JP4267937B2 - 水素化分解触媒および液状炭化水素の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、水素の存在下でパラフィン系炭化水素から液状炭化水素を製造するための水素化分解触媒およびこの触媒を使用した液状炭化水素の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、硫黄分および芳香族炭化水素の含有量が低いクリーンな液体燃料への要求が急速に高まってきている。このようなクリーン燃料を製造するプロセスの中で、ワックス等のパラフィン系炭化水素を触媒存在下で水素化分解するプロセスへの期待が大きい。
パラフィン系炭化水素の水素化分解プロセスにおいては、有用な中間留分を高収率で得ることがプロセスの経済性向上のために特に重要な課題である。
【0003】
減圧軽油の水素化分解は過去数十年の歴史を有する確立した技術であり、既に商業化されている。しかし、パラフィン系炭化水素の反応性は減圧軽油とは大きく異なるため、減圧軽油の触媒をそのまま転用することが難しく、パラフィン系炭化水素の水素化分解のための高性能触媒の研究開発が現在精力的に続けられている。少数ではあるが、既にいくつかの報告がなされている。例えば、非晶性アルミノシリケートを含有した担体に白金を担持した触媒が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
結晶性アルミノシリケートと非晶性アルミノシリケートを比較すると、結晶性アルミノシリケートの方が高い触媒活性が得られることが知られている。このため近年は結晶性アルミノシリケートを用いた触媒開発が主流となりつつある。しかしながら、結晶性アルミノシリケートは粉体であるため、これを実用に供するためにはバインダーを用いて成型する必要がある。ところが、結晶性アルミノシリケートをアルミナ前駆体であるベーマイトをバインダーとして成型して得られる成型体を用いてパラフィン系炭化水素の水素化分解反応を行うと、結晶性アルミノシリケートが本来有する反応特性が失われ、中間留分の収率が著しく減少することが知られている。そのため、結晶性アルミノシリケートを用いたパラフィン系炭化水素用水素化分解触媒の実用化に大きな障害となっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−41549号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、結晶性アルミノシリケートをアルミナ前駆体であるベーマイトをバインダーとして用いて成型した場合でも中間留分収率の低下を抑制するパラフィン系炭化水素用水素化分解触媒を提供することにより、実用化への障害を取り除くことである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、ある特定の結晶化度を有するアルミナ前駆体であるベーマイトで結晶性アルミノシリケートを成型することにより、上述の課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、回折角度(2θ)が10度から20度の範囲に現れるX線回折ピークの半値幅(2θ換算値)が1.85度以下であるベーマイトを成型体全量基準で5〜99質量%用いてUSY型ゼオライトを成型することにより得られる成型体を400〜600℃で焼成処理した後、白金を担持してなることを特徴とするパラフィン系炭化水素用水素化分解触媒に関する。
前記USY型ゼオライトの平均粒子径は1.0μm以下であることが好ましい。
また本発明は、前記触媒を用いて、パラフィン系炭化水素を水素化分解することを特徴とする液状炭化水素の製造方法に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳述する。
本発明においてアルミノシリケートとは、アルミニウム、珪素および酸素の3元素で構成される金属酸化物をいう。また本発明の効果を妨げない範囲で他の金属元素を共存させることもできる。この場合、他の金属元素の量はその酸化物としてアルミナとシリカの合計量の5質量%以下、好ましくは3質量%以下であることが望ましい。共存可能な金属元素としては、例えばチタン、ランタン、マンガン等を挙げることができる。
【0009】
アルミノシリケートの結晶性は、全アルミニウム原子中の4配位のアルミニウム原子の割合で見積もることができ、この割合は27Al固体NMRにより測定可能である。本発明において結晶性アルミノシリケートとは、アルミニウム全量に対する4配位アルミニウムの比率が50質量%以上のアルミノシリケートをいう。4配位アルミニウムの比率が50質量%以上であれば本発明の結晶性アルミノシリケートとして使用できるが、70質量%以上のものがより好ましく、80質量%以上のものが特に好ましい。
【0010】
本発明の結晶性アルミノシリケートとして、いわゆるゼオライトを使用することができる。好ましい結晶性アルミノシリケートとしては、Y型ゼオライト、USY型ゼオライト、ベータ型ゼオライト、モルデナイト、ZSM−5などを挙げることができ、最も好ましい結晶性アルミノシリケートとしてはUSY型ゼオライトを挙げることができる。また必要により2種以上の結晶性アルミノシリケートを使用することもできる。
本発明で使用する結晶性アルミノシリケートの平均粒子径については特に限定されるものではないが、1.0μm以下が好ましく、0.5μm以下が特に好ましい。
【0011】
本発明で結晶性アルミノシリケートを成型する際に使用されるバインダーはアルミナ前駆体であるベーマイトである。ベーマイトでは回折角度(2θ)が10度から20度の範囲に現れるX線回折ピークの半値幅(2θ換算値)が結晶化度の指標として用いられている。この半値幅が1.85度以下、好ましくは1.60度以下、更に好ましくは1.45度以下の特定のベーマイトが本発明のベーマイトとして使用することが出来る。この半値幅が1.85度よりも大きいと、中間留分収率の高いパラフィン系炭化水素用水素化分解触媒を得ることができない。
【0012】
バインダーとして使用されるアルミナ前駆体であるベーマイトの使用割合は特に制限されるものではないが、通常、成型体全量基準で5〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜99質量%である。
【0013】
本発明で触媒担体として用いられる成型体は、結晶性アルミノシリケートとバインダーとしてのベーマイトを含む混合物を成型した後、好ましくはさらに酸素存在下において焼成して得られる。焼成温度は特に限定されるものではなく、通常400〜600℃であり、好ましくは420〜580℃であり、特に好ましくは430〜550℃である。焼成時間についても特に制限はないが、通常、1分〜24時間、好ましくは10分〜20時間、より好ましくは30分〜10時間である。
【0014】
本発明の触媒は、前述の成型体に、活性金属成分として白金を担持してなるものである。白金を前述の成型体に含浸やイオン交換等の常法によって担持することにより本発明の触媒を製造することができる。
担持する白金金属の量は、必要に応じて適宜選択することができが、触媒全量基準で、通常、0.01〜2質量%であり、好ましくは0.1〜1質量%である。
【0015】
本発明においては、前述の触媒を用いて、パラフィン系炭化水素を水素化分解して液状炭化水素を製造する。
本発明においてパラフィン系炭化水素とは、パラフィン分子の含有率が70質量%以上の炭化水素をいう。炭化水素分子の炭素数については特に制限はないが、通常、10〜100程度のものが用いられる。本発明の触媒は、通常ワックスと称される炭素数20以上のパラフィン系炭化水素の水素化分解に特に有効である。
原料となるパラフィン系炭化水素の製法については特に制限はなく、本発明の触媒は石油系および合成系の各種パラフィン系炭化水素に適用することができる。特に好ましいパラフィン系炭化水素としては、フィッシャー・トロプシュ合成により製造されるいわゆるFTワックスを挙げることができる。
【0016】
本発明の触媒を用いてパラフィン系炭化水素を水素化分解する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば従来の固定床反応装置を使用する方法が挙げられる。
本発明における水素化分解の反応条件としては、例えば、温度は250〜400℃、水素圧は0.5〜10MPa、パラフィン系炭化水素原料の液空間速度は0.5〜10/hを挙げることができる。
【0017】
【発明の効果】
以上のように、回折角度(2θ)が10度から20度の範囲に現れるX線回折ピークの半値幅(2θ換算値)が1.85度以下であるベーマイトを成型体全量基準で5〜99質量%用いてUSY型ゼオライトを成型することにより得られる成型体を400〜600℃で焼成処理した後、白金を担持してなる触媒を用いることにより、パラフィン系炭化水素の水素化分解による中間留分の収率を高めることができる。
【0018】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
[実施例1]
平均粒子径が0.9μmのUSY型ゼオライト400gと回折角度(2θ)が10度から20度の範囲に現れるX線回折ピークの半値幅(以下aと略称)が1.72度であるアルミナ前駆体のベーマイト100gを混合混練し、直径1/16インチ(約1.6mm)、高さ6mmの円柱状に成型したのち、550℃で1時間焼成して担体を得た。
この担体に、白金として担体の0.8質量%となる量のジクロロテトラアンミン白金(II)の水溶液を含浸し、さらにこれを120℃で3時間乾燥および500℃で1時間焼成することにより、触媒を調製した。
上記のように調製された触媒(100ml)を固定床の流通式反応器に充填し、パラフィン系炭化水素の水素化分解に用いた。ここではパラフィン含量が95質量%で20から80までの炭素数分布を有するFTワックスを原料とした。この時の水素圧は3MPa、原料の液空間速度は2.0/hであった。沸点360℃以下の留分を分解生成物とし、原料に対して80質量%の分解生成物が得られる時の中間留分(沸点が145〜360℃)収率を求めた。その結果を表1に示した。
【0020】
[実施例2]
a=1.33度のベーマイトを使用したこと以外は、実施例1と同様の触媒調製および水素化分解反応を行い、80質量%の分解生成物が得られる時の中間留分(沸点が145〜360℃)収率を求めた。その結果を表1に示した。
【0021】
[比較例1]
a=2.30度のベーマイトを使用したこと以外は、実施例1と同様の触媒調製および水素化分解反応を行い、80質量%の分解生成物が得られる時の中間留分(沸点が145〜360℃)収率を求めた。その結果を表1に示した。
【0022】
[実施例3]
平均粒子径0.4μmの結晶性アルミノシリケートを使用したこと以外は、実施例1と同様の触媒調製および水素化分解反応を行い、80質量%の分解生成物が得られる時の中間留分(沸点が145〜360℃)収率を求めた。その結果を表1に示した。
【0023】
[実施例4]
平均粒子径0.4μmの結晶性アルミノシリケートを使用したこと以外は、実施例2と同様の触媒調製および水素化分解反応を行い、80質量%の分解生成物が得られる時の中間留分(沸点が145〜360℃)収率を求めた。その結果を表1に示した。
【0024】
[比較例2]
平均粒子径0.4μmの結晶性アルミノシリケートを使用したこと以外は、比較例1と同様の触媒調製および水素化分解反応を行い、80質量%の分解生成物が得られる時の中間留分(沸点が145〜360℃)収率を求めた。その結果を表1に示した。
【0025】
表1から明らかなように、アルミナ前駆体であるベーマイトのa値が1.85度より高い場合は中間留分収率が低く、1.85度以下の場合に中間留分収率が高くなることが分かる。特に、平均粒子径が0.5μm以下の結晶性アルミノシリケートを用いたときに、中間留分収率の向上が顕著である。
【0026】
【表1】
Figure 0004267937

Claims (3)

  1. 回折角度(2θ)が10度から20度の範囲に現れるX線回折ピークの半値幅(2θ換算値)が1.85度以下であるベーマイトを成型体全量基準で5〜99質量%用いてUSY型ゼオライトを成型することにより得られる成型体を400〜600℃で焼成処理した後、白金を担持してなることを特徴とするパラフィン系炭化水素用水素化分解触媒。
  2. USY型ゼオライトの平均粒子径が1.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の水素化分解触媒。
  3. 請求項1または2に記載の触媒を用いて、パラフィン系炭化水素を水素化分解することを特徴とする液状炭化水素の製造方法。
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