本発明の光学フィルム、散乱−二色性吸収複合型偏光子と、反射偏光子とが積層されている。
まず本発明の散乱−二色性吸収複合型偏光子を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の吸収複合型偏光子の概念上面図であり、二色性吸収材料2を含有する透光性樹脂1によりフィルムが形成されており、当該フィルムをマトリクスとして、微小領域3が分散された構造を有する。このように本発明の吸収複合型偏光子は、二色性吸収材料2が、マトリクスであるフィルムを形成する透光性熱可塑性樹脂1中により存在するが、二色性吸収材料2は、微小領域3にも光学的に影響を及ぼさない程度に存在させることもできる。
図1は、微小領域3と、透光性樹脂1との屈折率差が最大値を示す軸方向(△n1 方向)に、二色性吸収材料2が配向している場合の例である。微小領域3では、△n1 方向の偏光成分は散乱している。図1では、フィルム面内の一方向にある△n1 方向は吸収軸となっている。フィルム面内において△n1 方向に直交する△n2 方向は透過軸となっている。なお、△n1 方向に直交するもう一つの△n2 方向は厚み方向である。
透光性樹脂1は、可視光領域において透光性を有し、二色性吸収材料を分散吸着するものを特に制限なく使用できる。透光性樹脂1としては、透光性の水溶性樹脂があげられる。たとえば、従来より偏光子に用いられているポリビニルアルコールまたはその誘導体があげられる。ポリビニルアルコールの誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等があげられる他、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸そのアルキルエステル、アクリルアミド等で変性したものがあげられる。また透光性樹脂1としては、例えばポリビニルピロリドン系樹脂、アミロース系樹脂等があげられる。前記透光性樹脂1は、成形歪み等による配向複屈折を生じにくい等方性を有するものでもよく、配向複屈折を生じやすい異方性を有するものでもよい。
また透光性樹脂1としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系樹脂等があげられる。さらには、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂、、イミド系樹脂、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ビニルブチラール系樹脂、アリレート系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂等があげられる。これらは1種または2種以上を組み合わせることができる。また、フェノール系、メラミン系、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型または紫外線硬化型の樹脂の硬化物を用いることもできる。
微小領域3を形成する材料は、等方性か複屈折を有するかは特に限定されるものではないが、複屈折材料が好ましい。また複屈折材料は、少なくとも配向処理時点で液晶性を示すもの(以下、液晶性材料という)が好ましく用いられる。すなわち、液晶性材料は、配向処理時点で液晶性を示していれば、形成された微小領域3においては液晶性を示していてもよく、液晶性を喪失していてもよい。
微小領域3を形成する材料は複屈折材料(液晶性材料)は、ネマチック液晶性、スメクチック液晶性、コレステリック液晶性のいずれでもく、またリオトロピック液晶性のものでもよい。また、複屈折材料は、液晶性熱可塑樹脂でもよく、液晶性単量体の重合により形成されていてもよい。液晶性材料が液晶性熱可塑樹脂の場合には、最終的に得られる構造体の耐熱性の観点から、ガラス転移温度の高いものが好ましい。少なくとも室温ではガラス状態であるものを用いるのが好ましい。液晶性熱可塑性樹脂は、通常、加熱により配向し、冷却して固定させて、液晶性を維持したまま微小領域3を形成する。液晶性単量体は配合後に、重合、架橋等により固定した状態で微小領域3を形成させることができるが、形成した微小領域3では液晶性が喪失されてしまうものがある。
前記液晶性熱可塑性樹脂としては、主鎖型、側鎖型またはこれらの複合型の各種骨格のポリマーを特に制限なく使用できる。主鎖型の液晶ポリマーとしては、芳香族単位等からなるメソゲン基を結合した構造を有する縮合系のポリマー、たとえば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリエステルイミド系などのポリマーがあげられる。メソゲン基となる前記芳香族単位としては、フェニル系、ビフェニル系、ナフタレン系のものがあげられ、これら芳香族単位は、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。
側鎖型の液晶ポリマーとしては、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリ−α−ハロ−アクリレート系、ポリ−α−ハロ−シアノアクリレート系、ポリアクリルアミド系、ポリシロキサン系、ポリマロネート系の主鎖を骨格とし、側鎖に環状単位等からなるメソゲン基を有するものがあげられる。メソゲン基となる前記環状単位としては、たとえば、ビフェニル系、フェニルベンゾエート系、フェニルシクロヘキサン系、アゾキシベンゼン系、アゾメチン系、アゾベンゼン系、フェニルピリミジン系、ジフェニルアセチレン系、ジフェニルベンゾエート系、ビシクロへキサン系、シクロヘキシルベンゼン系、ターフェニル系等があげられる。なお、これら環状単位の末端は、たとえば、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲン基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、ハロアルケニル基等の置換基を有していてもよい。またメソゲン基のフェニル基は、ハロゲン基を有するものを用いることができる。
また、いずれの液晶ポリマーのメソゲン基も屈曲性を付与するスペーサ部を介して結合していてもよい。スペーサー部としては、ポリメチレン鎖、ポリオキシメチレン鎖等があげられる。スペーサー部を形成する構造単位の繰り返し数は、メソゲン部の化学構造により適宜に決定されるがポリメチレン鎖の繰り返し単位は0〜20、好ましくは2〜12、ポリオキシメチレン鎖の繰り返し単位は0〜10、好ましくは1〜3である。
前記液晶性熱可塑樹脂は、ガラス転移温度50℃以上、さらには80℃以上であることが好ましい。また、重量平均分子量が2千〜10万程度のものが好ましい。
液晶性単量体としては、末端にアクリロイル基、メタクリロイル基等の重合性官能基を有し、これに前記環状単位等からなるメソゲン基、スペーサ部を有するものがあげられる。また重合性官能基として、アクリロイル基、メタアクリロイル基等を2つ以上有するものを用いて架橋構造を導入して耐久性を向上させることもできる。
微小領域3を形成する材料は、前記液晶性材料に全てが限定されるものではなく、マトリクス材料と異なる素材であれば、非液晶性の樹脂を用いることができる。樹脂としては、ポリビニルアルコールとその誘導体、ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリエチレンテレフタレート、アクリルスチレン共重合体などがあげられる。また微小領域3を形成する材料としては、複屈折を持たない粒子などを用いることができる。当該微粒子としては、たとえば、ポリアクリレート、アクリルスチレン共重合体などの樹脂があげられる。微粒子のサイズは特に制限されないが、0.05〜500μm、好ましくは0.5〜100μmの粒子径のものが用いられる。微小領域3を形成する材料は、前記液晶性材料が好ましいが、前記液晶性材料には非液晶性材料を混入して用いることができる。さらには微小領域3を形成する材料にて、非液晶性材料を単独で使用することもできる。
二色性吸収材料2としては、ヨウ素系吸光体、吸収二色性染料や顔料があげられる。特に、マトリクス材料である透光性樹脂1としてポリビニルアルコール等の透光性の水溶性樹脂を用いる場合には、ヨウ素系吸光体が高偏光度、高透過率の点から好ましい。
ヨウ素系吸光体は、ヨウ素からなる、可視光を吸収する種のことを意味し、一般には、透光性の水溶性樹脂(特にポリビニルアルコール系樹脂)とポリヨウ素イオン(I3 - ,I5 - 等)との相互作用によって生じると考えられている。ヨウ素系吸光体はヨウ素錯体ともいわれる。ポリヨウ素イオンは、ヨウ素とヨウ化物イオンから生成させると考えられている。
ヨウ素系吸収体は、少なくとも400〜700nmの波長帯域に吸収領域を有するものが好適に用いられる。
吸収二色性染料としては、耐熱性を有し、複屈折材料の前記液晶性材料を加熱して配向させる場合にも、分解や変質により二色性を喪失しないものが好ましく用いられる。前記の通り、吸収二色性染料は、可視光波長領域に二色比3以上の吸収帯を少なくとも1箇所以上有する染料であることが好ましい。二色比を評価する尺度としては、たとえば、染料を溶解させた適当な液晶材料を用いてホモジニアス配向の液晶セルを作成し、そのセルを用いて測定した偏光吸収スペクトルにおける吸収極大波長での吸収二色比が用いられる。当該評価法において、例えば標準液晶としてメルク社製のE−7を使用した場合には、用いる染料としては、吸収波長での二色比の目安値は3以上、好ましくは6以上、さらに好ましくは9以上である。
かかる高二色比を有する染料としては、染料系偏光子に好ましく用いられているアゾ系、ペリレン系、アントラキノン系の染料があげられる、これら染料は混合系染料などがとして用いることができる。これら染料は、例えば、特開昭54−76171号公報等に詳しい。
なお、カラー偏光子を形成する場合には、その特性に見合った吸収波長を有する染料を用いることができる。また、ニュートラルグレーの偏光子を形成する場合には、可視光全域に吸収が起こるように、二種類以上の染料を適宜混合して用いる。
本発明の散乱−二色性吸収複合型偏光子は、二色性吸収材料2を含有する透光性樹脂1によりマトリクスを形成したフィルムを作製するとともに、当該マトリクス中に、微小領域3(たとえば、液晶性材料により形成された、配向された複屈折材料)を分散させる。また、フィルム中において、前記△n1 方向の屈折率差(△n1 )、△n2 方向の屈折率差(△n2 )が前記範囲になるように制御する。
かかる本発明の吸収複合型偏光子の製造工程は、特に制限されないが、たとえば、
(1)マトリクスとなる透光性樹脂に、微小領域となる材料(以下、微小領域となる材料として液晶性材料を用いた場合を代表例として説明する。他の材料の場合も液晶性材料に準ずる。)が分散された混合溶液を製造する工程、
(2)前記(1)の混合溶液をフィルム化する工程、
(3)前記(2)で得られたフィルムを配向(延伸)する工程、
(4)前記マトリクスとなる透光性樹脂に、二色性吸収材料を分散させる(染色する)工程、
を施すことにより得られる。なお、工程(1)乃至(4)の順序は適宜に決定できる。
前記工程(1)では、まず、マトリクスを形成する透光性樹脂に、微小領域となる液晶性材料を分散した混合溶液を調製する。当該混合溶液の調製法は、特に制限されないが、前記マトリクス成分(透光性樹脂)と液晶性材料の相分離現象を利用する方法があげられる。たとえば、液晶性材料としてマトリクス成分とは相溶しにくい材料を選択し、マトリクス成分の水溶液に液晶性材料を形成する材料の溶液を界面活性剤などの分散剤を介して分散させる方法などあげられる。前記混合溶液の調製において、マトリクスを形成する透光性材料と微小領域となる液晶材料の組み合わせによっては分散剤を入れなくてもよい。マトリクス中に分散させる液晶性材料の使用量は、特に制限されないが、透光性樹脂100重量部に対して、液晶性材料を0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。液晶性材料は溶媒に溶解し、または溶解することなく用いられる。溶媒としては、たとえば、水、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル等があげられる。マトリクス成分の溶媒と、液晶性材料の溶媒とは同一でもよく異種でもよい。
前記工程(2)において、フィルム形成後の乾燥工程で発泡を低減させるためには、工程(1)における混合溶液の調製において、微小領域を形成する液晶性材料を溶解するための溶媒を用いない方が好ましい。たとえば、溶媒を用いない場合には、マトリクスを形成する透光性材料の水溶液に液晶性材料を直接添加し、液晶性材料をより小さく均一に分散させるために液晶温度範囲以上で加熱し分散させる方法等などがあげられる。
なお、マトリクス成分の溶液、液晶性材料の溶液、または混合溶液中には、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、難燃剤、酸化防止剤、可塑剤、離型剤、滑剤、着色剤等の各種の添加剤を本発明の目的を阻害しない範囲で含有させることができる。
前記混合溶液をフィルム化する工程(2)では、前記混合溶液を加熱乾燥し、溶媒を除去することにより、マトリクス中に微小領域が分散されたフィルムを作製する。フィルムの形成方法としては、キャスティング法、押出成形法、射出成形法、ロール成形法、流延成形法などの各種の方法を採用できる。フィルム成形にあたっては、フィルム中の微小領域のサイズが、最終的に△n2 方向が0.05〜500μmになるように制御する。混合溶液の粘度、混合溶液の溶媒の選択、組み合わせ、分散剤、混合溶媒の熱プロセス(冷却速度)、乾燥速度を調整することにより、微小領域の大きさや分散性を制御することができる。たとえば、マトリクスを形成する高せん断力のかかるような高粘度の透光性樹脂と微小領域となる液晶性材料の混合溶液を液晶温度範囲以上に加熱しながらホモミキサー等の撹拌機により分散させることによって微小領域を、より小さく分散させることができる。
前記フィルムを配向する工程(3)は、フィルムを延伸することにより行うことができる。延伸は、一軸延伸、二軸延伸、斜め延伸などがあげられるが、通常、一軸延伸を行う。延伸方法は、空気中での乾式延伸、水系浴中での湿式延伸のいずれでもよい。湿式延伸延を採用する場合には、水系浴中に、適宜に添加剤(ホウ酸等のホウ素化合物,二色性吸収材料2としてヨウ素を用いる場合にはアルカリ金属のヨウ化物等)を含有させることができる。延伸倍率は特に制限されないが、通常、2〜10倍程度とするのが好ましい。
かかる延伸により、二色性吸収材料を延伸軸方向に配向させることができる。また、微小領域において複屈折材料となる液晶性材料は、上記延伸により微小領域中で延伸方向に配向され複屈折を発現させる。
微小領域は延伸に応じて変形することが望ましい。微小領域が非液晶性材料の場合は延伸温度が樹脂のガラス転移温度付近、微小領域が液晶性材料の場合は延伸時の温度で液晶性材料がネマチック相またはスメクチック相等の液晶状態または等方相状態になる温度を選択するのが望ましい。延伸時点で配向が不十分な場合には、別途、加熱配向処理などの工程を加えてもよい。
液晶性材料の配向には上記延伸に加え、電場や磁場などの外場を用いてもよい。また液晶性材料にアゾベンゼンなどの光反応性物質を混合したり、液晶性材料にシンナモイル基等の光反応性基を導入したものを用い、これを光照射などの配向処理によって配向させてもよい。さらには延伸処理と以上に述べた配向処理を併用することもできる。液晶性材料が、液晶性熱可塑樹脂の場合には、延伸時に配向させた後、室温に冷却させることにより配向が固定化され安定化される。液晶性単量体は、配向していれば目的の光学特性が発揮されるため、必ずしも硬化している必要はない。だたし、液晶性単量体で等方転移温度が低いものは、少し温度がかかることにより等方状態になってしまう。こうなると異方散乱でなくなって、逆に偏光性能が悪くなくので、このような場合には硬化させるのが好ましい。また液晶性単量体には室温で放置すると結晶化するものが多くあり、こうなると異方散乱でなくなって、逆に偏光性能が悪くなくので、このような場合にも硬化させるのが好ましい。かかる観点からすれば、配向状態をどのような条件下においても安定に存在させるためには、液晶性単量体を硬化することが好ましい。液晶性単量体の硬化は、たとえば、光重合開始剤と混合してマトリクス成分の溶液中に分散し、配向後、いずれかのタイミング(二色性吸収材料による染色前、染色後)において紫外線等を照射して硬化し、配向を安定化させる。望ましくは、二色性吸収材料による染色前である。
前記マトリクスとなる透光性樹脂に、二色性吸収材料を分散させる工程(4)は、一般には、二色性吸収材料を溶解させた水系浴に前記フィルムを浸漬する方法があげられる。浸漬させるタイミングとしては、前記延伸工程(3)の前でも後でもよい。二色性吸収材料としてヨウ素を用いる場合には、ヨウ化カリウム等のアルカリ金属のヨウ化物等の助剤を前記水系浴中含有させるのが好ましい。前述したように、マトリクス中に分散されたヨウ素とマトリクス樹脂との相互作用により二色性吸収材料が形成される。なお、ヨウ素系吸光体は、一般に延伸工程を経ることによって著しく形成される。ヨウ素を含有する水系浴の濃度、アルカリ金属のヨウ化物などの助剤の割合は特に制限されず、一般的なヨウ素染色法を採用でき、前記濃度等は任意に変更することができる。
二色性吸収材料としてヨウ素を用いる場合、得られる偏光子中におけるヨウ素の割合は特に制限されないが、透光性樹脂とヨウ素の割合が、透光性樹脂100重量部に対して、ヨウ素が0.05〜50重量部程度、さらには0.1〜10重量部となるように制御するのが好ましい。
二色性吸収材料として吸収二色性染料を用いる場合、得られる偏光子中における吸収二色性染料の割合は特に制限されないが、透光性熱可塑性樹脂と吸収二色性染料の割合が、透光性熱可塑性樹脂100重量部に対して、吸収二色性染料が0.01〜100重量部程度、さらには0.05〜50重量部となるように制御するのが好ましい。
吸収複合型偏光子の作製にあたっては、前記工程(1)乃至(4)の他に、様々な目的のための工程(5)を施すことができる。工程(5)としては、たとえば、主にフィルムのヨウ素染色効率を向上させる目的として、水浴にフィルムを浸漬して膨潤させる工程があげられる。また、任意の添加物を溶解させた水浴に浸漬する工程等があげられる。主に水溶性樹脂(マトリクス)に架橋を施す目的のため、ホウ酸、ホウ砂などの添加剤を含有する水溶液にフィルムを浸漬する工程があげられる。なお、二色性吸収材料としてヨウ素を用いる場合には、主に、分散した二色性吸収材料の量バランスを調節し、色相を調節することを目的として、アルカリ金属のヨウ化物などの添加剤を含有する水溶液にフィルムを浸漬する工程があげられる。
前記フィルムを配向(延伸)延伸する工程(3)、マトリクス樹脂に二色性吸収材料を分散染色する工程(4)および上記工程(5)は、工程(3)、(4)が少なくとも1回ずつあれば、工程の回数、順序、条件(浴温度や浸漬時間など)は任意に選択でき、各工程は別々に行ってもよく、複数の工程を同時に行ってもよい。例えば、工程(5)の架橋工程と延伸工程(3)を同時に行ってもよい。
また、染色に用いる二色性吸収材料や、架橋に用いるホウ酸などは、上記のようにフィルムを水溶液への浸漬させることによって、フィルム中へ浸透させる方法の代わりに、工程(1)において混合溶液を調製前または調製後で、工程(2)のフィルム化前に任意の種類、量を添加する方法を採用することもできる。また両方法を併用してもよい。ただし、工程(3)において、延伸時等に高温(例えば80℃以上)にする必要がある場合であって、二色性吸収材料が該温度で劣化してしまう場合には、二色性吸収材料を分散染色する工程(4)は工程(3)の後にするのが望ましい。
以上の処理をしたフィルムは、適当な条件で乾燥されることが望ましい。乾燥は常法に従って行われる。
得られた偏光子(フィルム)の厚さは特に制限されないが、通常、1μmから3mm、好ましくは5μmから1mm、さらに好ましくは10〜500μmである。
このようにして得られた偏光子は、通常、延伸方向において、微小領域を形成する複屈折材料の屈折率とマトリクス樹脂の屈折率の大小関係は特になく、延伸方向が△n1 方向になっている。延伸軸と直交する二つの垂直方向は△n2 方向となっている。また、二色性吸収材料は延伸方向が、最大吸収を示す方向になっており、吸収+散乱の効果が最大限発現された偏光子になっている。
得られた偏光子は、常法に従って、その少なくとも片面に、前記透光性層として透明保護層を設けた偏光板とすることができる。透明保護層はポリマーによる塗布層として、またはフィルムのラミネート層等として設ることができる。透明保護層を形成する、透明ポリマーまたはフィルム材料としては、適宜な透明材料を用いうるが、透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮断性などに優れるものが好ましく用いられる。前記透明保護層を形成する材料としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、二酢酸セルロースや三酢酸セルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、あるいは前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護層を形成するポリマーの例としてあげられる。
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、たとえば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。
偏光特性や耐久性などの点より、特に好ましく用いることができる透明保護層は、表面をアルカリなどでケン化処理したトリアセチルセルロースフィルムである。透明保護層の厚さは、任意であるが一般には偏光板の薄型化などを目的に500μm以下、さらには1〜300μm、特に5〜300μmが好ましい。なお、偏光子の両側に透明保護層を設ける場合は、その表裏で異なるポリマー等からなる保護フィルムを用いることができる。
また、保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。したがって、Rth=[(nx+ny)/2−nz]・d(ただし、nx、nyはフィルム平面内の主屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルム厚みである)で表されるフィルム厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
前記保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護層とは別体のものとして設けることもできる。
前記偏光子と保護フィルムとの接着処理には、接着剤が用いられる。接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。前記接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5〜60重量%の固形分を含有してなる。
前記保護フィルムと偏光子とは、前記接着剤を用いて貼り合わせる。接着剤の塗布は、保護フィルム、偏光子のいずれに行ってもよく、両者に行ってもよい。貼り合わせ後には、乾燥工程を施し、塗布乾燥層からなる接着層を形成する。偏光子と保護フィルムの貼り合わせは、ロールラミネーター等により行うことができる。接着層の厚さは、特に制限されないが、通常0.1〜5μm程度である。
本発明の光学フィルムは、上記吸収複合型偏光子(吸収複合型偏光子は前記保護フィルム等を積層した吸収複合型偏光板として用いることができる)と反射偏光子(輝度向上フィルム)を組み合わせたものである。反射偏光子にも、吸収複合型偏光子と同様に保護フィルム等の保護層の偏光依存性を示さない透光性層を設けることができる。
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一旦反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
前記輝度向上フィルムとして用いられる反射偏光子としては、円偏光を分離機能を有する円偏光型反射偏光子と1/4波長板を組み合わせて用いることができる。円偏光型反射偏光子としては、たとえば、グランジャン構造からなる液晶ポリマー層または液晶状態を固定したポリマー層が好適に用いられる。
グランジャン構造からなる液晶ポリマー層にはコレステリック液晶材料が用いられる。円偏光型反射偏光子を構成するコレステリック液晶には、適宜なものを用いてよく、特に限定はない。例えば、高温でコレステリック液晶性を示す液晶ポリマー、または液晶モノマーと必要に応じてのキラル剤および配向助剤を電子線や紫外線などの電離放射線照射や熱により重合せしめた重合性液晶、またはそれらの混合物などがあげられる。液晶性はリオトロピックでもサーモトロピック性のどちらでもよいが、制御の簡便性およびモノドメインの形成しやすさの観点よりサーモトロピック性の液晶であることが望ましい。
コレステリック液晶層の形成は、従来の配向処理に準じた方法で行うことができる。例えば、トリアセチルセルロースやアモルファスポリオレフィンなどの複屈折位相差が可及的に小さな支持基材上に、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等の膜を形成してレーヨン布等でラビング処理した配向膜、またはSiOの斜方蒸着層、または延伸処理による配向膜等上に、液晶ポリマーを展開してガラス転移温度以上、等方相転移温度未満に加熱し、液晶ポリマー分子がプラナー配向した状態でガラス転移温度未満に冷却してガラス状態とし、当該配向が固定化された固化層を形成する方法などがあげられる。
液晶ポリマーの製膜は、例えば液晶ポリマーの溶媒による溶液をスピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等で薄層展開し、さらに、それを必要に応じ乾燥処理する方法などにより行うことができる。前記の溶媒としては、例えば塩化メチレン、シクロヘキサノン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフランなどを適宜に選択して用いることができる。
また液晶ポリマーの加熱溶融物、好ましくは等方相を呈する状態の加熱溶融物を前記に準じ展開し、必要に応じその溶融温度を維持しつつ更に薄層に展開して固化させる方法などを採用することができる。当該方法は、溶媒を使用しない方法であり、従って作業環境の衛生性等が良好な方法によっても液晶ポリマーを展開させることができる。なお、液晶ポリマーの展開に際しては、薄型化等を目的に必要に応じて配向膜を介したコレステリック液晶層の重畳方式なども採ることができる。
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
上記円偏光型反射偏光子は、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
前記1/4波長板は、使用目的に応じた適宜な位相差板が用いられる。1/4波長板は、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御することができる。位相差板としては、ポリカーボネート、ノルボルネン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミドの如き適宜なポリマーからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーなどの液晶材料からなる配向フィルム、液晶材料の配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。1/4波長板の厚さは、通常0.5〜200μmであることが好ましく、特に1〜100μmであることが好ましい。
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、吸収複合型偏光板と円偏光型反射偏光子の間に配置する位相差板は、1層又は2層以上の位相差層からなるものであってよい。
また反射偏光子としては、直線偏光分離機能を有する直線偏光型反射偏光子を用いることができる。直線偏光型反射偏光子は、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。
直線偏光型反射偏光子としては、グリッド型偏光子、屈折率差を有する2種以上の材料による2層以上の多層薄膜積層体、ビームスプリッターなどに用いられる屈折率の異なる蒸着多層薄膜、複屈折を有する2種以上の材料による2層以上の複屈折層多層薄膜積層体、複屈折を有する2種以上の樹脂を用いた2層以上の樹脂積層体を延伸したもの、直線偏光を直交する軸方向で反射/透過することで分離するものなどがあげられる。
例えばポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートに代表される延伸により位相差を発生する材料やポリメチルメタクリレートに代表されるアクリル系樹脂、JSR社製のアートンに代表されるノルボルネン系樹脂等の位相差発現量の少ない樹脂を交互に多層積層体として一軸延伸して得られるものを用いることができる。
本発明の光学フィルムにおける、上記吸収複合型偏光子(または吸収複合型偏光板)と反射偏光子(輝度向上フィルム)の積層は、重ね置いただけでも良いが、作業性や、光の利用効率の観点より各層を接着剤や粘着剤を用いて空気間隙なく積層積層することが望ましい。また前述の通り、吸収複合型偏光子の偏光透過軸と反射偏光子の偏光に対する最大透過軸とが、平行に配置されていることが好ましい。
接着剤や粘着剤としては特に制限されない。例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
前記接着剤または粘着剤は透明で、可視光領域に吸収を有さず、屈折率は、各層の屈折率と可及的に近いことが表面反射の抑制の観点より望ましい。かかる観点より、例えば、アクリル系粘着剤などが好ましく用いうる。
前記接着剤や粘着剤にはベースポリマーに応じた架橋剤を含有させることができる。また接着剤には、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す接着剤層などであってもよい。
なお本発明において、上記光学素子等、また粘着層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やべンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
接着剤や粘着剤は、通常、ベースポリマーまたはその組成物を溶剤に溶解又は分散させた固形分濃度が10〜50重量%程度の接着剤溶液として用いられる。溶剤としては、トルエンや酢酸エチル等の有機溶剤や水等の接着剤の種類に応じたものを適宜に選択して用いることができる。
粘着層や接着層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層として偏光板や光学フィルムの片面又は両面に設けることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
本発明の吸収複合型偏光子と反射偏光子とを積層した光学フィルムは、予め個別に作成された各偏光子を枚様で貼り合わせる方法、ロール to ロールで連続的に貼り合わせる方法により作成することができる。また、予め、各偏光子の形成材料を積層しておき、同時に偏光機能を発現させる処理(たとえば、延伸処理)を行なうことにより作成することができる。作業性や簡便性、軸の平行関係を制御し易いことから、ロール to ロールで連続的に貼り合わせる方法が好ましい。
本発明の光学フィルムには、粘着層または接着層を設けることもできる。粘着層は、液晶セルへの貼着に用いることができる他、光学層の積層に用いられる。前記光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
粘着層等の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚さ条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鏡アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
上記本発明の光学フィルムは、常法に従って、液晶表示装置に適用される。液晶表示装置には、液晶セルの両側に偏光板が配置され、各種の光学層等が適宜に用いられる。上記光学フィルムは、液晶セルの光源側に適用される。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと光学素子、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明の光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたのものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
前記のほか実用に際して積層される光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板などの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、楕円偏光板または円偏光板に、更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板があげられる。
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また前記保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の保護フィルムは、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
反射板は前記の偏光板の保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
また、偏光板は上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板または反射型偏光板と位相差板を適宜な組合せで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組合せとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することよって形成することができるが、予め積層して楕円偏光板等の光学フィルムとしたのものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差フィルム、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
また良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
輝度向上フィルム(本発明の光学フィルム)と上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、拡散板は偏光を元の自然光状態にもどす。この非偏光状態、すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光状態にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
また偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1 /4 波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4 に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1 /4 波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4 のときには円偏光となる。
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
以下に、この発明の実施例を記載してより具体的に説明する。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味する。
実施例1
(散乱−二色性吸収複合型偏光子)
重合度2400、ケン化度98. 5%のポリビニルアルコール樹脂を溶解した固形分13重量%のポリビニルアルコール水溶液と、メソゲン基の両末端に一つずつアクリロイル基を有する液晶性単量体(ネマチック液晶温度範囲が40〜70℃)とグリセリンとを、ポリビニルアルコール:液晶性単量体:グリセリン=100:5:15(重量比)になるように混合し、液晶温度範囲以上に加熱してホモミキサーにて撹拌して混合溶液を得た。当該混合溶液中に存在している気泡を室温(23℃)で放置することにより脱泡した後に、キャスト法にて塗工、続いて乾燥後に、白濁した厚さ70μmの混合フィルムを得た。この混合フィルムを130℃で10分間熱処理した。
上記混合フィルムを30℃の水浴に浸漬して膨潤させたのち、30℃のヨウ素:ヨウ化カリウム=1:7(重量比)の水溶液(染色浴:濃度0.32重量%)に浸漬しながら約3倍に延伸し、その後、50℃のホウ酸3重量%水溶液(架橋浴)に浸漬しながら総延伸倍率が約6倍になるように延伸した後、さらに50℃のホウ酸4重量%水溶液(架橋浴)に浸漬した。さらに、30℃のヨウ化カリウム5重量%水溶液浴に浸漬して色相調節を行なった。続いて50℃にて4分間乾燥し、本発明の偏光子を得た。
(異方散乱発現の確認と屈折率の測定)
また得られた偏光子を偏光顕微鏡観察したところ、ポリビニルアルコールマトリクス中に無数に分散された液晶性単量体の微小領域が形成されていることが確認できた。この液晶性単量体は延伸方向に配向しており、微小領域の延伸方向(△n2 方向)の平均サイズは5〜10μmであった。
マトリクスと微小領域の屈折率については、各々別々に測定した。測定は20℃で行なった。まず、同一延伸条件で延伸したポリビニルアルコールフィルム単独の屈折率をアッべ屈折計(測定光589nm)で測定したところ、延伸方向(△n1 方向)の屈折率=1.54,△n2 方向の屈折率=1.52であった。また液晶性単量体の屈折率(ne :異常光屈折率およびnO :常光屈折率)を測定した。nO は、垂直配向処理を施した高屈折率ガラス上に液晶性単量体を配向塗設し、アッベ屈折計(測定光589nm)で測定した。一方、水平配向処理した液晶セルに液晶性単量体を注入し、自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製,自動複屈折計KOBRA21ADH)にて位相差(Δn×d)を測定し、また別途、光干渉法によりセルギャップを(d)を測定し、位相差/セルギャップからΔnを算出し、このΔnとnO の和をne とした。ne (△n1 方向の屈折率に相当)=1.64、nO (△n2 方向の屈折率に相当)=1.52,であった。従って、△n1 =1.64−1.54=0.10、△n2 =1.52−1.52=0.00と算出された。以上から所望の異方散乱が発現していることが確認できた。
(偏光板)
上記吸収複合型偏光子の両面にトリアセチルセルロースフィルム(厚み80μm)を、ポリウレタン系接着剤を用いて積層して吸収複合型偏光板を作製した。
(反射偏光子)
直線偏光分離機能を有する反射偏光子として、住友3M社製のD−BEFを用いた。
(光学フィルム)
上記吸収複合型偏光板の偏光透過軸と上記反射偏光子の偏光に対する最大透過軸とが、平行になるようにアクリル系粘着剤を用いて貼り合わせて光学フィルムを得た。
実施例2
(反射偏光子)
円偏光分離機能を有するグランジャン構造からなる液晶ポリマー層と1/4波長板から構成される反射偏光子を用いた。具体的には、日東電工社製のNIPOCS PCF400から、二色性吸収偏光板を外したものを用いた。
(光学フィルム)
実施例1の吸収複合型偏光板の偏光透過軸と上記反射偏光子の偏光に対する最大透過軸とが、平行になるようにアクリル系粘着剤を用いて貼り合わせて光学フィルムを得た。
実施例3
実施例1(光学フィルム)において、吸収複合型偏光板と反射偏光子とを単に積層したこと以外は実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
比較例1
実施例1において、液晶性単量体を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして偏光子を作製した。また当該偏光子を用いて、実施例1と同様にして偏光板を作製した。また当該偏光板を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
比較例2
実施例1において、液晶性単量体を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして偏光子を作製した。また当該偏光子を用いて、実施例1と同様にして偏光板を作製した。また当該偏光板を用いたこと以外は実施例2と同様にして光学フィルムを得た。
比較例3
比較例1(光学フィルム)において、偏光板と反射偏光子とを単に積層したこと以外は比較例1と同様にして光学フィルムを得た。
(光学特性評価)
実施例1及び比較例1で得られた偏光板の光学特性を、積分球付き分光光度計(日立製作所製のU−4100)にて測定した。各直線偏光に対する透過率はグラントムソンプリズム偏光子を通して得られた完全偏光を100%として測定した。なお、透過率は、CIE1931表色系に基づいて算出した、視感度補正したY値で示した。k1 は最大透過率方向の直線偏光の透過率、k2 はその直交方向の直線偏光の透過率を表す。結果を表1に示す。
偏光度Pは、P={(k1 −k2 )/(k1 +k2 )}×100、で算出した。単体透過率Tは、T=(k1 +k2 )/2、で算出した。
さらに実施例1および比較例1で得られた偏光子については偏光吸光スペクトルの測定をグラントムソンプリズムを備えた分光光度計((株)日立製作所製,U4100)により行った。実施例1および比較例1で得られた偏光子の偏光吸光スペクトルを図2に示す。図2(a)の「MD偏光」は、延伸軸と平行な振動面を持つ偏光を入射した場合の偏光吸光スペクトル、図2(b)の「TD偏光」は、延伸軸に垂直な振動面を持つ偏光を入射した場合の偏光吸光スペクトルである。
TD偏光(=偏光子の透過軸)については、実施例1および比較例1の偏光子の吸光度は可視域全域でほぼ等しいのに対し、MD偏光(=偏光子の吸収+散乱軸)については、実施例1の偏光子の吸光度が比較例1の偏光子の吸光度を上回った。特に短波長側において上回った。つまり、実施例1の偏光子の偏光性能が比較例1の偏光子を上回ったことを示す。実施例1と比較例1では延伸、染色などの条件はすべて等しいので、ヨウ素系吸光体の配向度も等しいと考えられる。ゆえに、実施例1の偏光子のMD偏光での吸光度の上昇は、前述の通り、ヨウ素による吸収に異方散乱の効果が加わったことによる効果によって偏光性能が向上したことを示すものである。
へイズ値は、最大透過率方向の直線偏光に対するヘイズ値および吸収方向(その直交方向)の直線偏光に対するへイズ値を測定した。ヘイズ値の測定は、JIS K 7136 (プラスチック−透明材料のへーズの求め方)に従って、へイズメーター(村上色彩研究所製のHM−150)を用いて、市販の偏光板(日東電工社製NPF−SEG1224DU:単体透過率43%,偏光度99.96%)を、サンプルの測定光の入射面側に配置し、市販の偏光板とサンプル(偏光板)の延伸方向を直交させて測定した時のへイズ値を示す。ただし、市販のへイズメーターの光源では直交時の光量が検出器の感度限界以下となってしまうため、別途設けた高光強度のハロゲンランプの光を光ファイバーを用いて入光させ、検出感度内とした後、手動にてシャッター開閉を行い、ヘイズ値を算出した。
上記表1に示す通り、実施例と比較例の偏光板では、略単体透過率、偏光度等の偏光特性は良好である。しかし、実施例1の偏光板では、ヨウ素系吸光体を含有する透光性の水溶性樹脂により形成されるマトリクス中に、微小領域が分散された構造の偏光子を用いているため、通常の偏光子を用いている比較例1の偏光板よりも、直交時の透過率のヘイズ値が高くバラツキによるムラが、散乱によって隠蔽され確認できなくなっていることが分かる。
次いで、実施例および比較例の光学フィルムについて、パネル実装時の輝度向上率、ムラを評価した。結果を表2に示す。
輝度向上率の評価は、暗室において、液晶ディスプレイに用いられるバックライトの上面に、実施例もしくは比較例の光学フィルム(バックライト側が光学フィルムの反射偏光子となるようにして)または市販の偏光板(日東電工社製のNPF−SEG1224DU)を単独で配置し、鉛直上方2°視野での輝度をトプコン社製のBM−7を用いて測定した。輝度向上率は、市販の偏光板を単独で用いた場合に対する、実施例、比較例の光学フィルムを用いた場合の輝度の上昇率で示した。
またムラの評価は、実施例または比較例の光学フィルムを、市販のツイストネマチック液晶パネルのバックライト側の偏光板と取り替えて並べて実装し、暗室にて黒表示してムラを、目視により下記基準にて、そのレベルを確認した。
×:目視にてムラが確認できるレベル。
○:目視にてムラが確認できないレベル。
比較例の光学フィルムを用いた場合にはムラが確認されたが、実施例の光学フィルムを用いた場合にはムラは確認されず視認性が非常に良好であった。
本発明の散乱−二色性吸収複合型偏光子の構造と類似する偏光子として、特開2002−207118号公報には、樹脂マトリクス中に液晶性複屈折材料と吸収二色性材料との混合相を分散させたものが開示されている。その効果は本発明と同種類のものである。しかし、特開2002−207118号公報のように分散相に吸収二色性材料が存在している場合に比較して、本発明のようにマトリクス層に吸収二色性材料が存在する方が、散乱した偏光が吸収層を通過するが光路長が長くなるため、より散乱した光を吸収することができる。ゆえに、本発明のほうが偏光性能の向上の効果がはるかに高い。また製造工程が簡単である。
また特表2000−506990号公報には、連続相または分散相のいずれかに二色性染料が添加された光学体が開示されているが、本発明は吸収複合型偏光子に反射偏光子を積層させる点に特徴があり、特に吸収複合型偏光子の二色性吸収材料としてヨウ素を用いてた場合に好ましい。二色性染料ではなくヨウ素を用いる場合には以下の利点がある。(1)ヨウ素によって発現する吸収二色性は二色性染料よりも高い。したがって、得られる偏光子に偏光特性もヨウ素を用いた方が高くなる。(2)ヨウ素は、連続相(マトリクス相)に添加される前は吸収二色性を示しておらず、マトリクスに分散された後、延伸することによって二色性を示すヨウ素系吸光体が形成される。この点は連続相に添加される前から二色性を有している二色性染料と相違する点である。つまり、ヨウ素はマトリクスへ分散されるときは、ヨウ素のままである。この場合、マトリクスへの拡散性は一般に二色性染料に比べて遥かに良い。結果として、ヨウ素系吸光体は二色性染料よりもフィルムの隅々まで分散される。ゆえに、散乱異方性による光路長増大効果を最大限活用することができ偏光機能が増大する。
また特表2000−506990号公報に記載の発明の背景には、Aphoninによって、液晶液滴をポリマーマトリクス中に配置してなる延伸フィルムの光学特性について記載されていることが述べられている。しかし、Aphoninにらは、二色性染料を用いることなくマトリクス相と分散相(液晶成分)とからなる光学フィルムに言及したものであって、液晶成分は液晶ポリマーまたは液晶モノマーの重合物ではないため、当該フィルム中の液晶成分の複屈折は典型的に温度に依存し敏感である。一方、本発明はヨウ素系吸光体を含有する透光性の水溶性樹脂により形成されるマトリクス中に、微小領域が分散さえた構造のフィルムからなる偏光子を提供するものであり、さらには本発明の液晶性材料は、液晶ポリマーでは液晶温度範囲で配向させた後、室温に冷却して配向が固定され、液晶モノマーでは同様に配向させた後、紫外線硬化等によって配向が固定されるものであり、液晶性材料により形成された微小領域の複屈折は温度によって変化するものではない。