JP4260142B2 - フォトニック結晶素子 - Google Patents

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本発明は、フォトニック結晶素子に関する。
フォトニック結晶構造を生成する方法としてオートクローニング法が知られている。図4に、この手法にてフォトニック結晶構造を生成する際の生成例を示す。
フォトニック結晶構造の作成には、基板201として、ガラス基板や石英基板等が用いられる。この基板201の上に、たとえば、電子線描画装置(EB描画装置)を用いて、所定の溝ピッチおよび溝深さにて、周期的に矩形状の凹凸面201aが形成される(同図(a)参照)。この凹凸面201aの上に、RF(高周波)マグネトロンスパッタや、ECR(電子線サイクロトロン共鳴)スパッタなどの成膜手法を用いて、誘電体膜(第1の層202/第2の層203)が順次形成される(同図(b)参照)。
ここで、誘電体層の成膜時には、エッチング処理によって、各層の断面形状が調整される。すなわち、一回の成膜工程によって、誘電体膜(第1の層202/第2の層203)が形成されると、これにエッチング処理が施され、当該膜の断面形状が調整される。このとき、当該膜の断面形状が設計時の寸法に整合するよう、適宜、エッチング処理の条件が調整される。
以上の成膜工程とエッチング処理工程を繰り返すことにより、誘電体膜(第1の層202/第2の層203)が順次積層される。この成膜工程は、積層数が設計時に設定した層数に到達するまで行われる。このようにして作成されたフォトニック結晶構造は、膜厚方向に屈折率の周期性が形成され、また、面内方向においても三角形状の断面に起因する屈折率の周期性が誘起される。これにより、フォトニック結晶構造としての特異な光学特性が発現される。
以下に示す特許文献1では、基板上に予め断面三角形状の凹凸面を形成し、これに、誘電体層を順次積層してフォトニック結晶構造を生成するようにしている。すなわち、シリコン等の異方性材料にて基板を形成し、これに異方性エッチング処理を施すことにより、基板上に断面三角形状の凹凸面を形成し、その上に、誘電体層の多層膜を生成するようにしている。こうすると、凹凸面上に直ちに断面三角形状の誘電体層を成膜することができるため、フォトニック結晶構造の光学特性が劣化することはない。
特開2003−215366号公報
一方、光学部品に対し、光の利用効率の低下を防ぐために反射防止(アンチ・リフレクション(AR))膜が設けられることがある。このAR膜は、これまで平坦面に膜厚λ/(4n)(λは入射光の波長、nは材料の屈折率)でコートされることはあっても、凹凸状の面に対しては、その光利用効率の低下を防ぐ効果が十分には得られないことから、その構造を考慮して設計する必要があった。上記特許文献1の方法で作製されたフォトニック結晶についても、この最終表面上に従来の方法と同様にしてAR構造を設けた場合、平坦面に対してAR膜を形成したときと比べて、干渉の条件が表面形状によって影響を受けるため、十分なAR特性が得ることができないとの問題があった。また、AR膜を設けない場合であっても、このフォトニック結晶素子の表面形状が凹凸であるため、素子表面の付着物の除去が困難になるとの問題もある。
そこで、本発明は、これらの問題を解消することができるフォトニック結晶素子を提供することを課題とする。
上記課題に鑑み、本発明はそれぞれ以下の特徴を有する。
請求項1の発明は、断面三角形状の凹凸から成る周期構造が面内上に形成された基板上に、互いに異なる屈折率を有する材料から成る層を交互に積層して構成されたフォトニック結晶素子において、前記積層された層の最終層上にスピンコート法によりUV硬化樹脂を施し、さらに当該UV硬化樹脂の上にAR層を形成したことを特徴とする。
この特徴により、その表面は、積層中の凹凸と比較すると、より平らに近い状態となる。したがって、この素子の最終表面上に設けたAR層を効率的に機能させ得ることができるとともに、この素子表面に付着した付着物を容易に除去することができ、取扱いが容易になる。
本発明によれば、フォトニック結晶の最終表面上にAR膜を形成した場合、反射率を抑え、透過率を向上させるため、十分なAR特性が得ることができる。また、AR膜を設けない場合であっても、素子表面の付着物を容易に除去することができる。
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
図1に、フォトニック結晶素子の構造を示す。
なお、同図(a)は、フォトニック結晶構造の積層形成に用いられる基板の構造を示す図であり、同図(b)は、基板上にフォトニック結晶構造が積層形成された状態を示す図である。また、同図には、便宜上、フォトニック結晶素子の一部の構造のみを部分的に図示してある。フォトニック結晶素子は、同図に示す構造が面内方向および積層方向に単調に繰り返されたものとなっている。面内上には、入射光の波長λ以下の凹凸からなる周期的な構造が形成されており、この面内構造が波長λ以下の周期で積層されている。
図示の如く、フォトニック結晶素子は、断面三角形状の凹凸面101aが形成された基板101上に、第1の層102と第2の層103を積層形成して生成される。ここで、三角形状凹凸面101aには、平行な溝が周期的に形成されている。これら溝の溝ピッチと溝深さは、フォトニック結晶素子の光学特性に応じた値、例えば、溝ピッチ200nm、溝深さ70-90nmに設定されている。また、三角形状凹凸面101aは、図1の正面から見たときの断面形状が、その凹部と凸部において、それぞれ二等辺三角形の頂部となるように設定されている。
また、第1の層102と第2の層103は、互いに屈折率が異なる誘電体層とされている。各誘電体層の屈折率nと膜厚Tは、フォトニック結晶素子の光学特性に応じた値、例えば、第1の層102をSiO2で形成した場合、屈折率n=1.5、膜厚T=75nm、第2の層103をTa2O5で形成した場合、屈折率n=2.2、膜厚T=75nm、に設定されている。また、第1の層102と第2の層103の面形状は、基板101上の三角形状凹凸面101aの面形状がそのまま反映されている。すなわち、第1の層102と第2の層103を図1の正面から見たときの断面形状は、三角形状凹凸面101aの断面形状と同様、その凹部と凸部において、それぞれ二等辺三角形の頂部となるよう設定されている。
基板101に対するフォトニック結晶構造の積層形成は、RF(高周波)マグネトロンスパッタや、ECR(電子線サイクロトロン共鳴)スパッタなどの成膜手法を用いて行うことができる。すなわち、所定の屈折率を有する層材料(SiO2やTa2O5等)をターゲット材料としたり、反応性スパッタにより必要とするガスを導入するなどの手法により、基板101の三角形状凹凸面101a上に、誘電体膜(第1の層102/第2の層103)を順次形成する。ここで、それぞれの層の厚みは、上記のように、フォトニック結晶素子の光学特性に応じた値に調整する。また、各層の形成工程は、各層の層数が設計時に設定した層数に達するまで行う。
このようにして作成したフォトニック結晶素子は、膜厚方向に屈折率の周期性が形成され、また、面内方向においても三角形状の断面に起因する屈折率の周期性が誘起される。これにより、フォトニック結晶構造としての特異な光学特性、例えば、特定の波長の光のみを通す等の波長依存性や、また、ある方向に偏光している光のみ通す等の偏光依存性が発現するようになる。
続いて、上記のように形成した積層膜状に第2の層103による最終層を形成する。この最終層は、遠心力で素子表面に均一な膜を形成するスピンコート法によって行う。このスピンコート法においては、UV硬化樹脂をフォトニック結晶構造上に滴下した後に、基板を回転させることで、素子全面にわたってコーディング処理を施す。その後、紫外線を照射して樹脂を硬化させ、コーティングを完了する。
硬化前のUV樹脂は、凹凸のある面上に滴下された場合、その表面は基板形状の影響を受けにくいことから、平坦に近い面を形成する。そのため、素子表面の凹凸を抑制することが可能である。この表面上にAR膜としてARコートを施すことで、その機能を十分に発揮することが可能である。
例えば、図2のA層において、テーパー角が35〜40度程度、かつ、面内の周期ピッチが200nm程度の凹凸があった場合、その上にスピンコートによって形成したB層は、その表面の周期的な凹凸がλ/(4n)(屈折率n、光の波長をλ)以下に抑制される。
以上、本実施の形態によれば、フォトニック結晶素子表面の凹凸状の起伏を抑えることができ、その結果、この素子のUVコート表面上にAR構造を設けた場合、光の利用効率の低下を防ぐというAR膜の効果を十分に発揮させることができる。更には、素子表面の起伏が小さいので、素子表面の付着物を容易に除去することができる。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は、斯かる実施の形態に限定されるものではなく、他に種々の変更が可能であることは言うまでもない。
たとえば、基板201は、平行な三角溝が一定ピッチにて周期的に形成された、断面三角形状の面形状としたが、断面矩形形状の面形状であってもよく、また、これ以外の面形状、たとえば、図3(a)に示す如く、一定の深さを有する四角錐形状の凹部が面内方向に周期的に形成された面形状(角錐凹凸面:101b)とすることもでき、あるいは、図3(b)に示す如く、一定の深さを有する円錐形状の凹部が面内方向に周期的に形成された面形状(円錐凹凸面:101c)とすることもでき、上記基板201と同様にして、スパッタとエッチング工程により形成することができる。
本実施の形態は、あくまでも、本発明の一つの実施形態であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義等は、本実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。
実施の形態に係るフォトニック結晶素子の構造を示す図 実施の形態に係るフォトニック結晶素子の構造を示す図 実施の形態に係る基板の構成例を示す図 従来例に係るフォトニック結晶素子の構造を示す図
符号の説明
101 基板
101a 三角形状凹凸面
102 第1の層
103 第2の層

Claims (1)

  1. 断面三角形状の凹凸から成る周期構造が面内上に形成された基板上に、互いに異なる屈折率を有する材料から成る層を交互に積層して構成されたフォトニック結晶素子において、
    前記積層された層の最終層上にスピンコート法によりUV硬化樹脂を施し、さらに当該UV硬化樹脂の上にAR層を形成したことを特徴とするフォトニック結晶素子。
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