JP4602578B2 - 二相流体の乾き度又は湿り度制御装置 - Google Patents

二相流体の乾き度又は湿り度制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸気と凝縮液としてのドレン、あるいは、冷媒ガスと冷媒液などの気液二相流体が混合した流体の乾き度又は湿り度を任意に制御する装置に関する。例えば、蒸気の単位体積当りの全質量に対する乾き飽和蒸気の占める質量の割合を乾き度Xと言い、乾き度がXの場合、湿り度は(1−X)で表される。各種ボイラや蒸気動力を利用する機器、乾燥設備などでは、蒸気中の水分の含有量によって例えば稼動効率や乾燥状態が変化してしまうために、乾き度あるいは湿り度が測定され制御される。
【0002】
【従来の技術】
従来の乾き度又は湿り度制御装置としては、例えば特許第2873640号公報に記載されたものがある。これは、蒸気の乾き度を測定する絞り乾き度計又は赤外線式湿り度計と、蒸気を加熱したり冷却する乾き度及び湿り度調節装置から成るもので、供給蒸気の乾き度又は湿り度を任意に制御することができるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の乾き度制御装置に用いる絞り乾き度計や赤外線式湿り度計では、気相としての蒸気の乾き度を測定することはできるが、流体配管中に混在する層状の凝縮液としてのドレンを考慮した、流体配管全体の乾き度を測定して制御することができない問題があった。
【0004】
例えば実際の蒸気配管においては、気相としての蒸気の層の下部に、液相としてのドレンの層が混在した状態となっている場合が多々ある。上記従来の乾き度計では、蒸気中に含まれる微細な水滴の量の多少に基づいて変化する蒸気の乾き度を測定することはできるが、下層のドレンを考慮した配管全体の乾き度を測定することができず、従って、配管全体の乾き度を制御することもできないのである。
【0005】
従って、本発明の課題は、流体配管中に混在する層状の液体も含めた配管全体の流体の乾き度又は湿り度を測定し、制御することのできる、二相流体の乾き度又は湿り度制御装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために講じた本発明の手段は、配管を流下する流体の乾き度又は湿り度を測定する乾き度又は湿り度測定手段と、流体の乾き度又は湿り度を調節する乾き度又は湿り度調節手段を備えて、当該乾き度又は湿り度調節手段を、供給する蒸気を加熱して乾き度を高めるための加熱器と、反対に蒸気に水滴を供給して乾き度を低めるための冷却器とで構成して、供給する流体の乾き度又は湿り度を所定値に制御するものにおいて、流体が気液の二相流体であり、且つ、流体の乾き度又は湿り度測定手段が、気相流体の乾き度又は湿り度を検出する気相流体乾き度検出手段と、流体配管中の層状の液相流体の液位から重量を検出する液相流体液位重量検出手段と、から成り、当該気相流体乾き度検出手段が、気相流体の動圧を検知するピトー管又は弾性付勢されたフラップから成る動圧検知手段と、当該動圧検知手段で検知した動圧値と気相流体の流速から気相流体の比重量又は比容積を演算する比重量又は比容積演算手段と、当該気相流体の比重量又は比容積と乾き度又は湿り度との関係式に基づいて気相流体の乾き度又は湿り度を算出する演算制御部と、を具備して、気相流体の乾き度と、液相流体液位重量検出手段で検出した液位から流体配管内の液相と気相の単位容積を算出して、気相の単位容積と乾き度から、気相流体中の気体重量Sと液体重量Dを算出すると共に、液相の単位容積から液相流体の重量D´を算出することによって、気液二相流体の乾き度X=S/(S+D+D´)として流体配管全体の乾き度又は湿り度を測定し制御することを特徴とする。
【0007】
また、請求項1に係る発明は、前記気相流体乾き度検出手段が、気相流体の動圧を検知するピトー管又は弾性付勢されたフラップから成る動圧検知手段と、当該動圧検知手段で検知した動圧値と気相流体の流速から気相流体の比重量又は比容積を演算する比重量又は比容積演算手段と、当該気相流体の比重量又は比容積と、乾き度又は湿り度との関係式に基づいて、気相流体の乾き度又は湿り度を演算制御することを特徴とするものである。
【0008】
請求項に係る発明は、請求項の構成に加えて、前記気相流体の流速を流速検出手段で検出して、検出した流速値を前記比重量又は比容積演算手段に供給するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項に係る発明は、請求項の構成に加えて、前記動圧検知手段がピトー管又は弾性付勢されたフラップであると共に、流下する気相流体の静圧を検知する静圧検知手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項に係る発明は、請求項の構成に加えて、前記動圧検知手段がピトー管である共に、当該ピトー管で静圧も検知することを特徴とする。
【0011】
請求項に係る発明は、請求項1に係る発明を実施するのに好適な実施形態を特定するものであり、前記液相流体液位重量検出手段が、流体配管の底部外面に取り付けられた超音波送受信器と、当該超音波送受信器から上方に向けて放射された超音波が液面で反射されて戻ってくるまでの時間から流体配管内の液位を検出する液位検出手段を具備して、当該液位検出手段で検出された液位から流体配管内の気相流体と液相流体の単位容積を算出して、液相流体の単位容積から重量を演算算出することを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
気相流体乾き度検出手段で気相流体の乾き度を検出し、液相流体液位重量検出手段で検出した液位から流体配管内の液相と気相の単位容積を算出して、気相の単位容積と乾き度から、気相流体中の気体重量Sと液体重量Dを算出すると共に、液相の単位容積から液相流体の重量D´を算出することによって、気液二相流体の乾き度X=S/(S+D+D´)として流体配管全体の乾き度又は湿り度を測定し制御することができる。
【0013】
動圧検知手段で流下する気相流体の動圧を検知して、この検知した動圧値と気相流体の流速から、比重量又は比容積演算手段で、動圧値=ρV2/2式により、比重量又は比容積を演算することができる。ここで、ρは気相流体の比重量で、Vは流速であり、比容積:vはρの逆数として求めることができる。
【0014】
例えば気相流体としての蒸気の比重量又は比容積と、蒸気の乾き度又は湿り度との間には、所定の定義式で表される関係式があり、比重量又は比容積演算手段で演算した値と、この関係式から、蒸気の乾き度又は湿り度を算出して、供給蒸気の乾き度又は湿り度を任意に制御することができる。
【0015】
気相流体の流速が不明確な場合は、請求項3に示すように、流速検出手段で気相流体の流速を検出して、検出した流速値を前記比重量又は比容積演算手段に供給して演算することができる。
【0016】
気相流体の静圧が不明確な場合は、請求項4に示すように、動圧検知手段としてピトー管又は弾性付勢したフラップとに加えて、静圧検知手段を用いることにより、流下する気相流体の静圧も簡単に検知して、乾き度を算出して制御することができる。また、ピトー管に静圧管を備えた二重管とすることにより、ピトー管で総圧と静圧の差としての動圧と、静圧の両方を検知して、乾き度を算出して制御することができる。
【0017】
液相流体液位重量検出手段において、流体配管の底部外面に取り付けられた超音波送受信器から上方に向けて放射された超音波が、液面で反射されて戻ってくるまでの時間から流体配管内の液位を検出する。この検出された液位から液相部と気相部の面積を算出し流体配管の単位長さにおける液相と気相の単位容積を算出する。また、算出した液相の単位容積と比容積から液相流体の重量を算出することができる。
【0018】
【実施例】
本実施例においては、蒸気とドレンの気液二相流体の乾き度を制御する例を説明する。また本実施例においては、気相流体乾き度検出手段としてピトー管1を用いた例を、及び、液相流体液位重量検出手段として超音波送受信器2を用いた例を示す。
【0019】
図1において、被制御流体としての蒸気とドレンの混合流体が左側から右側へ流下する上下の蒸気配管3と、乾き度又は湿り度を調節する調節手段4と、乾き度又は湿り度測定手段24とで二相流体の乾き度又は湿り度制御装置を構成する。下部の蒸気配管3は、調節手段4を通り、上部に拡大して図示した蒸気配管3と連通する。蒸気配管3の中では、上部に蒸気5が、下部にドレン6が層状に流下し、更に、上部の蒸気5は、乾き飽和蒸気と微細な水滴が混合した所謂湿り蒸気状態のものである。
【0020】
動圧検知手段としてのピトー管1の端部開口7を、蒸気配管3のほぼ中心部に配置して、上部の圧力変換器8と連通する。本実施例のピトー管1は、流体の総圧を検出することのできる一重管のものを使用する。
【0021】
ピトー管1の端部開口7の上方には、被測定蒸気の静圧を検出する静圧検知手段としての圧力センサ9を取り付ける。ピトー管1で検出した総圧から圧力センサ9で検知した静圧を減じることにより、蒸気の動圧を求めることができる。尚、ピトー管1に静圧管を備えて静圧を検知することのできる二重管方式のものを用いる場合、圧力センサ9は必ずしも取り付ける必要はない。また、蒸気の静圧が既知の場合も、圧力センサ9は必ずしも取り付ける必要はない。
【0022】
圧力センサ9の更に上流側には、蒸気配管3内を通過する蒸気の流速を検出する流速検出手段としての流速センサ10を取り付ける。流速センサ10は、内部を図示しないセンサ部10と流速変換器21とで構成する。尚、流速センサ10は、通過蒸気の流速が既知の場合は必ずしも取り付ける必要はない。
【0023】
蒸気配管3の底部外周に超音波送受信器2を取り付ける。一方、流速センサ10の上流側には、冷却流体の補給管22と排出管23を、それぞれ蒸気配管3の上部と下部に接続する。
【0024】
乾き度又は湿り度調節手段4は、供給する蒸気を加熱して乾き度を高めるための加熱器11と、反対に蒸気に水滴を供給して乾き度を低めるための冷却器12とで構成する。
【0025】
加熱器本体13に、バルブ19を介して加熱流体供給管14と排出管15を接続し、加熱流体の供給量をコントロールして加熱器本体13内を通過する蒸気を適宜加熱することによって、蒸気の乾き度を任意に高めることができるものである。
【0026】
冷却器本体16には、バルブ20を介して冷却水供給管17を接続して、蒸気の乾き度を任意に低めることができるものである。冷却器本体16の下部にはスチームトラップ18を接続して、冷却器本体16内の余剰の冷却水を外部に排出する。
【0027】
それぞれのバルブ19,20と、ピトー管1の圧力変換器8と、圧力センサ9と、流速変換器21、及び、超音波送受信器2は、図示しない演算制御部と電気接続する。
【0028】
気相流体乾き度検出手段としてのピトー管1を用いて、蒸気5の乾き度X1又は湿り度(1−X1)を測定するには、まず、ピトー管1で蒸気5の総圧を検知し、この総圧と静圧の差としての動圧値と、蒸気5の流速Vとから、比重量又は比容積演算手段で、動圧値=ρV2/2式によって、蒸気5の比重量又は比容積を演算する。尚、比容積vは、比重量ρの逆数として求まる。
【0029】
蒸気5の比重量又は比容積と、乾き度又は湿り度との間には、所定の関係式が存在する。即ち、ρ=X1/v〃+(1−X1)/v´式が成り立つ。ここで、ρは蒸気5の比重量、X1は蒸気5の乾き度、v〃は飽和蒸気の比容積、v´は飽和水の比容積である。v〃とv´は、被測定蒸気の静圧が判れば蒸気表から一義的に求めることができる。従って、圧力センサ9で蒸気配管3内の静圧を測定すると共に、予め記憶しておいた蒸気表の各圧力ごとの、飽和蒸気の比容積と飽和水の比容積から、v〃とv´を求めることができる。
【0030】
上記の式、ρ=X1/v〃+(1−X1)/v´において、ρとv〃とv´が求まることによって、被測定蒸気5の乾き度X1を求めることができ、同じく、湿り度(1−X1)を求めることができる。
【0031】
次に、超音波送受信器2で、蒸気5とドレン6の単位容積を検出する例を説明する。蒸気配管3の底部外面に取り付けた超音波送受信器2を、図示しない演算制御部に接続する。演算制御部には予め飽和蒸気及び飽和水の比容積と蒸気圧力の関係を記憶しておく。
【0032】
超音波送受信器2から、所定時間毎に蒸気配管3の底部外面から上方に向けて超音波を放射し、ドレン6の上液面で反射されて戻ってくるまでの時間から蒸気配管3内のドレンの液位を検出し、検出した液位から所定管径を有する蒸気配管3の蒸気部5の面積とドレン部6の面積を算出し、蒸気配管3の単位長さにおける蒸気5の単位容積V1とドレン6の単位容積V2を算出する。
【0033】
次に、算出した蒸気5の単位容積V1と乾き度X1から、蒸気5中の乾き飽和蒸気の重量Sと、蒸気5中に含まれている微細な水滴状のドレンの重量Dを算出する。即ち、X1=S/(S+D)で表され、X1が既に求まっており、同様に既知のV1におけるSとDの比率からSとDを算出することができる。
【0034】
次に、算出したドレン6の単位容積V2に、蒸気配管3の圧力に基づく飽和水の比容積の逆数を掛け合わせてドレン6の重量D´を算出して、蒸気5とドレン6から成る二相流体の乾き度XをX=S/(S+D+D´)として、流体配管3全体の乾き度を求めることができる。
【0035】
更に、演算制御部で求まった全体の乾き度又は湿り度と、設定入力された設定値とが比較され、両者の偏差を例えば零にするように演算制御部からバルブ19,20への開度信号が発せられバルブ19,20が開閉制御されて、供給蒸気の乾き度又は湿り度が任意に制御される。
【0036】
本実施例においては、動圧検知手段としてピトー管1を用いた例を示したが、その他にバネ等で弾性付勢した所定面積を有する抵抗板としてのフラップを取り付けて、被測定蒸気の動圧に基づくフラップの変位を検出することにより、動圧検知手段とすることができる。
【0037】
本実施例における流速センサ10としては、電磁式や超音波式、渦式、熱式、タービン式、あるいは、レーザードップラー式等従来公知のものを使用することができるものである。
【0038】
【発明の効果】
上記のように本発明によれば、気相流体乾き度検出手段と液相流体液位重量検出手段を具備して、それぞれの検出手段の検出値から、配管全体の流体の乾き度又は湿り度を測定することができ、従って配管全体の流体の乾き度又は湿り度を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による二相流体の乾き度又は湿り度制御装置の一部断面構成図。
【符号の説明】
1 ピトー管
2 超音波送受信器
3 蒸気配管
4 乾き度又は湿り度調節手段
11 加熱器本体
14 加熱流体供給管
16 冷却器本体
17 冷却流体供給管
24 乾き度又は湿り度測定手段

Claims (5)

  1. 配管を流下する流体の乾き度又は湿り度を測定する乾き度又は湿り度測定手段と、流体の乾き度又は湿り度を調節する乾き度又は湿り度調節手段を備えて、当該乾き度又は湿り度調節手段を、供給する蒸気を加熱して乾き度を高めるための加熱器と、反対に蒸気に水滴を供給して乾き度を低めるための冷却器とで構成して、供給する流体の乾き度又は湿り度を所定値に制御するものにおいて、流体が気液の二相流体であり、且つ、流体の乾き度又は湿り度測定手段が、気相流体の乾き度又は湿り度を検出する気相流体乾き度検出手段と、流体配管中の層状の液相流体の液位から重量を検出する液相流体液位重量検出手段と、から成り、当該気相流体乾き度検出手段が、気相流体の動圧を検知するピトー管又は弾性付勢されたフラップから成る動圧検知手段と、当該動圧検知手段で検知した動圧値と気相流体の流速から気相流体の比重量又は比容積を演算する比重量又は比容積演算手段と、当該気相流体の比重量又は比容積と乾き度又は湿り度との関係式に基づいて気相流体の乾き度又は湿り度を算出する演算制御部と、を具備して、気相流体の乾き度と、液相流体液位重量検出手段で検出した液位から流体配管内の液相と気相の単位容積を算出して、気相の単位容積と乾き度から、気相流体中の気体重量Sと液体重量Dを算出すると共に、液相の単位容積から液相流体の重量D´を算出することによって、気液二相流体の乾き度X=S/(S+D+D´)として流体配管全体の乾き度又は湿り度を測定し制御することを特徴とする二相流体の乾き度又は湿り度制御装置。
  2. 前記気相流体の流速を流速検出手段で検出して、検出した流速値を前記比重量又は比容積演算手段に供給することを特徴とする請求項に記載の二相流体の乾き度又は湿り度制御装置。
  3. 前記動圧検知手段が気相流体の静圧を検知する静圧検知手段を設けたことを特徴とする請求項に記載の二相流体の乾き度又は湿り度制御装置。
  4. 前記動圧検知手段がピトー管である共に、当該ピトー管で静圧も検知することを特徴とする請求項に記載の二相流体の乾き度又は湿り度制御装置。
  5. 前記液相流体液位重量検出手段が、流体配管の底部外面に取り付けられた超音波送受信器と、当該超音波送受信器から上方に向けて放射された超音波が液面で反射されて戻ってくるまでの時間から流体配管内の液位を検出する液位検出手段を具備して、当該液位検出手段で検出された液位から流体配管内の気相流体と液相流体の単位容積を算出して、液相流体の単位容積から重量を演算算出することを特徴とする請求項1に記載の二相流体の乾き度又は湿り度制御装置。
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