JP4244708B2 - 表面弾性波素子用基板及びこれを用いた表面弾性波素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ランガサイト単結晶からなる圧電体基板に関し、特に、通信機器等に使用される周波数選別用のフィルタ、高安定度の発振器に用いられる共振子等の素子等に好適に使用できる表面弾性波素子用基板、及びこれを用いた表面弾性波素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧電体基板上に櫛形電極(interdigital transducer, IDT)を形成した受動型SAWセンサ(表面弾性波センサ)は、(1)無線化が可能であること、及び(2)センサへの電源供給が不要であること、等の利点によりその利用範囲を拡大している。このような表面弾性波素子用の基板としては、従来、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、4硼酸リチウム、水晶等の圧電性単結晶を、適当なカット面で切断、研磨した基板が使用されている(例えば特許文献1)。
近年SAWセンサの圧電体基板として、ランガサイト(La3Ga5SiO14,LGS)の単結晶基板が注目されており、ランガサイト単結晶基板の(1)融点が高く(約1470℃)、(2)室温から融点までの間に相転移点がない、等の利点から、他の基板を用いた場合に比して、より高温環境下での使用が可能になる。また、ランガサイト単結晶を用いた場合、表面弾性波の伝板速度を小さくできるため、表面弾性波素子の小型化に有利である。
【0003】
従来、伝送型フィルタ等の表面弾性波素子に使われる圧電体基板においては、遅延時間温度係数(TCD)及び電気機械結合係数(K2)が重要視されており、TCDは零に近いほど、K2は大きいほど望ましいとされている。そこで、下記特許文献2、3では、圧電体基板としてランガサイト(La3Ga5SiO14)単結晶基板を用い、その表面の方位をオイラー角表示で所定範囲内とすることで、TCDが小さく、かつ比較的大きなK2が得られることが開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開昭60−41315号公報
【特許文献2】
特開平10−190407号公報
【特許文献3】
特開平11−27089号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、表面弾性波素子の製造に際しては、通常大型の圧電体基板を用いて複数の素子の形成を行った後、所定寸法の素子に分離する製造方法が適用される。上記特許文献2,3に記載のように、優れた伝搬特性を有する表面弾性波素子を得るために、圧電体基板の表面方位を適切に制御することは有効であるが、本発明者が実際に表面弾性波素子の製造を行ったところ、上記素子分離工程において、素子の切断部位にクラックやチッピングが発生することが判明した。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであって、その目的は、表面弾性波素子に好適な表面方位を有するとともに、加工不良を効果的に低減し、高歩留まりにて容易に加工を行うことができ、好ましくは素子の小型化にも有利な特性を備えた表面弾性波素子用基板、及びこれを用いた表面弾性波素子を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するべく、ランガサイト単結晶からなる圧電体基板におけるクラックやチッピングの発生と、圧電体基板の表面方位との関連性について検討を行うとともに、良好な伝搬特性を有し、かつ加工性に優れる表面弾性波素子用基板の構成について研究を重ね、本発明を完成するに到った。
【0008】
本発明の表面弾性波素子用基板は、表面弾性波素子用の圧電体基板であって、ランガサイト(La3Ga5SiO14)の単結晶で形成され、その表面の方位が、オイラー角表示(φ,θ,ψ)で(14.1〜14.9°,130〜146°,164〜174°)の範囲であることを特徴とする。
表面方位が上記範囲内に制御された表面弾性波素子用基板によれば、良好な伝搬特性が得られるとともに、基板加工時にチッピングやクラックが生じ難い、優れた加工性、信頼性を得ることができる。尚、本発明者は上記表面方位の範囲が適切であることを、実際の表面弾性波素子の製造により検証しており、その詳細は後述の実施例に記載している。
【0009】
次に、本発明の表面弾性波素子は、圧電体基板上に表面弾性波を励振、受信、もしくは反射するために形成された金属膜を備えた表面弾性波素子であって、前記圧電体基板として、先に記載の表面弾性波センサ用基板を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、先の本発明の表面弾性波素子用基板により、再現性良く、高効率であり、かつ信頼性に優れる表面弾性波素子を提供することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。図1は、本発明の表面弾性波素子を用いて形成した表面弾性波センサの模式図である。この表面弾性波素子では、圧電体基板10上に、金属膜で形成された対の櫛型電極、すなわち励振用電極30および受信用電極40が形成されている。なお、センサ両端の圧電体基板10上には吸着材層50が形成されている。
このように構成された表面弾性波素子では、励振用電極30に信号を入力して、圧電体基板10に表面弾性波を励振し、この表面弾性波を受信用電極40にて受信する。これをループ状に結合して自励振動を発生させ、温度による音速の上昇すなわち発振周波数の上昇から温度を測定するようになっている。
【0011】
上記圧電体基板10は、表面弾性波素子用の圧電体基板であって、ランガサイト(La3Ga5SiO14)の単結晶で形成され、その表面の方位が、オイラー角表示(φ、θ、ψ)で(14.1〜14.9°、130〜146°、164〜174°)の範囲内とされた本発明に係る表面弾性波素子用基板が用いられている。また、この圧電体基板10は、CZ法やブリッジマン法等により作製したランガサイト単結晶のインゴットからランガサイト単結晶をウェーハ状に切り出し、片面を鏡面処理したものから作製したものであり、この鏡面側に方位1(ψ)となるように上記の櫛型電極、すなわち励振用電極30及び受信用電極40を配置している。
【0012】
本発明に係る表面弾性波素子用基板は、本発明者による検証(実施例参照)の結果得られた表面方位の範囲を有しており、上記範囲内に表面方位が制御されていることで、大型の単結晶基板から表面弾性波素子と同程度のブロックに切断加工する工程(ダイシング等)において、切断面及びその近傍にて前記ブロックにチッピングやクラック等の加工欠陥が生じるのを効果的に防止することができ、高信頼性の表面弾性波素子を、高歩留まりにて製造し得る表面弾性波素子用基板とされている。また、上記表面方位の範囲内に制御することで、表面弾性波素子を構成した際に、良好な伝搬特性を得ることができることも本発明者により検証されている。
従って、本実施形態の表面弾性波素子は、上記本発明に係る表面弾性波素子用基板を圧電体基板10として備えたことで、良好、かつ小型化に有利な伝搬特性が得られるとともに、信頼性に優れる表面弾性波素子となっている。
【0013】
【実施例】
次に、本発明に係る表面弾性波素子用基板及びこれを用いた表面弾性波素子を、実施例を参照して具体的に説明する。
表面弾性波素子用基板としては、K2が大きく、TCDの絶対値が小さく、PFAの絶対値が小さく、γが−3以上1以下、という特性を有するものが好ましい。また、素子の小型化の点で、伝搬速度vは、小さくすることが好ましい。例えば、従来知られている中心周波数が100MHz以下となる表面弾性波素子に用いられるタンタル酸リチウムのX−112°Y基板の特性は、伝搬速度vが3288m/s、電気機械結合係数K2が0.64%、遅延時間温度係数TCDが18ppm/℃である。
【0014】
本発明者は、まず、上述の条件を満たし得る表面方位を、ランガサイト単結晶基板のカット面解析により行った。表1に示す表に、ランガサイト単結晶基板の表面弾性波の伝搬特性を計算するのに必要な材料定数である、20℃における密度、弾性定数、圧電定数、誘電率および線膨張係数を示す。また、この表には、各定数の1次及び2次の温度係数も示されている。
【0015】
表1に示した各定数等の値は、極めて高精度の値であることが確認されている。このような高精度の定数を使用して、圧電基板表面での、ニュートンの運動方程式、圧電方程式、準静電近似したマックスェルの方程式を連成して解くことにより、ランガサイト単結晶基板の特性を解析した結果、オイラー角表示(φ,θ,ψ)で(10〜18°,130〜146°,164〜174°)なる方位の範囲で上記表面弾性波素子に要求される特性を満し得ることを知見した。
図2に、上記特性を満足する方位(φ,θ,ψ)を三次元プロットしたものを示す。また、ランガサイト単結晶基板の特性を上記各方程式を用いて解析する手法については後述する。
【0016】
【表1】
【0017】
次に、上記カット面解析により得られた表面方位の好適な範囲(φ、θ、ψ)=(10〜18°、130〜146°、164〜174°)にある、表2〜表4に示す種々の方位のウエハを切り出して用意し、それぞれのウエハから長方形のブロック(5mm×2.5mm)をダイシング(切断速度1mm/min、シングルカット)により2800個又は2850個ずつ切り出した。尚、長方形ブロックの方位は、その長手方向が、ψ=164°、169°、174°となるようにした。また、上記ダイシングでは、ウエハをダイシングシートに貼り付けたものを、ダイシングソーに真空吸着させた状態で切断を行った。切削液には水を用い、ブレード回転数は30000rpmとした。使用したブレードは、ダイヤモンド砥粒をレジンボンドで固定したもので、外径52mm、刃厚0.15mm、粒度#320である。
【0018】
次いで、得られた長方形ブロックについて、上記ダイシングに起因するクラック及びチッピングの発生有無を目視観察及び顕微鏡観察により評価した。評価結果を表2〜表4に併記する。これらの表に示す[評価]欄には、加工欠陥の発生率(加工欠陥の発生した長方形ブロック数/長方形ブロックの全数×100(%))が10%未満である場合には、「○」印を付し、同発生率が10%以上である場合には、「×」印を付した。加工欠陥発生率の判定基準を10%としたのは、クラックやチッピングの発生率が10%を超えると、表面弾性波素子製造(ダイシングによる素子分離工程)において、基板表面に形成したIDT(櫛形電極)が破壊される等の不具合が発生し、素子の製造歩留まりや素子の均一性が著しく低下することが、本発明者により確認されているためである。
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】
【表4】
【0022】
表2〜表4に示すように、圧電体基板表面の方位をオイラー角表示(φ,θ,ψ)で、(14.1〜14.9°,130〜146°,164〜174°)の範囲内とすることで、ダイシングによるチッピングやクラック等の圧電体基板の加工欠陥を大きく低減できることが分かる。従って、本発明の要件を満たす表面弾性波素子用基板によれば、表面弾性波素子製造時の加工による基板欠陥の発生率を著しく低減でき、表面弾性波素子の製造歩留まりの向上を実現することができる。
【0023】
また、本発明者は、上記本発明の要件を満たす、表面方位がオイラー角表示(φ,θ,ψ)で、(14.1〜14.9°,130〜146°,164〜174°)の範囲内である圧電体基板について、表面弾性波素子を作製し、その伝搬特性の評価を行った。以下にその詳細を示す。
CZ法によりランガサイト単結晶を作製し、それらランガサイト単結晶から指定したカット面方位(φ、θ)となるようにウェーハを切り出し、片面を鏡面処理して基板とした。この基板の鏡面側に指定した伝搬方位(ψ)となるように櫛型電極、すなわち励振用電極及び受信用電極をAlにより形成して表面弾性波素子とした。電極の膜厚は、200nm、電極間距離(λ)は74μm、電極指幅は9.25μm(スプリット電極なので1/8λ)、電極対数は励振用電極及び受信用電極ともに12λとした。
【0024】
作製した表面弾性波素子のvとK2とを測定した。vはフィルタの中心周波数と電極間距離から求め、K2は素子の2端子アドミッタンスを測定し、これから一般に知られるスミスの等価回路モデルによって求めた。また、TCV(Temperature Coefficient of Velocity:伝搬速度温度係数)を0〜50℃の範囲で求め、それと線膨張係数からTCDを求めた。これらの測定により得られた各特性の範囲を、PFA及びγの範囲とともに表5に示す。
【0025】
表5に示すように、表面方位がオイラー角表示(φ,θ,ψ)で、(14.1〜14.9°,130〜146°,164〜174°)の範囲内である、本発明の表面弾性波素子用基板を用いて作製した表面弾性波素子によれば、タンタル酸リチウムのX−112°Y基板と比較して遜色ないK2及びTCDが得られ、かつvを小さくできるため、素子の小型化に有利である。
【0026】
【表5】
【0027】
〔ランガサイト単結晶基板の特性の解析手法〕
単結晶における三次元空間では、カット面と伝搬方向の組み合わせが無数にあるので、所望の特性をもつカット面を実験的に見つけることはほとんど不可能である。したがって、圧電結晶の材料定数から所望の特性を有するカット面を解析する手段が用いられる。
【0028】
以下に、解析の方法を簡単に示す。
「圧電媒質中における関係式」
圧電結晶では、圧電性のため圧力・変形による機械的な波動と電磁界が常に同時に存在する。しかし、電磁界の伝搬速度は弾性波より105倍も速いので静電界部分のみを考慮すれば十分である。すなわち、電界E、磁界Hの全てを考える必要はなく、静電ポテンシャルφのみを考えればよい。
解析用の座標系としては、真空中に配置された圧電体表面における表面弾性波の伝搬方向をX1とし、その伝搬方向に対して直交する方向をX2、さらに圧電体表面を原点とする圧電媒質の深さ方向をX3とした座標系が用いられる。但し、X3≧0の半無限基板を圧電媒質領域、X3<0の領域を真空領域とする。
【0029】
圧電媒質中で機械的な挙動と静電界との相互関係を表すのが次の式(1)(2)で示される圧電方程式である。
【数1】
【数2】
【0030】
ここで、T、S、EとDはそれぞれ圧電媒質中における応力、ひずみ、電界と電束密度である。cEは電界Eが一定状態の弾性定数テンソル、eはその圧電定数、εSはひずみSが一定状態の誘電率テンソルである。なおT、Sはそれぞれ応力とひずみの工学的表記方法で、テンソル表記法と次の式(3)ような対応関係がある。(Tについても同様)
【数3】
【0031】
ひずみテンソルSijは変位ui(i=1〜3)によって次の式(4)で示される。
【数4】
次に、静電近似を用いるので、電界Eは静電ポテンシャルφを用いて次の式(5)ように示される。
【数5】
【0032】
また、圧電体の微小部分に対するニュートンの運動方程式は次の式(6)のように示せる。
【数6】
ここで、ρは圧電媒質の密度。
【0033】
また、圧電媒質中には電荷が存在しないので、
【数7】
である。すなわち、次の式(7)となる。
【数8】
【0034】
圧電媒質領域(X3>0)では、表面波の変位uiと静電ポテンシャルφは次の式(8)(9)で表される。
【数9】
【数10】
ここで、A1〜A3は表面弾性波の変位の振幅係数、A4は静電ポテンシャルの振幅係数である。αはX3方向の規格化減衰定数でωとvはそれぞれ表面弾性波の各周波数と伝搬速度である。
【0035】
次に、式(8)、(9)を式(1)〜(5)に代入して、応力Tと電束密度Dを求める。これらを式(6)、(7)に代入して振幅係数A1〜A4について整理すると次のように表すことができる。
【数11】
【0036】
ここで、行列[Xij]の各要素は圧電媒質の材料定数:弾性定数c、圧電定数e、誘電率εをSAW伝搬方向に合わせて座標変換することにより決定されるものである。振幅係数がゼロでないためには、行列[Xij]の値はゼロでなければならない。すなわち、次の式(11)となる。
【数12】
【0037】
ここで行列式をαについて展開すると、次の8次方程式が得られる。
【数13】
但し、C0〜C8は実数であり、奇数項には虚数単位jが付く、そこでZ=jαとすると、Zについては実数を係数とする8次方程式となるため、Zの根は共役複素(a±jb)である。結果、αは次の8つの根を持つことになる。すなわち、次の式(13)となる。
【数14】
【0038】
このように伝搬速度vを与えればαについて8つの根が求まるが、その中に物理的な意味を持つ、すなわち変位u1〜u3の式(8)および静電ポテンシャルφの式(9)を満足するのは4つしかないSAWの伝搬モードに対する物理的な解釈から4つの根を決める。
【0039】
「真空中における関係式」
真空領域(X3<0)においては、変位は当然存在せず、次の式(14)ように静電ポテンシャルφ’だけを考えればよい。
【数15】
【0040】
ここで、A5は静電領域における静電ポテンシャルφ’の振幅係数で、γはX3方向の規格化減衰定数を表している。また、真空中であるから、静電ポテンシャルφ’はラプラス方程式を満足する。すなわち、次の式(15)となる。
【数16】
式(14)をこの式に代入すると、次の式(16)が得られる。
【数17】
【0041】
「レイリー波モード」
レイリー波(Rayleigh Wave)はSAWの最も基本的な伝搬モードである。変位と静電ポテンシャルの振幅は表面から遠ざかるにつれて指数関数的に減衰するので、次の式(17)の条件を満足しなければならない。
【数18】
すなわち、式(13)に示されている4組8根の中から、式(17)を満足する4つの根を選ぶわけである。
【0042】
次に、選んだ4つの根をαj(j=1〜4)として式(11)に代入すると、各αjに対するAiとA4の比が次の式(18)ように求められる。
【数19】
これから、圧電媒質中の変位と静電ポテンシャルは次の式(19)(20)のように4つの波の線形結合で表される。
【数20】
【数21】
【0043】
ここで、4つの根αjは、実数部が小さい順位に並べたとすると、これらは下記の波に対する減衰定数に対応する。α1:遅い横波α2:速い横波α3:縦波α4:電磁波
【0044】
同様に真空領域(X3<0)における静電ポテンシャルφ’が表面波であるためには、波の振幅も表面から遠ざかるにつれて指数関数的に減少しなければならない。
【数22】
式(16)から、式(21)を満足する根(γ=1)を選ぶと、真空中における静電ポテンシャルφ’は次の式(22)のように表される。
【数23】
【0045】
次に、基板表面における機械的および電気的境界条件を示す。
[a]基板表面が電気的に開放(open)圧電基板表面が自由表面なので、応力に関して次の式(23)の条件を満足する。
【数24】
【0046】
また、電気的境界条件は、基板表面において電界の接線成分と電束密度の法線成分が連続であることから、次の式(24)(25)で示される。
【数25】
【数26】
【0047】
以上の境界条件式(23)〜(25)に式(19)、(20)および(22)を代入すると、式(24)からF5はFj(j=1〜4)で表せるので、結果的に次の方程式(26)が得られる。
【数27】
【0048】
ここで、行列[Yij]の各要素は次のように示される。
【数28】
この方程式の解が意味を持つためにはF1〜F4がゼロでないことが必要であり、従って行列式がゼロでなければならない。
【数29】
【0049】
[b]基板表面が電気的に短絡(short)
基板表面が電気的短絡、すなわち薄い完全導体が置かれた場合には、ひずみ波に伴う電磁波は真空領域(X3<0)には存在せず、また、基板表面における境界条件は次の式(28)(29)のようになる。
【数30】
【数31】
【0050】
この結果、電気的短絡した表面が電気的開放の場合の行列[Yij]とは、次のY4jだけが異なり、他のY1j、Y2j、Y3jは上記と同じになる。
【数32】
したがって、基板表面を電気的に短絡した場合には、境界条件式(27)を変更するだけでよい。以上のようにレイリー波モードに対する関係式が得られたが、これらの式からは、伝搬速度vを表す式を解析的に求めることができないため、本発明では数値計算法を用いて伝搬速度vを求めた。
【0051】
レイリー波モードの伝搬特性は伝搬速度vを用いて次のように評価される。
▲1▼電気機械結合係数K2
【数33】
ここに、v、vmはそれぞれ基板表面電気的開放状態と電気的短絡状態の伝搬速度である。
【0052】
▲2▼遅延時間温度係数
【数34】
ここで、τは遅延時間、Tは温度、lは伝搬距離であり、αは伝搬方向に対する線膨張係数を表している。
なお、TCDと周波数温度特性TCFの関係は以下の通りである。
【数35】
【0053】
▲3▼パワーフロー角PFA
【数36】
ここで、PFAとは櫛型電極IDTによってSAWが励振されたときに、伝搬する位相速度の方向X1と、エネルギー全体の進む方向、いわゆる群速度の方向のなす角である。すなわち、圧電基板は異方性のために等位相面に垂直な位相速度vの方向とエネルギーが進む方向が異なる。表面波の伝搬速度vが伝搬方向によって変化するために生ずる現象である。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
本発明の表面弾性波素子用基板によれば、基板表面の方位がオイラー角表示(φ、θ、ψ)で(14.1〜14.9°、130〜146°、164〜174°)の範囲内であることで、良好な伝搬特性を得つつ、ダイシング等による基板加工に起因する加工欠陥を著しく低減することができる。
従って、係る基板を用いることで、再現性が良く、効率が良い表面弾性波素子を得ることができるとともに、その製造を高歩留まりにて行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る一実施形態における表面弾性波センサを示す平面図である。
【図2】 実施例におけるカット面解析の結果を示す分布図である。
【符号の説明】
10;圧電体基板 30;励振用電極 40;受信用電極 50;吸音材層 SAW;表面弾性波
Claims (2)
- 表面弾性波素子用の圧電体基板であって、
ランガサイト(La3Ga5SiO14)の単結晶で形成され、
その表面の方位が、オイラー角表示(φ,θ,ψ)で(14.1〜14.9°,130〜146°,164〜174°)の範囲であることを特徴とする表面弾性波素子用基板。 - 圧電体基板上に表面弾性波を励振、受信、もしくは反射するための金属膜を形成した表面弾性波素子であって、
前記圧電体基板として、請求項1に記載の表面弾性波素子基板を備えたことを特徴とする表面弾性波素子。
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