JP4239274B2 - レーザ溶接方法および装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の車体パネル、特に、ルーフとドリップとを一体成形した構造のルーフパネルをレーザ溶接によりボディーサイドパネルと結合するのに好適なレーザ溶接方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザ溶接は、被溶接物(ワーク)の片側からの溶接で済むとともに、ビード幅が狭いため抵抗スポット溶接やアーク溶接に比べて接合部の設計自由度が大きく、溶接継手としての幅を狭くすることが可能になるといった利点を有するため、自動車の一部車体パネルの結合に採用されている。
【0003】
例えば、ルーフとドリップとを一体成形した構造のルーフパネル(以下単に「ルーフ」という)をレーザ溶接によりボディーサイドパネル(以下単に「ボディーサイド」という)と結合する工法において、従来、車両上下方向の位置決めを行うのに、二つの方法があった。第1の方法は、図5に示すように、ボディーサイド2のアウタ側に段差3を設け、この上にルーフ1の端部を載せて突合せにより位置決めを行うという方法であり、第2の方法は、図6に示すように、レーザ溶接加工ヘッド11bに装着された隙間矯正治具13bに取り付けられたクランプローラ7により、ルーフ1端部のフランジ部4の下から位置決めを行うという方法である。
【0004】
いずれの方法においても、その方法でルーフ1の車両上下方向の位置決めを行った後、治具面付き隙間矯正ローラ18により、ルーフ1をボディーサイド2に押し付けて両者の隙間の大きさを矯正しかつ位置決めを確保しながら、レーザ溶接ヘッド12からレーザ光6を溶接部に照射しつつレーザ光と被溶接物とを溶接線方向に相対移動させながらレーザ溶接を行うようにしている。なお、一般に、隙間矯正治具13a,13bとレーザ溶接ヘッド12は同一の加工ヘッド11a,11bに取り付けられている。また、特に図6中、「8」は直動ガイド、「9」はクランプローラ7用加圧シリンダである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、第1の方法にあっては、ルーフ1端部のフランジ部4aを載せる段差3をボディーサイド2のアウタ側に設けたことにより、ドリップモールを取り付けるための加え代をルーフ1端部のフランジ部4aに設けなければならないため、フランジ部4aの幅(フランジ幅)をその分広げる必要があり、ルーフ1の歩留まりが悪化するとともに、ルーフ1端部が内側に折れ曲がる際のインバース量(図5中の寸法E)の増加によりルーフ1の成形性が悪化するという問題があった。
【0006】
一方、第2の方法にあっては、専ら治具7,18による位置決めであるため、部品からの位置出し精度が甘くなり、ルーフドリップとドアの位置ずれが発生する可能性が少なくないという問題があった。また、ルーフ1端部のフランジ部4の下側にクランプローラ7が移動する空間が必要であるため、ボディーサイド2の閉断面部5bの面積を大きく取ることができず、ボディーサイド2の強度・剛性のアップならびに軽量化を図ることができないという問題もあった。
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ルーフの歩留まりと成形性の向上、ルーフの車両上下方向の位置決め精度の向上、ならびにボディーサイドの閉断面部の面積の拡大を同時に図ることができるレーザ溶接方法および装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0009】
(1)本発明に係るレーザ溶接方法は、ルーフとドリップとを一体成形した構造のルーフパネルをレーザ溶接によりボディーサイドパネルと結合するレーザ溶接方法において、前記ボディーサイドパネルのアウタ側に段差を設け、溶接時に前記段差と前記ルーフパネルの端部のフランジ部とのギャップの大きさを一定値に保ちながら前記ルーフパネルを前記ボディーサイドパネルに押し付けて前記ルーフパネルの前記フランジ部に連続する部位と前記ボディーサイドパネルの前記段差に連続する部位とにおいて前記ルーフパネルと前記ボディーサイドパネルとを加圧拘束するとともに、前記加圧拘束された位置の直近位置にレーザ光を照射して溶接作業を行うことを特徴とする。
【0010】
(2)この場合、好ましくは、溶接時に前記段差と前記フランジ部との間に一定の高さ寸法の治具ローラをセットし、該治具ローラを溶接の進行と共に溶接線方向に相対移動させる。
【0011】
(3)本発明に係るレーザ溶接装置は、ルーフとドリップとを一体成形した構造のルーフパネルをレーザ溶接によりボディーサイドパネルと結合するレーザ溶接装置において、溶接時に前記ボディーサイドパネルのアウタ側に設けられた段差と前記ルーフパネルの端部のフランジ部との間にセットされ、両者のギャップの大きさを一定値に保ちながら溶接の進行と共に溶接線方向に相対移動可能な治具ローラと、前記ルーフパネルを前記ボディーサイドパネルに押し付けて前記ルーフパネルの前記フランジ部に連続する部位と前記ボディーサイドパネルの前記段差に連続する部位とにおいて前記ルーフパネルと前記ボディサイトパネルとを加圧拘束するとともに、前記ルーフパネルの前記フランジ部を前記治具ローラに押し当てる加圧ローラとを有することを特徴とする。
【0012】
【発明の効果】
本発明によれば、溶接時にボディーサイドパネルのアウタ側の段差とルーフパネルの端部のフランジ部との間のギャップの大きさを、例えば治具ローラにより、一定値に保ちながらルーフパネルをボディーサイドパネルに押し付けてルーフパネルのフランジ部に連続する部位とボディーサイドパネルの段差に連続する部位とにおいてルーフパネルとボディーサイドパネルとを加圧拘束するとともに、加圧拘束された位置の直近位置にレーザ光を照射して溶接作業を行うようにしたので、溶接完了時にフランジ部と段差との間に空間が存在するようになるため、通常のフランジ幅(フランジ部の幅)でドリップモールを取り付けることができる。したがって、従来の第1の方法と比較して、ルーフのフランジ部に対して通常のフランジ幅を確保すれば足りるため、ルーフの歩留まりが向上するとともに、その成形性が向上する。
【0013】
また、ルーフのフランジ部の下側には一定の高さ寸法の治具ローラが移動する空間があれば足り、従来の第2の方法と比較して、クランプローラが移動するほどの空間は不要であるため、ボディーサイドパネルの閉断面部の面積を拡大することができる。このため、ボディーサイドパネルの強度・剛性アップならびに軽量化を図ることができる。
【0014】
また、ボディーサイドパネルのアウタ側に設けた段差を利用しての位置決めであり、従来の第2の方法と比較して、専ら治具による位置決めではないため、ルーフの車両上下方向の位置決め精度が向上する。
【0015】
すなわち、本発明によれば、ルーフの歩留まりと成形性の向上、ルーフの車両上下方向の位置決め精度の向上、ならびにボディーサイドの閉断面部の面積の拡大を同時に図ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施の形態を説明する。
【0017】
図1および図2は、本発明の一実施の形態に係るレーザ溶接装置の概略構成図であり、図1は、ルーフがセットされる前の状態、図2は、ルーフおよび溶接加工ヘッドがセットされた後の状態をそれぞれ示している。なお、図5または図6と共通する部分には、同一の符号を付している。
【0018】
このレーザ溶接装置10は、例えば図示しない産業用ロボットのアーム先端に取り付けられるレーザ溶接加工ヘッド(以下単に「加工ヘッド」という)11を有し、この加工ヘッド11には、レーザ溶接ヘッド12と隙間矯正治具13とが一体的に装着されている。隙間矯正治具13は、ルーフ(ルーフとドリップとを一体成形した構造のルーフパネル)1をボディーサイド(ボディーサイドパネル)2に押し付けて両者の隙間の大きさを矯正する機能を有するとともに、ルーフ1の車両上下方向の位置決めを行う機能を有している。本発明では、ルーフ1を車両上下方向に位置決めするために、ボディーサイド2のアウタ側に段差3を設け、溶接時にその段差3とルーフ1端部のフランジ部4とのギャップの大きさが一定値になるように設計されている。
【0019】
レーザ溶接ヘッド12は、レーザ光6の集光光学系を含んでおり、このレーザ溶接ヘッド12からレーザ光6が溶接部に照射される。レーザ溶接ヘッド12は、隙間矯正治具13の可動部14に支持固定され、該可動部14は、直動ガイド15を介して加工ヘッド11全体の支持部材16に取り付けられ、該支持部材16に支持固定された加圧シリンダ(例えば、エアシリンダ)17によって図1中のA方向に往復動作可能となっている。
【0020】
隙間矯正治具13には、その可動部14に加圧ローラ(治具面付き隙間矯正ローラ)18が回転自在に装着されている。すなわち、加圧ローラ18は、レーザ溶接ヘッド12に対して所定の固定された位置関係にある。これにより、加圧ローラ18は、加圧シリンダ17の伸縮動作に応じてレーザ溶接ヘッド12と共に図中A方向に変位可能で、かつ、加圧シリンダ17によって加圧力が付与されるようになっている。加圧ローラ18の加圧力は、加圧シリンダ17へのエア供給によって調節される。この加圧力の加減によってルーフ1とボディーサイド2との隙間の大きさが調節される。また、加圧ローラ18は、ルーフ1の溶接部近傍に押し当てられる押圧面19と、ルーフ1のフランジ部4を後述する治具ローラに押し当てる治具面20とを備えている。
【0021】
また、隙間矯正治具13には、その支持部材16に治具ローラ21が装着されている。治具ローラ21は、溶接時に、ボディーサイド2のアウタ側に設けられた段差3とルーフ1端部のフランジ部4との間にセットされ、両者のギャップの大きさを一定値に保ちながら溶接の進行と共に溶接線方向に移動するように構成されている。すなわち、治具ローラ21は、溶接の進行と共に移動するが、高さ方向の寸法は一定に保つことができるようになっている。
【0022】
治具ローラ21の具体的構成は、例えば、図3の斜視図に示すとおりである。ここでは、ロッド22の先端に傾斜して固定されたブラケット23に2個のホイール(転動部)24a,24bを回転自在に取り付けて構成されている。ロッド22に対するブラケット23の取付け傾斜角を変えることによって治具ローラ21の高さ方向の寸法Lを変えることができる。この治具ローラ21の高さ方向の寸法Lが、溶接時において保持されるべきボディーサイド2の段差3とルーフ1のフランジ部4とのギャップの大きさとなる(図4参照)。なお、図4は、図2中の治具ローラ21を同図中のB方向から見た要部概略図であり、加工ヘッド11セット後の溶接時の治具ローラ21の状態を示している。
【0023】
次に、以上のように構成されたレーザ溶接装置10の動作を説明する。
【0024】
ルーフ1とボディーサイド2とを溶接線に沿って連続的にレーザ溶接する場合、まず、図1に示すように、ルーフ1をセットする前に、図示しないロボットアームによって加工ヘッド11を所定の位置に動かして、治具ローラ21を定位置にセットする。
【0025】
次に、ルーフ1を図1中のC方向に下げて、ルーフ1をセットした後、加圧シリンダ17により可動部14を同図中D方向に前進させて、加工ヘッド11をセットする。すなわち、レーザ溶接ヘッド12と加圧ローラ18とが所定の溶接位置に移動し、溶接部の隙間矯正とともにレーザ溶接を開始する。このときの状態、つまり、ルーフ1と加工ヘッド11とが共にセットされた後の状態は、図2に示すとおりである。より詳細には、加工ヘッド11が溶接位置にセットされると、加圧ローラ18の治具面20がルーフ1のフランジ部4を治具ローラ21に押し当てて、ボディーサイド2の段差3とルーフ1のフランジ部4とのギャップの大きさが一定値Lに設定され、車両上下方向の位置決めが完了する。これと同時に、加圧ローラ18の押圧面19がルーフ1の溶接部近傍に押し当てられ、ルーフ1をボディーサイド2に押し付ける。このとき、加圧ローラ18は加圧シリンダ17によって付与される一定の加圧力の下でルーフ1とボデーサイド2との結合を加圧拘束する(つまり、溶接部近傍を加圧して両パネル1,2の隙間の大きさを矯正する)とともに、その加圧拘束された位置の直近位置(溶接部)にレーザ溶接ヘッド12からレーザ光6を照射してレーザ溶接を開始する。
【0026】
そして、溶接の進行と共に、上記のように加工ヘッド11がセットされた状態で、すなわち、加圧ローラ18によりルーフ1のフランジ部4を治具ローラ21に押し当てるとともに溶接部近傍を加圧し、一方でその加圧された位置の直近位置(溶接部)にレーザ溶接ヘッド12からレーザ光6を照射しながら、図示しないロボットアームが加工ヘッド11を所定の軌跡に沿って動かすことにより、溶接が連続的に行われる。このとき、治具ローラ21も、加圧ローラ18(の治具面20)によって押さえられた状態でボディーサイド2の段差3とルーフ1のフランジ部4との間を移動するが、治具ローラ21の高さ方向の寸法は一定(L)であるため、ボディーサイド2の段差3とルーフ1のフランジ部4とのギャップの大きさを一定値Lに保ちながら溶接を行うことができる。
【0027】
したがって、本実施の形態によれば、溶接時にボディーサイド2のアウタ側の段差3とルーフ1端部のフランジ部4との間のギャップの大きさを治具ローラ21により一定値に保ちながら溶接を行うようにしたので、溶接完了時にフランジ部4と段差3との間に空間が存在するようになるため、通常のフランジ幅(フランジ部4の幅)でドリップモールを取り付けることができる。したがって、図5に示す従来の第1の方法と比較して、ルーフ1のフランジ部4に対して通常のフランジ幅を確保すれば足りるため、ルーフ1の歩留まりが向上するとともに、その成形性が向上する。
【0028】
また、ルーフ1のフランジ部4の下側には一定の高さ寸法の治具ローラ21が移動する空間があれば足り、図6に示す従来の第2の方法と比較して、クランプローラ7が移動するほどの空間は不要であるため、ボディーサイド2の閉断面部5の面積を拡大することができる。このため、ボディーサイド2の強度・剛性アップならびに軽量化を図ることができる。
【0029】
また、ボディーサイド2のアウタ側に設けた段差3を利用しての位置決めであり、図6に示す従来の第2の方法と比較して、専ら治具による位置決めではないため、ルーフ1の車両上下方向の位置決め精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態に係るレーザ溶接装置の、ルーフセット前の状態を示す概略構成図である。
【図2】 図1のレーザ溶接装置の、ルーフおよび溶接加工ヘッドセット後の状態を示す概略構成図である。
【図3】 治具ローラの要部斜視図である。
【図4】 図2中の治具ローラを同図中のB方向から見た要部概略図である。
【図5】 従来のルーフ位置決め方法の一例を示す説明図である。
【図6】 従来のルーフ位置決め方法の他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
1…ルーフ(ルーフパネル)、
2…ボディーサイド(ボディーサイドパネル)、
3…段差、
4…フランジ部、
6…レーザ光、
11…レーザ溶接加工ヘッド、
12…レーザ溶接ヘッド、
13…隙間矯正治具、
18…加圧ローラまたは治具面付き隙間矯正ローラ、
21…治具ローラ。
Claims (3)
- ルーフとドリップとを一体成形した構造のルーフパネルをレーザ溶接によりボディーサイドパネルと結合するレーザ溶接方法において、
前記ボディーサイドパネルのアウタ側に段差を設け、溶接時に前記段差と前記ルーフパネルの端部のフランジ部とのギャップの大きさを一定値に保ちながら前記ルーフパネルを前記ボディーサイドパネルに押し付けて前記ルーフパネルの前記フランジ部に連続する部位と前記ボディーサイドパネルの前記段差に連続する部位とにおいて前記ルーフパネルと前記ボディーサイドパネルとを加圧拘束するとともに、前記加圧拘束された位置の直近位置にレーザ光を照射して溶接作業を行うことを特徴とするレーザ溶接方法。 - 溶接時に前記段差と前記フランジ部との間に一定の高さ寸法の治具ローラをセットし、該治具ローラを溶接の進行と共に溶接線方向に相対移動させることを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接方法。
- ルーフとドリップとを一体成形した構造のルーフパネルをレーザ溶接によりボディーサイドパネルと結合するレーザ溶接装置において、
溶接時に前記ボディーサイドパネルのアウタ側に設けられた段差と前記ルーフパネルの端部のフランジ部との間にセットされ、両者のギャップの大きさを一定値に保ちながら溶接の進行と共に溶接線方向に相対移動可能な治具ローラと、
前記ルーフパネルを前記ボディーサイドパネルに押し付けて前記ルーフパネルの前記フランジ部に連続する部位と前記ボディーサイドパネルの前記段差に連続する部位とにおいて前記ルーフパネルと前記ボディサイトパネルとを加圧拘束するとともに、前記ルーフパネルの前記フランジ部を前記治具ローラに押し当てる加圧ローラと、
を有することを特徴とするレーザ溶接装置。
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