JP4238829B2 - ハイブリッド変速機のモード切り替え制御装置 - Google Patents

ハイブリッド変速機のモード切り替え制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、ハイブリッド変速機のモード切り替え制御装置、特に、変速比固定モードから無段変速モードへのモード切り替え時におけるモータ/ジェネレータの発熱を抑制し得るようにした、ハイブリッド変速機のモード切り替え装置に関するものである。
ハイブリッド変速機としては、特許文献1に記載されているように、
2要素の回転状態を決定すると他の要素の回転状態が決まる差動装置を具え、
この差動装置を表す共線図上の回転速度順方向中程に位置した差動装置の2要素にそれぞれ主動力源および駆動系への出力を結合し、これら主動力源および出力よりも共線図上の回転速度順方向外側に位置する差動装置の2要素にそれぞれ主動力源側モータ/ジェネレータおよび出力側モータ/ジェネレータを結合し、
主動力源側モータ/ジェネレータおよび出力側モータ/ジェネレータが結合された差動装置の2要素にそれぞれ関連して、これら要素を個々に固定可能なブレーキを設け、
これらブレーキの選択的な締結により2種類の変速比固定モードでの動力伝達が可能であり、これらブレーキを共に解放することにより無段変速モードでの動力伝達が可能な型式のものが知られている。
特開2004−150627号公報
このように、無段変速モードおよび変速比固定モードを持ったハイブリッド変速機の場合、これらモード間でのモード切り替えが必要であるが、後者の変速比固定モードから前者の無段変速モードへの切り替えに当たっては、図11に示すごとくモード切り替え瞬時t1に、変速比固定モードで締結されていたブレーキの目標締結容量Tboを0にして、このブレーキを図示する実締結容量Tbの低下により解放させることにより当該モード切り替えを行う。
ところで、当該モード切り替え時は変速比固定モードでブレーキにより締結されていた要素に係わるモータ/ジェネレータ(ここではMG1とする)が回転速度Nm1=0にされており、一方でこのモータ/ジェネレータMG1は、無段変速モードへの移行時においても図11に示すごとく車両駆動力Fが変化しないようにしてショックを防止するため、ブレーキのスリップ開始によりモータ/ジェネレータMG1が回転速度Nm1>0となる瞬時t3よりも前のt2から、ブレーキの内部応力トルクTsに対応したトルクTm1を発生するよう目標トルクTm1oを与えられている。
しかしモータ/ジェネレータMG1は、例えば図11にNmlimで示す限界回転速度未満のNm1=0を含む低回転時に、内部応力トルクTsに対応するような大きなトルクTm1を発生するよう駆動されると、トルクに対応した大きな電流を通電される巻き線層が切り替わらなかったり、切り替わったとしてもゆっくりとしか切り替わらないため、特定の層が偏った通電により発熱される傾向が強くなり、上記の低回転、大トルク状態が長く続くと、モータ/ジェネレータMG1の発熱が問題となってその耐久性を悪化させる。
なお、この問題解決のため通常のモータ/ジェネレータは、その温度が定格範囲を越えたところで通電量を低下させ、これによりモータ/ジェネレータやその制御を司るインバータの発熱量を抑制する対策が講じられている。
これがため、モータ/ジェネレータの温度が定格範囲を越えると、通電量の自動的な低下によりモータ/ジェネレータが目標トルクを発生し得なくなって車両駆動力の低下を招き、走行性能へ悪影響が及ぶことになる。
そこで図11につき上記したモード切り替え制御を考察するに、モード切り替え指令時t1にほぼ同期して、ブレーキ目標締結容量Tboの0への低下と、目標モータトルクTm1oの内部応力トルクTsへの上昇とを指令するため、
そして、モータ/ジェネレータMG1の実トルクTm1が目標モータトルクTm1oに対し大きな応答遅れなしにt2には内部応力トルクTsまで上昇するのに対し、ブレーキの実締結容量Tbは図示のごとく目標締結容量Tboに対し大きな応答遅れをもって低下し、t3にならないとスリップの開始によりモータ/ジェネレータMG1を回転速度Nm1>0にし得ないことから、
モータ/ジェネレータMG1の実トルクTm1が内部応力トルクTsまで上昇する瞬時t2から、モータ/ジェネレータMG1の回転速度Nm1が限界回転速度Nmlimに達する瞬時t4までの長い期間Δtにおいて、モータ/ジェネレータMG1が低回転、大トルク状態にされることになり、モータ/ジェネレータMG1の発熱が問題となったり、モータ/ジェネレータMG1の温度が定格範囲を越えないようにする通電量の低下により車両駆動力の低下を招くという問題を生ずる。
本発明は、かかる変速比固定モードから無段変速モードへの切り替え時におけるモータ/ジェネレータの低回転、大トルク状態ができるだけ短時間となるようにして、モータ/ジェネレータの発熱に関する問題や、モータ/ジェネレータの熱対策による駆動力低下に関する問題を緩和、若しくは回避し得るようにしたハイブリッド変速機のモード切り替え制御装置を提案することを目的とする。
この目的のため本発明によるハイブリッド変速機のモード切り替え制御装置は、請求項1に記載のごとくに構成する。
先ず前提となるハイブリッド変速機は、
2要素の回転状態を決定すると他の要素の回転状態が決まる差動装置を具え、
この差動装置を表す共線図上の回転速度順方向中程に位置した差動装置の2要素にそれぞれ主動力源および駆動系への出力を結合し、これら主動力源および出力よりも共線図上の回転速度順方向外側に位置する差動装置の2要素にそれぞれ主動力源側モータ/ジェネレータおよび出力側モータ/ジェネレータを結合し、
主動力源側モータ/ジェネレータおよび出力側モータ/ジェネレータが結合された差動装置の2要素のうち少なくとも一方の要素に関連して該要素を固定可能なブレーキを設け、
該ブレーキの締結により変速比固定モードでの動力伝達が可能であり、該ブレーキの解放により無段変速モードでの動力伝達が可能であるものとする。
本発明は、かかるハイブリッド変速機において、
前記ブレーキを締結した変速比固定モードから、該ブレーキを解放した無段変速モードへのモード切り替えに際し、該ブレーキに掛かる内部応力トルクを求め、該ブレーキの目標締結容量を該内部応力トルクまで低下させると共に、この目標締結容量に向かうよう制御される前記ブレーキの実締結容量が前記内部応力トルクに一致するまで前記ブレーキの目標締結容量を前記内部応力トルクに保持した後、該ブレーキの目標締結容量を0にして該ブレーキの実締結容量を前記内部応力トルクから更に0に向け低下させるよう構成し、
前記ブレーキの実締結容量が前記内部応力トルクから更に0に向け低下する途中で、該ブレーキのスリップ開始により、このブレーキに係わる前記差動装置の要素およびこの要素に結合された前記モータ/ジェネレータが回転し始める時までに、前記ブレーキの実締結容量が前記内部応力トルクに一致する時に発生するようなタイミングで、該モータ/ジェネレータの目標トルクを決定するよう構成したことを特徴とするものである。
かかる本発明のモード切り替え制御装置によれば、変速比固定モードから無段変速モードへのモード切り替えに際し、変速比固定モードで締結されていたブレーキに掛かる内部応力トルクを求め、該ブレーキの目標締結容量を該内部応力トルクまで低下させると共に、この目標締結容量に向かうよう制御されるブレーキの実締結容量が内部応力トルクに一致するまでブレーキの目標締結容量を内部応力トルクに保持した後、該ブレーキの目標締結容量を0にして該ブレーキの実締結容量を内部応力トルクから更に0に向け低下させるため、
ブレーキの実締結容量が内部応力トルクから更に0に向け低下する途中で、該ブレーキのスリップ開始により、このブレーキに係わる差動装置の要素およびこの要素に結合されたモータ/ジェネレータが回転し始める時期を学習などにより容易に予測することができ、この時期を基準にして前記モータ/ジェネレータのトルク上昇指令タイミングを、該モータ/ジェネレータの発熱が問題となる低回転、大トルク状態である時間が最小となるよう容易に決定し得て、モータ/ジェネレータの発熱に関する問題や、モータ/ジェネレータの熱対策による駆動力低下に関する問題を緩和、若しくは回避することができる。
以下本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明のモード切り替え制御装置を適用可能なハイブリッド変速機搭載車両のパワートレーンを例示する。
このパワートレーンは、主動力源としてのエンジンENGに変速機構10を結合し、この変速機構10に第1の(主動力源側)モータ/ジェネレータMG1および第2の(出力側)モータ/ジェネレータMG2を取り付け、クラッチやブレーキ等の摩擦要素を全て変速機構10内に配置し、変速機構10の出力が駆動車輪12に伝達されて車両の駆動力を発生するものである。
本発明のモード切り替え制御装置を適用可能なハイブリッド変速機搭載車両のパワートレーンは、図1のものに限られず、変速比固定モードおよび無段変速モードを有し、これらの間でモード切り替えを行うことができる型式のハイブリッド変速機搭載車両のパワートレーンを全て含むものとする。
ただし本実施例では、パワートレーンが図1に示すごときものである場合について以下に詳述する。
ハイブリッド変速機の主要部を成す図1の変速機構10は図2に示すように、その軸線方向(図の左右方向)中程に配して第1の単純遊星歯車組G1を設け、図の右側(エンジンENGから遠い後端)に配して第2の単純遊星歯車組G2を設け、図の左側(エンジンENGに近い前端)に配して第3の遊星歯車組G3を設ける。
これら遊星歯車組G1,G2,G3はそれぞれエンジンENGに同軸に配置し、遊星歯車組G1,G2,G3とエンジンENGとの間に同軸に、第1のモータ/ジェネレータMG1および第2のモータ/ジェネレータMG2を設ける。
なお遊星歯車組G1,G2,G3は、回転メンバとしてサンギヤS1,S2,S3、およびリングギヤR1,R2,R3、並びにキャリアC1,C2,C3の3要素を具え、これら回転メンバ間を以下のごとくに相関させることにより、本発明における2自由度の差動装置を構成するものとする。
キャリアC1およびリングギヤR2を相互に結合し、これらの結合体は、エンジンENGの回転を入力される入力軸21(図3の共線図では入力Inとして示す)に、エンジンクラッチE/Cを介して結合可能とする。
キャリアC2には、入力軸21に同軸に配置した出力軸22(図3の共線図では出力Outとして示す)を結合する。
サンギヤS2およびリングギヤR3を相互に結合し、リングギヤR1をモータ/ジェネレータクラッチMG1/Cにより第1のモータ/ジェネレータMG1に結合可能にすると共にハイ&ローブレーキHL/Bにより固定可能とする。
また入力軸21および第1のモータ/ジェネレータMG1間をシリーズクラッチS/Cにより結合可能とする。
サンギヤS1,S2を相互に結合し、これらの結合体を第2のモータ/ジェネレータMG2に結合する。
そして、キャリアC3をローブレーキL/Bにより固定可能にすると共に、ハイクラッチH/CによりサンギヤS3に結合可能とする。
上記の構成になる図2のハイブリッド変速機を共線図により表すと図3のごとくになり、第1の遊星歯車組G1における回転メンバの回転速度順(変速状態に応じて速い順であったり、遅い順であったりする)は、リングギヤR1、キャリアC1、およびサンギヤS1であり、第2の遊星歯車組G2における回転メンバの回転速度順(変速状態に応じて速い順であったり、遅い順であったりする)はリングギヤR2、キャリアC2、およびサンギヤS2である。
第1の遊星歯車組G1における回転速度順で中間のキャリアC1と、第2の遊星歯車組G2における回転速度順で第1位のリングギヤR2とを相互に結合し、第2の遊星歯車組G2における回転速度順で第3位のサンギヤS2と、第1の遊星歯車組G1における回転速度順で第3位のサンギヤS1とにそれぞれ、第3の遊星歯車組G3におけるリングギヤR3およびサンギヤS3を結合する。
また、第3の遊星歯車組G3のキャリアC3を固定するローブレーキL/Bを設けると共に、第3の遊星歯車組G3のキャリアC3およびサンギヤS3を相互に結合して結果的にサンギヤS1,S3を一体回転させるハイクラッチH/C(図3では、便宜上サンギヤS1,S2間に配置して示した)を設ける。
第1の遊星歯車組G1のリングギヤR1をモータ/ジェネレータクラッチMG1/Cにより第1のモータ/ジェネレータMG1に結合可能にすると共に、ハイ&ローブレーキHL/Bにより固定可能とする。
第1の遊星歯車組G1のキャリアC1および第2の遊星歯車組G2のリングギヤR2にエンジンクラッチE/Cを介してエンジンENGからの入力Inを結合可能とし、エンジンENGおよび第1のモータ/ジェネレータMG1間をシリーズクラッチS/Cにより相互に結合可能とする。
第2の遊星歯車組G2のキャリアC2に車輪駆動系への出力Outを結合し、第1の遊星歯車組G1のサンギヤS1および第3の遊星歯車組G3のサンギヤS3に第2のモータ/ジェネレータMG2を結合する。
なお図3の横軸は遊星歯車組G1,G2,G3のギヤ比により決まる回転メンバ間の距離比を表し、縦軸は回転メンバの回転速度(0を基準に、上方が前進回転速度、下方が後進回転速度)を表す。
上記した図3の共線図により表されるハイブリッド変速機は、エンジンクラッチE/Cを解放してエンジンENGをキャリアC1およびリングギヤR2から切り離し、シリーズクラッチS/Cを締結してモータ/ジェネレータMG1をエンジンENGにより駆動すると共にモータ/ジェネレータクラッチMG1/Cを解放してモータ/ジェネレータMG1をリングギヤR1から切り離したシリーズハイブリッドモードで、以下のように作用する。
つまり、エンジンENGからのトルクによりモータ/ジェネレータMG1を一定回転数で駆動して発電を行わせ、その発電電力を用いて、また必要に応じバッテリ電力を用いて、出力Out側のモータ/ジェネレータMG2を駆動することにより車両を走行させる。
従ってシリーズハイブリッドモードでは、モータ/ジェネレータMG2からの動力のみにより駆動系への出力Outが決定される。
図3の共線図により表されるハイブリッド変速機は、エンジンクラッチE/Cを締結してエンジン回転がキャリアC1およびリングギヤR2へ入力されるようにし、シリーズクラッチS/Cを解放してモータ/ジェネレータMG1をエンジンENGから切り離すと共にモータ/ジェネレータクラッチMG1/Cを締結してモータ/ジェネレータMG1をリングギヤR1に結合したパラレルハイブリッドモードで、以下のように作用する。
図4(a)のように、キャリアC3をローブレーキL/Bの締結により固定して回転速度=0となし、更に、リングギヤR1をハイ&ローブレーキHL/Bの締結により固定して回転速度=0となした状態では、
図4(a)のレバーG3により示すごとく、サンギヤS1,S3に対してサンギヤS2の回転が、リングギヤR3およびサンギヤS3間の歯数比で決まる逆回転となる。
従って、レバーG2で示すごとくキャリアC2に結合させた出力Outが、レバーG1上のキャリアC1およびリングギヤR2における入力(In)回転速度よりも低回転となり、ロー変速比で動力伝達を行うことができる。
しかも図4(a)では、モータ/ジェネレータMG2がレバーG3を介してサンギヤS1(S3)およびサンギヤS2間を相互に遠ざかる方向または相互に接近させることにより出力Outの回転速度を変化せる時、レバーG1が回転速度=0の固定状態にされたリングギヤR1の箇所を支点にして揺動することから、上記の変速比が固定されたロー変速比固定モードでの動力伝達を行うことができる。
なおこのロー変速比固定モードでは、モータ/ジェネレータMG2が正トルクを出力する時エンジンENGをアシストすることができ、モータ/ジェネレータMG2が負トルクを出力する時エンジンENGの一部の出力を用いて発電を行うことができる。
図4(b)のように、キャリアC3をローブレーキL/Bの締結により固定して回転速度=0にするが、リングギヤR1をハイ&ローブレーキHL/Bの解放により回転可能にした状態では、
図4(b)のレバーG3により示すごとく、サンギヤS1,S3に対してサンギヤS2の回転が、リングギヤR3およびサンギヤS3間の歯数比で決まる逆回転となるため、
レバーG2で示すごとくキャリアC2に結合させた出力Outが、レバーG1上のキャリアC1およびリングギヤR2における入力(In)回転速度よりも低回転となり、ロー変速比で動力伝達を行うことができる。
ところで図4(b)においては、リングギヤR1が自由に回転可能であってこれをモータ/ジェネレータMG1が回転速度制御し得ることから、モータ/ジェネレータMG1,MG2がレバーG3を介してサンギヤS1(S3)およびサンギヤS2間を相互に遠ざかる方向または相互に接近させることにより出力Outの回転速度を変化せる時の変速比を、上記の理由からロー側変速比ではあるものの無段階に変化させることができ、ロー側無段変速モードで動力伝達を行うことができる。
なおこのロー側無段変速モードでは、モータ/ジェネレータMG1が正トルクを出力し、モータ/ジェネレータMG2が負トルクを出力することで、エンジンENGの出力を車輪駆動系Outに向かわせることができる。
このロー側無段変速モードで入力Inの回転を一定とすると、モータ/ジェネレータMG2によりサンギヤS1(S3)の回転を高くしてサンギヤS2の回転を低下させることで、キャリアC2に結合された出力Outの回転が低下し、変速比をロー側へ移行させることができ、更にはロー側無限大(停車)の変速比から後進変速比へと移行させることができる。
図4(c)のように、キャリアC3をローブレーキL/Bの締結により固定して回転速度=0となし、更に、サンギヤS1(S3)およびサンギヤS2間をハイクラッチH/Cの締結により結合してこれらの回転速度も0になした状態では、
サンギヤS1(S2)およびサンギヤS2回転速度が0であることから、レバーG2がレバーG1上に乗り、遊星歯車組G1,G2により構成される差動装置が4要素2自由度の一直線で表される変速状態を提供し、回転メンバの回転速度順にモータ/ジェネレータMG1、エンジンENGからの入力In、車輪駆動系への出力Out、モータ/ジェネレータMG2の配列となる。
従って出力Out(キャリアC2)の回転が、図4(a)、同図(b)の変速状態の時よりも高くなり、第2速相当の変速比で動力伝達を行うことができる。
しかも図4(c)では、モータ/ジェネレータMG1がレバーG1およびG2を介して出力Outの回転速度を変化せる時、これらレバーG1およびG2が回転速度=0の固定状態にされたサンギヤS1,S2,S3の箇所を支点にして揺動することから、上記の第2速に固定された2速固定モードでの動力伝達を行うことができる。
またこの2速固定モードでは、モータ/ジェネレータMG1が正トルクを出力する時エンジンENGをアシストすることができ、モータ/ジェネレータMG1が負トルクを出力する時エンジンENGの一部の出力を用いて発電を行うことができる。
図4(d)のように、サンギヤS1,S2,S3をハイクラッチH/Cの締結により相互に結合するが、キャリアC3をローブレーキL/Bの解放により自由に回転可能にして、サンギヤS1,S2,S3を一体回転可能にした状態では、
レバーG2が図4(c)につき前述したと同じくレバーG1上に乗り、遊星歯車組G1,G2により構成される差動装置が4要素2自由度の一直線で表される変速状態を提供し、出力Out(キャリアC2)の回転が、図4(a)、同図(b)の変速状態の時よりも高くなり、ハイ側変速比での動力伝達を行うことができる。
ところで図4(d)においては、サンギヤS1,S2,S3が自由に回転可能であってこれをモータ/ジェネレータMG2が回転速度制御し得ることから、モータ/ジェネレータMG1,MG2がレバーG1,G2を介して出力Outの回転速度を変化せる時の変速比を、上記の通りハイ側変速比の領域において無段階に変化させることができ、ハイ側無段変速モードで動力伝達を行うことができる。
なおこのハイ側無段変速モードでは、モータ/ジェネレータMG1が負トルクを出力し、モータ/ジェネレータMG2が正トルクを出力することで、エンジンENGの出力を車輪駆動系Outに向かわせることができる。
上記のように、無段変速モード(ロー側無段変速モードおよびハイ側無段変速モード)および変速比固定モード(ロー変速比固定モードおよび2速固定モード)を持ったハイブリッド変速機の場合、後者の変速比固定モードから前者の無段変速モードへの切り替えに当たっては、
変速比固定モードで締結されていたブレーキ(ロー変速比固定モードからロー側無段変速モードへの切り替え時はハイ&ローブレーキHL/B、2速固定モードからハイ側無段変速モードへの切り替え時はローブレーキL/B)を解放して当該モード切り替えを行うが、
当該モード切り替え時は図11につき前述したごとく、変速比固定モードでブレーキにより締結されていた要素に係わるモータ/ジェネレータが回転速度=0にされており、一方でこのモータ/ジェネレータは、無段変速モードへの移行時においても車両駆動力が変化しないようにしてショックを防止するため、ブレーキのスリップ開始によりモータ/ジェネレータが回転を開始するよりも前から、ブレーキの内部応力トルクに対応したトルクを発生するよう目標トルクを与えられている。
このため、上記のモード切り替え時にモータ/ジェネレータが低回転、大トルク状態にされることになり、この状態が長時間継続すると、モータ/ジェネレータの発熱が問題となったり、モータ/ジェネレータの温度が定格範囲を越えないようにする通電量の低下により車両駆動力の低下を招くという問題を生ずる。
本発明は、かかる変速比固定モードから無段変速モードへの切り替え時にモータ/ジェネレータが長時間に亘って低回転、大トルク状態にされることのないようにし、これにより上記の発熱とか駆動力低下に関する問題を緩和、若しくは回避し得るようなハイブリッド変速機のモード切り替え制御装置を提案することを旨とするが、
本実施例では、図4(a)のロー変速比固定モードから同図(b)のロー側無段変速モードへモード切り替えする場合について、モータ/ジェネレータMG1の発熱を抑制し得るようにしたモード切り替え制御を説明することとする。
上記の目的を達成するために、エンジンENGおよびハイブリッド変速機の制御システムは、図5に示す以下のごときものとする。
図5の制御システムはハイブリッドコントローラ31を具え、このハイブリッドコントローラ31は、目標エンジン回転速度および目標エンジントルクを求めてエンジンコントローラ32に指令し、エンジンコントローラ32はスロットル弁33の開度制御、燃料噴射装置34による燃料噴射量制御、および点火装置35による点火時期制御により、目標エンジン回転速度および目標エンジントルクが達成されるようエンジンENGを制御する。
ハイブリッドコントローラ31は更に、モータ/ジェネレータMG1,MG2の目標MGトルクを求めて、対応するモータコントローラ36,37に指令し、これらモータコントローラ36,37は、対応するインバータ38,39を介してバッテリ40からの電力供給量を制御することにより、モータ/ジェネレータMG1,MG2をそれぞれの目標MGトルクが達成されるよう制御する。
ハイブリッドコントローラ31は車速VSP、アクセル開度APO、およびバッテリコントローラ41からのバッテリ蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)を基に上記の各種目標値を求め、バッテリコントローラ41は、バッテリ電圧や、消費電流や、バッテリ温度などの情報を基にバッテリ40の状態を検出してバッテリの充放電可能電力を求め、これをバッテリ蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)としてハイブリッドコントローラ31へ入力する。
またハイブリッドコントローラ31は、エンジンクラッチE/C、シリーズクラッチS/C、モータ/ジェネレータクラッチMG1/CおよびハイクラッチH/Cの状態切り替えに際し、これらクラッチに所定のクラッチ締結トルク容量指令を与え、該クラッチはソレノイドバルブ(図示せず)の電流制御により対応する必要油圧を印加されて締結容量を決定されるものとする。
更にハイブリッドコントローラ31は、ハイ&ローブレーキHL/BおよびローブレーキL/Bの状態切り替えに際し、これらブレーキに所定のクラッチ締結トルク容量指令を与え、該ブレーキはソレノイドバルブ(図示せず)の電流制御により対応する必要油圧を印加されて締結容量を決定されるものとする。
一方でエンジンクラッチE/C、シリーズクラッチS/C、モータ/ジェネレータクラッチMG1/CおよびハイクラッチH/Cには、その締結状態を検知するためのクラッチスイッチや油圧センサが設けられており、これからの情報がハイブリッドコントローラ31へ入力されてクラッチ切り替え制御に用いられるものとする。
またハイ&ローブレーキHL/BおよびローブレーキL/Bにも、その締結状態を検知するためのブレーキスイッチや油圧センサが設けられており、これからの情報がハイブリッドコントローラ31へ入力されてブレーキ切り替え制御に用いられるものとする。
ハイブリッドコントローラ31の演算処理を、図6および図7に基づき以下に説明する。
図7はメインルーチンで、ステップS1においては、車速VSPおよびアクセル開度APOから、予定の目標駆動カマップを基に、運転者が要求している車両の目標駆動力を演算する。
次のステップS2においては、上記の目標駆動力、車速VSP、およびバッテリ蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)から、現在の運転状態に最適な走行モード(シリーズハイブリッドモード、パラレルハイブリッドモード、ロー変速比固定モード、ロー側無段変速モード、2速固定モード、ハイ側無段変速モード)を決定する。
ステップS3においては、上記のごとくに決定した最適モードや、クラッチおよびブレーキの締結状態等を考慮し、これらの基で前記の目標駆動力を実現するのに最適な目標エンジン回転速度を決定して、エンジンコントローラ32に指令する。
ステップS4においては、最適モードがエンジンの運転を要求するものであるか否かをチェックし、この要求がなければステップS5において、エンジンへの燃料供給を中止する燃料カットをエンジンコントローラ32に指令する。
ステップS4で最適モードがエンジンの運転を要求するものと判定した時は、ステップS6においてエンジン運転中か否かを判定し、運転中でなければステップS7において、エンジン始動制御を実施すべく対応する指令をエンジンコントローラ32に供給する。
ステップS6で既にエンジン運転中と判定するときは、ステップS8において、上記最適モードや、クラッチおよびブレーキの締結状態、目標エンジン回転数を考慮し、最適な目標エンジントルクを決定する。
次のステップS9においては、現在選択中のモードが、ステップS2で求めた最適モードと一致するか否かを判定する。
ステップS9で現在選択中のモードが最適モードと一致すると判定する場合は、モード切り替え要求がないからステップS10において、前記の目標エンジン回転数および目標エンジントルクを考慮した上で、ステップS1における目標駆動力を実現するのに必要なモータ/ジェネレータMG1,MG2の目標MGトルクを演算し、これらを対応するモータコントローラ36,37に指令する。
ステップS9で現在選択中のモードが最適モードと異なると判定する場合は、モード切り替え要求があるから、ステップS11において、当該モード切り替えのために操作すべきクラッチおよびブレーキを決定する。
そして、ステップS12〜ステップS16で順次、当該モード切り替えのために操作すべきは、ハイ&ローブレーキHL/Bか、ローブレーキL/Bか、モータ/ジェネレータクラッチMG1/Cか、シリーズクラッチS/Cか、エンジンクラッチE/Cか、これらの何れでもなくてハイクラッチH/Cであるのかを判定する。
ステップS12でモード切り替えのためにハイ&ローブレーキHL/Bを操作すべきと判定する場合は、ステップS17においてハイ&ローブレーキHL/Bの操作を実施し、
ステップS13でモード切り替えのためにローブレーキL/Bを操作すべきと判定する場合は、ステップS18においてローブレーキL/Bの操作を実施し、
ステップS14でモード切り替えのためにモータ/ジェネレータクラッチMG1/Cを操作すべきと判定する場合は、ステップS19においてモータ/ジェネレータクラッチMG1/Cの操作を実施し、
ステップS15でモード切り替えのためにシリーズクラッチS/Cを操作すべきと判定する場合は、ステップS20においてシリーズクラッチS/Cの操作を実施し、
ステップS16でモード切り替えのためにエンジンクラッチE/Cを操作すべきと判定する場合は、ステップS21においてエンジンクラッチE/Cの操作を実施し、
ステップS16でモード切り替えのためにハイクラッチH/Cを操作すべきと判定する場合は、ステップS22においてハイクラッチH/Cの操作を実施する。
本実施例が前記した通り、図4(a)のロー変速比固定モードでハイ&ローブレーキHL/Bを締結状態から解放させると共にモータ/ジェネレータMG1をトルク上昇させて、当該ロー変速比固定モードから図4(b)のロー側無段変速モードへモード切り替えする場合における、モータ/ジェネレータMG1の発熱を抑制することを主旨とするものであるため、ステップS17で行うハイ&ローブレーキHL/Bの操作を以下に詳述する。
ステップS17で行うハイ&ローブレーキHL/Bの操作は図7に明示するごときもので、先ずステップS31において、ハイ&ローブレーキHL/Bの操作要求が解放要求か否かをチェックする。
解放要求でなければ、ハイ&ローブレーキHL/Bを締結するモード切り替えであるから、ステップS32においてハイ&ローブレーキHL/Bを締結操作するが、ハイ&ローブレーキHL/Bの締結操作を要求するモード切り替えは、図4(b)のロー側無段変速モードから同図(a)のロー変速比固定モードへの切り替えであって、本発明が制御対象とする変速比固定モードから無段変速モードへの切り替えでないから、通常通りにハイ&ローブレーキHL/Bを締結制御する。
しかし、ステップS31でハイ&ローブレーキHL/Bの操作要求が解放要求であると判定した場合は、ハイ&ローブレーキHL/Bを解放するモード切り替え、つまり、図4(a)のロー変速比固定モードから同図(a)のロー側無段変速モードへの切り替えであって、本発明が制御対象とする変速比固定モードから無段変速モードへの切り替えであるから、制御をステップS33に進めて以下のごとくにハイ&ローブレーキHL/Bの解放制御およびモータ/ジェネレータMG1のトルク上昇を行わせ、本発明が狙いとする変速比固定モードから無段変速モードへの切り替え制御を実行する。
ステップS33においては、ハイ&ローブレーキHL/Bの実締結容量(トルク)Tbを推定し、次のステップS34においては、ハイ&ローブレーキHL/Bの内部応力トルクTsを演算する。
ステップS35では、後述するごとく学習により予測して記憶しておいた応答遅れから求め得る、ハイ&ローブレーキHL/Bの実締結トルクTbが内部応力トルクTsに一致する時刻t2(図10参照)よりも、モータ/ジェネレータMG1の応答遅れ時間だけ前のタイミングt0(図10参照)になったか否かを判定し、このタイミングに至ったと判定する時にステップS36で、モータ/ジェネレータMG1の目標トルクTm1oを所定値Tm1os(図10参照)と定めてモータコントローラ36へ出力する。
この所定値Tm1osは、モータ/ジェネレータMG1が回転拘束中であっても前記した発熱の問題を生じないモータトルク範囲で最も大きなモータトルクに対応させる。
ステップS36でモータ/ジェネレータMG1の目標トルクTm1o=Tm1osをモータコントローラ36へ出力することにより、モータ/ジェネレータMG1はその実トルクTm1を図10に示すような応答遅れをもって上昇されるが、目標トルクTm1o=Tm1osの出力タイミングが上記したように定めた瞬時t0であることにより、モータ/ジェネレータMG1の実トルクTm1は、Tb=Tsとなる瞬時t2に同期して目標トルクTm1o=Tm1osに到達する。
ステップS35で、Tb=Tsになる時刻t2(図10参照)よりもモータ/ジェネレータMG1の応答遅れ時間だけ前のタイミングt0(図10参照)に至ったと判定する前は、ステップS36を実行しないことにより、モータ/ジェネレータMG1の目標トルクTm1oを、切り替え指令前におけるモードでのTm1o=0に保つ。
次のステップS37においては、ハイ&ローブレーキHL/Bの実締結トルクTbが内部応力トルクTsに一致したか否かを、つまり、図10の時刻t2に至ったか否かを判定し、この時刻t2に至る前であれば、ステップS38において、ハイ&ローブレーキHL/Bの目標締結トルクTboを図10に示すごとく内部応力トルクTsと同じ値にしてハイ&ローブレーキHL/Bに指令する。
これによりハイ&ローブレーキHL/Bの目標締結トルクTboは、モード切り替え瞬時t1からTb=Tsになる時刻t2までの間、ハイ&ローブレーキHL/Bがスリップしない範囲で最も小さな締結容量に対応した値にされている。
ステップS37でハイ&ローブレーキHL/Bの実締結トルクTbが内部応力トルクTsに一致したと判定する場合、つまり、図10の時刻t2に達した場合、この時t2以後ステップS39において、ハイ&ローブレーキHL/Bの目標締結トルクTboを図10に示すごとく一気に0にしてハイ&ローブレーキHL/Bに指令する。
上記のごとくに定めた目標締結トルクTboに対しハイ&ローブレーキHL/Bは、図10に示すような応答遅れをもって実締結トルクTbを低下され、この低下によるハイ&ローブレーキHL/Bのスリップ開始でモータ/ジェネレータMG1は図10のt3に回転を開始する。
ステップS40においては、モータ/ジェネレータMG1がかように回転を開始したか否かをチェックし、モータ/ジェネレータMG1の回転開始を検出するまでの間は、ステップS41において、図10にt1で示すモード切り替え指令瞬時からの経過時間TMを計測し続ける。
ステップS40でモータ/ジェネレータMG1が回転を開始したと判定する図10の瞬時t3に至った時、ステップS42において、モータ/ジェネレータMG1の目標トルクTm1oを図10に示すごとく内部応力トルクTsと同じ値にする限界処理を施してモータコントローラ36に指令する。
これによりモータ/ジェネレータMG1は、その実トルクTm1を図10の瞬時t3より応答遅れをもって図示のごとく上昇され、最終的に目標トルクTm1o=Tsに到達する。
次のステップS43においては、ステップS41で計測したモード切り替え指令瞬時t1からモータ/ジェネレータMG1の回転開始瞬時t3までの時間TMを基に、モード切り替え指令瞬時t1にモータ/ジェネレータMG1の回転開始瞬時t3を予測し、これを基準にしてモード切り替え指令瞬時t1からTb=Tsになる瞬時t2までの応答遅れを予測して学習し、その結果を記憶してステップS35での判定に用いる。
上記した本実施例のモード切り替え制御によれば、図4(a)のロー変速比固定モードから同図(b)に示すロー側無段変速モードへのモード切り替えに際し、ロー変速比固定モードで締結されていたハイ&ローブレーキHL/Bブレーキに掛かる内部応力トルクTsを求め、図10に示すごとくモード切り替え指令時t1にハイ&ローブレーキHL/Bの目標締結容量(トルク)Tboを内部応力トルクTsまで低下させると共に、この目標締結容量Tboに向かうよう制御されるハイ&ローブレーキHL/Bの実締結容量(トルク)Tbが内部応力トルクTsに一致する瞬時t2までハイ&ローブレーキHL/Bの目標締結容量Tboを内部応力トルクTsに保持した後、ハイ&ローブレーキHL/Bの目標締結容量Tboを0にしてハイ&ローブレーキHL/Bの実締結容量Tbを内部応力トルクTsから更に0に向け低下させるため、
ハイ&ローブレーキHL/Bの実締結容量Tbが内部応力トルクTsから更に0に向け低下する途中で、ハイ&ローブレーキHL/Bのスリップ開始により、このハイ&ローブレーキHL/Bに係わるモータ/ジェネレータMG1が回転し始める時期t3を学習などにより容易に予測することができ、この時期t3を基準にしてモータ/ジェネレータMG1のトルク上昇指令タイミングt0を、モータ/ジェネレータMG1の発熱が問題となる低回転、大トルク状態である時間Δtが最小となるよう容易に決定し得て、モータ/ジェネレータMG1の発熱に関する問題や、モータ/ジェネレータMG1の熱対策による駆動力低下に関する問題を緩和、若しくは回避することができる。
また本実施例においては、ハイ&ローブレーキHL/Bの目標締結容量Tboを図10の瞬時t2に内部応力トルクTsから一気に0にするため、
モータ/ジェネレータMG1の実トルクTm1がTm1osになったことでハイ&ローブレーキHL/Bを解放すべき時に、この解放を速やかに完遂させることができてモータ/ジェネレータMG1の回転上昇を早めることができ、結果として、モータ/ジェネレータMG1の発熱が問題となる低回転、大トルク状態である時間Δtを短くするという目的を更に確実なものにすることができる。
更に本実施例においては、ハイ&ローブレーキHL/Bの実締結容量Tbが内部応力トルクTsから更に0に向け低下する途中で、ハイ&ローブレーキHL/Bのスリップ開始により、このハイ&ローブレーキHL/Bに係わるモータ/ジェネレータMG1が回転し始める時t3までに、モータ/ジェネレータMG1がハイ&ローブレーキHL/Bによる回転拘束中であっても発熱の問題を生じないモータトルク範囲で最も大きなトルクTm1osを発生するよう、モータ/ジェネレータMG1の目標トルクTm1oを決定するため、
上記発熱の問題を回避しつつモータ/ジェネレータMG1の連続的なトルクの出力が可能となり、駆動力変化によるショックを回避することができる。
しかも本実施例によれば、モータ/ジェネレータMG1の目標トルクTm1oの発生タイミングt0を以下のように決定するから、つまり、ハイ&ローブレーキHL/Bの実締結容量Tbが内部応力トルクTsに一致する瞬時t2にモータ/ジェネレータMG1の実トルクTm1が所定値Tm1osになるよう目標トルクTm1oの発生タイミングt0を決定するから、
モータ/ジェネレータMG1の発熱が問題となる低回転、大トルク状態である時間Δtを短くすることができて、モータ/ジェネレータMG1の発熱に関する問題や、モータ/ジェネレータMG1の熱対策による駆動力低下に関する問題を緩和、若しくは回避することができる。
更に加えて本実施例では、モータ/ジェネレータMG1の目標トルク(Tm1o)出力タイミングt0を以下のように決定するから、つまり、ハイ&ローブレーキHL/Bのスリップ開始により、これに係わるモータ/ジェネレータMG1が回転し始めるのを検出した時t3に学習する、ハイ&ローブレーキHL/Bの実締結容量Tbに関した応答遅れ学習値を基に、ハイ&ローブレーキHL/Bの実締結容量Tbが内部応力トルクTsに一致する時期t2を予測し、この予測時期t2よりも、モータ/ジェネレータMG1の予め求めておいた応答遅れ分だけ前をモータ/ジェネレータMG1の目標トルク(Tm1o)出力タイミングt0とするから、
ハイ&ローブレーキHL/Bの実締結容量Tbが内部応力トルクTsに一致する瞬時t2にモータ/ジェネレータMG1の実トルクTm1が所定値Tm1osになることとなり、
モータ/ジェネレータMG1の発熱が問題となる低回転、大トルク状態である時間Δtを短くして、モータ/ジェネレータMG1の発熱に関する問題や、モータ/ジェネレータMG1の熱対策による駆動力低下に関する問題を緩和、若しくは回避するという作用効果を、経時変化や個体差にかかわらず常時確実に達成することができる。
なお上記実施例では、ハイブリッド変速機を図4(a)のロー変速比固定モードから図4(b)のロー側無段変速モードへモード切り替えする場合の制御について述べたが、ハイブリッド変速機を図4(c)の2速固定モードから図4(d)のハイ側無段変速モードへモード切り替えする場合についても、ローブレーキL/Bの解放およびモータ/ジェネレータMG2のトルクを同様の態様で制御すれば、前記したと同様な作用効果が奏し得られることは言うまでもない。
またハイブリッド変速機は、図1〜図5に示すものに限らず、変速比固定モードから無段変速モードへの切り替えが必要なハイブリッド変速機であればどのような型式のハイブリッド変速機に対しても本発明の前記した着想は適用することができる。
他の型式のハイブリッド変速機としては、例えば図8および図9に示すようなものがある。
図8によりハイブリッド変速機の構成を説明するに、これは、その主要部を成す変速機構10を主動力源であるエンジンENGから遠い後端に配して同軸に具える。
変速機構10は、その軸線方向(図の左右方向)中程に第1の単純遊星歯車組G1を設け、エンジンENGから遠い後端に第2の単純遊星歯車組G2を設け、
第1の単純遊星歯車組G1および第2の単純遊星歯車組G2により、本発明における差動装置を構成する。
これら遊星歯車組G1,G2はそれぞれエンジンENGに同軸に配置し、遊星歯車組G1,G2とエンジンENGとの間に同軸に第1のモータ/ジェネレータMG1および第2のモータ/ジェネレータMG2を設ける。
なお遊星歯車組G1,G2はそれぞれ、回転メンバとしてサンギヤS1,S2、およびリングギヤR1,R2、並びにキャリアC1,C2の3要素を具え、これら回転メンバ間を以下のごとくに相関させることにより、変速機構10を構成する。
キャリアC1およびリングギヤR2を相互に結合し、これらの結合体は、エンジンENGの回転を入力される入力軸21(図9の共線図では入力Inとして示す)に結合する。
キャリアC2には、入力軸21に同軸に配置した出力軸22(図9の共線図では出力Outとして示す)を結合する。
リングギヤR1を第1のモータ/ジェネレータMG1に結合すると共にブレーキBにより固定可能とし、
サンギヤS1,S2を相互に結合すると共に、これらの結合体を第2のモータ/ジェネレータMG2に結合する。
上記の構成になる図8のハイブリッド変速機を共線図により表すと図9のごとくになり、第1の遊星歯車組G1における回転メンバの回転速度順(変速状態に応じて速い順であったり、遅い順であったりする)は、リングギヤR1、キャリアC1、およびサンギヤS1であり、第2の遊星歯車組G2における回転メンバの回転速度順(変速状態に応じて速い順であったり、遅い順であったりする)はリングギヤR2、キャリアC2、およびサンギヤS2である。
第1遊星歯車組G1のキャリアC1と、第2遊星歯車組G2のリングギヤR2とを相互に結合し、これらの結合体をエンジンENGからの入力Inに結合する。
第2遊星歯車組G2のサンギヤS2と、第1遊星歯車組G1のサンギヤS1とを相互に結合し、これらの結合体に第2のモータ/ジェネレータMG2を結合し、
第1遊星歯車組G1のリングギヤR1を第1のモータ/ジェネレータMG1に結合すると共に、ブレーキ/Bにより固定可能とし、
第2遊星歯車組G2のキャリアC2に出力軸22を結合する。
図8の横軸は遊星歯車組G1,G2のギヤ比により決まる回転メンバ間の距離比を表し、縦軸は回転メンバの回転速度(0を基準に、上方が前進回転速度、下方が後進回転速度)を表す。
上記した図8の共線図により表されるハイブリッド変速機は、以下のように作用する。
図9の共線図において、第2遊星歯車組G2を表すレバー(同符号G2で示す)は第1遊星歯車組G1を表すレバー(同符号G1で示す)上に常時重なって一体的に動き、ブレーキBの締結によりリングギヤR1を固定して回転速度=0となした状態では、
モータ/ジェネレータMG2の操作によりレバーG1,G2がそれぞれ、回転速度=0のリングギヤR1の周りに回動して出力Outの回転速度が変化し、固定変速比(変速比固定モード)で動力伝達を行うよう機能する。
しかし、ブレーキBの解放によりリングギヤR1を回転可能とした状態では、モータ/ジェネレータMG1,MG2の操作によりレバーG1,G2の傾斜を自由に決定しつつ出力Outの回転速度を変化させることができ、無段変速下に(無段変速モードで)動力伝達を行うことができる。
かかるハイブリッド変速機も変速比固定モードと、無段変速モードとを有し、前者の変速比固定モードから後者の無段変速モードへのモード切り替えが発生する。
このモード切り替えは、締結状態のブレーキBを解放する操作と、モータ/ジェネレータMG1のトルク制御とで行われ、この場合も、ブレーキBの解放およびモータ/ジェネレータMG1のトルク制御を前記した実施例と同様に行うことで、前記したと同様な作用効果を達成することができる。
本発明によるモード切り替え制御装置を適用可能なハイブリッド変速機を搭載した車両のパワートレーンを例示する略線図である。 同ハイブリッド変速機の骨子図である。 図2のハイブリッド変速機に係わる共線図である。 同共線図によるハイブリッド変速機の動作説明図で、 (a)は、ロー変速比固定モードの共線図、 (b)は、ロー側無段変速モードの共線図、 (c)は、2速固定モードの共線図、 (d)は、ハイ側無段変速モードの共線図である。 同ハイブリッド変速機の制御システムを示す機能別ブロック線図である。 図5におけるハイブリッドコントローラが実行するモード選択プログラムに関したメインルーチンを示すフローチャートである。 同メインルーチンにおいて、ハイ&ローブレーキを操作することにより実行するモード切り替え制御に関したサブルーチンを示すフローチャートである。 本発明によるモード切り替え制御装置を適用可能な、他の型式のハイブリッド変速機を示す骨子図である。 同ハイブリッド変速機に係わる共線図である。 図7に示すモード切り替え制御の動作タイムチャートである。 一般的なモード切り替え制御の動作タイムチャートである。
符号の説明
ENG エンジン(主動力源)
10 変速機構
12 駆動車輪
MG1 第1モータ/ジェネレータ(主動力源側モータ/ジェネレータ)
MG2 第2モータ/ジェネレータ(出力側モータ/ジェネレータ)
21 入力軸
22 出力軸
G1 第1遊星歯車組(差動装置)
G2 第2遊星歯車組(差動装置)
G3 第3遊星歯車組(差動装置)
S1,S2,S3 サンギヤ
R1,R2,R3 リングギヤ
C1,C2,C3 キャリア
H/C ハイクラッチ
L/B ローブレーキ
E/C エンジンクラッチ
S/C シリーズクラッチ
MG1/C モータ/ジェネレータクラッチ
B ブレーキ
31 ハイブリッドコントローラ
32 エンジンコントローラ
33 スロットル弁
34 燃料噴射装置
35 点火装置
36 モータコントローラ
37 モータコントローラ
38 インバータ
39 インバータ
40 バッテリ
41 バッテリコントローラ

Claims (3)

  1. 2要素の回転状態を決定すると他の要素の回転状態が決まる差動装置を具え、
    この差動装置を表す共線図上の回転速度順方向中程に位置した差動装置の2要素にそれぞれ主動力源および駆動系への出力を結合し、これら主動力源および出力よりも共線図上の回転速度順方向外側に位置する差動装置の2要素にそれぞれ主動力源側モータ/ジェネレータおよび出力側モータ/ジェネレータを結合し、
    主動力源側モータ/ジェネレータおよび出力側モータ/ジェネレータが結合された差動装置の2要素のうち少なくとも一方の要素に関連して該要素を固定可能なブレーキを設け、
    該ブレーキの締結により変速比固定モードでの動力伝達が可能であり、該ブレーキの解放により無段変速モードでの動力伝達が可能なハイブリッド変速機において、
    前記ブレーキを締結した変速比固定モードから、該ブレーキを解放した無段変速モードへのモード切り替えに際し、該ブレーキに掛かる内部応力トルクを求め、該ブレーキの目標締結容量を該内部応力トルクまで低下させると共に、この目標締結容量に向かうよう制御される前記ブレーキの実締結容量が前記内部応力トルクに一致するまで前記ブレーキの目標締結容量を前記内部応力トルクに保持した後、該ブレーキの目標締結容量を0にして該ブレーキの実締結容量を前記内部応力トルクから更に0に向け低下させるよう構成し、
    前記ブレーキの実締結容量が前記内部応力トルクから更に0に向け低下する途中で、該ブレーキのスリップ開始により、このブレーキに係わる前記差動装置の要素およびこの要素に結合された前記モータ/ジェネレータが回転し始める時までに、前記ブレーキの実締結容量が前記内部応力トルクに一致する時に発生するようなタイミングで、該モータ/ジェネレータの目標トルクを決定するよう構成したことを特徴とするハイブリッド変速機のモード切り替え制御装置。
  2. 請求項1に記載のモード切り替え制御装置において、
    前記ブレーキの目標締結容量を前記内部応力トルクから一気に0にするよう構成したことを特徴とするハイブリッド変速機のモード切り替え制御装置。
  3. 請求項2に記載のモード切り替え制御装置において、
    前記モータ/ジェネレータの目標トルク出力タイミングは、前記ブレーキのスリップ開始により、このブレーキに係わる前記差動装置の要素およびこの要素に結合された前記モータ/ジェネレータが回転し始めるのを検出した時に学習する、前記ブレーキの実締結容量に関した応答遅れ学習値を基に、前記ブレーキの実締結容量が前記内部応力トルクに一致する時期を予測し、この予測時期よりも、前記ブレーキに係わるモータ/ジェネレータの予め求めておいた応答遅れ分だけ前とするものあることを特徴とするハイブリッド変速機のモード切り替え制御装置。
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