例に記載されている。
【0012】
この方法では、低い収率でしか目的物が得られていない。さらに、ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドに対してほぼ等モル量の塩化銅(I)を使用しており、銅錯体から目的物を遊離させるためアンモニア水による処理が必須であることから、上記▲5▼と同様の問題がある。
▲7▼ 非特許文献5には、2−ブロモ−N,N−ジメチルアニリンと2−ブロモクロロベンゼンとマグネシウムとから調製したグリニヤール試薬に、塩化銅(I)(ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドに対して15モル%)を加えて混合し、続けてジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドを加えて60℃で20時間反応させた後、有機溶媒およびアンモニア水と混合して得た反応溶液をセライトでろ過処理することにより、収率47%で2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−2’−ジメチルアミノ−ビフェニルが得られることが記載されている。
【0013】
この方法では、上記文献▲5▼に比較して銅化合物の使用量は減っており、反応液から目的物の銅錯体を取り出すことなく後処理を行っているが、収率が低いことに加えて、アンモニア水を使用することの問題は解決できていない。
▲8▼ 特許文献5には、ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドと、これに対して10モル%のヨウ化銅(I)および20モル%の臭化リチウムとを溶媒に加えた溶液へ、1−アダマンチルマグネシウムブロマイド溶液を加えて常温で17時間反応させた後、ベンゼンに溶媒置換した溶液をセライトでろ過処理することにより、収率86%でジ−tert−ブチル(1−アダマンチル)ホスフィンが得られることが記載されている。
【0014】
この方法では、グリニヤール試薬をジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドの2モル倍使用していることに加え、銅化合物の他に臭化リチウムを使用し、反応後は発癌性のあるベンゼンへの溶媒置換や、セライトを用いたろ過が必要であることなど経済性、安全性、操作性の面で問題がある。
したがって、上記のいずれの方法も工業的に満足すべきものではなかった。
【0015】
このような状況下、tert−ブチル基やアダマンチル基のような嵩高い炭化水素基の結合した第3級ホスフィンを工業的規模で、簡便かつ安全な操作により、高収率かつ高純度で製造する方法の開発が期待されている。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、第3級炭化水素基をもつジアルキルホスフィナスハライドと、アルキル基などのグリニヤール試薬とを、特定量の銅化合物の存在下に反応させることにより、第3級ホスフィンを高収率かつ高純度で製造することができることを見出し本発明を完成するに至った。
【0016】
【特許文献1】
特開平10−81667号公報
【特許文献2】
特開平11−158103号公報
【特許文献3】
国際公開第99/9040号パンフレット p.5−6
【特許文献4】
米国特許第6,307,087号明細書 第70列
【特許文献5】
国際公開第02/48160号パンフレット p.17
【非特許文献1】
「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(Journalof the American Chemical Society)」(アメリカ) 1999年 第121巻 p.4369−4378
【非特許文献2】
「ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(Journal of the Organic Chemistry)」(アメリカ) 2000年 第65巻 p.1158−1174
【非特許文献3】
「ヒェーミッシェ・ベリヒテ(Chemische Berichte)」(ドイツ) 1967年 第100巻 p.693
【非特許文献4】
「ブレチン・オブ・コーリアン・ケミカル・ソサイエティー(Bulletinof the Korean Chemical Society)」(韓国) 1999年 第20巻 第5号 p.601
【非特許文献5】
「アドバンスド・シンセシス・アンド・キャタリシス(Advanced Synthesis & Catalysis)」(ドイツ) 2001年 第8号p.793
【0017】
【発明の目的】
本発明は、有機合成反応において遷移金属触媒の配位子として有用である、立体的に嵩高い炭化水素基の結合した第3級ホスフィンを、工業的規模で、簡便かつ安全な操作により、高収率かつ高純度で製造することを目的としている。
【0018】
【発明の概要】
本発明は、下記一般式(1)
【0019】
【化4】
Figure 0004271455
【0020】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して炭素数4〜13の第3級炭化水素基を表し、Xは、塩素または臭素原子を表す。)
で示されるジアルキルホスフィナスハライドと、下記一般式(2)
【0021】
【化5】
Figure 0004271455
【0022】
(式中、R3は、直鎖状または分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アラルキル基または低級アルコキシ低級アルキル基を表し、X’は、塩素、臭素またはヨウ素原子を表す。)
で示されるグリニヤール試薬とを、一般式(1)のジアルキルホスフィナスハライドに対して0.1〜5モル%に相当する量である銅化合物の存在下で反応させることにより、下記一般式(3)
【0023】
【化6】
Figure 0004271455
【0024】
(式中、R1、R2およびR3は上記と同義である。)
で示される第3級ホスフィンを製造することを特徴としている。
添加する銅化合物の種類は、無機銅化合物および有機銅化合物のいずれも使用可能であり、特に好ましくは、ハロゲン化銅または銅(II)アセチルアセトナートである。
【0025】
また、上記の発明においては、一般式(1)で示されるジアルキルホスフィナスハライドと一般式(2)で示されるグリニヤール試薬との反応混合液(a)と、水あるいは酸性水溶液と、必要に応じて適当な有機溶媒とを混合攪拌して得られた混合液(b)から、水層を分液除去し、次いで、常圧あるいは減圧下において有機層から溶媒を留去することにより、簡便かつ安全な操作で、高収率かつ高純度で目的とする第3級ホスフィンを製造することができる。
【0026】
すなわち、本発明の方法では、一般式(1)で示されるジアルキルホスフィナスハライドと一般式(2)で示されるグリニヤール試薬とを銅化合物を触媒として反応させることにより、副反応を伴うことなく反応が容易に進行する。しかも銅化合物の使用量が極めて少量ですむために、生成した第3級ホスフィン化合物と銅化合物との錯体の生成量も極小量である。したがって、目的とするホスフィン化合物を遊離させるためのアンモニア水による処理などの操作も必要なく、後処理は通常のホスフィナスハライドとグリニヤール試薬とによる第3級ホスフィンの合成法に準じればよい。すなわち、副生するハロゲン化マグネシウムなどの無機塩を除去するため、適量の水あるいは希硫酸などの酸性水溶液で処理するだけで、目的とする第3級ホスフィン化合物を得ることができる。同時に、銅化合物の使用量自体も従来法に比べてはるかに少ないため、廃液に含まれる銅の量も極めて少なく、その後に特別な処理も不要となる。したがって、本発明の方法は特に工業的規模での製造に適した方法である。
【0027】
【発明の具体的説明】
以下、本発明を具体的に説明する。
原料である一般式(1)で示されるジアルキルホスフィナスハライドは、公知の方法あるいは公知の方法に準じて合成できる。例えば、ジアルキルホスフィナスクロライドの例としてジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドは、ヒェーミッシェ・ベリヒテ 1967年 第100巻 p.692に記載の方法で、ジ−tert−アミルホスフィナスクロライドは、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイエティー(C) 1970年 p.2529に記載の方法で、それぞれ三塩化りんと対応するアルキルマグネシウムハライドから合成できる。さらに、ジアルキルホスフィナスブロマイドの例としてジ−tert−ブチルホスフィナスブロマイドは、ヒェーミッシェ・ベリヒテ 1978年 第111巻 p.1420に記載の方法で、三臭化りんと対応するtert−ブチルマグネシウムハライドから合成することができる。
【0028】
一般式(1)で示されるジアルキルホスフィナスハライドとしては、例えばジ−tert−ブチルホスフィナスクロライド、ジ−tert−ブチルホスフィナスブロマイド、ジ−tert−アミルホスフィナスクロライド、ジ−tert−アミルホスフィナスブロマイド、tert−アミル−tert−ブチルホスフィナスクロライド、ビス(1,1−ジメチルブチル)ホスフィナスクロライド、ビス(1,1−ジエチルプロピル)ホスフィナスクロライド、ジ(1−アダマンチル)ホスフィナスクロライド、ジ(1−アダマンチル)ホスフィナスブロマイド、(1−アダマンチル)−tert−ブチルホスフィナスクロライドが挙げられる。
【0029】
もう一方の原料であるグリニヤール試薬は一般式(2)で示される。一般式(2)で示されるグリニヤール試薬としては、例えばメチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムアイオダイド、n−プロピルマグネシウムクロライド、n−プロピルマグネシウムブロマイド、イソプロピルマグネシウムクロライド、イソプロピルマグネシウムブロマイド、n−ブチルマグネシウムクロライド、n−ブチルマグネシウムブロマイド、sec−ブチルマグネシウムクロライド、イソブチルマグネシウムクロライド、tert−ブチルマグネシウムクロライド、tert−ブチルマグネシウムブロマイド、n−ペンチルマグネシウムクロライド、イソアミルマグネシウムクロライド、sec−アミルマグネシウムクロライド、tert−アミルマグネシウムクロライド、n−ヘキシルマグネシウムクロライド、2−ヘキシルマグネシウムクロライド、3−ヘキシルマグネシウムクロライド、n−へプチルマグネシウムクロライド、n−オクチルマグネシウムクロライド、シクロプロピルマグネシウムクロライド、シクロペンチルマグネシウムクロライド、シクロヘキシルマグネシウムクロライド、シクロヘキシルマグネシウムブロマイド、1−アダマンチルマグネシウムブロマイド、2−アダマンチルマグネシウムブロマイド、ビニルマグネシウムクロライド、アリルマグネシウムクロライド、1−プロペニルマグネシウムクロライド、1−メチルビニルマグネシウムクロライド、2−ブテニルマグネシウムクロライド、エチニルマグネシウムクロライド、2−メトキシエチルマグネシウムクロライド、2−フェノキシエチルマグネシウムクロライド、ベンジルマグネシウムクロライド、α−メチルベンジルマグネシウムクロライド、p−メチルベンジルマグネシウムクロライド、o−メトキシベンジルマグネシウムクロライド、2,4−ジメチルベンジルマグネシウムクロライド、フェネチルマグネシウムクロライド、p−メトキシフェネチルマグネシウムクロライド、p−(tert−ブチルオキシ)フェネチルマグネシウムクロライド、3−フェニルプロピルマグネシウムクロライド、ジフェニルメチルマグネシウムクロライド、トリフェニルメチルマグネシウムクロライド、2−フェニル−2−プロピルマグネシウムクロライド、1−フェニル−2−プロピルマグネシウムクロライド、1−ナフチルメチルマグネシウムブロマイド、メトキシメチルマグネシウムクロライドが挙げられる。
【0030】
一般式(2)で示されるグリニヤール試薬は、通常のグリニヤール試薬の調製方法、すなわちエーテル系溶媒中、あるいはエーテル系溶媒と炭化水素系溶媒との混合液中で、一般式(2)に対応するハロゲン化炭化水素(R3X’)と金属マグネシウムとを反応させることにより製造することができる。
この反応で用いられるエーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどの鎖状エーテルや、あるいはテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサンなどの環状エーテルが挙げられる。これらのエーテル系溶媒は1種類のみを用いてもよく、あるいは2種類以上を混合して用いてもよい。
【0031】
また、炭化水素系溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素や、あるいはベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素が挙げられる。これらの炭化水素系溶媒は1種類のみを用いてもよく、あるいは2種類以上を混合して用いてもよい。
【0032】
本発明では、上記した調製法で得られたグリニヤール試薬を、特に単離することなく不活性溶媒溶液としてそのまま一般式(1)のジアルキルホスフィナスハライドとの反応に用いることができる。
本発明での一般式(1)のジアルキルホスフィナスハライドと一般式(2)のグリニヤール試薬との反応は、不活性溶媒中で行われる。一般式(1)のジアルキルホスフィナスハライドを溶解するのに用いる不活性溶媒は、反応原料および反応生成物に対して不活性であれば特に限定されない。このような不活性溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、およびこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0033】
また、本発明に用いられる一般式(2)のグリニヤール試薬の使用量は、一般式(1)のジアルキルホスフィナスハライドに対し、0.5〜5当量である。特に一般式(2)のグリニヤール試薬が低級アルキルグリニヤール試薬(直鎖状または分岐状の炭素数1〜4のアルキル基)の場合、未反応で残存したグリニヤール試薬は、後処理において水あるいは酸性水溶液との接触により分解して、可燃性のガス(例えばメタン、エタン、プロパンなど)となる。したがって、本発明の方法を工業的により安全に実施する観点では、一般式(2)のグリニヤール試薬の使用量は、一般式(1)のジアルキルホスフィナスハライドに対して、好ましくは0.9〜1.5当量である。
【0034】
本発明に使用される銅化合物としては、無機銅または有機銅が使用できる。無機銅としては、例えば塩化銅(I)、塩化銅(II)、臭化銅(I)、臭化銅(II)、ヨウ化銅(I)、酸化銅(I)、酸化銅(II)、炭酸銅(I)、炭酸銅(II)、硫酸銅(II)、シアン化銅(II)、水酸化銅(II)、塩化二アンモニウム銅(II)が挙げられる。
【0035】
また、有機銅としては、例えば無水酢酸銅(II)、酢酸銅(II)、銅(II)アセチルアセトナート、安息香酸銅(II)、銅(II)ベンゾイルアセトナート、クエン酸銅(II)、銅(II)ジピバロイルメタナート、エチルアセト酢酸銅(II)、2−エチルヘキサン酸銅(II)、オレイン酸銅(II)、ステアリン酸銅(II)、チオシアン酸銅(I)、銅(II)トリフルオロアセチルアセトナートが挙げられる。
【0036】
これらの銅化合物うち、臭化銅(I)、臭化銅(II)、塩化銅(I)、塩化銅(II)などのハロゲン化銅化合物または銅(II)アセチルアセトナートを用いることが好ましい。
銅化合物の使用量は、一般式(1)のジアルキルホスフィナスハライドに対して0.1〜5モル%である。銅化合物をこの範囲で用いることにより、特に高収率で効率よく目的物である一般式(3)の第3級ホスフィンを得ることができる。
【0037】
一般式(1)のジアルキルホスフィナスハライドに対して銅化合物の使用量が0.1モル%未満の場合は、反応速度が遅かったり、途中で触媒が失活してしまい、反応が充分に進行せず収率が低下する。
また、銅化合物の使用量が5モル%を超えた場合は、反応は充分に進行するが、次の理由から収率の低下が起こる。第3級ホスフィンは銅化合物に配位して錯体を形成することが知られている(インオーガニック・シンセシス 1979年p.87には塩化銅(I)が3モル倍のトリフェニルホスフィンと錯体を形成することが記載されている)。銅化合物の使用量が多くなると、目的とするホスフィン化合物との錯体の生成量も増加し、収率低下の要因となる。また、形成した錯体を分解して目的とするホスフィン化合物を遊離させるためにはアンモニアなどによる処理が必要となり、工業的に実施する場合は、発生する廃液の環境負荷が大きいことなどの問題が生じるが、本発明ではアンモニアによる処理を行わずとも、充分に高い収率で目的とする第3級ホスフィンの製造が可能である。
【0038】
反応速度、収率、および後処理の操作性などを考慮すると、特に好ましい銅化合物の使用量は、一般式(1)のジアルキルホスフィナスハライドに対して0.1〜3モル%である。
本発明の反応は、用いる一般式(1)、一般式(2)の化合物の種類により異なるが、一般的には−70℃から用いられる溶媒の沸点までの間の温度であれば進行する。しかし、好ましくは20℃から用いられる溶媒の沸点までの間の温度である。また、反応時間は、用いる一般式(1)、一般式(2)の化合物の種類や量、銅化合物の種類や量、反応温度、用いる溶媒によって変わるが、1時間から1日であり、多くの場合は2〜12時間で反応が完結する。
【0039】
本発明では、反応操作時における一般式(1)のジアルキルホスフィナスハライド、一般式(2)のグリニヤール試薬および銅化合物の添加の順序や添加の方法は、用いる一般式(1)、一般式(2)の化合物の種類や量、銅化合物の種類や量により、以下の方法より適宜選ぶことができる。例えば、上記した適当な溶媒中で一般式(2)のグリニヤール試薬と銅化合物を混合し、無溶媒あるいは上記した適当な溶媒に溶解した一般式(1)のジアルキルホスフィナスハライドを添加する方法や、あるいは上記した適当な溶媒中で一般式(1)のジアルキルホスフィナスハライドと銅化合物を混合し、ここに一般式(2)のグリニヤール試薬を添加する方法や、あるいは一般式(2)のグリニヤール試薬に、上記した適当な溶媒中で一般式(1)のジアルキルホスフィナスハライドと銅化合物を混合して添加する方法などが挙げられる。ただし、本発明は、これらの方法のみに限定されるものではない。
【0040】
反応終了後の処理方法としては、通常のホスフィナスハライドとグリニヤール試薬とによる第3級ホスフィン化合物類の合成法に準じればよい。すなわち、副生するハロゲン化マグネシウムなどの無機塩を除くために、一般式(1)で示されるジアルキルホスフィナスハライドと一般式(2)で示されるグリニヤール試薬との反応混合液(a)と、適量の水かまたは希硫酸などの酸性水溶液と、必要に応じてトルエンなどの適当な有機溶媒とを混合して得られた混合液(b)から水層を分液除去し、常圧あるいは減圧下において、得られた有機層から使用した溶媒を留去することにより、目的とする一般式(3)の第3級ホスフィンを得ることができる。
【0041】
なお、本発明においては、得られた反応混合液(a)に有機溶媒を添加、混合した後、得られた溶液に水あるいは酸性水溶液を添加、混合してもよく、あるいは有機溶媒に反応混合液(a)を添加、混合した溶液を、水あるいは酸性水溶液に添加、混合してもよく、その混合方法は特に限定されない。
以上の方法で得られた第3級ホスフィンは必要に応じて蒸留あるいは再結晶などにより精製してさらに高純度の製品にすることができる。
【0042】
本発明の方法により製造される第3級ホスフィンとしては、例えばジ−tert−ブチルメチルホスフィン、ジ−tert−ブチルエチルホスフィン、ジ−tert−ブチル−n−プロピルホスフィン、ジ−tert−ブチル−イソプロピルホスフィン、ジ−tert−ブチル−n−ブチルホスフィン、ジ−tert−ブチル−sec−ブチルホスフィン、ジ−tert−ブチル−イソブチルホスフィン、トリ−tert−ブチル−ホスフィン、ジ−tert−ブチル−n−ペンチルホスフィン、ジ−tert−ブチル−イソアミルホスフィン、ジ−tert−ブチル−tert−アミルホスフィン、ジ−tert−ブチル−n−ヘキシルホスフィン、ジ−tert−ブチル−2−ヘキシルホスフィン、ジ−tert−ブチル−3−ヘキシルホスフィン、ジ−tert−ブチル−n−オクチルホスフィン、ジ−tert−ブチル(ジフェニルメチル)ホスフィン、ジ−tert−ブチル(トリフェニルメチル)ホスフィン、ジ−tert−ブチルビニルホスフィン、ジ−tert−ブチルアリルホスフィン、ジ−tert−ブチルシクロプロピルホスフィン、ジ−tert−ブチルシクロペンチルスフィン、ジ−tert−ブチルシクロヘキシルホスフィン、ジ−tert−ブチルベンジルホスフィン、ジ−tert−ブチルフェネチルホスフィン、ジ−tert−ブチル(α−メチルベンジル)ホスフィン、ジ−tert−ブチル(p−メチルベンジル)ホスフィン、ジ−tert−ブチル(3−フェニルプロピル)ホスフィン、ジ−tert−ブチル(1−アダマンチル)ホスフィン、ジ−tert−ブチル(2−アダマンチル)ホスフィン、ジ−tert−ブチル(2−フェニル−2−プロピル)ホスフィン、ジ−tert−ブチル(1−フェニル−2−プロピル)ホスフィン、ジ−tert−ブチル(p−メトキシフェネチル)ホスフィン、ジ−tert−ブチル(1−ナフチルメチル)ホスフィン、ジ−tert−アミルメチルホスフィン、ジ−tert−アミルエチルホスフィン、ジ−tert−アミル−n−プロピルホスフィン、ジ−tert−アミルイソプロピルホスフィン、ジ−tert−アミル−n−ブチルホスフィン、ジ−tert−アミル−sec−ブチルホスフィン、ジ−tert−アミルイソブチルホスフィン、ジ−tert−アミル−tert−ブチルホスフィン、トリ−tert−アミルホスフィン、ジ−tert−アミル−n−ペンチルホスフィン、ジ−tert−アミルイソアミルホスフィン、ジ−tert−アミル−n−ヘキシルホスフィン、ジ−tert−アミル−2−ヘキシルホスフィン、ジ−tert−アミル−3−ヘキシルホスフィン、ジ−tert−アミル−n−オクチルホスフィン、ジ−tert−アミル(ジフェニルメチル)ホスフィン、ジ−tert−アミル(トリフェニルメチル)ホスフィン、ジ−tert−アミルビニルホスフィン、ジ−tert−アミルアリルホスフィン、ジ−tert−アミルシクロペンチルホスフィン、ジ−tert−アミルシクロヘキシルホスフィン、ジ−tert−アミルベンジルホスフィン、ジ−tert−アミルフェネチルホスフィン、ジ−tert−アミル(α−メチルベンジル)ホスフィン、ジ−tert−アミル(p−メチルベンジル)ホスフィン、ジ−tert−アミル(3−フェニルプロピル)ホスフィン、ジ−tert−アミル(1−アダマンチル)ホスフィン、ジ−tert−アミル(2−アダマンチル)ホスフィン、ジ−tert−アミル(2−フェニル−2−プロピル)ホスフィン、ジ−tert−アミル(1−フェニル−2−プロピル)ホスフィン、ジ−tert−アミル(p−メトキシフェネチル)ホスフィン、ジ−tert−アミル(1−ナフチルメチル)ホスフィン、ビス(1,1−ジメチルブチル)n−プロピルホスフィン、ビス(1,1−ジメチルブチル)sec−ブチルホスフィン、ビス(1,1−ジメチルブチル)シクロヘキシルホスフィン、ビス(1,1−ジメチルブチル)(p−メチルベンジル)ホスフィン、tert−アミル−tert−ブチル−n−プロピルホスフィン、tert−ブチル−tert−アミル−n−ブチルホスフィン、tert−アミル−tert−ブチルイソブチルホスフィン、tert−アミル−tert−ブチルシクロヘキシルホスフィン、tert−アミル−tert−ブチルベンジルホスフィン、tert−アミル−tert−ブチルフェネチルホスフィン、tert−アミル−tert−ブチル(p−メチルベンジル)ホスフィン、ジ−(1−アダマンチル)エチルホスフィン、ジ−(1−アダマンチル)n−ブチルホスフィン、ジ−(1−アダマンチル)tert−ブチルホスフィン、ジ−(1−アダマンチル)tert−アミルホスフィン、ジ−(1−アダマンチル)シクロペンチルホスフィン、ジ−(1−アダマンチル)シクロヘキシルホスフィン、ジ−(1−アダマンチル)ベンジルホスフィン、ジ−(1−アダマンチル)フェネチルホスフィン、ジ−(1−アダマンチル)(p−メチルベンジル)ホスフィン、トリ−(1−アダマンチル)ホスフィン、ジ−(1−アダマンチル)(2−アダマンチル)ホスフィン、ジ−(1−アダマンチル)(α−メチルベンジル)ホスフィン、ジ−(1−アダマンチル)(2−フェニル−2−プロピル)ホスフィン、ジ−tert−ブチル(2−メトキシエチル)ホスフィン、ジ−tert−ブチル(2−フェノキシエチル)ホスフィン、ジ−tert−ブチル(p−(tert−ブチルオキシ)フェネチル)ホスフィン、ジ−tert−ブチル(2,4−ジメチルベンジル)ホスフィン、ジ−tert−アミル(2−メトキシエチル)ホスフィン、ジ−tert−アミル(2−フェノキシエチル)ホスフィン、ジ−tert−アミル(p−(tert−ブチルオキシ)フェネチル)ホスフィン、ジ−tert−アミル(2,4−ジメチルベンジル)ホスフィン、(1−アダマンチル)−tert−ブチルエチルホスフィン、(1−アダマンチル)−tert−ブチル−n−ブチルホスフィン、(1−アダマンチル)−tert−ブチルシクロヘキシルホスフィン、(1−アダマンチル)−tert−ブチルベンジルホスフィン、(1−アダマンチル)−tert−ブチル(p−メチルベンジル)ホスフィン、ジ−tert−ブチル(メトキシメチル)ホスフィンが挙げられる。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、有機合成反応において遷移金属触媒の配位子として有用である、立体的に嵩高い炭化水素基の結合した第3級ホスフィンを、工業的規模で、簡便かつ安全な操作により製造することができる。
そして、触媒量の銅化合物を使用することにより、高収率かつ高純度で第3級ホスフィンを製造することができ、反応後の後処理で発生する廃液量を著しく低減することができる。
【0044】
特に、銅化合物の使用量を、一般式(1)のジアルキルホスフィナスハライドに対して0.1〜5モル%とすることにより、きわめて高収率で目的物である一般式(3)の第3級ホスフィンを得ることができる。
さらに工業的に容易に調製でき、反応性に富んだグリニヤール試薬を原料として用いるため、種々の嵩高い置換基を有する第3級ホスフィンを製造できる。
【0045】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、純度(%)はガスクロマトグラフィー分析での面積百分率値である。また、銅化合物の添加量については、ジアルキルホスフィナスクロライドに対するモル%を併せて示した。
【0046】
【実施例1】
ジ−tert−ブチルエチルホスフィンの合成
充分に窒素置換した300ml容量の四頚フラスコに、ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライド18.1g(0.1モル)と、臭化銅(I)0.28g(0.002モル(2モル%相当))と、テトラヒドロフラン60mlとを仕込んだ。そこへ、2モル/リットル濃度のエチルマグネシウムクロライドのテトラヒドロフラン溶液55ml(0.11モル)を、25℃から30℃の温度を保ちながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で2時間攪拌した。反応液を室温にもどした後、ガスクロマトグラフィーにてジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドの消失を確認した。その後、反応液にトルエン50mlおよび5%硫酸水溶液30mlを加えて分液し、次いで有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。さらに減圧下で溶媒を留去し、次いで蒸留を行い、20torrの減圧下において92℃から95℃で留出した留分を集めることにより、目的とするジ−tert−ブチルエチルホスフィン15.7g(純度98.0%)を油状物質として得た。収率88.2%。
【0047】
【実施例2】
ジ−tert−ブチルメチルホスフィンの合成(その1)
充分に窒素置換した300ml容量の四頚フラスコに、ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライド9.0g(0.05モル)と、塩化銅(I)0.025g(0.25ミリモル(0.5モル%相当))と、テトラヒドロフラン30mlとを仕込んだ。そこへ、1モル/リットル濃度のメチルマグネシウムブロマイドのテトラヒドロフラン溶液55ml(0.055モル)を、25℃から30℃の温度を保ちながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で5時間攪拌した。ガスクロマトグラフィーにてジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドの消失を確認した。その後、反応液にトルエン40mlおよび水40mlを加えて分液し、次いで有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。さらに減圧下で溶媒を留去し、次いで蒸留を行い、20torrの減圧下において75℃から81℃で留出した留分を集めることにより、目的とするジ−tert−ブチルメチルホスフィン7.4g(純度98.7%)を油状物質として得た。収率91.1%。
【0048】
【実施例3】
ジ−tert−ブチルメチルホスフィンの合成(その2)
実施例2において塩化銅(I)の添加量を0.010g(0.10ミリモル(0.2モル%相当))とし、40℃で10時間反応させた後、同様の処理操作を行い、目的とするジ−tert−ブチルメチルホスフィン7.1g(純度98.0%)を油状物質として得た。収率86.6%。
【0049】
【実施例4】
ジ−tert−ブチルイソプロピルホスフィンの合成
充分に窒素置換した300ml容量の四頚フラスコに、ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライド9.0g(0.05モル)と、塩化銅(I)0.05g(0.001モル(1モル%相当))と、テトラヒドロフラン30mlとを仕込んだ。そこへ、あらかじめイソプロピルクロライド4.7g(0.060モル)と金属マグネシウム1.7g(0.072モル)とより、テトラヒドロフラン50ml中で調製しておいたグリニヤール試薬溶液を、25℃から30℃の温度を保ちながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で3時間攪拌した。反応液を室温にもどした後、ガスクロマトグラフィーにてジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドの消失を確認した。その後、反応液にトルエン20mlおよび5%硫酸水溶液30mlを加えて分液し、次いで有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。さらに減圧下で溶媒および低沸点成分を留去して、目的とするジ−tert−ブチルイソプロピルホスフィン8.2g(純度95.0%)を油状物質として得た。収率92.7%。
【0050】
【実施例5】
ジ−tert−ブチル(n−ブチル)ホスフィンの合成
充分に窒素置換した300ml容量の四頚フラスコに、あらかじめn−ブチルクロライド5.6g(0.060モル)と金属マグネシウム1.7g(0.072モル)とより、テトラヒドロフラン100ml中で調製しておいたグリニヤール試薬溶液と、銅(II)アセチルアセトナート0.13g(0.0005モル(1モル%相当))とを仕込んだ。そこへ、ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライド9.0g(0.05モル)をテトラヒドロフラン30mlに溶解した溶液を、20℃から25℃の温度を保ちながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で2時間攪拌した。その後、反応液にトルエン30mlおよび5%硫酸水溶液20mlを加えて分液し、次いで有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。さらに減圧下で溶媒を留去し、次いで蒸留を行い、19torrの減圧下において111℃で留出した留分を集めることにより、目的とするジ−tert−ブチル(n−ブチル)ホスフィン9.4g(純度98.0%)を油状物質として得た。収率91.1%。
【0051】
【実施例6】
トリ−tert−ブチルホスフィンの合成
充分に窒素置換した200ml容量の四頚フラスコに、ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライド9.0g(0.05モル)と、塩化銅(I)0.05g(0.0005モル(1モル%相当))と、テトラヒドロフラン20mlとを仕込んだ。そこへ、あらかじめtert−ブチルクロライド6.0g(0.065モル)と金属マグネシウム1.9g(0.078モル)とより、テトラヒドロフラン50ml中で調製しておいたグリニヤール試薬溶液を、20℃から25℃の温度を保ちながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、35℃から40℃の温度で3時間攪拌した。ガスクロマトグラフィーにてジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドの消失を確認した。その後、反応液にトルエン20mlおよび5%硫酸水溶液20mlを加えて分液し、次いで有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。さらに減圧下で溶媒を留去し、次いで蒸留を行い、15torrの減圧下において111℃から113℃で留出した留分を集めることにより、目的とするトリ−tert−ブチルホスフィン9.2g(純度99.0%)を油状物質として得た。収率90.2%。
【0052】
【実施例7】
ジ−tert−ブチルベンジルホスフィンの合成
充分に窒素置換した200ml容量の四頚フラスコに、あらかじめベンジルクロライド8.2g(0.065モル)と金属マグネシウム2.1g(0.085モル)とより、テトラヒドロフラン50ml中で調製しておいたグリニヤール試薬溶液と、臭化銅(II)0.055g(0.0003モル(0.6モル%相当))とを仕込んだ。そこへ、ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライド9.0g(0.05モル)を、溶媒に溶かさずそのままで40℃近辺の温度で1時間かけて滴下した。滴下終了後、40℃から45℃の温度で3時間攪拌した。反応液を室温まで戻した後、反応液にトルエン20mlおよび5%硫酸水溶液20mlを加えて分液し、次いで有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。さらに減圧下で溶媒を留去し、次いで蒸留を行い、0.5torrの減圧下において145℃から150℃で留出した留分を集めることにより、目的とするジ−tert−ブチルベンジルホスフィン10.6g(純度98.5%)を油状物質として得た。収率88.3%。
【0053】
【実施例8】
ジ−tert−アミルシクロヘキシルホスフィンの合成
充分に窒素置換した300ml容量の四頚フラスコに、ジ−tert−アミルホスフィナスクロライド10.4g(0.05モル)と、塩化銅(I)0.10g(0.001モル(2モル%相当))と、テトラヒドロフラン30mlとを仕込んだ。そこへ、あらかじめシクロヘキシルクロライド8.3g(0.060モル)と金属マグネシウム2.0g(0.08モル)とより、テトラヒドロフラン50ml中で調製しておいたグリニヤール試薬溶液を、25℃から30℃の温度を保ちながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、35℃から40℃の温度で6時間攪拌した。反応液を室温に戻した後、反応液にトルエン20mlおよび5%硫酸水溶液20mlを加えて分液し、次いで有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。さらに減圧下で溶媒および低沸点成分を留去して、目的とするジ−tert−アミルシクロヘキシルホスフィン12.4g(純度94.9%)を油状物質として得た。収率90.2%。
Mass(CI法)M/z 257(M++1:ベース)
【0054】
【比較例1】
実施例6において塩化銅(I)の添加量を3mg(ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドに対して0.05モル%相当)とし、還流温度で10時間反応させた後のガスクロマトグラフィー分析では、トリ−tert−ブチルホスフィンへの転化率は15%であった。
【0055】
【比較例2】
実施例6において塩化銅(I)の添加量を0.75g(ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドに対して15モル%相当)とし、同様の反応および処理を行った後、減圧下で溶媒および低沸点成分を留去して、トリ−tert−ブチルホスフィン5.9g(純度93.8%)を油状物質として得た。収率54.4%。

Claims (10)

  1. 下記一般式(1)
    Figure 0004271455
    (式中、R1およびR2は、それぞれ独立して炭素数4〜13の第3級炭化水素基を表し、Xは、塩素または臭素原子を表す。)
    で示されるジアルキルホスフィナスハライドと、下記一般式(2)
    Figure 0004271455
    (式中、R3は、直鎖状または分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アラルキル基または低級アルコキシ低級アルキル基を表し、X’は、塩素、臭素またはヨウ素原子を表す。)
    で示されるグリニヤール試薬とを、一般式(1)のジアルキルホスフィナスハライドに対して0.1〜5モル%に相当する量である銅化合物の存在下で反応させることを特徴とする、下記一般式(3)
    Figure 0004271455
    (式中、R1、R2およびR3は上記と同義である。)
    で示される第3級ホスフィンの製造方法。
  2. 一般式(1)で示されるジアルキルホスフィナスハライドに対して、0.1〜3モル%に相当する量である銅化合物の存在下で反応させることを特徴とする、請求項1に記載の第3級ホスフィンの製造方法。
  3. 一般式(1)で示されるジアルキルホスフィナスハライドと一般式(2)で示されるグリニヤール試薬との反応混合液(a)と、水あるいは酸性水溶液と、必要に応じて有機溶媒とを混合攪拌し、得られた混合液(b)から水層を分液除去した後、常圧あるいは減圧下において溶媒を留去することを特徴とする、請求項1または2に記載の第3級ホスフィンの製造方法。
  4. 銅化合物が、ハロゲン化銅または銅(II)アセチルアセトナートであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の第3級ホスフィンの製造方法。
  5. 一般式(2)で示されるグリニヤール試薬のマグネシウム原子に結合している炭素原子が第1級炭素であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の第3級ホスフィンの製造方法。
  6. 一般式(2)で示されるグリニヤール試薬のマグネシウム原子に結合している炭素原子が第2級炭素であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の第3級ホスフィンの製造方法。
  7. 一般式(2)で示されるグリニヤール試薬のマグネシウム原子に結合している炭素原子が第3級炭素であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の第3級ホスフィンの製造方法。
  8. 一般式(1)で示されるジアルキルホスフィナスハライドのXが塩素原子であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の第3級ホスフィンの製造方法。
  9. 一般式(1)で示されるジアルキルホスフィナスハライドが、ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドまたはジ−tert−アミルホスフィナスクロライドであることを特徴とする、請求項8に記載の第3級ホスフィンの製造方法。
  10. 一般式(1)で示されるジアルキルホスフィナスハライドが、ジ−tert−ブチルホスフィナスクロライドであり、一般式(2)で示されるグリニヤール試薬がtert−ブチルマグネシウムハライドであることを特徴とする、請求項9に記載の第3級ホスフィンの製造方法。
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