JP4251935B2 - 荷電粒子質量選別装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、イオンやクラスターなどの荷電粒子を質量別に選別する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
特定の粒子を種とする微結晶の成長や、空間中に隔離した状態で粒子と反応ガスを反応させる材料処理などにおいて、特定の質量を持った粒子を選択的に捕獲したり外部に取り出したりして利用する要請がある。特に複数個の原子分子が凝集してできるクラスターは特異な物理化学的挙動を示し、広い分野に亘る利用が検討されている。
【0003】
ガスクラスター発生装置は、加圧ガスの供給を受けて原子質量が数1000のクラスターを発生する。ガスクラスター発生装置で発生するクラスターでは凝集するガス分子の数は確率的に分布するので質量に幅があり、利用あるいは研究の対象とするためには、たとえば質量数すなわちサイズに基づいて選別する必要がある。
質量に基づいた選別を行うにはクラスターをイオン化すると便利である。
ガスクラスター発生装置から放出されるクラスターは、イオン化電極を通して荷電粒子化した後に、適当な質量選別方法を用いて、質量にしたがって分別して利用する。
【0004】
一般的に使用されている質量選別方法あるいは質量分析方法は磁場型、四重極電界型、飛行時間型などがあり、イオン化後に加速電極で加速したイオンクラスターを導入して、その速度によって分別するものが多い。
加速電極で電界を電荷に作用させて荷電粒子を加速すると、作用力は電荷で決まるので、粒子の質量が小さければ高速になり質量が大きければ低速になる。
【0005】
磁場型質量選別装置は、セクターマグネットで発生する磁場の中に荷電粒子を通すもので、荷電粒子の運動方向と磁場の向きに垂直な方向に力が作用するため荷電粒子の軌道が偏向する。このとき、重い粒子は曲がりにくく軽い粒子は曲がりやすいため、取り出し位置あるいは磁場強度を調整することにより所望の質量の荷電粒子を得ることができる。
【0006】
この装置は、設計が容易で、同じ質量の荷電粒子を連続的に取り出すことができるが、装置が大型化し重量化し、またビームの軌道軸と取り出し軸が角度を持つため他の装置との取り合いが複雑になる。さらに、質量が大きくなるほど単位増し分の全体質量に対する割合が小さくなるため、分解能が質量に逆比例するという問題もある。
【0007】
四重極電界型質量選別装置は高周波と直流電場を併用して作用させるもので、その1例が特許文献1に開示されている。特許文献1記載の装置は、図に示すように、中心軸の周りに対称的に配置された4本以上の柱状電極からなる中心電極とこれらを取り囲む外部電極で構成し、柱状電極にはそれぞれ交互に位相の反転した交流電圧を与え、さらに中心電極と外部電極の間に荷電粒子を中心電極の方に移動させるような直流バイアスを与えるようにしたものである。
【0008】
外部電極と中心電極の間に存在する荷電粒子は中心電極に集まる方向に移動し、一方、中心電極に印加される交流電圧により時間平均した交流電界強度が中心電極から距離の増大と共に減少するため、荷電粒子は中心電極から遠ざかる方向に斥力を受ける。この交流電界による斥力は、交流の周波数をf、粒子の質量をmとすると、1/mfに比例するので、荷電粒子の平衡位置は質量が大きいほど中心に近くなる。
【0009】
そこで、電圧や周波数を調整すると、所定の値以上の質量を持つ荷電粒子を中心電極の内側に集めて、取り出すことができる。
四重極電界型質量選別装置も連続取り出しも可能で、低エネルギー領域では最も一般的に利用されるが、質量が大きくなるほど分解能が低下する。また、電極断面形状は高い製作精度が要求される。
【0010】
また、飛行時間型質量選別装置は、運動する荷電粒子のエネルギーと電荷が等しいときには、質量の差は飛行速度の差として現れることを利用したものある。荷電粒子の進行方向に入り口と出口の電極を設置して、それぞれに直流電圧を印加して荷電粒子を遮断しておく。ある瞬間にある一定時間だけ入り口電極の電圧を切ると、荷電粒子が直進して出口電極に到達するので、2組の電極の間を飛行する時間に合わせて出口電極の電圧を切れば、所定の質量の粒子だけが出口電極を通過するので、質量選別をすることができる。
【0011】
飛行時間型質量選別装置は、パルス時間幅を変更することで強度や分解能を簡単に調整することができる。また、簡単な装置構成でありながら任意の質量を有する粒子を選別することができる。しかし、選別が間欠的になり、選別された粒子の連続供給はできない。
【0012】
【特許文献1】
特開2869517号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、質量が大きくても選別力が低下せず、連続取り出しができる小型軽量な荷電粒子質量選別装置を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の荷電粒子質量選別装置は、質量に応じた速度差を持つイオンやクラスターなどの荷電粒子を質量に応じて選別する装置であって、進行波形成部を備え、進行波形成部は、荷電粒子の進行軸に垂直な偏向電界を持つ進行波電界であって、電界強度がゼロ近傍の値になる部分を有しかつ荷電粒子の進行軸に沿って進行する進行波電界を生成する進行波形成電極と、進行波の位相速度を調整する位相速度調整機構を備え、進行波形成電極で形成する進行波の位相速度を選別対象とする荷電粒子の進行速度に合わせることにより荷電粒子を質量に応じて選別して、進行軸上に配置される出口スリットから回収することを特徴とする。
【0015】
質量選別したい荷電粒子の速度に進行波の位相速度を同期させると、進行波速度と異なる速度で飛行する荷電粒子はやがて進行方向に垂直な有値の電界領域に入ることになり電界から受ける作用によって進行軸から逸れるので進行軸上に設けられた出口スリットに到達することができない。
一方、速度が進行波速度と同期する荷電粒子のうち電界がゼロの位置にあって一緒に移動する部分は運動方向を維持して進行軸に沿って進行し進行軸上に設けられた出口スリットから進行波形成電極の外に取り出される。
たとえばガスクラスター発生装置で発生するクラスターをイオン化して加速器で加速した場合には、クラスターの速度は質量に反比例するので、進行波形成電極内を飛行する間に進行波の位相速度と対応する質量を持った成分とその他の成分を弁別することができる。
【0016】
本発明の荷電粒子質量選別装置によれば、電界がゼロになる領域が出口スリットに到達するたびに、所定の速度の荷電粒子が供給される。
このように、本発明の荷電粒子質量選別装置は、簡単な構造を持った小型な進行波形成電極を用いることにより、荷電粒子を質量に応じて選別することができる。
進行波は電位がゼロに近い極値を有しさえすれば波形は自由である。進行波を正弦波としたときは、中心電位をシフトして、上限下限いずれかの極値がゼロになるようにすると電界がゼロ近傍になる範囲がより広がり、好ましい。
【0017】
進行波形成電極が形成する進行波電界は、偏向電界と同じ方向に直流バイアスを有し、電界強度がゼロ近傍の値になる部分以外は全て正値または全て負値になるようにすることが好ましい。
電界強度が正と負の両方に分布していると、進行波速度と異なる速度で進行波電界以内に侵入してきた荷電粒子は、速度によって正と負いずれの方向にも逸れていくことになり、処理が煩雑になる。進行波電界が正または負のいずれか一方であれば、進行波速度と異なる速度で飛行する荷電粒子も全て同じ方向に逸れるので、処理が簡単になり、確実に質量選別ができる。
【0018】
進行波形成電極は、たとえば進行軸に沿って多数の電極対を配置したもので構成することができる。各電極対にはそれぞれ電圧供給装置が付属し、各電極対に印加する電圧を進行波の波形と合わせて設定し、選別する荷電粒子の速度と同期する位相速度で移動するようにする。
なお、速度が進行波に同期する荷電粒子のうち電界がゼロ以外の位置にある荷電粒子は進行軸から逸れて出口スリットに到達しない。そこで、ゼロに近い領域が大きければ、同速の荷電粒子をより大量に取り出すことができるが、ゼロ領域に幅があると異速の荷電粒子が混入する可能性も大きくなるので、許容できる幅を設定する必要がある。
【0019】
そこで、本発明の荷電粒子質量選別装置の進行波形成部は、進行波形成電極を4個備えた電極ユニット、または4個の進行波形成電極で構成される電極ユニットを複数段備えるようにしてもよい。
電極ユニットの4個は絶対値がほぼ等しく符号が正負負正または負正正負の順に異なる直流バイアスが乗せられた進行波電界を形成するようにした組み合わせであって、第1個目の電極に対して第2個目と第3個目の電極が180度ずれた進行波位相となり、第4個目の電極が同位相となるように調整される。
【0020】
荷電粒子質量選別装置では、同じ速度を持った荷電粒子でも、電界がゼロの領域に同期して移動するもの以外は全て進行軸から偏向されてしまうため、収率が大きくならなかった。
しかし、上記のような構成を有する電極ユニットは、ゼロ以外の位相位置に進入してきた同速荷電粒子が前半の電極内で進行軸から逸れても、後半の電極の作用により進行軸側に偏向して電極ユニットの出口位置で進行軸まで戻すことができる。したがって位相に分布を有する同速荷電粒子であっても、そのほとんどを回収することができるので、収率が格段に向上する。
【0021】
さらに具体的に説明する。
電極ユニットの初めの進行波形成電極に入射した荷電粒子のうち、進行波の位相速度と同じ速度を持つが進行波の電界がゼロでない領域にあるものは、進行波形成電極内で形成する進行軸に垂直の方向の加速度によりその段の出口では軸に垂直な速度成分を持つに至る。しかし、この荷電粒子は2番目の進行波形成電極で位相が180度ずれた逆波形の電界を受けるので、反対側に同じ加速度を受けて相殺し、2番目の電極の出口では軸に垂直な成分の速度がゼロになる。ただし、荷電粒子は進行軸から相応に変位することになる。
【0022】
ついで、荷電粒子は3番目の進行波電極に入射して2番目の電極を通過する間に受けた加速度履歴を丁度相殺するような加速度を受けることになる。そこで、この間に軸に垂直な成分の速度は一旦増加してその後減少し最後の電極の出口で再びゼロに収束する。また、荷電粒子の変位は1番目と2番目の進行波電極における変位履歴を逆にたどるようにして4番目の電極の出口で進行軸に垂直な速度成分がゼロになるとともに軌道も元の進行軸上に戻るようになる。
【0023】
このように、進行波の位相速度と同じ速度を有する荷電粒子は。電極ユニットを通過するたびに元の進行軸の位置に戻るので、このような電極ユニットを1個または複数個備えた荷電粒子質量選別装置は、所定の質量を有する荷電粒子の選別回収率が極めて大きく効率がよい。
【0024】
なお、入り口側2段と出口側2段の間に適当な間隙を備えることが好ましい。入り口側第2段の進行波形成電極の出口端において軸に垂直な速度成分を有する荷電粒子は、この間隙から進行波形成部の外部に満出して、出口側2段の進行波形成電極に進入することができない。一方、進行波と同じ速度を有する粒子は進行軸と平行に飛行するので、全て後段の進行波形成電極に進入して出口では元の進行軸の位置に戻ってスリットを通過するようになる。したがって、上記のような間隙を有する進行波形成部で得られる荷電粒子は質量の幅が狭く純度の高いものとなる。
【0025】
また、出口スリットは、2個以上のスリットを進行軸上に配列して構成するようにしてもよい。
目的の粒子が偏向速度と偏位がない状態で、すなわち進行軸上で軸に沿って飛行して出口スリットに達して外部に取り出され、目的の粒子以外は進行波形成電極の中で中心軌道から逸れて分離される。しかし、進行波と速度の異なる目的外の粒子の中には複雑な軌跡を措いて出口スリットに到達するものもあり得る。出口スリットに入射する目的外粒子は、進行軸に沿って入射することはなく必ずスリットに対して斜めに入射する。
したがって、2個以上のスリットを軸上に配置すれば、前のスリットに斜入射する粒子は後ろのスリットを通過できないので、最後のスリットは軸上を軸に平行な速度で入射したものしか通過できず、目的の粒子のみが分別されることになる。
【0026】
さらに、進行軸上に荷電粒子を加速もしくは減速する加減速電極を備えることが好ましい。
荷電粒子の選別には荷電粒子の速度が余り大きくない方が好ましい。一方、クラスターに何らかの反応を起こさせて利用するためには、選別したクラスターのエネルギーが高いことが好ましい。そこで、クラスターを加減速する加減速電極を選別後の位置に設けて荷電粒子の速度を調整することが好ましい。なお、加減速電極は粒子選別に差し障りがない場合には、選別前や選別領域の中間位置に設置してもよいことはいうまでもない。このようにして、設置スペースを有効に利用することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の荷電粒子質量選別装置を実施の形態に基づき図面を用いて詳細に説明する。
【0028】
【実施例1】
図1は本発明に係る第1実施例の荷電粒子質量選別装置をガスクラスター装置と組み合わせてクラスターイオンをプロセシングしてターゲットに作用させるようにした装置を示すブロック図、図2は第1の実施例の荷電粒子質量選別装置の構成を示すブロック図、図3は荷電粒子質量選別装置の作用を説明する線図、図4は荷電粒子質量選別装置に使用する進行波形成電極の1例を印加電圧の変化と共に説明する図面である。
【0029】
本発明の荷電粒子質量選別装置は、ガスクラスター発生装置と組み合わせて利用することにより、ガスクラスター装置の効用を高めてガスクラスター装置の応用分野をますます広げることになる。
ガスクラスター発生装置は、クラスター生成部1とイオン化加速部2と質量選別部3とプロセス部4を直列に配設したものである。クラスター生成部1は本体11と本体出口に設けられたノズル12とクラスタ生成部1の出口に設けられたスキマー13を主要構成要素とする。2.5atmから4atm程度の加圧ガスを本体11に導入すると、ガス分子同士が擬集してクラスターを形成し、0.1mm程度の細孔の後で管径を徐々に拡大させたガラスノズル11から射出して、スキマ12で多数の分子が凝集したクラスターを選び取って射出する。たとえば、アルゴンガスをクラスター化するときには、原子量500から10000程度に擬集したクラスターを豊富に発生することができる。
【0030】
イオン化加速部2にはイオン化電極21と加速電極22が設けられていて、クラスター生成部1から供給されるクラスタービームに含まれるクラスタをイオン化し、加速電極22の電界により加速して質量選別部3に供給する。クラスターは通常1価の陽イオンを持ち、直流電界で加速されるため、質量に反比例する速度を持って質量選別部3に流入することになる。
質量選別部3には本発明に係る荷電粒子質量選別装置31が備えられて、ここで、目的の質量を有するクラスターイオンが選別されプロセス部4に供給される。プロセス部4では選別されたクラスターに対して所望のプロセスが施され、たとえばターゲット41に堆積するようになっている。
【0031】
荷電粒子質量選別装置31は、図2に示すように、進行波形成電極32と進行波調整装置33と出口スリット34を備える。進行波形成電極32は、進行波調整装置33によって、目的とする荷電粒子の飛行速度と同じ速度で進行する進行波を荷電粒子の進行軸に沿って形成する。
進行波は、進行軸に垂直な方向の電界成分を持ち、たとえば図3に示すような周期的変化をする波形で進行軸方向に位相速度を持った電界変化である。図3に示す進行波は、中心軸がシフトして低電位側でゼロに接する正弦波であって、波形を維持したまま目的の荷電粒子が有する速度V、で進行軸方向に移動するように位相速度Vphを調整することができる。
【0032】
図2に示すように、進行波形成電極32に注入されるクラスタービーム35には速度の異なる成分が多数含まれている。そこで、進行波調整装置33により、進行波の位相速度を質量選別したい荷電粒子の速度と同じ値に合わせると、進行波速度と異なる速度で飛行する荷電粒子36は進行波形成電極32の中を走行する間に進行方向に垂直の方向に加速されて進行軸から外れて、進行軸上に設けられた出口スリット34に到達することができない。
一方、速度が進行波速度と同期する荷電粒子であって、電界がゼロの領域に進入した荷電粒子37は、電界の影響を受けないで進行軸に沿って進行するので、出口スリット34から進行形成電極32の外に取り出される。
こうして、クラスター生成部1で発生させイオン化加速部2でイオン化し加速したクラスターから、進行波の位相速度に対応する質量を持った成分を選別して供給することができる。
なお、進行波の波形は正弦波に限らず、たとえば矩形波や三角波など、ゼロ近傍の極値を有しほぼ正負の一方の極性を持つ周期的な電界変化波形であればよい。
【0033】
図4は、進行波形成電極32の1例を説明する概念図である。
図4に例示した進行波形成電極32は、進行軸を挟み進行軸に沿って多数の電極対Pl,P2,P3,・・・を等間隔で配列して形成したものである。各電極対はそれぞれ進行波調整装置33の電圧端子に接続されていて、隣同士で所定の位相差を持つようにした同じ波形の駆動電圧Vl,V2,V3,・・・が供給されている。
図4の下側に示した図は各電極対に供給する電圧波形Vl,V2,V3,・・・を示す。図では最も単純な正弦波電圧を供給する場合を示している。隣同士の電極対の中心間距離をdとすると、これを目的の荷電粒子の速度V,で割った値 φ=d/v,を印加電圧の間の位相差φとして、各電極対に同じ波形の電圧Vl,V2,V3,・・・を供給すると、進行波形成電極32内の電界は近似的に目的の荷電粒子の進行速度V,と同じ位相速度Vphで進行する正弦波となる。
【0034】
【実施例2】
図5は本発明に係る第2実施例の荷電粒子質量選別装置を粒子軌跡と共に示す概念図、図6はさらに別の態様を説明する概念構成図である。
図5は第2実施例に係る進行波形成部の構造と荷電粒子の軌道を説明する図面である。
第2実施例の進行波形成部は、第1実施例で述べたような進行波形成電極を入り口側2段と出口側2段の4段備えたユニットまたはこうしたユニットを複数備えたものである。
進行波形成電極のユニットの入り口側2段の後ろ側の進行波形成電極における波形は、前段の波形に対してゼロを挟んで面対称の波形の延長波形になっており、さらに、入り口側2段と出口側2段の波形は互いにゼロを挟んで面対称になっている。
【0035】
図5の(1a)はユニットの第1段の進行波形成電極301における電界波形を示し、(1b)は電界波形の位相速度と同期する荷電粒子の軌跡を示す。
第1段の進行波形成電極301は、第1実施例の進行波形成電極と同じものである。第1段進行波形成電極301だけでは、進行波の位相速度と同期する荷電粒子であっても、電界ゼロの近傍部分に対応する位相で進入してきたもの以外は、正の電界の部分に入って力を受けるため進行波形成電極の出口では正の速度成分を持って進行軸から遠ざかるように運動する。したがって、第1実施例の荷電粒子質量選別装置の収率は比較的低い。
【0036】
そこで、図5(2a)に示すように、第1段の進行波形成電極301に第2段の進行波形成電極302を繋いで、供給電圧波形を図中点線で示したような第1段の波形に対してゼロを挟んで面対称になった波形の延長部分の波形を持たせるようにする。すると、第1段の進行波形成電極301を通過してきた位相速度と同じ進行速度を持つ荷電粒子は、それぞれ第2段の進行波形成電極302内で丁度反対の電界作用を受けるので、図5(2b)に示すように、第2段の進行波形成電極302の出口では、進行軸に垂直な速度成分がゼロになって、全ての同速荷電粒子が進行軸と平行に飛行するようになる。
【0037】
さらに、図5(3a)に示すように、出口側2段の進行波形成電極303,304を繋いで、入り口側2段の進行波形成電極301,302で受けた電界作用を相殺するようにする。そのためには、出口側2段の進行波形成電極303,304に供給する電圧波形が、図中点線で示した入り口側2段の進行波形成電極301,302の波形に対してゼロを挟んだ面対称になるようにする。
すると、図5(3b)に示すように、第2段進行波形成電極302の出口で進行軸から離れて分布する進行波位相速度と同期した荷電粒子は、出口側2段の進行波形成電極303,304を通過する間に入り口側進行波形成電極301,302で受けた作用と丁度逆の作用を受けて相殺し再び元の進行軸の位置に戻る。
このように、第2実施例の進行波形成部構造を採用することにより、進行波位相速度と同速の荷電粒子が全て進行軸に集まるので、選別の収率が向上する。
【0038】
図6は、入り口側の進行波形成電極301,302と出口側の進行波形成電極303,304の間に間隙を設けた進行波形成部を示す概念図である。
第2実施例の進行波形成部では、進行波位相速度と同速の荷電粒子は入り口側後段の進行波形成電極302の出口では目的とする荷電粒子の軸と垂直の速度成分がゼロになるので、入り口側後段の進行波形成電極302と出口側前段の進行波電極303の間で直進することになる。したがって、この間に間隙があっても出口側進行波形成電極304の出口では同じように進行軸上に集まり、出口スリット34を通って出力されることになる。
【0039】
なお、目的外の質量の粒子も条件によっては出口スリット34に入射して出力されることがある。
そこで、スリット34と同軸に適当な間隔を空けて同様のスリットを配置することにより、直進する粒子のみを出力するようにすることができる。
目的に合わせて進行波の位相速度を決めた場合は、同速の荷電粒子以外の粒子が出口スリット34の位置で進行軸上にあっても、荷電粒子は軸に垂直な速度成分を持っているので、進行軸に沿って離れた位置にあるもう一つのスリットを共に通過することができない。
従って、スリットを進行軸上に並べて設けることにより、目的外の質量の粒子を排除して選択性を向上させることができる。スリットは2個に限らず3個以上適当数を設けてもよいことはいうまでもない。
【0040】
また、本実施例の進行波形成部は、進行軸上に加速電極を設けてもよい。
本実施例の進行波を用いた粒子の選別では進行波の位相速度を使って選別するので、荷電粒子の速度が余り大きくない方が好ましい。一方、選別したクラスターに何らかの反応を起こさせて利用するためには、クラスターのエネルギーが高いことが好ましい。イオンクラスターを加速する加速電極を出口側進行波形成電極の後ろに設けて、選別後のクラスターを加速して後の工程に供給できるようにしている。
なお、加速電極は、粒子選別に差し障りがない場合には、選別前や選別領域の中間位置に設置してもよい。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の荷電粒子質量選別装置によって、目的とする質量のクラスターを選択して高純度で分離できるようになったので、クラスター発生装置と一緒に使用することにより、特殊な結晶や材料の形成その他、広い分野において任意の質量のクラスターを簡単かつ大量に供給して利用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1実施例の荷電粒子質量選別装置をガスクラスター装置と組み合わせた装置を示すブロック図である。
【図2】第1実施例の荷電粒子質量選別装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本実施例における荷電粒子質量選別装置の作用を説明する線図である。
【図4】本実施例における荷電粒子質量選別装置に使用する進行波形成電極の1例を印加電圧の変化と共に説明する図面である。
【図5】本発明に係る第2実施例の荷電粒子質量選別装置を粒子軌跡と共に示す概念図である。
【図6】第2実施例の別の態様を説明する概念構成図である。
【図7】従来の荷電粒子質量選別装置の例を示す概念図である。
【符号の説明】
1 クラスター生成部
2 イオン化加速部
3 質量選別部
4 プロセス部
11 クラスター生成部本体
12 ノズル
13 スキマー
21 イオン化電極
22 加速電極
31 荷電粒子質量選別装置
32 進行波形成電極
33 進行波調整装置
34 出口スリット
35,36 クラスター
37 目的のクラスター
41 ターゲット
301,302,303,304 進行波形成電極

Claims (6)

  1. 加速電極で加速された荷電粒子を導入して質量に基づいて選別する進行波形成部を備えた荷電粒子質量選別装置であって、該進行波形成部が進行波形成電極と位相速度調整機構と出口スリットを備え、該進行波形成電極が、荷電粒子の進行軸に垂直な偏向電界を持つ進行波電界であって、電界強度がゼロになる部分を有しかつ前記荷電粒子の進行軸に沿って進行する進行波電界を生成し、前記位相速度調整機構が該進行波の位相速度を調整して選別したい荷電粒子の進行速度に同期させることができ、前記出口スリットが前記進行軸上に配置され、該位相速度を選別対象とする荷電粒子の進行速度に合わせることにより、該荷電粒子を質量に基づいて選別して目的の質量を持った荷電粒子を前記出口スリットから回収することを特徴とする荷電粒子質量選別装置。
  2. 前記進行波形成電極が形成する進行波電界は、前記偏向電界と同じ方向に直流バイアスを有し、前記電界強度がゼロになる部分以外は全て正値または全て負値になるものであることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子質量選別装置。
  3. 前記進行波形成電極は、前記進行軸に沿って2個以上の電極対を配置したもので構成し、各電極対が隣接する電極対と位相差を有する交流電界を形成させることによって、該進行波形成電極に選別する荷電粒子の速度と同期する位相速度で移動する進行波電界を形成させるようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の荷電粒子質量選別装置。
  4. 前記進行波形成部が、前記進行波を形成する進行波形成電極を4個備えた電極ユニットまたは該電極ユニットを復数段備えるもので、該電極ユニットの4個は絶対値がほぼ等しく符号が正負負正または負正正負の順に異なる直流バイアスが乗せられた進行波電界を形成するようにして組み合わせたものであって、第1個目の電極に対して第2個目と第3個目の電極が180度ずれた進行波位相となり、第4個目の電極が同位相となるように調整されることを特徴とする請求項2記載の荷電粒子質量選別装置。
  5. 前記出口スリットが2個以上のスリットを前記進行軸上に配列したもので構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の荷電粒子質量選別装置。
  6. 前記荷電粒子進行軸上に前記荷電粒子を進行方向に加速もしくは減速する加減速電極を設置したことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の荷電粒子質量選別装置。
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