JP4235879B2 - エンジンの正圧ガス燃料供給方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はLPGまたはCNGを所定の正圧ガスに調整し、電子制御される噴射弁を用いてエンジンに供給する正圧ガス燃料供給方法、詳しくは既設のガソリン噴射システムを正圧ガス噴射システムに利用したものにおける正圧ガス燃料供給方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
LPGを火花点火エンジンの燃料に使用することは広く知られており、レギュレータ(ベーパライザ)とミキサを用いて大気圧程度の圧力に調整した気化ガスを吸気管路に吸引させてエンジンに供給する、という従前から行なわれている周知の方式に代えて、特開平6−17709号公報などに記載されているように、所定圧力に調整した正圧ガスを吸気管路に噴射させてエンジンに供給する方式が考えられている。 一方、CNGはLPGに比べて気体の状態を安定よく維持するので、所定の正圧ガスに調整し吸気通路に噴射させてエンジンに供給することが実用化されている。
【0003】
前記の正圧ガスを供給する噴射システムをエンジンに搭載するにあたって、新規のエンジンに対しては、エンジン運転状態に応じて最適の燃料供給量を与える噴射量を設定する電子式制御装置を使用して噴射弁を制御するように最初からシステムを設計・構築すればよい。
【0004】
しかし、ガソリン噴射システムを搭載している既存のエンジンに対しては、エンジンの運転状態に応じて最適の燃料供給量を与える噴射量がガソリン噴射システムを構成する電子式制御装置に設定されているので、ガソリン噴射量に基いてこれと同等の混合気を与える正圧ガス噴射量を算出する、というきわめて簡単な機能をもたせた電子式制御装置を増設し、且つ正圧ガスの噴射に適した弁口径、ダイナミックレンジをもつ噴射弁を使用することにより、既設のガソリン噴射システムをそのまま利用して正圧ガス噴射システムを構築し、正圧ガス燃料使用のエンジンに改造することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記のガソリン噴射システムにおけるガソリン用電子式制御装置が出力するガソリン噴射弁駆動信号は正圧ガス用電子式制御装置に入力され、ここで所定の正圧ガス噴射量に換算して正圧ガス噴射弁駆動信号を出力するが、ガソリン用電子式制御装置が出力するガソリン噴射弁駆動信号を受けて正圧ガス用電子式制御装置が正圧ガス噴射量を算出した結果である正圧ガス噴射弁駆動信号は、次のガソリン噴射弁駆動信号の入力に同期して出力される。
【0006】
このため、ガソリン噴射弁駆動信号が変化する過渡運転開始時に、変化するガソリン噴射弁駆動信号に対応する正圧ガス噴射弁駆動信号が一回遅れで出力されることにより、最初の正圧ガス噴射量に過不足を生じてエンジンの過渡性能に悪影響を与える、という問題を生じる。
【0007】
本発明は既設のガソリン噴射システムを正圧ガス噴射システムに利用した場合に、正圧ガス用電子式制御装置はガソリン用電子式制御装置が出力するガソリン噴射弁駆動信号に基いて算出した正圧ガス噴射弁駆動信号を一回遅れで出力するため、エンジンが過渡運転を行なうとき最初の正圧ガス噴射量に過不足を生じ、過渡性能に悪影響を与える、という課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは最初の正圧ガス噴射量の過不足を補償して過渡運転を良好なものとすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明はエンジン既設のガソリン噴射システムに、このシステムが具えているガソリン用電子式制御装置がエンジン運転状態に応じて出力するガソリン噴射弁駆動信号を入力して正圧ガス噴射量を算出する正圧ガス用電子式制御装置と正圧ガス噴射弁とを具えた正圧ガス噴射システムを増設し、正圧ガス用電子式制御装置は算出した正圧ガス噴射量を与える正圧ガス噴射弁駆動信号を次のガソリン噴射弁駆動信号の入力に同期して正圧ガス噴射弁に出力するエンジンの正圧ガス燃料供給方法がもっている前記課題を次のようにして解決するものとした。
【0009】
即ち、ガソリン噴射弁駆動信号が変化したとき、正圧ガス用電子式制御装置は変化前の最後の入力信号および変化後の一回目の入力信号に基いてそれぞれ算出した正圧ガス噴射量の差に相当する補正信号を算出し、変化後の二日目の入力信号に同期して出力する正圧ガス噴射弁駆動信号を補正信号により補正することによって、変化後の一回目の入力信号に同期して出力した正圧ガス噴射弁駆動信号による正圧ガス噴射量の過不足分を補償させるものとした。
【0010】
エンジンの加速を行なうときは、二回目の正圧ガス噴射量に一回目の正圧ガス噴射量の不足分を加え増量させて補償することにより、加速性能を低下させない。 また、燃料噴射を停止することなくエンジンの減速を行なうときは、次の正圧ガス噴射量から最初の正圧ガス噴射量の過剰分を減量させて補償することにより、減速運転性を悪化させないものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。 図1は正圧ガス燃料にLPGを用いた場合の実施の形態を示す配置図であって、LPGを充填したボンベ1の液相部分から延びフィルタ3および電磁駆動の遮断弁4を有する送出管路2が圧力調整器5に接続されている。
【0012】
圧力調整器5はエンジン冷却水を通過循環させる冷却水室6と、送出管路2が接続された予熱室7と、正圧ガス管路14を接続した調圧室8とを有しており、冷却水室6と予熱室7とは互いに隣接してエンジン冷却水とLPGとの間で熱変換が行なわれるようになっている。 調圧室8は調整ばね9を作用させたダイヤフラム10によって容積可変とされており、また予熱室7と調圧室8とを連通させた導通路11はダイヤフラム10の変位に応じて回動するレバー12に取り付けた入口弁13によって開閉される。
【0013】
ボンベ1から送出管路2を通って予熱室7に入った液相LPGは、冷却水室6のエンジン冷却水により加熱されて気化ガスとなり、この気化ガスは調圧室8の圧力が設定圧力よりも低くなると入口弁13が導通路11を開くことによって調圧室8に流入し、設定圧力よりも高くなると入口弁13が導通路11を閉じることによって調圧室8への流入を停止する。このことにより、予熱室7で作られた気化ガスは所定圧力に調整された正圧ガスとして調圧室8に保有される。
【0014】
本発明はガソリン用電子式制御装置15とガソリン噴射弁17とを具えたガソリン噴射システムを搭載している既存のガソリンエンジンをガスエンジンに改造する場合に適用されるものである。 ガソリン用電子式制御装置15は絞り弁開度、吸入空気量、吸入負圧、エンジン回転速度、冷却水温度、排気酸素濃度などのエンジン運転状態18に基いて算出したガソリン噴射弁駆動信号を出力し、ガソリン噴射弁17をこの駆動信号に応じたデューティサイクルで開閉動作させ、エンジン要求流量のガソリンを噴射してエンジンに供給するものであって、このこと自体は周知である。
【0015】
本実施の形態においては、正圧ガス用電子式制御装置21と正圧ガス噴射弁23とを具えた正圧ガス噴射システムが前記のガソリン噴射システムを残置させて増設される。 この場合、ガソリン噴射弁17を撤去して正圧ガス噴射弁23につけ替えることができ、このことはガソリン用電子式制御装置15からガソリン噴射弁17に至る駆動信号線16をそのまま正圧ガス用電子式制御装置21につけ替え接続して入力信号線とする。
【0016】
しかし、図示実施の形態のようにガソリン噴射弁17を撤去することなく残置させてその近くの適宣個所に正圧ガス噴射弁23を設置する場合は、駆動信号線16から正圧ガス用電子式制御装置21に至る分岐線を設けて入力信号線24とする。 ガソリン噴射弁17はガソリン噴射弁駆動信号により開閉動作するが、ガソリン燃料系を空にする、撤去する、などの処置を施しておくことにより、ガソリンを噴射することなく単なる開閉を繰り返すだけとなり、本発明を実施するうえで何の支障もない。
【0017】
ここで、ガソリン噴射弁17を正圧ガスの噴射に使用することが考えられるが、エンジン要求燃料流量に対応する容積流量はガソリンに比べて正圧ガスの方が格段に大きいので、本発明では正圧ガスの適正な噴射が可能な弁口径、ダイナミックレンジをもつ専用の正圧ガス噴射弁23を使用することとした。
【0018】
また、正圧ガス用電子式制御装置21はガソリン用電子式制御装置15がエンジン運転状態18に応じて出力するガソリン噴射弁駆動信号に基いて正圧ガスの適正な噴射量を算出し、この算出された正圧ガス噴射量を与える正圧ガス噴射弁駆動信号を駆動信号線22により正圧ガス噴射弁23に出力する。
【0019】
次に、図1、図2および図3を参照して、ガソリン用電子式制御装置15がエンジン運転状態18に応じて出力したガソリン噴射弁駆動信号T1…、T11…は入力信号線24を通って正圧ガス用電子式制御装置21に入力され、この制御装置21は前記の入力信号に基きガソリンに変えてエンジンが要求する流量の正圧ガスを噴射させる正圧ガス噴射弁駆動信号A1…、A11…を算出する。
【0020】
算出された正圧ガス噴射弁駆動信号A1…、A11…は次のガソリン噴射弁駆動信号T2…、T12…が入力されたとき、これと同期して出力される。 即ち、T1またはT11に基いて算出したA1またはA11は次のT2またはT12の入力に同期して出力され、以後も同様に次の入力に同期して前回の入力に基いて算出した駆動信号を出力するので、そのままではエンジンが過渡運転を行うとき最初の正圧ガスの噴射量に過不足を生じて過渡性能に悪影響を及ぼすこととなる。
【0021】
図2はエンジンが加速を行なうときの噴射タイミング図であって、T1で示されるデューティサイクルで定常運転を行なっていたエンジンが加速を開始すると、T2、T3、T4…のようにデューティサイクルが大きくなる。 このガソリン噴射弁駆動信号T2、T3、T4…に対応する正圧ガス噴射弁駆動信号A2、A3、A4…は一回遅れで出力されるので、T3の入力に同期して出力されるA2以降は加速運転に対応することができる。しかし、T2の入力に同期して出力されるA1は加速の最初に必要な正圧ガス噴射量に足りず、加速運転に対応できない。
【0022】
本実施の形態によると、正圧ガス用電子式制御装置21にT2が入力されてA2を算出したとき、A1で与えられる正圧ガス噴射量とA2で与えられる正圧ガス噴射量との差Xを算出させる。そして、この差Xが加速の最初に必要な正圧ガス噴射量の不足分であるので、差Xに相当する正圧ガス噴射量を与える補正信号axを算出してこれをA2に加算することによって作った補正正圧ガス噴射弁駆動信号AX(=A2+ax)をT2の入力に同期してA2に代えて出力するものとした。
【0023】
即ち、加速開始時の最初の不足分を次に付加して補正するものであり、このことにより、加速に要求される正圧ガスが不足なく供給され、エンジンの加速性能を低下させることがない。
【0024】
図3はエンジンが正圧ガス噴射を停止することなく減速を行なうときの噴射タイミング図であって、T11で示されるデューティサイクルで定常運転を行なっていたエンジンが減速を開始すると、T12、T13、T14…のようにデューティサイクルが小さくなる。このガソリン噴射弁駆動信号T12、T13、T14…に対応する正圧ガス噴射弁駆動信号A12、A13、A14…は一回遅れで出力されるので、T13の入力に同期して出力されるA12以降は減速運転に対応することができる。しかし、T12の入力に同期して出力されるA11は減速の最初に必要以上の正圧ガスを噴射させ、混合気の一時的な過濃による運転不調や排気中の有害物質増加など減速運転性の悪化を招く。
【0025】
本実施の形態によると、正圧ガス用電子式制御装置21にT12が入力されてA12が算出されたとき、A11で与えられる正圧ガス噴射量とA12で与えられる正圧ガス噴射量との差Yを算出させる。 そして、この差Yが減速の最初における正圧ガス噴射量の過剰分であるので、差Yに相当する正圧ガス噴射量を与える補正信号ayを算出してこれをA12から減算することによって作った補正正圧ガス噴射弁駆動信号AY(=A12−ay)をT12の入力に同期してA12に代え出力するものとした。
【0026】
即ち、減速開始時の最初の余剰分を次に減量して補償するものであり、減速に要求される正圧ガスが適正に供給され、エンジンの減速運転性を悪化させることがない。
【0027】
【発明の効果】
本発明によると、ガソリン噴射システム搭載のエンジンを正圧ガス燃料使用のエンジンに改造し、ガソリン用電子式制御装置がエンジン運転状態に応じて出力するガソリン噴射弁駆動信号を基に正圧ガス用電子式制御装置で正圧ガス噴射弁駆動信号を算出させるものとしたシステムがもっている、過渡運転の初期における正圧ガス噴射量の過不足による過渡性能の不良、という不都合が解消され、過渡運転を良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す配線図。
【図2】図1の形態における加速時の噴射タイミング図。
【図3】図1の形態における減速時の噴射タイミング図。
【符号の説明】
15 ガソリン用電子式制御装置、 18 エンジン運転状態、 21 正圧ガス用電子式制御装置、 23 正圧ガス噴射弁、 T1、T2、T3、T4、T11、T12、T13、T14、 ガソリン噴射弁駆動信号 A1、A2、A3、A4、A11、A12、A13、A14、 正圧ガス噴射弁駆動信号、 ax、ay 補正信号、AX、AY 補正正圧ガス噴射弁駆動信号
Claims (3)
- エンジン既設のガソリン噴射システムに、このシステムが具えているガソリン用電子制御装置がエンジン運転状態に応じて出力するガソリン噴射弁駆動信号を入力して正圧ガス噴射量を算出する正圧ガス用電子制御装置と正圧ガス噴射弁とを具えた正圧ガス噴射システムを増設し、前記正圧ガス用電子制御装置は算出した正圧ガス噴射量を与える正圧ガス噴射弁駆動信号を次のガソリン噴射弁駆動装置信号の入力に同期して前記正圧ガス噴射弁に出力するエンジンの正圧ガス燃料供給方法において、
前記ガソリン噴射弁駆動信号が変化したとき、前記正圧ガス用電子式装置は変化前の最後の入力信号および変化後の一回目の入力信号に基いてそれぞれ算出した正圧ガス噴射量の差に相当する補正信号を算出し、変化後の二回目の入力信号に同期して出力する正圧ガス噴射弁駆動信号を前記補正信号により補正することによって、変化後の一回目の入力信号に同期して出力した正圧ガス噴射弁駆動信号による正圧ガス噴射量の過不足分を補償させる、
ことを特徴とするエンジンの正圧ガス燃料供給方法。 - 前記ガソリン噴射弁駆動信号が加速運転により変化したとき、加速の一回目の入力信号および二回目の入力信号にそれぞれ同期して出力する正圧ガス噴射弁駆動信号で与えられる正圧ガス噴射量の差を算出し、この差に相当する正圧ガス噴射量を与える補正信号を前記二回目の入力信号に同期する正圧ガス噴射弁駆動信号に加算して作った補正正圧ガス噴射弁駆動信号を出力することにより、前記差である不足分を補償させるものである請求項1に記載したエンジンの正圧ガス燃料供給方法。
- 前記ガソリン噴射弁駆動信号が減速運転により変化したとき、減速の一回目の入力信号および二回目の入力信号にそれぞれ同期して出力する正圧ガス噴射弁駆動信号で与えられる正圧ガス噴射量の差を算出し、この差に相当する正圧ガス噴射量を与える補正信号を前記二回目の入力信号に同期する正圧ガス噴射弁駆動信号から減算して作った補正正圧ガス駆動信号を出力することにより、前記差である過剰分を補正させるものである請求項1に記載したエンジンの正圧ガス燃料供給方法。
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