JP4266534B2 - 下水処理水の送水システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、下水処理場で発生する処理水を上流側の需要地に送水するための下水処理水の送水システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、都市地域における良好な水環境を確保しようとする動きが活発化している。水量の減少、枯渇した河川の流量の維持や、良好な水辺空間の創出を図るため、都市下水路や雨水幹線を活用することが検討されている。例えば、水需要の逼迫している地域を中心に下水処理水のトイレ用水やせせらぎ水路用の用水として再利用しようとする研究が行なわれている。
【0003】
さて、従来から下水処理には、合流式と分流式の2システムが現実に採用されている。図4は合流式下水処理の模式フローであり、汚水と雨水が合流された下水cとして、処理場2に送られて簡易処理あるいは高級処理され、処理水dとして放流される。この場合、処理場2に至る下水管の経路場の途中において自然流下で下水cが流れないかあるいは下水管に計画量以上の下水が流入する場合には、ポンプ場1が設けられる。そのポンプ場においては、処理場にて処理し得る計画水量Qの3倍に相当する3Qまでが、下水を送水する汚水ポンプp11によって処理場2に円滑に送られるよう配慮されているとともに、ポンプ場1に降雨時に前記設計水量3Qを超える下水の増分を直接放流水eとして河川に直接放流するための雨水ポンプp12が設置されている。
【0004】
そして、この直接放流用の雨水ポンプp12は、下流側の受入能力を超過するような急激な増水に対処できるようかなり大きな容量能力に、例えば、処理場に送水するためのポンプp11の2倍〜数倍の能力に設定してあるのが通例であった。ところが、このような観点から設置された放流水用の雨水ポンプp12は、降雨時に運転されるが、晴天時には全く運転されることがなく休止状態となっていた。
【0005】
一方、分流式下水処理は、図5に模式的に示す通り、雨水aを受け入れるポンプ場1を有する雨水系統と、汚水bを受け入れる処理場2を有する汚水系統とは、分離されていて合流式のような水の授受はない。汚水系統においては中継ポンプ場と呼ばれるポンプ場は存在するが、晴雨に関わらず汚水を送水するために稼動する汚水専用のポンプ場であり、雨水とは異なっている。
雨水系統に関しては、通常降雨から豪雨などの急激な降雨に対処し、直接放流するため、ポンプ場内に直接放流水eのための雨水ポンプp12が設置されるが、合流式の雨水ポンプp12に同じく、大容量に設定され、かつ晴天時には同様に休止状態となっていた。
【0006】
現在までの合流式あるいは分流式下水道においては、雨水直接放流による公共用水域への汚濁負荷流出を防止する目的で、ポンプ場等の下水道流域において雨水処理装置あるいは雨水滞水池が設けられ、雨天時に利用される設備となっているが、利用後の設備の清掃には、上水を利用する洗浄システムとしていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、下水処理における雨天時の雨水直接放流用ポンプを晴天時に活用することを可能としつつ、晴天時に前記した都市地域などにおける良好な水環境の整備や、とりわけ下水道に関してはその流域における雨水関連設備の洗浄に寄与することを可能とする下水処理水の送水システムを提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の問題は、晴天時において、降雨時の雨水を放流するために設置した雨水ポンプを用いて、下水処理場の処理水を上流側の需要地域に送水することを特徴とする本発明の下水処理水の送水システムによって、解決することができる。
また、上記の問題は、下水処理場の処理水を送水するための処理水ポンプと、その処理水ポンプから降雨時の雨水を直接放流するために設置したポンプ場内の雨水ポンプに達する第1送水水路と、前記雨水ポンプから上流側の需要地域に達する第2送水水路を設置し、晴天時において、前記処理水を上流側の需要地域に送水可能としたことを特徴とする、本発明の下水処理水の送水システムによって解決することができる。
【0009】
さらに、下水処理場と前記上流側の需要地域との間に、複数のポンプ場がある場合においても、前記下水処理場の処理水を、複数のポンプ場の雨水ポンプを用いて順次中継させることにより、前記上流側の需要地域に送水する前記下水処理水の送水システムとして解決することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の下水処理水の送水システムに係る実施形態について、図1〜3を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態として、合流式下水処理システムに本発明を組み合わせたシステムのフロー図である。本システムは従来からの機能としてポンプ場1に集められる汚水と雨水が合流された下水cが、ポンプ場1のポンプp11によって下流側の下水処理場2に送られて簡易処理あるいは高級処理され、処理水dとして放出されるしくみとなっている。一方、ポンプ場1には降雨時の設計処理水量を超える増水分を直接放流水eとして河川に放流するための雨水ポンプp12が設置されている点は先に説明したものと同様である。さらに特に合流式下水道においてはポンプ場と同様に下水処理場においても降雨時の設計処理水量を超える増水分を直接放流水eとして河川に放流するための雨水ポンプが設けられている。
【0011】
この実施形態の特徴とするところは、下水処理場2の処理水dを送水するために、合流式下水道では一般に下水処理場内に設置されている上記の雨水ポンプを処理水ポンプp21として活用し、その処理水ポンプ21から降雨時の雨水を放流するために上流側に設置したポンプ場内の雨水ポンプp12に達する第1送水水路L1と、前記雨水ポンプp12からさらに上流側の需要地域に達する第2送水水路L2を設置し、この処理水ポンプp21、雨水ポンプp12および前記第1、2送水水路L1、2を用いて、晴天時には、前記処理水dを上流側の需要地域に送水可能なシステムを構築した点にある。
【0012】
そして、この送水設備に係るシステムによって、降雨時の雨水を放流するためにポンプ場1、処理場2に設置した雨水ポンプp12、あるいは処理水ポンプ21を晴天時に活用して、下流側の下水処理場2の処理水を上流側の需要地域に送水することにより、前記都市地域などにおける良好な水環境の水源の役割を果たすことができるようになるのである。
【0013】
図2は、本発明の第2実施形態を示すもので、分流式下水処理システムに本発明を組み合わせたシステムのフロー図である。雨天時には既存分流式下水道システムにおいては汚水bと雨水aが別系統として流れ、汚水については処理される点は、前述の通りである。そして、この実施形態の特徴とするところは、下水処理場2の処理水を送水するための処理水ポンプp21を設置し、その処理水ポンプ21から、ポンプ場1の降雨時の雨水を放流するために設置した雨水ポンプp12に達する第1送水水路L1と、前記雨水ポンプp12から上流側の需要地域に達する第2送水水路L2を設置し、前記ポンプp21、p12と同送水水路L1、L2を用いて、晴天時には、前記処理水dを上流側の需要地域に送水可能なシステムを構築とした点にある。
【0014】
かくして、この第2実施形態においても、第1実施形態の場合に同じく、降雨時の雨水を放流するためにポンプ場1に設置されている雨水ポンプp12を活用して、下水処理場2の処理水を上流側の需要地域に送水することにより、前記都市地域などにおける良好な水環境の水源の役割を果たすことができるのである。
【0015】
次に、図3を用いて本発明の第3実施形態について説明する。
図3において、既存プロセスにおいては通常の雨天時に雨水と汚水を合流した下水cは下水管21を経て下水処理場2に導かれ、処理水dとして放流される。この下水管21には、雨天時に設計水量以上の雨水が流れ込むため所定量以上の下水が流入した場合には、ポンプ場に設置した雨水ポンプp12a、p12b、p12cを用いて公共用水域等へ雨水を直接放流するしくみとなっている。このようなケースでは、下水処理場に処理水ポンプp21を設置するか既に設置してある雨水ポンプを晴天時に処理水ポンプp21として活用し、この処理水ポンプp21と上流側の雨水ポンプp12aとの間に第1送水水路L1を、雨水ポンプp12aと上流側の雨水ポンプp12bとの間に第2送水水路L2を、雨水ポンプp12bと上流側の雨水ポンプp12cとの間に第3送水水路L3を設置して、晴天時は、それら雨水ポンプ類と送水水路を用いて、前記処理水dを上流側の需要地域に送水可能なシステムとする。
【0016】
かくして、このような送水設備のシステムによれば、上流側の需要地域との間に設置されている複数の雨水ポンプは、雨天時には増水放流という所期の効果を発揮するものであるが、晴天時には、これら複数の雨水ポンプを順次中継しながら送水を繰り返して、下水処理場から長距離はなれた上流側の需要地域に対して、処理水dを送りとどけることができるようになる。かくして、下水処理水は遠隔地都市地域における水環境の水源の役割を果たすことができるのである。
【0017】
さらに、このような送水設備のシステムによれば、増水時に上記複数の雨水ポンプから直接放流する雨水の汚濁負荷を除去するためにポンプ場に設置される滞水池、雨水処理装置に、処理水dを送りとどけることができるようになる。かくして、下水処理水はポンプ場における洗浄水として活用が可能となり、滞水池、雨水処理装置の良好な維持管理を行うことができる。
【0018】
【発明の効果】
本発明の下水処理水の送水システムは、以上説明したように構成されているので、下水処理における雨水直接放流用ポンプの余力を活用して、晴天時に処理水を上流の需要地域に送水できるので、大容量送水ポンプを新設する必要がなくなり、莫大な設備費も不要となるから、かねてから懸案となっていた都市地域における良好な水環境の整備に大いに寄与できるという優れた効果がある。また合流式下水道に限定すれば処理水は滞水池、雨水処理装置の洗浄に活用できる有用な水資源であり、本システムの利用価値はさらに増大する。よって本発明は、従来の問題点を解消した下水処理水の送水システムとして、実用的価値はきわめて大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を説明するためのシステムフロー図。
【図2】第2の実施形態を示すシステムフロー図。
【図3】第3の実施形態を示すシステムフロー図。
【図4】合流式下水処理を説明するためのシステムフロー図。
【図5】分流式下水処理を説明するためのシステムフロー図。
【符号の説明】
1 ポンプ場、2 下水処理場、a 雨水、b 汚水、c 下水、d 処理水、e 放流水、p11 ポンプ、p12 雨水ポンプ、p21 処理水ポンプ、L1 第1送水水路、L2 第2送水水路、21 下水管。
Claims (4)
- 晴天時において、降雨時の雨水を放流するために設置した雨水ポンプを用いて、下水処理場の処理水を上流側の需要地域に送水することを特徴とする下水処理水の送水システム。
- 下水処理場の処理水を送水するための処理水ポンプと、その処理水ポンプから降雨時の雨水を放流するために設置したポンプ場内の雨水ポンプに達する第1送水水路と、前記雨水ポンプから上流側の需要地域に達する第2送水水路を設置し、晴天時において、前記処理水を上流側の需要地域に送水可能としたことを特徴とする下水処理水の送水システム。
- 下水処理場と前記上流側の需要地域との間に、複数のポンプ場がある場合において、前記下水処理場の処理水を、複数のポンプ場の雨水ポンプを用いて順次中継して、前記上流側の需要地域に送水することを特徴とする請求項1に記載の下水処理水の送水システム。
- 請求項1に記載の下水処理水の送水システムにおいて、前記下水処理場の処理水を晴天時にポンプ場における雨水処理設備、雨水滞水池の洗浄水として利用することを特徴とする下水処理水の送水システム
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