本発明は、「有毒なβ−アサロンリッチなAcorus calamus油のジヒドロ生成物の、DDQの媒介する1段階二量体化による新規なネオリグナン:3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペンの生成」に関し、式(I)の2,4,5−トリメトキシフェニルプロパン(β−アサロンリッチなAcorus calamus油の水素化によって得られるアサロンのジヒドロ生成物)の1段階二量体化によって、式IIのネオリグナンの3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1プロペン(NEOLASA−Iと呼ばれる)、ならびにその副生成物(side product)として、生物活性を有するα−アサロンおよび1−(2,4,5−トリメトキシ)フェニル−1−プロパノンが生成される。さらに、ネオリグナン(NEOLASA−I)は水素化されて、その対応するジヒドロ生成物である3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニルプロパン(NEOLASA−IIと呼ばれる)が得られ、これによって上記親化合物のネオリグナン(NEOLASA−I)の構造が確認され、存在する二重結合の位置を定めることができる。さらにこれは、天然の希少なネオリグナン(アコラジン(acoradin)またはマグノサリン(magnosalin)またはヘテロトロパンおよびフェニルインダン誘導体など)およびそれらの類似体を十分な量で調製するための単純なシントンとして機能することもでき、構造的に類似しているネオリグナン誘導体(オーレイン(aurein)またはヘキセストロールまたはノルジヒドログアイアレチン酸誘導体など)に関しては知られている抗真菌活性、酸化防止活性、抗炎症活性、神経弛緩活性、抗肝毒活性、抗癌活性、抗HIV活性、および抗PAF活性などの広範囲の生物活性をもたらす可能性がある。本発明においては、ネオリグナン(NEOLASA−I)生成は、2,4,5−トリメトキシフェニルプロパン誘導体から、良好な収率(32%)でのネオリグナン、フェニルプロパノイドの二量体を得るDDQにより補助される1段階合成の最初の例である。
ネオリグナンおよびリグナンは、肝保護、ホルモンの遮断、抗菌性、抗真菌性、植物成長の調整、抗HIV性、抗癌性、および酸化防止活性などの広範囲の生物活性があることが知られている(Macrae,W.D.およびTowers,G.H.N.,Phytochemistry,23(6),1207−1220(1984);Ward,R.S.,Tetrahedron,46(15),5029−5041(1990);Charlton,J.L.,J.Nat.Prod.,61,1447−1451(1998);Alves,C.N.;Barroso,L.P.;Santos,L.S.およびJardim,I.N,J.Braz.Chem.Soc.,9(6),577−582(1998);Juhasz,L.;Dinya,Z.;Antus,S.およびGunda,T.E.,Tetrahedron Letters,41,2491−2494(2000);Tanaka,T.;Konno,Y.;Kuraishi,Y.;Kimura,I.;Suzuki,T.およびKiniwa,M.,Biorg.& Med.Chem.Letts.,12,623−627(2002);米国特許第6,294,574号;第6,201,016号;第5,856,323号書;第5,639,782号;第5,530,141号;第4,704,462号;第4,619,943号;および第4,540,709号;特開平04−082837号;WO第09/215294号;および欧州特許第159565号))。ネオリグナンおよびリグナンは、桂皮酸誘導体から誘導される2つのC6−C3単位がカップリングしたことを特徴とする天然生成物の大きなグループに属するが、どちらも植物中に微量しか存在しない(Rao,K.V.およびRao,N.S.P.,J.Nat.Prod.,53(1),212−215(1990)、ならびにFiller,F.;Bail,J.C.L.;Duroux,J.L.;Simon,A.およびChulia,A.J.,Planta Medica,67,700−704(2001))。命名法の目的から、上記のC6−C3単位はプロピルベンゼンとして扱われ、ベンゼン環中は1〜6の番号が付けられ、プロピル基は7〜9(またはα〜γ)で始まる。第2のC6−C3単位の場合には、番号にプライム記号が付けられる。これら2つのC6−C3単位が8位と8’位(すなわちβとβ’)の間の結合によって連結されると、その化合物はリグナンと呼ばれる。C−8とC−8’(またはβとβ’)の結合が存在せず、2つのC6−C3単位が炭素−炭素結合によって連結している場合、化合物はネオリグナンと呼ばれる。これ以外の種類の連結による二量体は、シクロネオリグナン、エポキシネオリグナン、およびオキシネオリグナンなどとして知られている。同様に、リグナン、ネオリグナン、またはエポキシネオリグナン骨格の側鎖(すなわちC−7〜C−9またはC−7〜C−9)中の二重結合(または三重結合)の存在は、語尾の−アン(−ane)を、二重結合の位置を示すロカントを有する−エン(−ene)(または−イン(−yne))に変化させることによって示される(Moss,G.P.Pure Appl.Chem.,72(8),1493−1523(2000))。これらのネオリグナンおよびリグナンの基本環構造は、アリルおよびp−プロペニルフェノール(イソオイゲノール、コニフェリルアルコール、またはシナピルアルコールなど)の二量体化によって推測することができる。フェノールを酸化するとフェノキシ基が生成する場合が多く、これは低い選択性で結合する。主としてフェノール性ヒドロキシルに対してオルト位およびパラ位にC−C結合およびC−O結合の両方が形成される。合成に有用な反応は、上記位置の置換基によって、反応性が阻害される場合にのみ得られる。たとえば、2,6−または2,4−置換フェノールからは、C−C結合したビフェニルを良好な収率で得ることができる。その他の場合では、分子内反応を起こすことによってカップリングさせることができ、閉環は位置選択性の誘導の効果的な方法である(Comprehensive Organic Synthesis,Trost,B.M.;Fleming,I.;Pattenden,G.編著;Pergemon:Oxford、第3巻、659−703(1991)中の、Whitting,D.A.Oxidative Coupling of Phenols and Phenol Ethers)。同様に、2種類のフェノールの混合物を酸化することによって、個々のフェノールの二量体と、異なるフェノールの間の交差カップリング生成物との混合物を得ることができる。あるフェノールが別のものより速く反応する場合、たとえば一方の酸化性がより低い場合、有意量の交差カップリング生成物が生成されることなく二量体化される傾向にある(Syrjanen、K.およびBrunow,G.,J.Chem.Soc.Perkin Trans 1,3425−3429(1998))。この問題に対処するための一方法は、より反応性の低いフェノールを大過剰で使用して開始し、有意な二量体化には低すぎる濃度に維持されるような十分な低速でより反応性の高いフェノール(および酸化剤)を連続的に加えることである。しかしこの方法は、扱いが困難であり、反応体積が大きくなり、再現することも困難である。広範囲の酸化剤、たとえばK3Fe(CN)6、H2O2、FeCl3、VOF3、トリフルオロ酢酸タリウム(III)(thallium(III)tristrifluoacetate)、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ヨードベンゼンジアセテート(Frank,B.およびSchlingloff,G.,Liebig.Ann.Chem.,659,132(1962);Taylor,W.I.およびBattersby,A.R.「Oxidative Couplings of Phenols」の一部,Marcel Dekker,New York(1967);Kametani,T.およびFukumoto,K.,Synthesis,657(1972);Taylor,E.C.;Andrade,J.G.;Rall),G.J.H.およびMcKillop,A.,J.Am.Chem.Soc.,93,4841(1971);Kaisa,S.およびGosta,B.,Tetrahedron,57,365−370(2001);Juhaasz,L.;Kurti,L.およびAntus,S.,J.Nat.Prod,63,866−870(2000))、および多くの他の物質が酸化性カップリングに使用されてきたが、一般にこれらの試薬は収率が低く、複雑な混合物が得られることも多い。実際、フェノキシ基またはフェノキソニウムイオン中間体は、リグナンおよびネオリグナンの合成において最も一般的であるが、リグナンおよびネオリグナンの合成に非フェノール系化合物が使用されている特許および論文が少数存在する(Kadota,S.;Tsubono,K.およびMakino,K.,Tetrahedron Letters,28(25),2857−2860(1987)、ならびにDhal,R.;Landais,Y.;Lebrun,A.;Lenain,V.およびRobin,J.P.,Tetrahedron,50(4),1153−1164(1994))。たとえば、ノルジヒドログアイアレチン酸(多くの植物の樹脂状滲出物から誘導される最も重要な二量体の1つ)は、ヒトパピローマウイルス、単純ヘルペス、HIV、および血糖上昇活性の阻害などの広範囲の薬理活性を伴っており、この化合物は、非フェノール系化合物の二量体化によって合成されており、たとえばジメトキシプロピオフェノン(Perry,C.W.米国特許第3,769,350号(1975年))、置換ベンジルマグネシウムクロリド(Akio,M.;Kohei,T.;Keizo,S.およびMakoto,K.Tetrahedron Letters,21,4017−4020(1980))、およびジメトキシフェニルアセトン(Mikail,H.G.およびBarbara,N.T.Tetrahedron Letters,42,6083−6085(2001))の二量体化によって合成されている。しかし、上記方法は、試薬の特殊な取り扱い、0℃未満での温度の維持、高価な試薬、および全体的な低収率などの多数の欠点を有し、したがって、いすれの方法も工業的利用のためのスケールアップが可能ではない。これとは逆に、本発明には上記の欠点は存在せず、式Iの2,4,5−トリメトキシフェニルプロパン(β−アサロンリッチなAcorus calamus油の水素化によって得られるアサロンのジヒドロ生成物)(実施例I)から、式IIの新規なネオリグナン3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペン(NEOLASA−Iと呼ばれる)(実施例II)への1段階の二量体化を開示する。さらに、ネオリグナン(NEOLASA−I)は水素化されて、その対応するジヒドロ生成物(3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニルプロパン)(NEOLASA−IIと呼ばれる)(実施例III)が得られ、これによって上記親化合物のネオリグナン(NEOLASA−I)の構造が確認され、存在する二重結合の位置を定めることができる。さらにこれは、天然の希少なネオリグナン(アコラジンまたはマグノサリンまたはヘテロトロパンおよびフェニルインダン誘導体など)およびそれらの類似体を十分な量で調製するための単純なシントンとして機能することもでき、広範囲の生物活性をもたらす可能性がある(Wenkert,E.;Gottlieb,H.E.;Gottlieb,O.R.;Pereira,M.O.D.S.およびFormiga,M.D.,Phytochemistry,15,1547−1551(1976);Kikuchi,T.;Kadota,S.;Yanada,K.;Tanaka,K.;Watanabe,K.;Yoshozaki,M.;Yokoi,T.およびShingu,T.,Chem.Pharm.Bull.31,1112(1983);Yamamura,S.;Niwa,M.;Nonoyama,M.およびTerada,Y.Tetrahedron Letters,4891(1978);Kadota),S.;Tsubono,K.;Makino,K.;Takeshita,M.およびKikuchi,T.,Tetrahedron Letters,28(25),2857−2860(1987);Shimomura,H.;Sashida,YおよびOohara,M.,Phytochemistry,26(5),1513−1515(1987);Ahm,B.T.;Lee,S.;Lee,S.B.;Lee,E.S.;Kim,J.G.およびJeong,T.S.,J.Nat.Prod.,64,1562−1564(2001);ならびに、Filleur,P.;Le Bail,J.C.;Duroux,J.L.;Simon,A.およびChulia,A.J.,Planta Medica,67,700−704(2001))。
実際には、脂質低下性および抗血小板作用を有するよく知られたフェニルプロパノイドであるα−アサロン(Hernandez,A.;Lopez,M.L;Chamorro,G.およびMendoza,F.T.,Planta Medica,59(2),121−124(1993);Garduno,L.;Salazar,M.;Salazar,S.;Morelos,M.E.;Labarrios,F.;Tamariz,J.およびChamorro,G.A.,J.of Ethnopharmacology,55(2),161−163,(1997);ならびにJanusz,P.;Bozena,L.;Alina,T.D.;Barbara,L.;Stanislaw,W.;Danuta,S.;Jacek,P.;Roman,K.;Jacek,C.;Malgorzata,S.およびZdzislaw,C.,J.Med.Chem.,43,3671−3676(2000))の調製を,式Iの2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンを酢酸中のDDQで処理して1−(2,4,5−トリメトキシ)フェニル−1−アセトキシプロパンを得た後,アルカリ加水分解およびその酸性脱水によりα−アサロンを得ることによって行う、単純で経済的な方法の開発に我々が関心を持っていたときに、偶然ネオリグナンの生成が確認された。この構想は、ベンジル系化合物をHg(OAC)2/AcOHまたはDDQ/AcOHで処理することによって対応するアセテート誘導体が得られると報告されていた方法に基づいていた(Rao,K.V.およびChattopadhyay,S.K.,Tetrahedron,43,669(1987)、ならびにRao,K.V.およびRao,N.S.P.,J.Nat.Prod.53(1),212−215(1990))。しかし驚いたことに、酢酸の存在下で2,4,5−トリメトキシフェニルプロパン(ベンジル系化合物)をDDQ(1.0〜1.3モル)で処理すると、予期せぬ生成物、すなわちネオリグナン(32%の収率)、α−アサロン(9%の収率)、および1−(2,4,5−トリメトキシ)フェニル−1−プロパノン(22%の収率)の混合物が得られ(実施例II)、予期していた1−フェニル−1−アセトキシプロパン誘導体は生成しない(Subodh,K.J.Org.Chem.50,3070−3073(1985)、およびWard,R.S.Tetrahedron Letters,48(15),5029−5041(1990))。ネオリグナン(3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペンまたは2,2’,4,4’,5−5’−ヘキサメトキシ−7’,8−ネオリグ−7−エン)、α−アサロン、および1−(2,4,5−トリメトキシ)フェニル−1−プロパノン(またはイソアコラモン(isoacoramone))の構造は、スペクトルデータに基づいた確認が成功している(実施例II)。2,4,5−トリメトキシフェニルプロパン(C6−C3)の一部がDDQによって脱水素してα−アサロンの生成が起こり、2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンの他のごく一部がDDQによって酸化してイソアコラモンを生成する場合にのみ、3種の生成物すべての生成が仮定される。しかし、ネオリグナンの生成は、最初に生成したα−アサロンの一部が未反応の2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンおよびDDQと転位反応を起こして二量体化する場合にのみ可能となる。さらに、上記生成物の詳細な機構の研究は進行中である。酢酸中のDDQ量を増加させることによって(1.4〜2.1モル)、ネオリグナン(NEOLASA−I)およびα−アサロンがもう一度得られたが、1−(2,4,5−トリメトキシフェニル)−1−プロパノンは上記値(22%)よりもわずかに高い収率(39%)で得られた(実施例II)ことは注目に値する。後に、α−アサロンと同様に、イソアコラモン(2,4,5−トリメトキシプロピオフェノン)も、公知の薬用植物Acorus calamus、Piper marginatum、およびAcorus tararinowii中にごく微量であるが見られる、興味深い希少なフェニルプロパノイドとして認識されている(Mazza,G.,J.of Chromatography,328,179−206(1985);Santos,B.V.de O.およびChaves,M.C.de O.,Biochem.Systematics Ecology,25,539−541(1999)、ならびにJinfeng,HuおよびXiaozhang,Feng,Planta Medica,66,662−664(2000))。
結論として、本発明は、β−アサロンリッチなAcorus calamus油の水素化によって得られる比較的安価で経済的な材料の2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンから出発して、新規なネオリグナン(式(II)の3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペン)および式(III)の3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニルプロパンとともに、それらの副生成物として式(IIa)のα−アサロン、および式(IIb)のイソアカロモン(2,4,5−トリメトキシプロピオフェノン)を調製する単純で経済的な方法を開示し、その概略が図式Iに示されている。本発明のその他の目的および利点は説明が進むにつれて明らかになるであろう。
発明の目的
本発明の主目的は、3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニルプロペンであるネオリグナンを、市販のAcorus calamus油から単離される有毒のβ−アサロンの水素化生成物である2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンから調製することである。
本発明の別の目的は、四倍体または六倍体変種(アジア諸国で広範囲に分布している)の有毒のβ−アサロンリッチなショウブ(calamus)油を利用し、それによってそれらの収益性のある使用を促進することである。
本発明のさらに別の目的は、DDQ量、時間、および温度を変化させることによる2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンの相互作用を研究することである。
本発明のさらに別の目的は、ネオリグナンおよび副生成物を高純度で得るための簡単な精製方法を開発することである。
本発明のさらに別の目的は、天然の希少なフェニルプロパノイド、すなわちα−アサロンおよび1−(2,4,5−トリメトキシ)フェニル−1−プロパノンであることが最終的に明らかとなった副生成物の構造を確立することである。
本発明のさらに別の目的は、対応するジヒドロネオリグナン、すなわち3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニルプロパンに還元することによって、上記ネオリグナン中に存在する二重結合の位置をさらに確立することである。
発明の概要
本発明は、穏やかで効率的な試薬の2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)と、市販のショウブ油から単離された有毒のβ−アサロンの水素化生成物である2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンとを利用する、ネオリグナンの調製方法を提供する。上記方法によって、新規なネオリグナン(3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペン)(NEOLASA−Iと呼ばれる)が得られるだけでなく、生物活性を有する希少な天然のフェニルプロパノイド、すなわちα−アサロンおよび1−(2,4,5−トリメトキシフェニル)−1−プロパノン(イソアコラモン)として後に特性決定された2種類以上の生成物も得られることは注目に値する。さらに、ネオリグナン(NEOLASA−I)の構造を、対応するジヒドロネオリグナン(3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニルプロパン)(NEOLASA−IIと呼ばれる)に接触水素化することによって確立した。文献調査により、ネオリグナンは、酸化防止性、抗癌性、および抗HTV性などの広範囲の活性を有するフェニルプロパノイドの興味深い二量体生成物であることがわかっているが、植物界に微量でのみ存在する。その広い範囲を視野に入れながら、ネオリグナンのいくつかの部分合成および全合成が開発されているが、それらの方法の大部分は高価な出発物質および試薬を必要とし、さらには多段階で進行し、全体の収率は低い。したがって、我々の、DDQにより補助される1段階方法による2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンの酸化中のネオリグナンの生成の発見および開示は、これまで報告されている方法より安価で経済的な方法であり、本発明は一連の生物活性を有するネオリグナン誘導体を生成することができる。
発明の詳細な説明
したがって、本発明は、「新規なネオリグナン:3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペンの生成における、有毒のβ−アサロンリッチなAcorus calamus油のジヒドロ生成物の、DDQが媒介する1段階二量体化」を提供し、前記方法は、有毒のβ−アサロン、またはα、β、およびγ−アサロンの混合物を含有するショウブ油を水素化して、式Iの2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンを得た後、5〜120℃の範囲の温度で、30分〜72時間の範囲の時間をかけて、溶媒として酢酸を使用して上記化合物をDDQと反応させて、3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペンおよびその副生成物を得ることを含む。
本発明の一実施形態においては、市販のショウブ油から単離される有毒のβ−アサロンの水素化生成物である2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンからネオリグナンを調製するために単純な方法を使用することができる。
本発明の別の実施形態においては、四倍体または六倍体変種(アジア諸国で広範囲に分布している)のAcorus calamus油から得られ、国際的に禁止されているが、広範囲で利用可能な有毒のβ−アサロンの工業的利用に単純な方法を使用することができ、これによってそれらの収益性のある使用が促進される。
本発明のさらに別の実施形態においては、単純な方法によって、フェニルプロペンの全3種類の異性体、すなわちα、βおよびγ−アサロンの混合物を最初に2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンに転化し、続いてこれを、3−エチル−2−メチル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)−フェニル)−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−プロペン、ならびにその副生成物のα−アサロンおよび1−(2,4,5−トリメトキシ)フェニル−1−プロパノンを調製するための単純なシントンとして利用する。
本発明のさらに別の実施形態においては、単純な方法によって、DDQ量および時間、温度および溶媒を変化させることによって2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンの相互作用を明らかにする。
本発明のさらに別の実施形態においては、DDQの2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンに対するモル比が、2.1:1.0〜1.0:1.0の範囲である。
本発明のさらに別の実施形態においては、ネオリグナンおよび副生成物を高純度で得るための容易な精製方法を提供する。
本発明のさらに別の実施形態においては、単純で経済的な経路により十分な量の新規なネオリグナンを提供し、さらにこれによって、構造的に類似するネオリグナンには知られているその広範囲の生物活性を評価する機会を提供する。
本発明のさらに別の実施形態においては、融点が96〜97℃の範囲である結晶性固体としての新規なネオリグナンを提供する。
本発明のさらに別の実施形態においては、1つの不斉中心を有する新規なネオリグナンを提供する。
本発明のさらに別の実施形態においては、新規なネオリグナンを提供し、これは、数種類の天然ネオリグナンおよびリグナン誘導体に転化させることができる。
本発明のさらに別の実施形態においては、3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペン(NEOLASA−I)の接触水素化によって得られる新規なジヒドロネオリグナン、すなわち3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニルプロパン(NEOLASA−II)を提供する。
本発明のさらに別の実施形態においては、数種類の天然のネオリグナンおよびリグナン誘導体に転化させることができる新規なジヒドロ(NEOLASAII)を提供する。
本発明のさらに別の実施形態においては、単純で経済的な経路で十分な量の新規なジヒドロネオリグナンを提供し、これによって、その生物学的評価が可能となる。
本発明のさらに別の実施形態においては、2つの不斉中心を有する新規なジヒドロネオリグナンを提供する。
植物由来の生成物は、精油、着色剤(colours)および染料、化粧品、医薬、およびその他の多くの分野で広範囲にわたる用途が見いだされているが、その理由は、それらが容易に入手可能であり安価であるだけでなく、通常は安全ではない場合もある合成生成物よりも安全であるということが重要な理由である。ある限度を超えた数種類の植物化学物質は、製品の市場潜在能力が低下し、たとえば、フェニルプロパノイドリッチな精油は、とくにフェニルプロペンのいくつかの異性体によって劣化する(Miller,E.C.;Swanson,A.B.;Phillips,D.H.;Fletcher,T.L.;Liem,A.およびMiller,J.A.,Cancer Research,43(3),1124−1134(1983);Kim;S.C.;Liem;A.;Stewart;B.C.およびMiller,J.A.Carcinogensis,20(7),1303−1307(1999);ならびに、Lazutka,J.R.;Mierauskiene,S.およびDedonyte,V.Food & Chemical Technology,39,485−492(2001))。一般に、トランス異性体(たとえばα−アサロンおよびイソオイゲノールなど)はヒトが消費してもより安全であることが分かっているが、シス/アリル異性体(たとえばβ−アサロンおよびサフロール(saffrole))は有毒で発ガン性を有することが分かっている(Harborne,J.B.およびBaxter,H.,Phytochemical Dictionary:A Handbook of Bioactive Compounds from Plants,Taylor & Francis Ltd.,Washington DC,474(1993))。その結果、最も影響を受ける油はAcorus calamus(科:Araceae(サトイモ科))油であり、その四倍体および六倍体変種(インド、日本、パキスタン、および中国などのアジア諸国で広範囲に分布している)はcis−フェニルプロペンすなわちβ−アサロンを非常に高い%値で含有しており(70〜90%を変動する)、一方、二倍体および三倍体変種は限定された量のβ−アサロンを含む(3〜8%)(Stahl,E.およびKeller,K.,Planta Medica 43,128−140(1981);Waltraud,G.およびSchimmer,O.,Mutation Research 121,191−194(1983);Mazza,G.,J.of Chromatography,328,179−206(1985);Motley,T.J.,Economic Botany,48,397−412(1994))。
β−アサロン動物に対して発ガン性があることが実験的に証明されており、経口投与によって十二指腸領域に腫瘍を誘発することも分かっている。さらに、β−アサロンは、代謝活性化の後インビトロでヒトリンパ球に対して染色体損傷作用も示す(Taylor,J.M.;Jones,W.I.;Hogan,E.C.;Gross,M.A.;David,D.A.およびCook,E.L.,Toxicol.Appl.Pharmacol.,10,405(1967);Keller,K.;Odenthal,K.P.およびLeng,P.E.,Planta Medica 1,6−9(1985);Abel,G.,Planta Medica,53(3),251−253(1987);ならびにRiaz,M.;Shadab,Q.;Chaudhary,F.M.,Hamdard Medicus,38(2),50−62(1995))。結果として、アジア起源のあらゆる種類のショウブ油は、香料、香水、および医薬産業における使用が国際的に禁止されている。我々の知る限りでは、ショウブ油の有毒のβ−アサロンがその付加価値のために使用されているという報告は、我々のグループによるごく最近のものだけであり(Sinha,A.K.;Dogra,R.およびJoshi,B.P.,Ind.J.Chem.,41B,(2002)(印刷中);Sinha,A.K.;Joshi,B.P.およびDogra,R.,Nat.Prod.Lett.,15(6),439−444(2001);Sinha,A.K.;Acharya,R.およびJoshi,B.P.,J.Nat.Prod.(2002)(印刷中)、Sinha,A.K.;Dogra,R.およびJoshi,B.P.,Sinha,A.K;Joshi,B.P.およびDogra,特願2001−68716号(2001年3月12日出願);Sinha,A.K;Joshi,B.P.およびDogra,米国特許出願第09/805,832号(2001年3月14日出願)および米国特許出願第09/823,123号(2001年3月31日出願))、これらによると、有毒のβ−アサロンを高比率で含有する粗(crude)ショウブ油について、ギ酸アンモニウム/パラジウム担持炭またはH2/パラジウム担持炭により補助される還元を行うことによって、式Iの2,4,5−トリメトキシフェニルプロパン(ジヒドロアサロン)が純度97%で得られ、ショウブ油中のアサロン含有率に基づく収率は81〜87%の範囲となる。こうして得られた2,4,5−トリメトキシフェニルプロパン(または1−プロピル−2,4,5−トリメトキシベンゼン)を最初に試験すると、毒性がβ−アサロンの5分の1未満であることが分かり、したがって、この2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンは、甘く、イランイランのようで、わずかにスパイシーでフルーティな芳香を有するため、マウスウォッシュ、練り歯磨き、殺菌石けん製品、チューインガム香料、およびスパイシーな製品中のごく一部などの製品に使用することができる。さらに、2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンは、サリチルアミド系抗精神病薬(5,6−ジメトキシ−N[(1−エチル−2−ピロリジニル)メチル]−3−プロピルサリチルアミド)の合成の単純で経済的な出発物質となることも発見されている(Thomas,H.;Stefan,B.;Tomas,D.P.;Lars,J.;Peter,S.;Hakan,H.およびOrgen,S.O.,J.Med.Chem.,33,1155−1163(1990)、ならびにSinha,A.K,米国特許出願第09/652376号(2000年8月31日出願))。本発明においては、単純で経済的な出発物質としての式Iの2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンのさらなる活用の範囲を拡大して、式IIの新規なネオリグナン(3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”、5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペン)(NEOLASA−Iと呼ばれる)、および式IIIのそのジヒドロ誘導体(3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニルプロパン)(NEONLASA−IIと呼ばれる)、ならびにその副生成物である式IIaのα−アサロン、および式IIbの1−2,4,5−トリメトキシ)フェニル−1−プロパノン(イソアコラモン)の生成に利用し、これらは生物活性を有する希少なフェニルプロパノイドである。
広範囲で利用可能なβ−アサロンリッチなAcorus calamus油の毒性の問題を考慮して、我々の最初の試みは、β−アサロン、すなわち2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンのジヒドロ生成物を介して、薬理活性を有するα−アサロンを合成するための単純でより安価な出発物質としてβ−アサロンを利用することであった。この目的では、2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンを、酢酸中の酢酸第二水銀またはDDQで処理することによって、中間体1−(2,4,5−トリメトキシ)フェニル−1−アセトキシプロパンが得られ、続いてアルカリ加水分解および酸性(acidic)脱水を行うことによってα−アサロンが生成される(Wang,Z.;Jiang,L.およびXingxiang,X.,Youji Huaxue,10(4),350−352(1990);Shirokova,E.A.;Segal,G.M.およびTorgov,I.V.,Bioorg.Khim.,11(2),270−275(1985);ならびにJanusz,P.;Bozena,L.;Alina,T.D.;Barbara,L.;Stanislaw,W.;Danuta,S.;Jacek,P.;Roman,K.;Jacek,C.;Malgorzata,S.およびZdzislaw,C.,J.Med.Chem.,43,3671−3676(2000))。8,9,10,11−テトラヒドロジベンズ(a,h)アクリジンおよびステガン(stegane)などのベンジル系化合物を酢酸第二水銀/酢酸またはDDQ/酢酸で処理して対応するアセテートを生成することは、よく文献に記載されている(Subodh,K.,J.Org.Chem.,50,3070−3073(1985)、およびWard,R.S.,Tetrahedron Letters,48(15),5029−5041(1990))。しかし、2,4,5−トリメトキシフェニルプロパン(ベンジル系アルカン)は、上記と同様の反応条件下で酢酸第二水銀/酢酸を使用してもいずれの種類の生成物を生成することができなかった。興味深いことに、2,4,5−トリメトキシフェニルプロパン/DDQ/AcOHでも、期待される1−(2,4,5−トリメトキシ)フェニル−1−アセトキシプロパンを生成することができなかったが、興味深い生成物の混合物が得られた。これらはカラムクロマトグラフィーによって容易に精製され、mpがそれぞれ44〜45℃、109〜110℃、および96〜97℃の3つの異なる結晶性固体として、式IIaのα−アサロン、式IIbの1−(2,4,5−トリメトキシフェニル)−1−プロパノン(イソアコラモン)、および式IIの新規なネオリグナンとして同定された。α−アサロン(mp44〜45℃)の構造は、スペクトルデータに基づいて帰属し同定した(実施例II)。同様に、mpが109〜110℃の結晶性固体構造は、スペクトルデータに基づいて確認され、IR吸収帯が1658(共役C=O)cm-1に見られ、また2,4−DNP試験が陽性であることから、カルボニル基の存在が確認された。1H NMRから、16個のプロトンが見られ(実施例II)、これはδ1.18(3H,t,J=6.9Hz)におけるトリプレットのシグナル、および2.99(2H,q,J=6.9Hz)におけるカルテットのシグナル(全体的にエチル基を示す、メチル基プロトンとカップリングしているメチレンプロトンに帰属しうるシグナル)を除けば、出発物質の2,4,5−トリメトキシフェニルプロパン(実施例I)と比較してプロトンが2つ少ない。さらに、2つの芳香族のシングレットのプロトンの位置、およびトリメトキシ基からの9個のプロトンの3つのシングレットは、出発物質とある程度同じδ値であるが、δ1.18(2H,t)、2.99(3H,q)のエチルプロトン、およびカルボニル基(1658cm-1)が見られることから、最終的にトリメトキシ置換フェニル環に結合したエチルケトン(−CO−CH2−CH3)の可能性が支持された。同様に、13C NMRおよびDEPTのスペクトルデータから、ベンゼン環に直接結合するエチル基(δc8.4CH3;δc36.9CH2)およびケトン性カルボニル(δc200.5)の存在がさらに支持された(実施例III)。EI質量スペクトルでは、明瞭な[M]+ピークがm/z224に見られ、基準ピークはm/z195(M+−29)であった。これはエチル部分の存在と一致しており、これと1H、13C、およびIRのデータから、結晶性固体(mp109〜110℃)は最終的に1−(2,4,5−トリメトキシフェニル)−1−プロパノン(イソアコラモンとしても知られている)であることが確認された。これは天然の希少なフェニルプロパノイドとして後に発見され、Piper marginatumおよびAcorus tatarinowiiより淡黄色粘稠ゴムとして微量が単離されているが、本発明の方法では、天然イソアコラモンのスペクトルデータ(Jinfeng,HuおよびXiaozhang,Feng、Planta Medica、66,662−664(2000))と同様のスペクトルデータを有する結晶性固体(mp109〜110℃)としてイソアコラモンが得られた(実施例II)。このように、2,4,5−トリメトキシプロピオフェノン(イソアコラモン)を十分な量で調製することにより、構造的に類似したプロピオフェノン誘導体の場合に存在が知られている生物学的評価をより厳密におこなうことができる(Kuchar,M.;Brunova,B.;Rejholec,V.;Roubal,Z.およびNemecek,O.,Collection Czechoslov.Chem.,41,633−646(1976);Lariucci,C.;Homar,L.I.B.;Ferri,P.H.およびSantos,L.S.,Anais Assoc.Bras.Quim.,44(3),22−27(1995);Stauffer,S.R.;Coletta,C.J.;Tedesco,R.;Nishiguchi,G.;Carlson,K.;Sun,J.;Katzenellenbogen,B.S.およびKatzenellenbogen,J.A.,J.Med.Chem.,43,4934−4947(2000);ならびに、Jaimol,T.;Moreau,P.;Finiels,A.;Ramaswamy,A.V.およびSingh,A.P.,Applied Catalysis A:General,214,1−10(2001)。さらに、2,4,5−トリメトキシプロピオフェノン(イソアコラモン)は、4,5−ジメトキシプロピオフェノンの二量体化によって調製されるノルジヒドログアイアレチン酸(NDGA酸)の類似体としてのジアリールブタン型リグナンの調製のための単純なシントンとして使用することができる(ペリー(Perry),C.W.米国特許第3,769,350号(1975年))。
mpが96〜97℃である第3の結晶性固体の構造を確立するために、各ピークをより明確にし分離するために2種類の溶媒(CDCl3およびDMSO−d6)で記録したNMRスペクトルデータの包括的な検討を行った。結晶性固体のエレクトロスプレー(ES)−質量スペクトルより、m/e418(M+)で分子イオンが得られた。固体(mp96〜97℃)の1H NMRスペクトルから、6個のメトキシルの存在が示され、アサロンのようなフェニルインダンの二量体(Acorus calamusで報告されている非対称ダイマー)(Saxena,D.B.Phytochemistry 25(2)、553−555(1986))の側鎖構造の変化したものである可能性があることが分かった。興味深いことに、芳香族領域の4つのプロトンが1つにまとめられることから、芳香族プロトンは二量体化中には関与していないが、フェニルインダン(2,3−ジヒドロ−4,5,7−トリメトキシ−1−エチル−2−メチル−3−(2,4,5−トリメトキシフェニル)インデンの)芳香族プロトンの1つは二量体化に関与している。その他の基は、エチル基δ0.93(3H,t,H−5)、1.70〜1.97(2H,m,H−4)、3.59(1H,t,H−3)、第3級メチル基1.66(3H,s,H−6)、およびフェニル環に結合した炭素原子上のアルケンプロトン6.48(1H,s,H−1)であることが分かった。上記骨格は、13C(DEPT−135°)スペクトルデータおよびマスフラグメンテーションパターンm/z:418(M+)でさらに支持される(実施例II)。上記スペクトルデータに基づき、さらに一部の公知のネオリグナン、たとえばマグノシニン(magnoshinin)、マグノサリン(magnosalin)、およびヘテロトロパン(heterotropan)(Kikuchi,T.;Kadota,S.;Yanada,K.;Tanaka,K.;Watanabe,K.;Yoshozaki,M.;Yokoi,T.およびShingu,T.,Chem.Pharm.Bull.31,1112(1983);Yamamura,S.;Niwa,M.;Nonoyama,M.およびTerada,Y.Tetrahedron Letters,4891(1978);ならびに、Kadota,S.;Tsubono,K.;Makino,K.;Takeshita,M.およびKikuchi,T.,Tetrahedron Letters,28(25),2857−2860(1987))と比較すると、これらの構造がある程度類似しており(Wenkert,E.;Gottlieb,H.E.;Gottlieb,O.K.;Pereira,M.O.D.S.およびFormiga,M.D.,Phytochemistry,15,1547−1551(1976))、この結晶性固体は、ネオリグナン、すなわち3−エチル−2−メチル−3−(2”、4”、5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペン)(NEOLASA−Iと呼ばれる)と同定される(実施例II)。さらに、ネオリグナン(NEOLASA−I)は水素化されて(実施例III)、その対応するジヒドロ生成物、すなわち3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニルプロパン(NEOLASA−IIと呼ばれる)が得られ、これによって上記親化合物のネオリグナン(NEOLASA−I)の構造が確認され、存在する二重結合の位置を定めることができる。さらにこれは、ネオリグナン誘導体を十分な量で調製するための単純なシントンとして機能することもでき、構造的に類似しているネオリグナン誘導体に関しては存在が知られている抗真菌活性、酸化防止活性、抗炎症活性、神経弛緩活性、抗肝毒活性、抗癌活性、抗HIV活性、および抗PAF活性などの広範囲の生物活性をもたらす可能性がある。ネオリグナンおよびリグナンはあるクラスの天然植物生成物を含み、多くの植物種の根、茎、皮、果実、および種子中から検出されている。この全般的なクラス中では200種類を越える化合物が同定されており、2つの特徴的なフェニルプロパノイドの化学的組み合わせ、ならびに酸化の程度および置換基の種類の多様性が明らかとなっている。さらに、いくつかの天然リグナン/ネオリグナンは、Podophyllum種から単離されるポドフィロトキシンなどの生物活性物質の半合成の出発物質として使用され、抗癌性化合物のエトポシドおよびテニポシドの半合成に使用される(Stahelin,H.F.およびWartburg,A.V.,Cancer Research,51,5−15(1991))。生物活性に関することも含めて、天然および合成のネオリグナンおよびリグナンに関する多数の化学評論が入手可能である。しかし、ネオリグナス/リグナンは植物界には微量しか見いだされておらず、これらの理由から、ネオリグナス/リグナンの数種類の調製方法が、化学者らによって開発されており報告される従来方法の一部としては以下のものが挙げられる:典型的な従来技術の参考文献としては、Iguchi,M.,Nishiyama,A.,Terada,Y.およびYamamura,S.,Tetrahedron,51,4511−4514(1977);McKillop,A.;Turrell,A.G.およびTaylor,E.C.,J.Org.Chem.,765(1977);Minato,A.;Tamao,K.;Suzuki,K.およびKumada,M.,Tetrahedron Letters,21,4017−4020(1980);Cambie,R.C.;Clark,G.R.;Craw,P.A.;Rutledge,P.S.およびWoodgate,P.D.,Aust.J.Chem.,1775(1984);Kadota,S.,Tsubono,K.,Makino,K.,Takeshita,MおよびKikuchi,T.,Tetrahedron Letters,28(25),2857−2860(1987);Dhal,R.;Landais,Y.;Lebrun,A.;Lenain,V.およびRobin,J.P.,Tetrahedron,50(4),1153−1164(1994);Meyers,M.J.;Sun,J.;Carlson,K.E.;Marriner,G.A.;Katzenellenbogen,B.S.およびKatzenellenbogen,J.A,J.Med.Chem.,44,4230−4251(2001):Gezginci,M.H.およびTimmermann,B.N.,Tetrahedron Letters,42,6083−6085(2001);Robin,J.P.およびYannick,L.,Tetrahedron,48(5),819−830(1992)、ならびに、米国特許第3,769,350号、第4,873,349号、および第6,136,992号が挙げられる。
特許を含む上記すべての方法は種々の制限があり、これらはすべてネオリグナン誘導体を経済的に生成するためには適していないことが分かっている。より安価な材料および試薬からネオリグナン誘導体を単純に合成することを探求することにより、2,4,5−トリメトキシフェニルプロパン(アサロンの含有率が高い市販のAcorus calamus油の水素化から単離される)が単純で経済的な出発物質であることが分かり、2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンの脱水素、酸化および、2量体化によって、3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペン(NEOLASA−I)、ならびにより希少なフェニルプロパノイド、すなわちα−アサロンおよびイソアコラモンが得られる。本発明においては、ネオリグナン(NEOLASA−I)およびそのジヒドロ生成物(NEOLASA−II)の生成は、DDQを使用した1段階合成でフェニルプロパン誘導体から二量体を得ることの最初の例であり、単純および直接性の利点が得られ、大きなスケールでの調製に利用することができる。
これより、例として付随する実施例を参照しながら本発明を説明するが、これらの実施例は説明の目的で提供するものであり、本発明を限定するために構成されたものではない。
(実施例1)
2,4,5−トリメトキシフェニルプロパン(ジヒドロアサロン)の調製:出発物質2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンは、β−アサロン(Acorus calamus油から単離される)、またはアサロン(すなわち(βおよび/またはα、γ−アサロン)含有率が高い市販のショウブ油のいずれかの水素化によって調製される。
(a)β−アサロンの2,4,5−トリメトキシフェニルプロパン(ジヒドロアサロン)への水素化:粗ショウブ油(17.00g)をシリカゲルカラムに投入し、続いてこのカラムをヘキサンで溶離させて望ましくない非極性化合物を除去することによって、β−アサロンを単離した。続いてヘキサン−酢酸エチル混合物を使用し酢酸エチルの比率を10%まで増加させて溶離して、13.94g(82%、w/w)の純粋液体を得た;Rf0.63(ヘキサン:トルエン:酢酸エチル=1:1:0.1);1H NMR(CDCl3,300MHz)δ6.84(1H,s,H−6)、6.53(1H,s,H−3)、6.50(1H,dd,J=15.8Hzおよび1.5Hz,H−1’)、5.78(1H,dq,J=6.5Hzおよび15.8Hz,H−2’)、3.88、3.83および3.79(s,3H,それぞれ、3−OCH3)、ならびに1.85(3H,dd,J=6.5Hzおよび1.5Hz、H−3’);13C NMR(CDCl3,75.4MHz)δ151.4(C−2)、148.5(C−4)、142.3(C−5)、125.5(C−1’)、124.7(C−2’)、118.0(C−1)、114.1(C−6)、97.6(C−3)、56.5、56.2、および55.9(3×OCH3)、ならびに14.5(C−3’);EIMSm/z208(M+,100)、193(M+−Me,46)、165(M+−C3H7,24)。上記スペクトルデータに基づき、および報告されている文献(Gonzalez,M.C.;Sentandrew,M.A.;Rao,K.S.;Zafra,M.C.およびCortes,D.,Phytochemistry 43,1361−1364(1996))と比較すると、この液体は純度94%(シマズ(Shimadzu)−GC−14Bガスクロマトグラフィーを以下の条件で使用したGCにより測定:SE−30カラム;30m×0.25mm;インジェクター250°/C;FED検出器230%;温度プログラム40(2分間維持)から220℃(10分間維持)、10℃/分;体積1μl;N2流30ml/分;H2流40ml/分;気流300ml/分;分離注入比1:30)のβ−アサロンであると同定された。
このβ−アサロン(6.00g、0.029mol)を160mlのエタノールに加えたものに、10%パラジウム担持活性炭(0.80g)およびギ酸アンモニウム(17.00g、0.27mol)を加え、出発物質が消失するまで窒素雰囲気下、室温で撹拌した。濾過により触媒を除去し、減圧下で溶媒を蒸発させた。残留物を酢酸エチルおよび水の間で分配し、その酢酸エチル層を水で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過した。濾液を蒸発させると液体が残留し、これについて、溶離液としてヘキサン−酢酸エチル混合物を使用し酢酸エチルの比率を10%まで上昇させてシリカゲル上でクロマトグラフィーを行った。溶出液を蒸発させると、5.87g(97%)の透明で甘く快適な香りの液体が得られた;シリカゲル板上のRf0.69(ヘキサン:トルエン:酢酸エチル=1:1:0.1)、これは0℃未満で固化した;1H NMR(DMSO−d6)δ6.72(1H,s,H−6)、6.62(1H,s,H−3)、3.76〜3.68(9H,s,3−OCH3)、2.5(2H,t,C−1’)、1.6(2H,m,C−2’)、および0.9(3H,t,C−3’);13C NMR(CDCl3)δ151.4(C−2)、147.4(C−4)、142.7(C−5)、122.7(C−1)、114.3(C−6)、98.0(C−3)、ならびに56.5、56.2、および56.0(3×OCH3)、31.6(C−1’)、23.3(C−2’)、ならびに13.79(C−3’);EIMSm/z210(M+,39)、181(M+−C2H5,100)、167(M+−C3H7,5)、151(M+,OCH3+CO,29)、136(M+−C3H7+−OCH3,10)。1H NMR、13C NMR、および質量スペクトルデータに基づき、上記液体は純度99%(GCより)の2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンと同定された。
(b)粗Acorus calamus油のジヒドロアサロンへの水素化:この方法では、42.00gの粗ショウブ油(βおよび/またはα、γ−アサロン含有率が高い)を300mlのメタノールに加えたものを、パール反応器中(parr reactor)で、10%Pd/C(4.80g)を使用し、10〜40psi(0.69〜2.76バール)、室温において、出発物質が消失するまで水素化した。触媒を濾過し、減圧下で溶媒を除去して、39.9g(95w/w)の還元油を得た。上記溶離液系(ヘキサン−酢酸エチル混合物)を使用しシリカゲルカラムで還元油をカラム精製して、2,4,5−トリメトキシフェニルプロパン(35.76g)を液体として85%の収率(w/w)で得た;Rf0.69(ヘキサン:トルエン:酢酸エチル=1:1:0.1);液体の1H NMR(CDCl3)は、δ6.81(1H,s,H−6)、6.32(1H,s,H−3)、3.84〜3.78(9H,s,3−OCH3)、2.4(2H,t,C−1’)、1.6(2H,m、C−2’)、0.9(3H,t,C−3’)に現れた。スペクトルデータに基づき、この液体は2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンであると同定された。
(実施例II)
3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペンの調製:DDQ(6.13〜7.97g)を10〜15分間かけて、2,4,5−トリメトキシフェニルプロパン(5.67g、0.027mol)と酢酸(55mL)との氷冷し十分撹拌した溶液に加え、室温で終夜撹拌を続けた。DDQH2の沈殿した固体を濾取し、その濾過ケーキを酢酸で2回洗浄した。1つにまとめた酢酸層を蒸発させ、混合物を水に注ぎ込み、ジクロロメタン(3×70mL)で抽出した。1つにまとめた有機層をブライン(3×15mL)、10%重炭酸ナトリウム(2×10mL)、ブライン(3×15mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を蒸発させて得られた残留物について、ヘキサン−酢酸エチル混合物を使用し酢酸エチルの比率を40%まで上昇させて、シリカゲル上でクロマトグラフィーをおこない、類似したRfを有する分画を混合して、これらの溶媒を蒸発させて3種類の粘稠液体を得て、これらをヘキサンおよびメタノールの混合物からさらに結晶化させて、mpが44〜45℃、109〜110℃、96〜97℃の3種類の白色固体を、それぞれ9%、22%、および32%の収率で得た。
mpが44〜45℃の白色固体はα−アサロン(9%)と同定された;Rf0.63(ヘキサン:トルエン:酢酸エチル、1:1:0.1);1H NMR(CDCl3):δ6.91(1H,s,H−6)、6.64(1H,dd,J=1.5Hzおよび16Hz,H−1’)、6.45(1H,s,H−3)、6.02(1H,dq,J=6.2Hzおよび16.0Hz,H−2’)、3.84、3.81および3.77(それぞれ3H,s,3つのOCH3)、1.87(3H,dd,J=6.2Hzおよび1.5Hz、H−3’);13H NMR(CDCl3):δ149.9(C−2)、148.0(C−4)、142.6(C−5)、124.4(C−1’)、123.4(C−2’)、118.3(C−1)、109.2(C−6)、97.3(C−3)、56.1、55.7および55.1(3−OCH3)、18.7(C−3’);EIMSm/z208(M+,100)、193(74)、177(24)、165(26)、137(12)、105(8)、91(26)、77(24)、69(34)、65(8)、53(16)。上記スペクトルデータに基づき、および報告されている文献(Patra,A.およびMitra,A.K.,J.Nat.Prod.44,668−669(1981)、ならびに、Gonzalez,M.C.;Sentandrew,M.A.;Rao,K.S.;Zafra,M.C.およびCortes,D.,Phytochemistry 43:1361−1364(1996))と比較して、白色固体(mp44〜45℃)の構造がα−アサロンであることが最終的に確認された。
mpが109〜110℃の別の白色固体(22%)は1−(2,4,5−トリメトキシ)フェニル−1−プロパノンであると同定された;Rf0.78(ヘキサン中28%酢酸エチル);1H NMR(CDCl3):δ7.45(1H,s,H−6)、6.77(1H,s,H−3)、3.96、3.93および3.89(それぞれ3H,s,3つの−OCH3)、2.99(2H,q,J=6.9Hz,H−2’)、1.18(3H,J=6.9Hz、H−3’);13C NMR(CDCl3、75.4MHz)δ200.5(C−1’)、155.0(C−2)、153.4(C−4)、142.8(C−5)、118.9(C−1)、112.6(C−6)、96.3(C−3),56.1(4−OCH3および5−OCH3)、55.9(2−OCH3)、36.9(C−2’)、8.4(C−3’);EIMSm/z224[M]+(16)、195(100)、179(14)、171(10)、151(7)、69(15);IR(KBr)1658cm−1(C=O)。上記スペクトルデータに基づき、および報告されている文献(Jinfeng,HuおよびXiaozhang,Feng,Planta Medica,66,662−664(2000))と比較して、別の白色固体(mp109〜110℃)の構造は1−(2,4,5−トリメトキシ)フェニル−1−プロパノン(またはイソアコラモン)であると確認された。
mpが96〜97℃である第3の白色固体(32%)は、(3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペン)であると同定された;Rf0.45(ヘキサン中20%酢酸エチル);1H NMR(CDCl3)δ6.91(1H,s,H−6’)、6.84(1H,s,H−6”)、6.55(1H,s,H−3’)、6.51(1H,s,H−3”)、6.48(1H,s,H−1)、3.96(6H,s,2’−OCH3および2”−OCH3)、3.84(6H,s,4’−OCH3および4”−OCH3)、3.80(3H,s,5’−OCH3)、3.78(3H,s,5”−OCH3)、3.59(1H,t,H−3)、1.70〜1.97(2H,m,H−4)、1.66(3H,s,H−6)、0.93(3H,t,H−5);1H NMR((DMSO−d6)δ6.79(1H,s,H−6’)、6.68(1H,s,H−6”)、6.67(1H,s,H−3’)、6.66(1H,s,H−3”)、6.34(1H,s,H−1)、3.84(9H,s,2”−OCH3、4”−OCH3および5”−OCH3)、3.68(3H,s,2’−OCH3)、3.66(3H,s,4’−OCH3)、3.62(3H,s,5’−OCH3)、3.53(1H,t,H−3)、1.88〜1.67(2H,m,H−4)、1.60(3H,s,H−6)、0.84(3H,t,H−5);13C NMR(CDCl3)δ152.48(C−2’)、152.02(C−2”)、148.48(C−4’)、147.94(C−4”)、143.57(C−5’)、142.89(C−5”)、140.41(C−2)、124.88(C−1’)、120.18(C−1)、119.65(C−1”)、114.88(C−6’)、112.14(C−6”)、99.47(C−3’)、99.37(C−3”)、57.37(5”−OCH3)、57.09(5’−OCH3)、57.07(4”−OCH3)、56.94(4’−OCH3)、56.55(2”−OCH3)、56.48(2’−OCH3)、47.38(C−3)、26.74(C−4)、17.82(C−6)、12.84(C−5);13C NMR(DMSO−d6)δ152.56(C−2’)、152.11(C−2”)、149.07(C−4’)、148.53(C−4”)、143.53(C−5’)、142.84(C−5”)、139.45(C−2)、123.96(C−1’)、120.56(C−1)、119.09(C−1”)、115.47(C−6’)、113.02(C−6”)、99.55(C−3’)、99.23(C−3”)、57.39(5”−OCH3)、57.24(5’−OCH3)、57.17(4”−OCH3)、57.08(4’−OCH3)、56.63(2”−OCH3)、56.59(2’−OCH3)、47.56(C−3)、26.46(C−4)、17.71(C−6)、13.33(C−5);NMR(DEPT−135°)δ120.56(C−1)、115.47(C−6’)、113.02(C−6”)、99.55(C−3’)、99.23(C−3”)、57.39(5”−OCH3)、57.24(5’−OCH3)、57.17(4”−OCH3)、57.08(4’−OCH3)、56.63(2”−OCH3)、56.59(2’−OCH3)、47.56(C−3、ダウン)、26.46(C−4)、17.71(C−6)、13.33(C−5);EIMSm/z416[M]+(14)、219(100)、209(47)、181(21)、171(20)、71(27)。
酢酸(55mL)中の5.67gの2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンを使用した上記方法において、大過剰のDDQ(8.58〜12.87g)を加えると、1−(2,4,5−トリメトキシ)フェニル−1−プロパノンの収率を39%まで増大させることができるが、3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペン(16%)、α−アサロン(10%)の収率の減少が見られた。
(実施例III)
3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニルプロパンの調製:0.20mgの5%Pd/Cを、3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペン(0.35g、0.84mmol)を酢酸エチル(40mL)およびメタノール(25mL)に溶解した溶液に加え、水素雰囲気下、パール反応器(5〜20psi(0.34〜1.38バール))中、室温において、出発物質が消失するまで振盪した。触媒を濾過し、減圧下で溶媒を除去すると液体が得られた。この液体を前出の溶離液系(ヘキサン−酢酸エチル混合物)を使用してシリカゲル上で精製すると、3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニルプロパン(0.32g)を液体として91%の収率で得た;Rf0.47(ヘキサン中20%酢酸エチル);1H NMR(CDCl3)δ6.77(1H,s,H−3”)、6.68(1H,d,H−6”)、6.54(1H,d,H−6’)、6.51(1H,s,H−3’)、3.96(6H,s,2’−OCH3および2”−OCH3)、3.84(6H,s,4’−OCH3および4”−OCH3)、3.80(3H,s,5’−OCH3)、3.78(3H,s,5”−OCH3)、2.60(2H,d,H−1)、2.08(1H,t,H−3)、1.95(1H,m,H−2)、1.92〜1.57(2H,m,H−4)、0.88(3H,d,H−6)、0.82(3H,t,H−5);EIMSm/z418[M]+(14)、209(100)、179(14)、181(29)、151(9)、69(6)。
本発明の主な利点は以下の通りである。
1.穏やかで効率的な試薬としてDDQを最初に使用した、2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンから、新規なネオリグナンの3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペンを副生成物とともに1段階で調製する方法。
2.国際的に禁止されているが、広範囲で利用可能な、四倍体または六倍体変種(アジア諸国で広範囲に分布している)Acorus calamus油から得られる有毒のβ−アサロンを工業的に利用し、それによってその収益力を高める方法。
3.DDQ量および時間、温度および溶媒を変化させて2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンを相互作用させることにより、新種の生成物が形成される純な方法。
4.フェニルプロペンの全3種類の異性体、すなわちα、β、およびγ−アサロンの混合物を、最初に2,4,5−トリメトキシフェニルプロパンに転化させ、続いて3−エチル−2−メチル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)−フェニル)−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−プロペン、ならびにその副生成物のα−アサロンおよび1−(2,4,5−トリメトキシ)フェニル−1−プロパノンの調製における単純なシントンとして利用することを含む単純な方法。
5.本方法は、ネオリグナン、ならびに副生成物のα−アサロンおよび1−(2,4,5−トリメトキシ)フェニル−1−プロパノンを高純度で提供する。
6.本方法は、2,4,5−トリメトキシプロピオフェノンを固体化合物として提供するが、一方、天然の2,4,5−トリメトキシプロピオフェノン(Acorus tatarinowiiおよびPiper marginatumより単離される)は粘稠ゴムであると報告されている。
7.本方法は、1−(2,4,5−トリメトキシ)フェニル−1−プロパノンを十分な量で提供し、それにより構造が類似するフェニルプロパノン誘導体には知られているその広範囲の生物活性を評価する機会を提供する。
8.本方法は、新規なネオリグナンを十分な量で提供し、それにより構造が類似するネオリグナンには知られているその広範囲の生物活性を評価する機会を提供する。
9.本方法は、m.p.が96〜97℃の範囲である結晶性固体としての新規なネオリグナンを提供する。
10.本方法は、1つの不斉中心および脂肪族側鎖中の1つの二重結合を有する新規なネオリグナン(NEOLASA−I)を提供し、これは数種類の天然ネオリグナンおよびリグナン誘導体にさらに転化させることができる。
11.本方法は、3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペン(NEOLASA−I)の水素化によって、新規なジヒドロネオリグナン、すなわち3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニルプロパン(NEOLASA−II)を提供する。
12.本方法は、単純で経済的な経路により新規なジヒドロネオリグナンを十分な量で提供し、それによりその生物学的な評価の機会を提供する。
13.本方法は、新規なジヒドロ(NEOLASA II)を提供し、これは数種類の天然ネオリグナンおよびリグナン誘導体に転化可能である。
実施例IIの反応生成物の3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペン(CDCl3中)の1H NMR(300MHz)スペクトルである。
実施例IIの反応生成物の3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペン(CDCl3中)の13C NMR(75.4MHz)スペクトルである。
実施例IIの反応生成物の3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペン(CDCl3中)のDEPT−135°スペクトルである。
実施例IIの反応生成物の3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペン(MW416)のエレクトロスプレー(ES)質量スペクトルである。
実施例IIの反応生成物のα−アサロン(CDCl3中)の1H NMR(300MHz)スペクトルである。
実施例IIの反応生成物のα−アサロン(CDCl3中)の13C NMR(75.4MHz)スペクトルである。
実施例IIの反応生成物の1−(2,4,5−トリメトキシ)フェニル−1−プロパノン(CDCl3中)の1H NMR(300MHz)スペクトルである。
実施例IIの反応生成物の1−(2,4,5−トリメトキシ)フェニル−1−プロパノン(CDCl3中)の13C NMR(75.4MHz)スペクトルである。
実施例IIIの反応生成物の3−エチル−2−メチル−3−(2”,4”,5”−トリメトキシ)フェニル−1−(2’,4’,5’−トリメトキシ)フェニル−1−プロペン(MW418)のエレクトロスプレー(ES)質量スペクトルである。