JP4253216B2 - 銅−タングステン合金材と銅との複合材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、放電加工用電極や接点材料、伝熱材料として使用する銅−タングステン合金材と銅との複合材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
放電加工用電極や接点材料、伝熱材料などに使用される材料としては、高熱伝導性や低熱膨張性が要求されるため、高熱伝導性金属と低熱膨張性金属とからなる合金、例えば、銅−タングテン合金材、銀−タングテン合金材などが多用されている。また、実際にこれらの合金材を放電加工用電極部品などとして用いる場合には、コスト面を考慮し、これらの合金材を銅系金属や鉄系金属の基材などに接合した複合材として用いられている。
従来、銅−タングステン合金材と銅との複合材の製造方法としては、(1)銅−タングステン合金材と銅とをロー付けする方法、(2)銅−タングテン合金材と銅とを熱間静水圧加圧(以下「HIP」と称する)処理により拡散接合する方法(特許文献1参照)、(3)銅−タングステン合金材と銅との間にロー材をはさんでHIP処理する方法(特許文献2参照)などがある。また、銅−タングテン合金材と鉄系金属とを接合する方法はロー付け法に限られていた。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−323409号公報 (段落[0008])
【特許文献2】
特開2002−317210号公報 (段落[0008])
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の各方法で製造された銅−タングテン合金と銅との複合材は、接合面での信頼性が不十分であり、複合材の接合界面で破断しやすいなどその強度が低いため市場性に乏しいという問題ある。
例えば、(1)の方法で製造された複合材は接合全断面にわたる施工が不十分であり、ワイヤー放電切断加工などにより小別体の複合材を切り出した場合に、切り出した小別体の接合面で解離するものがあり、その防止が困難であるという問題がある。これに対し、(2)および(3)の方法で製造された複合材は接合全断面にわたる施工は確保されるが、複合材より切り出された小別体の加工を受けた、または加工の影響がある接合界面が開口し、以後の使用時に解離破断する場合があるなどの問題がある。
【0005】
本発明はこのような問題に対処するためになされたもので、接合全断面にわたる接合の信頼性と接合界面の接合強度に優れ、かつ後の加工取り扱いで接合面の強度低下がなく、接合面からの解離破断のない銅−タングステン合金材と銅との複合材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の銅−タングステン合金材と銅との複合材は、熱間静水圧加圧処理により相互に接合されてなり、その熱間静水圧加圧処理が、銅−タングステン合金材と、平均粒子径 5μm〜150μmを有する銅粉末またはその予備成形体とを成形用容器に収納して 950 ℃以上、1083 ℃未満の温度でなされ、JISZ2241による引張り試験を行なうと、複合材は上記銅−タングステン合金材部で破断し、相互に接合された接合界面で破断しないで、破断時の絞りが 19 %〜 27 %であることを特徴とする。ここで、「相互に接合された接合界面で破断しない」とは、元の複合材の任意の位置で切り出される小別体複合材の破断解離が接合面によらないことをいう。また、実施例に示すように、複合材の任意の位置のJISZ2201の10号引張り試験片を引張り試験したときに、破断箇所が接合界面でないことで確認する。
【0007】
また、本発明の銅−タングステン合金材と銅との複合材の製造方法は、銅−タングステン合金材と、平均粒子径 5μm〜150μmを有する銅粉末またはその予備成形体とを成形用容器に収納する工程と、銅粉末等が収納された成形用容器を950 ℃以上、1083 ℃未満の温度で熱間静水圧加圧処理する工程とを備えることを特徴とする。
また、製造に用いられる上記成形用容器は、鋼製容器であることを特徴とする。
【0008】
銅−タングステン合金材と銅との複合材は、HIP処理を用いて製造することにより、ロー材などを必要としない。さらに、該HIP処理において、その加熱温度を 950 ℃以上で、銅の融点である1083 ℃未満とすることにより、銅液相の発生を防ぎ、銅−タングステン合金材と反応表面積の大きい粉末状の銅材とが固相拡散接合されるため、接合界面の接合強度に優れる。
また、銅粉末の平均粒子径を 5μm〜150μmとすることにより、接合反応表面積が大きくなり接合界面での接合強度をさらに向上させることができる。
また、HIP処理を銅の融点より低い温度で行なうことにより、成形用容器として安価な鋼製容器の使用が可能となり、複合材の製造コストを大幅に削減することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
銅−タングステン合金材は公知の方法により製造される。例えば銅粉末とタングステン粉末とをHIP処理により焼結する方法などが挙げられる。また、銅−タングステン混合粉末の焼結体の使用もできる。
本発明に使用できる銅粉末は、公知の製法により製造された銅粉末を使用できる。例えば、機械的粉砕法、アトマイズ法、急冷凝固法等が挙げられる。銅粉末の平均粒子径は 5μm〜150μm、好ましくは 5μm〜100μmである。5μm未満では工業的に入手が困難であり、150μmをこえると接合反応表面積が小さくなり接合強度が不十分となる。
粉末平均粒子径はJISZ8801−1「ふるいの目開」としても表すことができ、その場合、少なくとも 355μmのものが好ましい。
【0010】
また、本発明の複合材が、接点材料、伝熱材料として用いられるものであることから、その熱伝導度や塑性加工性の低下などを防止するため、銅粉末中の鉄、クロム、ニッケルなどの不純物の含有量を少なくすることが好ましい。具体的には、銅粉末全体に対して、各不純物の含有量はそれぞれ 0.05 重量%以下とすることが好ましい。
【0011】
本発明の銅−タングステン合金材と銅との複合材は、銅−タングステン合金材と銅との接合全断面にわたり接合が完結する信頼性があり、かつ、接合界面の接合強度に優れたものとするため、その製造工程において以下の点に留意している。
(1)接合全断面にわたり、「破壊の起点となる空孔」が皆無の状態を達成できるHIP処理法を用いること、
(2)銅−タングステン合金材と銅との接合は、固相拡散接合とし、接合界面で低融点の液相によるロー付けでないこと、
(3)HIP処理を銅の融点以下の温度条件で行なうことで銅液相の発生を防止すること、
(4)接合反応表面積を大きくし、接合強度を向上させるため銅を粉末状とすること等である。
【0012】
銅粉末は粉末状態で使用できる。また、銅粉末の予備成形体であってもよい。予備成形体としては、銅粉末をプレス加工し圧粉体としたもの、または、それらの焼成体としたものが挙げられる。焼成は粉末の場合は焼成用容器に収納して行なう。また、プレス加工した圧粉体の場合は容器は必要なく、この圧粉体自体を冶具で把持して所定温度条件下で数時間行なう。
ここで、焼成時において銅粉末中に鉄成分が混入すると、熱伝導度や塑性加工性が低下するため、焼成用容器および冶具は、鉄成分の混入が起こらないように非鉄製であればよく、セラミックス製、黒鉛製、またはタングステン製などを好適に用いることができる。
【0013】
次に本発明のHIP処理工程について説明する。
上記銅−タングステン合金材、および、粉体、圧粉体またはそれらの焼成体とした銅粉末を成形用容器に収納して 950 ℃以上、1083 ℃未満でHIP処理し両部材を固相拡散接合する。HIP処理は、十分な密度を得ることができる圧力下で数時間行なう。HIP処理時の圧力は 100kgf/cm2以上、好ましくは 500kgf/cm2〜2000kgf/cm2である。HIP処理温度を 1083 ℃未満としたのは、銅液相の発生を防止するためであり、HIP処理温度の下限を 950℃としたのは、この温度以下となると、HIP処理が実用的には進行しなくなるためである。
なお、HIP処理の圧力媒体としては、アルゴンガス、窒素ガスなどのほか、ガラス溶融体を使用することができる。
【0014】
成形用容器は、シリカガラス、銅、鋼製などの任意の容器を用いることが可能である。処理コストを削減できることから、鋼製容器を用いることが好ましい。本発明のHIP処理では、処理温度を複合材原料である銅の融点より低い温度とするため、銅粉の溶解が起こらず、上記鋼製容器を用いた場合でも銅粉と鋼製容器との接触による鋼製容器鉄成分の合金材料への混入が防止できる。このため、安価な鋼製容器を好適に用いることができ、複合材の製造コストを削減することができる。
【0015】
銅粉末を用いることで、接合反応表面積が大きくなり、該銅粉末と銅−タングステン合金材とをHIP処理で固相拡散接合することにより、接合全断面で優れた接合強度を有する複合材が得られる。また、HIP処理を温度 1083 ℃未満で行なうことにより、鋼製容器鉄成分の合金材料への混入が防止でき、複合材の熱伝導度の低下を抑制することができる。
また、本発明の製造方法では、上述のように安価な鋼製容器を使用することができることに加え、両接合材の接合をHIP処理による固相拡散接合とし、別途ロー材などを必要としないので、従来の方法と比較して低コストで銅−タングステン合金材と銅との複合材を製造できる。
以上より該製造方法によって得られた銅−タングステン合金材と銅との複合材は、接合界面の接合強度に優れ、かつ高熱伝導性を有するため、放電加工用電極や接点材料、伝熱材料などとして好適に利用することができ、かつこれを安価に製造することができる。
【0016】
本発明の複合材の製造方法は、銅−タングステン合金材と銅との接合部分を有すれば、銅と接合した第3層を有する複合材の製造にも利用できる。例えば、銅−タングステン合金材/銅粉末/銅ソリッド材、銅−タングステン合金材/銅粉末/鋼材、銀−タングステン合金材/銅粉末、銀−タングステン合金材/銅粉末/銅ソリッド材、銀−タングステン合金材/銅粉末/鋼材などの3層の複合材のHIP処理による製造方法として好適に利用できる。
【0017】
【実施例】
実施例1〜実施例6、比較例1〜4
銅−タングテン合金材(銅 35 重量%、タングテン 65 重量%)と、表1に示す平均粒子径の銅粉末とを鋼製の成形用容器に収納して、表1に示す温度条件で 1200kgf/cm2の圧力下、5 時間HIP処理を行なった。処理後、成形用容器を切削加工により取り除き銅−タングステン合金材と銅との複合材を得た。なお、複合材の形状は、50mmφ×120mm 長さ(銅−タングステン合金材部分の長さ 60mm、銅部分の長さ 60mm )とした。
この複合材の円周方向断面の中心部、1/2R部、表層部より 15mm φの小別体をワイヤー放電加工で切り出して、切削加工で引張り試験片を製作した。該試験片の形状は、JISZ2201 10号に適合するもので、掴み部φ 15mm、平行部φ 12.5mm、平行部長さ 60mm である。また、複合材の接合界面での破壊を確認するため、接合面を引張り試験片の平行部中央に位置するように切り出して加工した。
得られた試験片について、JISZ2241により、引張り試験を行なった。引張り強さ、機械的性質の合金の伸び、絞り、および試験における複合材の破断位置の測定結果を表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
表1より実施例1〜6では、接合面で破断するものはなく、銅塊を銅−タングステン合金材と直接接合した比較例3、4と比較すると、破断強度(引張り強度)も大幅に向上している。また、複合材より切り出された小別体の引張り試験でも接合部で破断するものはなく、加工を受けた接合面の強度も各比較例より大幅に高いことが確認できる。
【0020】
【発明の効果】
本発明の銅−タングステン合金材と銅との複合材は、銅−タングステン合金材と所定の平均粒子径を有する銅粉末またはその予備成形体とを 950 ℃以上、1083 ℃未満の温度でHIP処理し、得られる成形材が相互に接合された接合界面で破断しないので、接合部の全断面にわたる接合施工の信頼性が確保されるとともに、接合界面の強度も、その後の加工によって低下することがない。
また、HIP処理を温度 1083 ℃未満で行なうことにより、鋼製容器鉄成分の合金材料への混入が防止でき、複合材の熱伝導度の低下を抑制することができる。
【0021】
また、本発明の銅−タングステン合金材と銅との複合材の製造方法は、銅−タングステン合金材と、平均粒子径 5μm〜150μmを有する銅粉末またはその予備成形体とを成形用容器に収納する工程と、銅粉末等が収納された成形用容器を950 ℃以上、1083 ℃未満の温度で熱間静水圧加圧処理する工程とを備えるので、接合反応表面積が大きくなり接合界面での接合強度を向上させることができる。さらに、HIP処理を用いることにより、ロー材などを必要とせず、また、該処理を銅の融点より低い温度で行なうことにより、成形用容器として安価な鋼製容器の使用が可能となるため、複合材の製造コストを大幅に削減することができる。
Claims (3)
- 銅−タングステン合金材と銅とが熱間静水圧加圧処理により相互に接合されてなる複合材であって、
前記熱間静水圧加圧処理が、銅−タングステン合金材と、平均粒子径 5μm〜150μmを有する銅粉末またはその予備成形体とを成形用容器に収納して 950 ℃以上、1083 ℃未満の温度でなされ、JISZ2241による引張り試験を行なうと、複合材は前記銅−タングステン合金材部で破断し、相互に接合された接合界面で破断しないで、破断時の絞りが 19 %〜 27 %であることを特徴とする銅−タングステン合金材と銅との複合材。 - 銅−タングステン合金材と、平均粒子径 5μm〜150μmを有する銅粉末またはその予備成形体とを成形用容器に収納する工程と、前記成形用容器を950 ℃以上、1083 ℃未満の温度で熱間静水圧加圧処理する工程とを備えることを特徴とする銅−タングステン合金材と銅との複合材の製造方法。
- 前記成形用容器は、鋼製容器であることを特徴とする請求項2記載の銅−タングステン合金材と銅との複合材の製造方法。
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