JP4251691B2 - 超音波診断装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被検体内に超音波を送受信し診断部位からの反射波によるエコー信号を用いてパルス波計測モード又は連続波計測モードで計測し該診断部位の超音波画像を得る超音波診断装置に関し、特に、連続波計測モードにおいて効率よく高ダイナミックレンジを実現し、血流速検出感度を向上させ、ミラーノイズレベルを低減させることができる超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
超音波診断装置における心機能計測の役割として、断層画像、経時変化画像、血流速計測、容積計測等のリアルタイム又は心電に同期した情報を検出することがある。そして、心機能の評価においては、弁膜症、心不全等の血流速計測として連続波計測モード(以下「STCW(Steerable Continuous Wave)モード」という)による最高血流速の計測が有用であり、これが循環器には必須の計測モードとなっている。ここで、STCWモードは、超音波の送信と受信を連続且つ同時に実行するため、被検体内から戻ってくる超音波受信信号には、骨などの強反射体からの信号と血管内の赤血球などの微弱反射体からの信号とが混在する。このため、STCWモードでは、パルス波計測モード(以下「PW(Pulse Wave)モード」という)に比較して高ダイナミックレンジを必要とする。
【0003】
そして、従来のこの種の超音波診断装置は、被検体内に超音波を送受信する探触子と、この探触子に超音波打出しの送信信号を送る送信部と、上記探触子で受信した受信信号を整相、加算する受信部と、この受信部からの受信信号よりドプラ信号を抽出するドプラ演算部と、このドプラ演算部からのドプラ信号を画像として表示する表示部とを有し、PWモード又はSTCWモードで計測し超音波画像を表示するようになっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような従来の超音波診断装置においては、受信部として一つの整相部と一つの加算部しか無く、PWモード及びSTCWモードにおける受信信号の整相処理を上記一つの整相部で共通して行っていた。この場合、上記整相部で必要とする受信信号の遅延量は、PWモードでは、受信口径と焦点距離と偏向角などにより算出され、例えば数μs程度である。これに対し、STCWモードでは、連続波であるから1位相分の遅延量である数100nsあれば十分である。このように一つの整相部を共通して使用するため、STCWモードにおいて、PWモードで必要とする遅延量となり、不要な遅延量を通過することと、余分な回路によるノイズレベルが増加することなどにより、血流速検出感度の劣化や、ミラーノイズレベルの原因となるものであった。
【0005】
これに対し、STCWモードにおいて、血流速検出感度の向上や、ミラーノイズレベルを低減させるものとして、特開平7−124161号公報記載の発明が提案されている。これは、受信部として、PWモードのパルス波信号用の整相部及び加算部と、STCWモードの連続波信号用の整相部及び加算部とを備えることにより、STCWモードの整相加算部の最適化を実現しようとしたものである。しかし、この場合は、受信部全体としては、二つの整相部と二つの加算部とを備えることとなり、部品数が増大すると共に、実装面積も増大し、且つ消費電力が大きくなり、さらに価格も上昇するものであった。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、STCWモードにおいて効率よく高ダイナミックレンジを実現し、血流速検出感度を向上させ、ミラーノイズレベルを低減させることができる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による超音波診断装置は、被検体内に超音波を送受信する探触子と、この探触子で受信した複数の受信信号を整相、加算する受信部と、この受信部からの受信信号よりドプラ信号を抽出するドプラ演算部とを有し、ドプラ計測モードとして、パルス波計測モード又は連続波計測モードで計測し超音波画像を表示する超音波診断装置において、前記受信部は、前記探触子からの複数の受信信号の各信号に対応して設けられ前記受信信号の各信号系列ごとに直列接続された複数個の連続波モード用遅延処理手段とパルス波モード用遅延処理手段とを有して成り、前記パルス波計測モード及び連続波計測モードの受信信号について整相する整相手段と、前記各信号系列ごとの複数個の連続波モード用遅延処理手段の後段に接続され、前記連続波計測モード時の受信信号について該連続波モード用遅延処理手段で整相後の複数の受信信号を加算して1受信信号に集束させる連続波計測モード用加算手段と、前記各信号系列ごとの複数個のパルス波モード用遅延処理手段の後段に接続され、前記パルス波計測モード時の受信信号について該パルス波モード用遅延処理手段で整相後の複数の受信信号を加算して1受信信号に集束させるパルス波計測モード用加算手段と、を備えたものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明による超音波診断装置の実施の形態を示すブロック図である。この超音波診断装置は、被検体内に超音波を送受信し診断部位からの反射波によるエコー信号を用いて、ドプラ計測モードとして、パルス波計測モード(PWモード)又は連続波計測モード(STCWモード)で計測し該診断部位の超音波画像を得るもので、図1に示すように、探触子1と、送信部2と、受信部3と、ドプラ演算部4と、表示部5とを有して成る。
【0009】
上記探触子1は、被検体内に超音波を送受信するもので、実際に被検体内に向けて超音波を打ち出すと共に該被検体内の診断部位からの反射波を受信する複数の振動子素子6,6,…を一列状に配列して成る。送信部2は、上記探触子1に超音波打出しの送信信号を送り該探触子1を駆動するもので、その内部には送信信号を生成する送波回路を有している。また、受信部3は、上記探触子1で受信した受信信号を整相、加算するもので、探触子1からの複数の受信信号にそれぞれ遅延時間を与えて位相を揃える整相部と、この整相部で整相された複数の受信信号を加算して1受信信号に集束させる加算部とを有している。
【0010】
ドプラ演算部4は、上記受信部3からの受信信号より例えば血流によって周波数偏移を受けたドプラ信号を抽出するもので、図示省略したがその内部には、基準信号発生器と、90度位相器と、2系統のミキサ回路と、2系統の低域通過フィルタなどを有している。また、表示部5は、上記ドプラ演算部4からのドプラ信号を画像として表示するもので、その内部には画像表示回路とカラーの表示器などを有している。
【0011】
ここで、本発明においては、上記受信部3は、前記探触子1からの複数の受信信号の各信号に対応して設けられ前記受信信号の各信号系列ごとに直列接続された複数個の連続波モード用遅延処理手段10 1 〜10 m とパルス波モード用遅延処理手段11 1 〜11 m とを有して成り、前記PWモード及びSTCWモードの受信信号について整相する整相手段(整相部7)と、前記各信号系列ごとの複数個の連続波モード用遅延処理手段10 1 〜10 m の後段に接続され、前記STCWモード時の受信信号について該連続波モード用遅延処理手段10 1 〜10 m で整相後の複数の受信信号を加算して1受信信号に集束させる連続波計測モード用加算手段(連続波モード用加算部9)と、前記各信号系列ごとの複数個のパルス波モード用遅延処理手段11 1 〜11 m の後段に接続され、前記PWモード時の受信信号について該パルス波モード用遅延処理手段11 1 〜11 m で整相後の複数の受信信号を加算して1受信信号に集束させるパルス波計測モード用加算手段(パルス波モード用加算部8)と、を備えている。
【0012】
上記整相部7は、探触子1からの複数の受信信号にそれぞれ遅延時間を与えて位相を揃えるもので、その内部には図2に示すように、複数の受信信号S1,S2,…,Smに対応する連続波モード用遅延処理手段101,102,…,10mと、パルス波モード用遅延処理手段111,112,…,11mとを有している。そして、各連続波モード用遅延処理手段101,102,…,10mと、パルス波モード用遅延処理手段111,112,…,11mとは、上記受信信号S1,S2,…,Smの系列ごとに直列接続されると共に、これらの直列接続された2種類の遅延処理手段の組は複数の受信信号S1,S2,…,Smに対応して並列に配置され、連続波モード用遅延処理手段10 1 〜10 m の組の後段に連続波モード用加算部9が接続され、パルス波モード用遅延処理手段11 1 〜11 m の組の後段にパルス波モード用加算部8が接続されている。
【0013】
上記連続波モード用遅延処理手段101〜10mは、STCWモード時に受信信号について数100nsの遅延処理を行うもので、その内部構成は図3に示すように、複数のコイルとコンデンサ又は抵抗器とコンデンサなどで構成され遅延量を複数タップに分割する第一の遅延線12と、この第一の遅延線12の複数タップを選択するタップセレクタ13と、コイルとコンデンサ又は抵抗器とコンデンサなどで構成され信号に例えば100nsの遅延処理を行う複数個の第二の遅延線141 ,142,143と、これら第二の遅延線141〜143を選択する遅延線セレクタ15とから成る。この回路構成により、タップセレクタ13で第一の遅延線12のタップを選択して細かな遅延量を設定し、遅延線セレクタ15で第二の遅延線141〜143を選択することにより、探触子1からの複数の受信信号に対応する遅延量を通過させて整相を行うようになっている。
【0014】
また、パルス波モード用遅延処理手段111〜11mは、PWモード時に受信信号について数μs程度の遅延処理を行うもので、その内部構成は図4に示すように、コイルとコンデンサ又は抵抗器とコンデンサなどで構成され信号に例えば数μsの遅延処理を行う複数個の第三の遅延線161,162,163,164,165と、これら第三の遅延線161〜165を選択する遅延線セレクタ15’とから成る。この回路構成により、遅延線セレクタ15’で第三の遅延線161〜165を選択することにより、探触子1からの複数の受信信号に対応する遅延量を通過させて整相を行うようになっている。
【0015】
パルス波モード用加算部8は、PWモード時の受信信号について上記整相部7で整相後の複数の受信信号を加算して1受信信号に集束させるもので、オペアンプや抵抗器などで構成される電圧加算器、又はトランジスタや抵抗器などで構成される電流加算器から成り、図2に示すように、各パルス波モード用遅延処理手段111〜11mからの受信信号を入力して加算するようになっている。そして、加算後の受信信号は、ドプラ演算部4へ送られる。
【0016】
また、連続波モード用加算部9は、STCWモード時の受信信号について上記整相部7で整相後の複数の受信信号を加算して1受信信号に集束させるもので、同じくオペアンプや抵抗器などで構成される電圧加算器、又はトランジスタや抵抗器などで構成される電流加算器から成り、図2に示すように、各連続波モード用遅延処理手段101〜10mからの受信信号を入力して加算するようになっている。そして、加算後の受信信号は、ドプラ演算部4へ送られる。
【0017】
次に、このように構成された超音波診断装置の受信部3における整相、加算の動作について説明する。まず、図2において、STCWモード時は、探触子1からの複数の受信信号S1〜Smは、それぞれ連続波モード用遅延処理手段101〜10mに入力し、例えば数100nsの遅延処理が行われて位相が揃えられる。そして、この整相された受信信号S1〜Smは、上記連続波モード用遅延処理手段101〜10mの後段に接続された連続波モード用加算部9に入力し、加算して1受信信号に集束される。
【0018】
次に、PWモード時は、探触子1からの複数の受信信号S1〜Smは、それぞれ連続波モード用遅延処理手段101〜10mを通ってパルス波モード用遅延処理手段111〜11mに入力し、上記連続波モード用遅延処理手段101〜10mによる遅延時間が与えられると共にパルス波モード用遅延処理手段111〜11mによる遅延時間が与えられ、例えば数μs程度の遅延処理が行われて位相が揃えられる 。そして、この整相された受信信号S1〜Smは、上記パルス波モード用遅延処理手段111〜11mの後段に接続されたパルス波モード用加算部8に入力し、加算して1受信信号に集束される。
【0019】
そして、上記STCWモードの特徴を利用した整相方式を、図5及び図6を参照して説明する。図5において、探触子1の複数の振動子素子6のうちのn番目の素子をn、上記探触子1から打ち出される超音波ビームの焦点をF、連続波周期をT、上記n番目の振動子素子nからの超音波の伝達時間をTFn、基準となる振動子素子からの超音波の参照伝達時間をTrefとすると、PWモード整相用の遅延量Del(n)は次式で表される。
Del(n)=Tref−TFn
【0020】
また、STCWモードにおいて、連続波の特徴である一定の周期の繰り返しであることを利用し、伝達時間と連続波周期Tの剰余が各振動子素子6の位相差Δφとなり、この位相差ΔφをSTCWモード整相用の遅延量とすると、遅延量Δφは次式で表される。
Δφ=Del(n)−aT
ただし、aはΔφ<Tとする自然数
【0021】
上記において、STCWモード整相用の遅延量Δφは、PWモード整相用の遅延量Del(n)と比較して約1/a以下の遅延量で整相を実現することができる。実際の超音波診断装置においては、a=5〜20程度であり、少ない個数の遅延線12,14の通過で整相することができる。
【0022】
図2に示す整相部7において、STCWモード時の整相動作では、探触子1からの複数の受信信号S1〜Smはパルス波モード用遅延処理手段111〜11mを通過せず、連続波モード用遅延処理手段101〜10mから直接連続波モード用加算部9に入力して加算されるので、パルス波モード用遅延処理手段111〜11m内の不要な遅延量を通過したり、余分な回路を通過することがない。したがって、不要なノイズの混入がなく、全体のシステムノイズレベルが低減して、整相部7の高ダイナミックレンジ化を図ることができる。また、STCWモード専用の連続波モード用加算部9を有することにより、上記整相部7の高ダイナミックレンジ化に対応したダイナミックレンジを実現することができる。
【0023】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されたので、探触子からの複数の受信信号の各信号に対応して設けられ前記受信信号の各信号系列ごとに直列接続された複数個の連続波モード用遅延処理手段とパルス波モード用遅延処理手段とを有して成る整相手段により、パルス波計測モード及び連続波計測モードの受信信号について整相し、前記各信号系列ごとの複数個の連続波モード用遅延処理手段の後段に接続された連続波計測モード用加算手段により、前記連続波計測モード時の受信信号について該連続波モード用遅延処理手段で整相後の複数の受信信号を加算して1受信信号に集束させ、前記各信号系列ごとの複数個のパルス波モード用遅延処理手段の後段に接続されたパルス波計測モード用加算手段により、前記パルス波計測モード時の受信信号について該パルス波モード用遅延処理手段で整相後の複数の受信信号を加算して1受信信号に集束させることができる。この場合、連続波計測モード時の整相動作では、探触子からの複数の受信信号はパルス波モード用遅延処理手段を通過せず、連続波モード用遅延処理手段から直接連続波モード用加算手段に入力して加算されるので、パルス波モード用遅延処理手段内の不要な遅延量を通過したり、余分な回路を通過することがない。したがって、不要なノイズの混入がなく、全体のシステムノイズレベルが低減して、整相手段の高ダイナミックレンジ化を図ることができる。また、前記整相手段で整相後の受信信号についてはパルス波計測モード用加算手段及び連続波計測モード用加算手段を別個に備えたことにより、連続波計測モードにおいて効率よく高ダイナミックレンジを実現し、血流速検出感度を向上させ、ミラーノイズレベルを低減させることができる。また、受信部全体として、部品数が減少すると共に、実装面積も減少し、且つ消費電力が小さくなり、さらに価格も低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による超音波診断装置の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】上記超音波診断装置における整相部の内部構成を示すブロック図である。
【図3】上記整相部における連続波モード用遅延処理手段の内部構成を示すブロック図である。
【図4】上記整相部におけるパルス波モード用遅延処理手段の内部構成を示すブロック図である。
【図5】上記整相部においてSTCWモードの特徴を利用した整相方式を説明するための超音波ビーム図である。
【図6】上記整相部においてSTCWモードの特徴を利用した整相方式を説明するための波形図である。
【符号の説明】
1…探触子
2…送信部
3…受信部
4…ドプラ演算部
5…表示部
6…振動子素子
7…整相部
8…パルス波モード用加算部
9…連続波モード用加算部
101〜10m…連続波モード用遅延処理手段
111〜11m…パルス波モード用遅延処理手段
1〜Sm…受信信号

Claims (1)

  1. 被検体内に超音波を送受信する探触子と、この探触子で受信した複数の受信信号を整相、加算する受信部と、この受信部からの受信信号よりドプラ信号を抽出するドプラ演算部とを有し、ドプラ計測モードとして、パルス波計測モード又は連続波計測モードで計測し超音波画像を表示する超音波診断装置において、
    前記受信部は、前記探触子からの複数の受信信号の各信号に対応して設けられ前記受信信号の各信号系列ごとに直列接続された複数個の連続波モード用遅延処理手段とパルス波モード用遅延処理手段とを有して成り、前記パルス波計測モード及び連続波計測モードの受信信号について整相する整相手段と、前記各信号系列ごとの複数個の連続波モード用遅延処理手段の後段に接続され、前記連続波計測モード時の受信信号について該連続波モード用遅延処理手段で整相後の複数の受信信号を加算して1受信信号に集束させる連続波計測モード用加算手段と、前記各信号系列ごとの複数個のパルス波モード用遅延処理手段の後段に接続され、前記パルス波計測モード時の受信信号について該パルス波モード用遅延処理手段で整相後の複数の受信信号を加算して1受信信号に集束させるパルス波計測モード用加算手段と、を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
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