JP4244528B2 - 耐損耗性銅合金 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐損耗性銅合金に関し、特に、スイッチ類の接点材等として必要な耐放電損耗性および耐機械的損耗性に優れる銅合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種電気機器のスイッチ部においては、ON・OFFの切り替え時にアーク放電が発生し、スイッチ部を構成する接点材に損耗が生ずる。特に、ONよりOFFへの移行時には、接点間の離反による接触面積の減少のために電流密度が上昇し、これにより生ずるジュール熱によって構成材が溶融され、接点間にブリッジが形成されるようになる。
【0003】
形成されたブリッジは、接点間の離反によって切断されるとともに、切断個所の接点材が蒸発イオン化して接点間を移動し、アーク放電を招く。そしてアーク放電が生ずると、一方の側から他方の側への材料の移動が発生し、一方の側の接点の構成材に損耗を招く。構成材の損耗は、接点間の安定した接触を阻害するように作用し、接点故障の原因となる。
【0004】
ところで、電気スイッチの用途には、一般に、タフピッチ銅、無酸素銅あるいは微量の銀を含む銅合金等が使用されている。これらの銅をベースとした材料は、表面に酸化膜を形成されやすい問題を有しているが、なにより安価であることと、良好な導電性および熱伝導性を有していることから、家庭電器の接点材あるいは自動車用の接点材などとして多用されている。
【0005】
良好な導電性および熱伝導性(以下、単に導電性という)は、ON・OFF切り替え時に生ずるジュール熱を抑制し、あるいは発生熱を外部へ伝導放出する効果につながるため、前述したアーク放電を原因とした放電損耗を効果的に減ずるように作用する。従って、良好な導電性を有することによって特徴づけられる銅あるいは銅合金は、スイッチ類の接点材として好適な材料といえる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来知られている接点用銅材によると、耐放電損耗性に優れている反面において強度面で充分なものがなく、このため、総合的損耗性において問題を有している。即ち、スイッチ類の接点には、ON・OFF切り替え時の擦れ合いながらの接触および離反によって繰り返しの負荷が作用することになり、従って、これによる機械的損耗への耐性も必要となるが、耐放電損耗性を満足させると同時にこの特性も満足させる銅材は、いまだ出現していない。
【0007】
機械的損耗に対する耐性増のためには、合金元素を添加することによって強度の向上を図ることが有効な手段となるが、合金元素の添加は、導電性の低下による耐放電損耗性の阻害につながるのが通例のため、耐放電損耗性および耐機械的損耗性を両立させることは難しいこととされている。
【0008】
従って、本発明の目的は、スイッチ類の接点材等として必要な耐放電損耗性および耐機械的摩耗性を同時に備えた総合的耐損耗性に優れる銅合金を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するため、0.1〜0.5重量%のFe、0.1〜0.5重量%のNi、および0.15〜0.2重量%のPを、FeとNiの合計がPの3〜4倍の量となるように含むとともに、Niに対するFeの重量比が0.8以上となるように含み、Mg、Al、Ti、Cr、Mn、Zn、Zr、Mo、Ag、InおよびSnの添加物を含まず、残部が銅及び不可避的不純物である合金に、600℃の熱処理を施すことによって、35.5μmの消耗深さ、および70%IACS以上の導電率を与えた合金より成ることを特徴とする耐放耗性銅合金を提供するものである。
【0010】
本発明による銅合金の特徴は、FeおよびNiに熱処理を施すことによってPとの間に化合物Fe2P、Ni5P2あるいはNi2Pを形成し、この化合物による析出物を銅中に形成させることにある。
【0011】
Pとの化合物が銅中に析出される結果、分散強化による硬さ向上を図ることが可能になるとともに、母相の銅に固溶状態で存在する合金成分量を少なくすることでの導電性の向上も可能になり、従って、上記した成分は、強度向上による耐放電損耗性と導電性向上による耐機械的損耗性を両立させるうえにおいて重要な因子となる。
【0012】
そして、以上の効能を最良のものとするためには、各成分の添加量を上記したように以下の範囲に規定する必要がある。即ち、Feを0.1〜0.5重量%、Niを0.1〜0.5重量%に設定する必要があり、また、添加されるこれらの成分量とPの比率を前者がPの3〜4倍となるように設定する必要がある。
【0013】
FeおよびNiの添加量が、上記範囲を下廻ると、充分な強度向上が得られず、逆に、上記範囲を超える場合には、熱処理をしても導電性の向上効果が現れないとともに、表面酸化が発生しやすくなる。また、これらの成分がPとの間に設定される上記比率がずれると、ずれた成分が母相の銅中に固溶状態で存在するようになり、このため、導電性を低下させて耐放電損耗性を阻害するようになる。
【0014】
本発明において、Pとともに添加される各成分は、強度および導電性の向上効果において相対的な違いを有している。Feには、低強度および高導電性付与の特質があり、一方、Niには、高強度および低導電性付与の特質があるとともにその比率が多くなったとき、導電性を低下させる傾向がある。従って、より高度の強度および導電性を実現するためには、これらの特質をバランスよく組み合わせることが望ましく、この意味から、各成分を以下のように設定するとき、最良の結果が得られるようになる。
【0015】
即ち、0.1〜0.5重量%のFe、0.1〜0.5重量%のNi、および0.15〜0.2重量%のPを、FeとNiの合計をPの3〜4倍の量に設定するとともに、Niに対するFeの重量比を0.8以上に設定するとき、強度と導電性は最良のものとなり、優れた耐機械的損耗性と優れた耐放電損耗性が保証されることとなる。
【0016】
本発明の銅合金に与える導電率としては、70%IACS以上の水準にあることが必要である。アーク放電による材料の消耗を抑制して優れた耐放電損耗性を確保するためには、純銅のような良好な導電性を有することが好ましいこととなるが、一方、強度を高めて機械的損耗を減らすためには、純銅が有する導電性を維持したままでは不可能である。
【0017】
従って、相矛盾するこれらの特性を両立させるためには、適切な導電率の設定が必要であり、70%IACS以上は、そのための好ましい導電率となる。この導電率が確保されるとき、良好な導電性に基づくアーク放電損耗への耐性と、高強度に基づく機械的損耗への耐性とが両立する。そして、この導電率は、銅合金に対して適度な温度での熱処理を施すことによって実現することが可能であり、そのための温度としては、400〜600℃が好ましい範囲となる。この範囲の下限および上限のいずれを外れる場合にも、消耗深さ36μm以下、70%IACS以上の導電率の確保は難しくなる。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明による耐損耗性銅合金の実施の形態を表1および表2に基づいて説明する。
【実施例1〜9】
表1に示される組成の無酸素銅をベースとした各実施例の銅合金を高周波溶解炉により溶製し、直径30mmおよび長さ250mmのインゴットにそれぞれ鋳造した。次に、これらのインゴットを熱間において押出加工し、幅30mmおよび厚さ8mmの板状に成型した後、厚さが2.0mmとなるように冷間圧延を施してから500℃において2時間の熱処理を施し、引き続き、厚さが1.0mmとなるように冷間圧延を施すことにより実施例1〜9の銅板を製造した。
【0021】
【比較例1〜7】
実施例1〜9に示した銅板の製造において、それぞれ表1に示される無酸素銅ベースの各比較例の銅合金を使用し、他を同一条件に設定することにより比較例1〜7の銅板を製造した。
【0022】
【従来例】
実施例1〜9に示した銅板の製造において、素材としてタフピッチ銅を使用し、他を同一条件に設定することにより表1の従来例の銅板を製造した。
【0023】
【実施例10〜12】
実施例1〜9に示した銅板の製造において、表1の実施例1に示される無酸素銅ベースの銅合金を使用するとともに、熱処理条件を表2の実施例に示される各条件に設定し、さらに、他を同一条件に設定することにより実施例10〜12の銅板を製造した。
【0024】
【比較例8、9】
実施例1〜9に示した銅板の製造において、表1の実施例1に示される無酸素銅ベースの銅合金を使用するとともに、熱処理を表2に示される各条件に設定し、他を同一条件に設定することにより比較例8、9の銅板を製造した。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
表1および表2に示される特性は、以上の各実施例、比較例および従来例を対象に実施した試験結果である。なお、消耗深さの試験方法は以下による。
製造された銅板より3mm×3mmの陰極用接点と10mm×20mmの陽極用接点を採取し、この両接点間に48Vの開放電圧を印加するとともに、接触通電時に1.0Aの電流が流れるように条件を設定し、接点間の接触と離反を1サイクル/秒で100,000サイクル繰り返したときの陽極用接点上に生じた凹部の深さを測定した。
【0028】
表1によれば、実施例によるものが良好な耐放電損耗性となる70%IACS以上の導電率を示しているとともに、高水準の硬さ(即ち、強度)を示しているのに比べ、従来例の場合には、実施例より平均60ポイント低い硬さにとどまっており、従って、両者が示す損耗深さには、このことによる耐機械的損耗性の差が明瞭に現れている。
【0029】
また、NiとP、CoとNiとPの量が本発明から外れる比較例1、2、およびFe、Niの合計量とPの比率が本発明から外れる比較例3、4の場合には、導電率が70%IACSに達しておらず、従って、このことによる耐放電損耗性の低さのために著しい消耗深さを示している。表1には、本発明におけるFe、NiおよびP等の添加効果、これらの成分の添加量限定の理由、およびPとの併用比限定の理由が明確に示されている。
【0030】
なお、実施例7〜9が高硬度を示しているのは、MgやZn等の特定成分の添加による効果であり、従って、本発明の実施に際しては、これらの成分を加えることが好ましい。但し、比較例5〜7に見られるように過剰添加による導電率への影響もあるので、これらの成分の添加に当たっては、量についての配慮を行うべきである。
【0031】
一方、熱処理条件の効果を示す表2によると、熱処理温度を400〜600℃の範囲内に設定した実施例10〜12によるものが、高レベルの導電率と硬さを示し、従って、消耗深さにおいて良好な結果を示しているのに比べ、熱処理温度が上記範囲を外れる比較例8および9の場合には、導電率が70%IACSに達しておらず、このため、耐放電損耗性の不足から大きな消耗深さを示している。このことより、本発明の実施に際しては、熱処理条件にも配慮すべきである。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、耐放電損耗性と耐機械的損耗性を同時に備えた銅合金を提供するものであり、その有用性は大である。しかも、この銅合金においては、銅材本来の低廉性を充分に備えており、このことによる経済的利益も確実に得ることができる。
Claims (1)
- 0.1〜0.5重量%のFe、0.1〜0.5重量%のNi、および0.15〜0.2重量%のPを、FeとNiの合計がPの3〜4倍の量となるように含むとともに、Niに対するFeの重量比が0.8以上となるように含み、Mg、Al、Ti、Cr、Mn、Zn、Zr、Mo、Ag、InおよびSnの添加物を含まず、残部が銅及び不可避的不純物である合金に、600℃の熱処理を施すことによって、35.5μmの消耗深さ、および70%IACS以上の導電率を与えた合金より成ることを特徴とする耐損耗性銅合金。
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