JP4263797B2 - 宇宙探査用走行車 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、月や惑星の探査活動に用いられる宇宙探査用走行車に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
月面ローバー車に代表されるような宇宙探査用走行車にあっては、斜面や荒地等の不整地での障害走破性を有していることもさることながら、地球からはロケットに搭載されて打ち上げられるために、その運搬性すなわちロケット搭載時のペイロードとしての省スペース化も十二分に考慮されていなければならない。
【0003】
そして、例えば特開平8−310435号公報や特開平9−272473号公報等に見られるように、従来から種々の形式の宇宙探査用走行車が提案されているが、これら従来の多くの宇宙探査用走行車は走破性向上のために車輪の大径化やその数の増加のみに主眼がおかれており、ロケット搭載時の省スペース化の面ではなおも改善の余地を残している。
【0004】
本発明はこのような課題に着目してなされたもので、とりわけ4輪タイプの宇宙探査用走行車について、その障害走破性を保ちながら運搬時の省スペース化を図った構造を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、車体の左右または前後の両側面にほぼ水平なサスペンションアームが互いに平行となるように配置されているとともに、これら一対のサスペンションアームの長手方向両端に、該サスペンションアームに対して垂直な軸を回転中心とする車輪支持アームが旋回可能に支持されていて、各車輪支持アームの水平な車軸部にそれぞれに車輪が回転可能に支持された4輪タイプの宇宙探査用走行車であって、前記サスペンションアームが水平面内においてその長手方向中央部から略くの字状に中折れ可能に構成されていることにより、各車輪が正規位置よりも車体寄りの格納位置に格納可能となっていることを特徴としている。
【0006】
この請求項1に記載の発明では、前輪駆動方式および四輪駆動方式のうちのいずれの方式であってもよく、また前輪のみを操舵輪とすることもできるほか、前後輪の4輪全部を操舵輪とすることもできる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明における車体がその平面視において円形もしくは正多角形のものとして形成されていることを特徴としている。
【0008】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明におけるところの車輪格納状態では各車輪の内側面が車体側面に近接していて、格納状態からの展開時には各車輪を垂直な軸まわりに車輪支持アームごと旋回させて車体を押圧することにより、各車輪がサスペンションアームとともに自律的に展開するように構成されていることを特徴としている。
【0009】
したがって、請求項1に記載の発明では、正規状態たる展開状態においては各サスペンションアームが真直状態で互いに平行な関係にあるために、操舵しないかぎりは前輪同士、後輪同士はもちろんのこと、その前輪と後輪は互いに平行状態にあり、宇宙探査用走行車としての本来の走行が可能となる。その一方、上記宇宙探査用走行車をロケットに搭載して打ち上げる際には、各車輪を支持しているサスペンションアームをそれぞれ車体側に中折れさせれば、各車輪が車体側に近付いて格納状態となる。この状態では、展開時と比べて車両の高さ方向での変化はないものの、車両平面視では各車輪が車体寄りの位置に格納されている分だけ展開時と比べて省スペース化が図られている。
【0010】
この場合、請求項2に記載の発明のように車体の平面視形状を円形もしくは正多角形のものとする一方、軸距と輪距とを互いに等しくなるように設定すると、走行車そのものの平面形状が略正方形形状のものとなり、サスペンションアームを中折れさせて各車輪を格納したときの平面視における占有面積の減少度合いが一段と顕著となる。
【0011】
そして、請求項3に記載の発明では、格納状態からの展開時に、垂直軸まわりにおける車輪支持アームの旋回自由度を使ってあたかも操舵時のごとく各車輪を車体そのものに押し付けるように駆動させると、その反力で各車輪が車輪支持アームとともに自律的に展開する。
【0012】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、車輪を支持している一対のサスペンションアームが中折れ式のものとなっているため、そのサスペンションアームを中折れさせて各車輪を実質的に格納した時には、展開時に比べて車両平面視での占有スペースを縮小化でき、結果としてロケット搭載時の省スペース化によりその運搬性を改善できる効果がある。
【0013】
特に、請求項2に記載の発明のように、車体そのものを平面視において円形もしくは正多角形のものとすることにより、展開時と格納時とにおける車両の平面視形状の変化の度合いが大きく、格納時におけるより一層の省スペース化が可能となる利点がある。
【0014】
また、請求項3に記載の発明によれば、格納状態からの展開時には、サスペンションアームに対する車輪支持アームの旋回自由度を使って車輪を車体に押し付けることによりそのサスペンションアームや各車輪が自律的に展開するかたちとなるため、展開動作のための特別な機構が不要であり、これによってもまた宇宙探査用走行車の小型軽量化に寄与できる効果がある。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1〜3は本発明に係る宇宙探査用走行車の好ましい実施の形態を示す図で、図1は平面図を、図2は後述するセンサポール6を伸展したときの側面図をそれぞれ示している。
【0016】
図1,2に示すように、宇宙探査用走行車1は、大別して、偏平円筒形状をなす車体2と、この車体2の上に搭載された傘状の太陽電池パネル3と、車体2の下部に付随する四つの車輪4,4…とから構成されている。なお、上記の太陽電池パネル3は、略正三角形の6枚のパネルエレメント3a,3a…と中央部のカバープレート3bとを組み合わせることにより正六角形のものとして形成されている。
【0017】
車体2には、車輪4,4…の駆動制御のための制御機器や各種の通信機器あるいは計測機器等の電子機器が内蔵されているほか、車体2の前部にはサンプル採取や近接計測のための多関節型のマニピュレータ5が装着されていて、さらに、車体2の上面には格納式のセンサポール6が配設されている。
【0018】
このセンサポール6は、チルトアクチュエータ7によって回転駆動されるロアリンク8と、このロアリンク8にヒンジピン結合されたアッパーリンク9と、これらロアリンク8とアッパーリンク9とで四節リンク機構を形成しつつチルトアクチュエータ10によって回転駆動されるサポートリンク11とから構成されていて、アッパーリンク9の上端にはチルトアクチュエータ12を介して視覚センサ13が装着されている。そして、ロアリンク8とアッパーリンク9とを真直状態となるように展開した時には視覚センサ13が本来のセンシング機能を発揮する一方、これらロアリンク8とアッパーリンク9とを折り畳んだ時には該ロアリンク8やアッパーリンク9およびサポートリンク11とともに視覚センサ13が太陽電池パネル3の下部に格納されるようになっている。
【0019】
ここで、上記太陽電池パネル3を形成している複数枚のパネルエレメント3a,3a…のうち特定二枚のパネルエレメント3a,3a同士の間には上記センサポール6を通過し得るスリット14が形成されていて、このスリット14を覆い得るスリットカバー15がアッパーリンク9に付帯しているとともに、同じくカバープレート3bが視覚センサ13に付帯している。したがって、図2に実線で示したようにセンサポール6を真直状態となるように展開したときには、アッパーリンク9や視覚センサ13とともにカバープレート3bおよびスリットカバー15が上方に持ち上げられることになるものの、センサポール6を折り畳んで太陽電池パネル3内に格納した時には、カバープレート3bが太陽電池パネル3の中央部の空間を、スリットカバー15がスリット14をそれぞれ覆ってこれらを閉塞するようになっている。
【0020】
車体2の左右の側面には、前後方向に伸びるサスペンションアーム16が互いに平行に配設されていて、各サスペンションアーム16は軸受ユニット17を介して車体2に揺動可能に軸受支持されている。軸受ユニット17は、サスペンションアーム16を揺動可能に支持する機能のみならず、各サスペンションアーム16をその長手方向中央部から中折れさせる関節としての機能を併せ持っていて、上記の関節としての機能を利用することにより、図1に示すように水平面内において各サスペンションアーム16を車体2側に向けて略くの字状に中折れさせれば、このサスペンションアーム16を後述する車輪4とともに車体2寄りの格納位置Pに格納することができるようになっている。
【0021】
各サスペンションアーム16の両端には操舵ユニット18を介して垂直軸を回転中心とする車輪支持アーム20がそれぞれに旋回可能に軸受支持されていて、この各車輪支持アーム20の水平な車軸21に車輪4が個別に支持されている。各車輪4は図示しない駆動モータによって個別に回転駆動されるようになっているとともに、各車輪4ごとに個別に操舵されるようになっていて、全体として4輪駆動でかつ4輪操舵タイプの宇宙探査用走行車1となっている。
【0022】
したがって、このように構成された宇宙探査用走行車1にあっては、ロケットにペイロードとして搭載して宇宙空間に打ち上げる際には、先ず図2に仮想線で示すようにセンサポール6を折り畳んで太陽電池パネル3の下側に完全に格納する一方、マニピュレータ5もその自由度を使って折り畳む。同時に、図1,3に示すように、各サスペンションアーム16を軸受ユニット17の関節機能を使って車体2側に近付けるように略くの字状に折り曲げる一方、各操舵ユニット17の自由度を使って車輪4を車輪支持アーム20ごと首振り旋回させて、各車輪4の内側面を車体2の外周に沿わせつつこれに近付けるようにして、これらサスペンションアーム16および各車輪支持アーム20の姿勢を自己保持させて格納位置Pに格納した状態とする。
【0023】
こうすることにより、図1に実線で示す展開状態と比べ、宇宙探査用走行車1の平面的な大きさが大幅に縮小化されることから、その省スペース化によりスペース効率が向上し、その運搬性が改善される。
【0024】
一方、宇宙探査用走行車1を月面あるいは惑星等にて車両として実際に運用する際には、図3の状態から操舵ユニット18の駆動自由度を使って各車輪4を車輪支持アーム20ごと図3の矢印a方向に首振り旋回駆動させ、各車輪4にて積極的に車体2を押圧する。これにより、各車輪4は車体2からの反力を受けてサスペンションアーム16を徐々に外側に展開させ、サスペンションアーム16および各車輪4は最終的に図1に示す状態になり、各サスペンションアーム16が完全に展開して真直状態になると軸受ユニット17に内蔵されている図示外のロック機構が作動し、その状態を自己保持することができる。
【0025】
こうして、各車輪4およびその操舵系等が駆動可能な状態となったならば、引き続きマニピュレータ5を伸展させるとともに、図2に示したようにセンサポール6を展開することで、宇宙探査用走行車1としての実際の運用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す宇宙探査用走行車の平面説明図。
【図2】図1に示す宇宙探査用走行車の側面説明図。
【図3】図1の状態から車輪およびサスペンションアームを格納したときの平面説明図。
【符号の説明】
1…宇宙探査用走行車
2…車体
3…太陽電池パネル
4…車輪
5…マニピュレータ
6…センサポール
16…サスペンションアーム
17…軸受ユニット
18…操舵ユニット
20…車輪支持アーム
21…車軸
P…格納位置
Claims (3)
- 車体の左右または前後の両側面にほぼ水平なサスペンションアームが互いに平行となるように配置されているとともに、これら一対のサスペンションアームの長手方向両端に、該サスペンションアームに対して垂直な軸を回転中心とする車輪支持アームが旋回可能に支持されていて、各車輪支持アームの水平な車軸部にそれぞれに車輪が回転可能に支持された4輪タイプの宇宙探査用走行車であって、
前記サスペンションアームが水平面内においてその長手方向中央部から略くの字状に中折れ可能に構成されていることにより、各車輪が正規位置よりも車体寄りの格納位置に格納可能となっていることを特徴とする宇宙探査用走行車。 - 車体がその平面視において円形もしくは正多角形のものとして形成されていることを特徴とする請求項1に記載の宇宙探査用走行車。
- 車輪格納状態では各車輪の内側面が車体側面に近接していて、格納状態からの展開時には各車輪を垂直な軸まわりに車輪支持アームごと旋回させて車体を押圧することにより、各車輪がサスペンションアームとともに自律的に展開するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の宇宙探査用走行車。
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