JP4235397B2 - 形態安定材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブラジャーのカップワイヤや学生服の肩内部に封入するワイヤ等、衣服ほか、物の形態(形状)を安定的に保持する形態安定材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
衣服は柔軟な生地で製作されるが、部分的に形態(形状)が保持されることが望まれる。こうした衣服の形態を安定的に保持するために用いる形態安定材としては、ブラジャーのカップワイヤや学生服の肩内部に封入するワイヤ等を例示できる。旧来は、こうした形態安定材として、専ら金属の剛性を利用した金属製ワイヤが多かったが、折れたり、錆びたりする金属固有の問題や、必要以上に剛性が高くなり、表面の触感が硬い等の問題があった。更に、空港における金属探知器に金属製ワイヤが探知される等、不具合もあり、近年、樹脂製ワイヤが提案されるに至っている。
【0003】
樹脂製ワイヤでは、金属製ワイヤに相当する剛性をいかに実現するかが技術的解決手段となり、これについては既にいくつかの提案がされている。例えば、実開平05-022507号「カップワイヤー及びそれを有する被服」、実開平05-089406号「女性ランジェリー用骨部材」、特開平08-302504号「形状保持用棒状体の製造方法及び形状保持用棒状体とこれを用いたファンデーション」、特開平08-323890号「被服用芯材およびその製造方法」が、その例である。
【0004】
実開平05-022507号は、繊維強化樹脂(FRP)を熱収縮チューブで被覆したカップワイヤ(形態安定材)である。金属に相当する剛性を、繊維強化樹脂により実現し、この繊維強化樹脂表面を別途熱収縮チューブで覆うことにより、触感の柔らかさを確保している。実開平05-089406号も前記実開平05-022507号と略同様な構成であるが、芯材には弾性材料を用いている。
【0005】
特開平08-302504号は、合成樹脂製の芯線材を少なくとも3本以上の並列状態に配置し、前記芯線材の外周面を複数の経糸及び緯糸で覆い、更に絡み糸で全体を略偏平状に編んだ後に、所定樹脂液中に浸漬して一体化した形状保持用棒状体(形態安定材)である。そして、特開平08-323890号は、曲げ弾性率が9,000kg/cm2以上の樹脂からなる芯部及び曲げ弾性率が5,000kg/cm2以下かつショアーD硬度25〜65の樹脂からなる鞘部から構成される芯鞘構造の被服用芯材(形態安定材)である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
芯材として繊維強化樹脂(実開平05-022507号)や弾性材料(実開平05-089406号)を用いた場合、形態安定に必要な剛性は依然金属に及ばず、また形態安定が無方向に発揮される問題がある。すなわち、例えばブラジャーのカップワイヤでは、形態安定材として、円弧状に曲げた方向には形状変化が少ないものの、円弧に直交する方向には自由に形状が変化することが望ましいが、前記形態安定材にはこうした形状変化が無方向に発揮されていた。これは、特開平08-323890号の形態安定材でも同様であった。
【0007】
これに対し、特開平08-302504号は芯線材を並列状態で配置することから、芯線材の並び方向には複数の芯線材が剛性を発揮するから形状変化が抑制されやすいが、芯線材の並び直交方向には単数の芯線材しか剛性を発揮しないので比較的形状変化を起こしやすい。これから、ブラジャーのカップワイヤとして好ましい形態安定材となるが、構造が複雑で、所定形状に曲げた芯線材を浸漬して一体化するまで前記所定形状を保持しなければならない不便があった。
【0008】
このほか、上記各従来技術は、形態安定材として独立した部材であり、形態安定を図る物に対して全体を袋部等に挿入、保持して用いたり(実開平05-022507号、実開平05-089406号又は特開平08-323890号)、物に対して一体に固着したりしていた(特開平08-302504号)。特に、衣服に対して用いる場合、形態安定材の形状変化に際して発生する復元力に対抗する強度が袋部等に要求される等、利用に際しての取付性に問題がある。そこで、特開平08-302504号のように形状変化の方向性を実現しながら、構造が簡素かつ製造も容易で、形態安定を図るものに対して取付容易な形態安定材を開発するべく、検討した。
【0009】
【課題を解決するための手段】
検討の結果、開発したものが、高強力繊維を熱可塑性樹脂の内部組紐で被覆した複数の芯体を横並びとし、該芯体全体を更に熱可塑性樹脂の外部組紐で被覆し、外部組紐外から加熱して内部組紐及び外部組紐を相互に溶融一体化することにより、高強力繊維を挿通した形態安定材の製造方法である。内部組紐及び外部組紐を相互に溶融一体化するのは、高強力繊維を挿通した形状で保持するためであり、前記溶融によって高強力繊維まで一体化する必要はないが、通常、高強力繊維に対しても溶融した内部組紐が含浸状態でしみ込み、構造的には溶融した内部組紐と一体化する。内部組紐又は外部組紐内には、完成した形態安定材の大きさや形状を整える目的で、別途熱可塑性を備える樹脂繊維を挿通しておき、加熱処理により内部組紐又は外部組紐と溶融一体化してもよい。
【0010】
本発明に使用しうる高強力繊維としては、芳香族ポリアミド系繊維(例えばポリ-p-フェニレンテレフタレート(PPTA)等)や、全芳香族ポリエステル系繊維(例えばp-ヒドロキシ安息香酸(HBA)と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)の重縮合ポリマー等)、5-ヘテロ環高性能繊維(ポリ-p-フェニレンベンゾビスチアゾール(PBZT)、ポリ-p-フェニレンベンズビスオキサヅール(PBO)等)等を挙げることができる。このほか、超高分子量ポリエチレンや炭素繊維等も使用可能である。また、内部組紐と外部組紐は、同種、異種を問わないが、熱可塑性を備える必要があるが、高強力繊維との関係で、高強力繊維より低融点であることが望ましい。
【0011】
本発明の形態安定材は、芯体の並び方向には形状変化しにくく、並び直交方向には比較的形状変化しやすい方向性を有する。これは、芯体の並びに従って挿通状態にある高強力繊維の働きによるもので、高強力繊維は内部組紐及び外部組紐が相互に溶融一体化した状態を基準形状として、前記形状変化の方向性を発揮する。これから、芯体を直線状に横並びした場合には、形態安定材も直線状となり、前記直線状から芯体の並び方向に形状変化しにくく、並び直交方向に比較的形状変化しやすい方向性を発揮する。
【0012】
実際には、記述したブラジャーのカップワイヤや学生服の肩内部に封入するワイヤに見られるように、衣服に対しては形態安定材を円弧状にして用いる例が多い。この場合、基本形状を直線状とした形態安定材を芯体の並び直交方向で円弧状に曲げて形態安定材の復元力を利用してもよいが、基本形状を芯体の並び方向で円弧状とした形態安定材を用いて形状変化の方向性を利用することもできる。この場合、芯体全体は、並び方向に所定形状で曲げて高強力繊維に前記所定形状での緊張を与えた状態で外部組紐外から加熱して内部組紐及び外部組紐を相互に溶融一体化することにより、前記緊張を与えた状態の高強力繊維を挿通する。基本形状を円弧状とした形態安定材は、芯体の並び方向では、同一角範囲での各高強力繊維は半径が異なることにより長さが異なり、予め付与される緊張も異なる結果、芯体の並び方向の形状変化は直線状よりも抑制されやすく、並び直交方向の形状変化は直線状と殆ど変わらないため、形状変化の方向性がより明確に発揮されることになる。
【0013】
本発明の特徴の一つとして、従来同様の形態安定材には見られない取付性の改善を挙げることができる。具体的には、内部組紐及び外部組紐は、部分的に非加熱部位を残して相互に溶融一体化する形態安定材とし、前記非加熱部位の内部組紐又は外部組紐を取付部位として利用する。例えば、形態安定材の利用対象が衣服である場合は前記非加熱部位を縫着すればよく、機械や構造物等であれば前記非加熱部位に接着剤等を含浸して強固に固着することができる。とりわけ、衣服に対して縫着して取り付けることは取付性の改善となり、適用範囲が拡がる利点となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明に基づく円弧状形態安定材1を利用したブラジャー2の正面図、図2は同円弧状形態安定材1の正面図、図3は図2中A−A断面図であり、図4は同円弧状形態安定材1の側面図である。本発明の形態安定材1は、図1に見られるように、従来公知のカップワイヤに代替して用いることができる。これは、本発明の形態安定材1を利用するに際して、利用対象となる物品に特別な加工が必要ないことを意味し、普及を容易にする利点となっている。
【0015】
本発明の形態安定材1は、溶融一体化した所定形状において、図2及び図3に見られるように、高強力繊維3,3(図4参照)の並び方向には形状変化が抑制される。とりわけ、本例のように高強力繊維3の並び方向に湾曲させた円弧状形態安定材1では、内周側高強力繊維3及び外周側高強力繊維3にそれぞれ内在する緊張が異なる結果、互いの形状変化が相手を牽制することになり、形状変化がより抑制されて、より高い保形性を有することになる。本発明の形態安定材1の更なる特徴は、図4に見られるように、高強力繊維3,3の並び直交方向には前記並び方向と比較して形状変化が容易である点にある。これにより、形状変化の方向性が明確に発揮され、例えば本例のようなブラジャーのカップワイヤ等として好ましい形態安定材1の提供が可能となる。
【0016】
こうした形状変化の方向性は、基本的には高強力繊維3,3の並び方向によって与えられるものである。上記例示のカップワイヤが円弧状であることによる各高強力繊維3の内在的緊張は、こうした形状変化の方向性をより強調するものであり、本発明の基本は直線状形態安定材4となる。この場合、図5及び図6に見られるように、高強力繊維3,3(図4参照)の並び方向には形状変化が抑制され(図5)、並び直交方向には相対的に形状変化が容易な直線状形態安定材4となる(図6)。
【0017】
上記カップワイヤに用いる形態安定材1を例に挙げ、製造手順を説明する。図7は高強力繊維3を内部組紐5で被覆した2本の芯体6,6を並べた状態で外部組紐7により被覆した多層構造体8(熱処理前の形態安定材)を表す部分拡大平面図、図8は図7中B−B断面図、図9は加熱治具9に多層構造体8を挟持して外部組紐7外から加熱する状態を表した斜視図であり、図10は溶融一体化により形成された円弧状形態安定材1の端部12,12を切除する状態を表した正面図である。本例は、単体の円弧状形態安定材1を製造する例であるが、実際には大量生産を想定し、バッチ処理又は連続処理できる加工装置等を用いる。
【0018】
まず、多層構造体8は、図7及び図8に見られるように、高強力繊維3を熱可塑性を備える内部組紐5で被覆して芯体6を構成し、この芯体6,6を複数横並びにした状態で全体を外部組紐7で被覆する。本発明は、完成した形態安定材1断面における特定の2方向に並ぶ高強力繊維3,3の本数を違える(並び方向には直列2本、並び直交方向には並列に2本=1本が2列)ことで、形状変化の方向性を実現するから、例えば芯体を多段に積層しても、完成した形態安定材断面における特定の2方向に並ぶ高強力繊維の本数が異なればよい。これから、本発明の形態安定材1は、特定の2方向に並ぶ高強力繊維3,3を本数を違える点に意義がある。
【0019】
また、本発明の形態安定材1は、上述の構造的特徴に加え、金属素材を使用せずに保形性を発揮するため、必要十分な剛性を確保している。これから、本発明では熱可塑性を備えた内部組紐5で高強力繊維3を被覆すると共に、内部組紐5と同種又は異種の熱可塑性を備えた外部組紐7で被覆する素材の限定を図っている。図8に示す断面に従って前記素材の組み合せを示すと、高強力繊維3としてポリ-p-フェニレンベンズビスオキサヅール(PBO、例えば東洋紡績株式会社製「ザイロン」(商品名)製1,110dtexマルチフィラメント、内部組紐5としてPET製1100dtexフィラメント×8本からなる組紐を、そして外部組紐7としてPET製550dtexフィラメント×16本からなる組紐を例示できる。
【0020】
こうして高強力繊維3を内部組紐5及び外部組紐7で包んだ状態とした多層構造体8は、図9に見られるような、目的とする所定形状の段差10を形成した加熱治具9の前記段差10に倣って嵌め込み、抑え枠11で高強力繊維3,3の横並び状態を保持しながら、外部組紐7外から加熱治具9によって加熱し、内部組紐5及び外部組紐7を溶融一体化する。加熱治具9の段差10に倣って多層構造体8を湾曲させることにより、高強力繊維3,3にはそれぞれ応力が加えられ、加熱処理後、溶融一体化した内部組紐5及び外部組紐7によって湾曲状態が保持されるため、前記応力が内在的に残ることになる。上記素材の組み合わせの場合、多層構造体8の各高強力繊維3に49N(5kg重)前後の応力を加えた状態で、170℃×1分の加熱処理を経れば、内部組紐5及び外部組紐7(共にPET製)は溶融一体化し、円弧状形態安定材1を得ることができる。
【0021】
製品としては、更に図10に見られるように、カップワイヤに必要な長さに整えるため、溶融一体化した円弧状形態安定材1の端部12,12を切除又は整形する。この端部処理は必須ではないが、本発明を衣服等に適用する場合、端部に何らかの処理を施し、対象となる衣服への取付作業や取り付けた衣服の安全性を考慮し、本例のように不要な端部12,12を切除したり、何らかの処理を施して、衣服及び人体を傷つけないようにすることが望ましい。また、後述する非加熱部位とは異なり、端部又は部分的に圧潰した偏平部位を形成し、取付対象の物に対して前記偏平部位を接面して、安定した取付を実現できる。
【0022】
本発明の形態安定材は、加熱処理によって内部組紐及び外部組紐を溶融一体化する前は、単なる組紐として衣服に対して縫着可能である。これを利用して、内部組紐及び外部組紐は、部分的に非加熱部位を残して相互に溶融一体化すると、前記非加熱部位を衣服に縫着して、形態安定材の衣服に対する取付が容易になる。例えば、図11及び図12に見られるように、端部を非加熱部位13,13とした円弧状形態安定材1は、前記非加熱部位13,13を学生服の肩内部14に縫着することで、取付位置からの位置ずれを防止しながら、肩形状の型くずれを防止する機能を発揮する。形態安定材1の中間部位は、肩内部14に設けた袋部15に形態安定材1を挿通することで容易に位置決めを図ることができる。例示では、上記カップワイヤ同様に基本形状を円弧状とした形態安定材を用いているが、本例のような衣服の型崩れ防止の場合、基本形状を直線状とした形態安定材を高強力繊維の並び直交方向で円弧状に曲げた形態安定材を衣服に縫着し、この形態安定材の復元力を利用してもよい。高強力繊維の並び直交方向の復元力は並び方向の復元力に比べて弱く、当然金属製形態安定材よりも弱い力であるため、形態安定材端部が目立つ程突っ張らない利点がある。
【0023】
図13は直線状形態安定材4の端部を表した斜視図、図14は複数かつ異種の芯体16,17を横並びにした多層構造体18の断面図、図15は前記多層構造体18を加熱処理した直線状形態安定材19の図13相当斜視図であり、図16は内部組紐5,5を二重にした多層構造体20の図14相当断面図である。上記例示のカップワイヤでは、高強力繊維3を一重の内部組紐5で被覆した芯体6を2本横並びにし、全体を一重の外部組紐7で被覆した例である。こうした最も単純な構成では、、図13に見られるように、完成して得られる形態安定材1における高強力繊維間3,3の幅aは狭く、形態安定材1自体の幅bも狭い。このため、取付に必要なスペースは節約できるが、形状変化に伴う抵抗が横並びの高強力繊維3,3毎にほとんど差がなく、また円弧状形態安定材1の場合には高強力繊維3毎に内在する応力の差が小さく、形状変化の方向性がそれほど強く現れない。そこで、簡単には高強力繊維3の本数を増やすほか、高強力繊維3,3間の幅aを大きくすることで、前記形状変化の方向性をより強く又は明確に発揮させることができる。
【0024】
例えば、図14に見られるように、熱可塑性を備えた2本の樹脂繊維21,21で高強力繊維3を挟んだ状態で全体を内部組紐5で被覆した一対の外側芯体16,16と、熱可塑性を備えた2本の樹脂繊維21,21のみを内部組紐5で被覆した内側芯体17とを横並び(外側芯体16-内側芯体17-外側芯体16)にし、全体を外部組紐7で被覆すると、外側芯体16,16及び内側芯体17に内挿した樹脂繊維21が加熱処理により内部組紐5及び外部組紐7と溶融一体化できる。この結果、図15に見られるように、高強力繊維3,3間の幅aが広く、また形態安定材19自体の幅bも広い、すなわち広幅の形態安定材19とすることができる。高強力繊維3,3間の幅aが広いために、形状変化に伴う抵抗が横並びの高強力繊維3毎に大きく異なることになる。また、例えば前記構成(図14参照)によって円弧状形態安定材を形成すると、内周及び外周それぞれに位置する高強力繊維毎に内在する応力の差が大きくなり、高強力繊維の並び方向には形状変化が抑制され、並び直交方向には容易に形状変化するという形状変化の方向性も、強くかつ明確に発揮させることができるようになる。
【0025】
上記樹脂繊維21を含む構成の形態安定材19の素材の組み合せは、例えば次のようになる。高強力繊維3としてポリ-p-フェニレンベンズビスオキサヅール(PBO、例えば東洋紡績株式会社製「ザイロン」(商品名)からなる1,110dtexマルチフィラメントを、熱可塑性を備えた樹脂繊維21としてポリエステル繊維、PET1100dtexからなるマルチフィラメントを用いる。各内部組紐5と外部組紐7とは上記例示と同様でよい。高強力繊維3に添わせた熱可塑性を備えた樹脂繊維21は、高強力繊維3の位置決め及び位置保持を担う。これに対し、形態安定材の大きさ又は外形は、樹脂繊維の有無又は配置のみならず、図16に見られるように、例えば高強力繊維3及び樹脂繊維21の組を内部組紐5,5で二重に被覆する芯体22等、内部組紐又は外部組紐の厚さ又は数を加減することで調整可能である。
【0026】
【発明の効果】
本発明の形態安定材は、高強力繊維の本数に比例して金属に劣らない剛性を確保し、かつ各高強力繊維の並び方向及び並び直交方向の形状変化の違いによる形状変化の方向性を発揮する効果を有する。特に、形態安定材として、特定方向の形状変化のみを抑制することが好ましく、必要な保形性と人体の動きに追随する柔軟性とを兼ね備えることから、例示したブラジャーのカップワイヤ等に適している。本発明の形態安定材は、このほか、学生服等の衣服の部分的な保形性を担うために利用することを基本とし、鞄又はバッグの部分的な保形性や帽子等の部分的な保形性を担う場面に応用できる。
【0027】
本発明の形態安定材の利点は、完成した製品の物理特性のみならず、製造の容易さや取付の簡便さにも見られる。素材には、既存の高強力繊維及び樹脂繊維を用いることができ、内部組紐及び外部組紐も入手しやすい。また、高強力繊維に内部組紐を被覆して芯体を構成し、この芯体を更に外部組紐で被覆するだけなので、こうした階層構造の形成及び保持が容易である。そして、完成品は、前記階層構造を所定形状に変形させて加熱処理するだけであり、上記例にも示したように短時間の加熱処理で済むため、加工に際する手間及び労力は極めて低減されている。実際には、例示の加熱治具を多数有する製造装置を利用するが、前記手間及び労力の低減は、生産性向上の効果をもたらす。
【0028】
このほか、本発明の形態安定材は、あえて非加熱部位を設けることで、部分的に縫着可能な取付部位を形成することができ、特に衣服に対して取り付ける際の簡便性を確保している。しかも、前記非加熱部位(取付部位)は溶融一体化した形態安定材本体と連続しているため、外部からの負荷が加わった場合にも形態安定材本体に対して負荷を偏在させず、非加熱部位の衣服からの分離や非加熱部位及び形態安定材間の座屈等を防止できる。このように、本発明の形態安定材は、目的とする形態安定(保形)に適した形状変化の方向性という性質を実現しながら、構造が簡素かつ製造も容易で、形態安定を図る物に対して取付容易な効果を実現している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に基づく円弧状形態安定材を利用したブラジャーの正面図である。
【図2】同円弧状形態安定材の正面図である。
【図3】図2中A−A断面図である。
【図4】同円弧状形態安定材の側面図である。
【図5】本発明に基づく直線状形態安定材の正面図である。
【図6】同直線状形態安定材の側面図である。
【図7】高強力繊維を内部組紐で被覆した2本の芯体を並べた状態で外部組紐により被覆した多層構造体を表す部分拡大平面図である。
【図8】図7中B−B断面図である。
【図9】加熱治具に多層構造体を挟持して外部組紐外から加熱する状態を表した斜視図である。
【図10】溶融一体化により形成された円弧状形態安定材の端部を切除する状態を表した正面図である。
【図11】学生服の肩内部に円弧状形態安定材を取り付けた状態を表す斜視図である。
【図12】円弧状形態安定材の端部を縫着している状態を表す部分拡大斜視図である。
【図13】直線状形態安定材の端部を表した斜視図である。
【図14】複数かつ異種の芯体を横並びにした多層構造体の断面図である。
【図15】前記多層構造体を加熱処理した直線状形態安定材の図13相当斜視図である。
【図16】内部組紐を二重にした多層構造体の図14相当断面図である。
【符号の説明】
1 円弧状形態安定材
3 高強力繊維
4 直線状形態安定材
5 内部組紐
6 芯体
7 外部組紐
8 多層構造体
Claims (3)
- 高強力繊維を熱可塑性樹脂の内部組紐で被覆した複数の芯体を横並びとし、該芯体全体を更に熱可塑性樹脂の外部組紐で被覆し、外部組紐外から加熱して内部組紐及び外部組紐を相互に溶融一体化することにより、高強力繊維を挿通した形態安定材の製造方法。
- 芯体全体は、並び方向に所定形状で曲げて高強力繊維に前記所定形状での緊張を与えた状態で外部組紐外から加熱して内部組紐及び外部組紐を相互に溶融一体化することにより、前記緊張を与えた状態の高強力繊維を挿通した請求項1記載の形態安定材の製造方法。
- 内部組紐及び外部組紐は、部分的に非加熱部位を残して相互に溶融一体化する請求項1記載の形態安定材の製造方法。
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