JP4243939B2 - カイロ用粘着部材およびそれを用いたカイロ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カイロ(発熱体)を、適用部位に貼付するために使用される粘着部材(粘着シートなど)およびそれを用いたカイロ(特に、使い捨てカイロ)に関し、より詳細には、カイロを皮膚に直接貼付する用途に好適に使用され、粘着剤組成物による透湿性能により、長時間貼付して使用しても肌のかぶれや発赤を抑制又は防止することができるカイロ用粘着部材およびそれを用いたカイロに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、絆創膏などの皮膚に直接触れる用途に使用される粘着剤としては、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤が広く利用されてきた。アクリル系粘着剤は、粘着剤ポリマー単独では粘度が高く、基材に塗布するのが困難なため、一般的には、有機溶剤を使用して溶液状態で塗工した後、加熱オーブン等で乾燥させる方法が利用されている。しかし、このような方法では、乾燥工程を経ても有機溶剤が微量に残留する場合があり、この微量に残留した有機溶剤が皮膚刺激の原因とされる場合がある。
【0003】
しかも、アクリル系粘着剤(又は該粘着剤による粘着剤層)には透湿性がほとんどないため、皮膚貼付面が蒸れてかぶれの原因となる場合があった。更に、製造工程上、有機溶剤を回収する必要があり、環境面でも問題があった。
【0004】
現在、貼るタイプの使い捨てカイロ(貼付型発熱体)は、冬場における簡易採暖手段、夏場の冷房環境下における冷え性防止などの目的で季節を問わずに広く利用されるようになっている。このような貼るタイプの使い捨てカイロは、通常、下着等の衣類に貼付したり、皮膚に直接貼付して使用されている。
【0005】
一般的な使い捨てカイロの構成としては、例えば、図4に示されるような構成が挙げられる。具体的には、使い捨てカイロの構成としては、ポリエチレン等のオレフィン系多孔質フィルム(不織布との積層基材とされる場合が多い)7と、片面にヒートシール層61aを有するフィルム層61bの2層からなる多層プラスチックシート基材61のフィルム層61b側の面に粘着剤層62が形成された粘着シート6とを、ヒートシール手段を利用して袋体とし、この袋体の内部に鉄粉を主成分とする発熱体成分8が封入された構成が挙げられる。なお、粘着剤層62は通常図4で示されるようにセパレータ63により保護されている。
【0006】
このような従来の使い捨てカイロにおいて、粘着剤層を構成する粘着剤としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマー(SIS)等のスチレン系ブロック共重合体を主成分とするゴム系ポリマーに、粘着付与樹脂やパラフィンオイル等の軟化剤、更には粘着剤に隠蔽力を付与するためにチタン白や珪酸アルミニウム等を添加したものが一般的に使用されている。この粘着剤は、基本的には、有機溶剤を使用せず、ホットメルト塗工が可能であるが、疎水性であり、該粘着剤(又はその粘着剤層)の透湿性が未だ不十分という点ではアクリル系粘着剤と同様の問題点を有している。すなわち、粘着剤が疎水性であり透湿性を有していないことから、皮膚に直接貼付した場合(例えば、所謂「直貼り用カイロ」として使用した場合)、貼り付け中(貼付して使用中)に、発汗した汗が粘着剤表面に溜まり、皮膚表面が蒸れて、肌のかぶれや発赤が生じたり、粘着力が低下したりする場合があった。
【0007】
また、粘着剤の添加成分の皮膚への影響を最小限とする観点からは、粘着剤としては、粘着成分としての主ポリマー以外の粘着付与樹脂や軟化剤等の添加成分(配合成分)の多い複雑な組成とせず、粘着成分としての主ポリマー単独で構成することが好ましい。
【0008】
なお、カイロ用粘着シートは、発熱体成分を封入する袋体を形成する際のヒートシール部にも粘着剤層が配置されるように、多層プラスチックシート基材の片面に具備されている場合が多く、従来の粘着剤では、袋体を形成する際のヒートシール加工後、ヒートシール部近辺の粘着剤層の粘着力が低下する場合があった。
【特許文献1】
特開平7−8517号公報
【特許文献2】
特開平7−109443号公報
【特許文献3】
特開2000−1399990号公報
【特許文献4】
特開2001−260293号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、皮膚に直接貼付されていても、発汗による水分を透湿させて、皮膚表面の蒸れを抑制又は防止し、肌のかぶれや発赤を抑制又は防止することができるカイロ用粘着部材およびそれを用いたカイロを提供することにある。
本発明の他の目的は、粘着付与樹脂が使用されていなくても、又はその使用量が低減されていても、優れた接着性能を発揮することができるカイロ用粘着部材およびそれを用いたカイロを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、発熱体成分を封入する袋体を形成する際のヒートシール加工を経ても、優れた粘着特性を保持しているカイロ用粘着部材およびそれを用いたカイロを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記目的を達成するために鋭意検討した結果、粘着剤層を構成する粘着剤として、粘着剤自体に透湿性を有するものを採用すると、カイロを直貼りしても、粘着剤層を通してカイロ発熱時の発汗による水分を逃がして蒸れを抑制又は防止することができることを見出した。また、粘着剤層が、特定のポリマーを主体とする粘着剤により構成されていると、粘着成分としての主ポリマー以外の粘着付与樹脂や軟化剤等の添加成分を使用しなくても、又はそれらの使用量を低減しても、優れた接着性能を発揮できることを見出した。さらに、粘着剤層が、特定のポリマーを主体とする粘着剤により構成されていると、発熱体成分を封入する袋体を形成する際のヒートシール加工を経ても、優れた粘着特性を保持していることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0011】
すなわち、本発明は、基材の片面に厚み50〜200μmの粘着剤層を有するカイロ用粘着部材であって、前記粘着剤層の透湿度(温度40℃、湿度30%RH、粘着剤層の厚み100μm)が、1200〜4000g/m2・dayであり、且つ前記粘着剤層が、分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリエーテル系重合体を主体とする粘着剤により構成されていることを特徴とするカイロ用粘着部材を提供する。
【0012】
前記ポリエーテル系重合体の数平均分子量としては、5,000〜50,000であることが好ましい。
【0013】
本発明では、前記基材が2層以上で構成され且つ少なくとも一方の表面に不織布基材を有する積層基材であり、粘着剤層が前記積層基材の片面の不織布基材上に形成されていることが好ましい。このような不織布基材としては、ポリアクリル酸のナトリウム塩を主成分とする繊維物質により形成されていてもよい。
【0014】
また、粘着剤層としては、多孔性粘着剤層であることが好ましく、前記多孔性粘着剤層は、基材上に粘着剤を繊維状に塗布して形成することができる。さらにまた、前記粘着剤層は、無溶剤の粘着剤を塗布して形成されていてもよい。
【0015】
このようなカイロ用粘着部材は、カイロにおける発熱体成分を封入する袋体を構成する部材としてのカイロ用粘着シートであってもよい。
【0016】
本発明には、前記カイロ用粘着部材が使用されていることを特徴とするカイロも含まれる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のカイロ用粘着部材としては、基材の片面に設けられた粘着剤層が、800g/m2・day以上の透湿度(温度(外気の温度)40℃、湿度(外気の湿度)30%RH、粘着剤層の厚み100μm)を有していることを特徴の1つとして挙げられる。このように、粘着剤層の透湿度(温度40℃、湿度30%RH、粘着剤層の厚み100μm)が、800g/m2・day以上であると、カイロ用粘着部材を粘着剤層を利用して皮膚に直接貼付していても(直貼りしていても)、発汗による水分を粘着剤層が透湿させて、皮膚表面の蒸れを抑制又は防止し、肌のかぶれや発赤を効果的に抑制又は防止することができる。
【0018】
前記粘着剤層の透湿度(温度40℃、湿度30%RH、粘着剤層の厚み100μm)としては、1200g/m2・day以上であることが好ましく、さらに2000g/m2・day以上であることが好適である。透湿度の上限としては、特に制限されないが、例えば、4000g/m2・day(温度40℃、湿度30%RH、粘着剤層の厚み100μm)程度であってもよい。なお、粘着剤層の透湿度(温度40℃、湿度30%RH、粘着剤層の厚み100μm)が800g/m2・day未満であると、皮膚又は肌が蒸れて、皮膚又は肌にかぶれや発赤が生じるという問題が発生しやすくなる。
【0019】
本発明において、粘着剤層(又は粘着剤)の透湿度は、以下のようにして測定することができる。
(粘着剤層の透湿度の測定方法)
(1)粘着剤をセパレータ上の塗布領域全面にアプリケーターを用いて塗布して、必要に応じて乾燥・架橋をし、100μmの厚さ(乾燥後の厚さ)を有する粘着剤層を形成する。
(2)前記セパレータ上に形成された粘着剤層を、ナイロン製不織布(ポリアミド製不織布)の片面に転写して、粘着シートを作製する。なお、前記ナイロン製不織布としては、坪量が40g/m2のものを使用する。具体的には、ナイロン製不織布としては、例えば、商品名「エルタス」(旭化成社製)などを用いることができる。
(3)高さ40mm且つ内径40mmφのガラスカップに20gの水を入れた後、図1に示されるように、粘着剤層を下側にして、ガラスカップの開放口を覆うように粘着シートをガラスカップの上面に載せ、これらの周囲を、商品名「No.51」(日東電工株式会社製)によるビニールテープを用いて貼付して、粘着シートをガラスカップに固定する。
(4)この粘着シートにより覆われたガラスカップを、40℃、30%RHの恒温恒湿度器内に20分間入れ、取り出して重量を測定し、この重量を初期重量(WO)とする。
(5)次に、再度、40℃、30%RHの恒温恒湿度器内に入れ、4時間後に取り出した後、重量(WH)を測定して、下記の式(a)に基づいて、透湿度(g/m2・day)を算出する。
透湿度=[(WO−WH)×24]/[(0.02)2×π×4] 式(a)
[式(a)において、透湿度の単位はg/m2・dayである。なお、WO:初期重量、WH:4時間後の重量である。πは円周率であり、3.14とすることができる]
【0020】
図1は粘着剤層の透湿度の測定方法を示す概略図である。図1において、91は粘着シート、91aは粘着剤層、91bはナイロン製不織布、92はガラスカップ(高さ40mm、内径40mmφ)、92aはガラスカップ92の開放口(上面)、93は水である。
【0021】
また、本発明のカイロ用粘着部材としては、基材の片面に設けられた粘着剤層が、分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリエーテル系重合体を主体(「アルケニル基含有ポリエーテル系重合体」と称する場合がある)とする粘着剤により構成されていることを特徴の1つとして挙げられる。このように、アルケニル基含有ポリエーテル系重合体を主体とする粘着剤を用いると、粘着付与樹脂を使用していなくても、又はその使用量を低減していても、充分な接着性能を効果的に発揮することができる。しかも、カイロとしての袋体を形成する際のヒートシール加工を経ても、粘着剤層は優れた粘着特性を保持又は維持することができ、カイロを貼付する際には、優れた粘着力を発揮することができる。
【0022】
なお、本発明のカイロ用粘着部材は、前記2つの特徴のいずれか一方を満足していればよいが、2つの特徴を両方とも満足していることが好ましい。
【0023】
[粘着剤層]
カイロ用粘着部材の粘着剤層を構成する粘着剤としては、粘着剤層を形成した際の透湿度(温度40℃、湿度30%RH、粘着剤層の厚み100μm)が800g/m2・day以上となるものであれば、その組成等は特に制限されない。従って、この観点からは、公知乃至慣用の粘着剤(例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤など)を用いることも可能である。しかし、前述のように、透湿度とカイロの接着特性とを両立する観点からは、粘着剤としては、分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリエーテル系重合体(アルケニル基含有ポリエーテル系重合体)を主体とする粘着剤が好ましい。
【0024】
アルケニル基含有ポリエーテル系重合体において、アルケニル基としては、末端に二重結合を有する形態のアルケニル基(ビニル基やビニルアルキル基など)が好ましい。具体的には、アルケニル基としては、ビニル基;1−メチルビニル基(イソプロペニル基)、1−エチルビニル基、1−プロピルビニル基、1−イソプロピルビニル基等の1−アルキルビニル基を好適に用いることができ、特に、ビニル基、1−メチルビニル基が好ましい。アルケニル基は単独で又は2種以上組み合わせられていてもよい。
【0025】
アルケニル基は、ポリエーテル系重合体に、直接結合していてもよく、他の基(2価の有機基など)を介して結合していてもよい。アルケニル基がポリエーテル系重合体に結合する際に介する他の基としては、例えば、「−O−」、「−OC(=O)−」、「−C(=O)O−」、「−RaO−」、「−RaOC(=O)−」、「−RaOC(=O)O−」、「−RaO−C(=O)NH−」、「−RaC(=O)O−」(Raは2価の有機基)の他、これらの基における「−O−」の部位が「−S−」や「−NH−」とした基などが挙げられる。なお、これらの例示の基は、左側がアルケニル基と結合し、右側がポリエーテル系重合体に結合する。
【0026】
具体的には、好ましいアルケニル基含有ポリエーテル系重合体としては、下記式(1)で表されるアルケニル基含有ポリエーテル系重合体が挙げられる。
【化1】
(式(1)において、R1はポリエーテル系重合体を示し、R2は水素原子又はメチル基を示す。R3は「−O−」、「−OC(=O)−」、「−C(=O)O−」、「−R4O−」、「−R4OC(=O)−」、「−R4OC(=O)O−」(なお、これらのR3の基は、左側が「CH2=C(R2)−」と結合し、右側が「R1」と結合する)であり、R4は2価の有機基である。mは0又は1であり、nは正の整数である)
【0027】
前記式(1)において、R1のポリエーテル系重合体としては、分子内にエーテル結合を有する重合体であれば特に制限されないが、例えば、繰り返し単位としてオキシエチレン、オキシプロピレン、オキシイソプロピレン、オキシテトラメチレン等のオキシアルキレンを1種又は2種以上有するポリオキシアルキレン系重合体などが挙げられる。具体的には、R1のポリエーテル系重合体としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン、オキシエチレン−オキシプロピレン共重合体(例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体や、オキシエチレン−オキシプロピレンランダム共重合体等)などが挙げられる。
【0028】
R3におけるR4は2価の有機基であり、該2価の有機基としては、特に制限されず、例えば、1個以上のエーテル結合を有していてもよい2価の炭化水素基が好適である。このようなエーテル結合を有していてもよい2価の炭化水素基としては、炭素数1〜20の2価の炭化水素基が好適である。具体的には、エーテル結合を有していてもよい2価の炭化水素基としては、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、2−メチルトリメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基など)、アルキレン−オキシ−アルキレン基(例えば、エチレン−オキシ−エチレン基、エチレン−オキシ−トリメチレン基など)が挙げられる。また、2価の炭化水素基としては、前記の他、オキシアルキレン基、オキシカルボニルアルキレン基、オキシカルボニルオキシアルキレン基(これらは、オキシ部位がアルケニル基と結合している)などを用いることも可能である。
【0029】
R3としては、「−R4O−」が好ましく、特に「−CH2O−」が好適である。
【0030】
mは0又は1であり、mが0の場合、R3が存在しておらず、「CH2=C(R2)−」が直接「R1」と結合している状態を示している。
【0031】
nは正の整数であり、例えば、1〜10(好ましくは1〜4、さらに好ましくは1又は2)の整数が挙げられる。
【0032】
なお、前記式(1)において、「CH2=C(R2)−(R3)m−」は、R1のポリエーテル系重合体のいずれかの部位(好ましくは、主鎖や側鎖の末端、特に主鎖の末端)にn個結合していればよく、従って、詳細には、「R1はポリエーテル系重合体の主要部である」とも言える。また、複数の「CH2=C(R2)−(R3)m−」が、R1のポリエーテル系重合体に結合している場合、全部又は一部の「CH2=C(R2)−(R3)m−」が、ポリエーテル系重合体の同一の部位に結合していてもよく、全部が異なる部位に結合していてもよい。
【0033】
このようなアルケニル基含有ポリエーテル系重合体としては、例えば、特開平4−145188号公報、特開平5−209164号公報などに記載されている公知のアルケニル基含有ポリエーテル系重合体を用いることができる。
【0034】
アルケニル基含有ポリエーテル系重合体としては、数平均分子量が5,000以上50,000以下(5,000〜50,000)、好ましくは10,000以上30,000以下(10,000〜30,000)、より好ましくは15,000以上25,000以下(15,000〜25,000)であるものを好適に用いることができる。アルケニル基含有ポリエーテル系重合体の数平均分子量が5,000未満であると硬化物の粘着性が低下し、一方、50,000を超えると塗工性が低下する。
【0035】
なお、アルケニル基含有ポリエーテル系重合体による粘着剤は、無溶剤タイプの粘着剤であっても、室温(例えば、23℃)で塗工することが可能である。この点から、アルケニル基含有ポリエーテル系重合体は、カイロ用粘着部材の粘着剤層を構成する粘着剤の粘着成分(ポリマー成分またはベースポリマー)として優れていると言える。
【0036】
このようなアルケニル基含有ポリエーテル系重合体の製造方法としては、特に制限されず、公知乃至慣用の方法を採用することができ、例えば、特開平4−145188号公報や特開平5−209164号公報等に記載されているように、ポリエーテル系重合体を調製後にアルケニル基を導入する方法、ポリエーテル系重合体を調製中にアルケニル基を導入する方法などを用いることができる。
【0037】
アルケニル基含有ポリエーテル系重合体を主体とする粘着剤(「アルケニル基含有ポリエーテル系粘着剤」と称する場合がある)としては、アルケニル基含有ポリエーテル系重合体を主体としていれば、架橋剤、触媒(例えば、ヒドロシリル化触媒など)、貯蔵安定性改良剤などの他の成分が含有されていてもよい。架橋剤としては、アルケニル基含有ポリエーテル系重合体を架橋させることができるものであれば特に制限されないが、例えば、分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物(「ヒドロシリル基複数含有化合物」と称する場合がある)を好適に用いることができる。該架橋剤としてのヒドロシリル基複数含有化合物としては、例えば、特開平4−145188号公報や特開平5−209164号公報等に記載されている「分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物[(B)成分]」などが挙げられる。
【0038】
また、触媒としては、架橋剤としてヒドロシリル基複数含有化合物が用いられている場合は、ヒドロシリル化触媒を好適に用いることができる。該ヒドロシリル化触媒としては、アルケニル基含有ポリエーテル系重合体とヒドロシリル基複数含有化合物との架橋反応を促進させることができる触媒であれば特に制限されないが、例えば、特開平4−145188号公報や特開平5−209164号公報等に記載されている「ヒドロシリル化触媒[(C)成分]」などが挙げられる。
【0039】
さらにまた、貯蔵安定性改良剤としては、アルケニル基含有ポリエーテル系重合体を主体とする組成物の貯蔵安定性を高めることができるものであれば特に制限されないが、例えば、特開平4−145188号公報や特開平5−209164号公報等に記載されている「貯蔵安定性改良剤[特開平5−209164号公報では(E)成分]」などが挙げられる。
【0040】
粘着剤(特に、アルケニル基含有ポリエーテル系粘着剤)としては、架橋後の粘着剤組成物のゲル分率が30重量%以上80重量%以下(30〜80重量%)となるように調整されたものが好ましい。また、架橋後の粘着剤組成物の貯蔵弾性率(G´)が室温で1×105Pa以下となるように調整されたものが好ましい。このような架橋後の粘着剤組成物のゲル分率や貯蔵弾性率(G´)は、粘着成分(特に、アルケニル基含有ポリエーテル系重合体)の種類やその含有割合、架橋剤や触媒の種類やその使用量を適宜調整することにより、コントロールすることができる。なお、粘着成分としてのアルケニル基含有ポリエーテル系重合体が5,000〜50,000の数平均分子量を有している場合、架橋後の粘着剤組成物のゲル分率が30重量%未満では架橋後もべたつきがあり、一方80重量%を超えると粘着性が低下して、必要な粘着力が得られない場合がある。
【0041】
なお、粘着剤には、粘着付与剤などの他の樹脂成分が含有されていてもよく、含有されていなくてもよい。粘着剤に粘着付与樹脂が配合されている場合は、粘着付与樹脂の配合量が多くなると透湿性が低下することから、皮膚に直接貼り付ける用途の粘着剤組成物としては、配合量ができるだけ少ないことが好ましい。具体的には、粘着付与樹脂の配合量は、例えば、アルケニル基含有ポリエーテル系重合体100重量部に対して50重量部以下(好ましくは30重量部以下、さらに好ましくは20重量部以下、特に10重量部以下)の範囲から選択することが望ましい。
【0042】
粘着剤には、その他、溶剤、充填剤、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、含窒素シラン化合物、シリコン化合物等の各種添加剤が配合されていてもよい。粘着剤としては、乾燥工程を経ても微量に残留する溶剤(有機溶剤)による皮膚刺激を防止するために、溶剤を含有していないことが好ましい。すなわち、粘着剤としては、無溶剤の粘着剤を用いることが好ましい。
【0043】
粘着剤層の厚み(乾燥後の厚み)は、例えば、50〜200μm(好ましくは70〜120μm)程度である。粘着剤層の厚みが薄いと、充分な粘着力を得ることが困難になり、一方、厚すぎると熱硬化時に充分な硬化を得ることが困難になり、しかも、コストへの影響も考慮が必要である。
【0044】
[基材]
カイロ用粘着部材の基材としては、特に制限されない。また、基材の層構成は特に制限されず、単層であってもよく、積層体であってもよい。基材としては、例えば、フィルム層、ヒートシール層、繊維による基材層(例えば、不織布基材層など)を有していてもよい。なお、市販されている貼るタイプのカイロ(特に、貼るタイプの使い捨てカイロ)では、発熱体成分を封入する袋体としては、通常、ポリエチレン系多孔質フィルムにナイロン製不織布(ナイロン不織布)をラミネートしたもの(例えば、日東ライフテック社製の商品名「ブレスロン」など)に、カイロ用粘着部材の基材がヒートシールされて形成されたものが用いられている。このような袋体の形成に際しては、ポリエチレン系多孔質フィルム側の面と、カイロ用粘着部材の基材の粘着剤層形成面と反対側の面とが向かい合った状態で且つ袋体となるようにヒートシールされている。従って、カイロ用粘着部材の基材としては、カイロ用粘着部材の基材の粘着剤層形成面と反対側の面には、前記ポリエチレン系多孔質フィルム等とヒートシール可能な素材による層が形成されていることが望ましい。
【0045】
一方、透湿性や皮膚表面の蒸れ防止性などの観点からは、粘着剤層は、高吸水性を有する基材(高吸水性基材)又は高吸湿性を有する基材(高吸湿性基材)上に形成されていることが望ましい。このような高吸水性基材又は高吸湿性基材としては、特に制限されないが、布又は編物製基材、織物製基材、不織布基材(不織布製基材)などの繊維による基材が挙げられ、特に不織布基材を好適に用いることができる。
【0046】
従って、カイロ用粘着部材の基材としては、2層以上で構成され且つ少なくとも一方の表面に不織布基材を有する積層基材が好適である。なお、粘着剤層は、前記積層基材の片面の不織布基材上に形成することができる。この際、前記積層基材の他方の面(粘着剤層形成面と反対側の面)はヒートシール層となっていることが重要である。
【0047】
具体的には、不織布基材における不織布としては、特に制限されず、例えば、ナイロン製不織布、レーヨン製不織布など公知乃至慣用の不織布(天然繊維による不織布、合成繊維による不織布など)を使用することができるが、特に、ポリアクリル酸のナトリウム塩を1成分又は主成分とする繊維(繊維物質)により形成された不織布(「ポリアクリル酸ナトリウム塩繊維系不織布」と称する場合がある)が好適である。ポリアクリル酸ナトリウム塩繊維系不織布は、高吸水性および高吸湿性を発揮できる。そのため、ポリアクリル酸ナトリウム塩繊維系不織布を用いると、発汗により発生した水分を粘着剤層が透湿し、この透湿された水分をポリアクリル酸ナトリウム塩繊維系不織布が吸収する効果が発揮される。従って、発汗による水分が粘着剤層を通してポリアクリル酸ナトリウム塩繊維系不織布に吸収されるので、皮膚表面の蒸れをより一層抑制又は防止し、肌のかぶれや発赤をより一層抑制又は防止する効果が奏される。なお、不織布基材は単層、複層のいずれの形態を有していてもよい。
【0048】
このようなポリアクリル酸ナトリウム塩繊維系不織布としては、例えば、商品名「ベルオアシス」(カネボウ合繊社製、ポリアクリル酸ナトリウム塩系ポリマー)などが市販されている。
【0049】
なお、不織布において、繊維径、繊維長、目付などは特に制限されない。不織布は、1種の繊維のみから構成されていてもよく、複数種の繊維が組み合わせられて構成されていてもよい。
【0050】
一方、ヒートシール層は、ヒートシール性を有する樹脂(ヒートシール性樹脂)により形成することができる。このようなヒートシール性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、オレフィン系樹脂を用いることができ、中でも、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体など)などのエチレン系樹脂が好適である。ヒートシール性樹脂は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、ヒートシール層は単層、複層のいずれの形態を有していてもよい。
【0051】
ヒートシールをより低温で行って高速加工するためには、より低融点のヒートシール性樹脂を用いることが有効であり、そのためには、例えば、メタロセン系触媒を用いて調製された低密度ポリエチレンなどが最も有効である。
【0052】
なお、基材がフィルム層を有している場合、該フィルム層は、従来使用されているフィルム層を利用することができる。なお、フィルムに隠蔽性を付与するために、フィラー(例えば、チタン白など)を添加してもよく、具体的には、例えば、多層フィルムの中間層にフィラー(例えば、チタン白など)を添加してもよい。
【0053】
さらにまた、基材の粘着剤層側の面(粘着剤層形成面)には、粘着剤との投錨性を向上させるため、下塗り剤が塗布されていてもよい。
【0054】
基材の厚みは、特に制限されず、例えば、10〜500μm(好ましくは12〜200μm、さらに好ましくは15〜100μm)程度である。なお、基材には、必要に応じて、背面処理、帯電防止処理などの各種処理が施されていてもよい。
【0055】
[カイロ用粘着部材]
カイロ用粘着部材は、基材と、該基材の片面に設けられた粘着剤層とを有している。粘着剤層は、公知乃至慣用のコーティング方式を利用して基材上に形成することができる。具体的には、粘着剤のコーティング方式としては、ロールコーティング方法、ダイコーティング方法等の適宜の塗工方式を選定可能であるが、メルトブローやカーテンスプレー方式が好ましく、特にカーテンスプレー方式が最適である。
【0056】
カーテンスプレー方式を利用すると、基材上に粘着剤を繊維状に塗布することができ、多孔性を有する粘着剤層(多孔性粘着剤層)を形成することができる。粘着剤層が多孔性粘着剤層であると、汗をより一層透湿することができ、肌のかぶれや発赤をより一層防止する効果をもたらせることが可能となる。特に、多孔性粘着剤層(カーテンスプレー方式により粘着剤を繊維状に塗布して形成された多孔性粘着剤層など)と、吸水性不織布又は吸湿性不織布(ポリアクリル酸ナトリウム塩繊維系不織布など)とを組み合わせると、より一層汗を吸収することができ、その結果、さらにより一層かぶれや発赤を防止することができるようになる。
【0057】
粘着剤層は、基材の片面に、通常全面的に形成されているが、部分的に形成されていてもよく、例えば、ストライプ塗工を利用してストライプ状に、ドット塗工を利用してドット状に部分的に形成されていてもよい。
【0058】
なお、粘着剤層の透湿度は、粘着剤層がどのような形態で形成されていても、前述のように、基材上の塗布領域全面(例えば、片面全面など)に均一又はほぼ均一の厚みで塗布した際の透湿度として測定される。従って、粘着剤層がストライプ状やドット状に形成されていても、粘着剤層の透湿度は、同一の粘着剤を用いて基材上の塗布領域全面に均一又はほぼ均一の厚みで塗布して形成された粘着剤層として測定することができる。
【0059】
粘着剤層は、無溶剤の粘着剤(溶剤を含有していない粘着剤)を塗布して形成されていることが好ましい。すなわち、粘着剤層は、無溶剤生産工程(無溶剤塗工工程)で得ることができる。
【0060】
なお、粘着剤層は、剥離フィルム(セパレータ)により保護されていてもよい。このようなセパレータとしては、公知乃至慣用のセパレータを用いることができる。
【0061】
カイロ用粘着部材は、例えば、図2に示されるように、カイロにおける発熱体成分を封入する袋体を構成する部材(カイロ用粘着シート)として利用することができる。図2は、本発明のカイロ用粘着部材が使用されたカイロの一例を示す概略断面図である。図2において、1はカイロ、2はカイロ用粘着部材、2aは粘着剤層、2bは基材、2cはセパレータ、3はカイロ用袋体形成部材、4は発熱体成分を示す。図2では、カイロ1は、基材2bの片面に粘着剤層2a、セパレータ2cがこの順で形成されたカイロ用粘着部材2が、カイロ用袋体形成部材3と袋体となるようにヒートシールされ、且つ該袋体の内部には発熱体成分4が封入されている構成を有している。前記カイロ用袋体形成部材3としては、ナイロン不織布がラミネートされたポリエチレン系多孔質フィルムを用いることができる。
【0062】
なお、該カイロ1を作製する方法としては、特に制限されないが、例えば、カイロ用粘着部材2と、カイロ用袋体形成部材3とを、所定の面が対向する形態で重ねて合わせて、開口部を有するように周囲をヒートシールして開口部を有する袋体(例えば、3方をヒートシールした袋体など)を作製し、該開口部を有する袋体の内部に前記開口部から発熱体成分4を投入した後、前記開口部をヒートシールすることにより、袋体に発熱体成分を封入して、カイロを作製する方法などが挙げられる。このように、本発明のカイロ用粘着部材は、粘着剤層を有する状態でヒートシール加工を経ても、前記粘着剤層は優れた粘着特性を保持又は維持することが可能である。従って、本発明のカイロ用粘着部材を用いると、容易に、カイロ(貼るタイプのカイロ)を作製することができる。
【0063】
なお、カイロ用粘着部材は、図3に示されるように、カイロにおける発熱体成分を封入する袋体に貼付して用いることも可能である。また、図3は、本発明のカイロ用粘着部材が使用されたカイロの他の例を示す概略断面図である。図3において、1aはカイロ、5は袋体を示す。図3では、カイロ1aは、発熱体成分4が封入された袋体5の表面に、公知乃至慣用の接着手段を利用して、カイロ用粘着部材2が貼付されている構成を有している。なお、カイロ用粘着部材2は、基材2bの片面に粘着剤層2a、セパレータ2cがこの順で形成された構成を有している。
【0064】
[カイロ]
本発明のカイロ(貼るタイプのカイロ)は、前記カイロ用粘着部材が使用されていれば、その構成は特に制限されない。本発明のカイロとしては、前記図2で示されるように、カイロ用粘着部材が発熱体成分を封入する袋体を構成する部材(カイロ用粘着シート)として使用された構成を有するものを好適に用いることができる。
【0065】
本発明のカイロは、カイロ用粘着部材が前記構成を有しているので、皮膚に直接貼付しても、発汗による水分を透湿させて、皮膚表面の蒸れを抑制又は防止し、肌のかぶれや発赤を抑制又は防止することができ、従って、直貼り用カイロ(特に、直貼り用使い捨てカイロ)として、非常に有用である。
【0066】
【発明の効果】
本発明のカイロ用粘着部材を用いたカイロによれば、皮膚に直接貼付しても、発汗による水分を透湿させて、皮膚表面の蒸れを抑制又は防止し、肌のかぶれや発赤を抑制又は防止することができる。また、本発明のカイロ用粘着部材は、粘着付与樹脂が使用されていなくても、又はその使用量が低減されていても、優れた接着性能を発揮することができる。特に、発熱体成分を封入する袋体を形成する際のヒートシール加工を経ても、優れた粘着特性を保持している。
【0067】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
[基材]
カイロ用粘着シートの基材として、低密度ポリエチレンフィルム(厚み20μm)に、ナイロン不織布(商品名「エルタス」旭化成社製;40g目付け)を積層した複合フィルム(「複合フィルムA」と称する場合がある)を用いた。
[粘着剤]
カイロ用粘着シートの粘着剤層を構成する粘着剤として、分子中に少なくとの1個のアルケニル基を有するポリエーテル系重合体を主体とする粘着剤(本粘着剤は、室温で無溶剤塗工可能である)である商品名「サイリル粘着剤」(鐘淵化学工業株式会社製;数平均分子量20000):100重量部に、硬化剤(商品名「CR500」鐘淵化学工業株式会社製):1.3重量部を添加した粘着剤組成物(「粘着剤A」と称する場合がある)を用いた。
[カイロ用粘着シート]
前記粘着剤Aをセパレータ上にコンマーダイレクトコーティング方式により、乾燥後の厚さが100μmとなるように展開して粘着剤層を形成した後、該粘着剤層と前記複合フィルムAの不織布面とを貼り合わせ、その後、約130℃で3分間熱硬化させて、カイロ用粘着シートを得た。
【0069】
(実施例2)
ナイロン不織布に代えて、高吸水性不織布(商品名「ベルオアシス」カネボウ合繊社製;40g目付け)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、カイロ用粘着シートを得た。
【0070】
(実施例3)
[基材]
カイロ用粘着シートの基材として、ポリエチレン/エチレン−酢酸ビニル共重合体の混合フィルム(厚み40μm)に、高吸水性不織布(商品名「ベルオアシス」カネボウ合繊社製;40g目付け)を積層した複合フィルム(「複合フィルムB」と称する場合がある)を用いた。
[粘着剤]
カイロ用粘着シートの粘着剤層を構成する粘着剤として、実施例1と同様の粘着剤組成物である粘着剤A[すなわち、分子中に少なくとの1個のアルケニル基を有するポリエーテル系重合体を主体とする粘着剤(本粘着剤は、室温で無溶剤塗工可能である)である商品名「サイリル粘着剤」(鐘淵化学工業株式会社製;数平均分子量20000):100重量部に、硬化剤(商品名「CR500」鐘淵化学工業株式会社製):1.3重量部を添加した粘着剤組成物]を用いた。
[カイロ用粘着シート]
前記粘着剤Aをセパレータ上にカーテンスプレー方式により約30g/m2塗布して、多孔性粘着剤層を形成した後、該多孔性粘着剤層と、前記複合フィルムBの不織布面とを貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様にして、カイロ用粘着シートを得た。
【0071】
(実施例4)
カイロ用粘着シートの基材として、[エチレン−α−オレフィン共重合体と低密度ポリエチレンとの混合樹脂層(ヒートシール層)]/[ポリエチレンとポリプロピレンと酸化チタンとの混合樹脂組成物層(中間層)/[ポリプロピレン(粘着剤層形成面側の層)]の3層構造で且つ厚さ(総厚み)が80μmである複合フィルム(「複合フィルムC」と称する場合がある)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、カイロ用粘着シートを得た。
【0072】
(比較例1)
粘着剤として、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS;スチレンコンテント約20重量%):100重量部に、水添テルペン系樹脂(商品名「クリアロンP−105」ヤスハラケミカル社製;粘着付与樹脂):100重量部、パラフィンオイル(商品名「PW−90」出光石油社製;軟化剤):30重量部、および顔料としてチタン白:20重量部を添加し混合した粘着剤組成物(「粘着剤B」)を用いた。
前記粘着剤Bを、ホットメルト塗工により、前記複合フィルムAの不織布面上に塗布して粘着剤層を形成して、粘着シートを得た。
【0073】
(評価)
実施例1〜4、比較例1で得られた粘着シートを、それぞれ、100×130(mm)に切断し、該粘着シートの粘着剤層形成面と反対側の面と、前記粘着シートと同サイズの通気性シート(商品名「ブレスロン BRN−1260」日東ライフテック社製)のポリエチレン多孔質面とが対向する状態で両者を重ね合わせ、ヒートシール加工により3方をヒートシールした後、開放口から内部に、市販の「直貼り用使い捨てカイロ」中の発熱体成分(発熱体組成物)を投入し、さらに、残る1方(開放口)をヒートシール加工によりヒートシールして、直貼り用使い捨てカイロを作製した。このカイロを用いて、下記のフィーリング試験を行い、装着時、発熱時および剥離時における感触を評価した。
【0074】
(フィーリング試験)
無作為に選出した10名の人に、実施例1〜4、比較例1で得られた粘着シートによるカイロを、腰又は腹に貼ってもらい、カイロを貼る際の装着時における感触、カイロを貼った後の発熱時における感触、カイロを剥がす際の剥離時における感触を、フィーリングで評価してもらい、下記の評価基準により、装着時、発熱時および剥離時における感触を評価した。評価結果は表1に示した。
評価基準
○:10名中7名以上の人が好感触又は問題なしと評価した
△:10名中4〜6名の人が好感触又は問題なしと評価した
×:10名中3名以下の人が好感触又は問題なしと評価した
【0075】
【表1】
【0076】
(粘着剤層の透湿度の測定試験)
実施例1〜4で用いた粘着剤Aによる粘着剤層と、比較例1で用いた粘着剤Bによる粘着剤層について、下記の粘着剤層の透湿度の測定方法により、透湿度を測定したところ、粘着剤Aによる粘着剤層の透湿度は1300g/m2・dayであり、粘着剤Bによる粘着剤層の透湿度は70g/m2・dayであった。
(粘着剤層の透湿度の測定方法)
粘着剤をセパレータ上の塗布領域全面にアプリケーターを用いて塗布して、乾燥や架橋を行った後、100μmの厚さ(乾燥後の厚さ)を有する粘着剤層を形成した後、該粘着剤層をナイロン製不織布(商品名「エルタス」旭化成社製;坪量40g/m2)の片面に転写して、粘着シートを作製する。この粘着シートを、粘着剤層を下側にして、20gの水が入っているガラスカップ(高さ40mm且つ内径40mmφ)の上面に載せ、これらの周囲を、商品名「No.51」(日東電工株式会社製)によるビニールテープを用いて貼付して、ガラスカップに固定する。その後、粘着シートにより覆われたガラスカップを、40℃、30%RHの恒温恒湿度器内に20分間入れ、取り出して重量を測定し、この重量を初期重量(WO)とする。更にその後、再度、40℃、30%RHの恒温恒湿度器内に入れ、4時間後に取り出した後、重量(WH)を測定して、下記の式(a)に基づいて、透湿度(g/m2・day)を算出する。
透湿度=[(WO−WH)×24]/[(0.02)2×π×4] 式(a)
[式(a)において、透湿度の単位はg/m2・dayである。なお、WO:初期重量、WH:4時間後の重量である。πは3.14とする]
【0077】
(ヒートシール加工後の粘着力の評価試験)
実施例1および比較例1で得られた粘着シートの各々について、以下の方法でヒートシール加工後の粘着力を評価した。
ヒートシール機(テスター産業社製:TP−701−B)を使用して、図5で示されるように、ヒートシールバー(熱プレス)の間に粘着シートサンプル(粘着剤層にはセパレータが付いている状態)をはさみ、下記のヒートシール条件でヒートシールを行い、さらにヒートシール後、粘着シート(幅20mm)をステンレス板に貼付し、貼付してから30分後、引張試験機を使用して、引張速度:300mm/分、剥離角度:180°にて剥離し、その際の粘着力(N/20mm)を測定した。なお、比較として、ヒートシールを行っていない粘着シート(ヒートシール前の粘着シート)の粘着力(N/20mm)についても、それぞれ、同様の方法で測定した。測定結果は表2に示した。
ヒートシール条件
・エアー圧力:3.0kg/cm2(2.94×105Pa)
・時間:2秒
・温度:150℃
【0078】
図5はヒートシール方法を示す概略図である。図5において、10は粘着シート、10aは低密度ポリエチレンフィルム、10bはナイロン不織布、10cは粘着剤層、10dはセパレータ、11aは上側のヒートシールバー、11bは下側のヒートシールバー、12はセパレータ(低密度ポリエチレンフィルムの保護層として使用)である。
【0079】
【表2】
【0080】
以上より、実施例に係る粘着シートを直貼りカイロ用の粘着シートとして用いると、直貼りカイロを皮膚に直接貼付しても、皮膚表面の蒸れが抑制又は防止され、肌のかぶれや発赤を効果的に抑制又は防止することができる。これは、実施例で用いられた粘着剤の透湿度が、800g/m2・day以上であるからであると思われる。
【0081】
また、実施例では、分子中に少なくとの1個のアルケニル基を有するポリエーテル系重合体を主体とする粘着剤を用いているので、カイロを作製するさいのヒートシール加工を経ても、粘着力の低下が抑制又は防止されており、優れた粘着力を保持している。従って、実施例に係る粘着シートによる直貼りカイロは、優れた粘着性で、皮膚に直接貼付することができる。しかも、粘着付与樹脂や溶剤(特に有機溶剤)などが含まれていないので、皮膚への悪影響を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】粘着剤層の透湿度の測定方法を示す概略図である。
【図2】本発明のカイロ用粘着部材が使用されたカイロの一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明のカイロ用粘着部材が使用されたカイロの他の例を示す概略断面図である。
【図4】従来の一般的な使い捨てカイロの構成の一例を示す概略断面図である。
【図5】ヒートシール方法を示す概略図である。
【符号の説明】
1 カイロ
1a カイロ
2 カイロ用粘着部材
2a 粘着剤層
2b 基材
2c セパレータ
3 カイロ用袋体形成部材
4 発熱体成分
5 袋体
6 粘着シート
61 多層プラスチックシート基材
61a ヒートシール層
61b フィルム層
62 粘着剤層
63 セパレータ
7 オレフィン系多孔質フィルム
8 発熱体成分
10 粘着シート
10a 低密度ポリエチレンフィルム
10b ナイロン不織布
10c 粘着剤層
10d セパレータ
11a 上側のヒートシールバー
11b 下側のヒートシールバー
12 セパレータ(低密度ポリエチレンフィルムの保護層として使用)
Claims (9)
- 基材の片面に厚み50〜200μmの粘着剤層を有するカイロ用粘着部材であって、前記粘着剤層の透湿度(温度40℃、湿度30%RH、粘着剤層の厚み100μm)が、1200〜4000g/m2・dayであり、且つ前記粘着剤層が、分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリエーテル系重合体を主体とする粘着剤により構成されていることを特徴とするカイロ用粘着部材。
- ポリエーテル系重合体の数平均分子量が5,000〜50,000である請求項1記載のカイロ用粘着部材。
- 基材が2層以上で構成され且つ少なくとも一方の表面に不織布基材を有する積層基材であり、粘着剤層が前記積層基材の片面の不織布基材上に形成されている請求項1又は2記載のカイロ用粘着部材。
- 不織布基材がポリアクリル酸のナトリウム塩を主成分とする繊維物質により形成されている請求項3記載のカイロ用粘着部材。
- 粘着剤層が多孔性粘着剤層である請求項1〜4の何れかの項に記載のカイロ用粘着部材。
- 多孔性粘着剤層が、基材上に粘着剤が繊維状に塗布されて形成されている請求項5記載のカイロ用粘着部材。
- 粘着剤層が、無溶剤の粘着剤を塗布して形成されている請求項1〜6の何れかの項に記載のカイロ用粘着部材。
- カイロにおける発熱体成分を封入する袋体を構成する部材としてのカイロ用粘着シートである請求項1〜7の何れかの項に記載のカイロ用粘着部材。
- 請求項1〜8の何れかの項に記載のカイロ用粘着部材が使用されていることを特徴とするカイロ。
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