JP4241745B2 - 音響制御装置、音響制御方法、および音響制御プログラム - Google Patents

音響制御装置、音響制御方法、および音響制御プログラム Download PDF

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この発明は、音声信号の音響特性を制御する音響制御装置、音響制御方法、および音響制御プログラムに関する。
従来、音響ホールや、会議場等の集会施設における音響効果を増強して音場支援を行う音場制御装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。このような装置では、ホールの形状等を考慮して、スピーカの音を受ける座席等が存在する面(以下、単に「スピーカの受音面」または「受音面」という。)においてカラレーションやハウリングが発生しないような音響特性となるように、イコライザ等のパラメータが決定される。
イコライザのパラメータは、一般的に周波数特性上のピークを無くすように設定される。図20に周波数特性とイコライザ特性の関係を示す。図20に示すグラフの横軸は周波数を表し、縦軸はレベルを表す。同図(A)は、スピーカの受音面で受音した音波の周波数特性を示したものである。この周波数特性によれば、周波数f0において最大ゲインとなるピークが存在する。一般に、イコライジングを行う場合、このピークのゲインが所定の値(目標レベル)以下となるようにパラメトリックイコライザ(以下、PEQという。)の特性を決定する。したがって同図(B)に示すように、周波数f0にPEQバンドの中心周波数を設定し、ゲイン、Q値(共振の鋭さを表す量、いわゆるQuality Factor)を決定する。その後、依然として目標レベル以上のピークが存在する場合は、各ピーク毎にパラメータの異なる複数のPEQバンドを設定する。
特開平10−69280号公報
しかし、上記のようなイコライザ特性の決定手法は、特定のピークを目標レベル以下となるようにPEQの特性を設定するため、周波数特性全体を所望の特性に近づけようとした場合、多くのPEQバンドが必要であった。
また、特定のピークのゲインが目標レベル以下となるようにPEQの特性を設定するため、そのピーク以外の帯域についての調整が考慮されておらず、周波数特性全体として予想外の特性(例えば目標レベル以下にならない、目標レベルよりも大きく減衰する等)となる可能性が有った。
そこで、本発明は、このような問題に鑑み、少ないバンド数でありながら高精度に所望の周波数特性にイコライジングを行うことができる音響制御装置、音響制御方法、および音響制御プログラムを提供することを目的とする。
この発明の音響制御装置は、音声信号の周波数特性を調整するイコライザと、所定周波数帯域における前記音声信号の周波数特性と所望の周波数特性のゲイン差の面積値を特性差として算出する差分算出手段と、前記特性差が最も小さくなるように、または前記特性差が所定の閾値以下となるように前記イコライザのパラメータを設定する設定手段と、を備え、前記イコライザは、中心周波数、ゲイン、Q値を設定可能なパラメトリックイコライザで構成され、前記設定手段は、前記イコライザの中心周波数を、前記特性差のうち最もゲイン差が大きい周波数であるピーク位置に設定し、前記イコライザのゲインを、前記ピーク位置のゲイン差に設定し、前記特性差のうち「ピーク位置のゲイン差/√2」となる周波数のうち最もピーク位置に近い周波数である基準周波数f1、および前記ピーク位置の周波数f0に関して、式f1/f0=f0/f2を満足するf2を算出し、前記イコライザのQ値を、「前記ピーク位置の周波数f0/前記周波数f1と周波数f2の差の絶対値(f0/|f1−f2|)」に仮設定し、仮設定した前記イコライザのQ値を所定量小さくしていき、前記特性差が大きくなる直前のQ値を前記イコライザのパラメータとして設定することを特徴とする。
また、この発明は、さらに、前記設定手段は、前記特性差が大きくなった場合に、直前のQ値から前記所定量よりも小さい量でQ値を小さくしていく処理を複数回繰り返すことを特徴とする。
この発明によれば、音声信号の周波数特性と所望の周波数特性との差分(ゲイン差の面積値)を算出する。この差分が最も小さくなるように、または差分が所定の閾値以下となるようにイコライザのパラメータを設定する。所定周波数帯域における所望の周波数特性との差分が最小となるようにパラメータを設定するため、周波数特性全体(所定周波数帯域)を考慮した調整がなされる。また、1つ(または少数)のバンドで所定のQ値の音声信号をイコライジングするため、バンド数を少なくすることができる。
この発明によれば、イコライザは中心周波数、ゲイン、Q値を設定可能なパラメトリックイコライザである。中心周波数は上記所定周波数帯域における最大ゲインとなるピーク位置に設定される。このピーク位置の音声信号ゲインと所望ゲインの差がゼロとなるようにイコライザのゲインを設定する。
この発明によれば、ゲイン差の値が、ピーク位置のゲイン差(ピーク位置の音声信号ゲインと所望ゲインの差)に対し1/√2倍となる周波数を検出する。これらの周波数のうち、最もピーク位置に近い周波数を基準周波数とする。基準周波数とピーク位置の周波数差を算出し、イコライザのQ値を、「ピーク位置の周波数/周波数差の2倍」に仮設定する。この仮設定した帯域幅を変更し、所定周波数帯域における差分が最も小さくなるように、または所定の閾値以下となるようにする。
この発明の音響制御方法は、中心周波数、ゲイン、Q値を設定可能なイコライザのパラメータを算出する音響制御方法であって、所定周波数帯域における前記音声信号の周波数特性と所望の周波数特性のゲイン差の面積値を特性差として算出し、前記イコライザの中心周波数を、前記特性差のうち最もゲイン差が大きい周波数であるピーク位置に設定し、前記イコライザのゲインを、前記ピーク位置のゲイン差に設定し、前記特性差のうち「ピーク位置のゲイン差/√2」となる周波数のうち最もピーク位置に近い周波数である基準周波数f1、および前記ピーク位置の周波数f0に関して、式f1/f0=f0/f2を満足するf2を算出し、前記イコライザのQ値を、「前記ピーク位置の周波数f0/前記周波数f1と周波数f2の差の絶対値(f0/|f1−f2|)」に仮設定し、仮設定したQ値を所定量小さくしていき、前記特性差が大きくなる直前のQ値を前記イコライザのパラメータとして設定することを特徴とする。
また、この発明は、さらに、前記特性差が大きくなった場合に、直前のQ値から前記所定量よりも小さい量でQ値を小さくしていく処理を複数回繰り返すことを特徴とする。
この発明のプログラムは、情報処理装置に、中心周波数、ゲイン、Q値を設定可能なイコライザのパラメータを算出させるプログラムであって、所定周波数帯域における前記音声信号の周波数特性と所望の周波数特性のゲイン差の面積値を特性差として算出する手順、前記イコライザの中心周波数を、前記特性差のうち最もゲイン差が大きい周波数であるピーク位置に設定する手順、前記イコライザのゲインを、前記ピーク位置のゲイン差に設定する手順、前記特性差のうち「ピーク位置のゲイン差/√2」となる周波数のうち最もピーク位置に近い周波数である基準周波数f1、および前記ピーク位置の周波数f0に関して、式f1/f0=f0/f2を満足するf2を算出する手順、前記イコライザのQ値を、「前記ピーク位置の周波数f0/前記周波数f1と周波数f2の差の絶対値(f0/|f1−f2|)」に仮設定する手順、仮設定したQ値を所定量小さくしていき、前記特性差が大きくなる直前のQ値を前記イコライザのパラメータとして設定する設定手順、を実行させることを特徴とする。
また、この発明は、さらに、前記設定手順において、前記特性差が大きくなった場合に、直前のQ値から前記所定量よりも小さい量でQ値を小さくしていく処理を複数回繰り返すことを特徴とする。
本発明によれば、所定周波数帯域における所望の周波数特性との差分が最小となるようにパラメータを設定するため、少ないバンド数でありながら周波数特性全体(所定周波数帯域全体)を考慮した高精度なイコライジングを行うことができる。
図1を用いて、本発明の実施形態である音響制御装置について説明する。音響制御装置は、音声信号に対しディレイ、イコライジング等の信号処理を付与するものであり、この音声信号の特性(周波数特性等)を表示器(ディスプレイなど)に表示するものである。図1は、この実施形態の音響制御装置の構成を示すブロック図である。音響制御装置1は、表示器101、操作部102、CPU103、ハードディスク(HDD)104、メモリ105、および音声出力部106を備えている。
CPU103には、表示器101、操作部102、HDD104、メモリ105、および音声出力部106がそれぞれ接続されている。
表示器101は、汎用の液晶ディスプレイ等で構成され、ユーザが音響制御装置1を操作するための画面や、ユーザが入力した各種の音響パラメータに対する結果(音声信号の特性変化等)を表示する。
操作部102は、ユーザが音響制御装置1を操作するためのユーザインタフェースである。
CPU103は、HDD104に格納したプログラムを実行するものであり、操作部102の指示を受けて、音響制御装置1の他のハードウェア資源と協働してこのプログラムを実行する。
HDD104は、汎用の記憶装置であり、CPU103が音響制御装置1を制御するためのプログラム等を格納している。
メモリ105は、HDD104に格納したデータを読み出したデータを一時的に記憶して、CPU103とデータを交換する。
音声出力部106は、HDD104に格納されている音源データから音声信号を生成する。また、音声出力部106は、DSP、D/Aコンバータを内蔵しており、上記音声信号をイコライジング、ディレイ付与等する信号処理機能1061を有する。信号処理がなされた音声信号は、音響制御装置1に接続する図示しないスピーカやヘッドホン等に出力される。
具体的には、この実施形態において、音声出力部106の信号処理機能1061は、音声信号の周波数特性を変更するPEQの機能を実現する。信号処理機能1061は、複数のPEQバンドを有している。それぞれのPEQバンドのパラメータ(中心周波数、ゲイン、Q値)はCPU103により設定される。
本実施形態の音響制御装置1は、ユーザが操作部102を用いて所望の周波数特性(以下、所望特性と言う)を入力すると、音声出力部106が出力する音声信号の周波数特性がこの所望特性に近づくようにPEQパラメータが自動設定されるものである。
なお、音声出力部106は、必ずしもハードウェアとして備えている必要はなく、ソフトウェアによって実現してもよい。なお、音響制御装置1にさらに音声信号の入力インタフェースを設け、外部から入力される音声信号を信号処理機能1061が処理する構成としてもよい。
次に、図2を用いて、音響制御装置1のPEQパラメータ設定動作を説明する。図2は、音響制御装置1のPEQパラメータ設定動作を示すのフローチャートである。ユーザが所望特性を入力し、PEQパラメータの自動設定を指示することがこの動作のトリガとなる。
まず、CPU103は、音声出力部106の信号処理機能1061に現在入力されている音声信号の周波数特性を取得する(s11)。信号処理機能1061は、入力された信号をFFTし、CPU103に入力する。CPU103は、取得した現在の音声信号の周波数特性から、PEQパラメータを算出する(s12)。この算出手法については図3〜図6を用いて後に詳しく述べる。
PEQパラメータを算出した後、CPU103は、信号処理機能1061に、算出したPEQバンドのパラメータをセットする(s13)。その結果、音声信号の周波数特性全体について、目標条件になっているか、すなわちユーザが入力した所望特性となっているか否かを判断する(s14)。目標条件になっていなければ、PEQバンドを変更して(s15)、上記の処理s11〜s13を繰り返し、異なる複数のバンドについてパラメータを算出する。目標条件になっていれば動作を終える(s16)。
次に、PEQパラメータ算出処理(s12)について詳細に説明する。図3は、PEQパラメータ算出処理を詳細に示したフローチャートである。まず、CPU103は、現在の周波数特性と、ユーザが入力した所望特性との差分を算出する(s51)。この差分は、信号処理機能1061で処理したFFTの各データ(各周波数のゲイン値)毎に算出される。すなわち、各周波数毎のゲイン値の差分値として算出される。なお、ユーザが入力する所望特性は、例えば複数の周波数(63Hz、125Hz、250Hz、500Hz、1kHz、2kHz、4kHz、8kHzなど)のゲイン値を指定したものであるが、この各周波数のゲイン値をスムージング化してFFTの各データに対応させるものである。なお、所望の周波数特性の入力態様は、これに限定するものではなく、例えば予め用意した(HDD104に格納された)周波数特性のテンプレートを選択するようにしてもよい。
その後、CPU103は、算出した差分からPEQパラメータの中心周波数、およびゲインを決定する(s52)。また、CPU103は、算出した差分からPEQパラメータの最大Q値(初期のQ値)を決定する(s53)。これらのPEQパラメータの初期値の決定手法について、図4を用いて説明する。図4に示すグラフの横軸は周波数を示し、縦軸はレベルを示す。同図(A)は、上記算出した差分の周波数特性(以下、差分特性と言う)であり、同図(B)はPEQの周波数特性である。CPU103は、算出した差分のうち、最もゲイン値が大きい周波数f0、すなわちピーク位置に中心周波数を設定する。さらに、この周波数f0における差分のゲイン値がゼロとなるようにPEQのゲインGを設定する。
次に、同図(A)に示すように、CPU103は、上記ゲインGの1/√2倍のゲイン値となる周波数のうち、ピーク位置に最も近い周波数f1を検出する。さらに、周波数f0に対して周波数f1と周波数軸上で対称となる周波数f2を検出する(すなわち、式f1/f0=f0/f2を満足するf2を算出する)。CPU103は、これらf0,f1,f2を用いて以下の数式により初期のQ値を決定する。
Figure 0004241745
図3のフローにおいて、中心周波数、ゲイン、初期のQ値を決定すると、CPU103は、このPEQパラメータを適用した場合の音声信号の周波数特性を算出し、適用後の周波数特性について所望特性との差分を算出する(s54)。その後、適用後の差分が適用前の差分と比較してゼロに近づいているか、すなわち音声信号の周波数特性が所望特性に近づいているかを判断する(s55)。所望特性に近づいていればQ値を所定量小さくし(s56)、s54から処理を繰り返す。
所望特性に近づいているか否かの判断手法について図5を用いて説明する。図5は、CPU103が算出した差分特性を示す図である。同図に示すグラフの横軸は周波数を示し、縦軸はレベルを示す。同図(A)は、PEQパラメータ適用前(またはs56→s54の繰り返し1つ前)の差分特性であり、同図(B)は、PEQパラメータ適用後(またはs56→s54の繰り返し後)の差分特性である。CPU103は、適用前の差分特性について、面積値S(Q1)を算出する。面積値S(Q1)は、FFTの各データについて、ゲインゼロとの差(絶対値)を算出し、これらを加算すればよい。また、同図(B)に示すように、適用後の差分特性について、面積値S(Q2)を算出する。この面積値S(Q1)と面積値S(Q2)を比較し、S(Q1)>S(Q2)であれば差分がゼロに近づいている、すなわち音声信号の周波数特性が所望特性に近づいていると判断する。逆にS(Q1)<S(Q2)であれば所望特性から遠ざかっていると判断する。
図3のs55において、所望特性から遠ざかっていると判断した場合、繰り返し直前のQ値が最も所望特性に近いパラメータであるとして、これを採用する(s57)。なお、以下のようにしてQ値を決定するようにしてもよい。図6は、Q値の決定手法の他の例について説明する図である。同図に示すグラフの横軸はQ値を表し、縦軸は面積値S(Qi)(iは整数)を表す。
CPU103は、まず、初期値Q0から順にQ値を所定量変化させて、それぞれのQ値について面積値を算出する。ここで、同図に示すように、S(Q1)はS(Q0)より小さく、S(Q2)より大きい。また、S(Q2)は、S(Q1)より小さく、かつS(Q3)より小さい。すなわち、Q値をQ2からQ3に変更した時に、面積値が大きくなるため、音声信号の周波数特性が所望特性から遠ざかると判断できる。そこで、CPU103は、最も所望特性に近いQ2の前後Q1,Q3の間で、Q1から順にQ値を上記所定量よりも小さい量で変化させて、それぞれのQ値について面積値を算出する。ここで、同図に示すように、面積値S(Q4)、S(Q5)、S(Q6)を順に算出すると、Q値をQ5からQ6に変更した時に、面積値が大きくなる。したがって、Q5が最も所望特性に近いQ値であると判断できる。さらに、Q5の前後Q4,Q6の間で、Q4から順にQ値をさらに小さい量で変化させて面積値の算出を繰り返す。以上のような処理を複数回繰り返す。
このように、最初はQ値の変化量を大きくしておき、順に変化量を小さくすることで、短い計算時間でありながら音声信号を所望特性に精度良く近づけるQ値を算出することができる。
以上のようにしてPEQパラメータを決定することで、少ないバンド数でありながら周波数特性全体(所定周波数帯域全体)を考慮した高精度なイコライジングを行うことができる。図7に本実施形態の音響制御装置を用いた場合の音声信号の特性変化と、従来の手法を用いた場合の音声信号の特性変化を示す。図7に示すグラフの横軸は周波数を表し、縦軸はレベルを表す。
図7(A)は、本実施形態の音響制御装置を用いた場合の音声信号の周波数特性(および所望特性)であり、同図(B)は、そのときのPEQの周波数特性である。同図(C)は、従来の手法を用いた場合の音声信号の周波数特性(および所望特性)であり、同図(D)は、そのときのPEQの周波数特性である。同図においては、所望特性として、周波数が高くなるにつれレベルが低下する特性を示しているが、無論これは一例であり、所望特性はこれに限定するものではない。
従来のPEQパラメータ決定手法においては、音声信号の各ピークが目標レベル以下となるように複数バンドのPEQの特性を設定する。Q値は、例えば既に目標レベル以下となっている周波数のうちピーク位置に最も近い周波数と、ピーク位置の周波数との差から決定される。音声信号レベルの高いピークから順にPEQバンドを充てて、バンド数の許される限りイコライジングする。したがって、周波数特性全体を所望の特性に近づけようとした場合、図7(D)に示すように、装置の限界バンド数(この例では8バンド)が必要であった。また、ピークにのみ着目する手法であるため、図7(C)のように、目標レベル以下にならない、目標レベルよりも大きく減衰する、といったことが多かった。
一方で、本実施形態の音響制御装置においては、音声信号の周波数特性と、所望特性との差分(面積値)を算出し、所定周波数帯域においてこの差分が小さくなるようにPEQパラメータを設定するので、図7(B)に示すように、バンド数が少なく、かつ各バンドにおけるゲイン値も小さくて済む。また、周波数特性全体(所定周波数帯域全体)を考慮しているため、同図(A)に示すように、目標レベル以下にならない、目標レベルよりも大きく減衰する、といったことを防止できる。
なお、上記のPEQパラメータ決定手法を、以下に記載するような音響設計支援装置に用いることも可能である。
図8を用いて、本発明の別の実施形態である音響設計支援装置の内部構成について説明する。図8は、この実施形態の音響設計支援装置の内部構成、および集会施設基本形状データのデータ構造を表す図である。なお、この実施形態の音響設計支援装置は、図1に示した音響制御装置とハードウェア構成は共通であり、各構成部については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。音響設計支援装置2は、ホールや会議場等の集会施設において、スピーカなどの音響設備の選択や設定を支援するものであり、音声を出力した場合の音場をシミュレーションして、その結果を表示器101に表示するものである。
この例において、表示器101は、各種の設定条件の入力において設定条件の入力を補助するための画面(図10〜図12参照。)を示す。
操作部102は、各種の設定条件の入力、音場のシミュレーションの指示入力、スピーカ配置の最適化の指示入力、およびシミュレーション結果の表示形式の選択を受付ける。
HDD104は、プログラム10と、スピーカの周囲のインパルス応答などをFFT化したSPデータ107と、このスピーカに適するイコライザのデータであるイコライザデータ108と、スピーカ選択テーブル109(図13参照。)と、集会施設基本形状データ110を格納している(詳細は後述する)。
音声出力部106は、音響設計支援装置2のシミュレーションの結果として、受音面の所定の位置での音場を、ヘッドホンやスピーカ等を通して音声で確認する場合に用いる。
ここで、図8のSPデータ107A、107Bについて説明する。図8のSPデータ107A、およびSPデータ107Bは、予め複素関数を用いてFFT化してHDD104に格納している。計算時には、計算に必要な、所定の点に対応する方向のSPデータ107Bのみを取り出して、メモリ105に置く。これにより、受音点での応答を算出する際には、伝達時間の遅延については周波数領域で各周波数について、遅延時間に対応する位相遅れとして計算できる。また、ゲイン、イコライザに関しても周波数領域の演算のみで計算するから、シミュレーションデータ計算にかかる時間を短縮できる。複数のスピーカの応答の合成に関しても同様に、周波数領域で計算できる。したがって、音響パラメータは、前記計算による周波数応答から算出でき、時間応答の長さを考慮する必要がないため、FFT変換する時間領域のデータの長さを考慮する必要がないこととなる。一方、従来では、逆FFT変換して、スピーカユニット間の時間領域を揃えていたので、ディレイを加味した場合には、時間軸上でのデータ数が大きくなり、その増加分についても、時間がかかるFFT変換をさらに行なう必要があるという無駄が生じていた。
なお、図9のST3においてヘッドホンでの音場確認の際にはディレイの大きさによってFFTの長さを変える必要がある。
次に、補正フィルタ107C、107Dについて説明する。図8に示したように、メモリ105内の、対応する方向のSPデータ107Bには、この補正フィルタ107C、107Dのデータをシミュレーション途中に生成し、格納するためのデータが含まれる。即ち、インパルス応答のデータの他に、音源と受音点間の距離に起因する、位相遅れのフィルタデータをフーリエ変換した位相補正フィルタ107Cと、距離減衰補正のためのフィルタをフーリエ変換した距離減衰補正フィルタ107Dを作成する。これらのデータはシミュレーション途中に、図16で示すような格子点を設定すると自動的に作成される。
次に、イコライザデータ108について、簡潔に説明する。イコライザデータ108は、上述した音響制御装置1において示したPEQの周波数特性であり、シミュレーションの過程でメモリ105内に作成される。イコライザデータ108は、スピーカユニット毎に自動的に作成される。
次に、スピーカ選択テーブル109について簡潔に説明する。スピーカ選択テーブル109は、図10、図11に示すような条件設定をした場合に、具体的なスピーカの候補を選択するのに用いられる。その判断をするためのデータとして格納されている。
次に、集会施設基本形状データ110のデータ構造について、図14(B)を参照して説明する。図14(B)に示すように、集会施設基本形状データ110のデータは、集会施設名称と、その形状の座標データと、画像ビットマップの組み合わせからなり、HDD104(またはメモリ105)は、これらの組み合わせを複数個記憶している(画像ビットマップの例については、図10の形状選択11Dを参照)。なお、座標データには、集会施設の空間の形状を設定する項目も含まれている。
なお、本実施形態の装置では、断りなき限り、以後において「スピーカ」は、説明の容易のため、アレイスピーカを示すものとする。ただし、本発明を実施するためには、必ずしもアレイスピーカに限るものではない。
次に、図9を用いて、本実施形態の音響設計支援装置2の全体のフローの概略を予め簡単に説明する。図9は、本実施形態の装置の動作の全体のフロー図を示している。このフローは、大きく分けて、ST1〜ST3の段階を有している。
ST1では、シミュレーションの条件を設定する条件設定を行なう。
ST2では、この条件設定に基づきシミュレーション結果を表示するための特性を表したデータであるパラメータデータを計算する。この計算においては、上述した全方向別SPデータ107A、イコライザデータ108、位相補正フィルタ107C、および距離減衰補正フィルタ107Dを用いる。
なお、前述のとおり、イコライザデータ108(メモリ105内)は、スピーカユニット毎にシミュレーションの過程で、ユーザが設定する、またはCPU103で自動計算する。
また、位相補正フィルタ107C、および距離減衰補正フィルタ107Dは、シミュレーションの過程で、図16に示すような格子点設定時に作成される。
なお、上述したように、全方向別SPデータ107A、イコライザデータ108、位相補正フィルタ107C、距離減衰補正フィルタ107Dのデータは、すべてFFT変換された周波数領域のデータとして格納されている。特に位相補正フィルタ107C、距離減衰補正フィルタ107Dを周波数領域で格納しているため、CPU103は、スピーカが複数であっても、位相をそろえるため逆FFT変換して時間軸上で加算する必要がなく、すべて周波数領域で計算するので、高速で音響パラメータを算出できる。
ST3では、この音響支援装置のシミュレーション結果を、表示器101に出力する。
条件設定ST1では、このシミュレーションに必要な、さまざまな条件(ST11からST14までの条件)を設定する。以下、これらの条件設定について説明する。
ST11では、スピーカが置かれる空間、例えば集会施設等の形状の情報(以下、単に「空間の形状」という。)を設定する。具体的には、空間の概略形状を選択すると共に、形状の詳細を数値入力する(図10、図11を参照)。
ST12ではスピーカの選択を行い、それを空間のどこに配置するかを設定する。
ST13では、その設置されたそれぞれのスピーカの設置条件を設定する。例えばアレイスピーカのユニット間の角度などである。
ST14ではこのユニット間の干渉の条件を考慮するか否か、受音面の格子点(図16参照)をどれだけ細かく取るかなどのシミュレーションの条件を設定する。
図9のST1に示す条件をすべて設定すれば、ST2、ST3により、シミュレーション結果が表示器101に表示される。音響の設計者は、図9に示すST1〜ST3のような手続きを繰り返して、最適化することになるが、このような作業は、相当手間がかかる。そこで、本実施形態の音響設計支援装置2では、ST15において、ST1で設定した空間の形状の情報を受けて、スピーカの角度およびスピーカの設定の自動最適化や支援を行っている。
この自動最適化に関するST15の処理は、ST16とST17の段階を有している。ST16では、使用できるスピーカの選択肢の候補を表示器101に示すと共に、操作部102によりスピーカが選択された場合には、ST1で設定した空間に配置された様子を表示器101に示す。
ST17では、設置されたアレイスピーカの角度(水平方向、垂直方向)およびユニット間の角度の最適な角度の組み合わせパターンを自動的に算出する。ここで、アレイスピーカの角度とは、スピーカ全体の指向軸の代表値となるもので、基準とする任意のユニットの指向軸の水平方向、垂直方向の角度のことであり、ユニット間の角度とは、隣接するユニット間の開き角度のことである。
次に、ST1の条件設定の各段階であるST11〜ST17について、図10以降の図を示して、具体的に説明する。なお、以下の図面の符号は、理解の容易のため、図9で示したステップ番号と略対応している。
まず、図9の空間形状設定ST11について、図10、図11を用いて説明する。図10は、スピーカが配置される空間の概略形状を設定するためのGUI(graphical userinterface)の一例を示す図である。音響設計支援装置2は、この図10に示すような空間形状設定画面11Aを表示器101に示して、スピーカが設置される空間の形状の概略を設定できるようにする。図10に示すように、形状選択11Cでは、空間の概略形状の種類を選択でき、扇型または箱型の形状のいずれかを選択できるようにする。ここで、例えば、ユーザが、操作部102の図示しないマウス等で「扇形」にチェックマークを入れて選択した場合には、形状選択11Dの画面表示には、扇形をした音響施設等の形状例が複数表示される。ユーザは、前述のマウス等で、形状選択11Dの中から一つの形状を選択することができる。
ユーザが、図10の形状選択11Dに示すような扇形のうちから1つを選択した場合には、空間形状設定画面11Aは、図11に示す空間形状設定画面11Bに切り替わり、6つの空間形状の一つが空間形状表示11Eの欄に空間の形状11Fが線図で示される。図11は、スピーカが配置される空間の概略形状を設定するための形状パラメータを入力するGUIの一例を示す図である。この画面は、CPU103がHDD104に格納されている集会施設基本形状データ110を読み出すことで表示器101に表示される。
図11に示す空間形状設定画面11Bでは、形状設定入力11Gにおいて、スピーカが設置される空間の形状を、数値で入力することができるようになっており、壇上の幅や音響施設の高さや奥行き、各階の高さやスロープの傾きなどのパラメータを数値入力により設定することができる。このような設定を行い、形状のパラメータの数値を修正した場合は、線図で示された空間の形状11Fがこの数値の変更に合わせて変化する。ユーザは、このような空間形状設定画面により、スピーカが置かれる空間の形状を設定できる。この形状設定入力11Gにおいては、CPU103がHDD104に格納されている集会施設基本形状データ110を読み出すことで、必要なデータが記載される。例えば、扇形なら、その扇形の角度が必要であり、1階のみならず、2階、3階があるならその形状データを記載する欄が必要であるため、CPU103が集会施設基本形状データ110からこれらを読み出して記載する。
決定ボタン11Hを押した場合には、図12に示すスピーカの選択&配置設定画面12に切り替わる。図12は、図1のST12、ST16に対応しており、このようなスピーカの選択&配置設定を行なうためのGUIの一例を表す図である。スピーカの選択&配置設定画面12では、用途選択表示12Aと、空間形状表示11Eと、形状データ12Bと、スピーカの設置位置12Cと、最適スピーカの候補16と、が表示される。
空間形状表示11Eの欄には、図10、図11で設定した空間の形状に基づいて、略実際の空間の形状の比率で形状が表示される。
用途選択表示12Aでは、音響施設等の使用目的を選択できるようにし、「音楽」、「スピーチ用途」にチェックマークを入れて、そのいずれか、またはその両方を選択できるようにする。ここで、「音楽」を選択した場合には、例えば、音圧レベルの周波数特性等の音質に関する音響性能を重視した音響設計であり、「スピーチ用途」を選択した場合には、例えば、音声の明瞭度に関する音響性能を重視した設計であるため、音響設計の目的の違いによりそれぞれ最適な設計内容とすることができる。
スピーカの設置位置12Cでは、スピーカを設置する概略の設置位置を選択できるようにする。例えば、図12のスピーカの設置位置12Cのように舞台の中央側の「センタ」、舞台の下手側の「レフト」、舞台の上手側の「ライト」を選択できるようにする。
用途選択表示12A、スピーカの設置位置12Cの設定項目それぞれを、音響の設計者(ユーザ)が前述のマウス等でチェックマークを入れて選択した場合、最適スピーカの候補16が表示される。この最適スピーカ候補の選択は、図9のST16に対応しており、音響設計支援装置2により自動的に行なわれる。
CPU103は、図8に示したスピーカ選択テーブル109から、最適なスピーカ候補を選択する。スピーカ選択テーブル109のデータ構造は、図13のようなデータテーブルとなっている。図13は、スピーカ選択テーブル109のデータ構造を表す図である。スピーカ選択テーブル109は、図10、図11で設定した空間の形状の情報に基づいて適切なスピーカを選択するのに適したデータ構造となっており、スピーカタイプ名称109A、面積規模109B、用途109C、設置場所109D、縦横比率109Eを備えている。例えば、形状データ12Bに示す面積(受音面の面積)が450m2であり、スピーカの設置位置12Cで「センタ」にチェックされていた場合、スピーカ選択テーブル109で選択できるのは、図12の最適なスピーカの候補16に示すように、スピーカD、スピーカJとなる。
次に、同じく図12を用いて、アレイスピーカが配置された状態を表すGUIについて説明する。図12の最適なスピーカの候補16の中から、スピーカを選択した場合には、空間形状表示11Eには、選択したアレイスピーカ16Aが空間の形状11Fの縮尺で示される。これにより、空間にどのようにアレイスピーカ16Aが配置されるかを視覚的に確認できる。このアレイスピーカ16Aの表示も、図9のST16の段階に相当し、この表示により、図9のST16の段階は終了し、ST12に戻る。
また、アレイスピーカ16Aの表示がされた場合には、空間形状表示11Eには、表示されたアレイスピーカ16Aの守備範囲を選択できるようにする。例えば、図12に示す守備範囲の設定16Eは、空間の一階部分の受音面の半分を選択した場合を示している。その他、空間全体、1階部分全体、2、3階部分全体のいずれかをユーザが選択入力できるようになっている。この選択入力は、図2のST12に相当しており、その後、図9のST17において、音響設計支援装置2のCPU103は、アレイスピーカの角度およびユニット間の角度の条件設定を行なう。
次に、図14〜図18を用いて、ST17について詳細に説明する。図14はアレイスピーカの角度およびユニット間の角度の条件設定を自動的に計算する方法の概念図である。従来では、アレイスピーカのユニットの設置角度を最適設計するのは、図9に示すようなシミュレーション(ST1〜ST3)を繰り返す必要があり、ユーザの試行錯誤に頼らざるを得ないところが多かったが、本実施形態の音響設計支援装置2ではこのような設定条件を自動的に計算するようにする。
図9のST17の計算は、図14に示すように(A)〜(E)までの5段階に分かれている。まず、この計算の目的は、図12の最適なスピーカの候補16の中から選択したアレイスピーカ16Aについて、アレイスピーカの角度、およびスピーカ選択テーブル109のユニット間の角度109Fの角度について、それぞれの最適値を求めることであり、その最適値は、一言で述べると「受音面エリア内の音圧レベルの均質化、最適化」を達成するためのものである。そして、この最適値の指標として最終的に考慮するのは、受音面全体の音圧レベルに偏りがないことであり、具体的には、図14の(D)に示すように、受音面全域に設定した格子点の音圧レベルの標準偏差が最小であることである。
音響設計支援装置2では、まず、図14の(B)、(C)の段階に示すように、スピーカが向いている方向であるスピーカの軸線17E、17F、17G(以下、単に「軸線」という。)と受音面との交点である軸点17B、17C、17D(以下、単に「軸点」という。)における音圧レベルの周波数特性の最適化を行なう。以下、さらに詳細に図14の(A)〜(E)の段階について説明する。
図14(A)に示すように、ユニット間の角度の設定は、図13に示したスピーカ選択テーブル109のユニット間の角度109Fから所定の角度を設定する。この角度は、アレイスピーカそれぞれに固有のものであり、実際の設置時には、アレイスピーカ16Aの治具でユニット間の角度を設定するものである。このユニット間角度をθintとする。また、設置されるアレイスピーカの角度は、水平方向、垂直方向について設定する必要があり、この角度の組を(θ、φ)とする。ここで、水平方向の角度θは、−180度<θ≦180度であり、垂直方向の角度φは、−90度≦φ≦90度である。アレイスピーカを構成する各スピーカユニットの設置角度は、これらの角度(θint、θ、φ)で決定される。本実施形態において、アレイスピーカユニットは3つ使用するから、θintは、ユニット16B、ユニット16C間の相対角度θint1と、ユニット16C、ユニット16D間の相対角度θint2とを設定する必要がある。
また、図14(A)に示すユニットの角度の設定は、図14(E)に示すように、角度を変えながら、前述した標準偏差が最小となるアレイスピーカの角度(θ、φ)と、ユニット間の角度θint(i=1〜2)を探索する。ユニット間の角度θint(i=1〜2)については、スピーカ選択テーブル109によりピッチが決められる。探索時は、計算時間短縮のために、はじめは、この角度のピッチを大きくとって変化させる。
ここで、設定角度(θint、θ、φ)のパターン数について例を挙げて説明する。図14(A)に示すように、スピーカの候補16からスピーカタイプ名称109AとしてスピーカDを選択した場合には、アレイスピーカの角度を−180度<θ≦180度、−90度≦φ≦90度の範囲で、30度毎に変化させる。更に各アレイスピーカユニットについてユニット間角度を30度から60度の範囲で、2.5度毎に変動させることができる。即ち、θとして180度、φとして90度を、またθintとして60度を選択して、図14(A)のように(θint、θ、φ)の設定17Aを行なう。この場合、θは、−180度から180度の範囲で30度ごとなので12通り、φは、−90度から90度の範囲で30度毎なので7通りある。また、θintは図13に示すように、スピーカタイプDは、前記の当初の設定可能範囲幅が30度(30度から60度)で、刻み幅は2.5度刻みなので13通り((60−30)/2.5+1=13)となる。かつ、θintは、θint1とθint2について2回掛け合わせることになる。したがって、合計は12×7×(13×13)=1092通りとなる。なお、通常各スピーカは、対称に組み合わせるので、θint1=θint2として計算することができ、上記合計は12×7×13=1092通りとなる。
次に、図14(B)に示すように、軸点の位置の計算を行なう。前述のように、スピーカが向いている方向であるスピーカの軸線17E、17F、17Gと、受音面との交点である軸点17B、17C、17D(以下、単に「軸点」という。)の位置を、前述の(θi、φi)と図11で設定した空間の形状11Fとから算出する。
次に、図14(C)に示すように、図14(B)で求めた軸点での音圧レベルの周波数特性を最適化する。この図14(C)の具体的な説明は図15の説明で詳述するが、ここでは、簡潔にその概略を説明する。図14(C)における最適化は、前述のとおり、図14(D)の指標の計算を効率よくするためのものであり、一言で述べると、この処理は、「軸点17B、17C、17D相互間の音圧レベル及びその周波数特性を均質化するイコライザ特性を求める」ものである。一般にアレイスピーカ16Aの各ユニット16B、16C、16Dは、ブロードな指向特性を有しているため、例えば、軸点17Bにはユニット16Dからの音声も到達し、またユニット16Bの音声は軸点17Dにも到達するので、軸点17Bの音量が小さいような場合、単にユニット16Bの音圧レベルを上げる操作のみを行なうと他の軸点17C、17Dの音量も上がってしまい、かえってバランスが崩れる場合がある。そこで、本実施形態の装置では、各ユニット16B、16C、16Dのいろいろなイコライザを組み合わせたパターンを用意する。そして、それぞれのパターンに従い、前述した図8のSPデータ107(スピーカから見た全角度のインパルス応答をFFT化したデータ)を用いて、図14(A)で設定した角度で設置したアレイスピーカ16Aのユニット16B、16C、16Dから伝達され、軸点17B、17C、17Dで受ける音声の周波数特性を算出し、最適パターンを選択する。以下、フローの各段階の概略を説明する。
まず、図14(C)のS171において、予め基準周波数帯域fi(fiは離散値(i=1〜N))を設定する。基準周波数帯域fiは、例えば、63Hz、125Hz、250Hz、500Hz、1kHz、2kHz、8kHzのいずれかに設定することができる。
図14(C)のS172において、基準周波数帯域のゲインを調整するイコライザパターン(G1、G2、G3)fiHzをユニット16B、16C、16Dそれぞれについて設定する。
図14(C)のS173において、このパターンについて、前述の軸点17B、17C、17Dにおける音圧レベルの周波数特性を計算して、各基準周波数帯域での軸点17B、17C、17Dのばらつきが小さくなるパターンを選出する。具体的には、軸点17B、17C、17D間の分散を各基準周波数帯域ごとに計算し、さらに、この値の絶対値の平方根をとり、各基準周波数帯域ごとの標準偏差を計算する。なお、この標準偏差は、特定の周波数のゲインのばらつき度合いを示すものであり、この値が小さいほうがばらつき具合が小さいことになる。したがって、標準偏差が小さいパターンほど、適切なパターンとなる。
そして、各周波数ごとに独立に最適なパターン(G1、G2、G3)fiHzを選択する。
これらの段階により、S174で、ユニット16B、16C、16Dの最適なイコライザパターンを決定する。この最適なイコライザパターンが、図2、図3を用いて説明したPEQパラメータ決定の際に目標となる所望特性である。
次に、S175で、所望特性に最も近いPEQパラメータを、図2、図3に示した処理によって決定する。
なお、この図14(C)に示す段階においては、図示していないが、SPデータ107に基づいて、音圧レベルの最適化も行なう。
また、図14(C)のようにして算出したイコライザのパラメータは、FFT化して図8のHDD104にイコライザデータ108として保存する。このようにすれば、図9に示したシミュレーションパラメータ計算ST2で、周波数領域の畳み込み演算のみで、このシミュレーションパラメータを計算でき、迅速に計算結果を出力できる。音響設計支援装置においては、何度も条件を変更して、繰り返しシミュレーションを行なって最適設計を行なうが多く、このような装置に対し、イコライザのパラメータをFFT化することが効果的である。
ここで、図15を用いて、図14(C)に示した段階をさらに具体的に説明する。図15は、図14(C)に示す軸点での周波数特性の最適化を表すフロー図と、その最適化に用いるイコライザの設定例を表す図である。
S171において、3つのユニット16B、16C、16Dの周波数ゲインの指標として基準周波数帯域fiを8帯域(63〜8kHz)に順次設定する。基準周波数帯域は、例えば、63Hz、125Hz、250Hz、500Hz、1kHz、2kHz、8kHzのいずれかに設定する。
S172において、図14(C)で説明したゲイン設定のパターン(G1、G2、G3)fiHzは、G1、G2、G3を1dB刻みで0dB〜−10dBとする。したがって基本周波数1つ(例えば63Hz)につき、113通りのパターンを設定するから、全体として8×113通りのパターンを設定する。また、パターンそれぞれについて、ユニットごとにイコライザのデータをまとめて、FFT変換したデータとしてイコライザデータ108として保存する。
S173において、各パターンで軸点でのゲイン計算を行い、その中から最適パターンの選択を行なう。この段階は、さらにS1731〜S1733に分けることができる。
S1731において、軸点でのゲイン計算は、図14(B)で示したように、アレイスピーカ16Aから伝達され、軸点17B,17C、17Dそれぞれで受ける音声の周波数特性を図8のSPデータ内の107A〜Dに基づいて算出し、基準周波数帯域fiごとにその周波数ゲインのデータを蓄積する。
この計算は、スピーカユニットごとに
フーリエ変換済み時間遅れの位相補正フィルタ107Cと、およびフーリエ変換済み距離減衰補正フィルタ107Dのデータと、
FFT変換したイコライザデータ108と、
対応する方向のSPデータ107Bと、をすべて畳み込んで周波数領域で計算する。
なお、このデータ数は、ユニット数3つとなるから、本実施形態の装置では、集積するデータ数は合計すると、3つ×8帯域=24個である。
S1732において、基準周波数帯域fiごとに、この3点の周波数ゲインのデータについて標準偏差を求める。
S1733において、S172で設定したパターン113通りすべてについて、S1731〜S1732の段階を繰り返し計算して、S1732の標準偏差の標準偏差が最小となるものを求める。
以上、図15のS1731〜S1733の段階により、基準周波数帯域ごとに、軸点17B,17C、17D間の音圧レベルの標準偏差が最小となるイコライザゲインを求めることができる。これらを上述の8つの基準周波数帯域すべて繰り返して、S174において、イコライザゲインのパターンを決定できる。このパターンは、前述の図14(C)の説明のとおり、ユニットごとにまとめ直して、HDD104に保存する。最後に、S175において、所望特性に最も近いPEQパラメータを、図2、図3に示した処理によって決定する。そして、図15のフローは終了する。
図14(D)においては、受音面エリア内の音圧レベルの標準偏差を、図14(C)でもとめたユニット16B、16C、16DのPEQパラメータに基づいて算出し、受音面エリア内の音圧レベル及びその周波数特性を算出する。そのため、S176〜S178の段階を行なう。以下、各段階について説明する。
S176において、エリア内全域を、図16に示すように、格子点に分ける。そして、例えば、同図に示すような格子点17Jを複数設定する。これらの格子点17Jは、この受音面エリア内全体の位置の代表として利用する。格子点17Jを設定すると、CPU103は、時間遅れの位相補正フィルタ107C、および距離減衰補正フィルタ107Dと、を計算してHDD104に格納する。
S177において、これらの格子点17Jそれぞれでの音圧レベルを図8のSPデータ107等(107B〜D)のスピーカユニットの畳み込み演算により計算する。
即ち、スピーカユニットごとに
フーリエ変換済み時間遅れの位相補正フィルタ107C、およびフーリエ変換済み距離減衰補正フィルタ107Dのデータと、
FFT変換したイコライザデータ108と、
対応する方向のSPデータ107Bと、をすべて畳み込んで周波数領域で計算する。
S178において、S177で求めた格子点17Jそれぞれの位置での音圧レベルのデータについて、標準偏差σを算出する。この標準偏差値が小さいほうが、受音面全域の各点のばらつき具合が小さいことになり、より好ましい。
図14(E)において、アレイスピーカ16A(図12参照。)のユニット16B、16C、16Dの水平角度、垂直角度(θi、φi)を設定しなおして、(A)〜(D)を繰り返し行なう。これにより、図14(D)の手順のようにして求めた標準偏差が最小となる角度設定のパターンを選出する。その場合において、角度の探索は、計算時間を短縮するため、はじめは、設置するアレイスピーカの角度ピッチを大きく設定し、その後、この角度ピッチを小さく設定して行なう。
以上、図14を用いて説明したとおり、アレイスピーカ16Aの最適なアレイスピーカの角度およびユニット間の角度の算出は、図14(A)のように角度パターンを設定し、図14(D)のように受音面エリア内の音圧レベルの標準偏差(即ち、音圧のばらつき具合を表す指標)を計算して、その最小値を探索するものであるが、計算効率を良くするため、その前提として、図14(C)に示すように、まず、軸点17B、17C,17Dの周波数特性を最適化するイコライザ特性(PEQパラメータ)を求めている。
次に、図14(A)、(E)で示したアレイスピーカの角度およびユニット間の角度を設定して探索し、最適な角度を決定する方法について、図17を用いて具体的に説明する。図17は、このような角度の最適化を行なうための具体なフローの一例を表す図である。
まず、S21において、図14(A)で設定した角度を、水平方向、垂直方向とも30度ごとに設定したアレイスピーカの角度パターン(θ、φ)を設定する。また、それぞれのアレイスピーカの角度についてユニット間の角度θintを設定する。このときユニット間の角度の選出では、前述のように、アレイスピーカ16Aには図13のようなそれぞれ予め設定できる固有の角度の範囲とピッチがあり、その範囲から選択してパターンを用意する。ここで、θは、−180度<θ≦180度、φは、−90度≦φ≦90度の範囲で、30度毎に設定する。
そして、S22において、格子点(例えば図16の17J)間の音圧レベルの標準偏差が小さいもののベスト5となる角度パターン(θ、φ)を選出する。その選出に当たっては、ユニット間角度θintを複数設定して、その中から最適なθintを選出する必要があり、S27のサブルーチンをパターンごとに実行する。
ここで、S27のサブルーチンについて説明する。S27は、ユニット間の角度決定フローである。S22において選出したアレイスピーカの角度パターン(θ、φ)について、さらに、S271では、ユニット間角度θintを複数設定する。この角度は、図14(A)で説明したとおりである。
S272において、S22、S271で設定した角度(θint、θ、φ)について、それぞれ、S28のエリア内標準偏差計算フローを実行する。ここでは、(θ、φ)は固定であり、θintのみ変動させて、それぞれ、S28の段階を実行する。
このS28の各段階S281〜S283はそれぞれ図14(B)〜(D)の段階に相当している。そこで、前述した説明を代用してここでは説明を省略する。
S273において、S272で計算した中から標準偏差が最小値となるユニット間角度θintを選択する。その後、S27のサブルーチンは一旦終了するが、(θ、φ)の組を変えて、更にS27のフローは繰り返し行なわれることになる。
S23では、S22で選出した5つの角度パターン(θ、φ)のそれぞれの前後15度の組み合わせを設定する。例えば、選出したベスト5の角度パターンのうちの1つのパターンの最適値が(θ、φ)について(30度、45度)であったとすると、θについて15度、30度、45度についてパターンを新たに設定すると共に、φについて30度、45度、60度についてパターンを新たに設定する(32通り)。同様に、前記選出したベスト5について、それぞれの(θ、φ)のパターンを考えると、(5×32)通りあり、このように設定した各(θ、φ)それぞれに対して前述で説明したS27のサブルーチンで、ユニット間の角度θintを設定してθintの最適化を行なう。
S24において、新たに設定したパターンについて、S22と同様に、パターン探索を行い、候補を5つ選択する。
S25では、S23〜S24と同様であるが、角度を15度ピッチでなく、5度として、設定する。例えば、選出したベスト5の角度パターンのうちの1パターンの最適値が、θについて45度であったとすると、40度、45度、50度についてパターンを新たに設定する。
S26では、S25で設定した角度について、S22、S24と同様、それぞれS27のサブルーチンを用いて、(θint、θ、φ)を決定する。このS26では、S22、24と異なり、ベスト5でなく最適値を1つ選択して、θint、θ、φ)を最終的に決定する。
以上のとおり、角度の範囲をはじめは粗く、次第に狭めて探索することにより、探索時間を節約できる。また、このような探索により、計算コストの次数の面から、計算上不可能となることを防ぐことができる。
次に、図18を用いて、図10、図11で説明したGUIによる空間の形状入力の動作に関するフローを示して説明する。図18は、この空間の形状入力のフローの一例を表す図である。このフローは図9の段階の空間形状設定ST11に対応している。
図18のS111において、図10で示した形状選択11Cにより、扇型であるか箱型であるかの選択がなされたか否か判断する。扇型であればS111の判断はYとなり、S112において、図10に示すような形状選択11Dにおいて、扇型の形状例を複数表示する。
扇型でなければS111の判断はNとなり、S113に進み、図10に示すような形状選択11Dと同様、箱型の形状例を複数表示する。
次に、S114において、S112の扇型の形状選択11D、またはS113の箱型の形状選択の中から形状の選択がなされたか否か判断する。選択がない場合にはNとなり待機する。選択がない場合には、表示器101の画面を切り替えて、次のS115に進む。
S115において、空間の形状を特定するための数値の入力がなされたか否か判断する。この数値がすべて入力されなければNとなり、入力されるまで待機する。
S116において、空間の形状を特定するための数値の入力(S115)からその空間の平面的な面積規模と形状の平面的な縦と横の比率を計算する。
S117において、図10の決定ボタンが押されたか否か判断する。当該決定ボタンが押された場合には、フローは終了するが、押されない限り、S115に戻って、数値入力した数値の変更を受け付ける。
以上、図18のようなフローの段階により、CADデータを入力することなく、本実施形態の音響設計支援装置のみで、容易に空間の形状を設定できる。また、上述のS111において、音響施設の典型的な形状は、おのずと決まっているから、音響設計支援装置2では、CADデータを入力するまでもなく、空間の形状を特定できる。
次に、図19を用いて、図12の説明で示したような最適なスピーカの候補16を選出するフローについて説明する。図19は、このようなフローの一例を示している。
S161、S162では、図12で示したような用途選択表示12A、スピーカの設置位置12Cが選択されたかどうか判断し、選択されない場合はS161、S162の判断はNとなり待機する。S161、S162のいずれもが選択された場合は、S163へ進む。
S163では、図8のHDD104またはメモリ105から、図13で示したようなスピーカ選択テーブル109を参照する。そのとき、S161、S162で入力したデータと、図13のような用途109C、設置場所109Dと比較して条件を満たすか判断する。また、図18のS116で計算した面積規模、縦横比率と図13のような面積規模109Bと縦横比率109Eのデータとを比較して条件を満たすか判断する。
S164において、スピーカ選択テーブル109の条件を満たすものを選択し、図12に示すように、最適なスピーカの候補16を表示器101に表示出力する。
以上、図19の説明のとおり、図18で説明したような空間の形状について設定したデータと、スピーカ選択テーブル109とを比較参照して、最適なスピーカの候補を選択できる。
このようにして、図10〜図19で設定した条件設定および自動最適化/支援によって、従来、試行錯誤により最適化していた条件設定をほぼ自動化することができる。そして、その最適化の結果に基づいて、図9のシミュレーションパラメータ計算ST2を行い、結果の出力ST3により、最適化の結果を音圧分布表示や、ヘッドホンによる音場確認が可能となる。
なお、図8〜図19で説明した数値、ユニット数、図10の扇形または四角の形状、図11〜12のGUI等は、説明容易のために例示した実施形態の一例であって、これらに限定されるものではない。また、これらの図で示したフローは実施形態の一例である。特に、条件設定、パターン設定は、説明の容易のため、繰り返すフローの一部となっていることとしたが、一度設定すると、繰り返しルーチンの中では何度も設定する必要はない。
音響制御装置の構成を示すブロック図 音響制御装置1のPEQパラメータ設定動作のフローチャート PEQパラメータ算出処理を詳細に示したフローチャート PEQパラメータの初期値の決定手法の概略図 差分特性を示す図 Qの決定手法の他の例を説明する図 本実施形態の音響制御装置を用いた場合の音声信号の特性変化と、従来の手法を用いた場合の音声信号の特性変化を示す図 音響設計支援装置の内部構成および、集会施設基本形状データのデータ構造を表す図 音響設計支援装置の動作の全体のフロー図の概略 スピーカが配置される空間の概略形状を設定するためのGUIの一例を表す図 スピーカが配置される空間の概略形状を設定するための形状パラメータを入力するGUIの一例を表す図 スピーカの選択&配置の表示を行なうためのGUIの一例を表す図 スピーカ選択テーブルのデータ構造を表す図 アレイスピーカのユニット間の角度条件設定を自動的に計算する方法の概念図 図14(C)に示す軸点での周波数特性の最適化を表すフロー図と、その最適化に用いるイコライザの設定例を表す図 受音面エリア内を格子点で区切った一例を示す図 図14(E)に示す角度の最適化を行なうための具体的なフローの一例を示す図 図10、図11で説明したGUIによる空間の形状入力のフローの一例を示す図 図12で説明した最適なスピーカの候補を選出するフローの一例を示す図 従来のPEQパラメータ決定手法における音声信号の周波数特性とイコライザの周波数特性を示す図
符号の説明
1−音響制御装置
101−表示器
102−操作部
103−CPU
104−HDD
105−メモリ
106−音声出力装置

Claims (6)

  1. 音声信号の周波数特性を調整するイコライザと、
    所定周波数帯域における前記音声信号の周波数特性と所望の周波数特性のゲイン差の面積値を特性差として算出する差分算出手段と、
    前記特性差が最も小さくなるように、または前記特性差が所定の閾値以下となるように前記イコライザのパラメータを設定する設定手段と、
    を備え、
    前記イコライザは、中心周波数、ゲイン、Q値を設定可能なパラメトリックイコライザで構成され、
    前記設定手段は、前記イコライザの中心周波数を、前記特性差のうち最もゲイン差が大きい周波数であるピーク位置に設定し、
    前記イコライザのゲインを、前記ピーク位置のゲイン差に設定し、
    前記特性差のうち「ピーク位置のゲイン差/√2」となる周波数のうち最もピーク位置に近い周波数である基準周波数f1、および前記ピーク位置の周波数f0に関して、式f1/f0=f0/f2を満足するf2を算出し、
    前記イコライザのQ値を、「前記ピーク位置の周波数f0/前記周波数f1と周波数f2の差の絶対値(f0/|f1−f2|)」に仮設定し、
    仮設定した前記イコライザのQ値を所定量小さくしていき、前記特性差が大きくなる直前のQ値を前記イコライザのパラメータとして設定する音響制御装置。
  2. 前記設定手段は、前記特性差が大きくなった場合に、直前のQ値から前記所定量よりも小さい量でQ値を小さくしていく処理を複数回繰り返す請求項1に記載の音響制御装置。
  3. 中心周波数、ゲイン、Q値を設定可能なイコライザのパラメータを算出する音響制御方法であって、
    所定周波数帯域における前記音声信号の周波数特性と所望の周波数特性のゲイン差の面積値を特性差として算出し、
    前記イコライザの中心周波数を、前記特性差のうち最もゲイン差が大きい周波数であるピーク位置に設定し、
    前記イコライザのゲインを、前記ピーク位置のゲイン差に設定し、
    前記特性差のうち「ピーク位置のゲイン差/√2」となる周波数のうち最もピーク位置に近い周波数である基準周波数f1、および前記ピーク位置の周波数f0に関して、式f1/f0=f0/f2を満足するf2を算出し、
    前記イコライザのQ値を、「前記ピーク位置の周波数f0/前記周波数f1と周波数f2の差の絶対値(f0/|f1−f2|)」に仮設定し、
    仮設定したQ値を所定量小さくしていき、前記特性差が大きくなる直前のQ値を前記イコライザのパラメータとして設定する音響制御方法。
  4. 前記特性差が大きくなった場合に、直前のQ値から前記所定量よりも小さい量でQ値を小さくしていく処理を複数回繰り返す請求項3に記載の音響制御方法。
  5. 情報処理装置に、中心周波数、ゲイン、Q値を設定可能なイコライザのパラメータを算出させる音響制御プログラムであって、
    所定周波数帯域における前記音声信号の周波数特性と所望の周波数特性のゲイン差の面積値を特性差として算出する手順、
    前記イコライザの中心周波数を、前記特性差のうち最もゲイン差が大きい周波数であるピーク位置に設定する手順、
    前記イコライザのゲインを、前記ピーク位置のゲイン差に設定する手順、
    前記特性差のうち「ピーク位置のゲイン差/√2」となる周波数のうち最もピーク位置に近い周波数である基準周波数f1、および前記ピーク位置の周波数f0に関して、式f1/f0=f0/f2を満足するf2を算出する手順、
    前記イコライザのQ値を、「前記ピーク位置の周波数f0/前記周波数f1と周波数f2の差の絶対値(f0/|f1−f2|)」に仮設定する手順、
    仮設定したQ値を所定量小さくしていき、前記特性差が大きくなる直前のQ値を前記イコライザのパラメータとして設定する設定手順、
    を実行させる音響制御プログラム。
  6. 前記設定手順において、前記特性差が大きくなった場合に、直前のQ値から前記所定量よりも小さい量でQ値を小さくしていく処理を複数回繰り返す請求項5に記載の音響制御プログラム。
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