JP4256855B2 - 医療用接着剤 - Google Patents

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Description

本発明は、医療用接着剤に関する。詳しくは生体組織、特に動脈、心臓、肺など体内で動きを伴う生体組織の接着に好適な医療用接着剤に関するものである。また、血管、心臓などからの出血(外科手術における噴出性の出血等)を止血するための止血用シーラントとして好適な医療用接着剤に関するものである。
医療用接着剤は、人体への安全性が重視されるため、その原料の選択に特に考慮を払わなければならない。例えば、ポリイソシアネート成分として、フッ素原子を含まない芳香族ポリイソシアネートを使用した場合、ウレタンプレポリマー中に残存する未反応の芳香族ポリイソシアネートが、血液等の体液中の水分と反応して変異原性の疑いの高い芳香族アミンとなる。従って、医療用接着剤の原料として芳香族ポリイソシアネートを使用することは安全性の観点から問題がある。
また、ポリイソシアネート成分として、脂肪族ポリイソシアネートや脂環式ポリイソシアネートを使用した場合、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基の反応性が低いため、体温付近の温度では実用的な硬化速度が得られないという問題がある。
そこで、変異原性等の安全性及び実用的な反応性(硬化速度)をもつ医療用接着剤として、含フッ素ポリイソシアネートと親水性ポリエーテルポリオールとの反応によって得られるイソシアネート基末端の含フッ素親水性ウレタンプレポリマーからなる医療用接着剤が開発された(特許文献1及び2)。
このイソシアネート基末端含フッ素親水性ウレタンプレポリマーからなる医療用接着剤は、血液やリンパ液等の体液中の水分と反応して、アミンと二酸化炭素とが生成し、このアミンがさらにイソシアネート基末端含フッ素親水性ウレタンプレポリマーと反応して高分子量化(重合)が進行して、被接着体を接着させることができる。このとき発生する二酸化炭素により発泡してスポンジ状の硬化体(水反応硬化物)となる。そして、この硬化体(発砲体)は、接着強度及び柔軟性に優れるものである。
特開平1−227762号公報(対応特許出願:US4994542A等) 国際公開WO03/051952パンフレット(対応特許出願:AU2002343788A1等)
従来の医療用接着剤を硬化させた硬化体(水と反応して発泡した硬化物)が経時的に劣化分解し易いという問題をもち、必ずしも接着持続性に優れているとはいえない。例えば、この従来の医療用接着剤(イソシアネート基末端含フッ素原子親水性ウレタンプレポリマーからなる)をガラス板上に塗布し、水に浸漬して硬化して得られた硬化体(発泡シート)は、25〜40℃において数日で、その一部又は全部が粘稠液体(劣化分解)となって、接着強度が大幅に低下する場合がある。
すなわち、本発明の目的は、接着持続性に優れた医療用接着剤を提供することである。
本発明者は、接着剤の硬化物が劣化分解して接着強度が大幅に低下する現象が、ポリイソシアネート成分として、フッ素原子を含有しない芳香族イソシアネート{たとえば、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)や2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等}を使用した場合には全く見られず、含フッ素非芳香族イソシアネート化合物を使用した場合にのみ起こる特有の現象であることを見出し、さらに鋭意研究を重ねたところ、特定のラジカル捕捉剤(フェノール系ラジカル捕捉剤)を用いることにより、上記の問題点を解決し得ることを見いだし、本発明に到達した。
すなわち、本発明の医療用接着剤の特徴は、含フッ素非芳香族ポリイソシアネート成分(A)と、親水性ポリオール(B1)を必須成分とするポリオール成分(B)とを反応させて得られる親水性ウレタンプレポリマー(UP)、及びフェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)からなる点を要旨とする。
本発明の医療用接着剤は、これを硬化してなる硬化物が経時的に劣化分解(接着強度が低下)しにくいため、接着持続性に極めて優れている。さらに、本発明の医療用接着剤は、変異原性等に問題のある芳香族ポリイソシアネートを使用しないため、安全性が高く、また、含フッ素ポリイソシアネートを用いるため、体液(血液等)中の水分とすぐ反応して硬化接着することができる。
本発明において、含フッ素非芳香族ポリイソシアネート成分(A)としては、含フッ素非芳香族ポリイソシアネート(A1)を必須とするが、任意成分として、フッ素原子を含まないポリイソシアネート(A2)及び/又は含フッ素芳香族ポリイソシアネート(A3)等を含んでもよい。
なお、変異原性等の安全性や水との反応性(硬化速度)の観点等から、フッ素原子を含まないポリイソシアネート(A2)及び含フッ素芳香族ポリイソシアネート(A3)を含まないことが好ましいが、反応性(硬化速度)や接着強度等を調整するために、反応性や安全性の問題ない限度で、(A2)及び/又は(A3)を含むことは差し支えない。
含フッ素非芳香族ポリイソシアネート(A1)としては、炭素数5〜22(イソシアナト基の炭素数を含まない。以下同様)の含フッ素脂肪族ジイソシアネート(A11)、炭素数8〜19の含フッ素脂環式ジイソシアネート(A12)及び炭素数15〜66の含フッ素ポリ(3〜6価)イソシアネート(A13)等が使用できる。
炭素数5〜22の含フッ素脂肪族ジイソシアネート(A11)としては、OCN−Rf−NCOで表されるもの及びOCN−CH2−Rf−CH2−NCOで表されるもの等が含まれる。但し、両式中Rfは、エーテル結合を含有してもよい炭素数1〜20のパーフルオロアルキレン基を表す。
OCN−Rf−NCOで表されるものとしては、ジフルオロメチレンジイソシアネート、パーフルオロジメチレンジイソシアネート、パーフルオロトリメチレンジイソシアネート、パーフルオロエイコサジイソシアネート、ビス(イソシアナトパーフルオロエチル)エーテル及びビス(イソシアナトパーフルオロイソプロピル)エーテル等が挙げられる。
OCN−CH2−Rf−CH2−NCOで表されるものとしては、ビス(イソシアナトメチル)ジフルオロメタン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロエタン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロプロパン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロブタン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロペンタン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロエイコサン及びビス(イソシアナトメチルパーフルオロエチル)エーテル等が挙げられる。
炭素数8〜19の含フッ素脂環式ジイソシアネート(A12)としては、ジイソシアナトパーフルオロシクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロシクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロジメチルシクロヘキサン、ビス(イソシアナトパーフルオロシクロヘキシル)、ビス(イソシアナトパーフルオロシクロヘキシル)パーフルオロプロパン及びビス(イソシアナトメチルパーフルオロシクロヘキシル)パーフルオロプロパン等が挙げられる。
炭素数15〜66の含フッ素ポリ(3〜6価)イソシアネート(A13)としては、上記のジイソシアネートのヌレート体、トリス(イソシアナトパーフルオロフェニル)メタン及びトリス(イソシアナトテトラフルオロシクロヘキシル)メタン等が挙げられる。
なお、含フッ素非芳香族ポリイソシアネート(A1)中のイソシアネート基の位置は、ポリオール成分(B)との反応性及び血液や体液等との反応性の観点等から、立体障害の少ない位置が好ましく、さらに好ましくは立体障害の少ない末端位置である。
また、含フッ素非芳香族ポリイソシアネート(A1)は、1種でも、2種以上の混合物でもよい。
また、含フッ素非芳香族ポリイソシアネート(A1)のうち、架橋反応等の副反応の観点等から、イソシアネート基を2個持つものが好ましい。
含フッ素非芳香族ポリイソシアネート(A1)のうち、変異原性等の安全性の観点等から、含フッ素脂肪族ポリイソシアネート(A11)及び含フッ素脂環式ポリイソシアネート(A12)が好ましく、さらに好ましくはOCN−CH2−Rf−CH2−NCOで表される含フッ素脂肪族ポリイソシアネート、特に好ましくはビス(イソシアナトメチル)パーフルオロプロパン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロブタン、ビス(イソシアナトメチル)パーフルオロペンタン及びビス(イソシアナトメチル)パーフルオロヘキサンである。
フッ素原子を含まないポリイソシアネート(A2)としては、炭素数1〜22のフッ素原子を含まない脂肪族ポリイソシアネート(A21)、炭素数6〜19のフッ素原子を含まない脂環式ポリイソシアネート(A22)、フッ素原子を含まない炭素数8〜16の芳香脂肪族ポリイソシアネート(A23)、炭素数6〜19のフッ素原子を含まない芳香族ポリイソシアネート(A24)及びこれらの変性体(A25)等が用いられる。
フッ素原子を含まない脂肪族ポリイソシアネート(A21)としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びリジンジイソシアネート等が挙げられる。
フッ素原子を含まない脂環式ポリイソシアネート(A22)としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート及びメチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)等が挙げられる。
フッ素原子を含まない芳香脂肪族ポリイソシアネート(A23)としては、m−又はp−キシリレンジイソシアネート(XDI)及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
フッ素原子を含まない芳香族ポリイソシアネート(A24)としては、1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート(PDI)、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及び粗製MDI等が挙げられる。
また、これらの変性体(A25)としては、変性HDI(ウレタン変性HDI、カルボジイミド変性HDI及びトリヒドロカルビルホスフェート変性HDI等)、変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI及び変性TDI(ウレタン変性TDI、カルボジイミド変性TDI)等が挙げられる。
なお、フッ素原子を含まないポリイソシアネート(A2)は、1種でも、2種以上の混合物でもよい。
これらのポリイソシアネート(A2)のうち、反応性の観点等から、フッ素原子を含まない芳香族ポリイソシアネート(A24)が好ましく、さらに好ましくはMDI及びTDIである。
フッ素原子を含まないポリイソシアネート(A2)を用いる場合、変異原性等の安全性の観点等から、(A2)の含有量(重量%)は、含フッ素非芳香族ポリイソシアネート(A1)の重量に基づいて、0.1〜20が好ましく、さらに好ましくは0.2〜10、特に好ましくは0.3〜5である。
含フッ素芳香族ポリイソシアネート(A3)としては、フッ素原子を含まない芳香族ポリイソシアネート(A24)において、この芳香環の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された含フッ素芳香族ポリイソシアネート(A31)、及びこの芳香環の水素原子の一部又は全部がフルオロアルキル基及び/又はフルオロアルキレン基で置換された含フッ素芳香族ポリイソシアネート(A32)、この芳香環の水素原子の一部又は全部がフッ素原子と、フルオロアルキル基及び/又はフルオロアルキレン基とで置換された含フッ素芳香族ポリイソシアネート(A33)等が用いられる。
含フッ素芳香族ポリイソシアネート(A31)としては、1,3−又は1,4−パーフルオロフェニレンジイソシアネート、1,3,5,6−又は1,3,4,5−テトラフルオロ−2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、テトラフルオロ−2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
含フッ素芳香族ポリイソシアネート(A32)としては、トリフルオロメチルフェニレン−1,3−又は1,4−パーフルオロジイソシアネート及び2,4’−又は4,4’−ジフェニルジフルオロメタンジイソシアネート等が挙げられる。
含フッ素芳香族ポリイソシアネート(A33)としては、2,4−又は2,6−パーフルオロトリレンジイソシアネート及び2,4’−又は4,4’−パールルオロジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
なお、含フッ素芳香族ポリイソシアネート(A3)は、1種でも、2種以上の混合物でもよい。
これらのポリイソシアネート(A3)のうち、反応性の観点等から、少なくとも芳香環の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された含フッ素芳香族ポリイソシアネート(A31)及び含フッ素芳香族ポリイソシアネート(A33)が好ましく、さらに好ましくは含フッ素芳香族ポリイソシアネート(A33)である。
含フッ素ポリイソシアネート(A3)を用いる場合、変異原性等の安全性の観点等から、(A3)の含有量(重量%)は、含フッ素非芳香族ポリイソシアネート(A1)の重量に基づいて、0.1〜5が好ましく、さらに好ましくは0.2〜3、特に好ましくは0.3〜2である。
ポリオール成分(B)としては、親水性ポリオール(B1)を必須とするが、親水性の低い他のポリオール(B2)を含んでもよい。
親水性ポリオール(B1)としては、オキシエチレン基を含有してなりオキシエチレン基の含有量がオキシアルキレン基の重量に基づいて少なくとも30重量%であるポリオールが含まれ、オキシエチレン基を含有するポリエーテルポリオール(B1−1)、及びオキシエチレン基を含有するポリエーテルポリオール(B1−1)を必須構成単位としてなるポリエステルポリオール(B1−2)等が使用できる。
オキシアルキレン基としては、炭素数2〜8のオキシアルキレン基(オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン及びオキシフェニルエチレン等)等が挙げられる。
オキシエチレン基を含有するポリエーテルポリオール(B1−1)としては、少なくとも2個の活性水素を有する化合物へのエチレンオキシド付加体あるいは、エチレンオキシドと炭素数3〜8のアルキレンオキシド(1,2−又は1,3−プロピレンオキシド、1,2−、1,3−、2,3−又は1,4−ブチレンオキシド及びスチレンオキシド等)との共付加体等が使用できる。共付加体の場合、その付加形式はランダム、ブロック及びこれらの組合せのいずれでもよいが、好ましくはランダムである。
また、炭素数3〜8のアルキレンオキシドとしては1,2−プロピレンオキシドが好ましい。
少なくとも2個の活性水素を有する化合物としては、水、ジオール、3〜8価のポリオール、ジカルボン酸、3〜4価のポリカルボン酸、モノアミン、ポリアミン及びポリチオール等が使用できる。
なお、活性水素を2個有する化合物を用いた場合には2価の親水性ポリオールが得られ、活性水素を3個以上有する化合物を用いた場合には3価以上の親水性ポリオールが得られる。
ジオールとしては、炭素数2〜30のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ネオペンチルグリコール及び2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等);炭素数6〜24の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールA等);炭素数15〜30のビスフェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等);ジヒドロキシベンゼン(カテコール及びハイドロキノン等)等が用いられる。
3〜8価のポリオールとしては、炭素数3〜8の脂肪族多価アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ジグリセリン及びソルビトール等)等が用いられる。
ジカルボン酸としては、炭素数4〜32のアルカンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデセニルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、ドデシルコハク酸及びオクタデシルコハク酸等);炭素数4〜32のアルケンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、メサコン酸、ダイマー酸、ドデセニルコハク酸及びペンタデセニルコハク酸等);炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等)等が用いられる。これらの他、ジカルボン酸の酸無水物(無水マレイン酸及び無水フタル酸等)及び低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル及びt−ブチルエステル等)等も使用できる。
3〜4価のポリカルボン酸としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)等が用いられる。これらの他、ポリカルボン酸の酸無水物(無水トリメリット酸及び無水ピロメリット酸等)及び低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等)等も使用できる。
モノアミンとしては、アンモニア及び炭素数1〜20の脂肪族1級アミン{炭素数1〜20のアルキルアミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ヘキシルアミン、ドデシルアミン及びエイコシルアミン等)等}、炭素数4〜15の脂環式アミン(ピペリジン、アミノシクロヘキサン、イソホロンモノアミン及び4−メチレンジシクロヘキサンモノアミン);炭素数6〜15の芳香環含有脂肪族アミン(アニリン等)等が用いられる。
ポリアミンとしては、炭素数2〜18の脂肪族ポリアミン{炭素数2〜12のアルキレンジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン及びウンデシレンジアミン等)及びポリアルキレン(炭素数2〜6)ポリアミン(ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン及びペンタエチレンヘキサミン等)等}、炭素数4〜15の脂環式ポリアミン(1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン及び4,4’−メチレンジシクロヘキサンジアミン);炭素数4〜15の複素環式ポリアミン(ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン及び1,4−ジアミノエチルピペラジン、N−アミノエチルピリジン等)等が用いられる。
ポリチオールとしては、炭素数2〜24のジチオール(エタンジチオール、1,4−ブタンジチオール及び1,6−ヘキサンジチオール等)、3〜6価の炭素数5〜3000のポリチオール[商品名:カプキュア3800(ジャパンエポキシレジン社製)及びポリビニルチオール等]等が用いられる。
これらの少なくとも2個の活性水素を有する化合物以外に、アミノ酸、オキシカルボン酸及びアミノアルコール等も使用できる。
これらの少なくとも2個の活性水素を有する化合物は、1種でも2種以上の混合物でもよい。
これら少なくとも2個の活性水素を有する化合物のうち、水及びジオールが好ましく、さらに好ましくは水及びアルキレングリコール、特に好ましくは水及び炭素数2〜4のアルキレングリコールである。
オキシエチレン基を含有するポリエーテルポリオール(B1−1)の好適な例としては、ジオールへのエチレンオキシド付加体(エチレングリコールへのエチレンオキシド付加体及びプロピレンレングリコールへのエチレンオキシド付加体等)、及びジオールへのエチレンオキシドと炭素数3〜8のアルキレンオキシドとの共付加体(エチレングリコールへのエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダム又はブロック共付加体、及び、エチレングリコールへのエチレンオキシドとブチレンオキシドとのランダム又はブロック共付加体等)等が挙げられる。
これらのうち、水との反応性が速くなり接着強度等がさらに良好となるという観点等から、ジオールへのエチレンオキシド付加体、及びジオールへのエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共付加体が好ましく、特に好ましくはジオールへのエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共付加体である。
これらのポリエーテルポリオール(B1−1)は、1種でも2種以上の混合物でもよい。
ポリエーテルポリオール(B1−1)のヒドロキシル基当量(ヒドロキシル基1個あたりの数平均分子量)は、50〜5000が好ましく、さらに好ましくは100〜4000、特に好ましくは200〜3000である。この範囲であると、接着強度等がさらに良好となる。
なお、ヒドロキシル基当量は、JIS K1557−1970「6.4水酸基価」に準拠して測定される。
ポリエーテルポリオール(B1−1)を必須構成単位としてなるポリエステルポリオール(B1−2)としては、ポリエーテルポリオール(B1−1)と、上記のジカルボン酸、ジカルボン酸酸無水物及び/又はジカルボン酸低級アルキルエステルとのポリエステル等が用いられる。これらのポリエステルの末端は、ヒドロキシル基である。
なお、ジカルボン酸、ジカルボン酸酸無水物及び/又はジカルボン酸低級アルキルエステルの一部として、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸無水物及びポリカルボン酸低級アルキルエーテル等も使用でき、これらを使用する場合、これらの使用量(モル%)は、全てのカルボン酸、カルボン酸無水物及びカルボン酸低級アルキルエステルの合計モル数に基づいて、0.1〜10が好ましく、さらに好ましくは0.1〜5、特に好ましくは0.1〜2である。この範囲であると、接着強度等がさらに良好となる。
ポリエステルポリオール(B1−2)の好適な例としては、ジオールへのエチレンオキシド付加体(エチレングリコールへのエチレンオキシド付加物、プロピレンレングリコールへのエチレンオキシド付加物等)とジカルボン酸(アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フタル酸等)、ジカルボン酸無水物及び/又はジカルボン酸低級アルキルエステル(ジカルボン酸のメチル、エチルエステル等)とのポリエステルジオール、並びにジオールへのエチレンオキシド及び炭素数3〜8のアルキレンオキシドの共付加体(エチレングリコールへのエチレンオキシドと1,2−又は1,3−プロピレンオキシドとのランダム又はブロック共付加物、プロピレングリコールへのエチレンオキシドと1,4−ブチレンオキシドとのランダム又はブロック共付加物等)とジカルボン酸、ジカルボン酸無水物及び/又はジカルボン酸低級アルキルエステルとのポリエステルジオール等が挙げられる。
これらのうち、接着強度の観点等から、ジオールへのエチレンオキシド付加体とジカルボン酸、ジカルボン酸無水物及び/又はジカルボン酸低級アルキルエステルとのポリエステルジオール、並びにジオールへのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの共付加体とジカルボン酸、ジカルボン酸無水物及び/又はジカルボン酸低級アルキルエステルとのポリエステルジオールが好ましく、さらに好ましくはジオールへのエチレンオキシド付加体とジカルボン酸、ジカルボン酸無水物及び/又はジカルボン酸低級アルキルエステルとのポリエステルジオールである。
これらのポリエステルポリオール(B1−2)は、1種でも2種以上の混合物でもよい。
ポリエステルポリオール(B1−2)のヒドロキシル基当量は、50〜5000が好ましく、さらに好ましくは100〜4000、特に好ましくは200〜3000である。この範囲であると、接着強度等がさらに良好となる。
親水性ポリオール(B1)中のオキシエチレン基の含有量(重量%)は、オキシエチレン基及び炭素数3〜8のオキシアルキレン基の合計重量に基づいて、30〜100であり、好ましくは40〜95、さらに好ましくは50〜90である。この範囲であると、接着強度等がさらに良好となる。
親水性ポリオール(B1)のヒドロキシル基当量は、50〜5000が好ましく、さらに好ましくは100〜4000、特に好ましくは200〜3000である。この範囲であると、接着強度等がさらに良好となる。
親水性ポリーエテル(B1)としては、数平均分子量(Mn)が2000〜6000、オキシエチレン基の含有量が60〜95重量%である、水、エチレングリコール及び/又はプロピレングリコールへのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのランダム共付加体が好ましく用いられる。
親水性の低い他のポリオール(B2)としては、ジオール及び3〜6価のポリオールの他に、オキシアルキレン基を含有してなりオキシエチレン基の含有量がオキシアルキレン基の重量に基づいて30重量%未満であるポリオールが含まれ、ポリエーテルポリオール(B2−1)、このポリエーテルポリオール(B2−1)を必須構成単位とするポリエステルポリオール(B2−2)、及びオキシエチレン基及び炭素数3〜8のオキシアルキレン基を含有しないポリエステルポリオール(B2−3)等が使用できる。
ポリエーテルポリオール(B2−1)としては、少なくとも2個の活性水素を有する化合物への炭素数3〜8のアルキレンオキシドの(共)付加体、及びエチレンオキシドと炭素数3〜8のアルキレンオキシドとの共付加体等が使用できる。ただし、オキシエチレン基の含有量はオキシエチレン基及びオキシアルキレン基の合計重量に基づいて30重量%未満である。
ポリエーテルポリオール(B2−1)の好適な例としては、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの1,2−又は1,3−プロピレンオキシド付加物)、ポリアルキレングリコールへのエチレンオキシド付加体(エチレングリコール又はプロピレングリコールへのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロック付加体であって、エチレンオキシドの含有量が5〜45重量%のもの等)、プロピレンオキシドとエチレンオキシドのランダム共重合体(エチレングリコール又はプロピレングリコールへのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのランダム付加体であって、エチレンオキシドの含有量が10〜25重量%のもの等)、ポリテトラメチレングリコール(1,4−ブチレングリコールの1,2−、1,3−、2,3−又は1,4−ブチレンオキシド付加物)、及び1,4−ブチレンオキシドとエチレンオキシドの共重合体(エチレングリコール又はブチレングリコールへのエチレンオキシド10〜25重量と1,4−ブチレンオキシド75〜90重量%のブロック又はランダム付加物であって、エチレンオキシド含有量が10〜25重量%のもの等)等が挙げられる。
これらのうち、親水性の観点等から、ポリプロピレングリコールへのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシドの含有量5〜30重量%未満)が好ましく、さらに好ましくはポリプロピレングリコールへのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシドの含有量15〜30重量%未満)である。
これらのポリエーテルポリオール(B2−1)は、1種でも2種以上の混合物でもよい。
ポリエーテルポリオール(B2−1)のヒドロキシル基当量は、ポリエーテルポリオール(B1−1)と同様である。
ポリエーテルポリオール(B2−1)を必須構成単位とするポリエステルポリオール(B2−2)としては、ポリエーテルポリオール(B2−1)と、ジカルボン酸、ジカルボン酸酸無水物又はジカルボン酸低級アルキルエステルとから誘導され得るポリエステルポリオール等が使用できる。
ポリエステルポリオール(B2−2)の好適な例としては、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールへの1,2−又は1,3−プロピレンオキシド付加物)、ポリアルキレングリコールへのエチレンオキシド付加体(エチレングリコール又はプロピレングリコールへのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロック付加体であって、エチレンオキシドの含有量が5〜45重量%のもの等)、プロピレンオキシドとエチレンオキシドのランダム共重合体(エチレングリコール又はプロピレングリコールへのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのランダム付加体であって、エチレンオキシドの含有量が10〜25重量%のもの等)、ポリテトラメチレングリコール(1,4−ブチレングリコールの1,2−、1,3−、2,3−又は1,4−ブチレンオキシド付加物)、及び/又は1,4−ブチレンオキシドとエチレンオキシドの共重合体(エチレングリコール又はブチレングリコールへのエチレンオキシド10〜25重量と1,4−ブチレンオキシド75〜90重量%のブロック又はランダム付加物であって、エチレンオキシド含有量が10〜25重量%のもの等)と、ジカルボン酸(アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フタル酸等)、ジカルボン酸無水物及び/又はジカルボン酸低級アルキルエステル(ジカルボン酸のメチル、エチルエステル等)とから誘導され得るポリエステルポリオール等が挙げられる。
これらのポリエステルポリオール(B2−2)は、1種でも2種以上の混合物でもよい。
ポリエステルポリオール(B2−2)のヒドロキシル基当量は、ポリエステルポリオール(B1−2)と同様である。
オキシエチレン基及び炭素数3〜8のオキシアルキレン基を含有しないポリエステルポリオール(B2−3)としては、ジオール及び/又は3〜6価のポリオールと、上記のジカルボン酸、ジカルボン酸酸無水物及び/又はジカルボン酸低級アルキルエステルとから誘導され得るポリエステル、カプロタクトンの開環重合により誘導されるポリエステル等が使用できる。
ポリエステルポリオール(B2−3)の好適な例としては、ブタンジオール及びアジピン酸から誘導されるポリエステルジオール;エチレングリコール及びアジピン酸から誘導されるポリエステルジオール;ヘキサメチレングリコール及びアジピン酸から誘導されるポリエステルジオール;エチレングリコール、ブタンジオール及びアジピン酸から誘導されるポリエステルジオール;エチレングリコール及びセバシン酸から誘導されるポリエステルジオール;シクロヘキサンジオール及びフタル酸から誘導されるポリエステルジオール;並びにカプロタクトンの開環重合により誘導されるポリカプロタクトン等が挙げられる。
これらのポリエステルポリオール(B2−3)は、1種でも2種以上の混合物でもよい。
ポリエステルポリオール(B2−3)のヒドロキシル基1個あたりの数平均分子量(ヒドロキシル基当量)は、ポリエステルポリオール(B1−2)と同様である。
これらの親水性の低い他のポリオール(B2)のうち、接着強度の観点等から、オキシエチレン基の含有量が30重量%未満のポリエーテルポリオール(B2−1)が好ましく、さらに好ましくはポリプロピレングリコール及びポリプロピレングリコールへのエチレンオキシド5〜15重量%付加体、特に好ましくはポリプロピレングリコールである。
これらの親水性の低い他のポリオール(B2)のヒドロキシル基当量は、50〜5000が好ましく、さらに好ましくは100〜3000、特に好ましくは200〜2000である。この範囲であると、接着強度等がさらに良好となる。
親水性の低い他のポリオール(B2)を使用する場合、親水性ポリオール(B1)の含有量(重量%)は、ポリオール成分(B)の重量に基づいて、30〜99が好ましく、さらに好ましくは50〜98、特に好ましくは80〜95である。この範囲であると、接着強度等がさらに良好となる。
親水性の低いポリオール(B2)を使用する場合、ポリオール(B2)の含有量(重量%)は、ポリオール成分(B)の重量に基づいて、1〜70が好ましく、さらに好ましくは2〜50、特に好ましくは5〜20である。
また、この場合、ポリオール成分(B)全体におけるオキシエチレン基の含有量(重量%)は、(B)中のオキシアルキレン基の重量に基づいて、30〜100が好ましく、さらに好ましくは35〜98、特に好ましくは40〜95、最も好ましくは50〜90である。この範囲であると、接着強度等がさらに良好となる。
また、ポリオール成分(B)全体の平均のヒドロキシル基当量は、50〜5000が好ましく、さらに好ましくは100〜4000、特に好ましくは200〜3000である。この範囲であると、接着強度等がさらに良好となる。
親水性の低い他のポリオール(B2)を併用する場合、親水性ポリオール(B1)としては、ジオールへのエチレンオキシド付加体(エチレングリコールへのエチレンオキシド付加体及びプロピレンレングリコールへのエチレンオキシド付加体等)、及びジオールへのエチレンオキシドと炭素数3〜8のアルキレンオキシドとの共付加体(エチレングリコールへのエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダム又はブロック共付加体、及び、エチレングリコールへのエチレンオキシドとブチレンオキシドとのランダム又はブロック共付加体等)等が好ましく、さらに好ましくはジオールへのエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共付加体、特に好ましくはジオールへのエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダム共付加体である。
この場合、親水性の低い他のポリオール(B2)としては、ジオール及び3〜6価のポリオールの他に、オキシエチレン基の含有量がオキシアルキレン基の重量に基づいて30重量%未満であるポリエーテルポリオールが好ましく、さらに好ましくはオキシプロピレン基を含有しオキシエチレン基の含有量がオキシエチレン基及びオキシプロピレン基の合計重量に基づいて30重量%未満であるポリエーテルポリオールが好ましく、特に好ましくはポリプロピレングリコールである。
ポリオール成分(B)中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量(mmol/kg)は、(B)の重量に基づいて、0又は0.07未満が好ましく、さらに好ましくは0又は0.04未満、特に好ましくは0又は0.02未満、最も好ましくは0又は0.01未満である。この範囲内であると含フッ素非芳香族ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)との反応における異常反応を防止しやすい。
なお、ポリオール成分(B)中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量は、(B)の30重量%メタノール溶液を、又は(B)10gを白金皿中で加熱灰化して水10gに溶解させた水溶液をイオンクロマトグラフィー法で分析する方法や、(B)30gをメタノール100mlに溶解させた溶液を100分の1規定の塩酸水溶液で滴定する方法等によって求められる。
アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、主に、ポリエーテルポリオールを合成する場合の触媒として混入されるものである。このような触媒としては、水酸化物(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化ベリリウム及び水酸化マグネシウム等)、アルコラート(リチウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムブチラート及びマグネシウムヘキサラート等)及び金属単体(カリウム、ナトリウム、リチウム、マグネシウム及びカルシウム等)等が挙げられる。(B)中には、これらの触媒が0.1〜0.3mmol/kg残存していることが多い。(B)中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量を上記範囲とするには、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量の少ないポリエーテルポリオール等を使用すればよい。
アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量の少ないポリエーテルポリオールは、上記のような触媒の存在下、活性水素を有する化合物にアルキレンオキシドを付加重合して粗ポリエーテルポリオールを得た後、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除去する方法、並びに特開平8−104741号公報(対応特許出願:US5482908A及びUS5536883A等)で開示されている複合金属シアン化物錯体(ヘキサシアノコバルト酸亜鉛とポリエーテルとの錯体触媒等)、有機ホウ素化合物[トリフルオロホウ素及びトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等]、及び遷移金属錯体触媒等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属を含有しない触媒の存在下にアルキレンオキシドを付加重合させる方法等によって得られる。粗ポリエーテルポリオールからアルカリ金属及びアルカリ土類金属を除去する方法としては、吸着剤で処理する方法、及びイオン交換剤で処理する方法等が挙げられる。
吸着剤としては、ケイ酸塩(ケイ酸マグネシウム、タルク、ソープストーン、ステアライト、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸マグネシウム及びアルミノケイ酸ソーダ等)、クレー(活性白土及び酸性白土等)、ヒドロタルサイト、シリカゲル、ケイ藻土及び活性アルミナ等が挙げられる。これらの吸着剤のうち、ケイ酸塩が好ましく、さらに好ましくはケイ酸マグネシウムである。
イオン交換剤としては、強カチオン交換樹脂、弱カチオン交換樹脂及びキレート樹脂等が挙げられる。イオン交換剤で処理する方法としては、粗ポリエーテルポリオールに水を添加したものを、イオン交換剤と混合撹拌後、ろ過によってイオン交換剤を除去する方法又はイオン交換剤を充填したカラム中を通過させる方法等が挙げられる。 ろ過は、ろ紙、ろ布又はガラスフィルター等のろ過装置が用いられる。
親水性ウレタンプレポリマー(UP)は、含フッ素非芳香族ポリイソシアネート成分(A)と親水性ポリオール成分(B1)を必須成分とするポリオール成分(B)とを反応(プレポリマー反応)させることにより得られる。
ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)との使用量比としては、(A)のイソシアネート基と(B)のヒドロキシル基との当量比(NCO基/OH基)が、1.5〜3となるような使用量比が好ましく、さらに好ましくは1.8〜2.3、特に好ましくは1.9〜2.1となるような使用量比である。この範囲であると、粘度が比較的低く、接着剤としてさらに取り扱いやすくなり、また接着強度もさらに良好となる。
親水性ウレタンプレポリマー(UP)は、分子内に、少なくとも1個(好ましくは2個)のイソシアネート基を持ち、活性水素を持たない構造を有することが好ましい。
なお、親水性ウレタンプレポリマー(UP)中のイソシアネート基の位置は、血液や体液等との反応性の観点等から、立体障害の少ない位置が好ましく、さらに好ましくは立体障害の少ない末端位置である。
また、医療用接着剤中のイソシアネート基含有率(重量%){医療用接着剤全体の重量に占めるイソシアネート基の重量比率}は、1〜10が好ましく、さらに好ましくは1.2〜8、特に好ましくは1.5〜6である。この範囲であると、接着強度がさらに良好となる。
イソシアネート基含有率は、試料に過剰のジ−n−ブチルアミン溶液を加えて反応させ、未反応のジ−n−ブチルアミンを塩酸標準溶液で逆滴定する方法で測定することができ、例えばJIS K7301−1995、6.3イソシアナネート基含有率に準拠して測定される。
親水性ウレタンプレポリマー(UP)中のオキシエチレン基の含有量(重量%)は、(UP)中のオキシアルキレン基の重量に基づいて、30〜100が好ましく、さらに好ましくは50〜98、特に好ましくは60〜95、最も好ましくは70〜90である。この範囲であると、接着強度(特に初期接着強度)がさらに高くなる。
親水性ウレタンプレポリマー(UP)の数平均分子量(Mn)は、500〜30,000が好ましく、さらに好ましくは800〜20,000、特に好ましくは1,000〜10,000、最も好ましくは1,200〜8,000である。この範囲であると、接着強度がさらに良好となる。
なお、数平均分子量(Mn)は、ポリオキシエチレングリコールを標準物質としてゲルクロパーミエーションマトグラフィー(GPC)により測定される。
この親水性ウレタンプレポリマー(UP)を製造する方法としては、従来公知の方法(国際公開WO03/051952パンフレット(米国特許出願10/499,331の開示内容を参照により本出願に取り込む)等)でよく、例えば、含フッ素非芳香族ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)とを50〜100℃で、1〜10時間反応させる方法等が挙げられる。この場合、含フッ素非芳香族ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)との投入方法としては、最初から加えておく方法でも徐々に適下する方法でもよい。
含フッ素非芳香族ポリイソシアネート(A)は、水分と極めて反応しやすいため、反応装置や原材料中の水分は極力除去しておく必要がある。特に、水分を含みやすいポリオール成分(B)は、脱水処理することが好ましい。脱水処理としては、50〜150℃、0.001hPa〜大気圧で、必要により不活性ガス(窒素ガス等)を通気しながら、0.5〜10時間、脱水する方法等が適用できる。
含フッ素非芳香族ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)との混合方法としては、(1)一度に混合する方法、(2)(B)を(A)に徐々に適下する方法、(3)(A)と(B)に徐々に滴下する方法、(4)(A)と(B)の一部とを混合して反応させた後、残りの(B)を滴下又は一度に混合する方法等のいずれでもよい。これらのうち、反応操作の簡便性の観点等から、(1)の方法及び(2)の方法が好ましく、さらに好ましくは(1)の方法である。
反応は、触媒(ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物、酢酸ジルコニウム等の有機酸金属塩等)の存在下で行なってもよい。
本発明の医療用接着剤には、さらに、フェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)が含まれている。(PRS)が含まれていると、親水性ウレタンプレポリマー(UP)と水分とが反応して生成するシート状又はスポンジ状の水反応硬化物の経時劣化分解を抑制し、接着力の低下を防止することができる。
フェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)としては、モノフェノール系、ビスフェノール系又は高分子型フェノール系のラジカル捕捉剤等が含まれる。
モノフェノール系ラジカル捕捉剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール{例えば川口化学製アンテージBHT}、ブチル化ヒドロキシアニソール{例えばオリエント化学製オリエントBHT}、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール{例えば大内新興化学製ノクライザーM−17}及びステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート{例えば旭電化製アデカスタブAO−50}等が挙げられる。
ビスフェノール系ラジカル捕捉剤としては、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール){例えば川口化学製アンテージW−400}、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール){例えば川口化学製アンテージW−500}、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール){例えば川口化学製アンテージクリスタル}、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール){例えば川口化学製アンテーW−300}、1,6−ヘキサンジオール−ビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}{例えばチバスペシャリティケミカルズ製イルガノックスs259}及び3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニル]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン{例えば旭電化製アデカスタブAO−80}等が挙げられる。
高分子型フェノール系ラジカル捕捉剤としては、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン{例えばチバスペシャリティケミカルズ製イルガノックス1010}、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン{例えば旭電化製アデカスタブAO−330}、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン{例えば旭電化製アデカスタブAO−30}、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル{例えばヘキスト製アンチオキシダントTMOZ}及び1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン{例えば旭電化製アデカスタブAO−20}等が挙げられる。
フェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)は、500〜1200の分子量を有することが好ましく、さらに好ましくは600〜1100、特に好ましくは700〜1000である。この範囲であると、水反応硬化物が経時的にさらに劣化分解されにくくなる。すなわち、接着持続性がさらに良好となる。
フェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)は、少なくとも2個の水酸基を有することが好ましく、さらに好ましくは2〜5個、特に好ましくは3〜4個である。この範囲であると、水反応硬化物が経時的にさらに劣化分解されにくくなる。すなわち、接着持続性がさらに良好となる。
これらのフェノール系ラジカル捕捉剤のうち、水反応硬化物の経時劣化分解の抑制の観点等から、ビスフェノール系ラジカル捕捉剤及び高分子型フェノール系ラジカル捕捉剤が好ましく、さらに好ましくはテトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン及び1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である。
なお、同じラジカル捕捉剤でも、フェノール系以外のラジカル捕捉剤、例えば、芳香族アミン系ラジカル捕捉剤{オクチル化ジフェニルアミン、N−n−ブチル−p−アミノフェノール及びフェノチアジン等}、硫黄系ラジカル捕捉剤{ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート及びペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等}、及びリン系ラジカル捕捉剤{トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト及びジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等}は、本発明の医療用接着剤のような効果(水反応硬化物が経時的に劣化分解しがたく接着持続性に優れる)が認められない(比較例3及び4を参照)。すなわち、フェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)のみが、親水性ウレタンプレポリマー(UP)の水反応硬化物の経時的な劣化分解を抑制し、優れた接着持続性を発揮することができる。なお、フェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)を含有していれば、(PRS)以外のラジカル捕捉剤を含有していてもよい。
これらのフェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)の含有量(重量%)は、親水性ウレタンプレポリマー(UP)の重量に基づいて、0.01〜3が好ましく、さらに好ましくは0.02〜1、特に好ましくは0.05〜0.5である。この範囲であると、水反応硬化物の経時劣化を抑制することができ、悪影響を及ばさない。
フェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)は、親水性ウレタンプレポリマー(UP)に添加してもよいし、予め、含フッ素非芳香族ポリイソシアネート(A)及び/又はポリオール成分(B)に添加してから親水性ウレタンプレポリマー(UP)を得てもよい。
本発明の医療用接着剤には、親水性ウレタンプレポリマー(UP)及びフェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)以外に、必要により、その他の成分を含むことができる。
その他の成分としては、生理活性を有する薬物(中枢神経用薬、アレルギー用薬、循環器官用薬、呼吸器官用薬、消化器官用薬、ホルモン剤、代謝性医薬品、抗悪性腫瘍剤、抗生物質製剤及び化学療法剤等)、充填剤(カーボンブラック、ベンガラ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、酸化チタン、アクリル系樹脂粉末及び各種セラミック粉末等)、及び可塑剤(DBP、DOP、TCP、トリブトキシエチルホスフェート及びその他各種エステル等)等が含まれる。その他の成分を含む場合、これらの含有量は用途等によって適宜決定される。また、その他の成分は、予め含フッ素非芳香族ポリイソシアネート成分(A)、ポリオール成分(B)及び/又はフェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)に混合してプレポリマー反応を行ってもよく、また、反応後の親水性ウレタンプレポリマー(UP)及び/又はフェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)に混合してもよい。
本発明の医療用接着剤は、0.5〜500Pa・sの粘度(37℃)を有することが好ましく、さらに好ましくは1〜200、特に好ましくは3〜100、最も好ましくは5〜50である。この範囲内であると、接着剤の塗布性がさらに良好となる。
粘度は、JIS K7117−2:1999「プラスチック−液状、乳濁状又は分散状の樹脂−回転円時計による定せん断速度での粘度の測定方法」に準拠し回転粘度計{たとえば、(株)トキメック製のEL型粘度計及びEH型粘度計}を用いて測定される。
本発明の医療用接着剤は、0.2〜5ml/gの飽和吸水量を有することが好ましく、さらに好ましくは0.3〜3、特に好ましくは0.4〜1、最も好ましくは0.5〜0.7である。この範囲内であると、接着強度(特に初期接着強度)がさらに高くなる。
飽和吸水量は、JIS K7224−1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験方法」中の解説図1に記載のD/W法吸水速度測定装置{図1参照;ビューレット(2)の容量;25ml、長さ;55cm、小穴の直径;2mm}において、25℃、湿度50%の室内で、不織布の代わりに直径3.7cmのろ紙{(5)、ワットマン社製ガラスマイクロファイバーろ紙GF/A等}を設置したものを使用して測定する。まず、各バルブ(7)及び(8)を閉じた状態で、試験液{(3)生理食塩水}25mlをビューレットに入れた後、各バルブ(7)及び(8)を開けることによりビューレット(2)からバルブ(7)及び(8)までの間に試験液を充填する。次いで、ゴム栓(1)を装着した後、ビューレット下のバルブ(7)を開けて、ろ紙(5)から溢れ出す試験液を拭き取り、ビューレットの目盛り(a1)を読みとる。そして、測定試料(4)1.0gをろ紙(5)の上に流延し、30分後にビューレットの目盛り(a2)を読みとり、(a2)から(a1)を差し引いた値を飽和吸水量(ml/g)とする。
本発明の医療用接着剤は、0.01〜0.5ml/g・minの初期吸水速度を有することが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.3、特に好ましくは0.03〜0.2、最も好ましくは0.04〜0.1である。この範囲内であると、接着強度(特に初期接着強度)がさらに高くなる。
初期吸水速度は、飽和吸水量と同様の方法及び同様の装置で、ろ紙(5)の上に測定試料を加えてから2分後にビューレットの目盛り(a3)を読みとり、(a3)から(a1)を差し引いた値の1/2を初期吸水速度(ml/g・min)とする。
本発明の医療用接着剤中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量(mmol/kg)は、親水性ウレタンプレポリマー(UP)の重量に基づいて、0又は0.04未満が好ましく、さらに好ましくは0又は0.03未満、特に好ましくは0又は0.02未満、最も好ましくは0又は0.01未満である。この範囲内であると本発明の医療用接着剤の経時安定性がさらに高くなる。
なお、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量は、医療用接着剤の30重量%のトルエン、ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシド等の溶剤の溶液を、又は医療用接着剤10gを白金皿中で加熱灰化して水10gに溶かす等の前処理をした試料をイオンクロマトグラフィー法で分析する方法や、100分の1規定の塩酸水溶液で、医療用接着剤30gをトルエン、ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシド等の溶剤100mlに溶解したものを滴定する方法等によって求められる。
本発明の医療用接着剤を水と反応させて得られる硬化被膜は、0.01〜10MPaの湿潤100%モジュラスを有することが好ましく、さらに好ましくは0.05〜5、特に好ましくは0.1〜2、最も好ましくは0.4〜0.7である。この範囲内であると、接着強度(特に耐水接着強度)がさらに高くなる。
湿潤100%モジュラスは、次のようにして測定される。
医療用接着剤をガラス板上にアプリケーターで厚さ約100μm、かつ10cm四方の大きさに塗布し、25℃、50%RHの条件で48時間放置してゆっくりと硬化させた後、さらに25℃の生理食塩水浴1リットル中に24時間静置させて、硬化被膜を得る。
そして、JIS K6251:2004(対応国際規格ISO 37:1994)に記載されたダンベル状3号形に打抜いて打ち抜き試料を調製する。
つぎに、この打ち抜き試料を25℃の生理食塩水中に1時間浸析した後、ガーゼを用いて水分を除去して厚みを正確に測定し、5分以内に、JIS K6251:2004に準拠して、25℃、50%RHの環境下で、引張速度300mm/minで、100%の伸びを示す時の引張張力を測定する。なお、引張試験機はJIS K6272:2003(対応国際規格ISO5893:2002)に準拠した試験機(たとえば、島津製作所製オートグラフAGS−500B)等が使用できる。
本発明の医療用接着剤を水と反応させて得られる硬化被膜は、100〜1500%の湿潤伸び率を有することが好ましく、さらに好ましくは200〜1200、特に好ましくは300〜1000、最も好ましくは400〜800である。この範囲内であると、接着強度(特に耐水接着強度)がさらに高くなる。
湿潤伸び率は、湿潤100%モジュラスと同様にして調製した打ち抜き試料を25℃の生理食塩水中に1時間浸析した後、ガーゼを用いて水分を除去して厚みを正確に測定し、5分以内に、JIS K6251:2004に準拠して、25℃、50%RHの環境下で、引張速度300mm/minで、切断時伸びを測定する。
本発明の接着剤は、(1)含フッ素非芳香族ポリイソシアネート(A)及び/又はポリオール成分(B)と、フェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)及び必要によりその他の成分とを混合した後、(A)と(B)とを反応させる方法、並びに(2)親水性ウレタンポリマー(UP)と、(PRS)及び必要によりその他の成分とを混合する方法等によって製造できる。
混合方法としては、均一溶解又は均一分散をすることが可能なものであれば、条件や装置に制限がない。しかし、親水性ウレタンプレポリマー(UP)は、水分により容易に重合を起こす傾向があるので、フェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)及びその他の成分は、水分を含まないことが必要である。混合は、混合物が水分と接触しないように、乾燥ガス{不活性ガス(窒素ガス及びアルゴンガス等)及び空気等が使用できるが、不活性ガスが好ましい}雰囲気中で行うことが好ましい。また、混合温度は、0〜60℃が好ましく、さらに好ましくは5〜40℃、特に好ましくは10〜30℃である。
本発明の接着剤は、水分との反応の観点等から、水分等に触れないようにして(例えば空気を遮断したアンプルの容器やシリンジ等に充填)保存することが好ましい。
本発明の医療用接着剤を使用すると、親水性ウレタンプレポリマー(UP)と水分(血液やリンパ液等の体液中の水等)とが反応して、アミンと二酸化炭素とを生成し、このアミンがさらに(UP)と反応して高分子量化(重合)が進行する。このとき発生する二酸化炭素により発泡状(スポンジ状)水反応硬化物が生成する。
従って、本発明の医療用接着剤は、手術などの医療行為等に適用すると、血液などの体液と接触して急速に重合が進行し、適用部位が接着される。また、必要に応じて、例えば生理食塩水などを噴霧して水分を補給することにより、初期の接着力及び止血効果等を高めることができる。
手術において、生体組織を本発明の接着剤で接合する際の塗布方法としては、切開部に直接本発明の接着剤を塗布する直接塗布法;シリコーンフィルム等の剥離性の高いフィルムに接着剤を塗布してから切開部をフィルムと一緒に覆い、反応後フィルムを除く転写塗布法等が挙げられる。
本発明の医療用接着剤は、内蔵、皮膚及び粘膜などの生体組織の接着又はシーリングに好適であり、さらに好ましくは肺、心臓、気管、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、直腸、肝臓、脾臓、腎臓、膵臓等の実質臓器、動脈、静脈、毛細血管等の血管、リンパ管及び神経、さらに好ましく心臓、動脈などの血管、呼吸器及び消化器、特に好ましくは血管である。なお、生体組織だけでなく、人工血管等の人工物にも適用できる。また、生体組織としては、ヒト以外の動物(ペットや家畜等)の組織も含まれる。
さらに、本発明の医療用接着剤は、生体組織の接着以外に、出血部の止血用シーラントとして、特に顕著な効果を示す。特に、動脈血管、心臓の外科手術において、噴出性の出血に対しても、本発明の医療用接着剤からなる止血用シーラントを出血患部に適用すると短時間に止血することができる。
止血用シーラントとしての適用方法は、直接塗布法及び転写塗布法のいずれも適用できる。
たとえば、人工心肺装置を使用する心臓や大動脈の外科手術では、必ずヘパリン等の血液抗凝固剤が投与される。そして、この血液抗凝固剤が作用している間は、出血した血液が凝固しないため、手術中の多量の出血は患者にとって致命的な障害となることがある。しかし、このような場合でも、本発明の医療用接着剤からなる止血用シーラントを用いることにより、血液抗凝固剤の投与の有無に関係なく、短時間に止血できるのである。
つぎに、血管−血管の吻合部、血管−人工血管の吻合部縫合糸間の隙間からの出血に対して、本発明の止血用シーラントを適用する方法を例示する。
吻合部の両端を鉗子で挟んで出血を抑えている間に、出血患部に、本発明の止血用シーラントを塗布し、血液中の水分等で硬化するのを待ち(2〜5分間)、鉗子を外す。必要により、生理食塩水を硬化中のシーラントに噴霧して硬化のための水分を補給する。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、部は重量部を、%は重量%を示す。
<製造例1>
オートクレーブにエチレングリコール15.5部、水酸化カリウム3.8部を仕込み、窒素置換後(気相部の酸素濃度450ppm)120℃にて60分間真空脱水した。
ついで、100〜130℃でエチレンオキシド784.5部とプロピレンオキシド200部との混合物を約10時間で圧入した後、130℃で3時間反応を続け、オキシエチレン基の含有量が80%である液状粗ポリエーテルを得た。
この液状粗ポリエーテル1000部をオートクレーブに入れ、窒素置換(気相部の酸素濃度450ppm)を行い、30部のイオン交換水を加え、その後、合成ケイ酸マグネシウム(ナトリウム含有量0.2%)を10部加え、再度窒素置換した後、90℃にて45分間、攪拌速度300rpmで攪拌した。次いで、ガラスフィルタ−(GF−75:東洋濾紙製)を用い、窒素下で濾過を行い、エチレンオキシド/プロピレンオキシドランダム共付加体(b1)を得た。この(b1)の数平均分子量は4000、オキシエチレン基の含有量は80%、アルカリ金属及び/又はアルカリ度類金属の含有量は0.02mmol/kgであった。
<製造例2>
オートクレーブにエチレングリコール15.5部、水酸化カリウム3.8部を仕込み、窒素置換後(気相部の酸素濃度450ppm)120℃にて60分間真空脱水した。
ついで、100〜130℃でエチレンオキシド209部とプロピレンオキシド116部との混合物を約10時間で圧入した後、130℃で3時間反応を続け、オキシエチレン基の含有量が60%である液状粗ポリエーテルを得た。
この液状粗ポリエーテルを前記の製造例1と同様の方法で合成ケイ酸マグネシウムで処理し、エチレンオキシド/プロピレンオキシドランダム共付加体(b2)を得た。この(b2)の数平均分子量は1400、オキシエチレン基の含有量は60%、アルカリ金属及び/又はアルカリ度類金属の含有量は0.04mmol/kgであった。
<製造例3>
オートクレーブにプロレングリコール362部、水酸化カリウム3.8部を仕込み、窒素置換後(気相部の酸素濃度450ppm)120℃にて60分間真空脱水した。
ついで、100〜130℃でプロピレンオキシド632部を約10時間で圧入した後、揮発分0.1%以下になるまで130℃で反応を続け、液状粗ポリエーテルを得た。
この液状粗ポリエーテルを前記の製造例1と同様の方法で合成ケイ酸マグネシウムで処理し、プロピレンオキシド付加体(b3)を得た。この(b3)の数平均分子量は210、オキシエチレン基の含有量は0%、アルカリ金属及び/又はアルカリ度類金属の含有量は0.04mmol/kgであった。
<製造例4>
オートクレーブにプロレングリコール180部、水酸化カリウム3.8部を仕込み、窒素置換後(気相部の酸素濃度450ppm)120℃にて60分間真空脱水した。
ついで、100〜130℃でプロピレンオキシド820部を約10時間で圧入した後、揮発分0.1%以下になるまで130℃で反応を続け、液状粗ポリエーテルを得た。
この液状粗ポリエーテルを前記の製造例1と同様の方法で合成ケイ酸マグネシウムで処理し、プロピレンオキシド付加体(b4)を得た。この(b4)の数平均分子量は420、オキシエチレン基の含有量は0%、アルカリ金属及び/又はアルカリ度類金属の含有量は0.03mmol/kgであった。
<製造例5>
オートクレーブにプロレングリコール80部、水酸化カリウム3.8部を仕込み、窒素置換後(気相部の酸素濃度450ppm)120℃にて60分間真空脱水した。
ついで、100〜130℃でプロピレンオキシド920部を約10時間で圧入した後、揮発分0.1%以下になるまで130℃で反応を続け、液状粗ポリエーテルを得た。
この液状粗ポリエーテルを前記の製造例1と同様の方法で合成ケイ酸マグネシウムで処理し、プロピレンオキシド付加体(b5)を得た。この(b5)の数平均分子量は950、オキシエチレン基の含有量は0%、アルカリ金属及び/又はアルカリ度類金属の含有量は0.03mmol/kgであった。
<製造例6>
オートクレーブに製造例5で製造したプロピレンオキシド付加体(b5)244部、水酸化カリウム1.8部を仕込み、窒素置換後(気相部の酸素濃度450ppm)120℃にて30分間真空脱水した。
ついで、100〜130℃でプロピレンオキシド756部を約10時間で圧入した後、揮発分0.1%以下になるまで130℃で反応を続け、液状粗ポリエーテルを得た。
この液状粗ポリエーテルを前記の製造例1と同様の方法で合成ケイ酸マグネシウムで処理し、プロピレンオキシド付加体(b6)を得た。この(b6)の数平均分子量は3900、オキシエチレン基の含有量は0%、アルカリ金属及び/又はアルカリ度類金属の含有量は0.01mmol/kgであった。
<実施例1>
ポリオール成分(B)として、製造例1で得たエチレンオキシド/プロピレンオキシドランダム共付加体(b1)100部を用い、この(b1)を窒素雰囲気下、100℃にて2時間減圧下脱水した後、50℃に冷却し、フェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)として0.5部のテトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(イルガノックス1010、チバスペシャリティケミカルズ社製)を添加し、30分間均一に攪拌した。さらに40℃に冷却した後、含フッ素非芳香族ポリイソシアネート成分(A)としてビス(イソシアナトメチル)パーフルオロブタン{OCN−CH2−(CF24−CH2−NCO}15.6部(NCO基/OH基比=2/1)を加え、均一に撹拌した後、80℃に昇温し、80℃で6時間反応させて、本発明の医療用接着剤(P1)を得た。この(P1)のイソシアネート基含有量は1.8%、数平均分子量(Mn)は5800、アルカリ金属及び/又はアルカリ度類金属の含有量は0.03mmol/kgであった。なお、ポリオール成分(B)中のオキシエチレン基含有量は80重量%、(UP)中のオキシエチレン基含有量は69重量%である。
<実施例2>
ポリオール成分(B)として、製造例2で得たエチレンオキシド/プロピレンオキシドランダム共付加体(b2)100部、含フッ素非芳香族ポリイソシアネート成分(A)としてビス(イソシアナトメチル)パーフルオロヘキサン{OCN−CH2−(CF26−CH2−NCO}46.6部(NCO基/OH基比=2/1)を使用すること以外は実施例1と同様にして本発明の医療用接着剤(P2)を得た。この(P2)のイソシアネート基含有量は4.1%、数平均分子量(Mn)は2600、アルカリ金属及び/又はアルカリ度類金属の含有量は0.01mmol/kgであった。なお、ポリオール成分(B)中のオキシエチレン基含有量は60重量%、(UP)中のオキシエチレン基含有量は40重量%である。
<実施例3>
ポリオール成分(B)として製造例1で得たエチレンオキシド/プロピレンオキシドランダム共付加体(b1)90部と製造例3で得たプロピレンオキシド付加体(b3)10部の混合物を使用し、含フッ素非芳香族ポリイソシアネート成分(A)としてビス(イソシアナトメチル)パーフルオロブタン{OCN−CH2−(CF24−CH2−NCO}45.6部(NCO基/OH基比=2/1)を使用すること以外は実施例1と同様にして本発明の医療用接着剤(P3)を得た。この(P3)のイソシアネート基含有量は4.0%、数平均分子量(Mn)は5400、アルカリ金属及び/又はアルカリ度類金属の含有量は0.02mmol/kgであった。なお、ポリオール成分(B)中のオキシエチレン基の含有量は72重量%、(UP)中のオキシエチレン基含有量は49重量%である。
<実施例4>
ポリオール成分(B)として製造例1で得たエチレンオキシド/プロピレンオキシドランダム共付加体(b1)70部と製造例4で得たプロピレンオキシド付加体(b4)30部の混合物、含フッ素非芳香族イソシアネート成分(A)としてビス(イソシアナトメチル)パーフルオロブタン61.0部(NCO基/OH基比=2.2/1)、フェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)として0.8部の1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(旭電化製アデカスタブAO−30)を使用すること以外は実施例1と同様にして本発明の医療用接着剤(P4)を得た。この(P4)のイソシアネート基含有量は5.6%、数平均分子量(Mn)は2300、アルカリ金属及び/又はアルカリ度類金属の含有量は0.02mmol/kgであった。なお、ポリオール成分(B)中のオキシエチレン基含有量は56重量%、(UP)中のオキシエチレン基含有量は34重量%である。
<実施例5>
ポリオール成分(B)として、製造例2で得たエチレンオキシド/プロピレンオキシドランダム共付加体(b2)85部と製造例5で得たプロピレンオキシド付加体(b5)15部の混合物、含フッ素非芳香族イソシアネート成分(A)としてビス(イソシアナトメチル)パーフルオロヘキサン45.4部(NCO基/OH基比=1.9/1)、フェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)として0.3部の1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン(アデカスタブAO−20、旭電化社製)を用いる以外は実施例1と同様にして本発明の医療用接着剤(P5)を得た。この(P5)のイソシアネート基含有量は4.0%、数平均分子量(Mn)は2500、アルカリ金属及び/又はアルカリ度類金属の含有量は0.02mmol/kgであった。なお、ポリオール成分(B)中のオキシエチレン基含有量は51重量%、(UP)中のオキシエチレン基含有量は47重量%である。
<比較例1>
フェノール系ラジカル捕捉剤{テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン}を添加しないこと以外は実施例1と同様にして、比較用の医療用接着剤(C1)を得た。この(C1)のイソシアネート基含有量は1.8%、数平均分子量(Mn)は5,700、アルカリ金属及び/又はアルカリ度類金属の含有量は0.03mmol/kgであった。
<比較例2>
フェノール系ラジカル捕捉剤{1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン}を添加しないこと以外は実施例4と同様にして、比較用の医療用接着剤(C2)を得た。この(C2)のイソシアネート基含有量は5.5%、数平均分子量(Mn)は2400、アルカリ金属及び/又はアルカリ度類金属の含有量は0.02mmol/kgであった。
<比較例3>
フェノール系ラジカル捕捉剤{0.5部のテトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン}の代わりに、リン系酸化防止剤{0.5部のトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(アデカスタブ2112、アデカアーガス化学社製)}を添加すること以外は実施例1と同様にして、比較用の医療用接着剤(C3)を得た。この(C3)のイソシアネート基含有量は1.8%、数平均分子量(Mn)は5,600、アルカリ金属及び/又はアルカリ度類金属の含有量は0.03mmol/kgであった。
<比較例4>
フェノール系ラジカル捕捉剤{0.5部のテトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン}の代わりに、アミン系ラジカル捕捉剤{0.2部のフェノチアジン}を添加すること以外は実施例1と同様にして、比較用の医療用接着剤(C4)を得た。この(C4)のイソシアネート基含有量は1.8%、数平均分子量(Mn)は5,700、アルカリ金属及び/又はアルカリ度類金属の含有量は0.03mmol/kgであった。
<比較例5>
ポリオール成分(B)として製造例6で得たプロピレンオキシド付加体(b6)100部を使用し、フェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)として0.5部のテトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを添加し、含フッ素非芳香族ポリイソシアネート成分(A)としてビス(イソシアナトメチル)パーフルオロブタン{OCN−CH2−(CF24−CH2−NCO}17.6部(NCO基/OH基比=2.2/1)を使用すること以外は実施例1と同様にして
比較用の医療用接着剤(C5)を得た。この(C5)のイソシアネート基含有量は2.0%、数平均分子量(Mn)は5,400、アルカリ金属及び/又はアルカリ度類金属の含有量は0.01mmol/kgであったなお、ポリオール成分(B)中及び(UP)中にはオキシエチレン基を含有していない。
<比較例6>
製造例1で得たエチレンオキシド/プロピレンオキシドランダム共付加体(b1)100部を、窒素雰囲気下、100℃にて2時間減圧下脱水した後、40℃に冷却した後、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)8.7部(NCO基/OH基比=2/1)を加え、均一に撹拌した後、80℃に昇温し、80℃で6時間反応させて、比較用の医療用接着剤(C6)を得た。この(C6)のイソシアネート基含有量は1.9%、数平均分子量(Mn)は5600、アルカリ金属及び/又はアルカリ度類金属の含有量は0.03mmol/kgであった。
<評価1:水反応硬化物(評価用硬化シート)の作成とこの外観の変化>
塗布厚み200μmのアプリケーターを用いてガラス板上に評価用接着剤をコーティングし、静かに25℃の水浴に浸漬した。評価用接着剤は発泡しながら硬化し、気泡を含んだシートが生成した。水浴に浸漬してから8時間後、ガラス板から水硬化シートを剥離した。この水硬化シートの付着水を拭き取った後、3cm×5cmの大きさにカットして、水反応硬化物(評価用硬化シート)を得た。
この水反応硬化物をガラス板に載せ、37℃に温調した恒温槽の中で5日間放置した。そして、5日後にこの水反応硬化物の外観を目視観察し、次の基準により評価して、この評価結果を表1に示した。
<評価基準>
○:シート形状を保持していた
×:シートの一部又は全部が粘稠液体に変化した(シート形状を保持していなかった)
※:表面だけが硬化し、内部が未硬化であり発泡シートを形成できなかった
<評価2:湿潤接着強度>
コラーゲンシート(1cm×5cm)2枚を生理食塩水中に24時間浸漬後、表面の生理食塩水をふき取った後、その一方のコラーゲンシートをガラス板に広げ、このコラーゲンシートの端の部分1cm×1cmの広さに約0.1mLの評価用接着剤をシリコーン樹脂製のスパチュラを使用して塗布した。
評価用接着剤を塗布した上に、もう一方のコラーゲンシートの端の部分1cm×1cmを張り合わせて試験片を作成した。この試験片の張り合わせた部分に100g/cm2の荷重がかかるように100gの重りを乗せて、37±2℃、湿度95±5RH%の環境下で5分間放置後、重りを外し、ガラス板から剥がした試験片を37±2℃の生理食塩水中に5分間浸漬して、コラーゲン接着シートを得た。その後、コラーゲン接着シートの付着した水滴をガーゼで除いた後、37±2℃、湿度95±5RH%に調整した恒温恒湿槽に入れ、2時間放置して、テストピースを得た。
次いで、JIS K6850−1999に従って、テストピースに関して引張り強さを、37±2℃、湿度95±5RH%の環境下で測定し、破断時の荷重を湿潤接着強度2H(kg/cm)とした。
さらに、別のテストピースを37±2℃、湿度95±5RH%の恒温恒湿槽中で5日間放置した後、同様にして、引張り強さを測定し、破断時の荷重を湿潤接着強度5D(kg/cm)を測定した。これらの湿潤接着強度2H及び5Dを表1に示した。
なお、引っ張り試験機は島津製作所製オートグラフAGS-500Bを使用し、引っ張り速度は300mm/分とした。また、つかみ具で固定する箇所は、コラーゲンシートの接着させていない端1cmの部分と、もう一方のコラーゲンシートの接着させていない端1cmの部分とした。
Figure 0004256855
外観の変化に関して、本発明の医療用接着剤(P1)〜(P5)から得られた評価用硬化シートは、シート形状を保持しており、また、手で軽く引っ張っても破断することもなかった。これに対して、比較用の医療用接着剤(C1)〜(C4)から得られた評価用硬化シートは、ガラス板上で粘稠液体に変化しており、もはやシート形状の痕跡もなかった。
湿潤接着強度に関して、本発明の医療用接着剤(P1)〜(P5)については、いずれも2時間後、5日後とも、極めて優れた湿潤接着強度を示した。一方、比較用の医療用接着剤(C1)〜(C4)については、2時間後は、本発明の接着剤と同等の湿潤接着強度を示したが、5日後には、接着箇所の一部が粘調液体に変化したため、測定できなかった(「−」で表示)。
また、比較用の医療用接着剤(C5)は、評価1においてシートができなかった(水浴に浸漬してから8時間後、ガラス板から水硬化シートの剥離を試みたが、シート状に剥離できず、バラバラになった。)。また、評価2において試験片をガラス板から剥がそうとすると、コラーゲンシートの接着部分が剥がれ2枚のコラーゲンシートに分かれた(湿潤接着強度は、測定限界の0.1未満であると予測される。)。
また、比較用の医療用接着剤(C6)は、外観の変化、湿潤接着強度2H及び5Dとも本発明の医療用接着剤と同等の評価結果であったが、この接着剤(C6)には、芳香族イソシアネートであるTDIが構成単位として含有されており、安全性(変異原性等)の点で問題があると考えられる。
<評価3:In−vivoにおける止血性能評価>
麻酔下の成犬3匹の頸動脈(外径約4mm)を露出し、約6cmの長さを遊離させた。血液をヘパリン化した後、2本の血管鉗子を用いて一時的に血流を遮断し、血管鉗子の間で頸動脈を切断した。切断した頸動脈の断端を手術糸で4カ所(上下、左右)端々吻合し、本発明の医療用接着剤(P3)を全周に塗布し、5分間放置後、クランプを両側とも鉗子を開放し、出血の有無を観察したところ、3匹とも完全に止血していた。また、止血後の平均収縮期血圧は178mmHg、平均拡張期血圧は88mmHgであった。また、本発明の接着剤が硬化した箇所には十分な柔軟性があり、吻合部を含めて拍動していた。なお、ヘパリン投与前の血液の活性凝固時間(ACT)は平均121秒であったが、投与後実験中は1000秒以上で測定不能(凝固せず)であり、この実験の止血は血液凝固によるものではないことが明らかであった。
うち2匹を儀死せしめた後、上記頸動脈を切除して吻合部を内腔から肉眼的に観察したが、接着剤が内腔へ浸潤した形跡は認められなかった。
残りの1匹を3ヶ月飼育し、血管造影と解剖学的観察を行った。血管造影検査で吻合部の狭窄は認められなかった。手術後3ヶ月後の解剖学的所見によると、本発明の接着剤の硬化物は吻合部を被ってゲル状物として残存していたが、吻合部の血管は完全に治癒していた。
本発明の医療用接着剤は、血液などの体液中の水分と反応するが、その水反応硬化物の経時的な劣化分解が無い。したがって、長期間に渡って優れた接着強度を維持できる。本発明の医療用接着剤は、特に、動きのある生体組織の接着に特に有効に使用でき、例えば、肺、動脈、心臓、静脈、気管、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、直腸、肝臓、脾臓、腎臓、膵臓及び神経等の接着、出血阻止、消化器官からの消化液の漏れ防止、縫合に先立つ仮固定、及び患部の補強等に用いる医療用接着剤として極めて有効であるばかりでなく、創傷面及び切創部等の接合、歯科における接着治療に対しても高信頼性と高性能を発揮する。特に動脈及び心臓等の動きを伴う組織の接着に極めて高い信頼性と高性能を発揮する。
さらに、本発明の医療用接着剤は、生体組織の接着以外に、出血部の止血のためのシーラントとして、特に顕著な効果を示す。特に、血液抗凝固剤の投与下で行われる人工心肺装置を使用する心臓や大動脈の外科手術でも、噴出性の出血を短時間に抑えることができる。
本発明の医療用接着剤の飽和吸水量(ml/g)を測定するためのD/W法吸水速度測定装置を模式的に示した正面断面図(JIS K7224−1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験方法」中の解説図1から引用した)である。
符号の説明
1.ゴム栓
2.ビューレット
3.試験液
4.測定試料
5.ろ紙
6.小穴(直径;2mm)の開いた支持板
7.バルブ
8.バルブ




Claims (10)

  1. 含フッ素非芳香族ポリイソシアネート成分(A)と、親水性ポリオール(B1)を必須成分とするポリオール成分(B)とを反応させて得られる親水性ウレタンプレポリマー(UP)、及びフェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)からなることを特徴とする医療用接着剤。
  2. フェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)が500〜1200の重量平均分子量が500〜1200を有し、少なくとも2個の水酸基を有する請求項1記載の医療用接着剤。
  3. フェノール系ラジカル捕捉剤(PRS)の含有量が(UP)の重量に基づいて0.01〜3重量%である請求項1又は2記載の医療用接着剤。
  4. ポリオール成分(B)中のオキシエチレン基の含有量が、(B)中のオキシアルキレン基の重量に基づいて30〜100重量%である請求項1〜3のいずれか記載の医療用接着剤。
  5. ポリオール成分(B)が、ジオールへのエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダム共付加体と、ポリプロピレングリコールとの混合物からなる請求項1〜4のいずれか記載の医療用接着剤。
  6. 医療用接着剤中のイソシアネート基含有率が(UP)の重量に基づいて1〜10重量%である請求項1〜5のいずれか記載の医療用接着剤。
  7. 0.5〜500Pa・sの粘度(37℃)、0.2〜5ml/gの飽和吸水量及び0.01〜0.5ml/g・minの初期吸水速度を有し、
    親水性ウレタンプレポリマー(UP)中のオキシエチレン基の含有量が、(UP)中のオキシアルキレン基の重量に基づいて30〜100重量%であり、
    アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量が(UP)の重量に基づいて0又は0.04mmol/kg未満であり、
    硬化後の被膜の湿潤100%モジュラスが0.01〜10MPaである請求項1〜6のいずれか記載の医療用接着剤。
  8. 生体組織の接着に使用される請求項1〜7のいずれか記載の医療用接着剤。
  9. 生体組織が、血管、心臓、呼吸器及び消化器からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項8記載の医療用接着剤。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の医療用接着剤からなる止血用シーラント。
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