JP4239405B2 - 内燃機関の冷却系及びシリンダブロック - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車両に搭載される内燃機関の冷却系、及び同冷却系が適用される内燃機関のシリンダブロックに関し、特に、シリンダブロック内での冷却水の流し方に工夫をした内燃機関の冷却系及びシリンダブロックに関する。
【0002】
【従来の技術】
図8は、従来の内燃機関の冷却系とシリンダブロックを示している。エンジン71のシリンダブロック72は、ブロック本体73とシリンダヘッド74とからなる。ブロック本体73には、複数のシリンダボア(図示省略)の周囲にウォータジャケット75が形成され、シリンダヘッド74には各気筒の燃焼室を冷却するウォータジャケット76が形成されている。ウォータジャケット75の出口側水路77はウォータジャケット76の入口側水路78と連通している。また、ブロック本体73の複数のシリンダボア間には、両ウォータジャケット75,76を連通させるボア間水路79、80,81がそれぞれ設けられている。
【0003】
そして、同図に示す内燃機関の冷却系82では、ウォータポンプ83により送られる冷却水の全量が、ブロック本体73のウォータジャケット75に流入する。同ジャケット75に流入した冷却水は、ボア間水路79、80,81をそれぞれ通ってウォータジャケット76に流入するとともに、出口側水路77と入口側水路78を通ってウォータジャケット76に流入する。こうして2つの経路を通ってウォータジャケット76に流入した冷却水は、同ジャケット76内を流れた後、シリンダヘッド74外へ流出する。この流出した冷却水は、配管84を通ってラジエータ85へ送られ、外気との熱交換により冷却される。この冷却された冷却水は、ラジエータ85から配管86を通ってウォータポンプ83によりウォータジャケット75に送られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術では、以下の問題点がある。
(1)ウォータポンプ83により送られる冷却水の全量が、ブロック本体73のウォータジャケット75に流入して同ジャケット75内を流れ、この後、上記2つの経路を通ってウォータジャケット76に流入するようになっている。こうした構成により、ラジエータ85で冷却された冷却水は、まず、ブロック本体73のウォータジャケット75内を流れて各シリンダボアの周囲を冷却するので、各シリンダボア周囲の壁温の温度上昇に時間がかかり、暖機時間が長くなってしまう。
【0005】
(2)暖機時間が長くなるために、機関始動時等にエンジンオイルの粘度が低下し、各シリンダボアとピストンリングの間でのフリクションが低下するのに時間がかかり、燃費が悪化してしまう。
【0006】
(3)各シリンダボア周囲の壁温の温度分布(各シリンダボア周囲の壁部の温度分布)について、図9を参照して考察してみる。同図で、符号90はブロック本体73のシリンダボアの1つを示し、符号91は、シリンダボア90周囲の壁温の温度分布を示している。この温度分布では、シリンダボア90の中心を原点(0℃)とする横軸Xと縦軸Yでそれぞれ温度(℃)を表している。また、同図において符号A,Bは、ボア壁部のボア間部位をそれぞれ示している。例えば、横置き多気筒エンジンの場合、部位Aがボア壁部のスラスト側のボア間部位であれば、部位Bはボア間壁部の反スラスト側のボア間部位である。また、同図の符号C,Dは、それぞれボア壁部のフロント側部位,リア側部位である。上記従来技術では、図9の破線で示す温度分布91から明らかなように、ボア壁部の前記部位C,Dには前記部位A,Bよりも多くの流量の冷却水が流れるので、部位C,Dの温度は部位A,Bよりも低くなる。このように、上記従来技術では、各シリンダボア周囲の壁温の温度分布、すなわち各シリンダボア90の周方向の温度分布が均一ではない。そのため、実働時に、真円である各シリンダボア90に変形が生じ、各シリンダボア90とピストンリングの間でのフリクションが増大してしまう。これによっても、機関始動時等での燃費が悪化してしまう。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は暖機時間の短縮、各シリンダボアとピストンリングの間でのフリクションの低減、及び燃費の向上を図った内燃機関の冷却系及びシリンダブロックを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に係る発明は、ラジエータから内燃機関のシリンダブロックへウォータポンプにより送られる冷却水を、前記シリンダブロックを構成するブロック本体及びシリンダヘッドの各ウォータジャケットに流して前記シリンダブロックの各部を冷却し、この冷却後の冷却水が前記シリンダブロックから前記ラジエータへ戻される内燃機関の冷却系において、 前記ウォータポンプにより前記シリンダブロックへ送られる冷却水の全量を、前記シリンダヘッドのウォータジャケットに流すとともに、同ウォータジャケット内を流れる冷却水の一部を、前記ブロック本体のシリンダボア間に設けたボア間水路にのみ流し、同ボア間水路のみを通って前記ブロック本体のウォータジャケットに流入させるように構成したことを特徴とする内燃機関の冷却系である。
【0009】
請求項2に係る発明は、複数のシリンダボアの周囲に形成されたウォータジャケットを有するブロック本体と、内部にウォータジャケットを有し、前記ブロック本体に締結されたシリンダヘッドとを備え、前記シリンダボア間に、前記両ウォータジャケットを連通させるとともに前記シリンダボアの上部に軸方向に伸びるボア間水路を有し、ウォータポンプから送られる冷却水が前記両ウォータジャケット内を流れる内燃機関のシリンダブロックにおいて、前記ウォータポンプにより送られる冷却水の全量が、前記シリンダヘッドのウォータジャケットに流入して同ウォータジャケット内を流れるとともに、同ウォータジャケットに流入した冷却水の一部が、前記ボア間水路のみを通って前記ブロック本体のウォータジャケットに流入するように構成したことを特徴とする内燃機関のシリンダブロックである。
【0010】
請求項1及び2に係る発明によれば、ウォータポンプにより送られる冷却水の全量がシリンダヘッドのウォータジャケットに流入し、この流入した冷却水の一部が各シリンダボア間のボア間水路を通ってブロック本体のウォータジャケットに流入する。こうして、冷却水はシリンダヘッドのウォータジャケット内を流れる間に受熱して温まり、この温まった冷却水がボア間水路を通ってブロック本体のウォータジャケットに流入する。このため、各シリンダボア周囲の壁部の温度上昇が促進されるので、暖機時間を短縮することができる。
【0011】
また、シリンダヘッドのウォータジャケットに流入した冷却水の一部は、各シリンダボア間のボア間水路を通ってブロック本体のウォータジャケットに流入する。このため、各シリンダボア周囲の壁部のうち、最も高温になる各シリンダボア間にのみ冷却水が流れる。一方、各シリンダボア周囲の壁部のうち、各シリンダボア間以外の部位の周囲にあるウォータジャケットでは、冷却水の流れはほとんど無く、冷却水は澱んだ状態になっている。
【0012】
そのため、各シリンダボア周囲のうち、最も高温になる各シリンダボア間が冷却水により十分に冷却されるのに対して、各シリンダボア間部位以外の部位は各シリンダボア間ほどには冷却されない。したがって、各シリンダボア周囲の壁部の温度分布が均一になり、実働時での各シリンダボアの真円度が向上する。これとともに、各シリンダボア周囲の壁部全体の温度が従来よりも高くなるので、エンジンオイルの粘度が早期に低下する。こうして実働時の各シリンダボアの真円度が向上するとともに、エンジンオイルの粘度が早期に低下するので、ピストンリングの張力が低減されるとともに、各シリンダボアとピストンリングの間でのフリクションが低減され、燃費を向上することができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の内燃機関のシリンダブロックにおいて、前記ブロック本体のウォータジャケット内を流れた冷却水を、ブロック本体側から外部へ流出させるように構成したことを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、ブロック本体のウォータジャケット内を流れた冷却水を、ブロック本体側から外部へ流出させるようにしたので、同ブロック本体の水出口にサブ流路(配管)を接続するだけでよい。このため、両ウォータジャケットを、その水出口側で接続するための水路を内部に設ける必要がなく、その分ブロック本体及びシリンダヘッドの構成が簡単になり、コストを低減できる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に記載の内燃機関のシリンダブロックにおいて、前記ブロック本体のウォータジャケット内を流れた冷却水を、前記シリンダヘッドのウォータジャケットに戻してシリンダヘッド側から外部へ流出させるように構成したことを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、ブロック本体のウォータジャケットを流れた冷却水を、シリンダヘッドのウォータジャケットに戻してシリンダヘッド側から外部へ流出させるので、シリンダブロック側に1つの水出口を設ければよい。このため、その水出口に1つの流路(配管)を接続するだけでよく、コストをより一層低減できる。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項2〜4のいずれか一項に記載の内燃機関のシリンダブロックにおいて、前記複数のシリンダボアはシリンダライナでそれぞれ構成され、各シリンダライナの下部がブロック本体の各シリンダにそれぞれ圧入され、各シリンダライナの上部外周面と前記ブロック本体の外壁の内壁面との間でウォータジャケットを形成して各シリンダライナの上部をウエット構造にしたことを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、シリンダライナは締め代を持った圧入方式であるため、ウォータジャケット部での水漏れがない。シリンダライナは圧入方式のため、ライナ肉厚が均一になるとともに、鋳ぐるみライナと比べて残留応力が小さく、ボア変形(シリンダライナの変形)が小さい。これにより、前記張力及びフリクションがより一層低減され、燃費をより一層向上することができる。
【0019】
請求項6に係る発明は、請求項2〜5のいずれか一項に記載の内燃機関のシリンダブロックにおいて、前記各シリンダライナのシリンダボア間の部位に、直線状の合わせ面がそれぞれ形成されており、前記各シリンダライナの前記合わせ面同士を突き合わせてその上方が接合され、この接合部の下方に、その下方のライナ壁部を窪ませてボア間水路が形成されていることを特徴としている。
【0020】
この発明によれば、各シリンダライナの剛性を向上させることができるとともに、ボア間寸法が小さい場合にも、各シリンダライナのシリンダボア間にボア間水路を作ることができる。
【0021】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の内燃機関のシリンダブロックにおいて、前記各シリンダライナの前記接合部に、前記ブロック本体に締結されるシリンダヘッド側のウォータジャケットと前記ボア間水路を連通させる少なくとも1つのボア間連通孔が設けられていることを特徴としている。
【0022】
この発明によれば、ボア間連通孔を設けたことにより、各シリンダライナのボア間部を冷却する冷却水の流量及び流速を十分に確保できるので、各シリンダボア周囲の壁部の温度分布がより均一になる。このため、各シリンダボアの変形(各シリンダライナの変形)がより小さくなり、燃費がより一層低減される。
【0023】
請求項8に係る発明は、請求項5〜7のいずれか一項に記載の内燃機関のシリンダブロックにおいて、前記各シリンダライナの上部外周面と前記ブロック本体の外壁の内壁面との間で形成された前記ウォータジャケットが、その下部の幅がその上部の幅よりも小さいV字形状の縦断面に形成されていることを特徴としている。
【0024】
この構成によれば、各シリンダライナの下部よりも高温になるその上部の冷却性を向上することができるとともに、その下部の冷え過ぎを防止できる。このため、実動時における各シリンダライナの上下方向の温度分布が均一になり、実動時のシリンダボアの真直度が向上し、前記張力及びフリクションがより一層低減される。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した内燃機関の冷却系及びシリンダブロックの一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では、本発明を自動車等の車両に搭載される多気筒エンジン、例えば4気筒エンジンに適用した例を示している。
【0026】
図1に示すように、内燃機関の冷却系11は、ラジエータ12からエンジン13のシリンダブロック14へ冷却水をウォータポンプ15により送ってシリンダブロック14の各部を冷却する。この冷却後の冷却水は、ラジエータ12へ戻され、外気との熱交換により冷却される。
【0027】
シリンダブロック14は、ウォータジャケット16を有するブロック本体17と、同ブロック本体17に締結され、内部にウォータジャケット18を有するシリンダヘッド19とを備える。ブロック本体17のウォータジャケット16は、4つのシリンダボア30(図2参照)の周囲に形成されている。
【0028】
また、この冷却系11は、ウォータポンプ15により送られる冷却水の全量が、シリンダヘッド19のウォータジャケット18に流入して同ジャケット18内を流れるようになっている。そのために、ラジエータ12の水出口12aとシリンダヘッド19の水入口19aとが、流路(配管)20を介して接続されている。シリンダヘッド19の水入口19aは、ウォータジャケット18の水入口(図示略)と連通している。ウォータジャケット18に流入した冷却水の一部が、ブロック本体17のシリンダボア間(図2に示すボア間部31〜33)に設けたボア間水路21〜23を通ってウォータジャケット16に流入するようになっている。
【0029】
また、ウォータジャケット18内を流れた冷却水は、同ジャケット18の水出口と連通したシリンダヘッド19の水出口19bから外部へ流出する。この冷却水は、その水出口19bとラジエータ12の水入口12bとを接続するメイン流路(配管)24を通ってラジエータ12に戻される。一方、ウォータジャケット16内を流れた冷却水は、同ジャケット16の水出口と連通したブロック本体17の水出口17aから外部へ流出する。この冷却水は、その水出口17aとメイン流路24とを接続するサブ流路(配管)25、及びメイン流路24を通ってラジエータ12の水入口12bに戻されるようになっている。
【0030】
次に、上記内燃機関の冷却系11が適用される内燃機関のシリンダブロック14を、図2〜図5に基づいて説明する。
シリンダブロック14は、図2〜図4に示すように、前記ブロック本体17と、前記シリンダヘッド19とを備える。隣接する2つのシリンダボア30,30間の部位である各ボア間部31〜33には、前記両ウォータジャケット16、18を連通させるボア間水路21〜23が形成されている。
【0031】
また、シリンダブロック14は、上述したように、ウォータポンプ15により送られる冷却水の全量が、シリンダヘッド19のウォータジャケット18に流入して同ジャケット18内を流れるようになっている。これとともに、ウォータジャケット18に流入した冷却水の一部が、ボア間水路21〜23をそれぞれ通ってブロック本体17のウォータジャケット16に流入して同ジャケット16内を流れるようになっている。
【0032】
また、ブロック本体17のウォータジャケット16は、ブロック本体17の水出口17aと連通し、ウォータジャケット16内を流れた冷却水が外部へ流出する水出口17aを有する。この水出口17aには、前記サブ流路25の一端部が接続されている。
【0033】
ブロック本体17の4つのシリンダボア30は、図2及び図3に示すように、4つのシリンダライナ41〜44の内周面でそれぞれ構成されている。各シリンダライナ41〜44は、例えば、遠心鋳造等によりそれぞれ円筒状に形成された鋳鉄製ライナである。また、シリンダライナ41と44は同じ形状のものであり、シリンダライナ42と43は同じ形状のものである。
【0034】
各シリンダライナ41〜44の下部45は、図3に示すように、ブロック本体17の外壁50の下部に形成された4つの細径孔50aにそれぞれ圧入されている。外壁50の上部46は、ブロック本体17の上面(ヘッド面)から下方へ向かうにつれて次第に内径が小さくなる傾斜面(内壁面)50bになっている。また、各シリンダライナ41〜44の上部46と外壁50の傾斜面50bとの間でウォータジャケット16が形成され、各シリンダライナ41〜44の上部46をウエット構造にしてある。
【0035】
また、各シリンダライナ41〜44のボア間部には、図2及び図5に示すように、直線状の合わせ面41a〜44aがそれぞれ形成されている。すなわち、シリンダライナ41及び44には、片側にあるボア間部に1つの合わせ面41a及び44aがそれぞれ設けられている。一方、シリンダライナ42及び43には、両側にある2つのボア間部に合わせ面42a及び43aをそれぞれ設けられている。そして、各シリンダライナ41〜44の合わせ面41a〜44aの上方には、溶接のための開先が形成されている(図5に示す開先41b,42bを参照)。
【0036】
また、各シリンダライナ41〜44の各合わせ面41a〜44aの上方には、溶接のための開先(図5に示す開先41b,42b参照)が形成されている。各シリンダライナ41〜44の合わせ面(41a,44a)同士を突き合わせて同合わせ面の上方の開先(41b,42b)を溶接等により接合することにより、4つのシリンダライナ41〜44が一体化されている。本例では、シリンダライナ41,42の合わせ面41a,42a、シリンダライナ42,43の合わせ面、及びシリンダライナ43,44の合わせ面をそれぞれ突き合わせて、フィラー供給レーザ溶接等により接合してある。この溶接部(接合部)を図9の符号47で示してある。こうした溶接により各シリンダライナ41〜44のシリンダボア間の部位同士が接合されることにより、図2に示す前記ボア間部31〜33が形成されている。
【0037】
また、各シリンダライナ41〜44の上部46の肉厚は、合わせ面41a〜44aの下方の部分(ライナ壁部)を除いた全周にわたり、「ボア間寸法」の半分より大きい寸法になっている(図2参照)。
【0038】
また、各シリンダライナ41〜44の前記溶接部(接合部)47の下方に、前記ボア間水路21〜23が形成されている。各ボア間水路21〜23を形成するために、各シリンダライナ41〜44の合わせ面41a〜44aの下方のライナ壁部(図9に示すライナ壁部41c,42c)を窪ませてある。すなわち、シリンダライナ41の合わせ面41a下方のライナ壁部41cを窪ませてその肉厚を薄くしてある。同様に、シリンダライナ42の合わせ面42a下方のライナ壁部42c、及びシリンダライナ43,44の各合わせ面下方のライナ壁部も、窪ませてその肉厚を薄くしてある。こうした構成により、隣接する2つのシリンダライナ、例えばシリンダライナ41,42の各ライナ壁部41c、42c間に空間ができ、この空間が前記ボア間水路21になっている。他のボア間水路22,23も同様である。これらのボア間水路21〜23は、前記ウォータジャケット16にそれぞれ臨んでいる。
【0039】
また、図4及び図5に示すように、各シリンダライナ41〜44の前記溶接部(接合部)47の下方には、その下方のライナ壁部(図5に示すライナ壁部41c,42c)を窪ませてある。この窪みによりできる隣接するシリンダライナ間の隙間により、ウォータジャケット16に臨むボア間水路21〜23がそれぞれ形成されている。
【0040】
また、図2及び図4に示すように、各シリンダライナ41〜44の前記溶接部47(図5参照)には、シリンダヘッド19のウォータジャケット18とボア間水路21〜23をそれぞれ連通させる2つのボア間連通孔51,52それぞれが設けられている。各ボア間連通孔51,52は、ブロック本体17の上面から各ボア間水路21〜23の中央部へ向けたドリルパス加工により形成される。図2では、3個所のボア間部31〜33にそれぞれ形成されたボア間連通孔51,52の水入口がそれぞれ示されている。そして、各ボア間連通孔の水入口は、シリンダヘッド19に設けた縦孔53,54を介してウォータジャケット18にそれぞれ連通している(図4参照)。こうして、シリンダヘッド19のウォータジャケット18に流入した冷却水の一部が、 縦孔53,54、ボア間連通孔51,52、及びボア間水路21〜23をそれぞれ通ってブロック本体17側のウォータジャケット16に流入するようになっている。
【0041】
そして、図3に示すように、各シリンダライナ41〜44の上部46の外周面と外壁50の内壁面との間で形成されたウォータジャケット16は、その下部の幅がその上部の幅よりも小さいV字形状の縦断面に形成されている。例えば、ウォータジャケット16の下部の幅は、その上部の幅の1/3以下になっている。
【0042】
このように構成された一実施形態によれば、次のような作用効果を奏する。
(1)ウォータポンプ15により送られる冷却水の全量がシリンダヘッド19のウォータジャケット18に流入し、この流入した冷却水の一部が各シリンダボア30間のボア間水路を通ってブロック本体17のウォータジャケット16に流入する。すなわち、ウォータジャケット18に流入した冷却水の一部が、 縦孔53,54、ボア間連通孔51,52、及びボア間水路21〜23をそれぞれ通ってウォータジャケット16に流入する。こうして、冷却水はシリンダヘッド19のウォータジャケット18内を流れる間に受熱して温まり、この温まった冷却水がブロック本体17のウォータジャケット16に流入する。このため、各シリンダボア30周囲の壁部(各シリンダライナ41〜44の壁部)の温度上昇が促進される。したがって、暖機時間を短縮することができる。
【0043】
(2)ウォータジャケット18に流入した冷却水の一部は、各シリンダボア30間のボア間水路(ボア間連通孔51,52及びボア間水路21〜23)を通ってウォータジャケット16に流入する。このため、各シリンダライナ41〜44の壁部(各シリンダボア30周囲の壁部)のうち、最も高温になるボア間部31〜33(各シリンダボア30間の部位)にのみ冷却水が流れる。一方、各シリンダライナ41〜44の壁部のうち、ボア間部31〜33以外の部位の周囲にあるウォータジャケット16では、冷却水の流れはほとんど無く、冷却水は澱んだ状態になっている。このため、各シリンダライナ41〜44の壁部のうち、最も高温になるボア間部31〜33が冷却水により十分に冷却される。これに対して、各シリンダボア30周囲のうち、ボア間部31〜33以外の部位はそのボア間部ほどには冷却されない。
【0044】
このことを、図6に示す各シリンダボア周囲の温度分布(各シリンダライナ壁温)を参照して説明する。同図で、符号30はブロック本体17のシリンダボアの1つを示し、符号70は、シリンダボア30周囲の壁部であるシリンダライナ41〜44の壁温を示している。この温度分布では、シリンダボア30の中心を原点(0℃)とする横軸Xと縦軸Yでそれぞれ温度(℃)を表している。また、同図において符号A,Bは、各シリンダライナ41〜44の壁部のボア間部をそれぞれ示している。例えば、横置き多気筒エンジンの場合、部位Aが前記壁部のスラスト側のボア間部であれば、部位Bは同壁部の反スラスト側のボア間部である。また、同図の符号C,Dは、それぞれ前記壁部のフロント側部位,リア側部位である。
【0045】
図6の破線で示すシリンダライナの壁温91から明らかなように、シリンダライナ41〜44の壁部の前記部位A,Bにのみ冷却水が流れるので、部位A,Bの温度は部位C,Dよりも低くなる。これにより、各シリンダボア30周囲の壁部であるシリンダライナ41〜44の壁温、すなわち各シリンダボア30の周方向の温度分布が均一になる。こうして、各シリンダボア30周囲のうち、最も高温になるボア間部31〜33が冷却水により冷却されるので、各シリンダボア30周囲の温度分布が均一になり、実働時での各シリンダボアの真円度が向上する。これとともに、各シリンダボア30周囲の壁部全体の温度が従来よりも高くなるので、エンジンオイルの粘度が早期に低下する。こうして実働時の各シリンダボア30の真円度が向上するとともに、エンジンオイルの粘度が早期に低下するので、ピストンリングの張力が低減されるとともに、各シリンダボア30とピストンリングの間でのフリクションが低減され、燃費を向上することができる。
【0046】
(3)前記ボア間水路(ボア間連通孔51,52及びボア間水路21〜23)以外に、前記両ウォータジャケット16,18を連通させる水路を設ける必要がないので、ブロック本体17及びシリンダヘッド19の構成が簡単になり、コストを低減できる。
【0047】
(4)ブロック本体17のウォータジャケット16内を流れた冷却水を、ブロック本体17の水出口17aから外部へ流出させるようにしたので、同水出口17aにサブ流路25を接続するだけでよい。このため、両ウォータジャケット16,18を、その水出口側で接続するための水路が不要になり、その分ブロック本体17及びシリンダヘッド19の構成が簡単になり、コストを低減できる。
【0048】
(5)各シリンダライナ41〜44の下部45は、ブロック本体17の外壁50下部の細径孔50aにそれぞれ圧入されている。また、各シリンダライナ41〜44の上部46の外周面と外壁50の傾斜面50bとの間でウォータジャケット16が形成され、各シリンダライナ41〜44の上部46をウエットにしてある。
【0049】
このように、各シリンダライナ41〜44は、締め代を持った圧入方式であるため、ウォータジャケット16での水漏れがない。また、各シリンダライナ41〜44は圧入方式のため、ライナ肉厚が均一になるとともに、鋳ぐるみライナと比べて残留応力が小さく、ボア変形(シリンダライナの変形)が小さい。これにより、前記張力及びフリクションがより一層低減され、燃費をより一層向上することができる。
【0050】
(6)各シリンダライナ41〜44のシリンダボア間の部位に、直線状の合わせ面41a〜44aがそれぞれ形成され、各シリンダライナの合わせ面同士を突き合わせてその上方が溶接等で接合されている。また、その溶接部47の下方に、その下方のライナ壁部をボア間水路21〜23が形成されている。このため、各シリンダライナ41〜44の剛性が向上するとともに、ボア間寸法が小さい場合にも、各シリンダライナのシリンダボア間にボア間水路21〜23を作ることができる。
【0051】
(7)各シリンダライナ41〜44の前記溶接部47に、シリンダヘッド19のウォータジャケット18とボア間水路21〜23を連通させるボア間連通孔51,52が設けられている。このようなボア間連通孔を設けたことにより、各シリンダライナ41〜44のボア間部31〜33を冷却する冷却水の流量及び流速を十分に確保できる。このため、各シリンダライナ41〜44の壁部の温度分布がより均一になる。したがって、各シリンダボアの変形がより小さくなり、燃費がより一層低減される。
【0052】
(8)各シリンダライナ41〜44の上部46の外周面と外壁50の傾斜面(内壁面)50bとの間で形成されたウォータジャケット16は、その下部の幅がその上部の幅よりも小さいV字形状の縦断面に形成されている。これにより、各シリンダライナの下部45よりも高温になるその上部46の冷却性を向上することができるとともに、その下部45の冷え過ぎを防止できる。このため、実動時における各シリンダライナ41〜44の上下方向の温度分布が均一になり、実動時の各シリンダボア30の真直度が向上し、前記張力及びフリクションがより一層低減される。
【0053】
[変形例]
以上本発明の一実施形態について説明したが、上記一実施形態は以下に示すようにその構成を変更して実施することもできる。
【0054】
・上記一実施形態では、本発明に係る内燃機関の冷却系及びシリンダブロックを4気筒エンジンのシリンダブロックに適用したが、4気筒以外の多気筒エンジンにも本発明は適用可能である。すなわち、直列3,4,5気筒、V型6,8,12気筒、水平対向4,5気筒等全てのエンジンに適用可能である。
【0055】
・上記一実施形態を、図7に示すように変形したものにも本発明は適用可能である。すなわち、この変形例では、ウォータポンプ15により送られる冷却水の全量が、ブロック本体17の水入口17bから流入し、水路60,61を通ってウォータジャケット18に流入する。
【0056】
・上記一実施形態において、ブロック本体17のウォータジャケット16内を流れた冷却水を、シリンダヘッド19のウォータジャケット18に戻して外部へ流出させるように構成してもよい。この場合、ウォータジャケット16の水出口側から流出する冷却水を、図1の鎖線で示す水路62を介してウォータジャケット18に導くようにする。
【0057】
・上記冷却系11に、冷却水の水温に応じて開閉し、開時にのみエンジン13から流出した冷却水がラジエータ12に送られるようにしたものにも、本発明は適用可能である。
【0058】
・上記一実施形態では、シリンダライナ41〜44が圧入式のものに本発明を適用してあるが、両ウォータジャケット16,18を連通するボア間水路を有する全ての冷却系及びシリンダブロックに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る内燃機関の冷却系及びシリンダブロックを示す概略構成図。
【図2】 図1に示すシリンダブロックのブロック本体を示す平面図。
【図3】 図2に示すブロック本体のボア間以外の個所を示す縦断面図。
【図4】 図1に示すシリンダブロックのシリンダボア間を示す縦断面図。
【図5】 隣接する2つのシリンダライナの接合部を示す断面図。
【図6】 一実施形態でのシリンダボア周囲の温度分布を示す説明図。
【図7】 一実施形態の変形例を示す概略構成図。
【図8】 従来例を示す概略構成図。
【図9】 従来例でのシリンダボア周囲の温度分布を示す説明図。
【符号の説明】
11…冷却系、12…ラジエータ、12a…水出口、13…エンジン(内燃機関)、14…シリンダブロック、15…ウォータポンプ、16,18…ウォータジャケット、17…ブロック本体,17a…水出口、17b…水入口、19…シリンダヘッド、19a…水入口、19b…水出口、20…流路(配管)、21〜23…ボア間水路、24…メイン流路(配管)、25…サブ流路(配管)、30…シリンダボア、31〜33…ボア間部、41〜44…シリンダライナ、41a〜44a…直線状の合わせ面、41b、42b…開先、41c、42c…ライナ壁部、45…シリンダライナの下部、46…シリンダライナの上部、47…溶接部(接合部)、50…外壁、50a…細径孔、50b…傾斜面、51,52…ボア間連通孔、51a,52a…水入口、53,54…縦孔、60,61…水路。

Claims (8)

  1. ラジエータから内燃機関のシリンダブロックへウォータポンプにより送られる冷却水を、前記シリンダブロックを構成するブロック本体及びシリンダヘッドの各ウォータジャケットに流して前記シリンダブロックの各部を冷却し、この冷却後の冷却水が前記シリンダブロックから前記ラジエータへ戻される内燃機関の冷却系において、
    前記ウォータポンプにより前記シリンダブロックへ送られる冷却水の全量を、前記シリンダヘッドのウォータジャケットに流すとともに、同ウォータジャケット内を流れる冷却水の一部を、前記ブロック本体のシリンダボア間に設けたボア間水路にのみ流し、同ボア間水路のみを通って前記ブロック本体のウォータジャケットに流入させるように構成したことを特徴とする内燃機関の冷却系。
  2. 複数のシリンダボアの周囲に形成されたウォータジャケットを有するブロック本体と、内部にウォータジャケットを有し、前記ブロック本体に締結されたシリンダヘッドとを備え、前記シリンダボア間に、前記両ウォータジャケットを連通させるとともに前記シリンダボアの上部に軸方向に伸びるボア間水路を有し、ウォータポンプから送られる冷却水が前記両ウォータジャケット内を流れる内燃機関のシリンダブロックにおいて、
    前記ウォータポンプにより送られる冷却水の全量が、前記シリンダヘッドのウォータジャケットに流入して同ウォータジャケット内を流れるとともに、同ウォータジャケットに流入した冷却水の一部が、前記ボア間水路のみを通って前記ブロック本体のウォータジャケットに流入するように構成したことを特徴とする内燃機関のシリンダブロック。
  3. 前記ブロック本体のウォータジャケット内を流れた冷却水を、前記ブロック本体側から外部へ流出させるように構成したことを特徴とする請求項2に記載の内燃機関のシリンダブロック。
  4. 前記ブロック本体のウォータジャケット内を流れた冷却水を、前記シリンダヘッドのウォータジャケットに戻してシリンダヘッド側から外部へ流出させるように構成したことを特徴とする請求項2に記載の内燃機関のシリンダブロック。
  5. 前記複数のシリンダボアはシリンダライナでそれぞれ構成され、各シリンダライナの下部がブロック本体の各シリンダにそれぞれ圧入され、各シリンダライナの上部外周面と前記ブロック本体の外壁の内壁面との間でウォータジャケットを形成して各シリンダライナの上部をウエット構造にしたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の内燃機関のシリンダブロック。
  6. 前記各シリンダライナのシリンダボア間の部位に、直線状の合わせ面がそれぞれ形成されており、前記各シリンダライナの前記合わせ面同士を突き合わせてその上方が接合され、この接合部の下方に、その下方のライナ壁部を窪ませてボア間水路が形成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の内燃機関のシリンダブロック。
  7. 前記各シリンダライナの前記接合部に、前記ブロック本体に締結されるシリンダヘッド側のウォータジャケットと前記ボア間水路を連通させる少なくとも1つのボア間連通孔が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の内燃機関のシリンダブロック。
  8. 前記各シリンダライナの上部外周面と前記ブロック本体の外壁の内壁面との間で形成された前記ウォータジャケットが、その下部の幅がその上部の幅よりも小さいV字形状の縦断面に形成されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の内燃機関のシリンダブロック。
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