JP4238829B2 - ハイブリッド変速機のモード切り替え制御装置 - Google Patents
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Description
2要素の回転状態を決定すると他の要素の回転状態が決まる差動装置を具え、
この差動装置を表す共線図上の回転速度順方向中程に位置した差動装置の2要素にそれぞれ主動力源および駆動系への出力を結合し、これら主動力源および出力よりも共線図上の回転速度順方向外側に位置する差動装置の2要素にそれぞれ主動力源側モータ/ジェネレータおよび出力側モータ/ジェネレータを結合し、
主動力源側モータ/ジェネレータおよび出力側モータ/ジェネレータが結合された差動装置の2要素にそれぞれ関連して、これら要素を個々に固定可能なブレーキを設け、
これらブレーキの選択的な締結により2種類の変速比固定モードでの動力伝達が可能であり、これらブレーキを共に解放することにより無段変速モードでの動力伝達が可能な型式のものが知られている。
これがため、モータ/ジェネレータの温度が定格範囲を越えると、通電量の自動的な低下によりモータ/ジェネレータが目標トルクを発生し得なくなって車両駆動力の低下を招き、走行性能へ悪影響が及ぶことになる。
そして、モータ/ジェネレータMG1の実トルクTm1が目標モータトルクTm1oに対し大きな応答遅れなしにt2には内部応力トルクTsまで上昇するのに対し、ブレーキの実締結容量Tbは図示のごとく目標締結容量Tboに対し大きな応答遅れをもって低下し、t3にならないとスリップの開始によりモータ/ジェネレータMG1を回転速度Nm1>0にし得ないことから、
モータ/ジェネレータMG1の実トルクTm1が内部応力トルクTsまで上昇する瞬時t2から、モータ/ジェネレータMG1の回転速度Nm1が限界回転速度Nmlimに達する瞬時t4までの長い期間Δtにおいて、モータ/ジェネレータMG1が低回転、大トルク状態にされることになり、モータ/ジェネレータMG1の発熱が問題となったり、モータ/ジェネレータMG1の温度が定格範囲を越えないようにする通電量の低下により車両駆動力の低下を招くという問題を生ずる。
先ず前提となるハイブリッド変速機は、
2要素の回転状態を決定すると他の要素の回転状態が決まる差動装置を具え、
この差動装置を表す共線図上の回転速度順方向中程に位置した差動装置の2要素にそれぞれ主動力源および駆動系への出力を結合し、これら主動力源および出力よりも共線図上の回転速度順方向外側に位置する差動装置の2要素にそれぞれ主動力源側モータ/ジェネレータおよび出力側モータ/ジェネレータを結合し、
主動力源側モータ/ジェネレータおよび出力側モータ/ジェネレータが結合された差動装置の2要素のうち少なくとも一方の要素に関連して該要素を固定可能なブレーキを設け、
該ブレーキの締結により変速比固定モードでの動力伝達が可能であり、該ブレーキの解放により無段変速モードでの動力伝達が可能であるものとする。
前記ブレーキを締結した変速比固定モードから、該ブレーキを解放した無段変速モードへのモード切り替えに際し、該ブレーキに掛かる内部応力トルクを求め、該ブレーキの目標締結容量を該内部応力トルクまで低下させると共に、この目標締結容量に向かうよう制御される前記ブレーキの実締結容量が前記内部応力トルクに一致するまで前記ブレーキの目標締結容量を前記内部応力トルクに保持した後、該ブレーキの目標締結容量を0にして該ブレーキの実締結容量を前記内部応力トルクから更に0に向け低下させるよう構成し、
前記ブレーキの実締結容量が前記内部応力トルクから更に0に向け低下する途中で、該ブレーキのスリップ開始により、このブレーキに係わる前記差動装置の要素およびこの要素に結合された前記モータ/ジェネレータが回転し始める時までに、前記ブレーキの実締結容量が前記内部応力トルクに一致する時に発生するようなタイミングで、該モータ/ジェネレータの目標トルクを決定するよう構成したことを特徴とするものである。
ブレーキの実締結容量が内部応力トルクから更に0に向け低下する途中で、該ブレーキのスリップ開始により、このブレーキに係わる差動装置の要素およびこの要素に結合されたモータ/ジェネレータが回転し始める時期を学習などにより容易に予測することができ、この時期を基準にして前記モータ/ジェネレータのトルク上昇指令タイミングを、該モータ/ジェネレータの発熱が問題となる低回転、大トルク状態である時間が最小となるよう容易に決定し得て、モータ/ジェネレータの発熱に関する問題や、モータ/ジェネレータの熱対策による駆動力低下に関する問題を緩和、若しくは回避することができる。
図1は、本発明のモード切り替え制御装置を適用可能なハイブリッド変速機搭載車両のパワートレーンを例示する。
このパワートレーンは、主動力源としてのエンジンENGに変速機構10を結合し、この変速機構10に第1の(主動力源側)モータ/ジェネレータMG1および第2の(出力側)モータ/ジェネレータMG2を取り付け、クラッチやブレーキ等の摩擦要素を全て変速機構10内に配置し、変速機構10の出力が駆動車輪12に伝達されて車両の駆動力を発生するものである。
ハイブリッド変速機の主要部を成す図1の変速機構10は図2に示すように、その軸線方向(図の左右方向)中程に配して第1の単純遊星歯車組G1を設け、図の右側(エンジンENGから遠い後端)に配して第2の単純遊星歯車組G2を設け、図の左側(エンジンENGに近い前端)に配して第3の遊星歯車組G3を設ける。
なお遊星歯車組G1,G2,G3は、回転メンバとしてサンギヤS1,S2,S3、およびリングギヤR1,R2,R3、並びにキャリアC1,C2,C3の3要素を具え、これら回転メンバ間を以下のごとくに相関させることにより、本発明における2自由度の差動装置を構成するものとする。
キャリアC2には、入力軸21に同軸に配置した出力軸22(図3の共線図では出力Outとして示す)を結合する。
また入力軸21および第1のモータ/ジェネレータMG1間をシリーズクラッチS/Cにより結合可能とする。
サンギヤS1,S2を相互に結合し、これらの結合体を第2のモータ/ジェネレータMG2に結合する。
そして、キャリアC3をローブレーキL/Bにより固定可能にすると共に、ハイクラッチH/CによりサンギヤS3に結合可能とする。
第1の遊星歯車組G1における回転速度順で中間のキャリアC1と、第2の遊星歯車組G2における回転速度順で第1位のリングギヤR2とを相互に結合し、第2の遊星歯車組G2における回転速度順で第3位のサンギヤS2と、第1の遊星歯車組G1における回転速度順で第3位のサンギヤS1とにそれぞれ、第3の遊星歯車組G3におけるリングギヤR3およびサンギヤS3を結合する。
第1の遊星歯車組G1のリングギヤR1をモータ/ジェネレータクラッチMG1/Cにより第1のモータ/ジェネレータMG1に結合可能にすると共に、ハイ&ローブレーキHL/Bにより固定可能とする。
第2の遊星歯車組G2のキャリアC2に車輪駆動系への出力Outを結合し、第1の遊星歯車組G1のサンギヤS1および第3の遊星歯車組G3のサンギヤS3に第2のモータ/ジェネレータMG2を結合する。
なお図3の横軸は遊星歯車組G1,G2,G3のギヤ比により決まる回転メンバ間の距離比を表し、縦軸は回転メンバの回転速度(0を基準に、上方が前進回転速度、下方が後進回転速度)を表す。
つまり、エンジンENGからのトルクによりモータ/ジェネレータMG1を一定回転数で駆動して発電を行わせ、その発電電力を用いて、また必要に応じバッテリ電力を用いて、出力Out側のモータ/ジェネレータMG2を駆動することにより車両を走行させる。
従ってシリーズハイブリッドモードでは、モータ/ジェネレータMG2からの動力のみにより駆動系への出力Outが決定される。
図4(a)のレバーG3により示すごとく、サンギヤS1,S3に対してサンギヤS2の回転が、リングギヤR3およびサンギヤS3間の歯数比で決まる逆回転となる。
従って、レバーG2で示すごとくキャリアC2に結合させた出力Outが、レバーG1上のキャリアC1およびリングギヤR2における入力(In)回転速度よりも低回転となり、ロー変速比で動力伝達を行うことができる。
なおこのロー変速比固定モードでは、モータ/ジェネレータMG2が正トルクを出力する時エンジンENGをアシストすることができ、モータ/ジェネレータMG2が負トルクを出力する時エンジンENGの一部の出力を用いて発電を行うことができる。
図4(b)のレバーG3により示すごとく、サンギヤS1,S3に対してサンギヤS2の回転が、リングギヤR3およびサンギヤS3間の歯数比で決まる逆回転となるため、
レバーG2で示すごとくキャリアC2に結合させた出力Outが、レバーG1上のキャリアC1およびリングギヤR2における入力(In)回転速度よりも低回転となり、ロー変速比で動力伝達を行うことができる。
なおこのロー側無段変速モードでは、モータ/ジェネレータMG1が正トルクを出力し、モータ/ジェネレータMG2が負トルクを出力することで、エンジンENGの出力を車輪駆動系Outに向かわせることができる。
サンギヤS1(S2)およびサンギヤS2の回転速度が0であることから、レバーG2がレバーG1上に乗り、遊星歯車組G1,G2により構成される差動装置が4要素2自由度の一直線で表される変速状態を提供し、回転メンバの回転速度順にモータ/ジェネレータMG1、エンジンENGからの入力In、車輪駆動系への出力Out、モータ/ジェネレータMG2の配列となる。
従って出力Out(キャリアC2)の回転が、図4(a)、同図(b)の変速状態の時よりも高くなり、第2速相当の変速比で動力伝達を行うことができる。
またこの2速固定モードでは、モータ/ジェネレータMG1が正トルクを出力する時エンジンENGをアシストすることができ、モータ/ジェネレータMG1が負トルクを出力する時エンジンENGの一部の出力を用いて発電を行うことができる。
レバーG2が図4(c)につき前述したと同じくレバーG1上に乗り、遊星歯車組G1,G2により構成される差動装置が4要素2自由度の一直線で表される変速状態を提供し、出力Out(キャリアC2)の回転が、図4(a)、同図(b)の変速状態の時よりも高くなり、ハイ側変速比での動力伝達を行うことができる。
なおこのハイ側無段変速モードでは、モータ/ジェネレータMG1が負トルクを出力し、モータ/ジェネレータMG2が正トルクを出力することで、エンジンENGの出力を車輪駆動系Outに向かわせることができる。
変速比固定モードで締結されていたブレーキ(ロー変速比固定モードからロー側無段変速モードへの切り替え時はハイ&ローブレーキHL/B、2速固定モードからハイ側無段変速モードへの切り替え時はローブレーキL/B)を解放して当該モード切り替えを行うが、
当該モード切り替え時は図11につき前述したごとく、変速比固定モードでブレーキにより締結されていた要素に係わるモータ/ジェネレータが回転速度=0にされており、一方でこのモータ/ジェネレータは、無段変速モードへの移行時においても車両駆動力が変化しないようにしてショックを防止するため、ブレーキのスリップ開始によりモータ/ジェネレータが回転を開始するよりも前から、ブレーキの内部応力トルクに対応したトルクを発生するよう目標トルクを与えられている。
このため、上記のモード切り替え時にモータ/ジェネレータが低回転、大トルク状態にされることになり、この状態が長時間継続すると、モータ/ジェネレータの発熱が問題となったり、モータ/ジェネレータの温度が定格範囲を越えないようにする通電量の低下により車両駆動力の低下を招くという問題を生ずる。
本実施例では、図4(a)のロー変速比固定モードから同図(b)のロー側無段変速モードへモード切り替えする場合について、モータ/ジェネレータMG1の発熱を抑制し得るようにしたモード切り替え制御を説明することとする。
図5の制御システムはハイブリッドコントローラ31を具え、このハイブリッドコントローラ31は、目標エンジン回転速度および目標エンジントルクを求めてエンジンコントローラ32に指令し、エンジンコントローラ32はスロットル弁33の開度制御、燃料噴射装置34による燃料噴射量制御、および点火装置35による点火時期制御により、目標エンジン回転速度および目標エンジントルクが達成されるようエンジンENGを制御する。
ハイブリッドコントローラ31は更に、モータ/ジェネレータMG1,MG2の目標MGトルクを求めて、対応するモータコントローラ36,37に指令し、これらモータコントローラ36,37は、対応するインバータ38,39を介してバッテリ40からの電力供給量を制御することにより、モータ/ジェネレータMG1,MG2をそれぞれの目標MGトルクが達成されるよう制御する。
またハイブリッドコントローラ31は、エンジンクラッチE/C、シリーズクラッチS/C、モータ/ジェネレータクラッチMG1/CおよびハイクラッチH/Cの状態切り替えに際し、これらクラッチに所定のクラッチ締結トルク容量指令を与え、該クラッチはソレノイドバルブ(図示せず)の電流制御により対応する必要油圧を印加されて締結容量を決定されるものとする。
更にハイブリッドコントローラ31は、ハイ&ローブレーキHL/BおよびローブレーキL/Bの状態切り替えに際し、これらブレーキに所定のクラッチ締結トルク容量指令を与え、該ブレーキはソレノイドバルブ(図示せず)の電流制御により対応する必要油圧を印加されて締結容量を決定されるものとする。
またハイ&ローブレーキHL/BおよびローブレーキL/Bにも、その締結状態を検知するためのブレーキスイッチや油圧センサが設けられており、これからの情報がハイブリッドコントローラ31へ入力されてブレーキ切り替え制御に用いられるものとする。
図7はメインルーチンで、ステップS1においては、車速VSPおよびアクセル開度APOから、予定の目標駆動カマップを基に、運転者が要求している車両の目標駆動力を演算する。
次のステップS2においては、上記の目標駆動力、車速VSP、およびバッテリ蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)から、現在の運転状態に最適な走行モード(シリーズハイブリッドモード、パラレルハイブリッドモード、ロー変速比固定モード、ロー側無段変速モード、2速固定モード、ハイ側無段変速モード)を決定する。
ステップS4においては、最適モードがエンジンの運転を要求するものであるか否かをチェックし、この要求がなければステップS5において、エンジンへの燃料供給を中止する燃料カットをエンジンコントローラ32に指令する。
ステップS4で最適モードがエンジンの運転を要求するものと判定した時は、ステップS6においてエンジン運転中か否かを判定し、運転中でなければステップS7において、エンジン始動制御を実施すべく対応する指令をエンジンコントローラ32に供給する。
ステップS6で既にエンジン運転中と判定するときは、ステップS8において、上記最適モードや、クラッチおよびブレーキの締結状態、目標エンジン回転数を考慮し、最適な目標エンジントルクを決定する。
ステップS9で現在選択中のモードが最適モードと一致すると判定する場合は、モード切り替え要求がないからステップS10において、前記の目標エンジン回転数および目標エンジントルクを考慮した上で、ステップS1における目標駆動力を実現するのに必要なモータ/ジェネレータMG1,MG2の目標MGトルクを演算し、これらを対応するモータコントローラ36,37に指令する。
そして、ステップS12〜ステップS16で順次、当該モード切り替えのために操作すべきは、ハイ&ローブレーキHL/Bか、ローブレーキL/Bか、モータ/ジェネレータクラッチMG1/Cか、シリーズクラッチS/Cか、エンジンクラッチE/Cか、これらの何れでもなくてハイクラッチH/Cであるのかを判定する。
ステップS12でモード切り替えのためにハイ&ローブレーキHL/Bを操作すべきと判定する場合は、ステップS17においてハイ&ローブレーキHL/Bの操作を実施し、
ステップS13でモード切り替えのためにローブレーキL/Bを操作すべきと判定する場合は、ステップS18においてローブレーキL/Bの操作を実施し、
ステップS14でモード切り替えのためにモータ/ジェネレータクラッチMG1/Cを操作すべきと判定する場合は、ステップS19においてモータ/ジェネレータクラッチMG1/Cの操作を実施し、
ステップS15でモード切り替えのためにシリーズクラッチS/Cを操作すべきと判定する場合は、ステップS20においてシリーズクラッチS/Cの操作を実施し、
ステップS16でモード切り替えのためにエンジンクラッチE/Cを操作すべきと判定する場合は、ステップS21においてエンジンクラッチE/Cの操作を実施し、
ステップS16でモード切り替えのためにハイクラッチH/Cを操作すべきと判定する場合は、ステップS22においてハイクラッチH/Cの操作を実施する。
解放要求でなければ、ハイ&ローブレーキHL/Bを締結するモード切り替えであるから、ステップS32においてハイ&ローブレーキHL/Bを締結操作するが、ハイ&ローブレーキHL/Bの締結操作を要求するモード切り替えは、図4(b)のロー側無段変速モードから同図(a)のロー変速比固定モードへの切り替えであって、本発明が制御対象とする変速比固定モードから無段変速モードへの切り替えでないから、通常通りにハイ&ローブレーキHL/Bを締結制御する。
ステップS35では、後述するごとく学習により予測して記憶しておいた応答遅れから求め得る、ハイ&ローブレーキHL/Bの実締結トルクTbが内部応力トルクTsに一致する時刻t2(図10参照)よりも、モータ/ジェネレータMG1の応答遅れ時間だけ前のタイミングt0(図10参照)になったか否かを判定し、このタイミングに至ったと判定する時にステップS36で、モータ/ジェネレータMG1の目標トルクTm1oを所定値Tm1os(図10参照)と定めてモータコントローラ36へ出力する。
この所定値Tm1osは、モータ/ジェネレータMG1が回転拘束中であっても前記した発熱の問題を生じないモータトルク範囲で最も大きなモータトルクに対応させる。
ステップS35で、Tb=Tsになる時刻t2(図10参照)よりもモータ/ジェネレータMG1の応答遅れ時間だけ前のタイミングt0(図10参照)に至ったと判定する前は、ステップS36を実行しないことにより、モータ/ジェネレータMG1の目標トルクTm1oを、切り替え指令前におけるモードでのTm1o=0に保つ。
これによりハイ&ローブレーキHL/Bの目標締結トルクTboは、モード切り替え瞬時t1からTb=Tsになる時刻t2までの間、ハイ&ローブレーキHL/Bがスリップしない範囲で最も小さな締結容量に対応した値にされている。
ステップS37でハイ&ローブレーキHL/Bの実締結トルクTbが内部応力トルクTsに一致したと判定する場合、つまり、図10の時刻t2に達した場合、この時t2以後ステップS39において、ハイ&ローブレーキHL/Bの目標締結トルクTboを図10に示すごとく一気に0にしてハイ&ローブレーキHL/Bに指令する。
ステップS40においては、モータ/ジェネレータMG1がかように回転を開始したか否かをチェックし、モータ/ジェネレータMG1の回転開始を検出するまでの間は、ステップS41において、図10にt1で示すモード切り替え指令瞬時からの経過時間TMを計測し続ける。
これによりモータ/ジェネレータMG1は、その実トルクTm1を図10の瞬時t3より応答遅れをもって図示のごとく上昇され、最終的に目標トルクTm1o=Tsに到達する。
次のステップS43においては、ステップS41で計測したモード切り替え指令瞬時t1からモータ/ジェネレータMG1の回転開始瞬時t3までの時間TMを基に、モード切り替え指令瞬時t1にモータ/ジェネレータMG1の回転開始瞬時t3を予測し、これを基準にしてモード切り替え指令瞬時t1からTb=Tsになる瞬時t2までの応答遅れを予測して学習し、その結果を記憶してステップS35での判定に用いる。
ハイ&ローブレーキHL/Bの実締結容量Tbが内部応力トルクTsから更に0に向け低下する途中で、ハイ&ローブレーキHL/Bのスリップ開始により、このハイ&ローブレーキHL/Bに係わるモータ/ジェネレータMG1が回転し始める時期t3を学習などにより容易に予測することができ、この時期t3を基準にしてモータ/ジェネレータMG1のトルク上昇指令タイミングt0を、モータ/ジェネレータMG1の発熱が問題となる低回転、大トルク状態である時間Δtが最小となるよう容易に決定し得て、モータ/ジェネレータMG1の発熱に関する問題や、モータ/ジェネレータMG1の熱対策による駆動力低下に関する問題を緩和、若しくは回避することができる。
モータ/ジェネレータMG1の実トルクTm1がTm1osになったことでハイ&ローブレーキHL/Bを解放すべき時に、この解放を速やかに完遂させることができてモータ/ジェネレータMG1の回転上昇を早めることができ、結果として、モータ/ジェネレータMG1の発熱が問題となる低回転、大トルク状態である時間Δtを短くするという目的を更に確実なものにすることができる。
上記発熱の問題を回避しつつモータ/ジェネレータMG1の連続的なトルクの出力が可能となり、駆動力変化によるショックを回避することができる。
モータ/ジェネレータMG1の発熱が問題となる低回転、大トルク状態である時間Δtを短くすることができて、モータ/ジェネレータMG1の発熱に関する問題や、モータ/ジェネレータMG1の熱対策による駆動力低下に関する問題を緩和、若しくは回避することができる。
ハイ&ローブレーキHL/Bの実締結容量Tbが内部応力トルクTsに一致する瞬時t2にモータ/ジェネレータMG1の実トルクTm1が所定値Tm1osになることとなり、
モータ/ジェネレータMG1の発熱が問題となる低回転、大トルク状態である時間Δtを短くして、モータ/ジェネレータMG1の発熱に関する問題や、モータ/ジェネレータMG1の熱対策による駆動力低下に関する問題を緩和、若しくは回避するという作用効果を、経時変化や個体差にかかわらず常時確実に達成することができる。
他の型式のハイブリッド変速機としては、例えば図8および図9に示すようなものがある。
変速機構10は、その軸線方向(図の左右方向)中程に第1の単純遊星歯車組G1を設け、エンジンENGから遠い後端に第2の単純遊星歯車組G2を設け、
第1の単純遊星歯車組G1および第2の単純遊星歯車組G2により、本発明における差動装置を構成する。
なお遊星歯車組G1,G2はそれぞれ、回転メンバとしてサンギヤS1,S2、およびリングギヤR1,R2、並びにキャリアC1,C2の3要素を具え、これら回転メンバ間を以下のごとくに相関させることにより、変速機構10を構成する。
キャリアC2には、入力軸21に同軸に配置した出力軸22(図9の共線図では出力Outとして示す)を結合する。
リングギヤR1を第1のモータ/ジェネレータMG1に結合すると共にブレーキBにより固定可能とし、
サンギヤS1,S2を相互に結合すると共に、これらの結合体を第2のモータ/ジェネレータMG2に結合する。
第1遊星歯車組G1のキャリアC1と、第2遊星歯車組G2のリングギヤR2とを相互に結合し、これらの結合体をエンジンENGからの入力Inに結合する。
第2遊星歯車組G2のサンギヤS2と、第1遊星歯車組G1のサンギヤS1とを相互に結合し、これらの結合体に第2のモータ/ジェネレータMG2を結合し、
第1遊星歯車組G1のリングギヤR1を第1のモータ/ジェネレータMG1に結合すると共に、ブレーキ/Bにより固定可能とし、
第2遊星歯車組G2のキャリアC2に出力軸22を結合する。
上記した図8の共線図により表されるハイブリッド変速機は、以下のように作用する。
図9の共線図において、第2遊星歯車組G2を表すレバー(同符号G2で示す)は第1遊星歯車組G1を表すレバー(同符号G1で示す)上に常時重なって一体的に動き、ブレーキBの締結によりリングギヤR1を固定して回転速度=0となした状態では、
モータ/ジェネレータMG2の操作によりレバーG1,G2がそれぞれ、回転速度=0のリングギヤR1の周りに回動して出力Outの回転速度が変化し、固定変速比(変速比固定モード)で動力伝達を行うよう機能する。
しかし、ブレーキBの解放によりリングギヤR1を回転可能とした状態では、モータ/ジェネレータMG1,MG2の操作によりレバーG1,G2の傾斜を自由に決定しつつ出力Outの回転速度を変化させることができ、無段変速下に(無段変速モードで)動力伝達を行うことができる。
このモード切り替えは、締結状態のブレーキBを解放する操作と、モータ/ジェネレータMG1のトルク制御とで行われ、この場合も、ブレーキBの解放およびモータ/ジェネレータMG1のトルク制御を前記した実施例と同様に行うことで、前記したと同様な作用効果を達成することができる。
10 変速機構
12 駆動車輪
MG1 第1モータ/ジェネレータ(主動力源側モータ/ジェネレータ)
MG2 第2モータ/ジェネレータ(出力側モータ/ジェネレータ)
21 入力軸
22 出力軸
G1 第1遊星歯車組(差動装置)
G2 第2遊星歯車組(差動装置)
G3 第3遊星歯車組(差動装置)
S1,S2,S3 サンギヤ
R1,R2,R3 リングギヤ
C1,C2,C3 キャリア
H/C ハイクラッチ
L/B ローブレーキ
E/C エンジンクラッチ
S/C シリーズクラッチ
MG1/C モータ/ジェネレータクラッチ
B ブレーキ
31 ハイブリッドコントローラ
32 エンジンコントローラ
33 スロットル弁
34 燃料噴射装置
35 点火装置
36 モータコントローラ
37 モータコントローラ
38 インバータ
39 インバータ
40 バッテリ
41 バッテリコントローラ
Claims (3)
- 2要素の回転状態を決定すると他の要素の回転状態が決まる差動装置を具え、
この差動装置を表す共線図上の回転速度順方向中程に位置した差動装置の2要素にそれぞれ主動力源および駆動系への出力を結合し、これら主動力源および出力よりも共線図上の回転速度順方向外側に位置する差動装置の2要素にそれぞれ主動力源側モータ/ジェネレータおよび出力側モータ/ジェネレータを結合し、
主動力源側モータ/ジェネレータおよび出力側モータ/ジェネレータが結合された差動装置の2要素のうち少なくとも一方の要素に関連して該要素を固定可能なブレーキを設け、
該ブレーキの締結により変速比固定モードでの動力伝達が可能であり、該ブレーキの解放により無段変速モードでの動力伝達が可能なハイブリッド変速機において、
前記ブレーキを締結した変速比固定モードから、該ブレーキを解放した無段変速モードへのモード切り替えに際し、該ブレーキに掛かる内部応力トルクを求め、該ブレーキの目標締結容量を該内部応力トルクまで低下させると共に、この目標締結容量に向かうよう制御される前記ブレーキの実締結容量が前記内部応力トルクに一致するまで前記ブレーキの目標締結容量を前記内部応力トルクに保持した後、該ブレーキの目標締結容量を0にして該ブレーキの実締結容量を前記内部応力トルクから更に0に向け低下させるよう構成し、
前記ブレーキの実締結容量が前記内部応力トルクから更に0に向け低下する途中で、該ブレーキのスリップ開始により、このブレーキに係わる前記差動装置の要素およびこの要素に結合された前記モータ/ジェネレータが回転し始める時までに、前記ブレーキの実締結容量が前記内部応力トルクに一致する時に発生するようなタイミングで、該モータ/ジェネレータの目標トルクを決定するよう構成したことを特徴とするハイブリッド変速機のモード切り替え制御装置。 - 請求項1に記載のモード切り替え制御装置において、
前記ブレーキの目標締結容量を前記内部応力トルクから一気に0にするよう構成したことを特徴とするハイブリッド変速機のモード切り替え制御装置。 - 請求項2に記載のモード切り替え制御装置において、
前記モータ/ジェネレータの目標トルク出力タイミングは、前記ブレーキのスリップ開始により、このブレーキに係わる前記差動装置の要素およびこの要素に結合された前記モータ/ジェネレータが回転し始めるのを検出した時に学習する、前記ブレーキの実締結容量に関した応答遅れ学習値を基に、前記ブレーキの実締結容量が前記内部応力トルクに一致する時期を予測し、この予測時期よりも、前記ブレーキに係わるモータ/ジェネレータの予め求めておいた応答遅れ分だけ前とするものであることを特徴とするハイブリッド変速機のモード切り替え制御装置。
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