JP4267143B2 - 混入気体の抜き弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダイアフラムポンプのダイアフラムに駆動力を伝達する流体(以下作動流体と記す)中に混入した混入流体を流体圧室から抜くための抜き弁の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
流体を介してダイアフラムを駆動するダイアフラムポンプにおいては、前記作動流体内部に混入または内部に発生した混入流体、例えば空気を排除するための抜き弁が設けられている。
【0003】
図7には、ダイアフラムポンプに用いられている従来の混入流体の抜き弁、特にエア抜き弁の概略構成の一例が示されている。ダイアフラムポンプのダイアフラムには、クランク機構などによって往復運動するピストンの運動が、作動流体を介して伝達される。したがって、この駆動力の伝達媒体となる作動流体の圧力は、ピストンの運動に対応して脈動している。作動流体は流体圧室に密封されている。この流体圧室のハウジング100には、内部の流体に混入した別の流体、例えば空気を抜くためのエア抜き弁102が設けられている。
【0004】
エア抜き弁102は、エア抜き弁102全体をハウジング100に固定するためのボルト104を有している。ボルト104内部には軸方向に軸穴106が設けられ、この穴は、流体圧室側にのみ開放している。また、ボルト104の側面には、軸穴106まで到達する横穴108が設けられている。ハウジング100の横穴108に対応する位置には、他端が大気に開放された開放穴110が設けられている。軸穴106内には、スリーブ112の小径部が納められ、またスリーブ112の大径部は、ボルト104の下端によってハウジング100の肩部113に配置されたガスケット114に結合されている。スリーブ112には、これを軸方向に貫通する軸穴116が設けられている。この軸穴116には、作動流体の逆流を防止するチェックボール118、空気などの混入流体を大気側に逃がし、作動流体の漏れは阻止する弁体120が配置されている。弁体120は、ばね122により図中下方に付勢されている。さらに、弁体120の柄の内部には、軸方向に軸穴123が設けられ、この中にはオリフィス124が設けられている。また、弁体の軸穴123は、弁ヘッド部分には達しておらず、これの手前の横穴126に連通している。スリーブ112の図中下端に対応するハウジング100には、流体圧室につながる圧力穴128が設けられている。
【0005】
混入流体が作動流体と分離しており、作動流体より密度が低い場合は、これを抜くための弁は、ハウジング100の最も高い位置に設けられる。多くの場合、作動流体が液体で混入流体が気体であり、さらに混入流体の気体は、空気である。作動流体中に混入した空気は、圧力穴128を通って、ハウジング頭頂部に設けられたエア抜き弁102へと移動する。流体圧室内部の圧力が大気圧以上に上昇を始めると、空気は、弁体内の横穴126、軸穴123、さらにオリフィス124を通って、チェックボール118を押し上げる。さらにスリーブ112の外側に達し、そこからボルトの横穴108、開放穴110を通って外気に開放される。たまっていた空気が排出され、作動流体が弁体120内に進入し、オリフィスに達する。オリフィス124の通路は極狭いため、空気は容易に通過するが、作動流体は大きな流路抵抗を受ける。この抵抗が弁体120をばね122の付勢力に抗して上方に移動させ、弁ヘッドによってスリーブの軸穴116がふさがれる。これによって、作動流体の流出が阻止され、流体圧室内の圧力が上昇する。一方、流体圧室の圧力が減少する場合、チェックボール118がスリーブの軸穴116をふさぎ、外部からの空気の侵入を防止する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述のエア抜き弁において、混入空気の排出工程の最後に、作動流体がわずかに漏れる。漏れ量は、弁体120の運動に依存するが、この運動は、オリフィス124を通過する作動流体の流路抵抗に影響を受ける。流路抵抗は、作動流体の粘度、流速、流体圧室内の圧力変化などにより変わる。よって、運転条件が変化することによって、作動流体の漏れ量が変化し、エア抜き弁の性能が変化するという問題があった。
【0007】
また、オリフィス124の流路の径は、非常に小さいため、作動流体内に異物(ゴミなど)が混入すると、これが詰まってしまうという問題もあった。
【0008】
また、弁体、スリーブともに形状が複雑でかつ高い精度が要求され、加工コストが高いという問題があった。
【0009】
本発明は、前述問題点を解決するためになされたものであり、簡易で信頼性の高い混入流体の抜き弁を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、本発明の混入流体の抜き弁は、ダイアフラムポンプのダイアフラムの駆動力を伝達する作動液体中に混入した混入気体を流体圧室から抜くための混入気体の抜き弁であって、流体圧室と大気側に通じる連通路を形成するスリーブと、流体圧室と大気側にそれぞれの端を突出させ、前記連通路内を流体圧室と大気側の圧力差に応じて移動するスプールと、スプールの流体圧室および大気側に突出した部分に設けられ、前記連通路の開放端の径より大きい径を有し、これらの開放端をふさぐことができ、またスプールの移動範囲を規定する弁ヘッドと、を有し、前記スプールには、当該スプールの移動中に、流体圧室と大気側を連通させ、作動液体の移動を許容することができる流路が設けられ、前記弁ヘッドは、前記スプールがスプールの移動範囲の液体圧室側の端に移動したとき前記連通路の大気側開放端をふさぐ第1の弁ヘッドと、前記スプールがスプールの移動範囲の大気側の端に移動したとき前記連通路の流体圧室側の開放端をふさぐ第2の弁ヘッドと、を有し、前記スプールは、前記ダイアフラムポンプの吸込み、吐出動作と合わせて、前記移動範囲を往復運動し、当該混入気体の抜き弁は、前記作動液体の漏れとともに、混入流体を抜くものである。
【0011】
流体圧室と大気側を連通する流路の流路抵抗は、作動流体の移動を許容できる程度に十分に小さくなっており、流路抵抗の変化の影響を減じることができる。
【0012】
さらに、前記スプールの流路は、少なくとも、一方の弁ヘッドが連通路の開放端をふさいでいるときには、スリーブによってふさがれているものとすることができる。
【0013】
さらに、大気側から流体圧室側に向けて前記スプールを付勢する付勢手段を有するものとすることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0015】
図1には、本実施形態の概略構成が示されている。ダイアフラムポンプのダイアフラムを駆動する作動流体で満たされた流体圧室を形成するハウジング10には、作動流体に混入した混入流体を流体圧室から排出するためのエア抜き弁12が取り付けられている。混入流体は主に空気であるが、これに限るものではない。作動流体は、通常非圧縮性の流体である液体であり、混入流体が空気などの気体であれば、エア抜き弁12は、ハウジング10の最も高い位置に配置される。これによって、混入した空気は、その密度の差によって、エア抜き弁12の位置に自然に集まる。逆の場合、すなわち混入流体として作動流体より密度が高いものを想定する場合であれば、これを抜くための弁は、ハウジングの最も低い位置に配置される。このような場合は、例えば、作動流体がオイルで、混入流体がオイルと分離する水などである。
【0016】
エア抜き弁12は、このエア抜き弁全体をハウジング10のエア抜き穴11に固定するため、ハウジングのねじ部とねじ結合するボルト14を有している。エア抜き穴11は、ハウジングの内外、すなわち流体圧室と大気側をつなぐように設けられている。ボルト14内部には軸方向に軸穴16が設けられ、この穴は、流体圧室側にのみ開放している。また、ボルト14には、軸直交方向にボルト側面と軸穴16内を連通する横穴18が形成されている。ハウジング10の横穴18に対応する位置には、他端が大気に開放された開放穴20が設けられている。
【0017】
ボルト14の図中下端には、スリーブ22が配置されている。スリーブ22は、大径部と小径部を有し、ボルト14の下端が、この大径部に当接し、ハウジング10の肩部26に配置されたシート24に対し、スリーブ22を押圧してこれを固定保持している。
【0018】
スリーブ22は、軸方向に延び両端が開放している軸穴28が形成されている。両端の開放部分は、後述する弁ヘッド30が当接する弁シート32が形成されている。スリーブの軸穴28内には、これに隙間なく内接してスプール34が配置されている。スプール34は、その両端にねじ36により固定された前述の弁ヘッド30と共に、弁体38を形成している。スプール34には、中心軸に沿って延びる軸穴40とこれに略直交し、スプール34を貫通する二つの横穴42が形成されている。このスプール34に設けられた軸穴40と横穴42により、流体圧室側と大気側を連通することができる流路が形成されている。この流路40,42は、弁体38の位置によって流体圧室側と大気側を連通したり、ふさいだりするようになっている。具体的には、両方の弁ヘッド30が弁シート32に接しない弁体38の位置となる範囲の少なくとも一部において、流路40,42が流体室側と大気側を連通するように、スリーブの軸穴28の長さと、流路の横穴42の位置が定められている。また、一方の弁ヘッド30が弁シート32に着座している場合は、少なくとも流路40,42がふさがれた状態となるよう、スリーブの軸穴28、流路の横穴42の寸法が定められている。
【0019】
以上のように、ハウジングのエア抜き穴11は、エア抜き弁12によって大気側に対しては、ふさがれた状態となっている。一方、エア抜き穴11は、圧力室とは、圧力穴44により連通している。また、スリーブの軸穴28は、圧力穴44と、ボルトの軸穴16、横穴18および開放穴20を介して、流体圧室側と大気側を連通する連通路として機能する。また、ボルトの軸穴16内には、弁体38を圧力室側に向けて付勢するばね46が配置されている。
【0020】
流体圧室内部の圧力が大気圧以上に上昇する前においては、図中上側の弁ヘッド30aが弁シート32に着座している。また、図中上側の流路の横穴42aは、スリーブ22によってふさがれている。流体圧室内の圧力が上昇する過程においては、流体圧室側から弁体38に加わる圧力による力が、大気側から弁体38に加わる圧力による力およびばね46の付勢力の和より大きくなると、この差によってばね46の付勢力に抗して、弁体38が図中上方に移動し始める。弁体38の移動により、二つの弁ヘッド30a,30bともに弁シート32から離れた状態となり、さらに移動すると、上側の横穴42aと下側の横穴42bが共に開放した状態となる。このとき、流路40,42は、流体圧室と大気側を連通するものとなる。この状態において、作動流体に混入している空気が流路40,42を通して、ボルトの軸穴16内に流れ、さらにボルトの横穴18、ハウジングの開放穴20を通して、大気側へと排出される。さらに、弁体28が上昇すると横穴42bがスリーブ22によってふさがれ、流路40,42が閉じた状態となり、最後には、下側の弁ヘッド30bが弁シート32に着座して、これ以上の混入空気、作動流体の流出を阻止する。これによって、流体圧室内の圧力がさらに上昇し、ダイアフラムが駆動される。
【0021】
ピストンが上死点に達し、ポンプの取扱い液の吐出が止まると、ポンプ内の取扱い液および作動流体の圧力はほぼ大気圧まで低下する。流体圧室の内部の圧力が低下し、ばね46の付勢力と大気圧に抗することができなくなると、弁体38は図中下方に移動し、上側の弁ヘッド30aが着座することによって、作動流体の逆流および空気の吸い込みが阻止される。また、この弁体38の移動過程においても、弁体38内に流体圧室と大気側を連通する通路が形成される。しかし、前述のように、このときの流体圧室内の圧力は、大気圧とほぼ等しく、このため、大気側から流体圧室へと空気が流れることはない。なお、弁体38が、自重のみで下方に移動することで、作動流体の逆流及び空気の吸い込みが阻止できるのであれば、ばね46を省略することも可能である。
【0022】
図2および図3には、スリーブと弁体の他の形態が示されている。スリーブ48は、図1に示すスリーブ22と同様所定の長さの軸穴50を有している。弁体52は、スリーブの軸穴50とはまり合うスプール54を有し、スプール54の両端には弁ヘッド56がナット58により固定されている。スプール54には、軸直交方向にこれを貫通する貫通孔60が明けられている。貫通孔60の直径は、軸穴50の長さよりやや長く、これにより貫通孔60は、流体圧室と大気側を連通する流路として機能する。スリーブ48および弁体52は、図1に示すスリーブ22と弁体38に代えて、使用することが可能であり、エア抜き弁を構成することができる。
【0023】
図4および図5には、スリーブと弁体のさらに他の形態が示されている。スリーブ62は、図1に示すスリーブ22と同様所定の長さの軸穴64を有している。弁体66は、スリーブの軸穴64とはまり合うスプール68を有し、スプール68の両端には弁ヘッド70がナット72により固定されている。スプール68には、その側面に軸方向に延びる溝74が設けられている。溝74の長さは、軸穴64の長さよりやや長く、これにより溝74は、流体圧室と大気側を連通する流路として機能する。スリーブ62および弁体66は、図1に示すスリーブ22と弁体38に代えて、使用することが可能であり、エア抜き弁を構成することができる。
【0024】
図6には、図4および図5に示す弁体66に代替可能な弁体76の一部が示されている。弁体76は、図4などに示されるスプール68と一つの弁ヘッド70が一体に形成されたものである。さらに、図中上方のねじ部には、図4に示される弁ヘッド70がナット72によって固定され、前述してきた各弁体と同様に機能する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態の概略構成図である。
【図2】 弁体とスリーブの変形例を示す図である。
【図3】 図2の弁体のスプールを示す図である。
【図4】 弁体とスリーブの他の変形例を示す図である。
【図5】 図4の弁体のスプールを示す図である。
【図6】 弁体のさらに他の変形例を示す図である。
【図7】 従来のエア抜き弁の概略構成図である。
【符号の説明】
10 ハウジング、12 エア抜き弁、22 スリーブ、30 弁ヘッド、34 スプール、38 弁体、40 軸穴、42 横穴(流路)、46 ばね。
Claims (2)
- ダイアフラムポンプのダイアフラムの駆動力を伝達する作動液体中に混入した混入気体を流体圧室から抜くための混入気体の抜き弁であって、
流体圧室と大気側に通じる連通路を形成するスリーブと、
流体圧室と大気側にそれぞれの端を突出させ、前記連通路内を、流体圧室と大気側の圧力差に応じて移動するスプールと、
スプールの流体圧室および大気側に突出した部分に設けられ、前記連通路の開放端の径より大きい径を有し、これらの開放端をふさぐことができ、またスプールの移動範囲を規定する弁ヘッドと、
を有し、
前記スプールには、当該スプールの移動中に、流体圧室と大気側を連通させ、作動液体の移動を許容することができる流路が設けられ、
前記弁ヘッドは、前記スプールがスプールの移動範囲の液体圧室側の端に移動したとき前記連通路の大気側開放端をふさぐ第1の弁ヘッドと、前記スプールがスプールの移動範囲の大気側の端に移動したとき前記連通路の流体圧室側の開放端をふさぐ第2の弁ヘッドと、を有し、
前記スプールは、前記ダイアフラムポンプの吸込み、吐出動作に合わせて、前記移動範囲を往復運動し、
当該混入気体の抜き弁は、前記作動液体の漏れとともに、混入気体を抜くものである、
前記スプールの流路は、少なくとも、一方の弁ヘッドが連通路の開放端をふさいでいるときには、スリーブによってふさがれている、
混入気体の抜き弁。 - 請求項1記載の混入気体の抜き弁において、大気側から流体圧室側に向けて前記スプールを付勢する付勢手段を有する、混入気体の抜き弁。
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