JP4253234B2 - チタニアナノ微結晶集合体、その製造方法、及び光触媒 - Google Patents

チタニアナノ微結晶集合体、その製造方法、及び光触媒 Download PDF

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Description

本発明は、光触媒活性に優れたアナターゼ型チタニア微結晶集合体、及びその製造方法に関する。又、アナターゼ型チタニア微結晶集合体から成る光触媒、及び太陽電池に関する。
チタニア(二酸化チタン)は、優れた紫外線吸収性および吸着性等の特性を有することから、従来より、顔料、塗料、化粧料、紫外線遮断材、触媒、触媒担体および各種のエレクトロニクス材料等に利用されている。さらに、最近では、チタニアそのものが持つ光触媒活性に大きな関心が寄せられている。チタニアの優れた光触媒活性は、有害有機物の分解、大気汚染物質の除去、殺菌・抗菌等を目的として実用化されてもいる。
このようなチタニアの光触媒活性については、ルチル相よりもアナターゼ相のものが高いことが知られており、さらにチタニアの光触媒特性を向上させる方法として、チタニアの比表面積を増大させることが検討されている。たとえば、チタニアをナノスケールの微粒子あるいは結晶としたり、薄片状、チューブ状あるいは多孔質体とすること等の多くの試みがなされている。
チタニア中のアナターゼ型結晶構造の含有率を高めるため、例えば、イルメナイトを原料として硫酸法により硫酸化チタンを得て、この硫酸化チタンを加熱分解してメタチタン酸(Ti(OH)2またはTiO2・H2O)を作製し、さらにこのメタチタン酸を硝酸などの一塩基酸で解膠する方法が知られている。
また、蒸留を繰り返して精製された四塩化チタン、(NH42(TiO(C242)およびイソプロピルチタネート等がチタニア原料として検討されている。例えば、イソプロピルチタネート等と、トリエタノールアミンおよびエチレングリコールとを反応させて得られる前駆体から、チタニア粉末を製造する方法が記載されている。
さらに、最近開発されているゾル−ゲル法によれば、イソプロピルチタネート等のチタンアルコキサイドを出発原料として用い、それにアセチルアセトネート等の調節剤を添加した上で加熱することにより、粉末状、繊維状、フィルム状などのチタニアが得られるようになっている。
しかしながら、硫酸法を用いた方法で得られるチタンゾルは、pHが1〜2程度の強酸であるため取り扱いが困難であり、製造設備が高価になるなどの問題が見られた。また、得られたチタンゾルをフィルムにした場合、被着体(基材)への接着力に乏しく、被着体から容易に剥がれてしまうという問題も見られた。また、上記イソプロピルチタネート等と、トリエタノールアミンおよびエチレングリコールとを反応させて得られる前駆体から、チタニア粉末を製造する方法で得られるチタニア粉末は、ルチル型結晶構造を10〜15%の範囲内で含んでいる。したがって、二酸化チタン中のアナターゼ型結晶構造の含有率が未だ不十分であった。また、ゾル−ゲル法において、チタンアルコキサイドからなるチタンゾル(チタンゾル溶液)は、保存安定性に乏しく、安定して均一な特性を有するチタン化合物を得ることが困難であった。さらに、ゾル−ゲル法を用いて得られるチタニアにおいて、調節剤を添加した場合であってもアナターゼ型結晶構造の含有率が充分高いとは言えなかった。
そこで、下記特許文献1には、ゾルーゲル法において、アナターゼ型結晶構造を高い含有率で含み、高い光触媒能を有するチタニアを製造することを目的として、チタンアルコキシドおよびポリカルボン酸とを予め反応させて前駆体を作成し、該前駆体を焼成することによりアナターゼ型結晶構造が高い含有率のチタニアが得られることが開示されている。
又、下記非特許文献1には、ポリオキシエチレンブロック−ポリオキシプロピレンブロック−ポリオキシエチレンブロックを有するブロック共重合体を含む水溶液と、有機溶媒で修飾されたチタンアルコキシドを反応させて得たチタニアゾルを焼成してアナターゼ型結晶構造が高い含有率のチタニアを得ている。ここで得られたチタニアは、直径10nm、ポアサイズ6.5nm、BET比表面積205m2/gである。
特開2000−334310号公報 Yang,P.;Zhao,D.;Margolese,D.I.;Chmelka,B.F.;Stucky,G.D.,Nature,1998,396,152-155
上記特許文献1に開示されたチタニアはアナターゼ型結晶構造の含有率が高いものの、その光触媒活性は未だ充分とは言えなかった。
そこで、本発明は、光触媒活性が高く、従来のアナターゼ型結晶構造とは相違する、新規なアナターゼ型結晶構造を有するチタニアの製造方法を探索することを目的としてなされたものである。
本発明者らは、鋭意研究した結果、ゾルーゲル法において、特定の化合物の存在下に得られたチタニアゲルを用い、特定の条件で焼成することで、上記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
即ち、第1に、本発明はチタニアナノ微結晶集合体の発明であり、ナノサイズのアナターゼ型チタニア微結晶が稠密に充填され、各微結晶の結晶面同士が直接接していることを特徴とする。本発明のチタニアナノ微結晶集合体は、新規なアナターゼ型結晶構造を有するものであり、従来のアナターゼ型チタニアと比べて、優れた光触媒活性を示す。
第2に、本発明はチタニアナノ微結晶集合体の製造方法の発明であり、疎水性ブロックと親水性ブロックを有するブロック共重合体及び陽イオン界面活性剤を含む水溶液と、有機溶媒で修飾されたチタンアルコキシドを反応させてチタニアゾルを得る工程と、該チタニアゾルを焼成する工程を含むことを特徴とする。非イオン性界面活性剤である疎水性ブロックと親水性ブロックを有するブロック共重合体と、陽イオン界面活性剤を併用することにより、ブロック共重合体のみを用いた場合と比べて、ミセルサイズを小さくし、ミセルをルーズにすると考えられる。ルーズなミセルが集まることにより、直径10nm以下の微粒子が稠密に充填した集合体を形成する場を与えるものと考えられる。
本発明のチタニアナノ微結晶集合体の製造方法において、疎水性ブロックと親水性ブロックを有するブロック共重合体が、ポリオキシエチレンブロック−ポリオキシプロピレンブロック−ポリオキシエチレンブロックであることが好ましい。このブロック共重合体は、下記一般式で表される。ここで、p及びrは20以上であり、100以上が好ましく、qは10以上であり、50以上が好ましい。
Figure 0004253234
本発明のチタニアナノ微結晶集合体の製造方法において、陽イオン界面活性剤が、長鎖アルキル基含有ハロゲン化4級アンモニウム塩であることが好ましい。具体的には、C10〜20程度の長鎖アルキル基と3個のメチル基を有するハロゲン化4級アンモニウム塩が挙げられる。
本発明のチタニアナノ微結晶集合体の製造方法において、焼成条件は必ずしも限定されず、従来行われて来た400〜500℃程度で焼成することができる。ただし、光触媒活性を高めるためには、チタニアゾルの焼成を比較的低い温度、例えば280〜350℃で、5時間〜35日間行うことが好ましい。なお、焼成時間としては、280〜300℃では、5日〜35日間が好ましく、300〜330℃では、20時間〜10日が好ましく、330〜350℃では、5時間〜2日が好ましい。
本発明のチタニアナノ微結晶集合体の製造方法において、有機溶媒は、チタンアルコキシドが急速に反応して非アナターゼ型チタニアとなることを抑制する機能を有する。有機溶媒として、アルコールや多座配位子化合物等が用いられる。この中で、ジケトン類が好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。
第3に、本発明は色素増感型チタニアナノ微結晶集合体の発明であり、ナノサイズのアナターゼ型チタニア微結晶が稠密に充填され、各微結晶の結晶面同士が直接接しているチタニアナノ微結晶集合体に色素が吸着していることを特徴とする。チタニアナノ微結晶集合体を色素増感型とすることで、受光時の陽イオンと電子の分離が容易となる。
第4に、本発明は上記色素増感型チタニアナノ微結晶集合体の製造方法の発明であり、疎水性ブロックと親水性ブロックを有するブロック共重合体及び陽イオン界面活性剤を含む水溶液と、有機溶媒に溶解されたチタンアルコキシドを反応させてチタニアゾルを得る工程と、該チタニアゾルを乾燥又は焼成する工程と、該乾燥又は焼成されたチタニアナノ微結晶集合体に色素を吸着させる工程を含むことを特徴とする。本発明の製造方法により、簡易な操作で色素増感型チタニアナノ微結晶集合体を製造することが出来る。
第5に、本発明は光触媒の発明であり、ナノサイズのアナターゼ型チタニア微結晶が稠密に充填され、各微結晶の結晶面同士が直接接していることを特徴とするチタニアナノ微結晶集合体から成る光触媒である。
第6に、本発明は光電変換素子の発明であり、ナノサイズのアナターゼ型チタニア微結晶が稠密に充填され、各微結晶の結晶面同士が直接接していることを特徴とするチタニアナノ微結晶集合体から成る光電変換素子である。
第7に、本発明は色素増感型太陽電池の発明であり、ナノサイズのアナターゼ型チタニア微結晶が稠密に充填され、各微結晶の結晶面同士が直接接しているチタニアナノ微結晶集合体に色素を吸着させたことを特徴とする色素増感型太陽電池である。チタニアナノ微結晶集合体に色素を吸着させることにより、可視光でも光電変換を可能にすることができる。本発明の色素増感型太陽電池は、製造工程が簡便で、コストが低く、しかも8%を越える高い光電変換効率が得られる。
第8に、本発明は色素増感型太陽電池の製造方法の発明であり、疎水性ブロックと親水性ブロックを有するブロック共重合体及び陽イオン界面活性剤を含む水溶液と、有機溶媒に溶解されたチタンアルコキシドを反応させてチタニアゾルを得る工程と、該チタニアゾルを透明電極上に塗布・乾燥させる工程と、得られたチタニア乾燥膜に色素増感剤を吸着させて電極とする工程を含むことを特徴とする。本発明により、従来のシリコン太陽電池や化合物半導体太陽電池に比べて、大型の超精密装置を用いることなく、はるかに簡便な工程でチタニアナノ微結晶集合体から成る色素増感型太陽電池を製造することができる。
本発明は、新規な結晶構造を有するアナターゼ型チタニア微結晶集合体である。このアナターゼ型チタニア微結晶集合体は、光触媒活性に優れ、光触媒自体として有用である他、色素増感型太陽電池や光電変換素子として用いられる。
本発明において、チタニアゲルを製造する出発原料であるチタンアルコキシドを用いることができる。チタンアルコキシドとしては、例えば、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトライソブトキシド、チタンメトキシプロポキサイド、チタンジクロライドジエトキサイド等が挙げられる。
上記のチタンアルコキシドを溶解する有機溶媒としては、アルコールや多座配位子化合物等を用いることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。アルコールとしては、イソプロピルアルコール、メトキシプロパノール、ブタノール等が好ましく例示される。多座配位子化合物としては、例えば、ビアセチル、ベンジル、アセチルアセトン等のジケトン化合物が好適な例として示される。特に、アセチルアセトンを用いることが好ましい。これらの多座配位子化合物等は、単独で用いてもよいし、イソプロピルアルコール、メトキシプロパノール、ブタノール等のアルコールと混合して用いてもよい。
上記の有機溶媒中にチタンアルコキシドを、モル比が、有機溶媒:金属アルコキシドとして、3:1〜1:1.5、より好ましくは、1:1ないしはその付近となるように溶解させる。この金属アルコキシド溶液中でアルコキシドは安定化し、後の加水分解反応の速度調整が容易になる。
本発明のアナターゼ型チタニア微結晶集合体は、高い光触媒活性を示す。これらを利用することによって、ホルムアルデヒド等の有害ガスの分解・除去、大気汚染の除去、殺菌・抗菌、水の分解による水素の発生などの機能材料として有用な光触媒活性材料が提供される。
(アナターゼ型チタニアの製造)
ブロックコポリマー(F127:Polyoxyethylene polyoxypropylene block copolymer:(PEO)106(PPO)70(PEO)106)10%水溶液中にヘキサデシルトリメチル−アンモニウムブロマイド(CTAB:Hexadecyltrimethyltrimethyl-Ammoniumu Bromide)を0.1Mになるように溶解し、モル比で界面活性剤の4倍のアセチルアセトン(aoetylaoetone)で修飾したテトライソプロピルオルトチタネート(tetraisopropylorthotitanate)溶液を加え、40℃で2日撹拌し、次いで80℃で7日間反応させることで、チタニアゲルが得られた。このチタニアゲルを400℃〜500℃で、30分〜2時間焼成した所、非常に結晶性に優れたアナターゼ型チタニアを得ることができた。このアナターゼ型チタニアを、以下、『FCTAB−400〜500℃−2h』のように表記する。
図1に、本実施例のチタニアの高分解能TEM像を示す。図1に示されるように、ナノサイズの高結晶性のアナターゼ型チタニア微粒子が稠密に充填され、各アナターゼ型チタニア微粒子の境界部分には他の結晶構造が存在していないことが分る。
本実施例のチタニアを窒素吸着法で調べたところ、比表面積:185m2/g、孔径:9.94nm、孔容積:0.677ml/gであり、極めて高い比表面積を有することが分った。
本実施例のチタニアの光触媒活性を調べるために、ヨウ素変換試験を行った。ヨウ素変換試験は、下記化学式に示されるように、光反応によりヨウ素イオンからヨウ素が生成されることを利用するもので、図2のような実験結果が得られた。
Figure 0004253234
図2の結果より、本発明の『FCTAB−450℃−2h』、『FCTAB−300℃−7days』は、光触媒反応に対するチタニア粒子の標準物質である『P25』に比べて、格段に高い光触媒活性を示し、特に、時間経過による反応の鈍化が少ないことが分る。なお、『ST−01』(石原産業製)は、高い光触媒活性を示すことが知られたチタニア粒子であり、『FCTAB−300℃−7days』は、『ST−01』を凌ぐ高い光触媒活性を示している。
又、図3は、図2の試験に比べ、全体の容積を22/50にした場合のヨウ素変換試験を示す。図3の結果より、本発明の、『FCTAB−300℃−7days(TiO2+KI)』は、更に高い光触媒活性を示すことが分る。
(色素増感太陽電池の製造)
上記チタニアを用いた色素増感太陽電池の製造方法を図4に示す。焼成前のチタニアゲルをそのままを透明導電膜に塗布し、第1層とした。乾燥後、ゲルにP−25チタニア粒子を5%混合した試料をその上に塗布し、乾燥し、450℃で1時間焼成して第2層とした。その後、N3色素を24時間吸着しチタニア電極とした。白金電極を対極とした。
以下の実験条件で、太陽電池の性能を測定した。セルは、5mm×5mmとし、電解質として0.5MのLiIのアセトニトリル溶液に0.05M I2を溶解させたものを用いた。光は、擬似太陽光(オリール社製):100 mW/cm2、北斗電工製ポテンショスタットで電流−電圧曲線を測定した。
図5に、電流−電圧測定結果を示す。8.03%の高い光電変換効率が得られた。電流密度:15mA/cm、開放電圧:0.693V、フィルファクター:0.776であった。
本発明のアナターゼ型チタニア微結晶集合体が示す高い光触媒活性を利用することによって、ホルムアルデヒド等の有害ガスの分解・除去、大気汚染の除去、殺菌・抗菌、水の分解による水素の発生などの機能材料として諸分野に適用される。
本実施例のチタニアの高分解能TEM像を示す。 光触媒活性を示すヨウ素変換試験結果を示す。 光触媒活性を示すヨウ素変換試験結果を示す。 チタニアを用いた色素増感太陽電池の製造方法を示す。 太陽電池の電流−電圧測定結果を示す。

Claims (5)

  1. ポリオキシエチレンブロック−ポリオキシプロピレンブロック−ポリオキシエチレンブロック及び長鎖アルキル基含有ハロゲン化4級アンモニウム塩を含む水溶液と、有機溶媒に溶解されたチタンアルコキシドを反応させてチタニアゾルを得る工程と、該チタニアゾルを焼成する工程を含むことを特徴とするチタニアナノ微結晶集合体の製造方法。
  2. 前記チタニアゾルの焼成を、280〜350℃で、5時間〜35日行うことを特徴とする請求項に記載のチタニアナノ微結晶集合体の製造方法。
  3. 前記有機溶媒が、ジケトン類であることを特徴とする請求項1又は2に記載のチタニアナノ微結晶集合体の製造方法。
  4. ポリオキシエチレンブロック−ポリオキシプロピレンブロック−ポリオキシエチレンブロック及び長鎖アルキル基含有ハロゲン化4級アンモニウム塩を含む水溶液と、有機溶媒に溶解されたチタンアルコキシドを反応させてチタニアゾルを得る工程と、該チタニアゾルを乾燥又は焼成する工程と、該乾燥又は焼成されたチタニアナノ微結晶集合体に色素を吸着させる工程を含むことを特徴とする色素増感型チタニアナノ微結晶集合体の製造方法。
  5. ポリオキシエチレンブロック−ポリオキシプロピレンブロック−ポリオキシエチレンブロック及び長鎖アルキル基含有ハロゲン化4級アンモニウム塩を含む水溶液と、有機溶媒に溶解されたチタンアルコキシドを反応させてチタニアゾルを得る工程と、該チタニアゾルを透明電極上に塗布・乾燥させる工程と、得られたチタニア乾燥膜に色素増感剤を吸着させて電極とする工程を含むことを特徴とするチタニアナノ微結晶集合体から成る色素増感型太陽電池の製造方法。
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