以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1は、本発明の一実施形態に係るクリーニングシステム100の一例を示す構成図である。
このクリーニングシステム100は、販売店端末30(本発明の第1端末装置に相当する)、支部端末40(本発明の第2端末装置に相当する)、配送業者端末50、及び本部サーバ10(本発明のサーバ装置に相当する)がインターネット102(本発明のネットワークの一例)を介して通信可能に接続されてなるものである。ここで、販売店端末30は、衣類を販売する複数の販売店にそれぞれ設置されている端末装置である。支部端末40は、複数の支部にそれぞれ設置されている端末装置である。この支部は、本部からの指示に従って、販売店から搬入された衣類を洗濯装置60(図5参照)により洗濯するものである。配送業者端末50は、販売店の顧客が当該販売店に持ち込んだ衣類を支部へ配送する配送業者が有する端末装置である。本部サーバ10は、各支部を統括する本部に設置されたサーバである。なお、図1には便宜上、4台の支部端末40、1台の配送業者端末50、及び3台の販売店端末30が示されているが、これらの数は図1に示されているものに限定されるものではない。また、販売店端末30、支部端末40、配送業者端末50、及び本部サーバ10の間で行われる通信は、HTTP(hypertext transfer protocol)プロトコルを用いて行われる。
図2は、本部サーバ10の構成例を示すブロック図である。
本部サーバ10の制御部11は、本部サーバ10の全体動作を制御するものである。制御部11は、図2が示すように、CPU(Central Processing Unit)17、ROM(Read Only Memory)18、RAM(Random Access Memory)19を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。この制御部11は、バス16を介してLAN I/F(Local Area Network Interface)12、HDD(Hard Disk Drive)13、操作部14、及び表示部15と接続されている。
ROM18には、CPU17が本部サーバ10の各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。RAM19は、CPU17が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記憶する記憶領域又は作業領域として使用される。これらCPU17、ROM18、及びRAM19から構成される制御部11が、本発明の第1受信手段、生成手段、第2受信手段、及び第2送信手段に相当する。
LAN I/F12は、LAN21と本部サーバ10とを通信可能に接続するインターフェースである。LAN21はインターネット102に接続されており、本部サーバ10はLAN I/F12を介してインターネット102に接続されている。HDD13は、大容量のメモリ領域を有する記憶媒体を内蔵する記憶装置である。HDD13は、本実施形態においては管理テーブル(以下、「電子カルテ」と称される。)23を格納している(図16参照)。なお、この電子カルテ23については後に詳述される。操作部14は、本部サーバ10に対する動作指示や設定等の操作入力を受け付けるものであり、キーボードやマウス等からなる。表示部15は、各種画面情報を表示するものであり、液晶ディスプレイなどからなる。
図3は、販売店端末30の構成例を示すブロック図である。
販売店端末30は、例えばパーソナルコンピュータ等からなる。制御部31は、販売店端末30の全体動作を制御するものである。制御部31は、図3が示すように、CPU37、ROM38、RAM39を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。この制御部31は、バス36を介してLAN I/F32、HDD33、操作部34(本発明の第1入力受付手段に相当する)、表示部35、及びリーダライタ52と接続されている。
ROM38には、CPU37が販売店端末30の各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。RAM39は、CPU37が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記憶する記憶領域又は作業領域として使用される。これらCPU37、ROM38、及びRAM39から構成される制御部31が、本発明の第1送信手段として機能する。
LAN I/F32は、LAN29と販売店端末30とを通信可能に接続するインターフェースである。LAN29はインターネット102に接続されており、販売店端末30はLAN I/F32を介してインターネット102に接続されている。HDD33は、大容量のメモリ領域を有する記憶媒体を内蔵する記憶装置である。操作部34は、販売店端末30に対する動作指示や設定等の操作入力を受け付けるものであり、キーボードやマウス等からなる。表示部35は、各種画面情報を表示するものであり、液晶ディスプレイなどからなる。リーダライタ52は、ICタグ55に対して無線通信により情報を読み書きするものである。リーダライタ52は、本実施形態においては、無線通信によりICタグ55に第1識別情報を第2識別情報として書き込む。なお、第1識別情報および第2識別情報については後述される。ICタグ55は、顧客の衣類に付着されるものである。販売店に持ち込まれた顧客の衣類は、このICタグ55が付着された状態で販売店から最寄りも支部へ例えば配送業者により配送される。
配送業者端末50(図1参照)は、販売店から支部へ顧客の衣類を配送する配送業者が有する端末装置である。配送業者端末50は、販売店端末30と同様の構成を有するパーソナルコンピュータであるので、ここでの詳細な説明は省略する。
図4は、支部端末40の構成例を示すブロック図である。
支部端末40は、各支部に設置された端末装置であり、例えばパーソナルコンピュータ等からなる。制御部41は、支部端末40の全体動作を制御するものである。制御部41は、図4が示すように、CPU47、ROM48、RAM49を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。この制御部41は、バス46を介してLAN I/F42、HDD43、操作部44、表示部45、及びリーダライタ57(本発明の第2入力受付手段に相当する)と接続されている。
ROM48には、CPU47が支部端末40の各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。RAM49は、CPU47が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記憶する記憶領域又は作業領域として使用される。これらCPU47、ROM48、及びRAM49から構成される制御部41が、本発明の第3送信手段、第3受信手段、制御手段、判断手段、及び第4送信手段として機能する。
LAN I/F42は、LAN28と支部端末40とを通信可能に接続するインターフェースである。LAN28はインターネット102に接続されており、支部端末40はLAN I/F42を介してインターネット102に接続されている。LAN28には、販売店から搬入された衣類を洗濯する洗濯装置60(図5参照)が接続されている。この洗濯装置60は、支部端末40からの指示に従って動作する。すなわち、洗濯装置60の動作は制御部41により制御される。HDD43は、大容量のメモリ領域を有する記憶媒体を内蔵する記憶装置である。操作部44は、支部端末40に対する動作指示や設定等の操作入力を受け付けるものであり、キーボードやマウス等からなる。表示部45は、各種画面情報を表示するものであり、液晶ディスプレイなどからなる。リーダライタ57は、ICタグ55に対して無線通信により情報を読み書きするものである。
図5は、洗濯装置60の模式図である。
洗濯装置60は、洗濯槽ユニット61、支持装置62、回転駆動装置63(本発明の回転機構に相当する)と、洗浄液供給装置64、及び変圧装置66を備える。支持装置62は、洗濯槽ユニット61を支持するものである。回転駆動装置63は、洗濯槽ユニット61を回転させるものである。洗浄液供給装置64は、洗濯槽ユニット61に洗浄液を供給すると共に洗濯槽ユニット61内の洗浄液に強制的に緩やかな流れを生じさせるものである。変圧装置66は、洗濯槽ユニット61の内部圧力を変化させるものである。なお、図5には示されていないが、洗濯装置60は、制御装置105(図9参照)を備えている。制御装置105は、回転駆動装置63、洗浄液供給装置64、及び変圧装置66の作動を制御する。この制御装置105の構成については、後述される。
洗濯槽ユニット61は、ケーシング67(本発明のアウターケーシングに相当する)とフレーム体68(本発明の円筒籠状洗濯槽に相当する)とを備えている。フレーム体68は、ケーシング67の内部に配置されており、ケーシング67によって囲繞されている。ケーシング67は、例えばステンレス鋼やアルミニウム合金等の金属から構成され得る。ケーシング67は、図5が示すように、前面に扉70を備えている。この扉70の右側の端部がヒンジ95を介してケーシング67に取り付けられている。したがって、扉70は、ヒンジ95を中心として左右方向に回動することによってケーシング67を開閉する。また、扉70は、把手65を備えている。この洗濯装置60のユーザが把手65を操作することによって、扉70が開閉される。扉70は、ケーシング67の前面を液密的に開閉する。この扉70が閉じられた後に、後述のように洗浄液がケーシング67に供給される。これにより、ケーシング67内に洗浄液が充填密封される。
ケーシング67は、図5が示すように円筒容器状に形成されている。ただし、ケーシング67は、他の形状に形成されていてもよいことは勿論である。要するに、ケーシング67は、洗浄液を充填密封し、且つフレーム体68を収容することができる形状に形成されていればよい。なお、ケーシング67の扉70は、当該ケーシング67の内部を見ることができる窓部を備えていてもよい。この窓部には、例えば透明のアクリル板等が嵌め込まれているのが好ましい。この窓部が設けられることにより、外部から洗濯の様子が観察される。
支持装置62は、ケーシング67に取り付けられている。支持装置62は、ケーシング67を安定的に支持している。この支持装置62もステンレス鋼やアルミニウム等の金属から構成されている。支持装置62は、複数の柱や梁が組み合わされたラーメン構造を有する支持フレームとして構成されている。ただし、支持装置62は、支持フレームに加えてコイルバネおよびダンパを備えていてもよい。この場合には、ケーシング67は、これらコイルバネおよびダンパを介して支持フレームに支持され、これにより、ケーシング67に周期的な外力が作用した場合であっても、ケーシング67が安定的に支持される。また、ケーシング67は、その中心軸Nが水平になるように支持装置62に支持されている。なお、ケーシング67の中心軸Nは、洗濯槽ユニット61の中心軸と一致し、且つフレーム体68の中心軸69(図6参照)と一致している。
図6は、フレーム体68の斜視図である。図7は、フレーム体68の断面図である。図8は、図7における要部拡大図である。
フレーム体68は、図6が示すように、円筒形に形成されている。フレーム体68は、ケーシング67の内部に配置されている(図5参照)。すなわち、フレーム体68は、ケーシング67に対して入れ子状に嵌め込まれている。フレーム体68の内部は、衣類が収容される洗濯物収容室を構成している。フレーム体68は、籠状に形成されている。具体的には、フレーム体68の周面86に複数のスリット87(87a〜87f)が設けられている。これらのスリット87は、フレーム体68の周面86を径方向に貫通している。したがって、ケーシング67内に供給された洗浄液は、スリット87を通ってフレーム体68に自由に出入りすることができる。これらのスリット87は、図6が示すように、フレーム体68の軸方向に延びている。スリット87の数、幅寸法及び長さ寸法は、適宜設定される。
上記スリット87に代えてフレーム体68に多数のパンチング孔が設けられていてもよい。フレーム体68が骨組構造を備えていてもよい。要するに、洗浄液がフレーム体68に自由に出入りすることができるように、フレーム体68が籠状に形成されていればよい。
フレーム体68は、中心軸69を備えている。この中心軸69は、フレーム体68の後端面88(図6参照)に突設されている。前述のように、この中心軸69の中心は、上記中心軸N(図5参照)と一致している。すなわち、フレーム体68は、ケーシング67内に当該ケーシング67と同芯状に配置されている。図5が示すように、中心軸69は、図示されていない軸受により支持されている。これにより、フレーム体68は、ケーシング67の内部で上記中心軸Nの周りに自在に回転することができるようになっている。この中心軸69は、後述の駆動モータ73(図9参照)に連結されている。なお、本実施形態では、中心軸69が軸受により支持されることによって、フレーム体68が片持ち状に支持されている。ただし、上記中心軸69がケーシング67の扉70側にも設けられ、フレーム体68が両端支持されていてもよい。
図6〜図8が示すように、フレーム体68の内周面89(本発明の波形凹凸曲面に相当する)は、波形の凹凸曲面となっている。この凹凸形状は、フレーム体68の内周面89に複数の突条90が形成されることによって構成されている。これらの突条90は、フレーム体68の軸方向に延びている。本実施形態では、多数の突条90が上記内周面89に設けられており、各突条90は、当該内周面89の周方向に均等に並設されている。突条90は、内周面89と一体的に形成されてもよい。ただし、突条90は、フレーム体68とは別の部材として構成され、当該フレーム体68に取り付けられていてもよい。例えば、サインカーブ状に湾曲形成された薄肉プレートがフレーム体68の内周面89に固定されることにより、上記突条90が形成されてもよい。このような薄肉プレートが採用されることにより、フレーム体68の製造コストが低減される。
図7が示すように、本実施形態では、フレーム体68の内周面89にサインカーブ状に湾曲形成された薄肉プレート110〜115が取り付けられている。各薄肉プレート110〜115は、樹脂又は金属からなる。各薄肉プレート110〜115の外形形状は、矩形状である。各薄肉プレート110〜115は可撓性を備えている。したがって、各薄肉プレート110〜115は、フレーム体68の内周面89に沿うように容易に変形することができる。
フレーム体68に設けられたスリット87a〜87fの位置及びフレーム体68の内周面89の形状は、図7が示す通りである。すなわち、本実施形態では、フレーム体68に6つのスリット87a〜87fが設けられており、各スリット87a〜87fの幅寸法(フレーム体68の周方向の長さ)は、フレーム体68の中心を基準とする角度α(図7参照)により決定されている。本実施形態では、この角度αは、8.80°(degree)に設定されている。また、各スリット87a〜87f間の距離(フレーム体68の周方向の長さ)は、フレーム体68の中心を基準とする角度β(図7参照)及び角度γ(図7参照)により決定されている。
本実施形態では、スリット87aとスリット87bとの間の距離、スリット87bとスリット87cとの間の距離、スリット87cとスリット87dとの間の距離、スリット87eとスリット87fとの間の距離およびスリット87fとスリット87aとの間の距離は角度βにより決定される。この角度βは、55.16°に設定されている。また、スリット87dとスリット87eとの間の距離は角度γにより決定される。この角度γは、31.29°に設定されている。
図7が示すように、薄肉プレート110は、フレーム体68の内周面89のうちスリット87aとスリット87bとの間の領域を覆うように配置されている。薄肉プレート111は、フレーム体68の内周面89のうちスリット87bとスリット87cとの間の領域を覆うように配置されている。薄肉プレート112は、フレーム体68の内周面89のうちスリット87cとスリット87dとの間の領域を覆うように配置されている。薄肉プレート113は、フレーム体68の内周面89のうちスリット87dとスリット87eとの間の領域を覆うように配置されている。薄肉プレート114は、フレーム体68の内周面89のうちスリット87eとスリット87fとの間の領域を覆うように配置されている。薄肉プレート115は、フレーム体68の内周面89のうちスリット87fとスリット87aとの間の領域を覆うように配置されている。
スリット87(87a〜87f)の数、角度α、β、γの値は、種々の設計変更が可能である。たとえば、スリット87は、フレーム体68の内周面89に周方向に均等に配置されていてもよい。スリット87の数は特に限定されるものではないが、4〜10程度に設定され得る。その場合、スリット87の数に対応させて上記各角度α、β、γが決定される。スリット87が均等に配置される場合は、上記角度βおよび角度γは、β=γとなる。
前述のように、このスリット87に代えて、フレーム体68の側面に複数のパンチング孔が形成されてもよい。この場合は、単一の薄肉プレートがフレーム体68の内周面89に配置されてもよい。この薄肉プレートも樹脂や金属から構成され、フレーム体68の内周面89を覆うように取り付けられる。そして、上記パンチング孔は、フレーム体68と共に当該薄肉プレートを貫通して設けられる。もっとも、当該薄肉プレートが設けられず、フレーム体68の内周面89が上記波形凹凸曲面に形成されていてもよいことは勿論である。
フレーム体68の内周面89の形状、すなわち上記各突条90の表面によって構成される上記凹凸形状は、図8が示すように、径方向に凹凸するサインカーブを構成している。ただし、この内周面89の凹凸形状は、正確なサインカーブでなくてもよい。この内周面89の凹凸形状は、例えば半円形の曲面が周方向に連続することにより、滑らかなサインカーブ状に形成されていてもよい。本実施形態では、フレーム体68の内径寸法Dは、650mmに設定されている。この内径寸法Dは、250mm〜1000mmの範囲で設定されるのが好ましい。ただし、この内径寸法Dは、300mm〜850mmの範囲で設定されるのがより好ましい。また、この内径寸法Dは、600mm〜850mmの範囲、及び300mm〜500mmの範囲で設定されるのがなお一層好ましい。このような範囲でフレーム体68の内径寸法Dが設定されることによる作用効果については、後述される。
また、上記内周面89の波形の高さ寸法hおよびピッチpは、フレーム体68の内径寸法Dに対して一定の割合となるように設定されている。具体的には、本実施形態では、上記高さ寸法hは、19.5mmに設定され、上記ピッチpは、62.4mmに設定されている。すなわち、高さ寸法hは、上記内径寸法Dの3%に設定されており、ピッチpは、上記内径寸法Dを直径とする仮想円の円周長さL(πD)の3%に設定されている。もっとも、この高さ寸法hおよびピッチpは、上記値に限定されるものではない。高さ寸法hは、上記内径寸法Dの2.0%〜9.0%の範囲で設定される。また、ピッチpは、上記円周長さL(πD)の2.0%〜9.0%に設定される。ただし、上記高さ寸法hは、上記内径寸法Dの3.0%〜6.0%の範囲で設定されるのが特に好ましい。また、上記ピッチpは、上記内径寸法Dを直径とする仮想円の円周長さL(πD)の3.0%〜6.0%に設定されるのが特に好ましい。
図5及び図6が示すように、回転駆動装置63は、上記駆動モータ73(図9参照)を有する。この駆動モータ73は、ケーシング67の端面71に取り付けられている。駆動モータ73の駆動軸74は、上記フレーム体68の中心軸69と連結されている。したがって、駆動モータ73が作動することによって、ケーシング67内でフレーム体68が上記中心軸Nの周りに回転される。なお、駆動モータ73が正転することによってフレーム体68がケーシング67内で正転(一方向に回転)し、駆動モータ73が逆転されることによってフレーム体68がケーシング67内で逆転(他方向に回転)する。
本実施形態では、フレーム体68は、毎分15回転程度で回転される。ただし、フレーム体68の回転速度は、毎分5回転程度から45回転程度に設定され得る。特に、フレーム体68の回転速度は、毎分13回転程度から毎分30回転程度に設定されるのが好ましい。換言すれば、フレーム体68は、内周面89の周速が毎分10m以上毎分90m以下となるように回転され、特に、毎分28m以上毎分57m以下となるように回転されるのが好ましい。
フレーム体68が上記速度で回転され、上記高さ寸法hおよびピッチpが上記値に設定されることによる作用効果については、後述される。
図5が示すように、洗浄液供給装置64は、予め洗浄液がストックされるタンク75と、タンク75に接続された吸入配管76と、吸入配管76が接続されたポンプ77と、ポンプ77に接続された供給配管78と、ケーシング67に接続されたドレン配管79と、ドレン配管79と吸入配管76とを接続するバイパス配管80とを備えている。各配管76、78、79、80は、一般に使用されているステンレス鋼からなるパイプが採用される。吸入配管76、ドレン配管79及びバイパス配管80は、それぞれ当該配管を開閉するバルブ81〜83を備えている。ポンプ77は、タンク75内の洗浄液を吸い上げてケーシング67に送給するほか、後述のように洗浄液を循環させる。なお、洗浄液としては、典型的には水が採用され得る。洗浄液には、一般に界面活性剤が混合される。もっとも、洗浄液として、石油系溶剤、有機系溶剤も採用され得る。
洗浄液供給装置64が後述のようにケーシング67内の洗浄液を循環させる場合には、洗浄液は一旦ケーシング67の外部に引き出される。この引き出された洗浄液は、そのまま当該ケーシング67内に戻される。このとき、洗浄液は、所定の圧力でケーシング67内に戻される。したがって、ケーシング67内に洗浄液の流れが形成されることになる。仮にこの流れが強い場合には、ケーシング67内で洗浄液が強い渦を形成し、衣類を構成する生地に悪影響を与えることも予想される。ただし、本実施形態では、この洗浄液の流れは緩やかであり、この洗浄液の流れによって衣類を構成する生地が損傷を受けることはない。さらに、後述されるように、この洗浄液の流れによって、衣類がケーシング67の中央部に強制的に位置決めされ得る。なお、ケーシング67内の洗浄液は、前述のように循環されるほかに、ケーシング67に供給されながら同時にケーシング67から排出されてもよい。
変圧装置66は、本実施形態ではシリンダ・ピストン装置からなる。このシリンダ・ピストン装置が上記ケーシング67に接続されている。したがって、上記ピストンが作動することによって、洗濯槽ユニット61の内部圧力、すなわちケーシング67内の内部圧力が変動することになる。もっとも、変圧装置66は、シリンダ・ピストン装置に限定されるものではなく、要するにケーシング67内の圧力(洗浄液の圧力)を変化させることができるものであればよい。
図9は、上記制御装置105の構成例を示すブロック図である。
この制御装置105は、回転駆動装置63の駆動モータ73、洗浄液供給装置64のポンプ77及びバルブ81〜83、及び変圧装置66の作動等を総合的に制御する。そのため、上記ケーシング67に液位センサ125が設けられ、上記フレーム体68にロータリーエンコーダ126及び回転速度センサ127等が設けられている。上記液位センサ125は、上記ケーシング67内の洗浄液の量を検出する。上記ロータリーエンコーダ126は、上記フレーム体68の回転角度を検出する。上記回転速度センサ127は、上記フレーム体68の回転速度を検出する。
制御装置105は、CPU106、ROM107、RAM108、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)109を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。制御装置105は、バス119を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)120に接続されている。
ROM107は、洗濯装置60の各種動作を制御するためのプログラム等を格納している。RAM108は、CPU106が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記憶する記憶領域又は作業領域として使用される。また、EEPROM109は、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等を記憶する。
ASIC120は、CPU106からの指令にしたがい、駆動モータ73に通電する信号等を生成する。この信号は、駆動モータ73を駆動させる駆動回路128に送られ、この駆動回路128を介して駆動信号が駆動モータ73に通電される。このようにして、駆動モータ73の回転制御が行われ、その結果、上記フレーム体68の回転が制御される。駆動回路128は、駆動モータ73を駆動させるものであり、ASIC120からの出力信号を受けて、駆動モータ73を回転するための電気信号を形成する。この電気信号を受けて駆動モータ73が回転する。
ASIC120は、CPU106からの指令にしたがい、ポンプ77に通電する信号等を生成する。この信号は、ポンプ77を駆動させる駆動回路129に付与され、この駆動回路129を介して駆動信号がポンプ77に通電される。このようにして、ポンプ77の回転制御が行われ、その結果、上記ケーシング67への洗浄液の供給が制御される。駆動回路129は、ポンプ77を駆動させるものであり、ASIC120からの出力信号を受けて、ポンプ77を回転するための電気信号を形成する。この電気信号を受けてポンプ77が回転する。
ASIC120は、CPU106からの指令にしたがい、変圧装置66を駆動する信号等を生成する。この信号は、変圧装置66を駆動させる駆動回路130に送られ、この駆動回路130を介して変圧装置66に送信される。このようにして、変圧装置66の制御が行われ、その結果、上記ケーシング67内の洗浄液の圧力が制御される。駆動回路130は、変圧装置66を作動させるものであり、ASIC120からの出力信号を受けて、変圧装置66を作動するための電気信号を形成する。この電気信号を受けて変圧装置66が作動する。
ASIC120は、CPU106からの指令にしたがい、バルブ81〜83に通電する信号等を生成する。この信号は、各バルブ81〜83のそれぞれの駆動回路131〜133に付与され、これら駆動回路131〜133を介して駆動信号が各バルブ81〜83に通電される。このようにして、各バルブ81〜83の開閉制御が行われ、その結果、上記ケーシング67への洗浄液の供給及び排出が制御される。各駆動回路131〜133は、それぞれ各バルブ81〜83を駆動させるものであり、ASIC120からの出力信号を受けて、各バルブ81〜83を開閉するための電気信号を形成する。この電気信号を受けて各バルブ81〜83が開閉する。
図10は、洗濯装置60による洗濯の要領を模式的に示す図である。この洗濯装置60は、次の要領で衣類の洗濯を行う。
図10(a)が示すように、衣類85が洗濯槽ユニット61の内部に収容される。具体的には、ケーシング67に設けられた上記扉70(図5参照)が開けられ、衣類85がフレーム体68の内部に投入される。この衣類85を洗濯槽ユニット61に収容する作業は、例えば、図示されていない洗濯物搬送装置等によって自動で行われてもよい。その場合、上記制御装置105(図9参照)がこの洗濯物搬送装置等の作動を制御する。衣類85が洗濯槽ユニット61内に収容されたときは、バルブ81〜83は、すべて閉じられている。衣類85の投入作業と並行して、タンク75内において洗浄液の調合作業が行われてもよい。前述のように、本実施形態では、洗浄液としては水が採用され、この水と洗剤(界面活性剤)とが調合される。もっとも、洗浄液として水のみが使用されてもよいことは勿論である。
図10(b)が示すように、洗濯槽ユニット61に洗浄液が充填される。具体的には、洗浄液供給装置64が作動し、洗浄液が洗濯槽ユニット61内に送給される。より詳細には、バルブ81が開かれると共にバルブ82、83が閉じられ、ポンプ77が作動する。これにより、洗浄液がタンク75から吸い上げられ、吸入配管76及び供給配管78を通ってケーシング67内に送給される。ポンプ77は、洗浄液によってケーシング67が満たされるまで洗浄液を送給する。すなわち、この洗浄液は、ケーシング67内に充填されるまで送給される。本実施形態では、ケーシング67は、図10には示されていない液位センサ125(図9参照)を備えている。この液位センサ125は、ケーシング67に供給された洗浄液の液位をセンシングするものである。液位センサ125としては、例えば、洗浄液の液位を直接検出するセンサであってもよいし、洗浄液の圧力を検出する圧力センサであってもよい。上記洗浄液は、ケーシング67内に充填されるまで供給されるから、液位センサ125としては、上記圧力センサが採用されるのが好ましい。
ケーシング67に充填された洗浄液は密封される。衣類85は、ケーシング67内に充填密封された洗浄液中に配置される。そのため、衣類85は、フレーム体68内で無重力に近い状態となる。詳述すれば、フレーム体68内の衣類85には、重力が作用すると同時に、当該衣類85の体積及び洗浄液の密度に応じた浮力が作用する。しかも、洗浄液がケーシング67内に充填されているので、洗浄液はフレーム体68内を満たしている。したがって、衣類85は、フレーム体68内で、ゆらゆらと漂う状態となる。すなわち、上記「無重力に近い状態」とは、「無重力状態」を意味するものではなく、上記のように衣類85が洗浄液中に漂う状態を意味する。つまり、衣類85は無重力に近い状態でソフトに洗浄される。
続いて、図10(c)が示すように、バルブ81〜83が閉じられ、洗濯槽ユニット61が回転される。具体的には、回転駆動装置63(図5参照)が作動し、洗濯槽ユニット61が上記中心軸Nの周りに回転される。より詳細には、回転駆動装置63の駆動モータ73が作動し、フレーム体68が上記中心軸Nを回転中心としてケーシング67内で回転される。フレーム体68が回転されることにより、上記洗浄液はフレーム体68内で当該回転方向に回転する。
この洗濯装置60では、前述のように、フレーム体68の中心軸69が水平方向に配置されているから、フレーム体68は、いわゆる横型洗濯槽として機能する。図6〜図8が示すように、フレーム体68の内周面89は、サインカーブ状の波形凹凸曲面であり、フレーム体68の内径寸法D、フレーム体68の内周面89が形成する波形の高さ寸法hおよびピッチp並びにフレーム体68の回転速度が前述の範囲で設定されることにより、次のような作用効果が奏される。
仮にフレーム体68の内径寸法Dが非常に小さいとすれば、この洗濯装置60が洗濯の対象とし得る衣類85のサイズも非常に小さくなる。このため、たとえば、仮に上記内径寸法Dが250mm未満である場合には、この洗濯装置60の実用的な使用は困難となる。また、仮に上記内径寸法Dが1000mmを超えるような場合には、この洗濯装置60が洗濯の対象とし得る衣類85のサイズも大きくなるが、洗浄液の使用量も極端に増大することになる。商業洗濯においては、洗濯効率その他の省エネ問題および環境問題が解決されなければならない。そのため、上記内径寸法Dが1000mmを超えるような場合にはかかる省エネ問題等の解決が困難となり、当該洗濯装置60は、商業洗濯に適用されることが困難となる。
洗濯装置60は、フレーム体68の内径寸法Dが250mm以上1000mm以下に設定されるので、ネクタイ、手袋等の小型の洗濯物から背広服、外套、着物等の大型の洗濯物まで洗浄することができると共に、使用される洗浄液の量が一定以下に抑えられる。ただし、フレーム体68の内径寸法Dが300mm以上850mm以下に設定された場合には、この洗濯装置60が特に商業洗濯に適する。なぜなら、使用される洗浄液の量が比較的少量に抑えられ、しかも、ネクタイや手袋等の比較的小型ないし中型の洗濯物のほか、背広服、外套、着物等の大型の洗濯物が洗浄され得るからである。フレーム体68の内径寸法Dが250mm〜500mm程度、特に300mm以上500mm以下に設定された場合は、使用される洗浄液が少量に抑えられ、しかも、ネクタイや手袋等の比較的小型ないし中型の洗濯物が好適に洗浄される。
また、フレーム体68の内径寸法Dが500mm〜1000mmに設定されることにより、背広服、外套、着物等の大型の洗濯物が好適に洗浄される。具体的に本実施形態では、上記フレーム体68の内径寸法Dは650mmに設計されている。この内径寸法Dは、600mm以上850mm以下に設定されるのが特に好ましい。フレーム体68の内径寸法Dがかかる寸法に設定されることにより、使用される洗浄液の量が比較的少量に抑えられつつ、背広服、外套、着物等の大型のものが好適に洗浄される。したがって、当該洗濯装置60は、特に効率的な商業洗濯に適する。
また、本実施形態では、フレーム体68は、毎分15回転で回転される。したがって、このフレーム体68の内周面89の周速度は、30.6m/minとなる。さらに、フレーム体68の内周面89が形成する波形の高さ寸法hは、フレーム体68の内径寸法Dの3%に設定されており、当該波形のピッチpは、上記内径寸法Dを直径とする仮想円の円周長さL(πD)の3.0%に設定されている。各寸法D、h、pが上記値に設定されることにより、フレーム体68が回転した場合には、衣類85は、フレーム体68内で無重力に近い状態が維持されるという現象が起こる。その理由は、およそ次のように考えられる。
図11は、回転するフレーム体68の内部における洗浄液の流れの様子を模式的に示す図である。
フレーム体68の内周面89は、径方向に凹凸するサインカーブ状に形成されているから、フレーム体68が矢印の方向に回転すると、洗浄液98は、フレーム体68の内周面89に引きずられるようにして周方向へ移動する。また、フレーム体68が回転すると、内周面89が滑らかな曲面に形成されているから、当該内周面89の近傍に渦状の緩やかな流れが発生する。この渦状の緩やかな流れ96は、フレーム体68の内周面89の近傍において径方向および周方向に三次元的に拡がる。なお、同図は模式図であるから、緩やかな流れ96は、図中4箇所にのみ記載されているが、現実には、この緩やかな流れは、フレーム体68の内周面89のあらゆる部位で発生する。
一方、フレーム体68が回転することによって、フレーム体68の内部の洗浄液97は遠心力を受け、径方向外方へ移動する。そして、この遠心力により発生する径方向外方への流れと、上記渦状の緩やかな流れ96とが対向衝突する。このように径方向に対向する流れが衝突することにより、いわゆる「流れの壁」99が形成される。この「流れの壁」99は、フレーム体68の周方向に延びる円環状に形成される。
この「流れの壁」99が形成されることにより、フレーム体68の周方向へ移動する洗浄液の速度は、径方向に不均一に変化する。すなわち、当該周方向へ移動する洗浄液の速度は、フレーム体68の中心からの距離に比例して変化するものではない。詳述すれば、この「流れの壁」99の外側にある洗浄液98は、フレーム体68の内周面89に沿って周方向に勢いよく移動するが、この「流れの壁」99の内側にある洗浄液97は、きわめて緩やかにフレーム体68の回転方向に移動する。ただし、フレーム体68の前端付近および後端付近では(図6参照)、上記渦状の流れ96も周方向の流れも発生しないから、フレーム体68の内部に洗浄液の圧力変動が生じ、洗浄液は、フレーム体68の軸方向へ緩やかに移動し、対流する。
「流れの壁」99が良好に形成されているとすれば、衣類85は、「流れの壁」99よりも内側の領域において無重力に近い状態が維持される。なぜなら、無重力に近い状態にある衣類85がフレーム体68内で浮遊し、当該フレーム体68の内側から外側に移動したとしても、「流れの壁」99が良好に形成されているならば、衣類85は、「流れの壁」99に弾かれて再びフレーム体68の内側に戻されるからである。ただし、仮に何らかの要因により衣類85が「流れの壁」99を通過してフレーム体68の内側から外側に移動した場合は、衣類85は、「流れの壁」99の外側にある洗浄液98によって周方向へ強く引きずられる。その結果、衣類85がフレーム体68の内周面に沿って回転し、上記無重力に近い状態は維持されない。
洗浄液に作用する遠心力および上記渦状の緩やかな流れ96が「流れの壁」99の形成に大きな影響を及ぼす。すなわち、フレーム体68の回転速度(すなわち、フレーム体68の内周面89の周速度)並びに上記高さ寸法hおよびピッチpが「流れの壁」99の形成に大きな影響を及ぼす。一般的には、フレーム体68の回転速度が速くなれば上記遠心力が大きくなりすぎ、また、フレーム体68の回転速度が遅くなれば、「流れの壁」99を形成するための洗浄液の対向する流れが発生しない。すなわち、「流れの壁」99が形成されるためには、上記遠心力により発生する径方向外方への流れと、上記渦状の緩やかな流れ96とがバランスすることが重要であると考えられる。本実施形態では、フレーム体68の内径寸法Dが650mmに設定され、且つフレーム体68が毎分15回転で回転され、しかも、上記高さ寸法hが上記内径寸法Dの3%に設定されると共に、上記ピッチpが上記内径寸法Dを直径とする仮想円の円周長さLの3%に設定されている。このことは、良好に「流れの壁」99が形成されるための条件を満たしている。
本実施形態では、フレーム体68の内周面89の周速度が30.6m/min(毎分15回転)、上記高さ寸法hが上記内径寸法Dの3.0%、上記ピッチpが上記円周長さLの3.0%に設定されたときに、上記「流れの壁」99が良好に形成される。ただし、フレーム体68は、その内周面89の周速度が10m/min以上90m/minとなるように回転され、上記高さ寸法hが上記内径寸法Dの2.0%〜9.0%に設定され、上記ピッチpが上記円周長さLの2.0%〜9.0%に設定された場合でも、上記「流れの壁」99が形成され得る。特に、フレーム体68の内周面89の周速度が28m/min〜57m/min、上記高さ寸法hが上記内径寸法Dの3.0%〜6.0%、上記ピッチpが上記円周長さLの3.0%〜6.0%に設定されたときに、上記「流れの壁」99が良好に形成される。上記高さ寸法h及び上記ピッチpは、上記範囲内で変更され得る。ピッチpに対する高さ寸法hの割合が相対的に大きい場合は、上記内周面89に形成された凹凸が密となり、ピッチpに対する高さ寸法hの割合が相対的に小さい場合は、上記内周面89に形成された凹凸が粗となる。
なお、フレーム体68の内周面89の周速度が10m/minであるときは、フレーム体68の内径寸法が300mmであるならば、フレーム体68の回転速度は、毎分10.6回転であり、フレーム体68の内径寸法が650mmであるならば、フレーム体68の回転速度は、毎分4.9回転であり、フレーム体68の内径寸法が850mmであるならば、フレーム体68の回転速度は、毎分3.7回転である。また、フレーム体68の内周面89の周速度が28m/minであるときは、フレーム体68の内径寸法が300mmであるならば、フレーム体68の回転速度は、毎分29.7回転であり、フレーム体68の内径寸法が650mmであるならば、フレーム体68の回転速度は、毎分13.7回転であり、フレーム体68の内径寸法が850mmであるならば、フレーム体68の回転速度は、毎分10.5回転である。さらに、フレーム体68の内周面89の周速度が57m/minであるときは、フレーム体68の内径寸法が300mmであるならば、フレーム体68の回転速度は、毎分60.5回転であり、フレーム体68の内径寸法が650mmであるならば、フレーム体68の回転速度は、毎分27.9回転であり、フレーム体68の内径寸法が850mmであるならば、フレーム体68の回転速度は、毎分21.4回転である。加えて、フレーム体68の内周面89の周速度が90m/minであるときは、フレーム体68の内径寸法が300mmであるならば、フレーム体68の回転速度は、毎分95.5回転であり、フレーム体68の内径寸法が650mmであるならば、フレーム体68の回転速度は、毎分44.1回転であり、フレーム体68の内径寸法が850mmであるならば、フレーム体68の回転速度は、毎分33.7回転である。
衣類85がフレーム体68の内部で無重力に近い状態が維持されると、衣類85とフレーム体68の内周面89との接触が防止され、衣類85を構成する生地への損傷が確実に防止される。さらに、フレーム体68の中心から外側に移動する洗浄液および軸方向に移動する洗浄液は、フレーム体68の内部で衣類85を大きく拡げる。これにより、この衣類85と洗浄液との接触面積が大きくなり、したがって、洗浄液に含まれる界面活性剤が衣類85を構成する生地の繊維に深く浸透する。界面活性剤が衣類85を構成する生地の繊維に深く浸透することにより、この衣類85に物理的外力が加えられなくとも、すなわち、衣類85に機械的な外力が加えられたり、水流が噴射されることによって衣類85が叩かれたり捩られたりすることなく、繊維に付着した汚れが容易に離脱する。
衣類85の洗浄が終了すると、図10(d)が示すように、バルブ81、83が閉じられると共にバルブ82が開かれ、洗浄液が排出される。
洗濯装置60は、衣類85に物理的外力を加えることなく、衣類85に付着した汚れを除去するから、衣類85がウール等のデリケートな生地からなる場合であっても、この生地が損傷を受けることがない。すなわち、衣類85の形が崩れず、しかも風合いが損なわれることなく、生地に付着した汚れが除去される。したがって、ウール等のデリケートな生地からなる衣類85の水洗いが可能となり、その結果、衣類85に付着した汗や泥等の水溶性の汚れも確実に除去される。加えて、衣類85の形が崩れることがないから、洗浄後に生地に皺が生じにくく、仕上作業が容易になるという利点もある。
特に、本実施形態では、フレーム体68は、水平に配置された中心軸69を中心に回転する。つまり、フレーム体68の内部において、洗浄液は、上記中心軸Nの周りに回転する。これにより、洗浄液が衣類85を通過しやすいという利点がある。その理由は明らかではないが、フレーム体68の軸方向中心が鉛直方向に沿って配置されるよりも良好な洗濯が実現されることが確認されている。
上記フレーム体68は、間欠的に回転されてもよい。フレーム体68が間欠的に回転されるためには、上記駆動モータ73の回転が制御されればよい。この駆動モータ73の回転制御は、上記制御装置105によって簡単に行われる。このように、フレーム体68が間欠的に回転されることにより、フレーム体68内の洗浄液の流れが一様でなくなる。したがって、洗浄液の流れは緩やかではあるものの、洗浄液は、確実に衣類85の繊維の間を流れる。
例えば、フレーム体68は、1〜240秒だけ回転され、その後に1〜60秒だけ停止され、さらにその後に1〜240秒だけ回転されるサイクルを繰り返す。最初のフレーム体68の回転時間は、5〜200秒であることが好ましく、10〜120秒であることがさらに好ましく、20〜80秒であることがなお好ましい。上記フレーム体68の停止時間は、例えば1秒以下に設定されていてもよい。停止後のフレーム体68の回転時間は、5〜200秒であることが好ましく、10〜120秒であることがさらに好ましく、20〜80秒であることがなお好ましい。これにより、洗浄液は、衣類85の繊維の間をより確実に流れる。したがって、衣類85は、洗浄による損傷を受けることなく、衣類85に付着した汚れが当該衣類85から一層確実に分離される。なお、最初のフレーム体68の回転時間と、一旦停止後のフレーム体68の回転時間とが異なっていてもよいことは、勿論である。
また、このフレーム体68は、規則的に正転及び逆転されてもよい。具体的には、上記駆動モータ73の回転が規則的に正転及び逆転される。このような駆動モータ73の回転制御は、上記制御装置105によって簡単に行われる。これにより、洗浄液が衣類85の繊維の間をより一層確実に流れる。
例えば、フレーム体68は、右方向(一方向)に1〜540秒だけ回転され、その後に1〜60秒だけ停止され、さらにその後に左方向(他方向)に1〜540秒だけ回転される。フレーム体68の右方向への回転時間は、5〜440秒であることが好ましく、10〜280秒であることがさらに好ましく、20〜180秒であることがなお好ましい。当該右回転後のフレーム体68の停止時間は、例えば1秒以下に設定されていてもよい。停止後のフレーム体68の左方向への回転時間は、5〜440秒であることが好ましく、10〜280秒であることがさらに好ましく、20〜180秒であることがなお好ましい。そして、この正転及び逆転を1サイクルとして、これが繰り返される。フレーム体68が正転及び逆転されることにより、洗浄液が衣類85の繊維の間をより一層確実に流れる。したがって、衣類85は、洗浄による損傷を受けることなく、衣類85に付着した汚れが当該衣類85からなお一層確実に分離される。
なお、右方向への回転が正転とされ、左方向への回転が逆転とされているが、これが逆であってもよいことは勿論である。また、正転時間と逆転時間とが異なっていてもよいことも勿論である。
本実施形態では、後述の洗濯情報に基づいて、変圧装置66によってケーシング67内の洗浄液、すなわちフレーム体68内の洗浄液が加圧又は減圧される場合がある。洗浄液の圧力が増減されることにより、洗浄液は、衣類85を構成する繊維の奥まで浸透する。しかも、洗浄液の圧力が増減されることによって繊維に含まれる空気が除去されるので、洗浄液は、繊維の奥まで確実に浸透する。また、この洗浄液はフレーム体68の内部に充填密封されているから、洗浄液の圧力が変化したとしても、フレーム体68内に強い渦等が発生することはない。したがって、洗浄液の圧力変化を原因として衣類85が損傷を受けることはない。
このように洗浄液が加圧されることにより、衣類85が損傷を受けることなく、繊維の表面に付着した汚れ並びに繊維の奥まで入り込んだ汚れ(沈着した汚れ)も確実に除去される。特に、この繊維の奥に入り込んだ汚れは、酸化されて生地の黄ばみの原因となる。しかし、この汚れが確実に除去されるので、生地の黄ばみが確実に防止されるという利点がある。
さらに、洗濯情報に基づいて、衣類85の洗浄中にフレーム18内に洗浄液の緩やかな噴流が形成される場合がある。具体的には、衣類85の洗浄中に洗浄液供給装置64が作動される。図10(c)が示すように、バルブ81、82が閉じられ、バルブ83が開かれると共に、ポンプ77が作動される。これにより、洗浄液が洗濯槽ユニット61から引き出され、バイパス配管80及び供給配管78を通って再び洗濯槽ユニット61に戻される。このときに、洗濯槽ユニット61内に洗浄液の緩やかな流れが形成される。ただし、この流れは、衣類85を強く捻るような強いものではなく、きわめて弱いものであることが必要である。このような緩やかな流れは、上記ポンプ77の作動が制御装置105によって制御されることによって容易に形成され得る。このように洗浄液の流れが形成され、洗浄液が循環されることにより、洗浄液は、衣類85の繊維の間を一層流れやすくなる。その結果、一層高い洗浄力の発揮が期待される。
上記緩やかな水流は、逆方向にも形成され得る。すなわち、バルブ81、82が閉じられ、バルブ83が開かれると共に、ポンプ77が逆方向に作動される。これにより、洗浄液が洗濯槽ユニット61の上方から引き出され、供給配管78及びバイパス配管80を通って再び洗濯槽ユニット61に戻される。このときに、洗濯槽ユニット61内に下方から上方に向かう洗浄液の流れが形成される。このように洗浄液の流れが形成されることによって、衣類85が洗濯槽ユニット61の中央部に強制的に位置決めされる。
詳述すれば、洗濯槽ユニット61内に配置された衣類85は、前述のように無重力に近い状態になる。この状態は、この衣類85に作用する浮力に起因して生じる。ただし、衣類85には常に重力が作用しているから、衣類85は、洗濯槽ユニット61の底部(鉛直下方)に沈下する傾向にある。しかし、洗浄液の流れが洗濯槽ユニット61内で下方から上方に形成されることによって、衣類85は、常に洗濯槽ユニット61の中心部に押し上げられる。これにより、衣類85が洗濯槽ユニット61の内壁面に接触することが確実に回避され、衣類85の損傷が確実に防止される。
なお、万一、衣類85が洗浄液の流れによって洗濯槽ユニット61の上方に移動した場合には、前述のように、洗濯槽ユニット61の上方から下方へ向かう洗浄液の流れが形成されることにより、衣類85は、再び洗濯槽ユニット61の中央部に位置決めされ得る。
洗濯装置60は、洗浄液の温度を調整する温度調整装置を備えていてもよい。この温度調整装置は、洗濯槽ユニット61の内部に配置されたヒータ等により構成される。そして、このヒータは、上記制御装置105によってその出力が制御され得る。温度調整装置によって、洗浄液の温度は、衣類85に付着した汚れの種類、程度に応じて当該汚れを除去するための最適な温度に設定され得る。洗浄液の温度が調整されることによって、衣類85に付着した汚れが迅速かつ確実に除去される。
以下、本実施形態に係るクリーニングシステム10において、販売店に持ち込まれた顧客の衣類が配送業者により支部へ配送され、当該衣類が本部の指示に基づいて支部の洗濯装置60により洗濯される手順について説明する。
図12は、販売店端末30において行われる処理の手順を示すフローチャートである。図13は、本部サーバ10において行われる処理の手順を示すフローチャートである。図14は、支部端末40において行われる処理の手順を示すフローチャートである。図15は、本実施形態に係るクリーニングシステム100において伝送される情報を示す模式図である。なお、以下のフローチャートに基づいて説明する販売店端末30の処理は、ROM38に格納されているプログラムに基づいて制御部31が発行する命令に従って行われ、本部サーバ10の処理は、ROM18に格納されているプログラムに基づいて制御部11が発行する命令に従って行われ、支部端末40の処理は、ROM48に格納されているプログラムに基づいて制御部41が発行する命令に従って行われる。
まず、クリーニングすべき顧客の衣類が当該顧客により販売店に持ち込まれる。顧客の衣類は、当該販売店において顧客が購入した衣類である。本実施形態に係るクリーニングシステム100では、販売店端末30が設置された販売店がクリーニング取次店として機能し、顧客は、衣類をクリーニング取次店に預けるのではなく、その衣類を購入した店舗に預けることになる。したがって、特に高価な衣類であっても、顧客は安心してクリーニングを委託することができる。なお、顧客が預ける衣類は、他の販売店で購入した衣類であってもよい。顧客の衣類には、販売店において第1識別情報が付与される。ここで、第1識別情報は、顧客の衣類を特定するための情報である。この第1識別情報により顧客の衣類が識別される。第1識別情報としては、顧客情報である顧客名、顧客の住所、顧客の電話番号のほか衣類の品番等が例として挙げられるが、これらの情報は、本実施形態においては、複数桁の数字やアルファベットから構成される識別番号により表される。なお、第1識別情報の作成方法は特に限定されるものではないが、例えば顧客の電話番号の一部を含むような識別番号を作成したり、或いは、顧客の氏名や住所に数値を対応付けてこれらの数値を組み合わせて識別番号とすればよい。顧客の衣類には、ICタグ55(図3参照)が付着される。IC55タグは、IC(Integrated Circuit)及びアンテナを搭載したタグである。販売店端末30において、第1識別情報が操作部34から入力される。入力された第1識別情報は、リーダライタ52(図3参照)によりICタグ55へ送信されて当該ICタグ55に第2識別情報として格納される。これにより、顧客の衣類に第2識別情報が付与される。ここで、第2識別情報は、第1識別情報と同様の情報である。つまり、後述のように販売店端末30から本部サーバ10へ送信される識別情報が第1識別情報であり、顧客の衣類に付着された上記ICタグ55に格納される識別情報が第2識別情報である。
図12が示すように、販売店端末30の制御部31は、顧客情報を含む第1識別情報および衣類情報が操作部34から入力されたか否かを判断する(S1)。ここで、衣類情報は、顧客の衣類の属性を示す情報である。衣類の属性としては、いわゆる着物、単一の生地から構成される洋服、複数の生地から構成される洋服等が挙げられる。なお、本実施形態においては、衣類の属性が上記3種類のいずれかに分類される形態について説明するが、例えば、衣類の生地及び染料により顧客の衣類が4種類以上に分類されてもよい。
制御部31は、第1識別情報および衣類情報が入力されていないと判断した場合(S1:NO)、処理がステップS1へ戻される。逆に、制御部31は、第1識別情報および衣類情報が入力されたと判断した場合(S1:YES)、操作部34(第1入力受付手段)は、第1識別情報および衣類情報の入力を受け付ける。そして、制御部31(第1送信手段)は、操作部34が受け付けたこれらの情報をインターネット102を介して本部サーバ10へ送信する(S2)。
続いて、制御部31は、配送指示情報を配送業者端末50へ送信する(S3)。ここで、配送指示情報は、ICタグ55が付着された顧客の衣類の支部への配送を配送業者に指示するための情報である。この配送指示情報は、具体的には、衣類の配送を依頼した販売店を示す情報や、当該衣類を配送すべき支部を示す情報を含むものである。
図には示されていないが、配送業者端末50(図1参照)が配送指示情報を受信することにより、衣類の配送を指示した販売店及び衣類の配送先である支部に関する情報が配送業者端末50のモニタに表示される。例えば、「支部Bへの衣類の配送が販売店Aから依頼されました。」、「販売店Aに行って衣類を受け取ってください。」等のメッセージが配送業者端末50のモニタに表示される。これを受けて、配送業者は、販売店Aに行ってICタグ55が付着された顧客の衣類を受け取り、当該顧客の衣類を販売店Aから指定された支部Bへ配送する。これにより、第2識別情報が付与されている顧客の衣類が販売店から支部へ配送される。なお、顧客の衣類を配送すべき支部は、本実施形態においては販売店により当該販売店の最寄りの支部に指定されるが、本部から指定されてもよい。
図13が示すように、本部サーバ10の制御部11(第1受信手段)は、販売店端末30から送信された第1識別情報および衣類情報を受信したか否かを判断する(S11)。ここで、第1識別情報および衣類情報を受信していないと制御部11が判断した場合(S11:NO)、処理がステップS11へ戻される。制御部11(生成手段)は、第1識別情報および衣類情報を受信したと判断した場合(S11:YES)、受信した衣類情報に基づいて洗濯情報を生成する(S12)。ここで、洗濯情報は、衣類の洗濯条件を示す情報である。洗濯情報は、本実施形態においては、第1制御情報および第2制御情報を含むものである。第1制御情報は、制御部41が洗濯装置60の変圧装置66(図5参照)を制御するための情報である。変圧装置66は、上述のように、フレーム体68内の洗浄液を加圧又は減圧するものである。第2制御情報は、制御部41が洗濯装置60の洗浄液供給装置64(図5参照)を制御するための情報である。洗浄液供給装置64は、上述のように、ポンプ77、及びバルブ81〜83により、衣類の洗浄中にケーシング67(図5参照)内に洗浄液の流れを形成するものである。すなわち、第2制御情報は、ポンプ77の作動、及びバルブ81〜83の開閉を制御するための情報である。
制御部11は、第1識別情報、衣類情報、及びステップS12の処理で生成した洗濯情報をHDD13に設けられている電子カルテ23に格納する(S13)。
図16は、電子カルテ23の一例を示す図である。
図16が示すように、電子カルテ23は、便宜的に「番号」、「顧客名」、「住所」、「識別情報」、「受付日時」、「支部」、「衣類情報」、「流れ調整」、「圧力調整」、「状態」、及び「備考」と命名した11個のフィールドを持つ多数のレコードで構成される。
電子カルテ23の各フィールドに格納される情報は、以下の通りである。「番号」フィールドには、上記第1識別情報および衣類情報を受信した時間順に付けられる番号が格納される。「顧客名」フィールドには、販売店に衣類を持ち込んだ顧客の氏名や名称が格納される。「住所」フィールドには、販売店に衣類を持ち込んだ顧客の住所が格納される。「顧客名」フィールド及び「住所」フィールドに格納される情報は、上記第1識別情報に含まれている顧客情報から得られるものである。
「識別情報」フィールドには、販売店端末30から受信した第1識別情報が格納される。「受付日時」フィールドには、販売店端末30から第1識別情報および衣類情報を受信した日時が格納される。「支部」フィールドには、販売店から顧客の衣類が搬入された支部の店名が格納される。本実施形態においては、図16が示すように、第1識別情報に顧客の衣類が配送される支部を特定するための情報が含まれている。したがって、「支部」フィールドには、第1識別情報に基づいて得られた支部の店名が格納される。ただし、第1識別情報および衣類情報に加えて衣類が搬入される支部を示す支部情報を販売店から支部へ送信し、当該支部情報に基づいて支部の店名が「支部」フィールドに格納されてもよい。「衣類情報」フィールドには、販売店端末30から受信した衣類情報が格納される。「衣類情報」フィールドにおける「着物」は、そのレコードに対応する衣類が着物であることを意味する。「衣類情報」フィールドにおける「単一生地の洋服」は、そのレコードに対応する衣類が単一の生地から構成される洋服であることを意味する。「衣類情報」フィールドにおける「複数生地の洋服」は、そのレコードに対応する衣類が複数の生地から構成される洋服であることを意味する。
「流れ調整」フィールドには、洗浄液供給装置64(図5参照)により洗濯槽ユニット61内の洗浄液に強制的に緩やかな流れを生じさせるか否かを示す情報である。電子カルテ23中の「流れ調整」フィールドにおける「○」は、洗浄液供給装置64により洗濯槽ユニット61内の洗浄液に強制的に緩やかな流れを生じさせることを意味する。また、「流れ調整」フィールドにおける「−」は、洗濯槽ユニット61内の洗浄液に流れを生じさせないことを意味する。すなわち、「流れ調整」フィールドには、上記第2制御情報が格納される。「圧力調整」フィールドには、変圧装置66(図5参照)によりフレーム体68内の洗浄液を加圧又は減圧するか否かを示す情報である。電子カルテ23中の「圧力調整」フィールドにおける「○」は、変圧装置66によりフレーム体68内の洗浄液を加圧又は減圧することを意味する。また、「圧力調整」フィールドにおける「−」は、フレーム体68内の洗浄液を変圧しないことを意味する。すなわち、「圧力調整」フィールドには、上記第1制御情報が格納される。「状態」フィールドには、販売店から支部へ搬入された衣類の洗濯状況が格納される。当該衣類の洗濯が完了している場合には、「状態」フィールドに「洗濯完了」が格納される。当該衣類の洗濯前である場合には、「状態」フィールドに「洗濯待ち」が格納される。この「状態」フィールドには、上記ステップS13の処理が行われる際に、まず「洗濯待ち」が格納される。そして、「状態」フィールドの情報は、支部から洗濯の完了が通知された際に、「洗濯待ち」から「洗濯完了」に更新される。本部サーバ10の管理者は、電子カルテ23におけるこの「状態」フィールドの情報から各支部における洗濯の状況を把握することができる。「備考」フィールドには、その他の情報が格納される。
一方、顧客の衣類が搬入された支部の制御部41は、図14が示すように、第2識別情報がリーダライタ57により入力されたか否かを判断する(S21)。ここで、第2識別情報は、前述のように第1識別情報と同様の情報であって、顧客の衣類を特定する情報である。この第2識別情報は、搬入された衣類に付着されているICタグ55から得られる。したがって、ICタグ55から得られる情報が販売店で格納された正規の第1識別情報である場合、第2識別情報は第1識別情報と一致する。制御部41は、第2識別情報が入力されていないと判断した場合(S21:NO)、すなわち、ICタグ55に格納されている情報がリーダライタ57(第2入力受付手段)により読み出されていない場合、処理がステップS21へ戻される。制御部41(第3送信手段)は、第2識別情報が入力されたと判断した場合(S21:YES)、すなわち、ICタグ55に格納されている第2識別情報がリーダライタ57により読み出された場合、読み出された第2識別情報をインターネット102を介して本部サーバ10及び販売店端末30へ送信する(S22)。
なお、支部に搬入された衣類は、上記ステップS21において第2識別情報の入力が受け付けられた直後に、洗濯装置60の洗濯槽ユニット61に収容される。この場合、第2識別情報の入力が受け付けられたことを条件に、衣類が洗濯物搬送装置等により自動的に洗濯槽ユニット61に収容されてもよい。
販売店端末30の制御部31は、図12が示すように、上記ステップS3の処理に続いて、支部端末40から第2識別情報を受信したか否かを判断する(S4)。制御部31は、第2識別情報を受信していないと判断した場合(S4:NO)、上記ステップS1において第1識別情報を送信してから所定期間(例えば3日間)を経過したか否かを判断する(S5)。ここで、所定期間を経過していないと制御部31が判断した場合(S5:NO)、処理がステップS4へ戻される。逆に、制御部31は、所定期間を経過したと判断した場合(S5:YES)、配送エラーを報知する(S6)。具体的には、制御部31は、「支部へ衣類が搬入されていません。確認してください。」等のメッセージを表示部35に表示させる。
制御部31は、第2識別情報を受信したと判断した場合(S4:YES)、ステップS1において本部サーバ10へ送信した第1識別情報と、支部端末40から受信した第2識別情報とが一致するか否かを判断する(S7)。ここで、制御部31は、第1識別情報及び第2識別情報が一致しないと判断した場合(S7:NO)、顧客の衣類が指定された支部へ正常に配送されていないと判断して上記ステップS6の処理を行う。逆に、制御部31は、第1識別情報および第2識別情報が一致すると判断した場合(S7:YES)、顧客の衣類が正常に配送された旨の情報を報知する(S8)。具体的には、制御部31は、「指定された支部へ衣類が配送されました。」等のメッセージを表示部35に表示させる。販売店端末30は、このようにステップS6又はステップS8の処理を行って一連の処理を完了する。このステップS6又はステップS8の処理が行われることにより、販売店端末30のユーザは、配送業者に依頼した衣類の配送が問題なく完了したか否かを簡単且つ確実に確認することができる。
一方、本部サーバ10の制御部11(第2受信手段)は、図13が示すように、上記ステップS13の処理の後、支部端末40から第2識別情報を受信したか否かを判断する(S14)。ここで、第2識別情報を受信していないと制御部11が判断した場合(S14:NO)、処理がステップS14へ戻される。逆に、制御部11は、第2識別情報を受信したと判断した場合(S14:YES)、ステップS11において販売店端末30から受信した第1識別情報と、ステップS14において支部端末40から受信した第2識別情報とが一致するか否かを判断する(S15)。ここで、制御部11は、第1識別情報および第2識別情報が一致しないと判断した場合、認証エラーを報知する(S16)。具体的には、制御部11は、「識別情報が間違っています。確認してください。」等のメッセージを表示部15に表示させる。
制御部11(第2送信手段)は、第1識別情報および第2識別情報が一致すると判断した場合(S15:YES)、支部端末40へ洗濯情報を送信する(S17)。具体的には、ステップS13において電子カルテ23に格納された洗濯情報を当該電子カルテ23から読み出し、第2識別情報の送信元である支部端末40へ送信する。このように、本部サーバ10の制御部11は、第1識別情報および第2識別情報が一致したことを条件に、当該第2識別情報の送信元である支部端末40へ生成した洗濯情報を送信する。
支部端末40の制御部41(第3受信手段)は、図14が示すように、ステップS22の処理に続き、本部サーバ10から洗濯情報を受信したか否かを判断する(S23)。ここで、洗濯情報を受信していないと制御部41が判断した場合(S23:NO)、処理がステップS23へ戻される。逆に、制御部41(制御手段)は、洗濯情報を受信したと判断した場合(S23:YES)、洗濯情報に基づいて洗濯装置60を制御する(S24)。具体的には、制御部41は、洗濯情報に基づいて洗濯装置60の駆動モータ73、ポンプ77、変圧装置66、及びバルブ81〜83を制御する。この洗濯装置60による衣類の洗濯は、制御部41が洗濯情報を受信したことを条件に開始される。
例えば、着物に対応する洗濯情報が本部サーバ10から送信された場合、制御部41は、駆動モータ73を制御して洗濯を実施すると共に、ポンプ77、及びバルブ81〜83を制御して衣類の洗浄中にケーシング67内に洗浄液の流れを形成する(図16参照)。また、単一生地から構成される洋服に対応する洗濯情報が本部サーバ10から送信された場合、制御部41は、駆動モータ73を制御して洗濯を実施すると共に、変圧装置66を制御してフレーム体68の洗浄液を加圧又は減圧する。また、複数生地から構成される洋服に対応する洗濯情報が本部サーバ10から送信された場合、制御部41は、衣類の洗浄中に変圧装置66、ポンプ77、及びバルブ81〜83を制御することなく駆動モータ73を制御して、通常の洗濯を実施する。すなわち、制御部41は、ケーシング67内に洗浄液の流れを形成したり、洗浄液を加圧又は減圧させることなく衣類を洗濯する。
そして、制御部41(判断手段)は、ステップS24の処理を開始した後に、洗濯装置60による衣類の洗濯が完了したか否かを判断する(S25)。ここで、衣類の洗濯が完了していないと制御部41が判断した場合(S25:NO)、洗濯が完了するまでステップS24の処理が継続される。逆に、制御部41(第4送信手段)は、洗濯装置60による洗濯が完了したと判断した場合(S25:YES)、洗濯完了情報を本部サーバ10へ送信する(S26)。ここで、洗濯完了情報は、本部サーバ10から送信された洗濯情報に基づく洗濯の完了を当該本部サーバ10に通知する情報である。このように、洗濯が完了したと判断したことを条件に洗濯完了情報を本部サーバ10へ送信して支部端末40の処理が完了する。
本部サーバ10の制御部11は、図13が示すように、ステップS17の処理に続いて、支部端末40から洗濯完了情報を受信したか否かを判断する(S18)。ここで、制御部11は、洗濯完了情報を受信していないと判断した場合(S18:NO)、ステップS17において洗濯情報を送信してから所定時間(例えば、2時間)を経過したか否かを判断する(S19)。支部端末40から洗濯完了情報を受信することなく所定時間が経過した場合(S19:YES)、制御部11は、洗濯エラーを報知する(S20)。具体的には、制御部11は、「洗濯が完了していません。○○支部に確認してください。」等のメッセージを表示部15に表示させる。一方、制御部11は、洗濯完了情報を受信したと判断した場合(S18:YES)、電子カルテ23の「状態」フィールドの情報を「洗濯待ち」から「洗濯完了」に書き換えて処理が完了する。
以上説明したように、本実施形態に係るクリーニングシステム100では、洗濯情報等の管理は本部で行われ、支部は、販売店を介して顧客から衣類の洗濯を請け負い、本部の情報を利用して所定の洗濯方法を実施する。このような本部、支部、及び販売店から構成されるクリーニングシステム100では、洗濯条件のような情報が本部でのみに管理されるので、各支部に洗濯条件を管理運用するための装置を設置する必要がなく、多量のクリーニングサービスが安価に提供され得る。
特に着物については次のような利点がある。従来から着物は、洗い張りと称されるクリーニングサービスを受けているが、このサービスはきわめて高価なものである。本発明によれば、洗濯装置60によって着物の丸洗いが可能になるので、顧客はクリーニングサービスを安価に受けることができる。着物は一般に高価な衣類であるから、顧客は、着物を購入した販売店にクリーニングの依頼をすることにより、安心して着物のクリーニングサービスを委託することができる。
また、上記第1識別情報と第2識別情報とは同一の内容である。したがって、本来的に両者は一致するはずである。両者が一致しないとすれば支部において衣類から取得された当該衣類を特定する情報と本部サーバ10へ送信された当該衣類を特定する情報とが一致しないことになる。すなわち、クリーニングの対象となる衣類について、本部と支部との認識の不一致が発生する。本実施形態に係るクリーニングシステム100では、第1識別情報と第2識別情報との一致が確認されるので、衣類の取り違えによる事故が確実に防止される。
なお、本実施形態においては、便宜上、洗濯情報が第1制御情報及び第2制御情報からなるものである形態について説明したが、洗濯情報はこれに限定されるものではない。すなわち、洗濯情報は、洗濯装置60による洗濯時間を制御するための時間情報、洗浄液の温度を制御するための温度情報など、通常考えられる他の洗濯条件を指示する情報が含まれていてもよい。
以下、本実施形態の変形例について説明される。
図17は、本実施形態の変形例において支部端末40で行われる処理の手順を示すフローチャートであり、図14と異なる処理ステップが示されている。図18は、本実施形態の変形例において販売店端末30で行われる処理の手順を示すフローチャートであり、図12と異なる処理ステップが示されている。図19は、本実施形態の変形例において本部サーバ10で行われる処理の手順を示すフローチャートであり、図13と異なる処理ステップが示されている。図20は、本実施形態の変形例に係るクリーニングシステム100において伝送される情報を示す模式図である。なお、この変形例において本部サーバ10、販売店端末30、および支部端末40で行われる処理は、一部を除いて上記実施形態と同様に行われるため、上記実施形態と異なる点について以下に説明する。なお、この変形例では、ICタグ55は、洗濯装置60による衣類の洗濯が完了した後も当該衣類に付着されているものとする。
支部端末40の制御部41(図4参照)は、図17が示すように、上記ステップS25(図14参照)において衣類の洗濯が完了したと判断した場合(S25:YES)、上記ステップS24における洗濯に利用された洗濯情報を洗濯履歴情報としてICタグ55に格納する(S31)。具体的には、制御部41は、本部サーバ10から受信した洗濯情報をリーダライタ57(書込手段)によりICタグ55に書き込む。ここで、洗濯履歴情報は、洗濯の履歴を示す情報であり、洗濯情報と同様の情報である。言い換えれば、洗濯履歴情報は、クリーニングシステム100を利用して衣類に対して過去に実施された洗濯(クリーニング)に対応する洗濯情報である。つまり、ICタグ55に洗濯履歴情報が格納されることにより、衣類に洗濯の履歴が残されることとなる。この洗濯履歴情報をICタグ55から読み出すことにより、過去にどのような洗濯条件で洗濯が実施されたかを把握することが可能である。なお、上記ステップS31の処理は、上記ステップ23(図14参照)でYESの判断がなされてから上記ステップS24の処理が開始されるまでに行われてもよいし、また、上記ステップS26の処理の後に行われてもよい。また、洗濯履歴情報は洗濯情報と同一のものに限定されるものではない。すなわち、洗濯履歴情報は、例えば、過去に洗濯が実施された日時を示す洗濯日時情報を含むものであってもよい。この場合、前回の洗濯がいつ実施されたかを洗濯履歴情報から把握することが可能となる。
一方、販売店端末30の制御部31(図3参照)は、図18が示すように、リーダライタ52による読み出しを試みて、衣類に付着されているICタグ55に情報が格納されているか否かを判断する(S41)。制御部31は、ICタグ55に情報が格納されていないと判断した場合(S41:NO)、上記ステップS1の処理を行う。続いて、制御部31は、上記第1識別情報および上記衣類情報が入力されたと判断した場合(S1:YES)、入力された第1識別情報および衣類情報をICタグ55に格納する(S42)。具体的には、制御部31は、リーダライタ52による無線通信を行って第1識別情報および衣類情報をICタグ55に書き込む。そして、制御部31は、上記ステップS2以降の処理を行う(図12参照)。
このように、クリーニングシステム100を利用したクリーニングが過去に一度でも実施された場合、衣類に付着されているICタグ55には、第1識別情報、衣類情報、および洗濯履歴情報が格納されることとなる。
制御部31は、ICタグ55に情報が格納されていると判断した場合(S41:YES)、リーダライタ52による無線通信を行ってICタグ52から第1識別情報、衣類情報、および洗濯履歴情報を読み出す(S43)。そして、図20が示すように、制御部31は、読み出した第1識別情報、衣類情報、および洗濯履歴情報を本部サーバ10へ送信する(S44)。このステップS44の処理が行われた後、処理が上記ステップS3へ進められる。
これに対し、本部サーバ10の制御部11(図2参照)は、図19が示すように、上記ステップS11(図13参照)においてYESと判断した場合、販売店端末30から洗濯履歴情報を併せて受信したか否かを判断する(S51)。制御部11は、洗濯履歴情報を受信していないと判断した場合(S51:NO)、すなわち、上記ステップS31の処理が過去に一度も行われていない場合、上記ステップS12以降の処理を行う(図13参照)。逆に、制御部11は、洗濯履歴情報を受信したと判断した場合(S51:YES)、すなわち、上記ステップS31の処理が過去に一度でも行われている場合、衣類情報および洗濯履歴情報に基づいて洗濯情報を生成する(S52)。このステップS52の処理が行われた場合、処理が上記ステップS13へ進められる。
以上説明したように、本実施形態の変形例においては、操作部34から一度入力された第1識別情報および衣類情報がICタグ55に保存される。このため、次回のクリーニングの際に販売店端末30のユーザが面倒な操作入力を行う必要がなく、第1識別情報および衣類情報を簡単且つ確実に入力することができ、クリーニングを円滑に実施することができる。また、衣類に付着されているICタグ55に過去に実施されたクリーニングの履歴が洗濯履歴情報として残されるので、本部サーバ10において当該洗濯履歴情報を参照して最適な洗濯条件を決定することが可能である。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下の形態でもよい。
本実施形態においては、制御部41が洗濯情報を受信したことを条件に洗濯装置60による洗濯が開始される形態について説明したが、洗濯装置60による洗濯は、必ずしも制御部41が洗濯情報を受信した直後に開始される必要はない。すなわち、制御部41が洗濯情報を受信してから所定時間を経過した後に洗濯装置60による洗濯が開始されてもよい。
また、本実施形態においては、支部端末40から本部サーバ10へ洗濯完了情報が送信される形態について説明したが、洗濯完了情報は必ずしも送信されなくてもよい。ただし、支部で行われる洗濯を本部で一元管理するためには洗濯完了情報が送信されることが好ましい。また、本部サーバ10への洗濯完了の通知は、例えば電子メールにより行われてもよい。
また、本実施形態においては、第2識別情報がICタグから得られるものである形態について説明したが、第2識別情報が例えば顧客の衣類に付着されたバーコードに記録されていてもよい。この場合、支部端末40においてバーコードリーダにより第2識別情報を入力すればよい。また、第2識別情報は、顧客の衣類に付着された識別紙に記録されていてもよい。この場合、支部端末40において操作部44から第2識別情報が入力される。