JP4271369B2 - 触媒的酸化によるフェニレンジアミンからキノンジイミンの形成 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
この出願は、1997年10月29日に出願された米国仮特許出願第60/063,764号の出願日を、優先権主張する。
本発明は、表面の酸化物が除去されている活性炭触媒を用いて、対応するフェニレンジアミンからキノンジイミンを調製する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機化学において、環状エノン類(enones)は、よく知られている。最もよく知られている環状エノンの例はキノン、例えば、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、フェナンスラキノン等である。1,4−ベンゾキノンは、普通、キノンと呼ばれる。キノンは、一般に明るい色の化合物であり、化学合成に、生物学的用途に、レドックス物質として、並びに、産業界においても、種々の用途を有する。キノンの化学及び用途に関するいくつかのレヴューが書かれており、例えば、カークオズマー、 化学技術大辞典、第3版、第19巻、第572〜605頁、ジョン ワイリー アンド サンズ、ニュー ヨーク、1982年、が挙げられる。
【0003】
キノンの合成については、多くの文献がある。例えば、ジェイ.ケイソン、酸化によるベンゾキノンの合成、オーガニックシンセシス、第IV巻、305頁、ジョン ワイリー アンド サンズ、ニュー ヨーク、1948年、を参照されたい。一般にキノンは、適切に2置換された芳香族炭化水素誘導体を酸化することにより調製され、該置換基はオルトまたはパラ位の水酸基またはアミノ基である。1,4−ベンゾキノンは、例えば、ハイドロキノン、p−アミノフェノールまたはp−フェニレンジアミン又は、場合によっては、キナ酸の酸化により作ることができる。酸化のために一般的に使用される薬剤は、ジクロメート/硫酸混合物、塩化第二鉄、酸化銀(II)、又は硝酸セリウムアンモニウムである。これらの場合において、芳香族アミノ化合物の酸化は、対応するキノンへの加水分解が伴う。いくつかの方法も、反応の完結に数時間かかり得る。
【0004】
このように、いくつかの先行技術は、触媒的薬剤を用いて、許容できる反応速度を達成し、他の方法は触媒無しに進行する。本発明に従う方法は、キノンジイミンを調製するために、高い転換率及び反応速度を与える触媒を利用する。
【0005】
キノンジイミン化合物の調製において、触媒を利用する先行技術の方法は、デスムース(Desmurs)ら、米国特許第5,189,218号明細書に開示されている。デスムースらの方法はマンガン、銅、コバルト、及び/又は、ニッケル化合物を酸化型反応における触媒として用いて、N−(4−ヒドロキシフェニル)アニリンをN−フェニレンベンゾキノン−イミンへと転換する。
【0006】
他の公知の方法では、フェニレンジアミンをその対応するキノンジイミンに転換するために、無触媒下で、酸化剤を用いる。該方法は、ウィーラー、米国特許第5,118,807号明細書及びハースら、欧州特許第708,080号に記載されている。
【0007】
上記デスムースらの方法は、金属触媒成分を使用するが、他の何らかの金属触媒を使用する方法と同様に、いくつかの欠点を有する。金属触媒は比較的高価であるというだけでなく、それは重要な環境上の問題点を提起する。例えば、廃液流および生成物が金属で汚染され得る。さらに、再使用のための触媒の回収は、ひどく高価であり得る。
【0008】
本技術分野において、種々の非重金属触媒が知られている。例えば、活性炭触媒は、典型的には、多孔性粒子構造および増大された表面積をもたらすために、炭素を、水蒸気または二酸化炭素と共に、高温(800℃から900℃)で加熱することにより調製され、周知の触媒である。例えば、米国特許第4,264,776号明細書は、3級アミンを、活性炭触媒を用いて酸化することによる、2級アミンの調製法を開示し及びクレームする。
【0009】
米国特許第4,158,643号明細書は、酸素を活性炭表面に加え、次いで、炭素支持体に不活性疎水性化合物を含浸させる、活性炭支持体の酸化修飾法を教示する。炭素支持体は、気相活性化用途の何らかの市販の活性炭であってよく、二硫化イオウの存在下での、長期間に亘る、一酸化炭素の酸化に有用である。
【0010】
米国特許第4,624,937号明細書は、3級アミンまたは2級アミンを、酸素または酸素含有ガスの存在下で、触媒的酸化をして、選択的に2級または1級アミンを製造するための、活性炭の調製方法を提供する。第4,624,937号の方法は、表面から酸化物を除去するために、炭素触媒を処理する工程を含む。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、ジアミンからジイミンを調製する方法は知られていることが分かる。さらに、化学反応における、活性炭を含む種々の炭素触媒の使用も知られている。しかし、高い選択率でジイミノ化合物を得るために、ジアミノ化合物の転換において、修飾された活性炭化合物を、触媒として使用することは、今迄のところ示唆されていない。
【0012】
【課題を解決するための手段】
修飾された活性炭触媒の存在下で、フェニレンジアミンを酸素と反応させて、フェニレンジアミン化合物を、対応するキノンジイミンに転換できることが見出された。
【0013】
本発明の修飾された活性炭触媒は、処理されて、その表面から酸化物が除去されている。該修飾された活性炭触媒は、フェニレンジアミンからのキノンジイミンへの、ほぼ定量的(HPLC)収率での転換を可能にする。
【0014】
先行技術と比べた、本発明の利点は、本発明におけるフェニレンジアミン化合物の、対応するキノンジイミンへの転換は、ほぼ定量的であることである。従って、反応が完結すると、廃棄物がほとんど残らない。
【0015】
他の利点は、修飾された活性炭触媒の使用に由来する。修飾された活性炭触媒は、再使用可能なだけでなく、金属触媒に付随する欠点、高いコスト、生成物の汚染、及び、環境廃棄物の問題、を回避する。
【0016】
追加の利点は、本明細書で規定される修飾された活性炭触媒は、ジアミンからジイミンへの転換において、市販の活性炭触媒と比べてより速い、より完全な反応を与えることである。
【0017】
本発明のさらなる利点は、以下の発明の実施の態様を読み及び理解すれば、当業者に明白であろう。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の目的は、フェニレンジアミンを、その対応するキノンジイミンに転換するための効果的な方法を提供することである。
【0019】
本発明の目的に従い、式Iに従うフェニレンジアミン(オルトまたはパラ)
【化5】
ここで、R1、R2およびR3は互いに同じ又は異なり、水素、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、シクロアルキル、複素環、アシル、アロイル、カルバミル、およびシアノから選ばれる、
を、水および、表面の酸化物が除去されている、修飾された活性炭触媒の存在下で酸素と反応させる。反応により、式IIaまたはIIbに従う、対応するキノンジイミンが生成される。
【化6】
ここで、R1、R2およびR3は、式Iに従う化合物におけるものと同じである。
【0020】
反応は、下記で表される。
【化7】
【0021】
満足の行くR1、R2およびR3ラジカルは、直鎖または分岐アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル等;アリール、例えばフェニル、ナフチル、アンスラシル、トリル、エチルフェニル等;シクロアルキル、例えばシクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル等である。他の例としては、アリル及びイソブテニル;1,3,5-sym-トリアジニル、2-ベンゾチアゾリル、2-ベンジイミダゾリル、2-ベンゾキシアゾリル、2-ピリジル、2-ピリミジニル、2,5-チアジアゾリル、2-ピラジニル、アジピル、グルタリール、サクシニル、マロニル、アセチル、アクリリル、メタクリリル、3-メルカプトプロピオニル、カプロイル、ベンゾイル、フタロイル、テレフタロイル、アミノカルボニル、カルベトキシ、カルボニル、フォルミル等である。これらは単にラジカルの例であり、本発明の範囲を限定する趣旨ではない。
【0022】
修飾された活性炭触媒は、酸性及び塩基性の表面酸化物双方を炭素触媒の表面から除去することにより調製される。修飾された活性炭触媒の作り方は、米国特許第4,624,937号明細書に開示され、該開示は、引用により本明細書に含まれる。
【0023】
米国特許第4,624,937号明細書に従い、米国特許第4,264,776号明細書に記載される炭素材料が最初に与えられ、その教示するところは、引用により本明細書に含まれる。
【0024】
普通、炭素触媒は市販されている活性炭であり、その炭素含有量は、骨炭における約10%から、ある種の木炭における約98%まで、及び有機高分子から誘導される活性炭における、ほぼ100%までの範囲である。市販の炭素物質における非炭素物質は、通常、例えば前駆体源、処理方法、及び活性化法、等の要因に依存して異なる。処理工程は単一または複数工程法により完結され得、いずれの場合においても、炭素表面上の酸化物の全体的な化学的還元、すなわち、酸性酸化物の還元又は炭素表面からの除去がもたらされる。
【0025】
本明細書において、用語「酸化物」は、酸素を含む炭素官能基ならびに酸素を含むヘテロ原子官能基を意味する。処理の間、酸素を含まない、他のヘテロ原子官能基も、炭素物質表面から除去され得る。
【0026】
2段階法において、最初に、炭素物質を、酸化剤、例えば液状硝酸、二酸化窒素、CrO3 、空気、酸素、H2O2、次亜塩素酸塩、硝酸を蒸発させて得られる混合ガスにより処理することができる。該処理は、気体状または液状酸化剤を用いることにより完結することができる。液状物を使用する場合には、水溶液100g当たり約10gから約80gのHNO3を含む、濃縮された硝酸が好ましい。好ましい気体状酸化剤は、酸素、二酸化窒素、および硝酸蒸気である。特に効果的な酸化剤は、連行ガスにより気相内に搬入される硝酸および液状硝酸を蒸留させて得られる蒸気を含む、気相の硝酸である。液状酸化剤を用いた場合、約60℃〜約90℃の温度が適切であるが、気体状酸化剤の場合には、該処理工程について、約50℃〜約500℃又はより高くさえある温度がしばしば有利である。
【0027】
製造業者からの炭素を、磁気攪拌子を含む丸底フラスコに入れて、処理を達成できる。説明のため、酸化剤として液状硝酸を選択する。使用する炭素の量は、所望される%炭素負荷量(%炭素負荷量=硝酸溶液100ml当たりに使用される炭素のg数)および、使用すべき硝酸溶液の容積により定められる。普通は、硝酸または他の液状酸化剤100ml当たり、1〜200gで十分である。何らかの適切な方法により温度制御を行なうことができる。所望により、丸底フラスコに、コンデンサーおよびスクラバーを接続することができる。計算された体積の水、好ましくは脱イオン水を、その後に69〜71%硝酸の十分量を、炭素に添加して、所望する硝酸溶液を得る。炭素および硝酸溶液を、次いで、所望する期間、所望する温度で、攪拌する。
【0028】
攪拌後、炭素をろ別し、得られるウェットケーキを、熱分解の前に洗浄し、又は洗浄せずに、及び/又は乾燥してよい。
【0029】
炭素を酸化剤で処理する時間は、広く、約5分から約10時間の範囲で変えることができる。好ましくは、約30分から約6時間の反応時間で充分である。濃縮された硝酸が酸化剤である場合には、約30分から約3時間の接触時間で充分である。
【0030】
第2工程において、酸化された炭素物質を、約500℃から約1500℃、好ましくは約800℃〜1200℃、の温度で、熱分解、すなわち加熱処理する。
【0031】
不活性ガス、例えば窒素、アルゴン、またはヘリウム、雰囲気下で、 熱分解を行なうことが好ましい。
【0032】
ウェットケーキまたは乾燥された炭素を、セラミックスの熱分解皿中に置き、それらをいっしょに石英管内に入れる。熱分解の間、窒素を、約70℃で水中を、次いで、石英管を通す。熱分解の前に、石英管を、石英管体積の数倍の乾燥窒素でフラッシュした後、乾燥した、静的な窒素雰囲気を維持する。熱分解皿を含む石英管を、約930℃で、所望する期間、適切な熱分解装置内に置き、その後、窒素雰囲気を維持しながら冷却する。
【0033】
熱分解は、約5分から60時間の間の何らかの時間、継続することができるが、通常、10分から6時間で充分である。経済上の理由から、より短い時間が好ましい。なぜなら、予期されるかもしれないが、炭素を、高められた温度に長時間、継続的にさらすことは、性能の良くない酸化用炭素触媒をもたらし得る。熱分解は、わずかに湿った雰囲気下で、または、NH3を含む雰囲気下で開始されてよい。なぜなら、この方が、より活性な触媒をより短時間内に生成するからである。
【0034】
あるいは、処理は、NH3および酸素含有ガス、例えば、H2O/NH3を炭素内を通過させるのと同時に、上述の炭素物質を熱分解することにより、単一工程で完結される。ガスストリームの流速は、新鮮なガス反応物と炭素表面との適切な接触を達成するのに十分速く、しかし、炭素の過剰な重量減および物質損失を阻止するために十分遅くなければならない。多くのNH3/酸素含有ガス混合物、例えば、NH3/CO2、NH3/O2、NH3/H2O、およびNH3/NOxを、該ガス混合物が所望される結果をもたらすとすれば、用いることができる。普通、酸素含有ガス/NH3の比は、0:100〜90:10の範囲内にすることができる。さらに、高い酸素含有ガス濃度中での炭素の激しい重量減を回避するために、希釈剤として窒素を用いることができる。アンモニアは塩基性ガスであり、および、自体、炭素物質表面上の種々の酸化物類の分解を助けると信じられている。熱分解の間、NH3を生じる、他の何らかの化学種も、NH3源として満足の行くものであるはずである。経済上の理由から、NH3/H2Oガスストリームが最も好ましい。
【0035】
上述の方法に従い処理された炭素物質は、フェニレンジアミンのキノンジイミンへの触媒的酸化反応において使用された場合、市販の活性炭を用いた場合より速い反応速度を示す。他の活性炭は、本発明に従う反応において使用された場合、フェニレンジアミンの対応するキノンジイミンへの転換において、触媒の存在無しでO2を用いた場合よりも、何ら良い反応速度を示さなかった。
【0036】
反応は、本発明に従い、水の存在下で行われる。系内に存在する水の量は、反応速度に影響する。水がより多く存在すると、反応がより速い。しかし、どの程度多く水を存在させることができるかについては、上限がある。あまり多くの水が存在すると、副反応が起こり、その結果キノンジイミンの加水分解が起きて、式IIIに従うN−置換ベンゾキノンイミンが生成される。
【化8】
【0037】
本発明に従う反応においては、種々の溶媒を用いてよい。本発明に従う反応において使用してよい、溶媒の非限定的な例には、ケトン、アルコール、ニトリル、およびアルカン及びアルケンを含む、脂肪族及び/又は芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素、及びこれらの混合物が含まれる。本発明の方法で使用可能な溶媒の具体的な例は、アセトン、シクロヘキサン、5−メチル−2−ヘキサノン、5−メチル−3−ヘプタノン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルカルビノール、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロフォルム、四塩化炭素、硫化ジメチル、N−メチルピロリドン、及びキシレンである。
【0038】
本発明に従う反応は、種々のpH下で行なってよい。本発明に従い、種々のpH修飾剤を使用できる。これらは、有機酸類または窒素含有塩基類から選ばれ得る。例としては、酢酸(pH2.4)等の酸性pH修飾剤からトリエチルアミン(pH12)等の塩基性修飾剤に亘る。広く、系のpHはpH2からpH12までの範囲内であることができる。好ましくは、系のpH範囲は7〜12である。
【0039】
本発明の反応は、酸素系中で行われる。該系は典型的には大気圧から1500psig O2で反応が行われる。好ましくは、該系は15〜100psig O2である。酸素濃度は、100%〜2%(窒素により希釈する)の範囲内であることができる。
【0040】
本発明の方法における反応速度を促進するために、相間移動触媒を使用することも可能である。本発明で使用可能な相間移動触媒の非限定的な例は、四級アンモニウム塩類、フォスフォニウム塩類、低分子量ポリエチレングリコール類、及びクラウンエーテル類である。
【0041】
本発明は、以下の実施例により、一層明確に説明される。実施例1〜4はパラキノンジイミン(QDI)[R1=1,3−ジメチルブチル、R2=フェニル]の、式Iのパラフェニレンジアミン[R1=1,3−ジメチルブチル、R2=フェニル](Santoflex(商標)6PPD)からの、修飾された活性炭触媒を用いた、調製を示す。触媒は上述の方法に従い調製された。
【0042】
【実施例】
実施例1
5.0gのN−1,3−ジメチルブチル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、98.0gのアセトン、1.0gの水、1.0gの修飾された活性化された触媒および1.0gのトリエチルアミンの混合物を300mlのParr オートクレーブ内に仕込んだ。該系を30psig 酸素下で、35℃で、1時間反応させ、その時点でさらなる酸素の消費は検出できなかった。オートクレーブを室温まで冷却し、そして、混合物を分析した。この溶液は、反応の間(暗褐色から橙色へと)色が変わっていた。HPLCによる分析から、QDIへの転換率が100%であることが分かった。炭素を除くために、オートクレーブ内の混合物をろ過した。真空下で溶媒を除去してQDIを単離した。空気で乾燥した炭素は1.4gであり、QDI(粘稠な血赤色の液体)は4.7gであった。
【0043】
実施例2
50.0gのN−1,3−ジメチルブチル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、148.5gのメタノール、1.5gの水、5.0gの修飾された活性化された触媒および2.0gのトリエチルアミンの混合物を300mlのParr オートクレーブ内に仕込んだ。該系を30psig 酸素下で、35℃で、酸素の消費が止まるまで反応させた。この反応バッチのHPLCによる分析は、総ての仕込まれたN−1,3−ジメチルブチル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)がQDIへと転換したことを示した。しかし、ジイミンの加水分解により形成されたN−フェニル−p−ベンゾキノンイミンに対応するHPLCクロマトグラム上の新しいピーク(<2%)が在った。クロマトグラム上で検出可能であったのは、これと、ジイミンのみであった。単離されたQDIは48.4gであった。
【0044】
実施例3
5.0gのN−1,3−ジメチルブチル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、90.0gのメタノール、10.0gの水、1.0gの修飾された活性化された触媒および1.0gのトリエチルアミンの混合物を300mlのParr オートクレーブ内に仕込んだ。該系を30psig 酸素下で、35℃で、20分間未満反応させ、その時点で酸素の消費が止まった。このバッチのHPLCによる分析では、6PPDは検出されず、且つ、所望された転換されたQDIが検出された。しかし、上記の加水分解生成物はHPLCクロマトグラムの面積カウントの10%を占めた。
このように、水の量を実施例1における1.0gから実施例3において10.0gに増やしたことで反応時間は1時間から20分未満に減少したが、QDIの加水分解がその分増加した。
【0045】
実施例4
250.0gのN−1,3−ジメチルブチル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、392g(495ml)のメタノール、5.0gの水、25.0gの修飾された活性化された触媒および5.0gのトリエチルアミンの混合物を、表面下への導入のために10μmのフリットを取り付けた酸素ディップチューブを取り付けた1000mlのParr オートクレーブ内に仕込んだ。該系を30psig 酸素下で、50℃で、酸素の消費が止まるまで反応させた。この新鮮な炭素を用いて、反応時間は1時間であった。混合物を室温まで冷却し、そして、オートクレーブから試料を抜き取り、HPLCで分析した。この分析では、QDI が98.5%であり、残りの1.5%はN−フェニル−p−ベンゾキノンイミンであった。ろ過により触媒を除いた後、溶媒を真空下で除いたところ、残留生成物として243gのQDIを得た。
空にしたオートクレーブに、新たに250gのN−1,3−ジメチルブチル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、238g(300ml)の回収されたメタノール(水およびアミンを含む)、回収された炭素触媒および158g(200ml)の新鮮なメタノールを仕込んだ。該系を30psig 酸素下で、50℃で、消費が止まるまで反応させた(2.5時間)。反応混合物の分析により、QDIが97%、およびN−フェニル−p−ベンゾキノンイミンが3%であり、単離された物の収率が99%であった。
上記実施例4は、修飾された炭素触媒が、ジアミンのジイミンへの高い反応速度および高い転換率を維持しつつ、再使用可能であることを示す。
【0046】
実施例5
この例は、本発明の反応系における水の存在の重要性を示す。以下の例において、系内には水が無い。
5.0gのN−1,3−ジメチルブチル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、99.0gのアセトン、1.0gの修飾された活性化された触媒および1.0gのトリエチルアミンの混合物を300mlのParr オートクレーブ内に仕込んだ。該系を30psig 酸素下で、35℃で、数時間反応させたが、酸素の消費は観察されなかった。この時間の後、オートクレーブの内容物を室温まで冷却し、HPLCで分析した。この分析から、仕込まれた6PPDの<4%が所望されたQDIへ転換されたことが分かった。
【0047】
実施例6
以下の実施例は、パラ−キノンジイミン[R1=R2=1,4−ジメチルペンチル]の、パラフェニレンジアミン[R1=R2=1,4−ジメチルペンチル](Santoflex(商標)77PD)からの、上記活性炭触媒を用いた、調製を示す。
15.0gのN ,N'−ジ−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(77PD)、98.0gのアセトン、1.0gの水、2.5gの修飾された活性化された触媒および1.0gのトリエチルアミンの混合物を300mlのParr オートクレーブ内に仕込んだ。該系を35psig 酸素下で、45℃で、酸素の更なる消費が検出できなくなるまで反応させた。オートクレーブを室温まで冷却し、炭素触媒を除くためにろ過し、及び、真空下で溶媒を除去した。出発物質は液体であったが、単離された生成物(14.3g)は、柔らかいワックス状の固体(融点62〜66℃)であった。HPLCによる分析から、この試料内に0.65%の出発物質が残留したことが分かった。クロマトグラムでは、このキノンジイミンの立体異性体も分離された。
【0048】
実施例7
以下の実施例は、キノンジイミン混合物[R1=1,3−ジメチルブチル、又は1,4−ジメチルペンチル、R2=フェニル]の、Santoflex(商標)134PDからの、上述の、修飾された炭素触媒を用いた、調製を示す。Santoflex(商標)134PDは、N−1,3−ジメチルブチル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン(33重量%)とN− 1,4−ジメチルペンチル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン(67重量%)の混合物である。
25.1gのSantoflex(商標)134PD、 49.0gのメタノール、0.5gの水、2.5gの修飾された炭素触媒および0.5gのトリメチルアミンの混合物を300mlのParr オートクレーブ内に仕込んだ。該系を30psig 酸素下で、45℃で、30分間反応させ、その時点で、酸素の更なる消費が検出できなかった。オートクレーブを冷却し、炭素触媒(10.0gのメタノール溶媒で2回洗浄した)を除くためにろ過し、及び、真空下で混合溶媒を除去した。単離された生成物は24.2gであり、及び、炭素触媒は、室温で24時間乾燥後、3.5gであった。HPLC分析により、出発物質の完全な転換が明らかになり、反応及び生成物の単離の間に形成された加水分解生成物(N−フェニル−p−ベンゾキノンイミン)は1%未満であった。HPLC(ベックマン カラム 部品番号235392 、ODS C−18)分析により、キノンジイミンはそれらの立体異性体に分離された。
Santoflex(商標)IPPD[R1=フェニル、R2=イソプロピル]、Santoflex(商標)44PD[R1=R2=sec−ブチル]、4−アミノジフェニルアミン[R1=H、R2=フェニル]、N ,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン[R1=R2=フェニル]及びN− シクロヘキシル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン[R1=シクロヘキシル、R2=フェニル]を含む他のパラ−フェニレンジアミンも、本発明に従う方法により、対応するキノンジイミンに成功裡に転換された。
キノンジイミンは、架橋エラストマーにおいて複数の作用を示す。これらの作用は、長期間抗酸化作用、ならびに抗オゾン能を含む。事実、これらの抗劣化剤の抗酸化能は、架橋物が溶媒により抽出された後においても存在する。加えて、キノンジイミンは、当業界で汎用されるパラフェニレンジアミン抗劣化剤に通常付随する、スコーチへの悪い影響無しに、これらの利点を示す。これらの化合物のゴム中における作用のまとめを、文献に見出すことができる(ケイン エム.イー.ら、ラバーインダストリー、第216〜226頁、1975年)。
【0049】
好ましい実施態様によって本発明を記載した。上記の詳細な説明を読み、理解すれば、明らかに、他への変形および変更が生じるであろう。本発明は、すべてのそのような変形および変更を、それらが特許請求の範囲またはその等価物内にある限り、含むものと解釈されることが意図される。
Claims (10)
- 修飾された活性炭触媒の存在下で、対応するフェニレンジアミンを酸素と反応させてキノンジイミンを高い選択率で調製する方法であって、前記修飾された活性炭触媒が、その表面から酸化物を除去されており、前記反応が水の存在下で行われ、フェニレンジアミンが以下の式Iのオルト−又はパラ−フェニレンジアミンであり、さらに、得られる対応するキノンジイミンが式IIa又はIIbで表されるキノンジイミンである、ことを特徴とする方法
- 活性炭を酸化剤に曝し、次いで、無酸素環境下で、500℃〜1500℃の温度で、該活性炭を熱分解することにより、活性炭触媒の表面から酸化物が除去される、請求項1記載の方法。
- 500℃〜1500℃の熱分解温度で活性炭表面の酸化物と反応する、NH3および酸素含有ガスの存在下で、活性炭を熱分解するのと同時に、活性炭触媒表面から酸化物が除去される、請求項1記載の方法。
- R1が1,3−ジメチルブチルであり、R2がフェニルであり、およびR3が水素である、請求項1記載の方法。
- フェニレンジアミンがパラ−フェニレンジアミンである請求項1記載の方法。
- R1、R2およびR3が、イソプロピル、sec−ブチル、シクロヘキシル、フェニルおよび水素から選ばれる、請求項1記載の方法。
- 反応が、溶媒の存在下で行われ、該溶媒が、ケトン、アルコール、ニトリル、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素、及びこれらの混合物から選ばれる、請求項1記載の方法。
- 酸性または塩基性のpH調製剤を使用することをさらに含む、請求項1記載の方法。
- 反応速度を増加するために、相間移動触媒を使用することをさらに含む、請求項1記載の方法。
- フェニレンジアミンが、2種以上のフェニレンジアミンの混合物を含む、請求項1記載の方法。
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