JP4271436B2 - ズームレンズ及び電子スチルカメラ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はズームレンズに関し、特に電子スチルカメラ、ビデオカメラに用いられる高画質のズームレンズに関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピュータの進歩、普及と相まって、画像入力装置として電子スチルカメラが急速に普及している。電子スチルカメラに用いられる固体撮像素子の総画素数は100万画素を超え、最近では総画素数が300万画素を超える固体撮像素子を搭載した電子スチルカメラも商品化されるようになった。また、ビデオカメラも動画の他に高画質の静止画を撮影できる機能を搭載するようになった。
【0003】
電子スチルカメラの光学系は、物体側から順に、撮像レンズ、光学ローパスフィルタ、固体撮像素子で構成されている。撮像レンズにより被写体に対応する実像が固体撮像素子の受光面上に形成される。固体撮像素子は画素構造により空間的サンプリングを行い、撮像面上に形成された像の映像信号を出力する。固体撮像素子は薄く、軽く、小型であるため、電子スチルカメラを小型にすることができる。
【0004】
固体撮像素子は画素構造により空間的サンプリングを行うが、この場合に生じる折り返し歪みを除去するために、一般に、撮像レンズと固体撮像素子の間に光学ローパスフィルタを配置して、ズームレンズが形成する画像から高周波成分を除去している。光学ローパスフィルタは、一般に水晶板で構成され、水晶の複屈折を利用して、自然光が入射すると常光線と異常光線とが離れて平行に出射する性質を利用している。
【0005】
固体撮像素子は、画面サイズが同じ状態で画素数を増大させると画素ピッチが小さくなるため、開口率が低下し、受光感度が低下する。そこで、固体撮像素子の各画素に微小正レンズを設けて、実効開口率を向上させて、受光感度の低下を防いでいる。この場合、微小正レンズからの出射光の大半を対応する各画素に到達させるために、ズームレンズは各画素に入射する主光線を光軸と平行に近く、つまりテレセントリック性を良好にする必要がある。
【0006】
電子スチルカメラには多くの形態が考えられるが、その1つの形態としてズーム比が2倍〜3倍のズームレンズを搭載したコンパクトタイプがある。コンパクトタイプでは、持ち運び易さが要望されており、少なくとも非使用時の光学全長(レンズ系全体の最も物体側のレンズ面の頂点から固体撮像素子の撮像面までの距離)を短くする必要がある。また、より高い結像性能のズームレンズ、広角側の画角の広いズームレンズが求められている。
【0007】
コンパクトタイプに適したズームレンズとして、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群で構成され、2つのレンズ群の間隔を変えることにより変倍を行う2群ズームレンズが考えられる。このような2群ズームレンズは、広角に向いているという特徴があるが、ズーム比が2倍程度と小さいという問題がある。また、フォーカス調整を行うには2つのレンズ群の少なくとも一方を移動させる必要があるが、いずれのレンズ群も大きく重いことから、オートフォーカスに向いていないという問題がある。この問題を解決するために、2群ズームレンズの像側に正パワーの第3レンズ群を配置した3群ズームレンズが数多く提案されている(例えば特許文献1〜4参照)。
【0008】
これらの3群ズームレンズは、物体側から順に、負パワーの第1レンズ群、正パワーの第2レンズ群、正パワーの第3レンズ群で構成され、広角端から望遠端への変倍に際して、第1レンズ群と第2レンズ群の間の空気間隔が単調減少し、第2レンズ群と第3レンズ群の間の空気間隔が単調増加し、第3レンズ群は固定又は移動するようになっている。
【0009】
第3レンズ群の光軸方向の移動によりフォーカス調整も行っている。第3レンズ群はテレセントリック性を良好にする作用を有している。また、第3レンズ群は外径の小さい1枚のレンズで構成されているので、パワーの小さい小型モータでも第3レンズ群を高速で移動させることができ、オートフォーカスに適している。第1レンズ群と第2レンズ群の移動は円筒カムにより行われるので、円筒カムを利用して非使用時に3つのレンズ群をすべて固体撮像素子側に寄せて沈胴とすることが可能である。このため、このようなズームレンズを搭載した電子スチルカメラは、非使用時の奥行を薄くすることが可能である。
【0010】
ここで、コンパクトタイプの電子スチルカメラは、持ち運びやすさの点から非使用時の奥行が薄いことが要望され、また、撮影画像の高解像度化が要望されている。カメラ本体の非使用時の奥行を薄くするには、固体撮像素子の画面サイズを小さくするとともに、ズームレンズの非使用時の光学全長を短縮するとよい。非使用時の光学全長を短くするには、前記のように沈胴構成を採用するとよく、さらに、各レンズ群の全長を短くし、沈胴時のレンズ群間隔を短くするとよい。
【0011】
撮影画像の高解像度化には、固体撮像素子の画素数を多くするとともに、ズームレンズを高解像度にするとよい。しかし、固体撮像素子の画面サイズを小さくし、画素数を増大させると、画素ピッチが非常に小さくなるため、回折の影響によりズームレンズの結像特性が劣化することに注意する必要がある。回折の影響を低減するには、ズームレンズのF値を小さくするとよい。
【0012】
また、撮影画像からその周辺部の画像を切り取る場合もあることを考えると、撮影画像は画面全体の解像度がより均一であることが望まれる。固体撮像素子の解像度均一性は非常に良好であるが、ズームレンズの解像度特性は、一般に画面中央部では高いが、画面周辺部では低いという傾向がある。また、画角を広げていくと、歪曲収差の補正が困難になるという傾向がある。
【0013】
【特許文献1】
特開平10−39214号公報
【0014】
【特許文献2】
特開平10−307258号公報
【0015】
【特許文献3】
特開2001−42218号公報
【0016】
【特許文献4】
特開2001−141997号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記の特許文献1の構成では、画角の広さや歪曲収差の補正が不十分であり、特許文献2、3の構成では、歪曲収差の補正が不十分であり、特許文献4の構成では、各レンズ群の全長が長いため、非使用時の光学全長を短くできないという問題があった。
【0018】
また、電子スチルカメラ用ズームレンズは、35mmフィルムカメラに用いるズームレンズに比べて、レンズ素子の加工公差、ズームレンズユニットの組立公差が非常に厳しいという問題があった。これは、35mmフィルムカメラの有効画面(水平36mm×垂直24mm)の対角長が約43.3mmであるのに対して、固体撮像素子の有効画面の対角長がかなり小さいことに起因している。
【0019】
さらに、沈胴構成とするには、変倍に際して移動する移動鏡筒と、移動鏡筒を保持する固定鏡筒が必要であるが、沈胴時光学全長に比べて使用時光学全長があまりにも長い場合には、固定鏡筒が移動鏡筒を安定に保持できないために、一部レンズ群が偏心し、撮影画像の結像特性の劣化を招くという問題があった。このため、ズームレンズの設計性能は良好であっても、レンズ素子と鏡筒部品の加工公差、組立公差が非常に厳しいために、量産で設計性能に近い結像性能を実現することが困難という問題があった。
【0020】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、解像度が高く、非使用時の光学全長が短く、歪曲収差を良好に補正し、かつ偏心敏感度の低いズームレンズ、及びこれを用いた電子スチルカメラ、ビデオカメラを提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明のズームレンズは、物体側から順に、負パワーの第1レンズ群と、正パワーの第2レンズ群と、正パワーの第3レンズ群と、前記第2レンズ群の物体側に固定された絞りとを備えたズームレンズであって、
前記第1レンズ群を構成するレンズは、物体側から順に、曲率の強い面を像側に向けた負メニスカスレンズの第1レンズと、曲率の強い面を像側に向けた負メニスカスレンズの第2レンズと、正レンズの第3レンズとであり、
前記第2レンズ群を構成するレンズは、物体側から順に、正レンズの第4レンズと、正レンズの第5レンズと、負レンズの第6レンズと、負レンズの第7レンズと、正レンズの第8レンズとであり、
前記第3レンズ群を構成するレンズは、正レンズの第9レンズであり、
前記第1レンズの像側面、及び前記第4レンズの物体側面はいずれも中心から離れるにつれて局所曲率半径が単調増加する非球面であり、
前記第9レンズの物体側面は非球面であり、
撮影距離が無限遠の場合、広角端から望遠端への変倍に際し、前記第1レンズ群は像側に凸の軌跡を描き、前記第2レンズ群は物体側に単調に移動し、
撮影距離が無限遠の場合のズーム比が2.5〜3.2倍の範囲内であり、広角端における画角が70°〜80°の範囲内であり、
広角端における前記ズームレンズの物体側面の頂点から像面までの距離をLW、望遠端における前記第ズームレンズの物体側面の頂点から像面までの距離をLT、撮影距離が無限遠で広角端におけるレンズ系全体の焦点距離をfW、前記第2レンズ群の焦点距離をfG2、前記第3レンズ群の焦点距離をfG3、物体側から第4番目のレンズの焦点距離をf4、物体側から第8番目のレンズの焦点距離をf8とすると、
|LW−LT|/LW<0.1
2.5<fG2/fW<3
5<fG3/fW<6
1.4<f4/fG2<1.6
0.5<f8/fG2<0.7
の関係を満足することを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明は、物体側から順に、負パワーの第1レンズ群と、正パワーの第2レンズ群と、正パワーの第3レンズ群と備えた3群ズームレンズにおいて、所定の関係を満足することにより、解像度が高く、非使用時光学全長が短いズームレンズを実現できる。
【0023】
本発明においては、前記第4レンズ、第5レンズの屈折率を、それぞれn4、n5とし、前記第4レンズ、前記第5レンズのアッベ数を、それぞれν4、ν5とすると、
4>1.75
ν4>35
5>1.6
ν5>45
の関係を満足することが好ましい。この構成によれば、広角端から望遠端への変倍に際しての軸上色収差及び倍率色収差を小さくするとともに、像面湾曲を小さくすることができる。
【0024】
また、前記第1レンズ群の焦点距離をfG1、前記第1レンズのレンズの焦点距離をf1、前記第2レンズの焦点距離をf2とすると、
0.6<f1/fG1<0.9
1.5<f2/fG1<4
の関係を満足することが好ましい。この構成によれば、第1レンズ群で発生する歪曲収差を補正するとともに、第1レンズ群の光学全長を短くすることができる。
【0025】
また、前記第4レンズの物体側面の曲率半径をr4F、円錐定数をκ4F、4次非球面係数をD4Fとすると、
−0.9<κ4F+8D4F4F 3<−0.7
の関係を満足することが好ましい。この構成によれば、絞りの中央部を通過する画角の小さい光線に対して、第4レンズの物体側面の偏心敏感度を低減することができる。
【0026】
また、前記第2レンズ群の焦点距離をfG2、光学全長をdG2とすると、
0.7<dG2/fG2<1
の関係を満足することが好ましい。この構成によれば、第2レンズ群で発生する諸収差をバランス良く補正するとともに、第2レンズ群の光学全長を、短くすることができる。
【0027】
また、第1レンズの物体側面の曲率半径をr1F、像側面の曲率半径をr1R、前記第2レンズの物体側面の曲率半径をr2F、像側面の曲率半径をr2Rとすると、
3<r1F/r1R<7
2<r2F/r2R<5
の関係を満足することが好ましい。この構成によれば、第1レンズ群で発生する非点収差及び歪曲収差の補正が容易になる。
【0028】
また、前記第5レンズと前記第6レンズとが接合されていることが好ましい。この構成によれば、第2レンズ群の全長を短くできるとともに、第2レンズ群の偏心敏感度も低くできる。
【0029】
また、前記第7レンズと前記第8レンズとが接合されていることが好ましい。この構成によれば、第2レンズ群の全長を短くできるとともに、第2レンズ群の偏心敏感度も低くできる。
【0030】
また、前記第4レンズの像側面は平面、又は凹面であることが好ましい。この構成によれば調心が容易になる。
【0031】
また、本発明の電子スチルカメラは、前記各ズームレンズのいずれかと、固体撮像素子とを備えている。この構成によれば、解像度が高く、非使用時の奥行が薄い電子スチルカメラを提供することができる。
【0032】
前記構成においては、前記固体撮像素子は、傾き調整可能であることが好ましい。この構成によれば、撮像面の結像特性を改善することができ、撮像画像の全領域で結像特性を良好にできる。
【0033】
また、本発明のビデオカメラは、前記各ズームレンズのいずれかと、固体撮像素子とを備えている。この構成によれば、解像度が高く、非使用時の奥行が薄いビデオカメラを提供することができる。
【0034】
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係るズームレンズは、撮影距離が無限遠の場合のズーム比が2.5〜3.2倍の範囲内であり、広角端における画角が70°〜80°の範囲内であり、この構成において、解像度が高く、非使用時の光学全長が短く、歪曲収差を良好に補正し、かつ偏心敏感度の低いズームレンズを実現するものである。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態に係るズームレンズの構成図であり、図1(a)は広角端の状態、図1(b)は中間位置の状態、図1(c)は望遠端の状態を示している。
【0036】
本図に示したズームレンズは、物体側から順に、負パワーの第1レンズ群10、正パワーの第2レンズ群20、正パワーの第3レンズ群30を備えている。また、像側には、物体側から順に、光学ローパスフィルタ40、固体撮像素子50が配置されており、被写体の像が固体撮像素子50の撮像面上に形成されることになる。
【0037】
光学ローパスフィルタ40は、赤外カットフィルタと3枚の水晶板で構成されており、固体撮像素子50の保護のためのカバーガラスが取り付けられている。図1の光学ローパスフィルタ40の図示は、赤外カットフィルタ、光学ローパスフィルタ、及びカバーガラスを1つの等価な平行平板素子で表している。
【0038】
本実施の形態に係るズームレンズは、物体側から順に負パワー、正パワーの順に配置された2群ズームレンズを基本として、その像側に正パワーのレンズ群を付加した3群ズームレンズである。このズームレンズの変倍は、第1レンズ群10と第2レンズ群20との間の間隔を変えるとともに、第3レンズ群30を光軸方向に移動させることにより行う。この場合、第1レンズ群10は、像側に凸の軌跡を描くことになる。
【0039】
フォーカス調整は、第3レンズ群30を光軸方向に移動させることにより行う。第3レンズ群30は、3つのレンズ群の中で最も軽いため、フォーカス調整用レンズ群の高速移動が望まれるオートフォーカスに適している。また、第3レンズ群30は、テレセントリック性を良好にする作用を有するので、固体撮像素子にマイクロレンズが搭載される場合には有用である。
【0040】
3群ズームレンズにおいて非使用時の光学全長(レンズ系全体の最も物体側のレンズ面の頂点から固体撮像素子の撮像面までの距離)を短くするには、3つのレンズ群の全長を短くするとよい。そこで、後述のように、3つのレンズ群は、いずれも構成枚数を少なくするとともに、各レンズ群の全長を極力短くするようにしている。
【0041】
ここで、コンパクトタイプの電子スチルカメラでは、非使用時光学全長を短くするとともに、ズームレンズ鏡筒の外径を小さくすることが要望される。円筒カムの回転角は例えば120°以下と上限があるため、円筒カムの直径を小さくすると、カム溝の傾斜角が大きくなり、第1レンズ群10と第2レンズ群20を滑らかに移動させることが困難となる。
【0042】
また、鏡筒は1つの固定鏡筒と、1つ又は複数の移動鏡筒により構成され、沈胴時の光学全長を短くするには固定鏡筒と移動鏡筒を短くする必要がある。しかしながら、沈胴時光学全長に対して使用時光学全長の最大値の比が大きい場合には、第1レンズ群10と第2レンズ群20とが互いに偏心しやすくなり、レンズ系全体の結像特性が劣化する。これらの問題の解決には、使用時光学全長の最大値を短くすることが有効である。
【0043】
そこで、本発明は後述のように、広角端における光学全長と望遠端における光学全長との差を小さくすることにより、使用時光学全長の最大値を短くしている。また、第2レンズ群20の焦点距離と第3レンズ群30の焦点距離とを適切に設定し、第4レンズ4の焦点距離と第8レンズ8の焦点距離を適切に設定することにより、結像特性が良好になるようにした上で使用時光学全長を短くしている。
【0044】
負正の2群ズームレンズの使用時光学全長は、広角端又は望遠端で最長となり、途中のズーム位置で最短となる。2群ズームレンズの像側に正パワーで位置固定の第3レンズ群を配置すると、やはり、広角端又は望遠端で最長となり、途中のズーム位置で最短となる。
【0045】
本発明に係るズームレンズは、各レンズ群の全長を短くするために、以下のような特徴を備えている。図1に示したように、第1レンズ群10は、その全長を短くするために、物体側から順に、負レンズ(第レンズ1)、負レンズ(第2レンズ2)、正レンズ(第3レンズ3)の3枚のレンズで構成している。第1レンズは、曲率の強い面を像側に向けた負メニスカスレンズであり、第2レンズは、曲率の強い面を像側に向けた負メニスカスレンズであり、第3レンズは、曲率の強い面を物体側に向けた正レンズである。
【0046】
負レンズの第1レンズ1及び第2レンズ2で負の歪曲収差を発生するが、正パワーの第3レンズ3で正の歪曲収差を発生させて、レンズ系全体の広角端における負の歪曲収差の低減を図っている。また、この歪曲収差をさらに小さくするために、第1レンズ1の像側面を中心から離れるにつれて局所曲率半径が単調増加する非球面としている。
【0047】
第2レンズ群20は、物体側から順に、正レンズ(第4レンズ4)、正レンズ(第5レンズ5)、負レンズ(第6レンズ6)、負レンズ(第7レンズ7)、正レンズ(第8レンズ8)の5枚構成としている。第4レンズ4は曲率の強い面を物体側に向けている。
【0048】
第4レンズ4の物体側近傍に絞り21を配置しているので、軸上光線の入射高は第4レンズ4で最大となり、第4レンズ4が両面とも球面の場合には第4レンズ4で負の球面収差を発生する。そこで、第4レンズ4の物体側面を中心から離れるにつれて局所曲率半径が単調増加するような非球面として、第3レンズ群30で発生する球面収差の低減を図っている。
【0049】
また、第5レンズ5と第6レンズ6とを接合し、第7レンズ7と第8レンズ8とを接合させることにより、第2レンズ群20の全長を短くしている。
【0050】
第3レンズ群30は正レンズ(第9レンズ9)の1枚で構成しているので、その全長は短い。この第9レンズ9は、物体側面を非球面として正の歪曲収差を発生させ、広角端における負の歪曲収差の絶対値が低減するようにしている。なお、図1の例では、第9レンズ9は、凸メニスカスレンズであるが、両凸レンズとしてもよい。
【0051】
フォーカス調整は、第1レンズ群10と第2レンズ群20とは動かさないで、第3レンズ群30だけを光軸方向に移動させることにより行う。撮影距離が短くなるにつれて、第3レンズ群30が物体側に出ていく。第3レンズ群30は、1枚のレンズで構成され、移動する他の機構部品も含めた移動部分が軽いので、パワーの小さい小型のモータでも高速で移動させることが可能となり、オートフォーカス調整を高速で行うことが可能になる。なお、フォーカス調整のために、第9レンズ9が移動する際に倍率色収差が変化するが、実用上問題ない程度に抑制している。
【0052】
以下、条件式を用いて本実施の形態について、より具体的に説明する。下記の条件式において、LWは広角端における光学全長、LTは望遠端における光学全長、fWはレンズ系全体の広角端における焦点距離である。fGiは物体側から見て、第i番目(iは整数)のレンズ群の焦点距離である。
【0053】
また、物体側から見て、第i番目(iは整数)のレンズを第iレンズとすると、fiは第iレンズの焦点距離、niは第iレンズの屈折率、νiは第iレンズのアッベ数、riFは第iレンズの物体側面の曲率半径、riRは第iレンズの像側面の曲率半径、また、κ4Fは円錐定数、D4Fは4次非球面係数、dG2は第2レンズ群の光学全長である。
【0054】
本実施の形態に係るズームレンズは以下の条件式(1)〜(5)を満足している。
【0055】
式(1) |LW−LT|/LW<0.1
式(2) 2.5<fG2/fW<3
式(3) 5.0<fG3/fW<6
式(4) 1.4<f4/fG2<1.6
式(5) 0.5<f8/fG2<0.7
条件式(1)は、使用時光学全長の最大値を短くするとともに良好な結像特性を確保するための条件を表している。使用時光学全長の最大値を短くするには、広角端における光学全長と望遠端における光学全長とを等しくするのが理想である。ただし、広角端における光学全長と望遠端における光学全長を完全に等しくしようとすると、結像特性を犠牲にする場合もある。条件式(1)はこのことを考慮して得られた条件である。条件式(1)が満足されない場合には、使用時の光学全長を短くするとともに良好な結像特性を確保することが困難となる。
【0056】
条件式(2)は、使用時光学全長を極力短くするとともに、諸収差の発生をバランス良く補正するための条件を表している。fG2/fWが上限を越えると、第2レンズ群の物像間距離が長くなるために、使用時光学全長が長くなってしまう。この場合、第3レンズ群の倍率を小さくすれば光学全長が短くなるが、第3レンズ群のパワーが大きくなるので、第3レンズ群で発生する像面湾曲がアンダーになり、この像面湾曲を第1レンズ群と第2レンズ群とで補正することが困難となる。
【0057】
一方、fG2/fWが下限を越えると、使用時光学全長は短くなるものの、望遠端において第1レンズ群と第2レンズ群との間に絞りを配置できるだけの空気間隔を確保することが困難となる。
【0058】
条件式(3)は、固体撮像素子に入射する最大像高における主光線の傾斜角を小さく、つまりテレセントリック性を良好にするとともに、像面湾曲を低減するための条件を表している。fG3/fWが下限を超えると、テレセントリック性は良好となるものの、レンズ系全体の像面湾曲を補正しきれなくなる。
【0059】
一方、fG3/fWが上限を超えると、像面湾曲は低減するものの、テレセントリック性が不十分となる。
【0060】
条件式(4)及び(5)は、第2レンズ群で発生する諸収差をバランス良く補正するとともに、使用時のレンズ系全体の光学全長を短くするための条件を表している。f4/fG2が上限を超える場合、又はf8/fG2が下限を超える場合は、第2レンズ群の物体側主点の物体側への偏りが不十分となる。このため、望遠端において第1レンズ群の像側主点から第2レンズ群の物体側主点までの間隔を所望の長さにしようとすると、第1レンズ群と第2レンズ群との間に絞りを配置できる空間を確保できなくなる。
【0061】
一方、f4/fG2が下限を超える場合、又はf8/fG2が上限を超える場合、第2レンズ群G2の物体側主点の物体側への偏りは十分となる。このため、望遠端において第1レンズ群と第2レンズ群との間に絞りを配置する空間を確保するとともに、使用時光学全長を短くすることができる。しかしながら、第5レンズのパワーが過大となるため、第5レンズで発生する球面収差、コマ収差を他のレンズでバランス良く補正することが困難となる。
【0062】
また、以下の条件式(6)〜(9)を満足することが好ましい。
【0063】
式(6) n4>1.75
式(7) ν4>35
式(8) n5>1.6
式(9) ν5>45
条件式(6)〜(9)は、広角端から望遠端への変倍に際しての軸上色収差及び倍率色収差を小さくするとともに、像面湾曲を小さくするための条件を表している。条件式(6)〜(9)のいずれかが満足されない場合には、いずれかのズーム位置において軸上色収差又は倍率色収差が大きくなるため、色にじみが目立ったり、像面湾曲が小さくならないために撮影画像の一部で結像特性が良好でないという問題を生じる。
【0064】
また、以下の条件式(10)〜(11)を満足することが好ましい。
【0065】
式(10) 0.6<f1/fG1<0.9
式(11) 1.5<f2/fG1<4
条件式(10)及び条件式(11)は、第1レンズ群で発生する歪曲収差を補正するとともに、第1レンズ群の光学全長を短くするための条件を表している。f1/fG1又はf2/fG1が上限を超える場合、歪曲収差の補正をすることが容易となるが、第1レンズ群の光学全長が長くなる。このため、使用時の光学全長及び沈胴時の光学全長が長くなる。
【0066】
一方、f1/fG1又はf2/fG1が下限を超える場合、第1レンズ群の光学全長を短くすることができるが、歪曲収差を補正することが困難となる。
【0067】
また、以下の条件式(12)を満足することが好ましい。
【0068】
式(12) −0.9<κ4F+8D4F4F 3<−0.7
条件式(12)は、第4レンズの物体側面の非球面に関する円錐定数、及び4次非球面係数を規制することにより、絞りの中央部を通過する画角の小さい光線に対して、第4レンズの物体側面の偏心敏感度を低減するための条件を表している。κ4F+8D4F4F 3は、非球面の球面からのずれの程度を表している。κ4F+8D4F4F 3が下限を越える場合には、非球面の効果により第4レンズの物体側で発生する球面収差は小さくなるが、第4レンズの物体側で発生する偏心コマ収差と偏心非点収差が過大となり、第4レンズの物体側面の偏心敏感度が高くなってしまう。
【0069】
一方、κ4F+8D4F4F 3が上限を越える場合には、第4レンズの物体側で発生する偏心コマ収差と偏心非点収差は小さくなるが、球面収差が補正不足となってしまう。
【0070】
また、以下の条件式(13)を満足することが好ましい。
【0071】
式(13) 0.7<dG2/fG2<1
条件式(13)は、第2レンズ群で発生する諸収差をバランス良く補正するとともに、第2レンズ群の光学全長を、短くするための条件を表している。dG2/fG2が上限を超える場合、第2レンズ群G2の光学全長を短くすることができなくなる。一方、dG2/fG2 が下限を超える場合、球面収差、コマ収差をバランス良く補正することが困難となる。
【0072】
また、以下の条件式(14)、(15)を満足することが好ましい。
【0073】
式(14) 3<r1F/r1R<7
式(15) 2<r2F/r2R<5
条件式(14)及び(15)は、第1レンズ群で発生する非点収差及び歪曲収差を補正するための条件を表している。上限を超える場合、歪曲収差の補正は容易であるが、非点収差が補正不足となる。一方下限を越える場合、歪曲収差を補正することが困難となる。
【0074】
以下、本実施の形態の実施例を示す。以下の各実施例に係るズームレンズの基本構成は、図1に示したものと同様である。
【0075】
(実施例1)
実施例1に係るズームレンズは、非使用時に第1レンズ群10、第2レンズ群20、第3レンズ群30を固体撮像素子50側に寄せる沈胴構成にしており、沈胴時光学全長を短くしている。沈胴構成は、第1レンズ群10と第2レンズ群20とを光軸方向に移動させる円筒カムのカム溝を延ばすことにより実現できる。
【0076】
実施例1のレンズの一部は、非球面としており、非球面形状は以下の(数1)で定義している。なお、(数1)〜(数3)を用いて説明する非球面、及びズーム位置の中間位置に関する説明は、以下の実施例2〜5についても同様である。
【0077】
【数1】
Figure 0004271436
【0078】
ここで、κは円錐定数、rは非球面頂点の曲率半径、D、E、F、Gはそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数、hは光軸からの高さ、Zは非球面上の光軸からの高さがhの点におけるサグ量である。
【0079】
非球面の光軸からの高さがhの点における局所曲率半径ρは、以下の(数2)により与えられる。
【0080】
【数2】
Figure 0004271436
【0081】
撮影距離が無限遠の場合の広角端の焦点距離をfW、望遠端の焦点距離をfTとすると、以下の(数3)の焦点距離fNとなるズーム位置を中間位置と呼ぶことにする。
【0082】
【数3】
Figure 0004271436
【0083】
ズームレンズのレンズデータを以下の表1に示す。
【0084】
【表1】
Figure 0004271436
【0085】
非球面データを以下の表2に示す。
【0086】
【表2】
Figure 0004271436
【0087】
撮影距離が無限遠の場合の可変面間隔データを以下の表3に示す。
【0088】
【表3】
Figure 0004271436
【0089】
なお、表中の長さの単位はすべてmmである。rは曲率半径、dは面間隔、nd、νdはそれぞれd線における屈折率、アッベ数である。G1〜G3は第1〜第3レンズ群に対応しており、L1〜L9は第1〜第9レンズに対応しており、Pは平行平板素子40に対応している。*印を付した面は非球面である。また、表3において、d6、d17、d19は可変部の面間隔であり、図1にその位置を示しており、fは焦点距離、FはFナンバー、ω(°)は入射半画角、Lは光学全長を示している。これらの表に関する説明は、以下の各表においても同様である。
【0090】
実施例1に係るズームレンズの撮影距離が無限遠で絞り開放時の収差図を、図2〜図4に示している。図2は広角端の場合、図3は中間位置の場合、図4は望遠端の場合である。各図における(a)図は球面収差(mm)、(b)図は非点収差(mm)、(c)図は歪曲収差(%)をそれぞれ示している。
【0091】
また、球面収差図において、実線はd線、短破線はF線、長破線はC線の特性である。非点収差図において、実線はサジタル平面、破線はメリディオナル平面の特性である。図2〜図4より、ズーム位置が変化した場合でも諸収差が良好に補正されていることが分かる。
【0092】
実施例1では、固体撮像素子として、有効画素数が水平2048×垂直1536、画素ピッチが水平2.8μm×垂直2.8μm、実効画面サイズが水平5.7344mm×垂直4.3008mmのものを用いることができる。また、固体撮像素子として、実効開口率の向上のために画素ごとにマイクロレンズを設けたものを用いることができる。このことは、以下の実施例2〜5についても同様である。
【0093】
図1に示したズームレンズは、第2レンズ群の偏心敏感度が高い。このため、図1の構成では、第5レンズ5と第6レンズ6とを接合し、第7レンズ7と第8レンズ8とを接合させている。また、第4レンズ4は像側面を凹面として、必要であれば組み立て時に第4レンズ4を調心しやすいようにしている。
【0094】
第5レンズ5と第6レンズ6、第7レンズ7と第8レンズ8とを接合すると、接着剤の両面の境界では屈折率差が小さくなるため、偏心敏感度は低くなる。また、接合した場合は、面間隔誤差を発生しやすいスペーサが不要であるため、スペーサを用いる場合に比べて面間隔の誤差を小さくすることができる。
【0095】
調心を行う場合は、次のようにするとよい。第5レンズ5と第6レンズ6とを接合したものと、第7レンズ7と第8レンズ8とを接合したものをレンズ枠に組み込んだ後に、第4レンズ4を所定の位置に取り付け、偏心測定装置を利用して第2レンズ群20全体の偏心が小さくなるように、第4レンズ4の位置を調整し、最後に接着剤により第4レンズ4をレンズ枠に固定する。
【0096】
このとき、第4レンズ4の像側面が凸面の場合には、第4レンズ4を移動させようとすると、平行偏心と傾斜偏心との両方を生じるため、調心が難しくなる。これに対して、前記のように、第4レンズ4の像側面を凹面(又は平面)としていれば、第4レンズ4を傾斜させることなく平行移動させることができるため、調心が容易になる。
【0097】
また、固体撮像素子を1°以内で傾斜させることにより、固体撮像素子上の結像特性を良好にすることができる。
【0098】
以上のように、実施例1に係るズームレンズは、ズーム比が3.0倍、広角端における画角が76.5°程度で、解像度が高く、非使用時光学全長が短く、歪曲収差が良好に補正されたものとなっている。
【0099】
なお、前記のレンズの接合、調心、及び固体撮像素子の傾斜に関する説明は、以下の実施例2〜5についても同様である。
【0100】
(実施例2)
実施例2に係るズームレンズ基本構成は、実施例1と同様であるが、実施例2では一部のレンズの材質が異なっている。実施例2に係るズームレンズのレンズデータを以下の表4に示す。
【0101】
【表4】
Figure 0004271436
【0102】
非球面データを以下の表5に示す。
【0103】
【表5】
Figure 0004271436
【0104】
撮影距離が無限遠の場合の可変面間隔データを以下の表6に示す。
【0105】
【表6】
Figure 0004271436
【0106】
実施例2に係るズームレンズの撮影距離が無限遠で絞り開放時の収差図を、図5〜図7に示している。図5〜図7より、ズーム位置が変化した場合でも諸収差が良好に補正されていることが分かる。
【0107】
本実施例においても、第4レンズの像面側を凹面としているので、必要であれば、実施例1と同様に、第4レンズの調心を容易に行うことができる。また、固体撮像素子を1°以内で傾斜させることにより、固体撮像素子上の結像特性を良好にすることができる。
【0108】
以上のように、実施例2に係るズームレンズは、ズーム比が3.0倍、広角端における画角が76.5°程度で、解像度が高く、非使用時光学全長が短く、歪曲収差が良好に補正されたものとなっている。
【0109】
(実施例3)
実施例3に係るズームレンズ基本構成は、実施例1と同様であるが、実施例3では一部のレンズの材質が異なっている。実施例3に係るズームレンズのレンズデータを以下の表7に示す。
【0110】
【表7】
Figure 0004271436
【0111】
非球面データを以下の表8に示す。
【0112】
【表8】
Figure 0004271436
【0113】
撮影距離が無限遠の場合の可変面間隔データを以下の表9に示す。
【0114】
【表9】
Figure 0004271436
【0115】
実施例3に係るズームレンズの撮影距離が無限遠で絞り開放時の収差図を、図8〜図10に示している。図8〜図10より、ズーム位置が変化した場合でも諸収差が良好に補正されていることが分かる。
【0116】
本実施例においても、第4レンズの像面側を凹面としているので、必要であれば、実施例1と同様に、第4レンズの調心を容易に行うことができる。また、固体撮像素子を1°以内で傾斜させることにより、固体撮像素子上の結像特性を良好にすることができる。
【0117】
以上のように、実施例3に係るズームレンズは、ズーム比が3.0倍、広角端における画角が76.5°程度で、解像度が高く、非使用時光学全長が短く、歪曲収差が良好に補正されたものとなっている。
【0118】
(実施例4)
実施例4に係るズームレンズ基本構成は、実施例1と同様であるが、実施例4では一部のレンズの材質が異なっている。実施例4に係るズームレンズのレンズデータを以下の表10に示す。
【0119】
【表10】
Figure 0004271436
【0120】
非球面データを以下の表11に示す。
【0121】
【表11】
Figure 0004271436
【0122】
撮影距離が無限遠の場合の可変面間隔データを以下の表12に示す。
【0123】
【表12】
Figure 0004271436
【0124】
実施例4に係るズームレンズの撮影距離が無限遠で絞り開放時の収差図を、図11〜図13に示している。図11〜図13より、ズーム位置が変化した場合でも諸収差が良好に補正されていることが分かる。
【0125】
本実施例においても、第4レンズの像面側を凹面としているので、必要であれば、実施例1と同様に、第4レンズの調心を容易に行うことができる。また、固体撮像素子を1°以内で傾斜させることにより、固体撮像素子上の結像特性を良好にすることができる。
【0126】
以上のように、実施例4に係るズームレンズは、ズーム比が3.0倍、広角端における画角が76.5°程度で、解像度が高く、非使用時光学全長が短く、歪曲収差が良好に補正されたものとなっている。
【0127】
(実施例5)
実施例5に係るズームレンズ基本構成は、実施例1と同様であるが、実施例4では一部のレンズの材質が異なっている。実施例5に係るズームレンズのレンズデータを以下の表13に示す。
【0128】
【表13】
Figure 0004271436
【0129】
非球面データを以下の表14に示す。
【0130】
【表14】
Figure 0004271436
【0131】
撮影距離が無限遠の場合の可変面間隔データを以下の表15に示す。
【0132】
【表15】
Figure 0004271436
【0133】
実施例5に係るズームレンズの撮影距離が無限遠で絞り開放時の収差図を、図14〜図16に示している。図14〜図16より、ズーム位置が変化した場合でも諸収差が良好に補正されていることが分かる。
【0134】
本実施例においても、第4レンズの像面側を凹面としているので、必要であれば、実施例1と同様に、第4レンズの調心を容易に行うことができる。また、固体撮像素子を1°以内で傾斜させることにより、固体撮像素子上の結像特性を良好にすることができる。
【0135】
以上のように、実施例5に係るズームレンズは、ズーム比が3.0倍、広角端における画角が76.5°程度で、解像度が高く、非使用時光学全長が短く、歪曲収差が良好に補正されたものとなっている。
【0136】
前記実施例1〜5の前記条件式(1)〜(15)の値を表16に示す。表16中、E−04とあるのは、×10-4のことである。
【0137】
【表16】
Figure 0004271436
【0138】
(実施の形態2)
図17は、本発明の実施の形態2に係る電子スチルカメラの概略構成図を示したものである。図17において、60はズームレンズ、51は固体撮像素子、61は液晶モニタ、11は第1レンズ群、22は絞り、21は第2レンズ群、31は第3レンズ群である。
【0139】
筐体62の前側にズームレンズ60が配置され、ズームレンズ60の後側には、物体側から順に、光学ローパスフィルタ41、固体撮像素子51が配置されている。筐体62の後側に液晶モニタ61が配置され、固体撮像素子51と液晶モニタ61とは近接している。
【0140】
光学ローパスフィルタ41は、物体側から順に、第1水晶板、第2水晶板、第3水晶板を透明接着剤により互いに接合したものである。3枚の水晶板は平行平面であり、各光学軸はいずれも光軸に対して45°傾斜している。また、各水晶板の光学軸を固体撮像素子51の撮像面52に射影した方向は、ズームレンズ60側から見て、第1水晶板については画面水平方向から左回りに45°回転した方向、第2水晶板については画面水平方向から右回りに45°回転した方向、第3水晶板については画面水平方向となっている。光学ローパスフィルタ41は、固体撮像素子51の画素構造に起因するモアレなどの誤信号の発生を防いでいる。光学ローパスフィルタ41の物体側面には、赤外光を反射し、可視光を透過させる光学多層膜が蒸着されている。
【0141】
固体撮像素子51は、有効画素数が水平2048×垂直1536、画素ピッチが水平2.8μm×垂直2.8μm、有効画面サイズが水平5.7344mm×垂直4.3008mmであり、各画素に微小正レンズが設けられている。固体撮像素子51の物体側にはカバーガラス42が設けられている。ズームレンズ60による被写体の像が撮像面52に形成される。
【0142】
ズームレンズ60として、図1に示したズームレンズが用いられている。ズームレンズ60は物体側から順に、第1レンズ群11、絞り22、第2レンズ群21、第3レンズ群31で構成されている。
【0143】
鏡筒は、移動鏡筒63、第1の円筒カム64、主鏡筒65、第2の円筒カム66、第2レンズ群枠67、第3レンズ群枠68で構成されている。第1レンズ群11は移動鏡筒63に取り付けられ、第2レンズ群21と絞り22とは第2レンズ群枠67に取り付けられ、第3レンズ群31は第3レンズ群枠68に取り付けられている。第2の円筒カム66を回転させると、第1の円筒カム64が回転しながら光軸方向に移動し、第1の円筒カム64が回転すると、移動鏡筒63と第2レンズ群枠67が移動するようになっている。こうして、第2の円筒カム66を回転させると、第1レンズ群11と第2レンズ群21とが固体撮像素子51を基準にした所定の位置に移動するので、広角端から望遠端までの変倍を行うことができる。
【0144】
第3レンズ群枠68はフォーカス調整用モータにより光軸方向に移動可能である。モータにより第3レンズ群31を光軸方向に移動させながら撮影画像の高周波成分がピークとなる位置を検出して、その位置に第3レンズ群31を移動させれば、オートフォーカス調整を行うことができる。
【0145】
非使用時に第1レンズ群11、第2レンズ群21、第3レンズ群31をすべて固体撮像素子51側に寄せれば、沈胴式となり、ズームレンズの非使用時の光学全長を非常に短くすることができる。第1レンズ群11と第2レンズ群21とを固体撮像素子51側に寄せるには、第1の円筒カム64と第2の円筒カム66のカム溝を伸ばすことにより可能となる。
【0146】
こうして、ズーム比が2.5〜3.2倍、広角端における画角が70°〜80°程度で、解像度が高く、非使用時の奥行が薄い電子スチルカメラを提供することができる。
【0147】
なお、図17に示した電子スチルカメラのズームレンズには、前記実施例1〜5に示したいずれかのズームレンズを用いてもよい。
【0148】
また、図17に示した電子スチルカメラの光学系は、動画を対象とするビデオカメラに用いることもできる。この場合、解像度の高い静止画だけでなく、動画も撮影することができる。
【0149】
(実施の形態3)
図18は実施の形態3に係る電子スチルカメラの腰部構成図を示したものである。図17と同一構成のものは同一番号を付して、その詳細な説明は省略する。図18は、図17に示したような電子スチルカメラにおいて、ズームレンズ60に対して固体撮像素子51を傾斜させて取り付けられるように変更した構成を示したものである。
【0150】
固体撮像素子51は、取り付け板70が取り付けられている。取り付け板70には周辺部の3個所に穴が設けられ、主鏡筒65には取り付け板70の3個所の穴に対応する3個所にビス穴が設けられている。主鏡筒65の3つのビス穴のうちの2つの近傍に2つの穴が設けられ、その2つの穴にはそれぞれバネ72が挿入されている。取り付け板70を主鏡筒65に取り付け、3本のビス71(1本のビスは図示せず)が、取り付け板70の3つの穴を貫通して主鏡筒に取り付けられている。このとき、バネ72が取り付け板70を押すように作用するので、バネ72の近傍のビス71を回すことにより、固体撮像素子51の傾斜角と傾斜方位を自由に変えることができる。調整完了後に3本のビスを接着剤で固定すれば、その後はズームレンズ60に対する固体撮像素子51の位置、姿勢を安定に保持することができる。
【0151】
このようにすると、ズームレンズ60の各レンズ面が偏心している場合、固体撮像素子51をその撮像面52がズームレンズ60の光軸と垂直となるように取り付けると、撮像面52の一部の領域で結像特性が良くない場合があるが、固体撮像素子51を適切に傾斜させることにより、撮像面52に生じていた結像特性の良くない領域の結像特性を改善することができる。
【0152】
固体撮像素子51の傾斜角範囲は1°程度にするとよい。固体撮像素子51の傾斜調整は、実際に広角端から望遠端までのいくつかのズーム位置で撮影し、固体撮像素子51からの出力信号から結像特性の良くない領域を探し、次に、出力信号を見ながら、2つのバネ72の近傍にある2本のビスを回して、結像特性の良くない領域の結像特性が良好になるように、固体撮像素子51の傾斜調整を行うとよい。
【0153】
このように、実施の形態3における電子スチルカメラは、偏心が存在しても、固体撮像素子を傾斜させることにより固体撮像素子の撮像面上の結像特性を良好にできるズームレンズを用いるので、撮影画像の結像特性を全領域で良好にすることができる。
【0154】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、ズーム比が2.5〜3.2倍、広角端における画角が70°〜80°で、解像度が高く、非使用時光学全長が短いズームレンズを提供することができる。また、本発明に係るズームレンズを用いることにより、解像度が高く、非使用時の奥行が薄い電子スチルカメラ及びビデオカメラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係るズームレンズの構成図
【図2】本発明の実施例1に係るズームレンズの広角端の収差図
【図3】本発明の実施例1に係るズームレンズの中間位置の収差図
【図4】本発明の実施例1に係るズームレンズの望遠端の収差図
【図5】本発明の実施例2に係るズームレンズの広角端の収差図
【図6】本発明の実施例2に係るズームレンズの中間位置の収差図
【図7】本発明の実施例2に係るズームレンズの望遠端の収差図
【図8】本発明の実施例3に係るズームレンズの広角端の収差図
【図9】本発明の実施例3に係るズームレンズの中間位置の収差図
【図10】本発明の実施例3に係るズームレンズの望遠端の収差図
【図11】本発明の実施例4に係るズームレンズの広角端の収差図
【図12】本発明の実施例4に係るズームレンズの中間位置の収差図
【図13】本発明の実施例4に係るズームレンズの望遠端の収差図
【図14】本発明の実施例5に係るズームレンズの広角端の収差図
【図15】本発明の実施例5に係るズームレンズの中間位置の収差図
【図16】本発明の実施例5に係るズームレンズの望遠端の収差図
【図17】本発明の実施の形態2に係る電子スチルカメラの概略構成図
【図18】本発明の実施の形態3に係る電子スチルカメラの要部構成図
【符号の説明】
10,11 第1レンズ群
20,21 第2レンズ群
30,31 第3レンズ群
21,22 絞り
40 平行平板素子
50 撮像面
1 第1レンズ
2 第2レンズ
3 第3レンズ
4 第4レンズ
5 第5レンズ
6 第6レンズ
7 第7レンズ
8 第8レンズ
9 第9レンズ
60 ズームレンズ
51 固体撮像素子
61 液晶モニタ

Claims (12)

  1. 物体側から順に、負パワーの第1レンズ群と、正パワーの第2レンズ群と、正パワーの第3レンズ群と、前記第2レンズ群の物体側に固定された絞りとを備えたズームレンズであって、
    前記第1レンズ群を構成するレンズは、物体側から順に、曲率の強い面を像側に向けた負メニスカスレンズの第1レンズと、曲率の強い面を像側に向けた負メニスカスレンズの第2レンズと、正レンズの第3レンズとであり、
    前記第2レンズ群を構成するレンズは、物体側から順に、正レンズの第4レンズと、正レンズの第5レンズと、負レンズの第6レンズと、負レンズの第7レンズと、正レンズの第8レンズとであり、
    前記第3レンズ群を構成するレンズは、正レンズの第9レンズであり、
    前記第1レンズの像側面、及び前記第4レンズの物体側面はいずれも中心から離れるにつれて局所曲率半径が単調増加する非球面であり、
    前記第9レンズの物体側面は非球面であり、
    撮影距離が無限遠の場合、広角端から望遠端への変倍に際し、前記第1レンズ群は像側に凸の軌跡を描き、前記第2レンズ群は物体側に単調に移動し、
    撮影距離が無限遠の場合のズーム比が2.5〜3.2倍の範囲内であり、広角端における画角が70°〜80°の範囲内であり、
    広角端における前記ズームレンズの物体側面の頂点から像面までの距離をLW、望遠端における前記第ズームレンズの物体側面の頂点から像面までの距離をLT、撮影距離が無限遠で広角端におけるレンズ系全体の焦点距離をfW、前記第2レンズ群の焦点距離をfG2、前記第3レンズ群の焦点距離をfG3、物体側から第4番目のレンズの焦点距離をf4、物体側から第8番目のレンズの焦点距離をf8とすると、
    |LW−LT|/LW<0.1
    2.5<fG2/fW<3
    5<fG3/fW<6
    1.4<f4/fG2<1.6
    0.5<f8/fG2<0.7
    の関係を満足することを特徴とするズームレンズ。
  2. 前記第4レンズ、前記第5レンズの屈折率を、それぞれn4、n5とし、前記第4レンズ、前記第5レンズのアッベ数を、それぞれν4、ν5とすると、
    4>1.75
    ν4>35
    5>1.6
    ν5>45
    の関係を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
  3. 前記第1レンズ群の焦点距離をfG1、前記第1レンズのレンズの焦点距離をf1、前記第2レンズの焦点距離をf2とすると、
    0.6<f1/fG1<0.9
    1.5<f2/fG1<4
    の関係を満足する請求項1又は2に記載のズームレンズ。
  4. 前記第4レンズの物体側面の曲率半径をr4F、円錐定数をκ4F、4次非球面係数をD4Fとすると、
    −0.9<κ4F+8D4F4F 3<−0.7
    の関係を満足する請求項1から3のいずれかに記載のズームレンズ。
  5. 前記第2レンズ群の焦点距離をfG2、光学全長をdG2とすると、
    0.7<dG2/fG2<1
    の関係を満足する請求項1から4のいずれかに記載のズームレンズ。
  6. 前記第1レンズの物体側面の曲率半径をr1F、像側面の曲率半径をr1R、前記第2レンズの物体側面の曲率半径をr2F、像側面の曲率半径をr2Rとすると、
    3<r1F/r1R<7
    2<r2F/r2R<5
    の関係を満足する請求項1から5のいずれかに記載のズームレンズ。
  7. 前記第5レンズと前記第6レンズとが接合されている請求項1から6のいずれかに記載のズームレンズ。
  8. 前記第7レンズと前記第8レンズとが接合されている請求項1から7のいずれかに記載のズームレンズ。
  9. 前記第4レンズの像側面は平面、又は凹面である請求項1から8のいずれかに記載のズームレンズ。
  10. 請求項1から9のいずれかに記載のズームレンズと、固体撮像素子とを備えた電子スチルカメラ。
  11. 前記固体撮像素子は、傾き調整可能である請求項10に記載の電子スチルカメラ。
  12. 請求項1から9のいずれかに記載のズームレンズと、固体撮像素子とを備えたビデオカメラ。
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