JP4234257B2 - 遮音構造設計装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は遮音構造設計装置に関する。より詳しくは、建物の室内に様々な騒音伝搬経路を通して侵入する騒音のレベルを自動的に評価して、建物内の音の伝搬に影響を及ぼす建物の構成部材(建物構造部材や仕上材等)の遮音対策の仕様を自動的に選択する装置に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来、遮音の観点から建物の構成部材の仕様を設計する場合、例えば窓や壁を透過して室内に入る騒音のレベルに基づいて窓サッシや壁の仕様(部材厚さや窓・壁構造)を選定するという手法がとられている。
【0003】
しかしながら、図19に示すように、建物200の或る室内201で観測される騒音としては、戸外から窓202を透過して侵入する空気伝搬音A1や、建物内の機械室から壁206を透過して侵入する空気伝搬音A2だけでなく、配管206を透過して侵入する空気伝搬音A3、その他図示しないドア、柱、梁等を透過して侵入する空気伝搬音がある。また、そのような空気伝搬音以外に、建物の設備機械203から配管207を伝達して侵入する固体伝搬音A4や、建物の設備機械203,204,205から柱・梁・床・壁206などの構造部材を伝達して侵入する固体伝搬音A5,A6もある。
【0004】
これらの様々な伝搬経路を通して侵入する騒音のレベルを個別に評価して建物構成部材の遮音対策の仕様を個別に選定していたのでは、全体の設計が完了するまでに長時間を要するという問題がある。
【0005】
このため、本出願人は、先に、様々な伝搬経路を通して室内に侵入する騒音レベルを合成して、合成騒音レベルが目標騒音レベルを超えないように建物構成部材の遮音対策の仕様を自動的に選択する遮音構造設計装置を提案した。この遮音構造設計装置によれば、建物の遮音に関する全体の設計を短時間で一括して行うことができる。
しかし、合成騒音レベルが目標騒音レベルを極端に下回るような過剰対策は、コスト面で不利となる。
そこで、この発明の目的は、建物の遮音に関する全体の設計を一括して行う場合に、過剰対策になるのを避けることができ、したがって建物構成部材のコストを最適化できる遮音構造設計装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の遮音構造設計装置は、建物の室内に侵入する騒音のレベルを評価して建物構成部材の遮音対策の仕様を選択する遮音構造設計装置であって、
建物構成部材の遮音対策の候補となる仕様を複数記憶する記憶手段と、
上記建物内の対象とする室の位置、騒音源の種類および位置、上記騒音源からの騒音が上記室内に達する複数の伝搬経路に関するデータを入力するための入力手段と、
上記入力手段を通して入力されたデータに基づいて、上記騒音源から各伝搬経路を通して上記室内に侵入する騒音レベルをそれぞれ求め、求めた騒音レベルを合成して合成騒音レベルを算出する算出手段と、
上記合成騒音レベルが目標騒音レベルを下回る場合は、上記目標騒音レベルと上記各伝搬経路の音圧レベルとの間の相違に基づいて上記各伝搬経路における現状の仕様を下げることが可能か否かを判断し、現状の仕様を下げることが可能な伝搬経路が存在するとき、上記目標騒音レベルと上記合成騒音レベルとの間の相違を仕様変更が可能な伝搬経路毎に割り当てて上記仕様変更が可能な伝搬経路が達成すべきレベルを表す最適分担レベルを求め、さらに上記最適分担レベルと上記各伝搬経路の上記音圧レベルとの相違を表す最適対策量を求め、上記最適対策量と上記現状の仕様との相違に基づいて上記記憶手段を参照して建物構成部材の遮音対策の仕様を選択する選択手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
ここで、「目標騒音レベル」には、上限値と下限値で定められる範囲(幅)を持たせることができる。その場合、「目標騒音レベルを超える」とは目標騒音レベルの上限値を超えることを意味し、「目標騒音レベルを下回る」とは目標騒音レベルの下限値を下回ることを意味する。
【0008】
この請求項1の遮音構造設計装置では、まずオペレータが入力手段によって、建物内の対象とする室の位置、騒音源の種類および位置、並びに上記騒音源からの騒音が上記室内に達する複数の伝搬経路に関するデータを入力する。なお、オペレータが各伝搬経路上に存在する建物構成部材の遮音対策の仕様を初期条件として入力しても良いし、次に述べる算出手段がそのような初期条件を選択しても良い。次に、算出手段が、上記入力手段を通して入力されたデータに基づいて、上記騒音源から各伝搬経路を通して上記室内に侵入する騒音レベルをそれぞれ求め、求めた騒音レベルを合成して合成騒音レベルを算出する。次に、選択手段が、上記合成騒音レベルが目標騒音レベルを下回る場合は、上記目標騒音レベルと上記各伝搬経路の音圧レベルとの間の相違に基づいて上記各伝搬経路における現状の仕様を下げることが可能か否かを判断し、現状の仕様を下げることが可能な伝搬経路が存在するとき、上記目標騒音レベルと上記合成騒音レベルとの間の相違を仕様変更が可能な伝搬経路毎に割り当てて上記仕様変更が可能な伝搬経路が達成すべきレベルを表す最適分担レベルを求め、さらに上記最適分担レベルと上記各伝搬経路の上記音圧レベルとの相違を表す最適対策量を求め、上記最適対策量と上記現状の仕様との相違に基づいて上記記憶手段を参照して建物構成部材の遮音対策の仕様を選択する。このようにして、建物の室内に様々な伝搬経路を通して侵入する騒音のレベルが総合的に評価され、合成騒音レベルが目標騒音レベルを下回らないように、建物構成部材の遮音対策の仕様が自動的に選択される。したがって、遮音に関する全体の設計を一括して行う場合に、過剰対策になるのを避けることができる。この結果、建物構成部材のコストが最適化される。
【0009】
請求項2に記載の遮音構造設計装置は、請求項1に記載の遮音構造設計装置において、 上記目標騒音レベルは、複数の基準周波数についてそれぞれ上下限の範囲を表す要求性能レベルによって定められ、
上記選択手段は、上記合成騒音レベルが上記複数の基準周波数の全てについて上記要求性能レベルの下限値を下回っていると判断したとき、上記合成騒音レベルが上記目標騒音レベルを下回ったと判断し、上記複数の伝搬経路のうち騒音レベルが上記目標騒音レベルを下回った伝搬経路について、その伝搬経路上に存在する建物構成部材の遮音対策の仕様を下げることを特徴とする。
【0010】
この請求項2の遮音構造設計装置では、上記選択手段は、上記合成騒音レベルが上記複数の基準周波数の全てについて上記要求性能レベルの下限値を下回っていると判断したとき、上記合成騒音レベルが上記目標騒音レベルを下回ったと判断し、上記複数の伝搬経路のうち騒音レベルが上記目標騒音レベルを下回った伝搬経路について、その伝搬経路上に存在する建物構成部材の遮音対策の仕様を下げる。したがって、その仕様変更により過剰対策になるのが効果的に避けられる。
【0011】
請求項3に記載の遮音構造設計装置は、請求項1に記載の遮音構造設計装置において、上記伝搬経路は固体伝搬経路と空気伝搬経路を含むことを特徴とする。
【0012】
この請求項3の遮音構造設計装置では、上記伝搬経路は固体伝搬経路と空気伝搬経路を含むので、上記算出手段によって得られる合成騒音レベルの精度が高まる。
【0013】
請求項4に記載の遮音構造設計装置は、請求項1に記載の遮音構造設計装置において、上記目標騒音レベルは複数の基準周波数について定められ、上記算出手段は上記合成騒音レベルを上記各基準周波数について算出し、上記選択手段は、上記いずれかの基準周波数で上記合成騒音レベルが目標騒音レベルを下回らないように、建物構成部材の遮音対策の仕様を選択することを特徴とする。
【0014】
この請求項4の遮音構造設計装置では、上記目標騒音レベルは複数の基準周波数について定められている。これに応じて、上記算出手段は上記合成騒音レベルを上記各基準周波数について算出する。また、上記選択手段は、上記いずれかの基準周波数で上記合成騒音レベルが目標騒音レベルを下回らないように、建物構成部材の遮音対策の仕様を選択する。したがって、遮音に関する設計精度が高まる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0016】
図1は一実施形態の遮音構造設計装置の概略ブロック構成を示している。この遮音構造設計装置は、算出手段および選択手段として働くCPU(中央演算処理装置)を搭載したパーソナルコンピュータ11と、入力手段としての図示しないキーボードと、MO(光磁気)ディスクドライブ12と、予測計算用音源データベース13と、記憶手段としての仕様・対策データベース14とを備えている。パーソナルコンピュータ11は、MOディスクドライブ12にセットされたMOディスクから予測計算用プログラムを読み込んで、後述する遮音構造設計処理(図2〜図5)を行うようになっている。予測計算用音源データベース13には、騒音源や振動源の種類と、それらが発生する騒音・振動の周波数特性(基準周波数である1/1オクターブバンド中心周波数31.5、63、125、250、500、1k、2k、4k(Hz)での音圧レベルおよび振動レベル)とが対応づけて記憶されている。また、仕様・対策データベース14には、様々な建物構成部材について、それぞれ遮音対策の候補となる仕様が複数記憶されている。すなわち、この仕様・対策データベース14には、内装材の吸音率データベースAと、部材の音響透過損失データベースBと、配管支持部による振動低減レベルデータベースCと、防振材の振動低減レベルデータベースDと、内装材の音響放射係数(振動から音への変換係数)データベースEとを備えている。各データベースA〜Eには、それらの候補仕様についてのコストデータも付加されている。
【0017】
これらのデータベースA〜Eの具体的な中身を図8(a)〜(e)に抜粋して例示している。図8(a)に示すように、内装材の吸音率データベースAには、1/1オクターブバンド中心周波数63、125、250、500、1k、2k(Hz)での木毛セメント板12tの吸音率、グラスウール24k−25mmの吸音率等がそれぞれ格納されている(ここで、吸音率とは材料に入射する音をすべて吸収することを1としたときの音を吸収する割合(無次元)を意味している。)。また、コストデータとしてそれらの部材の1m2当たりの単価も格納されている。図8(b)に示すように、部材の音響透過損失データベースBには、1/1オクターブバンド中心周波数125、250、500、1k、2k、4k(Hz)でのPB21*2+GW+PB21*2(一般的に用いられる耐火遮音2重壁の構造であって、厚さ21mmの2枚の石こうボードと、グラスウールと、厚さ21mmの2枚の石こうボードとからなるもの)の透過損失、FGB12乾式遮音間仕切り(高性能遮音壁の建設大臣遮音認定を取得している壁構造)の透過損失等がそれぞれデシベル(dB)単位で格納されている。また、コストデータとしてそれらの仕様の1m2当たりの単価も格納されている。図8(c)に示すように、配管支持部による振動低減レベルデータベースCには、1/1オクターブバンド中心周波数31.5、63、125、250、500、1k(Hz)でのスタイロフォームの振動低減レベル、ゴム押さえの振動低減レベル等がそれぞれデシベル(dB)単位で格納されている。また、コストデータとしてそれらの部材の1本当たりの単価も格納されている。図8(d)に示すように、防振材の振動低減レベルデータベースDには、1/1オクターブバンド中心周波数31.5、63、125、250、500、1k(Hz)でのコイルばねの振動低減レベル、湿式浮き床(GW50mm)の振動低減レベル等がそれぞれデシベル(dB)単位で格納されている。また、コストデータとしてコイルばねの1個当たりの単価、湿式浮き床の1m2当たりの単価も格納されている。図8(e)に示すように、内装材の音響放射係数データベースEには、1/1オクターブバンド中心周波数63、125、250、500、1k、2k(Hz)での石膏ボードの音響放射係数、珪酸カルシウム板の音響放射係数等がそれぞれデシベル(dB)単位に変換されて格納されている。また、コストデータとしてそれらの部材の1m2当たりの単価も格納されている。
【0018】
例えば内装材の吸音率データベースAを用いると、図9に示すような吸音効果(dB)が得られることが分かる。図9は、機械室110の平面寸法を5m×6m、天井高さを3mとして表面積を定めた場合に、天井を木毛セメント板としたときの吸音効果(dB)、天井をグラスウール32k−50mmとしたときの吸音効果(dB)をそれぞれグラフ(記号◇、□)で表している。なお、グラスウール、ロックウール、ボード類その他の内装材料の吸音率を用いて同様の吸音効果が得られる。
【0019】
また、配管支持部による振動低減レベルデータベースCを用いると、図10〜図12に示すような防振効果(dB)が得られることが分かる。図10は、図中(a),(b)に示すように配管107に硬質グラスウール112を巻き、その周りを壁106に固定された支持具111で把持した場合の、硬質グラスウール112による対策効果(dB)をグラフ(記号◇)で表している。図11は、図中(a),(b)に示すように配管107にゴムパット113を巻き、その周りを壁106に固定された支持具111で把持した場合の、ゴムパット113による対策効果(dB)をグラフ(記号□)で表している。図12は、図中(a),(b)に示すように配管107を直接支持具111で把持し、支持具111の根元と壁106との間にゴムパット114を設けた場合の、ゴムパット114による対策効果(dB)をグラフ(記号△)で表している。
【0020】
また、防振材の振動低減レベルデータベースDを用いると、図13〜図14に示すような防振効果(dB)が得られることが分かる。図13は、設備機器104と建物構造体(床)106との間に所定のばね定数を持つ防振材115を設けた場合の、防振材115による防振効果量(dB)をグラフ(記号△)で表している。この防振材115としてはコイルばね、丸形・角形ゴムなどを用いることができる。図14は、建物構造体106上に防振材116を介してコンクリート床117を設けて湿式浮き床を構成した場合の、防振材116による防振効果量(dB)をグラフ(記号□)で表している。この防振材116としてはグラスウール、ロックウール、丸形・角形ゴム、スタイロフォームなどを用いることができる。
【0021】
この遮音構造設計装置は、概略、図2に示すフローにしたがって次のような遮音構造設計処理を行う。
【0022】
まず、オペレータがキーボードを通して騒音源・振動源の種類を入力するとともに(図2のS1)、その騒音源・振動源が存在する音源・振源室(以下、単に「音源室」と呼ぶ。)の配置、寸法、部材仕様を入力する(S2)。次に、建物内の対象となる室(これを「受音室」と呼ぶ。)の配置、寸法、部材仕様を入力する(S3)。また、音源室から騒音および振動を伝える媒体の配置、寸法、部材仕様を入力する(S4)。さらに、受音室内における目標騒音レベルとしての要求性能レベルを入力する(S5)。なお、この要求性能レベルは、上限値と下限値で定められる幅(範囲)を有している(後述)。
【0023】
次に、この予測計算用プログラムでは、騒音源・振動源から受音室内に達する空気伝搬音および固体伝搬音の各伝搬経路をモデル化する(S6)。空気伝搬音の伝搬経路としては、騒音源・振動源から窓、ドア、柱、梁、配管等の建物構成部材を直接透過して受音室内に達する伝搬経路や、隣接室の窓、ドア等から戸外や廊下を経由して廻り込む伝搬経路がある。また、固体伝搬音の伝搬経路としては、騒音源・振動源から建物内の配管を伝達して受音室内に達する伝搬経路や、騒音源・振動源から建物の壁を伝達して受音室内に達する伝搬経路がある。次に、そのような様々な伝搬経路を通して受音室内に侵入する各空気伝搬音、各固体伝搬音の騒音レベル(音圧レベル)をそれぞれ計算する(S7)。そして、求めた騒音レベルを合成して合成騒音レベルを算出する(S8)。このように、様々な伝搬経路を通して受音室内に侵入する各空気伝搬音、各固体伝搬音の音圧レベルを合成するので、上記合成騒音レベルの精度を高めることができる。
【0024】
この後、合成騒音レベルと要求性能レベルとの差に基づいて、遮音のための必要対策量または余剰対策量を算出し(S9)、それに応じて建物構成部材の遮音対策の仕様を選択する(S10)。最後に対策の妥当性を判定して処理を終了する(S11)。
【0025】
詳しくは、上述のステップS5における要求性能レベルは、JIS(日本工業規格)、ISO(国際標準化機構)、日本建築学会などが規定している性能曲線(等級)を用いて設定される。すなわち、遮音性能が室間音圧レベル差で定義された場合、この予測計算用プログラムでは、図6(a)に示すように、1/1オクターブバンド中心周波数125、250、500、1k、2k、4k(Hz)について騒音・振動を減衰させる等級(例えばD−50)を設定して、音源室の音圧レベルを100dBと仮定したときその性能曲線(等級)によって定まる受音室の音圧レベル(この例では65、57.5、50、45、40、40(dB))を要求性能レベルの中心として設定する。そして、現場測定では等級に対する各値から2dB減ずることができるので、その受音室の音圧レベル+2dBを要求性能レベルの上限値とする。一方、等級は5dB間隔で定められていることから、その受音室の音圧レベル−3dBを要求性能レベルの下限値とする。上記各中心周波数について合成騒音レベルが要求性能レベルの範囲内に収まるように、建物構成部材の遮音対策の仕様を選択することによって、遮音に関する設計精度を高めることができる。なお、図6(b)に、要求性能レベルの中心(記号□)に対する上限値と下限値の範囲を実線で表している。
【0026】
上記性能曲線としては、室間遮音性能に関する遮音等級であるD曲線、床衝撃音レベルに関する遮音等級であるL曲線、建物の内部騒音に関する騒音等級であるN曲線、および室内騒音、会話や電話の聴取妨害に関する騒音等級であるNC曲線がある。したがって、D曲線は隣戸および上下階からの空気伝搬音の性能評価に適し、L曲線は上階からの床衝撃音(固体伝搬音の一種)の性能評価に適する。また、N曲線は配管および設備機器からの固体伝搬音、隣戸および上下階からの空気伝搬音、外部騒音(空気伝搬音)の性能評価に適する。さらに、NC曲線は配管および設備危機からの固体伝搬音、隣戸および上下階からの空気伝搬音の性能評価に適する。この予測計算用プログラムでは、これらの性能曲線を適宜選択して使用することができる。
【0027】
上述のステップS7における各空気伝搬音および各固体伝搬音の騒音レベルの算出は、それぞれの伝搬経路のモデルに応じて、例えば次のi)〜iv)に述べるような各式を利用して行われる。
【0028】
i)騒音源・振動源から窓、ドア、柱、梁、配管等の建物構成部材(界壁)を直接透過して受音室内に達する空気伝搬音について
・音源のパワーレベルをPWLo、音源室の全表面積をSo、音源室の吸音力をAoとし、
・界壁の透過損失をTL、界壁の面積をStとし、
・受音室の全表面積をSe、受音室の吸音力をAeとすると、
まず音源室の音圧レベルSPLoは、
SPLo=PWLo+10log10(4/Ao)
=PWLo+6−10log10(Ao) …(1)
と表される。そして、受音室の音圧レベルSPLeは、式(1)のSPLoを用いて、
SPLe=SPLo−TL+6+10log10(St/Ae)
=SPLo−TL+6+10log10(St)−10log10(Ae)
…(2)
と表される。なお、戸外に存在する騒音源・振動源からの空気伝搬音については、式(1)のSPLoとして戸外の騒音レベルを用いれば良く、式(2)だけで求められる。
【0029】
ii)隣接室の窓から戸外を経由して廻り込む空気伝搬音について
隣接室(音源室)の窓から戸外を経由し受音室の窓を透過して侵入する空気伝搬音は、次の式を利用して算出される(木村ほか、「側路伝搬音の影響に関する実験的検討(その3:バルコニー内での減衰量に関する検討)」、日本建築学会大会学術講演梗概集(九州)1998年9月)。
【0030】
隣接室(音源室)の窓に面するバルコニー上の空間1と受音室の窓に面するバルコニー上の空間2との間で、空間1から空間2へ直進する経路1と、空間1からバルコニーの手摺りを越えて一旦外へ出た後、再び外からバルコニーの手摺りを越えて空間2に廻り込む経路2とを仮定する。経路1による空間2での平均音圧レベルL2′は、
L2′=L1−TL+10log10(S12/A2) …(3)
と表される。ここで、L1は空間1における平均音圧レベル、S12は空間1と空間2との間の境界面の面積、A2は空間2の吸音力をそれぞれ表している。経路2による空間2での平均音圧レベルL2″を求めるためには、まず空間1内の平均音圧レベルL1を用いて手摺り上部開口の放射パワーレベルPWL1Bを算出する。
【0031】
PWL1B=L1−TL1B+10log10(S1B)−6 …(4)
ここで、TL1Bは開口部の透過損失(=0)、S1Bは開口部の面積をそれぞれ表している。次に、この式(4)のPWL1Bを用いて、空間2への入射パワーレベルPWL2Bを求める。
【0032】
PWL2B=PWL1B−ΔL …(5)
ここで、ΔLは回折減衰量を表している。次に、この式(5)のPWL2Bを用いて、空間2での平均音圧レベルL2″を求める。
【0033】
L2″=PWL2B+10log10(4/A2) …(6)
隣接室(音源室)の窓から戸外を経由し受音室の窓を透過して侵入する空気伝搬音の音圧レベルは、式(3)のL2′と式(6)のL2″を合成して算出される。
【0034】
iii)隣接室のドアから廊下を経由して廻り込む空気伝搬音について
隣接室(音源室)のドアから廊下を経由し受音室のドアを透過して侵入する空気伝搬音は、次の式を利用して算出される(稲留ほか、「側路伝搬音の影響に関する実験的検討(その5:ドアからの廻り込み音の検討)」、日本建築学会大会学術講演梗概集(九州)1998年9月)。
【0035】
まず隣接室(音源室)のドアに面する廊下上の空間1における音圧レベルSPL1は、
SPL1=SPLs−TLdoor+10log10(Sdoor/A1) …(7)
と表される。ここで、SPLsは音源室の平均音圧レベル(dB)、TLdoorはドア境界面の透過損失(dB)、Sdoorはドア面積(m2)、A1は空間1の等価吸音面積(m2)をそれぞれ表している。そして、受音室のドアに面する廊下上の空間2における音圧レベルSPL2は、式(7)のSPL1を用いて、
SPL2=SPL1−TLb+10log10(Sb/A2) …(8)
と表される。ここで、TLbは空間1と空間2との間の境界面の透過損失(dB)、Sbはその境界面の面積(m2)、A2は空間2の等価吸音面積(m2)をそれぞれ表している。
【0036】
このようにして、隣接室(音源室)のドアから廊下を経由し受音室のドアを透過して侵入する空気伝搬音の音圧レベルが算出される。
【0037】
iv)騒音源・振動源から建物内の壁や配管等を伝達して受音室内に達する固体伝搬音について
騒音源・振動源から建物内の壁や配管を伝達して受音室内に達する固体伝搬音は、次の式を利用して算出される(稲留、「交通振動による固体伝搬音予測手法の研究」、(株)奥村組技報No.197、1999年1月)。
【0038】
固体伝搬経路による受音室内の音圧レベルSPLを求めるためには、まず、騒音源・振動源の振動加速度レベルVALo(dB)を求める。
【0039】
VALo=F×ZACC …(9)
ここで、Fは設備機械の加振力、ZACCは設備機器が設置された床のアクセレランス(振動特性)をそれぞれ表している。次に、この式(9)のVALoを用いて、受音室内各部位の振動加速度レベルVALi(dB)を求める。
【0040】
VALi=VALo−10log10(ri/ro)−αf1/2(ri−ro)
+20log10(ZACCi/ZACC) …(10)
ここで、roは騒音源・振動源から基準点(任意の1m点)までの最短伝搬距離(m)、riは騒音源・振動源から音源室内各部位までの最短伝搬距離(m)、αは振動伝達媒体固有の係数(例えばRC造(鉄筋コンクリート造)ではα=0.03、S造(鉄骨造)ではα=0.005、配管ではα=0.001である。)、fは騒音・振動の周波数(Hz)、ZACCiは音源室のアクセレランス(振動特性)をそれぞれ表している。次に、この式(10)のVALiを用いて、受音室内の音圧レベルSPL(dB)を求める。
【0041】
SPL=VALi+10log10(S)+10log10(k)
−20log10(f)−10log10(A)+36 …(11)
ここで、Sは放射面積(m2)、10log10(k)は放射効率レベル(dB)、Aは受音室内の等価吸音面積(吸音力)をそれぞれ表している。
【0042】
このようにして、騒音源・振動源から建物内の壁や配管を伝達して受音室内に達する固体伝搬音の音圧レベルが算出される。
【0043】
上述のステップS9〜S11の処理は、詳しくは図3〜図5に示すフローにしたがって、次のようにして行われる。
【0044】
i)合成騒音レベルを一旦算出した後(図3のS21)、この合成騒音レベルと要求性能レベルとを比較して(S22)、1/1オクターブバンド中心周波数31.5、63、125、250、500、1k、2k、4k(Hz)においてそれぞれ合成騒音レベルが要求性能レベルの上限値を超えているか否かを判断する(S23)。なお、以下の処理は各中心周波数において行う。
【0045】
ii)合成騒音レベルが要求性能レベルの範囲内に収まっている(満足している)と判断したときは、この遮音構造設計処理を終了する。一方、合成騒音レベルがいずれかの周波数において要求性能レベルの上限値を超えているか、またはすべての周波数において要求性能レベルの下限値を下回っている(満足していない)と判断したときは、各伝搬経路毎に、遮音のための必要対策量を仮計算する(S24)。詳しくは、まずエネルギ合成したときに要求性能レベルを満足できるように、各伝搬経路が達成すべきレベルを表す仮分担レベルを、
(仮分担レベル)=(要求性能レベル)−10log10(伝搬経路数)
…(12)
により定める。続いて、各伝搬経路毎の必要対策量を、既述のステップS7で求めた各伝搬経路毎の音圧レベルと、この式(12)の仮分担レベルとを用いて、
(各伝搬経路毎の必要対策量)
=(各伝搬経路毎の音圧レベル)−(仮分担レベル) …(13)
として求める。
【0046】
iii)次に、式(13)により求めた必要対策量に基づいて、各伝搬経路が対策不足であるか否かを判定する(S25)。ここで、必要対策量がいずれかの周波数について正の値を示しているときは対策不足であり、必要対策量がすべての周波数について負の値を示しているときは過剰対策であると判断する。この判断は、対策不足である伝搬経路の数と、過剰対策である伝搬経路の数とをカウントしながら行う(S26,S27)。また同時に、過剰対策である伝搬経路については、現状仕様を下げることができるか否かを判断する(S28)。この判断は、仕様変更が可能な経路数と、仕様変更が不可能な経路数とをカウントしながら行う(S29,S30)。
【0047】
iv)次に、仕様変更が不可能な伝搬経路の存在を考慮した上で、対策可能(仕様変更可能)な伝搬経路が達成すべきレベルを表す最適分担レベルを求める(S31)。この最適分担レベルは、
(最適分担レベル)
=10log10{10^(要求性能レベル/10))
−10^(仕様変更不可能経路の音圧レベル/10)
−10log10(対策不足経路数+仕様変更可能経路数)}
…(14)
により定める。続いて、対策可能な伝搬経路について、各伝搬経路毎の最適対策量を、既述のステップS7で求めた各伝搬経路毎の音圧レベルと、この式(14)の最適分担レベルとを用いて、
(各伝搬経路毎の最適対策量)
=(各伝搬経路毎の音圧レベル)−(最適分担レベル) …(15)
として求める(図4のS32)。
【0048】
v)次に、対策可能な経路について、式(15)により求めた最適対策量と現状仕様の対策量とを加算し、その加算値に基づいて図1中に示した仕様・対策データベース14(図8に中身を例示)を検索して、上記加算値に最も近い対策仕様を選定する(S33)。詳しくは、この予測計算用プログラムでは、図7のテーブルに示すように、各伝搬経路毎に、検索すべきデータベースA〜Eが予め定められている。例えば、配管からの固体伝搬音については、配管支持部による振動低減レベルデータベースCと、内装材の音響放射係数データベースEとが検索される。設備機械からの固体伝搬音については、防振材の振動低減レベルデータベースDと、内装材の音響放射係数データベースEとが検索される。また、配管、ドア、窓、柱、梁などを透過する空気伝搬音については、内装材の吸音率データベースAと、部材の音響透過損失データベースBとが検索される。このように、各伝搬経路毎に、検索すべきデータベースA〜Eが予め定められているので検索効率を高めることができ、対策仕様の選定を短時間で完了することができる。
【0049】
また、上記加算値に近い対策仕様の候補が複数存在する場合は、コストデータベースを参照することによって、それらの候補の中で最も低コストであるような対策仕様を選択できる。
【0050】
vi)次に、そのような仕様変更後の伝搬経路を通して受音室内に侵入する各空気伝搬音、各固体伝搬音の騒音レベル(音圧レベル)をそれぞれ計算し、求めた騒音レベルを合成して合成騒音レベルを算出する(S34)。そして、この合成騒音レベルが要求性能レベルの範囲内に収まっているか否かを判断する(S35)。合成騒音レベルが要求性能レベルの範囲内に収まっていれば、この遮音構造設計処理を終了する。
【0051】
このように、建物の室内に様々な伝搬経路を通して侵入する騒音のレベルを総合的に評価し、合成騒音レベルが要求性能レベルの上限値を超えないように、建物構成部材の遮音対策の仕様を自動的に選択するので、遮音に関する全体の設計を短時間で一括して行うことができる。
【0052】
また、複数の伝搬経路のうち騒音レベルが要求性能レベルの上限値を超えた伝搬経路について、その伝搬経路上に存在する建物構成部材の遮音対策の仕様を高めるので、その仕様変更により上記合成騒音レベルを効果的に減少できる。
【0053】
vii)一方、合成騒音レベルが要求性能レベルの範囲内に収まっていなければ、過剰対策となっているか否か、すなわち合成騒音レベルがすべての中心周波数について要求性能レベルの下限値を下回っているか否かを判断する(S36)。合成騒音レベルがすべての中心周波数について要求性能レベルの下限値を下回っていると判断したときは、後述する過剰対策処理(図5)に進む。一方、過剰対策となっておらず、合成騒音レベルがいずれかの中心周波数について要求性能レベルの上限値を上回っていれば、依然として対策不足になっている。このような場合は、まず騒音・振動源の性能変更が可能であるか否かを判断して(S37)、可能であれば、要求性能レベルを満足し得るような騒音・振動源のレベルを算定する(S38)。そして、ステップS1へ戻って再び以降の処理を繰り返す。次に、音源室の配置を変更することが可能であるか否かを判断して(S39)、可能であれば、要求性能レベルを満足し得るような音源室と受音室との間の距離を算定する(S40)。そして、ステップS2へ戻って再び以降の処理を繰り返す。騒音・振動源の性能変更も音源室の配置も変更することができなければ、要求性能レベルを変更し、ステップS5へ戻って再び以降の処理を繰り返す。
【0054】
viii)過剰対策処理は、図5に示すフローにしたがって次のようにして行われる。まず各伝搬経路毎に余剰対策量を算出する(S51)。次に、過剰対策である伝搬経路について、現状仕様を下げることができるか否かを判断する(S52)。この判断は、仕様変更が可能な経路数と、仕様変更が不可能な経路数とをカウントしながら行う(S53,S54)。次に、仕様変更が不可能な伝搬経路の存在を考慮した上で、仕様変更可能な伝搬経路が達成すべきレベルを表す最適分担レベルを求める(S55)。この最適分担レベルは、
(最適分担レベル)
=10log10{10^(要求性能レベル/10))
−10^(仕様変更不可能経路の音圧レベル/10)
−10log10(仕様変更可能経路数)}
…(16)
により定める。続いて、仕様変更可能な伝搬経路について、各伝搬経路毎の最適対策量を、既述のステップS7で求めた各伝搬経路毎の音圧レベルと、この式(16)の最適分担レベルとを用いて、
(各伝搬経路毎の最適対策量)
=(各伝搬経路毎の音圧レベル)−(最適分担レベル) …(17)
として求める(S56)。
【0055】
次に、仕様変更可能な経路について、式(17)により求めた最適対策量と現状仕様の対策量とを加算し、その加算値に基づいて図1中に示した仕様・対策データベース14(図8に中身を例示)を検索して、上記加算値に最も近い対策仕様を選定する(S57)。
【0056】
次に、そのような仕様変更後の伝搬経路を通して受音室内に侵入する各空気伝搬音、各固体伝搬音の騒音レベル(音圧レベル)をそれぞれ計算し、求めた騒音レベルを合成して合成騒音レベルを算出する(S58)。そして、この遮音構造設計処理を終了する。
【0057】
このように、過剰対策となった場合は、合成騒音レベルが要求性能レベルの下限値を下回らないように、建物構成部材の遮音対策の仕様を自動的に選択するので、遮音に関する全体の設計を短時間で一括して行うことができる。
【0058】
また、複数の伝搬経路のうち騒音レベルが要求性能レベルの下限値を下回った伝搬経路について、その伝搬経路上に存在する建物構成部材の遮音対策の仕様を下げるので、その仕様変更により余剰対策量を効果的に減少できる。したがって、遮音対策のためのコストを最適化することができる。
【0059】
次に、図15〜図18を用いて、この予測計算プログラムにより建物構成部材の仕様を高める場合の数値計算例を説明する。
【0060】
図15(a)に示すように、要求性能レベルはN−40、すなわち1/1オクターブバンド中心周波数63、125、250、500、1k、2k、4k(Hz)について65、53、46、40、37、36、36(dB)と設定されているものとし、要求性能レベルの幅(ここでは下限値)は考えないものとする。また、図15(b)左欄に示すように、壁を透過する空気伝搬音の伝搬経路1と、窓を透過する空気伝搬音の伝搬経路2と、第1機械室からの固体伝搬音の伝搬経路3と、第2機械室からの固体伝搬音の伝搬経路(仕様変更不可能)4とが存在するものとし、図2中のステップS7により、各伝搬経路1〜4の音圧レベルが図15(b)右欄に示す数値(dB)として求められているものとする。なお、図17に、要求性能レベル(記号●)と各伝搬経路1〜4による音圧レベル(記号△、◇、□、○)との関係を図示している。
【0061】
この場合、図2中のステップS8(すなわち図3中のステップS21)により、合成騒音レベルが図15(c)右欄に示す数値(dB)として求められる。図16に示すように、中心周波数63、125、250(Hz)で合成騒音レベル(記号○)が要求性能レベル(記号●)を超えており、建物構成部材の仕様を高める対策が必要であることが分かる。
【0062】
合成したときに要求性能レベルを満足できるように、各伝搬経路が達成すべき仮分担レベルは、式(12)により、図15(d)右欄に示す数値(dB)として求められる。この結果、各伝搬経路1〜4の必要対策量は、式(13)により、図15(e)右欄に示す数値(dB)として求められる。
【0063】
続いて、仕様変更が不可能な伝搬経路の存在を考慮した上で、対策可能(仕様変更可能)な伝搬経路が達成すべき最適分担レベルが、式(14)により、図15(f)右欄に示す数値(dB)として求められる。この結果、仕様変更が不可能な各伝搬経路4を除外して、伝搬経路1〜3の最適対策量が、式(15)により、図15(g)右欄に示す数値(dB)として求められる。
【0064】
ここで、現状仕様の対策量は図15(h)右欄に示す数値(dB)であるものとする。対策可能な伝搬経路1〜3について、図15(g)右欄に示す最適対策量(dB)と図15(h)右欄に示す現状仕様の対策量(dB)との加算値は、図15(i)右欄に示す数値(dB)となる。この加算値(dB)に基づいて図1中に示した仕様・対策データベース14(図8に中身を例示)を検索して、上記加算値に最も近い対策仕様を選定する。
【0065】
これにより選定された対策仕様は、図15(j)右欄に示す数値(dB)であるものとする。そのような仕様変更後の伝搬経路1〜3と当初仕様と同様の伝搬経路4を通して受音室内に侵入する各空気伝搬音、各固体伝搬音の騒音レベル(音圧レベル)をそれぞれ計算すると、図15(k)右欄に示す数値(dB)となる。求めた騒音レベルを合成して対策後の合成騒音レベルを算出すると、図15(l)右欄に示す数値(dB)となる。図18に、要求性能レベル(記号●)と、当初の合成騒音レベル(記号○)と、対策後の合成騒音レベル(記号△)とを比較して図示している。この図18から、この対策後の合成騒音レベルが要求性能レベル(の上限値)を首尾良く下回ったことが分かる。
【0066】
【発明の効果】
以上より明らかなように、請求項1の遮音構造設計装置では、建物の室内に様々な伝搬経路を通して侵入する騒音のレベルを総合的に評価し、合成騒音レベルが目標騒音レベルを下回らないように、建物構成部材の遮音対策の仕様を自動的に選択するので、遮音に関する全体の設計を一括して行う場合に、過剰対策になるのを避けることができ、したがって建物構成部材のコストを最適化できる。
【0067】
請求項2に記載の遮音構造設計装置では、上記合成騒音レベルが目標騒音レベルを下回ったとき、上記複数の伝搬経路のうち騒音レベルが上記目標騒音レベルを下回った伝搬経路について、その伝搬経路上に存在する建物構成部材の遮音対策の仕様を下げるので、その仕様変更により過剰対策になるのを効果的に避けることができる。
【0068】
請求項3に記載の遮音構造設計装置では、上記伝搬経路は固体伝搬経路と空気伝搬経路を含むので、上記合成騒音レベルの精度が高まる。
【0069】
請求項4に記載の遮音構造設計装置では、複数定められた各基準周波数について上記合成騒音レベルを算出し、上記各基準周波数で上記合成騒音レベルが目標騒音レベルを下回らないように、建物構成部材の遮音対策の仕様を選択するので、遮音に関する設計精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態の遮音構造設計装置の概略ブロック構成を示す図である。
【図2】 上記遮音構造設計装置の概略動作フローを示す図である。
【図3】 図2におけるステップS9〜S11の処理を詳細に示す図である。
【図4】 図2におけるステップS9〜S11の処理を詳細に示す図である。
【図5】 図2におけるステップS9〜S11の処理のうち過剰対策処理を詳細に示す図である。
【図6】 要求性能レベルを例示する図である。
【図7】 各伝搬経路毎に、その伝搬経路について検索すべき対策データベースを関係づけるテーブルを示す図である。
【図8】 仕様・対策データベースの中身を抜粋して例示する図である。
【図9】 内装材の対策例とその対策の効果を示す図である。
【図10】 配管支持部の対策例とその対策の効果を示す図である。
【図11】 配管支持部の対策例とその対策の効果を示す図である。
【図12】 配管支持部の対策例とその対策の効果を示す図である。
【図13】 防振材の対策例とその対策の効果を示す図である。
【図14】 防振材の対策例とその対策の効果を示す図である。
【図15】 上記遮音構造設計装置により建物構成部材の仕様を高める場合の数値計算例を示す図である。
【図16】 図15の数値計算例における要求性能レベルと最初に算出された合成騒音レベルとを比較して示す図である。
【図17】 図15の数値計算例における要求性能レベルと各伝搬経路を通して侵入する騒音レベルとを比較して示す図である。
【図18】 図15の数値計算例における要求性能レベル、最初に算出された合成騒音レベルおよび対策後の合成騒音レベルを比較して示す図である。
【図19】 建物の室内に侵入する騒音の様々な伝搬経路を例示する図である。
【符号の説明】
11 パーソナルコンピュータ
12 MOディスクドライブ
13 予測計算用音源データベース
14 仕様・対策データベース
Claims (4)
- 建物の室内に侵入する騒音のレベルを評価して建物構成部材の遮音対策の仕様を選択する遮音構造設計装置であって、
建物構成部材の遮音対策の候補となる仕様を複数記憶する記憶手段と、
上記建物内の対象とする室の位置、騒音源の種類および位置、上記騒音源からの騒音が上記室内に達する複数の伝搬経路に関するデータを入力するための入力手段と、
上記入力手段を通して入力されたデータに基づいて、上記騒音源から各伝搬経路を通して上記室内に侵入する騒音レベルをそれぞれ求め、求めた騒音レベルを合成して合成騒音レベルを算出する算出手段と、
上記合成騒音レベルが目標騒音レベルを下回る場合は、上記目標騒音レベルと上記各伝搬経路の音圧レベルとの間の相違に基づいて上記各伝搬経路における現状の仕様を下げることが可能か否かを判断し、現状の仕様を下げることが可能な伝搬経路が存在するとき、上記目標騒音レベルと上記合成騒音レベルとの間の相違を仕様変更が可能な伝搬経路毎に割り当てて上記仕様変更が可能な伝搬経路が達成すべきレベルを表す最適分担レベルを求め、さらに上記最適分担レベルと上記各伝搬経路の上記音圧レベルとの相違を表す最適対策量を求め、上記最適対策量と上記現状の仕様との相違に基づいて上記記憶手段を参照して建物構成部材の遮音対策の仕様を選択する選択手段を備えたことを特徴とする遮音構造設計装置。 - 請求項1に記載の遮音構造設計装置において、
上記目標騒音レベルは、複数の基準周波数についてそれぞれ上下限の範囲を表す要求性能レベルによって定められ、
上記選択手段は、上記合成騒音レベルが上記複数の基準周波数の全てについて上記要求性能レベルの下限値を下回っていると判断したとき、上記合成騒音レベルが上記目標騒音レベルを下回ったと判断し、上記複数の伝搬経路のうち騒音レベルが上記目標騒音レベルを下回った伝搬経路について、その伝搬経路上に存在する建物構成部材の遮音対策の仕様を下げることを特徴とする遮音構造設計装置。 - 請求項1に記載の遮音構造設計装置において、
上記伝搬経路は固体伝搬経路と空気伝搬経路を含むことを特徴とする遮音構造設計装置。 - 請求項1に記載の遮音構造設計装置において、
上記目標騒音レベルは複数の基準周波数について定められ、
上記算出手段は上記合成騒音レベルを上記各基準周波数について算出し、
上記選択手段は、上記いずれかの基準周波数で上記合成騒音レベルが目標騒音レベルを下回らないように、建物構成部材の遮音対策の仕様を選択することを特徴とする遮音構造設計装置。
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-
1999
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