JP4265130B2 - 表面処理方法および表面処理装置 - Google Patents

表面処理方法および表面処理装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ディーゼルエンジンのシリンダヘッドなどの金属鋳造製被処理物(いわゆるワーク)の表面部に、加工装置に装着した回転工具先端のプローブを押込みつつ、ショルダ部で表面部を押圧することにより摩擦撹拌処理を施し、改質層を形成して、熱疲労強度を高めるような表面処理方法および表面処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アルミニウム、アルミ合金、マグネシウム、マグネシウム合金などの軽金属や軽合金からなる金属製被処理物(いわゆるワーク)の表面処理方法としては、図12に示すように加工装置に装着されて高速で回転する回転工具80のプローブ81を上記金属製被処理物82の表面部82aに押込みつつ、ショルダ部83で表面部82aを押圧し、このような押圧状態を保ちながら回転工具80を表面に沿って移動させることで、金属製被処理物82の表面およびその近傍領域を改質して、改質層84を形成し、機械的特性、特に熱疲労強度の向上を図る、所謂、摩擦撹拌処理が知られている。
【0003】
例えば、特開2000−15426号公報には、エンジンのアルミ合金製シリンダヘッドのシリンダブロックに対するシール面(合わせ面)の表面処理に、上述のような摩擦撹拌処理を適用することが開示されている。
【0004】
また、特開2001−32058号公報には、ディーゼルエンジンのアルミ合金製のシリンダヘッドにおける燃焼室構成面に上述の如き摩擦撹拌処理を適用することが開示されている。
【0005】
上述の摩擦撹拌処理法では、高速で回転する回転工具80を金属製被処理物82の表面に当接させ押圧することで、その際に生じる摩擦熱とプローブ81の撹拌作用により、部材表面の回転工具80当接部分およびその近傍領域を軟化させて塑性流動を生じさせる。そして、この塑性状態の材料部分(塑性流動層)が非溶融状態で撹拌されることにより、該部材の表面およびその近傍領域が改質される。
【0006】
アルミ合金などの軽合金製鋳造部材の表面部に、この摩擦撹拌処理による表面改質処理を施すと、表面部の金属組織が微細化され、また鋳巣などによる内部未充填欠陥を大幅に低減することができ、伸び、靱性などの機械的特性、並びに疲れ強さ(熱疲労強度)の向上を図ることができる。
【0007】
特にディーゼルエンジンのシリンダヘッドにおける吸排気ポート間のバルブブリッジ部は、エンジン駆動時の気筒での燃焼による体積膨張と停止時の冷却による体積収縮とを繰り返して、この繰り返し応力が付勢されるので、熱疲労によるクラックが発生しやすい部位であり、このような部位に上述の摩擦撹拌処理を施して、その熱疲労強度を高めることは極めて有効である。
【0008】
そこで、従来においては、金属製被処理物(いわゆるワーク)の表面に対して回転工具80のプローブ81先端の押込み深さ(位置)を一定にして、ショルダ部83の底面の押込み深さ(ショルダ底面押込み深さ)を一定値以上にする処理方法が採用されているが、ワークの寸法ばらつきによって上述のプローブ先端押込み深さ、ショルダ底面押込み深さが変動するので、押込み不足による未充填欠陥(いわゆる欠肉)が発生し、また改質層の深さが変動して不安定なものとなる問題点があった。
【0009】
以下、この問題点について、直列4気筒ディーゼルエンジンのシリンダヘッドの改質を例示して説明する。
図13はシリンダヘッド85を燃焼室側から見た状態で示す平面図であって、86は吸気ポート、87は排気ポート、89はウォータジャケットの開口部、90,91は摩擦撹拌処理後において仕上げ加工を施す際の基準面となる基準穴、P11,P12,P13,P14は各気筒においてバルブブリッジ部を摩擦撹拌処理するための開始ポイント、X1,X2,X3は開始ポイントP11,P12,P13,P14における気筒列方向の離間距離である。
【0010】
また図14、図15、図16は寸法に若干の差異(つまり寸法ばらつき)があるシリンダヘッド85としてのそれぞれのワークW1,W2,W3を示し、図示の上側が摩擦撹拌処理される燃焼室側の面であり、図示の下側がNC加工装置に上載固定されて加工基準面となるシリンダヘッドカバー側の面である。
【0011】
そこで、プローグ先端押込み位置Lpが例えば20.317mmの一定の値になるように回転工具80を各ワークW1,W2,W3に押込みつつ、ショルダ部83で各ワークW1,W2,W3の表面部を押圧して、摩擦撹拌処理が施される。
【0012】
しかし、ワーク寸法にばらつきがあるため、上述のプローブ先端押込み位置Lpを一定に保っても、ワーク表面とショルダ部83の底面との間の寸法に相当するショルダ底面押込み深さDsは図中に数値を記載した如く0.419〜1.3331mmの範囲で変動し、摩擦撹拌処理後の表面凹凸を仕上げ加工で除去する際の基準穴90,91の穴底面とプローブ81先端との間の深さに相当する改質層深さの目安は2.241〜3.609mmの範囲で変動し、これらの変動はそれぞれの開始ポイントP11,P12,P13,P14間のみならず、各ワークW1,W2,W3間でも変動するので、ショルダ底面押込み深さDs(撹拌された材料を拘束して表面に浮き出ないようにするための重要な深さ)の不足によって未充填欠陥(いわゆる欠肉)が発生し、また改質層の深さが変動して不安定なものとなる問題点があった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、金属鋳造製被処理物の寸法ばらつきに関わらず、回転工具のショルダ部の押込み不足による未充填欠陥(いわゆる欠肉)の発生が防止できると共に、安定した改質層の深さを確保することができる表面処理方法および表面処理装置の提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明による表面処理方法は、金属鋳造製被処理物の表面部に、加工装置に装着した回転工具のプローブを押込みつつショルダ部で表面部を押圧することにより摩擦撹拌処理を施し、改質層を形成する表面処理方法であって、上記回転工具を押込み方向に一定の送り量で金属鋳造製被処理物の表面部に押込み摩擦撹拌処理するに際し、該金属鋳造製被処理物の表面部高さおよび仕上げ加工を施す際の基準面となる加工基準面高さを計測し、これら計測値と回転工具の形状データとによりショルダ部の押込み深さを算出し、該押込み深さの値と未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値とを比較し、この比較により押込み深さの値が未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値より大きい時には、上記金属鋳造製被処理物の表面部に回転工具の摩擦撹拌処理を施し、上記比較により押込み深さの値が未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値より小さい時には、回転工具の一定の送り量に上記深さ基準値と上記押込み深さの値に基づいて算出した補正量を加算し、この加算した送り量より再度ショルダ部の押込み深さを算出し、この押込み深さの値と表面部高さおよび上記加工基準面高さにより算出される仕上げ加工代の値により摩擦撹拌処理後の表面凹凸を仕上げ加工で除去できるか否かを判定し、除去できる際には上記金属鋳造製被処理物の表面部に回転工具の摩擦撹拌処理を施し、除去できない際には摩擦撹拌処理を中止するものである。
【0015】
上記構成の金属鋳造製被処理物の表面部高さは、ワークの底面と上面との間の高さに設定することができ、加工基準面高さはワークの底面と基準穴の穴底面との間の高さに設定することができ、回転工具の形状データはプローブ長に設定することができ、未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値はショルダ底面押込み深さの下限値に設定することができる。
【0016】
上記構成によれば、まず金属鋳造製被処理物(いわゆるワーク)の表面部高さ、加工基準面高さが計測され、この計測値と回転工具の形状データとからショルダ部の押込み深さが求められ、次に押込み深さの値と未充填欠陥(いわゆる欠肉)の発生を回避可能な深さ基準値との比較によって、押込み深さの値が大きい時に摩擦撹拌処理が実行される。
【0017】
この結果、金属鋳造製被処理物に仮に寸法ばらつきがあっても、回転工具のショルダ部の押込み不足がなく、該押込み不足に起因する未充填欠陥の発生が防止できると共に、安定した改質層の深さを確保することができる。
【0018】
さらに、上記比較により押込み深さの値が未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値より小さい時には、回転工具の一定の送り量に補正量を加算し、この加算した送り量より再度ショルダ部の押込み深さを算出し、この押込み深さの値と表面部高さおよび加工基準面高さにより算出される仕上げ加工代の値により摩擦撹拌処理後の表面凹凸を仕上げ加工で除去できるか否かを判定し、除去できる際には上記金属鋳造製被処理物の表面部に回転工具の摩擦撹拌処理を施し、除去できない際には摩擦撹拌処理を中止するものである。
【0019】
上記構成の仕上げ加工代の値は、摩擦撹拌処理後の表面凹凸(荒残り)を仕上げ加工によって除去する荒残り回避可能な仕上げ取り代の値に設定することができる。
【0020】
上記構成によれば、ショルダ部の押込み深さの値が未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値よりも小さい場合に、まず回転工具の一定の送り量に対して深さ基準値と押込み深さの値に基づいて算出した補正量を加算して、この加算した送り量により再びショルダ部の押込み深さを求め、求められた押込み深さの値と仕上げ加工代の値とから表面凹凸が仕上げ加工時に除去できるか否かを判定して、除去可能時には補正量加算条件下で回転工具にて摩擦撹拌処理を実行し、除去不可能時には摩擦撹拌処理を中止(または禁止)して、例えばワークの払出しを行なう。
【0021】
この結果、補正量の加算により表面凹凸の除去が可能な金属鋳造製被処理物についてのみ摩擦撹拌処理を行ない、補正をかけても表面凹凸の除去ができない金属鋳造製被処理物の寸法NG品については摩擦撹拌処理を行なわないので、製造品質の安定化を図ることができる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、上記金属鋳造製被処理物の表面部高さおよび加工基準面高さを複数箇所で計測し、各測定箇所の測定値と回転工具の形状データによりショルダ部の押込み深さを各測定箇所毎に算出するものである。
【0023】
上記構成によれば、複数箇所を計測することにより、金属鋳造製被処理物の長さ方向の寸法ばらつきに対応した適正な計測、並びに各測定箇所毎の適正な評価と、評価に応じた処理を行なうことができる。
【0024】
つまり、1つの測定箇所のみでは正確な判断、評価ができないので、複数箇所の計測および各測定箇所毎の算出を実行するものである。
【0025】
この発明の一実施態様においては、上記金属鋳造製被処理物をディーゼルエンジンのシリンダヘッドに設定し、上記シリンダヘッドの吸排気口間に改質層を形成するものである。
【0026】
上記構成によれば、ディーゼルエンジンのシリンダヘッドの寸法ばらつきに関わらず、回転工具のショルダ部の押込み不足による未充填欠陥の発生が防止でき、安定した改質層の深さを確保することができる。
特に、繰り返し応力が付勢される吸排気口間いわゆるバルブブリッジ部の熱疲労強度を高めることができる。
【0027】
この発明による表面処理装置は、金属鋳造製被処理物の表面部に、加工装置に装着した回転工具のプローブを押込みつつショルダ部で表面部を押圧することにより摩擦撹拌処理を施し、改質層を形成する表面処理装置であって、上記金属鋳造製被処理物の表面部高さおよび仕上げ加工を施す際の基準面となる加工基準面高さを計測する計測手段を備え、上記計測手段で計測された計測値と回転工具の形状データとによりショルダ部の押込み深さを算出する算出手段と、上記押込み深さの値と未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値とを比較する比較手段と、上記比較手段の比較結果に基づいて押込み深さの値が未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値より小さい時には、回転工具の一定の送り量に上記深さ基準値と上記押込み深さの値に基づいて算出した補正量を加算し、この加算した送り量より再度ショルダ部の押込み深さを算出する演算手段とこの押込み深さの値と表面部高さおよび上記加工基準面高さにより算出される仕上げ加工代の値により摩擦撹拌処理後の表面凹凸を仕上げ加工で除去できるか否かを判定する判定手段とを備え、上記比較手段の比較結果に基づいて押込み深さの値が未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値より大きい時、並びに、上記押込み深さの値が上記深さ基準値より小さい時であっても上記判定手段の判定結果に基づいて摩擦撹拌処理後の表面凹凸を仕上げ加工で除去できる時には、回転工具で摩擦撹拌処理を施し、除去できない時には、回転工具の摩擦撹拌処理を中止する加工装置の制御手段を備えたものである。
【0028】
上記構成によれば、上記計測手段で、まず金属鋳造製被処理物(いわゆるワーク)の表面部高さ、加工基準面高さが計測され、上述の算出手段で、計測値と回転工具の形状データとからショルダ部の押込み深さが求められ、次に比較手段で、押込み深さの値と未充填欠陥(いわゆる欠肉)の発生を回避可能な深さ基準値とが比較され、この比較結果により押込み深さの値が大きい時に摩擦撹拌処理が実行される。
【0029】
この結果、金属鋳造製被処理物の寸法ばらつきに関わらず、回転工具のショルダ部の押込み不足がなく、該押込み不足に起因する未充填欠陥の発生が防止できると共に、安定した改質層の不可を確保することができる。
【0030】
さらに、上記比較手段の比較結果に基づいて押込み深さの値が未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値より小さい時には、回転工具の一定の送り量に深さ基準値と押込み深さの値に基づいて算出した補正量を加算し、この加算した送り量より再度ショルダ部の押込み深さを算出する演算手段を設け上記演算手段で再度ショルダ部の押込み深さを算出し、この押込み深さの値と表面部高さおよび加工基準面高さにより算出される仕上げ加工代の値により摩擦撹拌処理後の表面凹凸を仕上げ加工で除去できるか否かを判定する判定手段を設け、上記判定手段の判定結果に基づいて除去できる時には、上記金属鋳造製被処理物の表面部に回転工具の摩擦撹拌処理を施し、除去できない時には、摩擦撹拌処理を中止するものである。
【0031】
上記構成によれば、ショルダ部の押込み深さの値が未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値よりも小さい時には、上述の演算手段で、回転工具の一定の送り量に深さ基準値と押込み深さの値に基づいて算出した補正量を加算し、この加算した送り量により再びショルダ部の押込み深さを求め、次に判定手段で、押込み深さの値と仕上げ加工代の値とから表面凹凸が仕上げ加工時に除去できるか否かを判定し、判定結果に基づいて表面凹凸の除去可能時には補正量加算条件下で回転工具にて摩擦撹拌処理を実行し、表面凹凸の除去不可能時には摩擦撹拌処理を中止(または禁止)して、例えばワークの払出しを行なう。
【0032】
この結果、補正量の加算により表面凹凸の除去が可能な金属鋳造製被処理物についてのみ摩擦撹拌処理を行ない、補正をかけても表面凹凸の除去ができない金属鋳造製被処理物の寸法NG品については摩擦撹拌処理を行なわないので、製造品質の安定化を図ることができる。
【0033】
この発明の一実施態様においては、上記金属鋳造製被処理部をディーゼルエンジンのシリンダヘッドに設定し、上記表面部高さおよび加工基準面高さを気筒列方向に離間する複数箇所で計測すべく構成したものである。
【0034】
上記構成によれば、表面部高さ、加工基準面高さは気筒列方向に離間する複数の箇所が計測されるので、シリンダヘッドの寸法正常品(但し、補正をかけて表面凹凸が除去できるワークを含む)について摩擦撹拌処理を実行した時、各気筒において良好な改質層が得られる。
【0035】
【実施例】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は表面処理方法および表面処理装置を示すが、まず図1を参照して表面処理が施される金属製被処理物としてのアルミ合金製のシリンダヘッド(鋳造品ワーク)の構成について説明する。
【0036】
図1はシリンダヘッド1を燃焼室側から見た状態で示す平面図であって、この直列4気筒タイプのディーゼルエンジンのシリンダヘッド1は各気筒毎に2つの吸気ポート2,2と、2つの排気ポート3,3とが形成されている。
【0037】
また燃焼室側の表面部1aには、内部のウォータジャケットと連通する開口部4が開口されると共に、摩擦撹拌処理後において仕上げ加工を施す際の基準面となる基準穴5A,5Bがシリンダヘッド1の鋳造時に同時形成されている。
【0038】
さらに、図1においてP1,P2,P3,P4は各気筒において吸排気ポート2,3間のバルブブリッジ部を摩擦撹拌処理するための開始ポイント、X1,X2,X3は開始ポイントP1,P2,P3,P4における気筒列方向の離間距離である。
【0039】
上述のシリンダヘッド1には摩擦撹拌処理の後に形成されるテンションボルト孔6…が設けられ、このテンションボルト孔6に挿通されるテンションボルト(図示せず)により、シリンダヘッド1とシリンダブロックとが締結される。
【0040】
そこで、この実施例では上述の開始ポイントP1,P2,P3,P4から図1に矢印で示す処理経路に沿ってバルブブリッジ部を摩擦撹拌処理した後に、テンションボルト孔6の位置で該処理を終了するように設定している。
【0041】
次に図2を参照して回転工具の具体的構成について説明する。
この回転工具7はNC加工装置8(図4参照)の主軸9に取付けられて、高速で回転するものであり、シャンク10の先端には表面部1aを押圧するショルダ部11と、このショルダ部11に一体形成されてシリンダヘッド1の表面部1aに押込まれてその表層部(表面乃至その近傍領域)を摩擦撹拌するプローブ12とが設けられている。
【0042】
上述のプローブ12には左ネジ部が形成される一方、ショルダ底面11aとプローブ12先端との間は所定のプローブ長Lに設定されている。
次に図3を参照して、シリンダヘッド1と回転工具7との相対関係、並びに、以下の説明に用いる各種符号の内容について説明する。
【0043】
図3においてFはシリンダヘッド1のヘッドカバー側の下面1bと燃焼室側の表面との間のワーク高さ(表面部高さ)、Sは基準穴5A,5Bの底面とシリンダヘッド1の下面1bとの間の加工基準面高さ、Dsはショルダ部11の底面11aがシリンダヘッド1の表面からその内部に押込まれるショルダ底面押込み深さ(ショルダ部の押込み深さ)、Lpはプローグ12の先端とシリンダブロック1の下面1bとの間の高さに相当するプローブ先端押込み位置、δはシリンダブロック1の表面とプローブ12の先端との間の深さに相当するプローブ先端押込み深さ基準位置である。
【0044】
次に図4を参照して、表面処理装置の構成について説明する。
この表面処理装置は、シリンダヘッド1の表面部1aに、NC加工装置8の主軸9に装着した回転工具7のプローブ12を図3に示すように押込みつつ、ショルダ部11で表面部1aを押圧することにより摩擦撹拌処理を施して、改質層を形成する装置である。
【0045】
この表面処理装置は、図4に示すように制御手段としてのCPU20を備え、このCPU20にはワーク高さ検知センサ13、基準面高さ検知センサ14、入力部15、識別情報マーキング装置16を接続している。
上述のワーク高さ検知センサ13は接触タイプのダイヤルゲージまたは非接触タイプのレーザ変位計で構成され、図1に示す開始ポイントP1,P4部分のワーク高さF(図3参照)を実測する。
【0046】
上述の基準面高さ検知センサ14は接触タイプのダイヤルゲージまたは非接触タイプのレーザ変位計で構成され、図1に示す基準穴5A,5B部分において加工基準面高さS(図3参照)を実測する。
上述の入力部15はキーボード等により構成され、事前入力情報の入力処理に用いられる。
【0047】
ここで、上述の事前入力情報は高さF,Sの測定位置、摩擦撹拌処理の開始ポイントP1〜P4の位置、回転工具7の形状データとしてのプローブ長L、プローブ先端押込み深さ基準位置δ(図3参照)、未充填欠陥発生回避可能なショルダ底面押込み深さStd(ショルダ底面押込み深さDsの下限値であるから、以下単に下限値と略記する)、摩擦撹拌処理後の表面凹凸を仕上げ加工時に除去する際の仕上げ加工代とての荒残り回避可能な仕上げ取り代αなどである。
【0048】
上述のCPU20は、ワーク高さ検知センサ13、基準面高さ検知センサ14、入力部15からの必要な入力情報に基づいて、ROM17に格納されたプログラムに従って、NC加工装置8のシーケンサ18、識別情報マーキング装置16を駆動制御し、またRAM19は必要なデータ等を記憶する。ここで、識別情報マーキング装置16は後述する補正量を加算した値でシリンダヘッド1に摩擦撹拌処理を施す際に、この旨を認識できるようにシリンダヘッド1の所定部にマークを施すためのものである。
【0049】
上述のNC加工装置8は、シーケンサ18、NCコントローラ21、Z軸サーボモータ22、Y軸サーボモータ23、X軸サーボモータ24、主軸モータ25、主軸9、回転工具7を有し、主軸モータ25は主軸9を介して回転工具7を駆動し、Z軸サーボモータ22は回転工具7の上下方向(高さ方向)の位置制御を行ない、Y軸サーボモータ23およびX軸サーボモータ24は摩擦撹拌処理の図1に示すような処理経路を得るために回転工具7の前後左右方向の位置制御を行なう。
【0050】
また上述のCPU20は計測手段としてのワーク高さ検知センサ13、基準面高さ検知センサ14で計測された計測値(ワーク高さF、加工基準面高さS参照)と、回転工具7の形状データ(プローブ長L参照)とにより、ショルダ底面押込み深さDsを算出する算出手段(図5に示すフローチャートのステップQ7参照)と、
上述のショルダ底面押込み深さDsと下限値Stdとを比較する比較手段(図5に示すフローチャートのステップS8参照)と、
を兼ね、
上記比較手段(ステップQ8参照)の比較結果に基づいて、ショルダ底面押込み深さDsが下限値Stdより大きい時(ステップQ8のYES判定参照)に、シリンダヘッド1の表面部1aに回転工具の摩擦撹拌処理を施すように構成している。
【0051】
さらに、上述のCPU20は、回転工具7の一定の送り量に補正量を加算し、この加算した送り量より再度ショルダ底面押込み深さDsを算出する演算手段(図5に示すフローチャートのステップQ12参照)と、
このショルダ底面押込み深さDsとワーク高さFおよび加工基準面高さSにより算出される仕上げ加工代の値つまり仕上げ取り代αにより摩擦撹拌処理後の表面凹凸を仕上げ加工で除去できるか否かを判定する判定手段(図5に示すフローチャートのステップQ10参照)とを兼ね、
上述の比較手段(ステップQ8参照)の比較結果に基づいて、ショルダ底面押込み深さDsが下限値Stdより小さい時には、上記演算手段(ステップQ12参照)で再びショルダ底面押込み深さDsを算出し、
この補正量を加味したショルダ底面押込み深さDsと高さF,Sにより算出される仕上げ取り代αから表面凹凸を仕上げ加工で除去できるか否かを上述の判定手段(ステップQ10参照)で判定し、この判定結果に基づいて表面凹凸が除去できる時(ステップQ10のNO判定参照)には、シリンダヘッド1の表面部1aに回転工具7の摩擦撹拌処理を施し、
表面凹凸が除去できない時(ステップQ10のYES判定参照)には、摩擦撹拌処理を中止するように構成している。
なお、上述のステップQ10は判定手段と演算手段とを兼ねるように構成してもよい。
【0052】
しかも、この実施例では、シリンダヘッド1のワーク高さFを図1に示す開始ポイントP1,P2の複数箇所で計測すると共に、シリンダヘッド1の加工基準面高さSを図1に示す基準穴5A,5Bの複数箇所で計測し、これら複数の測定箇所の測定値と回転工具7の形状データによりショルダ底面押込み深さDsを各気筒毎に算出すべく構成している。
ここで、上述のCPU20、ROM17、RAM19および入力部15に代えて、パーソナルコンピュータ等の他の手段を用いてもよいことは勿論である。
【0053】
次に、図5に示すフローチャートを参照して、表面処理方法について説明する。
まず、ステップQ1(事前情報入力手段)で、入力部15の操作により各種の事前入力情報をCPU20にインプットする。
【0054】
つまり、高さF,Sの測定位置、摩擦撹拌処理の開始位置(図1に示す開始ポイントP1〜P4参照)、プローブ長L、プローブ先端押込み深さ基準位置δ、下限値Std、仕上げ取り代αの各情報を入力部15からCPU20に入力する。
【0055】
次に、ステップQ2で、ワーク高さ検知センサ13により開始ポイントP1,P4のワーク高さFを実測し、実測値をCPU20に入力する。
次に、ステップQ3で、基準面高さ検知センサ14により基準穴5A,5Bの部位における加工基準面高さSを実測し、実測値をCPU20に入力する。
【0056】
次に、ステップQ4で、CPU20は各開始ポイントP1〜P4におけるワーク高さFを演算する。この場合、開始ポイントP1,P4のワーク高さFについては実測値をそのまま用いてもよい。
【0057】
次に、ステップQ5で、CPU20は各開始ポイントP1〜P4における加工基準面高さSを推定演算する。
次にステップQ6で、CPU20は気筒毎のプローブ先端押込み位置Lpを求める。
【0058】
プローブ先端押込み位置の計算値Lpiは加工基準面高さの計算値Siにプローブ先端押込み深さ基準位置δを加算して求めることができる。ここで、上記計算値Lpiのiは第1気筒の場合には第1気筒の位置Lpを意味し、第2気筒の場合には第2気筒の位置Lpを意味し、以下の説明に用いるiについても同様である。
次に、ステップQ7で、CPU20は気筒毎のショルダ底面押込み深さDsを求める。ショルダ底面押込み深さの計算値Dsiは次の[数1]により求める。
【0059】
[数1]
Dsi=Fi−Lpi−L
但し、Fiはワーク高さの計算値
Lpiはプローブ先端押込み位置の計算値
Lはプローブ長
【0060】
次に、ステップQ8で、CPU20は上記演算により求められたショルダ底面押込み深さDsiが未充填欠陥発生回避可能な深さの下限値Stdよりも大きいか否かを判定し、YES判定時(ワーク寸法正常時)には次のステップQ9に移行する一方、NO判定時(ワーク寸法NG時、但し、補正をかけることで荒残りが解消されるものを含む)には別のステップQ10に移行する。
【0061】
上述のステップQ9で、CPU20はステップQ6で求められたプローブ先端押込み量Lpiを演算値として摩擦撹拌処理を施すようNC加工装置8に指令を出力する。
一方、上述のステップQ10で、CPU20は荒残りするか否かを判定する。つまり、次に[数2]で示す値が零以上か否かで荒残りするか否かを判定する。
【0062】
[数2]
(Std−Dsi+α)−(Fi−Si)
但し、Stdは下限値
Dsiはショルダ底面押込み深さの計算値
αは荒残り回避可能な仕上げ取り代
Fiはワーク高さの計算値
Siは加工基準面高さの計算値
ここで、(Std−Dsi+α)−(Fi−Si)<0の時は荒残りし、
(Std−Dsi+α)−(Fi−Si)≧0の時には荒残りしない。
【0063】
そして、上述のステップQ10で、荒残りすると判定された時(YES判定時)には次のステップQ11に移行し、荒残りしないと判定された時(NO判定時)には別のステップQ12に移行する。
【0064】
上述のステップQ11で、CPU20はワーク寸法NG品に対応して、摩擦撹拌処理を中止とし、これに対応してワーク(シリンダヘッド1参照)の払出しを行なうようNC加工装置8に指令を出力する。
【0065】
一方、ステップQ12で、CPU20はショルダ底面の押込み深さDsが下限値Stdによるように、プローブ先端の押込み位置Lpを補正する。この補正は次の[数3]に基づいて実行する。
【0066】
[数3]
補正後のプローブ先端押込み位置=L pi −(S td −D si
但し、Lpiはプローブ先端押込み位置の計算値
Stdは下限値
Dsiはショルダ底面押込み深さの計算値
【0067】
次に、ステップQ13で、CPU20は補正量(Std−Dsi)を加算したことが認識されるように識別情報マーキング装置16にてシリンダヘッド1に識別情報をマーキングするようNC加工装置8に指令を出力する。
【0068】
NC加工装置8では図5のフローチャートによる判定結果を受けて各気筒毎のワーク寸法OK品、補正により荒残りが回避できるワーク、ワーク寸法NG品にそれぞれ対応した処理を実行する。
【0069】
例えば合計4気筒のうちの何れかの1つの気筒が寸法NGである場合には、残りの3気筒の寸法が適正であっても、ワークは払い出し処理され、全気筒が寸法OKである場合には、ステップQ6でのプローブ先端押込み位置Lpの演算データに基づいて摩擦撹拌処理が実行され、4気筒のうちの何れかの気筒が補正を要し、残りの気筒が補正を要さない場合には、補正を要する気筒についてはステップQ12で補正されたプローブ先端押込み位置Lpの演算データに基づいて、また、補正を要さない気筒についてはステップQ6でのプローブ先端押込み位置Lpの演算データに基づいて、それぞれ摩擦撹拌処理が実行される。
【0070】
図6は図14と同一寸法のワークW1を上記実施例の方法により表面処理(但し、ステップQ9の指令に基づく処理)したものであり、図7は図15と同一寸法のワークW2を上記実施例の方法により表面処理(但し、ステップQ9の指令に基づく処理)したものであり、図8は図16と同一寸法のワークW3を示すが、ステップQ8のNO判定、ステップQ10のNO判定を経て、ステップQ12で補正をかけて図9に示すように表面処理したものである。
【0071】
図6、図7、図9の図中に数値を記載して示すようにショルダ底面押込み深さDsは0.5〜0.973mmの範囲となり、不足のない押込み量が確保でき、改質層深さの目安は2.676〜2.88mmの範囲となり、安定した改善層深さを確保することができた。
【0072】
このように上記実施例の表面処理方法は、金属製被処理物(シリンダヘッド1参照)の表面部1aに、NC加工装置8に装着した回転工具7のプローブ12を押込みつつショルダ部11で表面部1aを押圧することにより摩擦撹拌処理を施し、改質層を形成する表面処理方法であって、上記回転工具7を押込み方向に一定の送り量で金属製被処理物(シリンダヘッド1参照)の表面部1aに押込み摩擦撹拌処理するに際し、該金属製被処理物(シリンダヘッド1参照)の表面部高さ(ワーク高さF参照)および加工基準面高さSを計測し(ステップQ2,Q3参照)、これら計測値と回転工具7の形状データとによりショルダ部11の押込み深さ(ショルダ底面押込み深さDs参照)を算出し(ステップQ7参照)、該押込み深さDsの値と未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値(下限値Std参照)とを比較し(ステップQ8参照)、この比較により押込み深さDsの値が未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値(下限値Std参照)より大きい時(ステップQ8のYES判定参照)に、上記金属製被処理物(シリンダヘッド1参照)の表面部1aに回転工具7の摩擦撹拌処理を施すものである。
【0073】
この構成によれば、まず金属製被処理物(シリンダヘッド1参照)の表面部高さ(ワーク高さF参照)、加工基準面高さSが計測され、この計測値と回転工具7の形状データとからショルダ部11の押込み深さDsが求められ、次に押込み深さDsの値と未充填欠陥(いわゆる欠肉)の発生を回避可能な深さ基準値(下限値Std参照)との比較によって、押込み深さDsの値が大きい時に摩擦撹拌処理が実行される。
【0074】
この結果、金属製被処理物(シリンダヘッド1参照)に仮に寸法ばらつきがあっても、回転工具7のショルダ部11の押込み不足がなく、該押込み不足に起因する未充填欠陥(いわゆる欠肉)の発生が防止できると共に、安定した改質層の深さを確保することができる。
【0075】
また、上記比較(ステップQ8参照)により押込み深さDsの値が未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値(下限値Std参照)より小さい時には、回転工具7の一定の送り量に補正量(Std−Dsi参照)を加算し、この加算した送り量より再度ショルダ部の押込み深さDsを算出し、この押込み深さDsの値と表面部高さ(ワーク高さF参照)および加工基準面高さSにより算出される仕上げ加工代(仕上げ取り代α参照)の値により摩擦撹拌処理後の表面凹凸を仕上げ加工で除去できるか否かを判定し、除去できる際には上記金属製被処理物(シリンダヘッド1参照)の表面部1aに回転工具7の摩擦撹拌処理を施し、除去できない際には摩擦撹拌処理を中止するものである。
【0076】
この構成によれば、ショルダ部11の押込み深さDsの値が未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値(下限値Std参照)よりも小さい場合に、まず回転工具7の一定の送り量に対して補正量(Std−Dsi参照)を加算して、この加算した送り量により再びショルダ部11の押込み深さDsを求め、求められた押込み深さDsの値と仕上げ加工代(仕上げ取り代α参照)の値とから表面凹凸が仕上げ加工時に除去できるか否かを判定して、除去可能時には補正量加算条件下で回転工具7にて摩擦撹拌処理を実行し、除去不可能時には摩擦撹拌処理を中止(または禁止)して、例えばワークの払出しを行なう。
【0077】
この結果、補正量(Std−Dsi参照)の加算により表面凹凸の除去が可能な金属製被処理物(シリンダヘッド1参照)についてのみ摩擦撹拌処理を行ない、補正をかけても表面凹凸の除去ができない金属製被処理物の寸法NG品については摩擦撹拌処理を行なわないので、製造品質の安定化を図ることができる。
【0078】
しかも、上記金属製被処理物(シリンダヘッド1参照)の表面部高さ(ワーク高さF参照)および加工基準面高さSを複数箇所で計測し、各測定箇所の測定値と回転工具7の形状データ(プローブ長L参照)によりショルダ部11の押込み深さDsを各測定箇所毎に算出するものである。
【0079】
この構成によれば、複数箇所を計測することにより、金属製被処理物(シリンダヘッド1参照)の長さ方向(気筒列方向参照)の寸法ばらつきに対応した適正な計測、並びに各測定箇所毎の適正な評価と、評価に応じた処理を行なうことができる。
つまり、1つの測定箇所のみでは正確な判断、評価ができないので、複数箇所の計測および各測定箇所毎の算出を実行するものである。
【0080】
さらに、上記金属製被処理物をディーゼルエンジンのシリンダヘッド1に設定し、上記シリンダヘッド1の吸排気口間(吸排気ポート2,3間のバルブブリッジ部参照)に改質層を形成するものである。
【0081】
この構成によれば、ディーゼルエンジンのシリンダヘッド1の寸法ばらつきに関わらず、回転工具7のショルダ部11の押込み不足による未充填欠陥の発生が防止でき、安定した改質層の深さを確保することができる。
特に、繰り返し応力が付勢される吸排気口間(吸排気ポート2,3間参照)いわゆるバルブブリッジ部の熱疲労強度を高めることができる。
【0082】
上記実施例の表面処理装置は、金属製被処理物(シリンダヘッド1参照)の表面部1aに、NC加工装置8に装着した回転工具7のプローブ12を押込みつつショルダ部11で表面部1aを押圧することにより摩擦撹拌処理を施し、改質層を形成する表面処理装置であって、上記金属製被処理物(シリンダヘッド1参照)の表面部高さ(ワーク高さF参照)および加工基準面高さSを計測する計測手段(センサ13,14参照)と、上記計測手段(センサ13,14参照)で計測された計測値と回転工具7の形状データ(プローブ長L参照)とによりショルダ部11の押込み深さ(ショルダ底面押込み深さDs参照)を算出する算出手段(ステップQ7参照)と、上記押込み深さDsの値と未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値(下限値Std参照)とを比較する比較手段(ステップQ8参照)と、上記比較手段(ステップQ8参照)の比較結果に基づいて押込み深さDsの値が未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値(下限値Std参照)より大きい時(ステップQ8のYES判定時参照)に、上記金属製被処理物(シリンダヘッド1参照)の表面部1aに回転工具7の摩擦撹拌処理を施すものである。
【0083】
この構成によれば、上記計測手段(センサ13,14参照)で、まず金属製被処理物(シリンダヘッド1参照)の表面部高さ(ワーク高さF参照)、加工基準面高さSが計測され、上述の算出手段(ステップQ7参照)で、計測値と回転工具7の形状データとからショルダ部11の押込み深さDsが求められ、次に比較手段(ステップQ8参照)で、押込み深さDsの値と未充填欠陥(いわゆる欠肉)の発生を回避可能な深さ基準値(下限値Std参照)とが比較され、この比較結果により押込み深さDsの値が大きい時に摩擦撹拌処理が実行される。
【0084】
この結果、金属製被処理物(シリンダヘッド1参照)の寸法ばらつきに関わらず、回転工具7のショルダ部11の押込み不足がなく、該押込み不足に起因する未充填欠陥(いわゆる欠肉)の発生が防止できると共に、安定した改質層の不可を確保することができる。
【0085】
また、回転工具7の一定の送り量に補正量(Std−Dsi参照)を加算し、この加算した送り量より再度ショルダ部11の押込み深さDsを算出する演算手段(ステップQ12参照)を設け、上記比較手段(ステップQ8参照)の比較結果に基づいて押込み深さDsの値が未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値(下限値Std参照)より小さい時(ステップQ8のNO判定参照)には、上記演算手段(ステップQ12参照)で再度ショルダ部11の押込み深さDsを算出し、この押込み深さDsの値と表面部高さ(ワーク高さF参照)および加工基準面高さSにより算出される仕上げ加工代(仕上げ取り代α参照)の値により摩擦撹拌処理後の表面凹凸を仕上げ加工で除去できるか否かを判定する判定手段(ステップQ10参照)を設け、上記判定手段(ステップQ10参照)の判定結果に基づいて除去できる時には、上記金属製被処理物(シリンダヘッド1参照)の表面部1aに回転工具7の摩擦撹拌処理を施し、除去できない時には、摩擦撹拌処理を中止するものである。
【0086】
この構成によれば、ショルダ部11の押込み深さDsの値が未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値(下限値Std参照)よりも小さい時には、上述の演算手段(ステップQ12参照)で、回転工具7の一定の送り量に補正量(Std−Dsi参照)を加算し、この加算した送り量により再びショルダ部11の押込み深さDsを求め、次に判定手段(ステップQ10参照)で、押込み深さDsの値と仕上げ加工代(仕上げ取り代α参照)の値とから表面凹凸が仕上げ加工時に除去できるか否かを判定し、判定結果に基づいて表面凹凸の除去可能時には補正量加算条件下で回転工具7にて摩擦撹拌処理を実行し、表面凹凸の除去不可能時には摩擦撹拌処理を中止(または禁止)して、例えばワークの払出しを行なう。
【0087】
この結果、補正量の加算により表面凹凸の除去が可能な金属製被処理物(シリンダヘッド1参照)についてのみ摩擦撹拌処理を行ない、補正をかけても表面凹凸の除去ができない金属製被処理物(シリンダヘッド1参照)の寸法NG品については摩擦撹拌処理を行なわないので、製造品質の安定化を図ることができる。
【0088】
しかも、上記金属製被処理部をディーゼルエンジンのシリンダヘッド1に設定し、上記表面部高さ(ワーク高さF参照)および加工基準面高さSを気筒列方向に離間する複数箇所で計測すべく構成したものである。
【0089】
この構成によれば、表面部高さ(ワーク高さF参照)、加工基準面高さSは気筒列方向に離間する複数の箇所が計測されるので、シリンダヘッド1の寸法正常品(但し、補正をかけて表面凹凸が除去できるワークを含む)について摩擦撹拌処理を実行した時、各気筒において良好な改質層が得られる。
【0090】
なお、図5に示すフローチャートにおいて、ステップQ10で上述の判定手段と演算手段とを兼ねるように構成してもよい。
【0091】
図10は回転工具の他の実施例を示し、図2で示した先の実施例においてはプローブ12の外周部に左ネジ部を形成したが、図10に示すこの実施例では円柱形状のプローブ12と成したものである。
【0092】
図11は回転工具のさらに他の実施例を示し、この実施例では先端部が半球状の曲面形状に形成されたプローグ12と成したものである。
このように構成しても、上述の表面処理方法およびその装置により、先の実施例とほぼ同様の作用、効果を奏するので、図10、図11において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0093】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の金属製被処理物は、実施例のアルミ合金製のシリンダヘッド1に対応し、
以下同様に、
加工装置は、NC加工装置8に対応し、
表面部高さは、ワーク高さFに対応し、
ショルダ部の押込み深さは、ショルダ底面押込み深さDsに対応し、
未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値は、下限値Stdに対応し、
補正量は、Std−Dsiに対応し、
仕上げ加工代は、仕上げ取り代αに対応し、
回転工具の形状データは、プローグ長Lなどに対応し、
吸排気口間は、吸排気ポート2,3間のバルブブリッジ部に対応し、
計測手段は、センサ13,14に対応し、
算出手段は、CPU20制御によるステップQ7に対応し、
比較手段は、ステップQ8に対応し、
演算手段は、ステップQ12に対応し、
判定手段は、ステップQ10に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0094】
【発明の効果】
この発明によれば、金属製被処理物の寸法ばらつきに関わらず、回転工具のショルダ部の押込み不足による未充填欠陥(いわゆる欠肉)の発生が防止できると共に、安定した改質層の深さを確保することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 金属製被処理物の一例を示すシリンダヘッドの平面図。
【図2】 回転工具の側面図。
【図3】 ワークと回転工具との関係を示す説明図。
【図4】 本発明の表面処理装置を示すブロック図。
【図5】 本発明の表面処理方法を示すフローチャート。
【図6】 上記方法により処理された仕上げ加工前のワーク寸法を示す説明図。
【図7】 上記方法により処理された仕上げ加工前のワーク寸法を示す説明図。
【図8】 補正量加算前のワーク寸法を示す説明図。
【図9】 補正量加算後のワーク寸法を示す説明図。
【図10】 回転工具の他の実施例を示す側面図。
【図11】 回転工具のさらに他の実施例を示す側面図。
【図12】 摩擦撹拌処理法の説明図。
【図13】 シリンダヘッドを燃焼室側から見た状態を示す平面図。
【図14】 従来方法によるショルダ底面押込み深さと改質層深さ目安のばらつきを示す説明図。
【図15】 従来方法によるショルダ底面押込み深さと改質層深さ目安のばらつきを示す説明図。
【図16】 従来方法によるショルダ底面押込み深さと改質層深さ目安のばらつきを示す説明図。
【符号の説明】
1…シリンダヘッド(金属製被処理物)
1a…表面部
2…吸気ポート
3…排気ポート
7…回転工具
8…NC加工装置(加工装置)
11…ショルダ部
11a…ショルダ底面
12…プローブ
13…ワーク高さ検知センサ(計測手段)
14…基準面高さ検知センサ(計測手段)
Q7…算出手段
Q8…比較手段
Q10…判定手段
Q12…演算手段
F…ワーク高さ(表面部高さ)
S…加工基準面高さ
L…プローブ長(回転工具の形状データ)
Ds…ショルダ底面押込み深さ(ショルダ部の押込み深さ)

Claims (5)

  1. 金属鋳造製被処理物の表面部に、加工装置に装着した回転工具のプローブを押込みつつショルダ部で表面部を押圧することにより摩擦撹拌処理を施し、改質層を形成する表面処理方法であって、
    上記回転工具を押込み方向に一定の送り量で金属鋳造製被処理物の表面部に押込み摩擦撹拌処理するに際し、該金属鋳造製被処理物の表面部高さおよび仕上げ加工を施す際の基準面となる加工基準面高さを計測し、
    これら計測値と回転工具の形状データとによりショルダ部の押込み深さを算出し、
    該押込み深さの値と未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値とを比較し、
    この比較により押込み深さの値が未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値より大きい時には、上記金属鋳造製被処理物の表面部に回転工具の摩擦撹拌処理を施し、
    上記比較により押込み深さの値が未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値より小さい時には、回転工具の一定の送り量に上記深さ基準値と上記押込み深さの値に基づいて算出した補正量を加算し、この加算した送り量より再度ショルダ部の押込み深さを算出し、
    この押込み深さの値と表面部高さおよび上記加工基準面高さにより算出される仕上げ加工代の値により摩擦撹拌処理後の表面凹凸を仕上げ加工で除去できるか否かを判定し、
    除去できる際には上記金属鋳造製被処理物の表面部に回転工具の摩擦撹拌処理を施し、除去できない際には摩擦撹拌処理を中止する
    表面処理方法。
  2. 上記金属鋳造製被処理物の表面部高さおよび上記加工基準面高さを複数箇所で計測し、
    各測定箇所の測定値と回転工具の形状データによりショルダ部の押込み深さを各測定箇所毎に算出する
    請求項1記載の表面処理方法。
  3. 上記金属鋳造製被処理物をディーゼルエンジンのシリンダヘッドに設定し、
    上記シリンダヘッドの吸排気口間に改質層を形成する
    請求項1または2記載の表面処理方法。
  4. 金属鋳造製被処理物の表面部に、加工装置に装着した回転工具のプローブを押込みつつショルダ部で表面部を押圧することにより摩擦撹拌処理を施し、改質層を形成する表面処理装置であって、
    上記金属鋳造製被処理物の表面部高さおよび仕上げ加工を施す際の基準面となる加工基準面高さを計測する計測手段を備え、
    上記計測手段で計測された計測値と回転工具の形状データとによりショルダ部の押込み深さを算出する算出手段と、
    上記押込み深さの値と未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値とを比較する比較手段と、
    上記比較手段の比較結果に基づいて押込み深さの値が未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値より小さい時には、回転工具の一定の送り量に上記深さ基準値と上記押込み深さの値に基づいて算出した補正量を加算し、この加算した送り量より再度ショルダ部の押込み深さを算出する演算手段と
    この押込み深さの値と表面部高さおよび上記加工基準面高さにより算出される仕上げ加工代の値により摩擦撹拌処理後の表面凹凸を仕上げ加工で除去できるか否かを判定する判定手段とを備え、
    上記比較手段の比較結果に基づいて押込み深さの値が未充填欠陥発生回避可能な深さ基準値より大きい時、並びに、上記押込み深さの値が上記深さ基準値より小さい時であっても上記判定手段の判定結果に基づいて摩擦撹拌処理後の表面凹凸を仕上げ加工で除去できる時には、回転工具で摩擦撹拌処理を施し、除去できない時には、回転工具の摩擦撹拌処理を中止する加工装置の制御手段を備えた
    表面処理装置。
  5. 上記金属鋳造製被処理部をディーゼルエンジンのシリンダヘッドに設定し、
    上記表面部高さおよび上記加工基準面高さを気筒列方向に離間する複数箇所で計測すべく構成した
    請求項4記載の表面処理装置。
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