JP4249400B2 - 蒸気乾き度測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸気中の水分の含有量、即ち蒸気の単位体積当りの全質量に対する乾き飽和蒸気の占める質量の割合を示す、所謂乾き度:Xを測定する装置に関する。乾き度がXの場合、湿り度は(1−X)として表される。各種ボイラや蒸気動力を利用する機器、乾燥設備などでは、熱管理のために蒸気の乾き度又は湿り度を測定する必要がある。これは蒸気中の水分の含有量によって例えば乾燥状態が変化してしまうためである。
【0002】
【従来の技術】
従来の蒸気乾き度測定装置としては、蒸気の等エンタルピ変化を利用して乾き度を測定する絞り乾き度計がある。これは、蒸気供給管からノズルに湿り蒸気を通して測定容器内に噴射し、被測定蒸気を断熱膨脹(等エンタルピ変化)させて過熱蒸気とし、ノズルの上流側の圧力と測定容器内の圧力及び温度を検出することにより、モリエール線図あるいは飽和蒸気表あるいは過熱蒸気表を用いて乾き度を測定するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の絞り乾き度計では、測定可能な蒸気圧力および乾き度の範囲が限られ、一部の湿り蒸気しか測定できない問題があった。即ち、測定すべき湿り蒸気の圧力や乾き度が低い場合は、断熱膨張後に過熱蒸気状態とならないために、測定することができないのである。
【0004】
また、上記従来の乾き度計では、被測定蒸気が蒸気供給管から測定容器に供給される間が一般的な断熱材によって保温されているだけであるために、放熱によってその乾き度が変化してしまう問題があった。乾き度が変化すると、本来測定すべき蒸気の乾き度と、測定した蒸気の乾き度の値が異なるために、本来測定すべき蒸気の乾き度を正確に検出することができなくなる。
【0005】
従って、本発明の課題は、測定可能な乾き度の範囲が広く、且つ、蒸気供給部の放熱を極力少なくして正確に乾き度又は湿り度を測定できる蒸気乾き度測定装置を得ること。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために講じた本発明の手段は、蒸気の乾き度又は湿り度を測定するものにおいて、所定量の液体を貯留する測定容器と、当該測定容器に被測定蒸気を供給する蒸気供給手段と、当該蒸気供給手段を蒸気で保温する蒸気保温部材と、蒸気供給手段から供給した蒸気量を検出する蒸気量検出手段と、当該蒸気量検出手段が供給蒸気の凝縮した測定容器内の液体の上昇した量を測定して供給蒸気量を検出するものであると共に、測定容器内の液体の温度変化を検出する温度検出手段と、検出した温度変化と供給蒸気量から供給蒸気のエンタルピを演算し、当該供給蒸気のエンタルピから蒸気の乾き度又は湿り度を算出する演算制御部とを具備することを特徴とする蒸気乾き度測定装置にある。
【0007】
【発明の実施の形態】
測定容器に所定量の液体が貯留され、蒸気供給手段から所定量の被測定蒸気が測定容器に供給されることにより、測定容器内の液体は、供給される蒸気の熱量に応じて温度が上昇する。この温度上昇を温度検出手段で検出し、一方、供給された蒸気量を蒸気量検出手段で検出して、この供給蒸気量と温度変化から演算制御部で熱量換算に基づき供給蒸気のエンタルピを演算し、この供給蒸気のエンタルピから蒸気の乾き度又は湿り度を算出することができる。
【0008】
蒸気の乾き度とエンタルピの関係は、各圧力において、乾き飽和蒸気の乾き度を100パーセントとし飽和水の乾き度を0パーセントとして、乾き飽和蒸気のエンタルピと飽和水のエンタルピの値の間を比例配分することにより、一義的に決定される。
【0009】
従って、各圧力毎の蒸気の乾き度又は湿り度とエンタルピの関係を求めて記憶しておくことにより、演算した被測定蒸気のエンタルピから蒸気の乾き度又は湿り度を算出することができる。
【0010】
蒸気供給手段を蒸気で保温する蒸気保温部材を取り付けたことにより、従来のように断熱材を取り付けるだけの場合と比較して、蒸気供給手段をより確実に保温して被測定蒸気の乾き度あるいは湿り度の変化を防止することができる。
【0011】
【実施例】
図1に蒸気乾き度測定装置の全体構成図を示す。被測定蒸気が左側から右側へ流動する蒸気配管1に、蒸気供給手段としての蒸気供給路2の一端3を接続し、バルブ6を介して他端4を円筒タンク状の測定容器5内に延設する。
【0012】
蒸気供給路2の部分拡大図を図3に示すように、その端部3は蒸気配管1内で蒸気の流下方向に開口部を有し、被測定蒸気を容器5内に供給する。蒸気配管1には、被測定蒸気の圧力を検出するための圧力センサ10を取り付ける。また、蒸気供給路2の外周には蒸気保温部材としての保温管7をほぼ全長にわたって設ける。
【0013】
保温管7内部の蒸気供給路2には、複数の開口部26を設けて、開口部25から容器5に供給する蒸気の一部を保温管7内にも供給する。従って、蒸気供給路2は、保温管7内の蒸気によって保温され、容器5に至る間に蒸気の乾き度が変化することを防止される。保温管7の下方に接続管8を設けてスチームトラップ9を取り付ける。保温管7内で蒸気の凝縮した復水がこのスチームトラップ9から外部に自動的に排出される。保温管7の上方には、管路27とバルブ28を取り付けて、バルブ28を開弁することにより大気と連通可能とする。
【0014】
図3においては、蒸気配管1の両端にフランジ29,30を設けて、既設の蒸気配管に取り付けと取り外しが容易にできるようにしてある。従って、蒸気の乾き度を測定する既設の蒸気配管にフランジ29,30を接合して容易に測定することができる。
【0015】
図1に示す測定容器5には、内部に所定量の液体例えば常温水を供給する水供給管11を、バルブ12を介して接続する。容器5下部には、容器5内液体を排出するブロー管13を、バルブ14を解して接続すると共に、容器5内にパイプ15を連通して所定液位までの液体を排出する排出管16を、バルブ17を介して接続する。
【0016】
容器5の側部には内部の液温を検出する温度検出手段としての温度センサ18,19を取り付ける。容器5の上部には、蒸気量検出手段の一例としての水頭圧センサ20を取り付けると共に、その上方に容器5の内径よりも小さな内径を有する小径円筒部21を、容器5と連通して形成する。小径円筒部21の上端には大気連通管22を接続する。
【0017】
容器5に取り付けたそれぞれのセンサ18,19,20と、蒸気配管1に取り付けた圧力センサ10は、図示しない演算制御部と電気接続する。また、バルブ6,12,14,17等も演算制御部と接続して、演算制御部からの開閉指令によって自動的に開閉弁させる。
【0018】
測定容器5の内部にはコイル状の蒸気供給管4を配置する。コイル状の蒸気供給管4には図示しない多数の開口部を設けて、流入してきた蒸気を容器5内に所定量貯留されている水の全体に均一に噴射させる。
【0019】
蒸気の乾き度又は湿り度を測定するには、容器5内に水供給管11から所定量例えば図1に示すL2のレベルまで常温水を供給し、蒸気供給路2から被測定蒸気を供給して水を昇温させる。熱交換した蒸気は復水となって容器5内の液位をレベルL3まで上昇させる。この場合、被測定蒸気の供給量は、液位L2からL3までの上昇量を水頭圧センサ20で検出することができる。
【0020】
この供給蒸気量と、予め容器5内に貯留していた液体の量(レベルL2)と温度、及び、温度センサ18,19で検出した液体の温度上昇から、演算制御部で熱量換算に基づき供給蒸気のエンタルピを演算して、この供給蒸気のエンタルピから蒸気の乾き度又は湿り度を算出することができる。
【0021】
蒸気の乾き度とエンタルピの関係は、図2に示すように各圧力において、乾き飽和蒸気の乾き度を100パーセントとし飽和水の乾き度を0パーセントとして、乾き飽和蒸気のエンタルピと飽和水のエンタルピの値の間を比例配分することにより、一義的に決定される。例えば図2の圧力Pの場合、A点で示すエンタルピの場合が乾き度100パーセントであり、B点で示すエンタルピの場合が乾き度0パーセントとなり、その間を比例配分することによって、圧力Pにおける乾き度とエンタルピの関係が求まる。
【0022】
各圧力毎の蒸気の乾き度又は湿り度とエンタルピの関係を予め求めて記憶しておき、圧力センサ10で検出した被測定蒸気の圧力を基にして演算した被測定蒸気のエンタルピから蒸気の乾き度又は湿り度を算出することができる。
【0023】
本実施例においては、被測定蒸気の乾き度又は湿り度をほぼ連続的に測定することができる。即ち、容器5のレベルL3に達した液位を、排出管16から排出してレベルL1まで低下させ、続いて供給管11から液体を供給してレベルL2まで上昇させた後、被測定蒸気をレベルL3まで供給することによって、再度被測定蒸気の乾き度又は湿り度を測定することができる。従って、この測定サイクルを連続することにより、蒸気の乾き度又は湿り度をほぼ連続的に測定することができる。
【0024】
本実施例においては、蒸気量検出手段の一例として水頭圧センサ20を用いた例を示したが、その他に、測定容器5全体の重量を重量計で測定して重量の増加分から供給蒸気量を検出したり、蒸気供給路2の途中に蒸気流量計等の流量測定機能部を設けたり、あるいは、測定容器5上部の小径円筒部21の液位の変化を各種レベル計で測定することによっても、同様に行うことができる。
【0025】
本実施例においては、測定容器5やバルブ等の保温に関して記載していないが、実施することが常識として省略した。また、容器5内の温度検出に関して、温度センサ18,19を2本用いた例を示したが、1本あるいは2本以上とすることもできる、また、容器5内の液体の温度を均一にするために、液体の攪拌手段を取り付けることもできる。
【0026】
本実施例においては、保温管7内に蒸気供給路2の開口部26から保温用の蒸気を供給する例を示したが、保温管7内へは例えば蒸気配管1内から蒸気を供給することも、あるいは、別途の蒸気源から供給することもできる。
【0027】
また本実施例においては、容器5内にパイプ15を連通して所定液位、即ち、レベルL1の液位まで、排出管16から液体を排出する例を示したが、水頭圧センサ20を容器5の液位レベルL1の下方に取り付けることによって、全ての液位L1、L2、L3を水頭圧センサ20で検出して液位を制御又は検出することができる。
【0028】
【発明の効果】
上記のように本発明によれば、被測定蒸気のエンタルピから乾き度又は湿り度を算出することにより、流体を過熱状態にすることなく乾き度又は湿り度を測定できるので、測定可能範囲が限られることが無くなると共に、蒸気供給部の放熱を極力少なくして正確に乾き度又は湿り度を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による蒸気乾き度測定装置の全体構成図。
【図2】本発明による蒸気乾き度測定装置で用いる、各蒸気圧力毎の蒸気のエンタルピと乾き度の関係図。
【図3】本発明による蒸気乾き度測定装置の蒸気供給路の部分拡大断面図。
【符号の説明】
1 蒸気配管
2 蒸気供給路
5 測定容器
7 保温管
9 スチームトラップ
10 圧力センサ
11 水供給管
16 排出管
18,19 温度センサ
20 水頭圧センサ
21 小径円筒部
29,30 フランジ
Claims (1)
- 蒸気の乾き度又は湿り度を測定するものにおいて、所定量の液体を貯留する測定容器と、当該測定容器に被測定蒸気を供給する蒸気供給手段と、当該蒸気供給手段を蒸気で保温する蒸気保温部材と、蒸気供給手段から供給した蒸気量を検出する蒸気量検出手段と、当該蒸気量検出手段が供給蒸気の凝縮した測定容器内の液体の上昇した量を測定して供給蒸気量を検出するものであると共に、測定容器内の液体の温度変化を検出する温度検出手段と、検出した温度変化と供給蒸気量から供給蒸気のエンタルピを演算し、当該供給蒸気のエンタルピから蒸気の乾き度又は湿り度を算出する演算制御部とを具備することを特徴とする蒸気乾き度測定装置。
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