JP4232546B2 - 内燃機関の吸入空気量推定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の吸入空気量推定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
正確な空燃比制御を実現するためには、実際に気筒内へ供給された吸入空気量に対して燃料噴射量を決定しなければならない。しかしながら、実際に気筒内へ供給された吸入空気量は、吸気弁閉弁時の吸入空気量に大きく影響するために、燃料噴射量を決定する現在において、吸気弁閉弁時の将来の吸入空気量を推定することが必要とされる。
【0003】
スロットル弁開度が変化しない機関定常時においては、現在の吸入空気量と吸気弁閉弁時の吸入空気量とは等しく、現在の吸入空気量を吸気弁閉弁時の吸入空気量として良いが、スロットル弁開度が変化している機関過渡時においては、現在の吸入空気量を吸気弁閉弁時の吸入空気量とすることはできない。それにより、吸気弁閉弁時の推定スロットル弁開度に基づき吸気弁閉弁時の吸気管圧力を算出し、この吸気管圧力に基づき吸気弁閉弁時の吸入空気量を算出することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−41095号公報
【特許文献2】
特開2002−234798号公報
【特許文献3】
特開2002−201998号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
吸入空気量は吸気管圧力の一次関数によって近似することができる。しかしながら、この一次関数は、内燃機関毎に異なるものであると共に機関運転状態によっても変化するものであり、前述の従来技術では、一次関数を決定するパラメータを機関回転数及びバルブタイミングに応じてマップ化している。このマップ化には多大な適合工数が必要とされるだけでなく、こうしてパラメータをマップ化しても、内燃機関が経時変化すれば、適当な一次関数が特定されず、正確な吸入空気量を算出することができない。
【0006】
従って、本発明の目的は、将来の吸入空気量を将来の吸気管圧力を変数とした関数により算出する内燃機関の吸入空気量推定装置において、関数を特定するパラメータをマップ化することなく、使用する関数を適切に特定可能とすることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による請求項1に記載の内燃機関の吸入空気量推定装置は、将来の吸入空気量を将来のスロットル弁通過空気量に基づき推定される将来の吸気管圧力を変数とした一次関数により算出する内燃機関の吸入空気量推定装置において、前記一次関数を特定するための係数及び定数は、今回のエアフローメータの出力に基づく今回のスロットル弁通過空気量と今回の圧力センサの出力に基づく今回の吸気管圧力の時間微分値とを使用して算出される今回の吸入空気量と、今回の前記圧力センサの出力に基づく今回の吸気管圧力を前記一次関数に使用して算出される今回の吸入空気量とが等しく、前回の前記エアフローメータの出力に基づく前回のスロットル弁通過空気量と前回の前記圧力センサの出力に基づく前回の吸気管圧力の時間微分値とを使用して算出される前回の吸入空気量と、前回の前記圧力センサの出力に基づく前回の吸気管圧力を前記一次関数に使用して算出される前回の吸入空気量とが等しいことに基づき決定されることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明による吸気量推定装置が取り付けられる内燃機関を示す概略図である。同図において、1は機関本体であり、2は各気筒共通のサージタンクである。3はサージタンク2と各気筒とを連通する吸気枝管であり、4はサージタンク2の上流側の吸気通路である。各吸気枝管3には燃料噴射弁5が配置され、吸気通路4におけるサージタンク2の直上流側にはスロットル弁6が配置されている。スロットル弁6は、アクセルペダルに連動するものではなく、ステップモータ等の駆動装置によって自由に開度設定可能なものである。7は吸気通路4のスロットル弁6より上流側の吸気流量を検出するエアフローメータである。機関本体1において、8は吸気弁であり、9は排気弁であり、10はピストンである。機関吸気系のスロットル弁6より下流側は吸気管と称され、吸気管内の圧力を検出する圧力センサ11が、例えば、サージタンク2に配置されている。
【0009】
内燃機関1における燃焼空燃比を、例えば、理論空燃比等の所望空燃比にするためには、機関過渡時を含めて気筒内へ流入した吸入空気量を正確に把握しなければならない。気筒内へ流入した吸入空気量は、吸気弁閉弁時における吸入空気量に大きく影響するために、燃料噴射量を決定する現在において、吸気弁閉弁時の将来の吸入空気量を推定することが必要となる。本吸入空気量推定装置は、機関吸気系をモデル化して将来(吸気弁閉弁時)の吸入空気量を推定するようにしている。
【0010】
先ず、スロットル弁6をモデル化することにより、吸気がスロットル弁6を通過する際のエネルギ保存則、運動量保存則、及び、状態方程式を使用して、今回のスロットル弁通過空気量mt(i)(g/sec)が、次式(1)によって表される。以下の式を含めて、スロットル弁通過空気量等の変数の添え字(i)は今回(現在)を示し、(i−1)は前回を示している。
【数1】
【0011】
ここで、μ(i)は流量係数であり、A(i)はスロットル弁6の開口面積(m3)である。もちろん、機関吸気系にアイドルスピードコントロールバルブ(ISC弁)が設けられている時には、A(i)には、ISC弁の開口面積が加えられる。流量係数及びスロットル弁の開口面積は、それぞれがスロットル弁開度TA(i)(度)の関数となっており、図2及び3には、それぞれのスロットル弁開度TAに対するマップが図示されている。Rは気体定数であり、Taはスロットル弁上流側の吸気温度(K)であり、Paはスロットル弁上流側の吸気通路圧力(kPa)であり、Pm(i)はスロットル弁下流側の吸気管圧力(kPa)である。また、関数Φ(Pm(i)/Pa)は、比熱比κを使用して次式(2)によって表されるものであり、図4にはPm/Paに対するマップが図示されている。
【数2】
【0012】
次いで、吸気弁をモデル化する。気筒内へ供給される吸入空気量mc(i)(g/sec)は、吸気管圧力Pm(i)に基づきほぼ線形に変化するものであるために、次式(3)に示す一次関数によって表すことができる。
【数3】
【0013】
ここで、Tm(i)はスロットル弁下流側の吸気温度(K)であり、a及びbは一次関数を特定するためのパラメータである。bは気筒内の残留既燃ガス量に相当する値であり、バルブオーバーラップがある場合には、吸気管へ既燃ガスが逆流するために、bの値は無視できないほど増加する。また、バルブオーバーラップがある場合において、吸気管圧力Pmが所定圧力以上である時には、吸気管圧力が高いほど既燃ガスの逆流が顕著に減少するために、所定値以下である時に比較して、aの値は大きくされると共にbの値は小さくされる。
【0014】
このように、吸入空気量mcを算出するために使用される一次関数は、内燃機関毎に異なるものであると共に機関運転状態によっても変化するものである。それにより、内燃機関毎及び機関運転状態毎にパラメータa,bをマップ化しておくことが一般的であるが、このようなマップ化には多大な適合工数が必要とされる。本実施形態では、後述するようにして、このマップ化を省略している。
【0015】
ところで、機関定常時においては、この時のスロットル弁通過空気量mtTAと吸入空気量とが一致するために、式(1)において、吸気管圧力をこの機関定常時の吸気管圧力PmTAとしたスロットル弁通過空気量mtTAは、吸入空気量(a・PmTA−b)と等しく、それにより、式(1)は、次式(4)と書き換えることもできる。
【数4】
【0016】
ここで、機関定常時の吸気管圧力PmTAは、現在を定常時とした時の今回のスロットル弁開度TA(i)、機関回転数NE(i)、及び、バルブオーバーラップの大きさVT(i)に基づいて予めマップ化しておくことができる。
【0017】
次いで、吸気管をモデル化する。吸気管内に存在する吸気の質量保存則、エネルギ保存則、及び、状態方程式を使用して、吸気管圧力Pmとスロットル弁下流側の吸気温度Tmとの比における時間変化率は次式(5)によって表され、また、吸気管圧力Pmの時間変化率は次式(6)によって表される。ここで、Vは吸気管の容積(m3)、すなわち、機関吸気系におけるスロットル弁下流側の容積であり、具体的には、吸気通路4の一部とサージタンク2と吸気枝管3との合計容積である。
【数5】
【0018】
式(5)及び式(6)は離散化され、それぞれ、次式(7)及び(8)が得られ、式(8)によって今回の吸気管圧力Pm(i)が得られれば、式(7)によって今回の吸気管内の吸気温度Tm(i)を得ることができる。式(7)及び(8)において、離散時間Δtは、吸気弁閉弁時(現在からΔt・n時間後)の吸入空気量mc(i+n)を算出するためのフローチャート(図5)における実行間隔とされ、また、離散時間Δtは、このフローチャートにおいて現在から吸気弁閉弁時までに吸入空気量を算出する時間間隔でもあり、例えば8msである。
【数6】
【0019】
ところで、式(6)を変形して次式(9)を得ることができ、すなわち、今回の吸入空気量mc(i)は、今回のスロットル弁通過空気量mt(i)と今回の吸気管圧力Pm(i)の時間微分値(Pm(i)/Δt)とによって表すことができる。もちろん、前回の吸入空気量mc(i-1)は、式(9)において添え字(i)を(i−1)に代えるだけである。
【数7】
【0020】
次に、図5に示すフローチャートを説明する。本フローチャートは、機関始動完了と同時に実行される。先ず、ステップ101において、現在が機関定常時であるか否かが判断される。スロットル弁開度が変化している機関過渡時にはステップ102へ進む。ステップ102においては、エアフローメータ7により検出された今回のスロットル弁通過空気量をmt(i)とし、エアフローメータ7により検出された前回のスロットル弁通過空気量をmt(i-1)とし、また、圧力センサ11により検出された今回の吸気管圧力をPm(i)とし、圧力センサ11により検出された前回の吸気管圧力をPm(i-1)とし、これらの実測値を式(3)及び式(9)へ代入する。
【0021】
式(9)への代入によって、エアフローメータ7の出力及び圧力センサ11の出力に基づく今回の吸入空気量mc(i)と前回の吸入空気量mc(i-1)とを算出することができる。一方、式(3)への代入によって、今回の吸入空気量mc(i)と一次関数を特定するパラメータa,bとの関係式と、前回の吸入空気量mc(i-1)と一次関数を特定するパラメータa,bとの関係式とが得られ、これら関係式に、式(9)により算出された今回の吸入空気量mc(i)と前回の吸入空気量mc(i-1)を代入すれば、二つのパラメータa,bの関係を示す二つの式が得られるために、二つのパラメータa,bを算出することができる。こうして算出される二つのパラメータa,bは、現在の機関運転状態における吸入空気量mc(i)を示す吸気管圧力Pm(i)の一次関数を特定するものである。
【0022】
次いで、ステップ103において、式(8)を使用して吸気管圧力Pm(i+1)が算出される。式(8)において、今回の吸気管圧力Pm(i)と、今回のスロットル弁通過空気量mt(i)と、今回の吸入空気量mc(i)と、今回の吸気管内の吸気温度Tm(i)とを使用して、次回の吸気管圧力Pm(i+1)を算出する。ここで、今回の吸気管内の吸気温度Tm(i)は、式(7)を使用して、前回の吸気管圧力Pm(i-1)と、前回のスロットル弁通過空気量mt(i-1)と、前回の吸入空気量mc(i-1)と、前回の吸気管内の吸気温度Tm(i-1)とを使用して算出することができる。これらの値は、前回の吸気管内の吸気温度Tm(i-1)を除き、ステップ102において既知となっている。前回の吸気管内の吸気温度Tm(i-1)に関しては、初期値を大気温度Taとした本フローチャートの逐次計算により把握されている。
【0023】
ステップ102において式(3)及び式(9)により今回の吸入空気量mc(i )及び前回の吸入空気量mc(i-1)を算出する際に、今回の吸気管内の吸気温度Tm(i)及び前回の吸気管内の吸気温度Tm(i-1)が必要である。これらは大気温度Taによって近似しても良いが、ステップ103と同様に算出しても良い。
【0024】
次いで、ステップ104において、式(7)を使用して次回の吸気管内の吸気温度Tm(i+1)が算出される。次いで、ステップ105において、式(1)又は(4)を使用して次回のスロットル弁通過空気量mt(i+1)が算出される。この式(1)又は(4)を使用するスロットル弁通過空気量mt(i+1)の算出において、次回のスロットル弁開度TAは、スロットル弁の駆動装置(ステップモータ)の応答遅れ等が考慮されて推定される。
【0025】
次いで、ステップ106において、ステップ102において算出されたパラメータa,bを使用して式(3)を特定し、次回の吸入空気量mc(i+1)が算出される。その後は、ステップ103から106が繰り返されて、パラメータa,bを変化させることなく、将来の吸入空気量mcが逐次算出される。最終的には、ステップ107において、式(8)を使用して吸気弁閉弁時の吸気管圧力Pm(i+n)が算出され、ステップ108において、式(7)を使用して吸気弁閉弁時の吸気管内の吸気温度Tm(i+n)が算出され、ステップ109において、式(1)又は(4)を使用して吸気弁閉弁時の推定スロットル弁開度に基づき吸気弁閉弁時のスロットル弁通過空気量mt(i+n)が算出され、ステップ110において、ステップ102において決定されたパラメータa,bに基づき式(3)を特定して吸気弁閉弁時の吸入空気量mc(i+n)が算出される。
【0026】
機関定常時には、エアフローメータ7の出力に基づく前回及び今回のスロットル弁通過空気量mt(i)及びmt(i-1)が等しく、また、圧力センサ11の出力に基づく前回及び今回の吸気管圧力Pm(i)及びPm(i-1)も等しくなって、一次関数を特定するためのパラメータa,bを算出することができない。この機関定常時には、ステップ101の判断が肯定されてステップ111に進み、エアフローメータ7の出力に基づく今回のスロットル弁通過空気量mt(i)と圧力センサ11の出力に基づく今回の吸気管圧力Pm(i)とを使用して式(9)により算出される今回の吸入空気量mc(i)を吸気弁閉弁時の吸入空気量mc(i+n)とする。本フローチャートの初回実施時にもステップ111において吸気弁閉弁時の吸入空気量mc(i+n)が算出される。
【0027】
各時刻のスロットル弁開度TAは、現在の時刻に対するアクセルペダルの踏み込み変化量に基づき、この踏み込み変化量が吸気弁閉弁時まで持続するとして、各時刻のアクセルペダルの踏み込み量を推定し、それぞれの推定踏み込み量に対して、スロットル弁アクチュエータの応答遅れを考慮して決定することが考えられる。この方法は、スロットル弁がアクセルペダルと機械的に連結されている場合にも適用することができる。
【0028】
しかしながら、こうして推定される吸気弁閉弁時までの各時刻のスロットル弁開度TAは、あくまでも予測であり、実際と一致している保証はない。吸気弁閉弁時までの各時刻のスロットル弁開度TAを実際と一致させるために、スロットル弁を遅れ制御するようにしても良い。アクセルペダルの踏み込み量が変化した時に、アクチュエータの応答遅れによって、スロットル弁開度は遅れて変化するが、この遅れ制御は、このスロットル弁の応答遅れを意図的に増大させるものである。
【0029】
例えば、機関過渡時において、燃料噴射量を決定する時における現在のアクセルペダルの踏み込み量に対応するスロットル弁開度が、吸気弁閉弁時に実現されるように、実際の応答遅れ(無駄時間)を考慮してスロットル弁のアクチュエータを制御すれば、現在から吸気弁閉弁時までの各時刻のスロットル弁開度TA(i),TA(i+1),・・・TA(i+n)を正確に把握することができる。さらに具体的に言えば、アクセルペダルの踏み込み量が変化する時には、直ぐにアクチュエータへ作動信号を発するのではなく、燃料噴射量を決定する時から吸気弁閉弁時までの時間から無駄時間を差し引いた時間だけ経過した時にアクチュエータへの作動信号を発するようにするのである。もちろん、現在のアクセルペダルの踏み込み量に対応するスロットル弁開度を、吸気弁閉弁時以降に実現するようにスロットル弁の遅れ制御を実施しても良い。
【0030】
現在から吸気弁閉弁時までの時間は、本フローチャートの実施時刻毎に変化し、また、現在の機関回転数によっても変化するために、本フローチャートの実施に際し、現在から吸気弁閉弁時までの時間を決定し、現在から吸気弁閉弁時までの8ms毎の吸入空気量等の算出回数を変化させることが好ましい。
【0031】
ところで、エアフローメータ7は、図6の断面モデルに示すように、熱線7aの周囲を吸気が通過する際に熱線7aから奪われる熱量がこの吸気量、すなわち、スロットル弁通過空気量に応じて変化するのを利用してスロットル弁通過空気量を検出するものである。こうして、エアフローメータ7の出力に基づきマップ等からスロットル弁通過空気量GA(i)(このマップ値には、算出されるスロットル弁通過空気量mt(i)と区別するために異なる記号を付する)を得ることができる。
【0032】
しかしながら、一般的なエアフローメータにおいて、熱線7aの回りにはガラス層7bが設けられていて、このガラス層7bの熱容量は比較的大きい。それにより、実際のスロットル弁通過空気量の変化に対してエアフローメータ7の出力は直ぐには変化せずに応答遅れが発生する。それにより、エアフローメータ7の出力に基づくマップ値GA(i)をそのままスロットル弁通過空気量とするのではなく、この応答遅れを考慮してマップ値GA(i)から実際のスロットル弁通過空気量mt(i)を算出することが好ましい。
【0033】
現在の熱線7aの温度をThとすると、熱線7aからガラス層7bへ伝達される熱量と、ガラス層7bから吸気へ伝達される熱量とは等しいために、ガラス層Bの温度変化量dTg/dtは次式(10)のように表すことができる。
【数8】
【0034】
ここで、A、B、C、及びDは、熱線7aの断面積、長さ、及びその抵抗率や、ガラス層7bと熱線7aとの間の熱伝達率、ガラス層7bと吸気との間の熱伝達率等に応じて決定される定数である。式(10)において、定常運転時には、ガラス層7bと、熱線7a及び吸気との間の熱の授受が無くなるために、ガラス層7bの温度変化量dTg/dt、すなわち、式(10)の右辺は0になり、また、この時、スロットル弁通過空気量のマップ値GAと算出値mtとは等しくなる。この条件により、GAを熱線7aの温度Th、ガラス層7bの温度Tg、及び、吸気温度Taにより表して、式(10)においてガラス層7bの温度Tgを消去することにより、次式(11)を得ることができる。
【数9】
【0035】
式(11)において、α及びβは、前述の定数A、B、C、及びDによって定まる定数であり、こうして、スロットル弁通過空気mt(i)は、エアフローメータの応答遅れを考慮して、現在のエアフローメータ7の出力に基づくスロットル弁通過空気量のマップ値GA(i)と、前回のエアフローメータ7の出力に基づくスロットル弁通過空気量のマップ値GA(i-1)とに基づいて算出することができる。
【0036】
圧力センサ11に関しては、応答遅れは殆どなく、圧力センサ11の現在の出力値に基づくマップ値又は換算値を現在の吸気管圧力Pm(i)としている。
【0037】
このように、本実施形態では、吸入空気量を算出するための関数がスロットル弁通過空気量及び吸気管圧力の実測値を使用して特定されるようになっている。それにより、内燃機関が可変バルブタイミング機構を有して、バルブオーバーラップ量及び最大バルブリフト量の少なくとも一方を変化させるものである場合には、機関回転数だけでなく、現在のバルブオーバーラップ量及び最大バルブリフト量に対して、適切に吸入空気量を算出するための関数を特定することができる。
【0038】
【発明の効果】
請求項1に記載の内燃機関の吸入空気量推定装置によれば、将来の吸入空気量を将来のスロットル弁通過空気量に基づき推定される将来の吸気管圧力を変数とした一次関数により算出する際に、この一次関数を特定するための係数及び定数は、今回のエアフローメータの出力に基づく今回のスロットル弁通過空気量と今回の圧力センサの出力に基づく今回の吸気管圧力の時間微分値とを使用して算出される今回の吸入空気量と、今回の圧力センサの出力に基づく今回の吸気管圧力をこの一次関数に使用して算出される今回の吸入空気量とが等しく、前回のエアフローメータの出力に基づく前回のスロットル弁通過空気量と前回の圧力センサの出力に基づく前回の吸気管圧力の時間微分値とを使用して算出される前回の吸入空気量と、前回の圧力センサの出力に基づく前回の吸気管圧力をこの一次関数に使用して算出される前回の吸入空気量とが等しいことに基づき決定され、それにより、使用する関数が現在の機関状態に対して適切に特定されるために、多大な適合工数を必要とする係数及び定数のマップ化は不要となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による吸入空気量推定装置が取り付けられる内燃機関の概略図である。
【図2】スロットル弁開度TAと流量係数μとの関係を示すマップである。
【図3】スロットル弁開度TAとスロットル弁の開口面積Aとの関係を示すマップである。
【図4】吸気管圧力Pmと大気圧Paとの比と、関数Φとの関係を示すマップである。
【図5】吸入空気量を算出するためのフローチャートである。
【図6】モデル化したエアフローメータの断面図である。
【符号の説明】
1…機関本体
2…サージタンク
3…吸気枝管
4…吸気通路
6…スロットル弁
7…エアフローメータ
11…圧力センサ
Claims (1)
- 将来の吸入空気量を将来のスロットル弁通過空気量に基づき推定される将来の吸気管圧力を変数とした一次関数により算出する内燃機関の吸入空気量推定装置において、前記一次関数を特定するための係数及び定数は、今回のエアフローメータの出力に基づく今回のスロットル弁通過空気量と今回の圧力センサの出力に基づく今回の吸気管圧力の時間微分値とを使用して算出される今回の吸入空気量と、今回の前記圧力センサの出力に基づく今回の吸気管圧力を前記一次関数に使用して算出される今回の吸入空気量とが等しく、前回の前記エアフローメータの出力に基づく前回のスロットル弁通過空気量と前回の前記圧力センサの出力に基づく前回の吸気管圧力の時間微分値とを使用して算出される前回の吸入空気量と、前回の前記圧力センサの出力に基づく前回の吸気管圧力を前記一次関数に使用して算出される前回の吸入空気量とが等しいことに基づき決定されることを特徴とする内燃機関の吸入空気量推定装置。
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