JP4249797B1 - コチョウラン又はフウランの栽培方法およびコチョウランとフウラン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 コチョウラン又はフウランの幼苗を、植込み材とともに底に水抜き孔を有する第1の鉢に植付けて生育させる第1の工程(ステップS2)と、この第1の工程(ステップS2)の後に、第1の鉢から幼苗及び植込み材を取り出して幼苗から植込み材を分離し、幼苗の根を、植込み材を用いることなく第1の鉢と同等以上の大きさを有し、底に水抜き孔を有する第2の鉢に収容し、水のみ、又は、水及び液肥、を与えて生育させる第2の工程(ステップS3)とを有することを特徴とするコチョウラン又はフウランの栽培方法による。
【選択図】図1
Description
着生ランと呼ばれるランの中でも、バンダは根の湿潤状態を特に嫌うことが知られており、植込み材を一切用いることなく木製又は合成樹脂製のバスケットに根を収容して可能な限り自然に近い状態で栽培される。また、バンダは通常温室等において吊るした状態で栽培されるため、商品として仕立てたり、搬送のために梱包することが難しかった。さらに、通常バンダは植込み材を一切用いないで栽培するため、根が乾燥しやすく頻繁に水遣りをする必要があり、商品として流通させることが難しかった。
他方、着生ラン呼ばれるランの中でも、コチョウランやフウランに関しては、古くから根が乾燥を好まないという認識が一般に浸透しており、これらを栽培する際には、その根を保水性に優れた水苔で包んで植込んだり、あるいは、バークや軽石等の比較的保水性の低い植え込み材を用いる場合には、合成樹脂製又は陶製又はガラス製の鉢に植込む等して根の乾燥を防止していた。
特にコチョウランの場合、根が疎らな状態であっても条件さえ整えば沢山の美しい花を付けるので、商品としての見映えを良くしたり搬送を容易にする目的で、花茎を支柱で支える必要があり、そのために鉢や容器内に隙間なく植込み材を充填していた。また、この植込み材は、根が疎らで保水機能が十分でないコチョウランを流通させる際に、根の乾燥を防止するという作用も有していた。
従って、栽培する側は、コチョウランやフウランの根の周辺に雑菌が繁殖しないよう給水方法やその時期、あるいは、施肥方法やその時期に細心の注意を払いつつ、着生ランの成長に合わせて、根の発育に応じた大きさの鉢に、新たな植込み材を追加しながら植え替えたり、時には植込み材を取り替える作業を1年に一度は行う必要があった。
しかしながら、このような慎重な管理作業は、出荷元の作業者にとって大きな負担になるだけでなく、購入した消費者にとっても大きな負担となり、着生ランの普及を阻害する要因となっていた。
このような課題を解決する目的で、いくつかの考案や発明が開示されている。
特許文献1に記載の発明は、蘭の気生根部を長深胴体で胴壁及び底縁に蘭根部が伸出し得ない小孔を多数有する内鉢に収容し、その後、隔離用海綿及び乾水草等で内鉢の上面開口部に配置して前記蘭の株を直立状に固定せしめる。次に、底縁の適当な個所に通気孔が設けられていて、且つその底部に水盤を置き、更に鉢胴体内側の環状受座に、中心孔の廻りに若干の綿糸スダレを垂下されている環状体が設置され、更に、該スダレの下端部を前記水盤中に浸漬せしめると共に、前記気生根蘭の根部を収容している内鉢を外鉢の口部に密接するように嵌め込んだことを特徴とするものである。
上記構成の発明によれば、住宅の室内で野生蘭を栽培する場合に、自然界に生育する野生蘭と同様に、野生蘭の根に空気を介して水分を供給することができるという効果を有する。
従って、住宅の室内において野生蘭の生育に適した環境を実現できる。
特許文献2に記載の発明は、ランを栽培する花瓶において、中央軸を有するガラス体を備え、当該ガラス体は、花瓶足部と、花瓶開口で開口した花瓶外壁とを含み、前記ガラス体は、栄養溶液と、ランが付着する多孔性栽培媒体とを受けるのに適しており、花瓶外壁は、前記開口の上方にあって、花瓶開口内へと導く花瓶胴部を含み、当該花瓶胴部は、胴部頂点と、ガラス体の中央軸に対して所定の角度で延びる胴部壁とを含むことを特徴とするものである。
上記構成の特許文献2に記載の花瓶によれば、ランの根によって消散する湿気はガラス体外方には逃げず、再びランの根に導かれる。栄養溶液はより速くない速度で蒸発し、このため、水は主としてランの葉、円錐花序および花から蒸発するので給水のペースをゆっくりとすることができる。
また、栽培媒体として木炭を用いることによってその抗菌作用によりランの根が腐ることを防止し、ランを別の鉢に植え替えることを遅くしたり、別の鉢に植え替えることをなくしたりすることもできる。
特許文献3に記載の発明は、ラン類のフラスコ苗を、フラスコから取り出し、苗の根に着いている培地を水洗いし、棒ビンに適度の水を入れて、苗を栽培し、苗の成長度に合わせて、ビンの大きさを換え、開花まで水栽培することを特徴とするものである。
上記構成の発明によれば、水道水で栽培するため、清潔であり病気の発生を極めて少なくすることができる。また、水栽培では、器内の根が毎年更新されるので鉢替えの作業をなくすことができる。
また、特許文献2に記載の方法によれば、1日の水分供給量が僅かであるため、月に2〜3回の水分補給又は水の交換で水管理が可能となり、かん水管理の手間を軽減することができる。
さらに、水苔や軽石など、一般の植え込み材料を使用しないため、植え込み材料費を節約することができる。そして、水道水で栽培するため、清潔で衛生的であるなど、実用的で気品のある装飾品として利用できる。
加えて、装飾に凝って、グラスや陶磁器などの花瓶を利用することができ、床の間やディナーテーブルデコレーションなど和、洋どちらにもマッチした、装飾品として観賞することができる。
特許文献4に記載の発明は、底から排水せず、側面から排水する底が凹んだ鉢に、葉、茎、根を、野生同様に着生蘭を植え込み、紐などで着生蘭固定具に固定し、成長休止期(冬季、乾季)は蘭の最低気温以上を維持し、こぼれないように給水し、貯水し蒸散させ湿度を上げ、着生蘭が吸水し乾いたら給水し、貯水しと、乾湿を繰り返し栽培する。成長期(夏季、雨季)は屋内外などで雨水自然給水と給水の併用で、余分な雨水は側面から排水し、栽培することを特徴とするものである。
上記構成の特許文献4に記載の発明によれば、鉢の内面が平滑な材料を用いることで、鉢に根が食い込まず、根の取り外しを容易にすることができる上、植え替えが容易になる。
また、固形肥料は鉢に置けばよいので、液肥との併用を可能にすることができる。さらに、給水時間を大幅に短縮することができる。そして、水受け皿不要となり、根の多い蘭は植え込み材料も不要となり、育ちが良くなった。
また、貯水給水された水が蒸散するので、蘭の栽培に加湿装置の設置が不要にすることができる。
しかしながら、商業用として大量の着生ランを栽培する場合、個々の水盤の乾燥状態を確認する作業は極めて煩雑であり、生産性を向上しがたいという課題を有していた。
また、特許文献1に記載の発明において隔離用海面又は乾水草は野生蘭に湿気を供給するために常に湿潤状態となっており、このような隔離用海面又は乾水草に万一カビ等が繁殖した場合には、長深胴体内に収容される野生蘭の根が常時、カビ等の胞子にさらされることになり、その生育に悪影響を及ぼしかねないという恐れがあった。
さらに、特許文献1に記載の発明は、その構成から商品として着生ランを流通させる際に、梱包や搬送に適した形態であるとは言えなかった。
また、花瓶の内部の水量を確認できるようにする目的で内部が透けて見える花瓶を用いた場合、花瓶の内側や貯留された水の中に光合成を行う藻類が繁殖する可能性がある。この場合、ラン苗を商品とした場合の見映えが悪くなるだけでなく花瓶の内部を容易に掃除することができないという課題も有していた。
さらに、花瓶の内部一杯にランの根が伸びた場合に、花瓶からランを容易に抜き出すことができなくなってしまい、植替えをすることができないという課題もあった。
加えて、開口を有する容器に液体を収容した状態のものを商品として流通させることは困難であった。
また、貯留された水の中で雑菌が繁殖したり、光合成を行う藻類が繁殖した場合、商品とした場合の美観を損なうだけでなく、万が一貯留された水が腐敗した場合は、ランの生育に悪影響を及ぼしたり、あるいは、ランが枯死する可能性があった。
加えて、やはり開口を有する容器に液体を収容した状態のものを商品として流通させることは困難であった。
また、特許文献4に記載の発明においては、着生蘭の根は鉢の外に自由に伸びることができるので、着生蘭1株当たりの占有スペースが広くなってしまい、大量生産には向かないという課題もあった。
加えて、着生ランの根が外気に曝されたままだと根が乾燥しやすく、流通時に着生ランへのダメージが起こりやすくなり、商品価値の低下を招く恐れが高かった。
なお、本願発明でいう「着生ラン」とは、一般的な「着生ラン」すなわち、樹上や岩上に着生するラン科の植物のすべてを指し示すのではなく、「コチョウラン及びフウラン」のみを指し示すこととする。また、本願特許請求の範囲の記載についても同様である。
上記構成の発明において、第1の工程において、植込み材は第1の鉢内に着生ランの幼苗を支持固定させるという作用を有する。また、通常、着生ランの幼苗は、生育旺盛であり代謝機能が高いのでカビや雑菌に感染し難い。
他方、着生ランは通常、太い根を有しておりこの太い根がいわば貯水タンクとしての役割を果たすことで、水気に乏しい樹上や岩上においても生育できる。
しかしながら、幼苗期の着生ランは、根が十分に発達していないため乾燥に対する耐性が十分であるとはいえない。
そこで、請求項1に記載の発明における第1の工程において、植込み材は着生ランを第1の鉢の中に支持固定すると同時に、第1の鉢中における換気を制限するという作用を有する。
第1の工程が完了する頃になると、着生ランの根は十分に発達し、根において新たな細胞の分裂が頻繁に起こらなくなる。そして、このような着生ランの根の代謝機能の低下に伴って、根におけるカビや雑菌に対する抵抗性も低下する。言い換えると、着生ランの根が貯水タンクとして機能するようになる。
通常、自然界において樹上や岩上で生育する着生ランは、外気に根を曝した状態で生育するため、乾燥状態と湿潤状態が短期間のうちに繰り返される環境は本来着生ランの生育に望ましいと言える。このため、根が十分に発達した着生ランにおいては、根の表面を常に濡れた状態にしておく必要はない。つまり、植込み材を用いて根の周辺を湿潤に保っておく必要がない。
そこで、請求項1に記載の発明における第2の工程においては、第1の鉢から幼苗を取り出してその根から植込み材を分離し、第2の鉢に植込み材を用いることなく植付けることで、十分に生育した着生ランの根の表面が植込み材に吸収された水分により常に濡れたままの状態になるのを妨げるという作用を有する。
広辞苑によると「鉢」とは、「植物の植栽用の器」と記載されているが、請求項1記載の発明においては、第1および第2の鉢として、鉢底に水抜き用の孔を備えたものを使用している。このように請求項1記載の発明においては、鉢底に水抜き孔を形成しておくことで、第1又は第2の鉢に供給された水や液肥が、第1又は第2の鉢内に滞留するのを妨げるという作用を有する。
その一方で、第1および第2の鉢の側面に何ら孔を形成しないでおくことで、第1又は第2の鉢内の空気が積極的に外気と交換されるのを抑制して、着生ランの根からの水分の蒸散を穏やかにするという作用を有する。
つまり、請求項1記載の発明における第2の工程においては、植込み材を用いないで植付けることで給水時、又は、施肥時以外に第2の鉢内において着生ランの根の表面が濡れたままの状態にならないようにしつつ、吸水が完了した根から急激に水分が蒸散するのを抑制することで、着生ラン自体を健全な状態に保ち、その生育を促進するという作用を有する。
上記構成の発明は請求項1記載の発明と同じ作用に加え、第1及び第2の鉢を構成する材質を不透水性とすることで、着生ランの根と外気との接触を一層緩やかにして根が急速に乾燥するのを防止するという作用を有する。
つまり、根が乾燥状態に陥って着生ランの生育が停滞したり、停止するのを妨げるという作用を有する。
加えて、第1及び第2の鉢の内面に滑面性を付与しておくことで、着生ランの根が鉢の内面に食い込んで鉢に密着するのを抑制するという作用を有する。この結果、第1又は第2の鉢から着生ランを取り出す際に、鉢からの根の離間を容易にするという作用を有する。
上記構成の発明は、請求項2記載の発明を具体的な様態で明確化したものであり、請求項2記載の発明における第1及び第2の鉢と同じ作用を有する。
上記構成の発明は、着生ランを不透水性を有する容器に、底に水抜き孔を有する容器に植込むことで、給水後に余剰水が容器の外に速やかに排出させるという作用を有する。また、着生ランの根が不透水性の容器に収容されることで、容器の内部の空気と外気の交換が緩やかになり、給水又は施肥後に急激に根が乾燥するのを抑制するという作用を有する。
また、着生ランは、根が十分に発達すると、根自体が植物の貯水タンクとして機能する。すなわち、着生ランの根には多量の水が蓄えられている。
通常、このように水分を多く含んだ着生ランの根は、カビや雑菌が繁殖しやすく、給水又は施肥後に、長時間にわたって根の表面が濡れたままの状態が続くと、根腐れを起こすリスクが高まってしまう。
そこで、根が十分に発達した着生ランを、植込み材を用いることなく植付けることで、給水又は施肥後に、着生ランの根の表面を速やかに乾燥させて、カビや雑菌の根への感染を抑制するという作用を有する。
つまり、十分に発達した着生ランの根は、それ自体が給水タンクとして機能するので、根の表面に常時水分を供給しておく必要はない。その一方で、根が外気に曝されて水分が急速に奪われ、根が極度の乾燥状態に陥ると、着生ランの生育が遅くなったり停止したりしてしまう。
そこで、請求項4及び請求項5に記載の発明においては、着生ランを収容する容器に水抜き孔を形成しておき、かつ、植込み材を用いることなく植込んで栽培することで、着生ランの根と水分の接触を必要最小限度とし、さらに、着生ランの根を収容する容器を、不透水性を有する材質で構成することで、根から急激に水分が奪われるのを妨げるという作用を有している。
この結果、請求項4及び請求項5記載の発明においては、鉢内において着生ランの根をカビや雑菌の被害を受け難くするとともに、着生ランの生育が促進される環境にするという作用を有する。
そして、続く第2の工程においては、根が十分に発達した着生ランの幼苗を、水抜き孔を有する第2の鉢に植込み材を用いることなく植込むことで、着生ランの根への水分の接触を必要最小限度とすることができるという効果を有する。
この結果、着生ランの根が常に健全な状態に保たれることで、根腐れ等の損傷を生じ難くすることができる。これにより、新葉の生育、花芽の生育、新根の生育の全てが促進される。また、根が損傷を受けることなく長期間残存することで、着生ランの耐乾燥性が高まり、空中湿度の増減に対する適応力も高めることができる。
また、第2の工程においては、着生ランを植付ける際に植込み材を一切使用しないので、植え替え時に古い植込み材を取り除いたり、新しい植込み材をあてがう作業を省略することができるという効果を有する。この結果、植込み材を購入するための費用も削減することができる。すなわち、着生ランの生産にかかるコストを削減することができるという効果を有する。
さらに、第2の工程においては、給水時に着生ランの根に供給される水や液肥の余剰分は、水抜き孔から速やかに外部へと速やかに排出される。しかも、給水又は施肥後は、速やかに着生ランの根の表面を乾いた状態にすることができるので、着生ランに対して頻繁に給水、又は、給水及び施肥を実施することができる。
この結果、着生ランを積極的に肥培することができ、所望の大きさにまで生育させるための期間を短縮することができる。従って、着生ランの生産性を向上することができるという効果も有する。
さらに、第2の工程においては、第2の鉢の中が着生ランの根の生育に適した環境となるので、栽培中に着生ランの根が鉢の外に縦横無尽に伸びるのを防止することができる。この結果、出荷前の仕立てや、搬送が容易な着生ランを生産することができるという効果も有する。
すなわち、請求項1記載の方法によれば、根が十分に発達し、商品として流通させるために適した形態を有する健全な着生ランを、コストをかけず短時間で生産することができるという効果を有する。
この結果、根の急激な乾燥により着生ランの生育に停滞や停止が生じるのを防止することができる。
また、鉢の中の空気と外気との交換が緩やかになることで、鉢の内部において急激に湿度や温度が変化するのを防止することができるので、この点からも着生ランの生育の停滞や停止が生じるのを防止することができる。
通常、着生ランの苗を素焼きの鉢で育てた場合、多孔体である鉢のうち面に着生ランの根が食い込んでしまい、無理に鉢から引き抜こうとすると根が折れてしまったり、傷ついてしまう恐れがあった。
そして、最悪の場合、素焼きの鉢を割る以外に着生ランを取り出す方法がなくなってしまう。また、このような作業は手間がかかる上、鉢等の資材も無駄になってしまい効率がよい方法であるとは言えなかった。
そこで、請求項2に記載の発明においては、第1及び第2の鉢の内側が滑面性を有することで、第1及び第2の鉢からの着生ランの取り出しをスムーズにすることができるという効果を有する。
この結果、着生ランの植え替え作業を迅速に行うことができるので、着生ランの生産性を大幅に向上することができるという効果を有する。
この結果、着生ランに対して頻繁に給水、又は、給水及び施肥を実施することができるので、着生ランを所望の大きさにまで生育させるための期間を短縮することができる。このため、着生ランの生産性を向上することができるという効果も有する。
また、着生ランの根を収容する容器を不透水性を有する材質で構成し、かつ、容器の内側に滑面性を付与しておくことで、請求項3記載の発明と同様の効果を有する。
この結果、請求項4及び請求項5記載の発明によれば、植え替え時の作業性がよく、植込み材にかかるコストが安価で、しかも健全な着生ランを短期間に生産することができるという効果を有する。
さらに、請求項4及び請求項5記載の着生ランは、容器内に根が詰った状態となり十分な保水機能を備えている。このため、商品として流通させる際に頻繁に給水が行われなくとも、植物が大きなダメージを受ける恐れがない。しかも、商品として流通させる際に給水が行われた場合でも、植込み材が用いられていないので根が過湿状態に陥って根腐れを起こす心配が極めて少ない。従って、着生ランを商品として流通させるのに適した形態及び性質にすることができるという効果を有する。
加えて、請求項4及び請求項5に記載の着生ランは、通常の植物のように頻繁に潅水を行っても根腐れを起こす恐れが低いので、この着生ランを購入した消費者の栽培管理の手間を軽減することができ、積極的な栽培管理を楽しむための素材として着生ランを普及させることができるという効果を有する。
従来、着生ランの根腐れを防止する目的で様々な植込み材が開発され、その植込み材に適した鉢を用いることで根腐れの問題を克服しようとしてきた。
例えば、コチョウランの場合、植込み材料として水苔やバーク(木の皮を細かく砕いたもの。)が用いられ、鉢は素焼き鉢か合成樹脂製のものが主に使用されてきた。この場合、根腐れの原因となる根の過湿状態を避けるために、生産者は給水及び施肥管理に細心の注意を払っている。つまり、極力潅水を控えた栽培方法を実施している。
また、例えば、フウランの場合は、鉢内の通気性を改善するために側面に多数の貫通孔を形成した鉢を使用し、ひも状の長い水苔を太い根に巻き着けて、水苔が巻きつけられた根を鉢から露出させた状態で植え付けている。
そして、給水又は施肥管理はコチョウラン以上に厳しく管理されており、フウランにはほとんど施肥を行わない。
このように、着生ランを栽培する際の最大の問題は根腐れの発生であり、従来この根腐れの発生を防止するためには、給水や施肥を極力控える必要があった。
他方、着生ランを栽培する他の方法としては、ヘゴ板(木性シダ植物から作られる板材)か、それに類するものに自然と同じ着生状態をつくって栽培する方法もある。この場合、着生ランに根腐れが起こるリスクは低下するものの、着生ランの根が縦横無尽に伸びてしまい、作業性が低下する上、梱包や運搬も難しく営利目的の栽培方法としては適さないという課題があった。
ところが、商業目的でこのような着生ランを栽培する場合、作業性や仕立ての必要性、搬送の必要性の観点から、根が鉢に収容されていることが望ましく、このような、必要性から、着生ランは植込み材を用いて鉢植えにされてきた。しかしながら、本来根が裸出された状態を好む着生ランとって、植込み材とともに鉢植えにされることは大きなストレスとなり、この結果、根腐れを容易に起こすことから栽培が難しいというイメージが定着している。
従来公知の技術では、鉢植えにした着生ランへの水分や養分の補給は、液肥を混入した水の潅水により行っている。
より具体的には、植込み材として水苔やバークを用いた場合は、根が常に過湿状態になってしまわないように植込み材の乾燥の様子を確認しながら10日に1回程度潅水を実施している。
しかしながら、どんなに慎重に着生ランの栽培管理を行ったとしても、鉢内の湿気を嫌って根が鉢の外に伸びてしまったり、植え替え作業の煩雑さから植え替え時期が遅延して根腐れによる根の損傷が深刻化してしまっていた。
このため、着生ランが植え替え作業や、仕立て作業、搬送作業に適さないものになってしまうことも多かった。
すなわち、従来、着生ランを商業目的で栽培する際には、鉢中における水や液肥の滞留により過湿状態が発生することが最大の問題であり、着生ランを積極的に肥培することができなかった。
以下に、本発明の内容を詳細に説明する。
まず、実施例1に係る着生ランの栽培方法1においては、その準備段階として、例えば、以下に示すような方法で着生ランの稚苗を作成する。
(1)自然に又は人工的交配によりできた着生ランの種子を採取し、この種子を培地上において、必要に応じて植物ホルモン等を使用しながら、発芽発根させて稚苗を作成する。
(2)着生ランの成長点を切り取って培地上で、必要に応じて植物ホルモン等を使用して稚苗を誘導する。
(3)親株から子株を切り離して稚苗とする。
そして、図1及び図2に示すように、上記(1)〜(3)の方法で準備した着生ランは葉4に太い根5を1本〜数本程度備えた稚苗3a,3bとなり、この稚苗3a,3bの根5の部分をそれぞれ水苔7で包んで素焼き鉢2に植付けた後、水のみ、又は、液肥を混入した水を与えて根5を生育させる(ステップS1)。
より具体的には、コチョウラン又はフウランの稚苗3a,6aのそれぞれの根5に水苔7を巻きつけたものを口径10.5cmの3.5号鉢に約20本植え付けて、3〜4日に1回のペースで水苔7の乾燥具合を確認しながら慎重に潅水を行う。
なお、本願明細書中において「潅水」と記載した場合、着生ランに供給されるものは、水のみ、又は、水に液肥を混入したもののいずれかを指し示すものとする。
この場合、底に水抜き孔2aを有する素焼き鉢2を用い、必要に応じて、鉢底に軽石8を敷きつめて素焼き鉢2の底の排水性を高めてもよい。より具体的には、口径10.5cmの3.5号鉢の底に2〜3cmの厚さとなるよう軽石8を敷きつめておいてもよい。
また、一般に着生ランは乾燥する樹上や岩上で生活するため、根がいわば貯水タンクとしての役割を果たしている。しかしながら、根が十分に発達していない稚苗3a,6a期から幼苗3b,6b期にかけては、根の保水機能が不十分なため、乾燥状態が続くと最悪の場合、稚苗は枯死してしまう。
そこで、実施例1に係る着生ランの栽培方法1の稚苗生育工程(ステップS1)においては、稚苗3a,6aの根5に水苔7を巻着けることで、根5が急激に乾燥するのを防止している。
また、この水苔7は稚苗3a,6aを素焼き鉢2の内において支持固定するという作用も有している。
この結果、とりわけ高い保水性を有する水苔7の乾燥を促進することができるという効果を有する。
つまり、稚苗3a,6aの根5の急激な乾燥を防止する必要性を有するものの、稚苗3a,6aの根が長期間にわたって高湿状態に保たれるのは望ましくない。
そこで、水苔7を用いて稚苗3a,6aの根5の保水性を高めると同時に、素焼き鉢2を用いることで、長期間にわたって根5が過湿状態となるのを防止している。
この結果、稚苗3a,6a期に根5の急激な乾燥を防止しながらも、潅水の間隔を短くすることができるので、稚苗3a,6aには新鮮な水が絶えず供給されることになり、水苔7に滞留した水でカビや雑菌が繁殖して根腐れが起こるのを防止することができるという効果を有する。
また、特に着生ラン苗を素焼き鉢2に複数本寄せ植えにした場合、稚苗3a又は稚苗6aの1本当たりの水苔7の容積が小さくなり、稚苗3a,6aの給水機能による水苔7の乾燥を早くすることができるという効果を有する。この結果、一旦潅水した後、次回の潅水までの期間を短くすることができるという効果を有する。
加えて、一般に植物は密植されると、それぞれの固体がいちはやく生育に優位な環境を獲得しようとして活発に成長し、その生育が促進されるという作用を有する。着生ランの場合も、複数本の稚苗3a,6aを同じ鉢に植えつけることで、個々の稚苗3a,6aの生育を促進することができるという効果を有する。
しかしながら、実施例1に係る着生ランの栽培方法1における稚苗生育工程(ステップS1)では、水苔7の外に向って縦横無尽に根5伸びるまで栽培を続けることはしないので、このような不具合はほとんど生じない。
さらに、図2(a),(b)ではいずれも素焼き鉢2に複数の稚苗3a,6aを植込む場合を説明しているが、ごく小さな素焼き鉢2に稚苗3a,6aを1本ずつ植付けてもよい。
なお、素焼き鉢2と同様の機能を有するものとして、ピートモスやパルプを主原料として成形した鉢を用いることが可能である。この場合も、素焼き鉢2を用いた場合と同様の作用・効果を期待できる。
より具体的には、稚苗3a,6aを水苔7とともに素焼き鉢2から抜き取り、根の生育状況を目視により観察して判断する。
実施例1に係る着生ランの栽培方法1における幼苗生育工程(ステップS1)から、根部生育促進工程(ステップS2)への移行の適期は、素焼き鉢2内において隣り合う稚苗3a,6aの根5が十分に伸びて分離不能なまでに絡み合う前である。
より詳細には、3.5号鉢の底に2〜3cmの厚みとなるよう軽石8を敷きつめてから稚苗3a又は稚苗6aを約20本植えた場合、ステップS2への移行の適期は、根5が水苔7から軽石8の中にまで伸びた状態になった頃である。
実施例1に係る着生ランの栽培方法1においては、上述のステップS1を完了した後、単植え可能な程度に根が発達した幼苗3b,6bを単植えにする。
具体的には、素焼き鉢2から幼苗3b,6bを抜き出し、根5から水苔7をほぐして取り去り、根5を裸出させた状態としてから、合成樹脂製鉢9に植込み材であるバーク10とともに植付けて、再び3〜4日に1回程度の頻度で潅水を行いながら栽培を続ける(ステップS2)。
このステップS2では、特に根5の生育が促進されるため、寄せ植えにすると隣り合う幼苗3b又は幼苗6bの根が絡まりあってしまい、植え替えが困難になってしまう恐れがある。このため、ステップS2では幼苗3b,6bを単植えにする必要がある。
また、ステップS2で持いる植込み材のバーク10は、木の皮を粒状に破砕したものであり水苔7に比べて保水性が劣るものの、幼苗3b,6bでは単植え可能な程度に根5が発達しており根5の保水機能も高まってきていることから、幼苗3b,6bは多少の乾燥に対しては耐性を有している。
また、幼苗3b,6bの根5の成長は依然として活発であり、根5をバーク10とともに植え込んだ場合でも根腐れが生じるリスクはさほど高くはない。
この場合、合成樹脂製鉢9に水抜き孔9aを設けることで、幼苗3b,6bに給水又は施肥した際に、水抜き孔9aから余剰水を確実に外部に排出することができる。すなわち、合成樹脂製鉢9内に余剰水が滞留しないので、余剰水中にカビや雑菌が繁殖するのを防止することができる。
従って、幼苗3b,6bの根5が滞留した余剰水により根腐れを起こすのを防止することができる。
この結果、幼苗3b,6bの根5が外気に曝される場合に比べて、根5が乾燥する速度を緩やかにすることができるという効果を有する。
通常、着生ランはある程度の乾燥に対しては耐性を備えているが、乾燥状態が深刻になると、生育速度が遅くなったり、生育が停止したりする。
このため、着生ランの生育を促進するためには、根5が長時間にわたり過湿状態に陥ることを防止しながら、根5が極度に乾燥しないよう配慮する必要がある。
従って、合成樹脂製鉢9を不透水性とすることで、幼苗3b,6bの根5が極度に乾燥状態に陥るのを防止して着生ランの生育速度が遅くなったり、停止するのを防止することができるという効果を有する。
このため、根5が発達した着生ランを、素焼き鉢2等の内面に微細な凹凸を有するような容器に植え込むと、根5の組織の一部が容器の表面に食い込んでしまって容易に苗を取り出せなくなってしまう。
そこで、実施例1に係る着生ランの栽培方法1のステップS2においては、合成樹脂製鉢9としてその内面9bに滑面性を有するものを使用することで、根5が合成樹脂製鉢9の内面9bに密着するのを防止している。
つまり、合成樹脂製鉢9の内面9bが滑面性を有することで、あるいは、ステップS2に用いる鉢の内面が陶器やガラスの表面のように滑らかな状態であることで、ステップS2を完了した際に、合成樹脂製鉢9から根5が十分に発達した3b,6bを容易に取り出すことができるという効果が発揮される。
従って、図1に示すステップS2において十分に根が発達した幼苗3b,6bの鉢替え作業を迅速かつ容易にすると同時に、このとき幼苗3b,6bの根5が傷つくのを防止することができるという効果を有する。
従って、実施例1に係る着生ランの栽培方法1のステップS2においては、着生ランの幼苗3b,6bの根5を健全な状態に保ちつつ、その生育を促進することができ、さらに、植え替え時の鉢からの取り外しを容易にすることができるという効果を同時に有する。
例えば、内面に釉薬がかけられて滑らかな滑面を有する陶製の器や、表面に凹凸加工を施してないガラスの器を用いることもできる。より具体的には、容器の内面が光沢を有していれば、滑面性を有していると判断することができる。
さらに、合成樹脂製鉢9の底に設ける水抜き孔9aは、単数でも複数でもよいが、水抜き孔9aから根5が外部に出てしまうと合成樹脂製鉢9を取り出して植え替える際に、根5を傷つけてしまったり作業性が低下する恐れがあるので水抜き孔9aの数は少ない方がよい。
また、実施例1に係る着生ランの栽培方法1により特にコチョウランを栽培する場合、ステップS2に使用する合成樹脂製鉢9の大きさは2.5号(鉢の開口径7.5cm)よりも小さいことが望ましい。フウランの場合は、ステップS2に使用する合成樹脂製鉢9の大きさは2号(鉢の開口径約6cm)よりも小さいことが望ましい。いずれの場合も、単植えの際に上記のものよりも大きい鉢を使うと、植込み材の水分保持能力が過大となってしまい、すなわち、根5の給水能力を越えた多量の水分が合成樹脂製鉢9内に保持されることになり、根腐れが生じやすくなってしまう。
より具体的には、合成樹脂製鉢9内において幼苗3bや幼苗6bの根が合成c樹脂製鉢9の開口部を越えて外に伸び始めると同時に、合成樹脂製鉢9内において根5が密に張ってきた状態が根部生育促進工程(ステップS2)から以下に説明する根部充実工程(ステップS3)への移行の適期である。
図4(a),(b)はいずれも実施例1に係る根部充実工程の様子を示す断面図である。なお、図1乃至図3に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
上述のステップS2を完了した後、コチョウラン3(幼苗3b)又はフウラン6(幼苗6b)を合成樹脂製鉢9から抜き出し、根5から植込み材であるバーク10を分離して根5を裸出させた状態にして、ステップS2で用いた合成樹脂製鉢9と同等かそれよりもやや大きい合成樹脂製鉢11に植込み材を一切用いることなく植付ける。この時、合成樹脂製鉢9の外に伸びた根についても傷めないように丁寧に合成樹脂製鉢11内に収容する。
そして、夏季(概ね5月〜10月までの期間)には2日に1回のペースで、冬季(概ね11月〜4月までの期間)には3〜4日に1回のペースで潅水を行いながら栽培する(ステップS3)。
なお、ステップS3で用いられる合成樹脂製鉢11は、ステップS2で用いられる合成樹脂製鉢9と同じ構成を有するので、ここではその作用・効果に関する詳細な説明を省略する。
そして、余剰水は全て水抜き穴11aから外部へとスムースに排出され、合成樹脂製鉢11内には根5のみが収容されるので、潅水後、根5の表面は速やかに乾燥する。このため、合成樹脂製鉢11内に余剰水が滞留し、そこにカビや雑菌が繁殖するのを防止することができる。また、植込み材を用いないので、根5の表面でカビや雑菌が繁殖するのも防止することができる。
この結果、着生ランの根5を健全な状態に維持することができ、根腐れの発生を防止することができるという効果を有する。従って、根5からの水や養分の吸収する能力が高まり、葉4や図示しない花芽の生育を促進することができるという効果を有する。
しかも、植込み材を用いて植付ける場合に比べて潅水の頻度を2〜3倍程度増加させることができるので、この点からも着生ランの生育を促進することができる。
しかも、合成樹脂製鉢11の内面11b側が着生ランの根5の生育に極めて適した環境となるので、合成樹脂製鉢11の外に根が縦横無尽に伸長するのを防止することができる。従って、製品として着生ランを出荷する際に、例えば、装飾性の高い化粧鉢に見映え良く苗を植え込む作業を容易にすることができるという効果を有する。
加えて、着生ランに花芽がついた場合、その花芽を支える支柱を合成樹脂製鉢11内に密集した根5により支えることが可能となり、支柱を支持するために別途植込み材を準備する必要がない。このため、出荷準備のための作業性を向上し、かつコストを安価にすることができる。
なお、着生ランを大きな株に仕立てたい場合には、合成樹脂製鉢9や合成樹脂製鉢11と同様の性質を有する鉢を徐々に大きなものに取り替えながらステップS3を繰り返せばよい。例えば、2号鉢から2.5号鉢へ、2.5号鉢から3号鉢へのように、0.5寸ずつ鉢の大きさを大きくしていけばよい。
しかも、実施例1に係る着生ランは、根5が合成樹脂製鉢11の外に向って伸びる恐れが少ないので、着生ラン同士を適度に密集させた状態で栽培管理を行うことができ、しかも、仕立てや搬送作業も容易である。
さらに、上述のような実施例1に係る着生ランの栽培方法1により栽培された着生ランは、極めて健全であり、消費者の手元にわたった際に、潅水のタイミングに細心の注意を払わなくとも根腐れがおこる恐れは少ない。加えて、根5がさらに成長した場合の鉢替え作業も極めて容易になる。
このため、着生ランを単なる贈答用等の消耗品としてではなく、消費者自身が積極的な栽培管理を楽しむことのできる対象として提供することができるという効果も有する。
実施例2に係る着生ランの栽培方法は、先に述べた実施例1に係る着生ランの栽培方法1を一層簡略化したものである。実施例2に係る着生ランの栽培方法は、実施例1に係る着生ランの栽培方法1とほぼ同じ作用・効果を有するものであり、ここでは、実施例1に係る着生ランの栽培方法1との相違点ついて説明する。
一般に、着生ランの根は過湿状態に陥ると容易に根腐れを起こすという短所を有していた。
しかしながら近年、着生ランの交配・育苗技術の発展に伴い、根腐れを起こしにくい系統の着生ランが選抜・作出されるようになってきた。
この結果、無菌状態を維持することで、幼苗の初期までフラスコ内において栽培できるものもある。
図5に示すように、実施例2に係る着生ランの栽培方法12においては、まず実施例1において記載したような実生苗又はクローン苗(先に述べた(1)又は(2)に記載の手法を参照。)で作成された稚苗3a,6aを、無菌状態を維持しながら順次培地を入れた大きなフラスコに植え替えて、根5がある程度保水機能を有する幼苗3b,6b初期段階まで栽培する(ステップS20)。
そして、この稚苗生育工程(ステップS20)を完了した後、実施例1に係る着生ランの栽培方法1と同じ根部生育促進工程(ステップS2)及び根部充実工程(ステップS3)を実施すればよい。
その後、合成樹脂製鉢9内において根5が鉢底近くまで伸びてきたら、合成樹脂製鉢9から幼苗3b,6bを取り出して、植込み材を取り除き、合成樹脂製鉢9よりも一回り大きな合成樹脂製鉢11に植込み材を一切用いることなく植え付けて、実施例1に係る着生ランの栽培方法1と同じ要領で潅水を行って栽培すればよい(ステップS3)。
なお、実施例2に係る着生ランの栽培方法12においては、根腐れに強い系統の着生ランを用いることで、根部生育促進工程(ステップS2)を実施する際に植込み材として水苔7を用いることができる。
上述のような実施例2に係る着生ランの栽培方法12は、着生ランを幼苗3b,6bの初期までフラスコ内において無菌状態を維持しながら生育させることで、この期間内に根腐れ等が原因で着生ランが枯死する恐れを大幅に低減することができるという効果を有する。
図6(a)はコチョウランの根を植込み材を用いて栽培した場合の根部の様子を示す写真であり、(b)は本発明に係る着生ランの栽培方法によって栽培された胡蝶蘭の根部を示す写真である。
図6(a)は、一般に市販されているコチョウランの花が終わった株から植込み材を取り除いたものである。図6(a),(b)に示すコチョウランはいずれも同程度の大きさの葉を4枚ずつ有する苗であるが、植込み材(水苔)を用いて栽培した方は根の本数が明らかに少なく、その一部は褐変したり根腐れを起こしてしまっている。
他方、本発明に係る着生ランの栽培方法1により栽培したコチョウランの根は、ポリポット内に根が密集しており、根の表面が白く極めて健全である。
図7は本発明に係る着生ランの栽培方法によって栽培されたフウランの根部を示す写真である。
図7に示すように、フウランの根もポリポット内で密集した状態で生育しており、十分に太く根の表面が白っぽく極めて健全である。
この場合、着生ランの花芽に支柱を立てる際に、根を傷つける恐れを低減することができると同時に、支柱を立てる作業(仕立て作業)の作業効率を高めることができるという効果有する。
また、本願明細書では、給水性を有し、鉢の中において植物の根に水分等を供給する作用を有するものを植込み材と定義し、吸水性を有さず植物の根への給水能力を持たない上述のような支柱受けを植込み材と区別する。
さらに、このような着生ランは、根が充実しているため優れた耐乾性を有している。このため、商品として流通する過程において、頻繁に潅水が行われなくとも着生ランの活力を保つことができる。
しかも、出荷用の株は植込み材を一切用いることなく植え付けられているので、流通の過程において潅水が行われた場合に、余剰水が速やかに排出されるので根腐れが起こりにくい。このため、流通時に着生ランの衰弱が起こり難くなり、着生ランの商品価値の低下が起こるのを防止することができるという効果も有する。
加えて、本発明の実施例1又は実施例2に係る着生ランの栽培方法により栽培された着生ランは、大量の根が鉢の中にコンパクトに根が収容されているので、多数の株をある程度密集させた状態で栽培管理をすることができるだけでなく、鉢の内部に密集する根によって仕立て用の支柱を支持することができるという効果も有する。このため、商品として出荷する際に使用する資材の量を節約できるという効果を有する。
すなわち、本発明の実施例1又は実施例2に係る着生ランの栽培方法及びそれにより栽培された着生ランによれば、商品として流通させるのに適した形態及び性質を有する着生ランを容易に生産することができるという効果を有する。
Claims (5)
- コチョウラン又はフウランの幼苗を、植込み材とともに底に水抜き孔を有する第1の鉢に植えつけて生育させる第1の工程と、
この第1の工程の後に、前記第1の鉢から前記幼苗及び前記植込み材を取り出して前記幼苗から前記植込み材を分離し、前記幼苗の根を、植込み材を用いることなく前記第1の鉢と同等以上の大きさを有し、底に水抜き孔を有する第2の鉢に収容し、水のみ、又は、水及び液肥、を与えて生育させる第2の工程とを有することを特徴とするコチョウラン又はフウランの栽培方法。 - 前記第1及び第2の鉢はいずれも、不透水性を有する材質からなり、その内面に滑面性を有することを特徴とする請求項1に記載のコチョウラン又はフウランの栽培方法。
- 前記第1及び第2の鉢はいずれも、合成樹脂製又は陶製又はガラス製であることを特徴とする請求項2に記載のコチョウラン又はフウランの栽培方法。
- 不透水性を有する材質からなり、底に水抜き孔を備え、その内面に滑面性を有する容器に、植込み材を用いることなく植付けて栽培されたことを特徴とするコチョウラン。
- 不透水性を有する材質からなり、底に水抜き孔を備え、その内面に滑面性を有する容器に、植込み材を用いることなく植付けて栽培されたことを特徴とするフウラン。
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