JP4229723B2 - 重合温度制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粘着剤などに使用されるポリマーを合成する過程の攪拌槽内の重合温度を精度よく制御する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のポリマーを合成する過程では、重合装置における槽内の重合温度を一定に保つために、合成するポリマーに応じて槽の外周に付設した温度調節手段であるジャケットに温度調節用流体を加熱または冷却して循環させながら温度制御を行なっている。
【0003】
具体的には、槽内に投入したモノマー混合物の温度の基準値(予め設定される)と現在値(実測値)の偏差からジャケットに流れる温度調節用流体の目標値を算出する。さらに、この目標値と実測値を利用して温度調節用流体を蒸気により加熱するための蒸気流入用のバルブ、または冷却を行なうための冷却水混入用のバルブのそれぞれの開度を演算により求め、これらバルブの開度を操作しながら温度調節用流体をジャケットに循環させるPID制御方式を実施している。なお、このPID制御では、目標値(SV)と実測値(PV)の偏差(e)を用いて次式(1)により求まる制御出力(MV)を各バルブの開度に変換して行っている。
【0004】
MV=100/PB×(e+1/TI×∫edt+TD×de/dt)…(1)
【0005】
ここで、PBは比例帯、TIは積分時間、TDは微分時間である。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−128303号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の重合温度の制御方法では、次のような問題がある。
【0008】
上記PID制御に用いられるPIDパラメータのPB,TI,TDのそれぞれは、ポリマーの合成工程において終始同じ値を用いており、または、図2に示すように、初期加熱の第1昇温から冷却までのそれぞれの工程において予め設定した値に変更している。
【0009】
したがって、これらPID制御によって最適化を図ったとしても、各工程内での槽内のモノマー混合物のリアルタイムな変化に適時対応することができず、最適性を損ない制御が強すぎる場合にはオーバーシュートし、逆に弱い場合には予め設定した基準値に到達するのに長時間を要したり、到達しきれなかったりするといった問題がある。その結果、所定の分子量分布を有するポリマーを合成できなくなるといった問題がある。
【0010】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、重合装置内において重合温度を精度よく制御する重合温度制御方法を提供することを主たる目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、槽内に投入したモノマー混合物を攪拌しながら重合反応によりポリマーを合成する過程で槽内の温度を制御する重合温度制御方法であって、
前記槽内のモノマー混合物に対する伝熱特性に影響を与える要素の変化を検出し、
前記要素変化の実測値と予め決めた要素の基準値から要素の変化率を求め、
前記要素の変化率を温度変化に対応する比例帯に反映させた補正比例帯を求め、
PID制御の比例帯(P)に前記補正比例帯を代入してコントロールゲインを操作する
ことを特徴とするものである。
【0012】
(作用・効果)槽内のモノマー混合物に対する伝熱特性に影響を与える要素の変化の検出結果に基づいてコントロールゲインを変えることにより、ポリマーを合成する工程で槽内の重合温度を終始安定した状態で制御することができる。つまり、図2に示す第1昇温工程から冷却工程までの工程ごとにおいて、モノマー混合物の重合反応によるリアルタイムな変化に伴って重合温度変化に直接的に影響する要素に基づいて適時にコントロールゲインを変更しながら重合温度の制御を行なうことができるので、予め設定した重合温度の基準値に基づいてポリマーを合成することができる、結果、所定の分子量分布の均一なポリマーを合成することができる。
【0013】
なお、コントロールゲインとしては、例えば、温度調節用流体であるジャケットに循環する温度調節用流体を蒸気により加熱する蒸気流入用バルブ、または冷却を行なう冷却水混入用バルブのそれぞれの開度の操作である。
【0015】
また、コントロールゲインの変更に伝熱特性に影響を与える要素として総括伝熱係数が用いられる。つまり、槽壁から槽内のモノマー混合物への熱伝達効率が考慮されながらコントロールゲインが変更され、加熱・冷却による温度制御が行われる。
なお、当該方法において、コントロールゲインの操作がPID制御の比例帯Pの値によって行われる。つまり、比例帯の値に総括伝熱特性、粘度、および攪拌速度の変化を反映させたPID制御による制御出力が求められる、結果、槽内におけるモノマー混合物のリアルタイムな変化に追従した重合温度制御を精度よく行なうことができる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の重合温度制御方法において、前記伝熱特性に影響を与える要素の変化は、槽内のモノマー混合物の粘度変化であって、この粘度の変化に応じてコントロールゲインを変えることを特徴とするものである。
【0017】
(作用・効果)コントロールゲインの変更に伝熱特性に影響を与える要素としてモノマー混合物の粘度変化が用いられる。ポリマー合成過程におけるモノマー混合物の変化において、槽内投入当初の液状の場合には伝熱特性はよく、重合開始に伴って粘性が発生すると伝熱特性が悪くなるといった特性を有する。したがって、この粘度変化に応じてコントロールゲインを変更することによって、モノマー混合物自体の伝熱特性を直接に参照することになり、重合温度をより高精度に制御することができる。
【0018】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の重合温度制御方法において、前記伝熱特性に影響を与える要素の変化は槽内に投入したモノマー混合物の攪拌速度の変化であって、この攪拌速度の変化に応じてコントロールゲインを変えることを特徴とするものである。
【0019】
(作用・効果)コントロールゲインの変更に伝熱特性に影響を与える要素としてモノマー混合物の攪拌速度が用いられる。つまり、攪拌速度の変化は、槽内におけるモノマー混合物の循環速度の変化に対応させることとなる、結果、モノマー混合物への熱伝達を略均一に行なうことができ、重合温度制御をより高精度に行なうことができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本実施例では、エマルジョン重合による一括重合でポリマーを合成する場合を例に採って重合装置の重合温度を制御する方法について説明する。
【0023】
具体的には、攪拌槽内に投入したモノマー混合物に対する伝熱特性に影響を与える要素の変化を検出し、この検出結果に基づいてコントロールゲインを変更しながら槽内の重合温度を制御してゆく方法である。なお、エマルジョン重合に使用されるモノマー混合物には、例えば、ブチルアクリレート(BA)、アクリル酸(AA)を使用している。
【0024】
以下、図面を参照してこの発明の一実施例を説明する。
図1は本実施例に使用する重合装置である攪拌機およびその周辺構成を示す概略構成図、図2はポリマー合成過程を示した図、図3および図4は重合温度制御系のブロック図である。
【0025】
先ず、本実施例で使用する装置の攪拌機とその周辺構成について、図1を参照して説明する。
【0026】
攪拌機1は、底部が椀状をした攪拌槽2と、その中心部の上方から片持ち支持された回転軸3に攪拌翼4(図1では格子翼)が取り付けられている。この回転軸3は、図示しない回転駆動手段に連接されている。また、攪拌槽2内の重合温度を制御するための温度調節手段としてのジャケット5が攪拌槽2の外周に付設されている。
【0027】
また、攪拌槽2の底部には、攪拌槽2内の温度を測定する温度センサS3が挿通されており、槽内には粘度計D(例えば、振動型粘度計など)が、回転軸には攪拌速度を読み取るための速度計Eが設けられている。
【0028】
ジャケット5には、その内部に温度調節用流体を供給・排出循環させるための供給管R1がジャケット5の上・下部に連通接続されている。この供給管R1のジャケット入口側には攪拌槽2内の温度を上昇させるために、例えば温水をジャケット5に供給するように水温を上昇させる熱交換器6が設けられている。この熱交換器6には、バルブV3を開放することにより蒸気が供給される供給管R3が連通接続されている。また、供給管R1には、攪拌槽2を冷却するために供給管R1を循環する温水または冷却水を排出するためのバルブV1が設けられているとともに、バルブV1を開放して温水などを排出したときに冷却水を供給するための冷却管R2がバルブV2を介して供給管R1に連通接続されている。
【0029】
温度調節用流体をジャケット5に供給する側の供給管R1(図1ではジャケット5の下部近傍)には温度センサS1が、排出する側(図1ではジャケット5の上部近傍)には温度センサS2および流量計F(図1では左側)とがそれぞれ配備されている。
【0030】
また、実施例装置は、攪拌槽2の内部温度を制御するための制御部7が設けられている。この制御部7には、ポリマー合成条件に応じた設定重合温度など種々の条件が操作部8から予め設定入力され、この入力条件および各センサからの測定結果に基づいてポリマー合成工程ごとに槽2内の重合温度をPID制御している。
【0031】
すなわち、制御部7は、槽内の重合温度をPID制御するための種々の処理を実行する演算処理部9を備えている。この演算処理部9には温度センサS1〜S3の実測値(温度調節用流体の温度Tjin、Tjoutおよび攪拌槽2内の温度Tc)および流量計Fから測定される供給管R1を循環している温度調節用流体の流量(Fw)、粘度計Dの実測値、および速度計Eから攪拌速度として読み取られる回転軸の回転速度などが適時に入力される。この入力された各実測値に基づいて適正な制御出力MVが算出され、この求まる制御出力MVを、例えば操作量(コントロールゲイン)としてのバルブV1、V2の開度に変換している。なお、適正な制御出力の算出は、後述する。
【0032】
上述の実施例装置でエマルジョン重合による一括重合でポリマーを合成する場合、その合成が、図2に示すように、モノマー混合物を投入してから設定重合温度まで到達させる第1昇温工程、設定重合温度に到達した時点であって、開始剤を投入してラジカルを発生させる誘導工程、モノマー混合物を重合反応させる反応工程、所定量(例えば97〜98%)のポリマー合成が終了した時点から、設定重合温度よりも槽内温度を高くして重合反応を促進させる第2昇温工程、ポリマー合成を100%に到達させるための熟成工程、およびポリマーを冷却する冷却工程の6つの工程からなっている。そして、これら工程ごとにジャケット5に循環させる温度調節用流体の温度Tj(実線で示す)を調節して攪拌槽2内の温度Tc(点線で示す)を制御している。
【0033】
次に、上述の装置、温度プロファイルおよび図3の重合温度制御のブロック図に基づいてエマルジョン重合によるポリマー合成工程の重合温度を制御する方法について説明する。
【0034】
<第1実施例>
本実施例では、制御部7により槽内に投入したモノマー混合物に対する伝熱特性に影響を与える要素として、総括伝熱係数の変化に応じてコントロールゲインを変化させながら重合温度をPID制御する方法について説明する。
【0035】
先ず、図3に示す内浴PIDコントローラ10は、槽内温度の目標値(TcSV)に基づいて、ジャケット5に供給する冷却水の供給温度の目標値(TjinSV)を求めるのに必要なジャケット温調計の目標値を制御出力(MV)として予め演算により算出する。具体的に制御出力(MV)は、次式(2)に示す比例出力(MVP)、次式(3)に示す積分出力(MVI)、および次式(4)に示す微分出力(MVD)の総和である次式(5)により求まる。
【0036】
【数1】
Figure 0004229723
【0037】
【数2】
Figure 0004229723
【0038】
【数3】
Figure 0004229723
【0039】
MV=MVP+MVI+MVD … (5)
【0040】
なお、TcSVは槽内温度の目標値、Tcは槽内温度の実測値、PBは比例帯、TIは積分時間、TDは微分時間である
【0041】
ここで本実施例の場合、PIDパラメータ再演算器12により、さらに、総括伝熱係数の変化を反映させた補正比例帯(PBu)を求め内浴PIDコントローラ10に入力するようになっている。具体的には、以下の手順により行なわれる。
【0042】
総括伝熱係数測定器11には、総括伝熱係数(U)を求めるのに必要なデータ、温水の供給温度(Tjin)、排出温度(Tout)、供給管R1を循環する温水の流量(Fw)、および槽内温度(Tc)を温度センサS1〜S3および流量計Fのそれぞれで測定された結果が入力される。
【0043】
これら測定結果を利用してジャケット5から槽2内への伝熱量(Qf)が算出される。具体的には、供給温度(Tjin)と排出温度(Tout)との比較により求まる温度偏差、温水の流量(Fw)、および温水の比熱(Cp)の積から求める。つまり、この関係は次式(1)で表すことができる。
【0044】
Qf=(Tjin−Tout)×Fw×Cp … (6)
【0045】
そして、総括伝熱係数(U)を算出するために、次式(7)に示す伝熱量(Qf)を求める演算式を利用して算出する。
【0046】
【数4】
Figure 0004229723
【0047】
すなわち、伝熱量(Qf)は、総括伝熱係数(U)、槽内のモノマー混合物と槽内壁とが接する面積である伝熱面積(A)、および対数平均温度差との積からもとまるものである。したがって、伝熱量(Qf)は式(6)から求まり、伝熱面積(A)および対数平均温度差(供給温度(Tjin)と排出温度(Tout)の経時的な温度偏差)は実測から求まるので、これらを利用して未知数である総括伝熱係数(U)が求められる。
【0048】
この求まる総括伝熱係数(U)は、PIDパラメータ再演算器12に入力される。PIDパラメータ再演算器12には、さらに実験またはポリマー合成開始と同時に重合反応前の第1昇温工程での槽内のモノマー混合物の状態を積分時間などの設定時間間隔を設定するステップ応答法を用いて温調計のPIDパラメータであるPB0、TI0、TD0を求めたときの基準値となる総括伝熱係数(U0)が予め設定入力されている。
【0049】
すなわち、基準値の総括伝熱係数(U0)と実測値の総括伝熱係数(U)から総括伝熱係数の変化率を求め、この変化率をリアルタイムな温度変化に対応する比例帯(PB)に反映させ、補正比例帯(PBu)を求める。この補正比例帯PBは、次式(8)により求まる。
【0050】
PBu=PB0×U/U0 … (8)
なお、このとき、TI=TI0、TD=TD0とする。
【0051】
なお、比例帯(PB)についてのみの操作は、槽2内の目標値と実測値の比較により求まる偏差を操作するだけでよく、操作しやすいといったメリットがある。したがって、本発明では、比例帯(PB)以外の積分時間(TI)および微分時間(TD)を操作してもよい。
【0052】
式(8)で求まる補正比例帯(PBu)が式(3),(4)に代入される。そして求まるPIDパラメータに基づいて、冷却水の供給温度の目標値(TjinSV)が求められる。具体的には、図4において次のようにして行なわれる。槽内の温度の目標値(TcSV)と実測による槽内の温度(Tc)とが内浴PIDコントローラ12に入力され、目標値(TcSV)と槽内温度(Tc)の偏差に基づいて上記式(2)〜(5)を利用して冷却水の供給温度の目標値(TjinSV)が求められる。
【0053】
さらに、この求まった冷却水の供給温度の目標値(TjinSV)に基づき、ジャケットPIDコンローラ13がジャケット温度制御プロセス14でバルブV1〜V3のいずれかの開度を調節することにより冷却水の供給の調節、または蒸気の供給の調節を行なって槽内の温度制御を行なう。また、内浴温度制御プロセス15で槽2内の温度制御を監視し、その監視結果である槽2内の温度を内浴PIDコントローラ12にフィードバックしながらPID制御を行なう。
【0054】
以上のように、重合反応開始の初期段階である第1昇温過程で測定して得た各種データ(Tjin,Tjout,Fw,Tc)を利用し、伝熱係数としての総括伝熱係数(U)を求めるとともに、この求まる総括伝熱係数(U)と実験またはポリマー合成開始の第1昇温工程により予め求めた総括伝熱係数の基準値(U0)から総括伝熱係数の変化率を求め、比例帯PBに反映させた補正比例帯PBuを用いて制御出力MVを求めることにより、重合温度制御を高精度に行なうことができる。つまり、重合温度の変化が直接に影響する槽内のモノマー混合物に対する伝熱特性を参照しながらコントロールゲインとしての各バルブの開度を操作するからである。
【0055】
<第2実施例>
本実施例では、槽内に投入したモノマー混合物に対する伝熱特性に影響を与える要素として、モノマー混合物が重合反応によりポリマーに変化する過程の粘度変化に応じてコントロールゲインを変化させながら重合温度をPID制御する方法について説明する。なお、本実施例では、制御出力の求め方が第1実施例と異なるので、異なる部分について説明し、同一部分については同一符号を付すに留め詳細な説明を省略する。
【0056】
図1において、槽内のモノマー混合物の粘度を粘度計Dで逐次に検出し、その実測値が制御部7に入力され,以下の手順で重合温度が制御される。
【0057】
図4に示すように、実測により求まる粘度(μ)は、PIDパラメータ再演算器12に入力される。PIDパラメータ再演算器12には、さらに実験またはポリマー合成開始と同時に重合反応前の第1昇温工程での槽内のモノマー混合物の状態を積分時間などの設定時間間隔を設定するステップ応答法を用いて、温調計のPIDパラメータであるPB0、TI0、TD0を求めたときの基準値となる粘度(μ0)が予め設定入力されている。
【0058】
つまり、次式(9)に示すように、実測値の粘度(μ)と基準値の粘度(μ0)とから粘度の変化率を求め、この変化率を比例帯(PB)に反映させて補正比例帯(PBμ)を求める。なお、αの値は実験などにより予め求めた値であって、任意に設定変更できる。本実施例の場合、例えば、−1/3を最適値として設定する。
【0059】
PBμ=PB0×(μ/μ0)α … (9)
【0060】
上記式(9)で求まる補正比例帯(PBu)が式(3),(4)に代入される。そして求まるPIDパラメータに基づいて、冷却水の供給温度の目標値(TjinSV)が求められる。具体的には、図4において次のようにして行なわれる。槽内の温度の目標値(TcSV)と実測による槽内の温度(Tc)とが内浴PIDコントローラ12に入力され、目標値(TcSV)と槽内温度(Tc)の偏差に基づいて上記式(2)〜(5)を利用して冷却水の供給温度の目標値(TjinSV)が求められる。
【0061】
この求まった冷却水の供給温度の目標値(TjinSV)に基づき、ジャケットPIDコンローラ13がジャケット温度制御プロセス14で各種バルブV1〜V3のいずれかの開度を調節することにより冷却水の供給の調節または蒸気の供給を行なって温度調節用流体の温度を調節しながら槽内の温度制御を行なう。
【0062】
以上のように、ポリマー合成工程において重合温度変化により、その品質に直接に影響するモノマー混合物における粘度状態を参照するので、重合温度制御をより高精度に行なうことができる。
【0063】
<第3実施例>
本実施例では、槽内に投入したモノマー混合物に対する伝熱特性に影響を与える要素として、攪拌速度として攪拌翼の回転速度の変化に応じてコントロールゲインを変化させながら重合温度をPID制御する方法について説明する。なお、本実施例では、制御出力の求め方が第1実施例および第2実施例と異なるので、異なる部分について説明し、同一部分については同一符号を付すに留め詳細な説明を省略する。
【0064】
図1において、攪拌速度を速度計Eで逐次に検出し、その実測値が制御部7に入力され,以下の手順で重合温度が制御される。
【0065】
図4に示すように、実測により求まる攪拌速度として回転軸の回転速度(N)は、PIDパラメータ再演算器12に入力される。PIDパラメータ再演算器12には、さらに実験またはポリマー合成開始と同時に重合反応前の第1昇温工程での槽内のモノマー混合物の状態を積分時間などの設定時間間隔を設定するステップ応答法を用いて、温調計のPIDパラメータであるPB0、TI0、TD0を求めたときの基準値となる回転速度(N0)が予めプログラム化されて設定入力されている。
【0066】
つまり、次式(10)に示すように、実測により求まる回転速度(N)と基準値である回転速度(N0)から回転速度の変化率(遅延時間)を比例帯(PB)に反映させて補正比例帯(PBn)を求める。なお、βの値は実験などにより予め求めた値であって、任意に設定変更できる。本実施例の場合、例えば2/3を最適値として設定する。
【0067】
PBn=PB0×(N/N0)β … (10)
【0068】
上記式(10)で求まる補正比例帯(PBu)が式(3),(4)に代入される。そして求まるPIDパラメータに基づいて、冷却水の供給温度の目標値(TjinSV)が求められる。具体的には、図4において次のようにして行なわれる。槽内の温度の目標値(TcSV)と実測による槽内の温度(Tc)とが内浴PIDコントローラ12に入力され、目標値(TcSV)と槽内温度(Tc)の偏差に基づいて上記式(2)〜(5)を利用して冷却水の供給温度の目標値(TjinSV)が求められる。
【0069】
この求まった冷却水の供給温度の目標値(TjinSV)に基づき、ジャケットPIDコンローラ13がジャケット温度制御プロセス14で各種バルブV1〜V3のいずれかの開度を調節することにより冷却水の供給の調節または蒸気の供給を行なって温度調節用流体の温度を調節しながら槽内の温度制御を行なう。
【0070】
以上のように、ポリマー合成工程における攪拌速度の変化は、槽内におけるモノマー混合物の循環速度の変化に対応させることになり、モノマー混合物への熱伝達を略均一に行なうことできる。したがって、重合温度制御をより高精度に行なうことができる。
【0071】
本発明は、上記の実施例に限らず、次のように変形実施することもできる。
(1)上記実施例では、エマルジョン重合による一括重合を例に採って重合温度制御方法を説明したが、この形態に限定されるものではなく、滴下重合、二段重合、および均一系の溶液重合などにも適用することができる。
【0072】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ポリマーを合成する過程で槽内に投入したモノマー混合物の伝熱特性に影響を与える要素の検出結果に基づいてコントロールゲインを変えることにより、予め設定した重合温度の基準値に沿った温度でモノマー混合物を重合反応させることができ、槽内の重合温度制御を精度よく実施することができる。その結果、分子量分布の均一なポリマーを常に合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る重合装置の概略全体構成を示した図である。
【図2】実施例装置に係るポリマー合成工程を示した図である。
【図3】第1実施例装置に係る重合温度制御系のブロック図である。
【図4】第2および第3実施例装置に係る重合温度制御系のブロック図である。
【符号の説明】
S1〜S3… 温度センサ
D … 粘度計
E … 速度計
V1、V2… バルブ
R1 … 供給管
R2 … 冷却管
1 … 攪拌機
2 … 攪拌槽
7 … 制御部
9 … 演算処理部
11 … ジャケット目標値設定コントローラ
12 … 内浴PIDコントローラ
13 … PIDパラメータ再演算器
14 … ジャケットPIDコントローラ

Claims (5)

  1. 槽内に投入したモノマー混合物を攪拌しながら重合反応によりポリマーを合成する過程で槽内の温度を制御する重合温度制御方法であって、
    前記槽内のモノマー混合物に対する伝熱特性に影響を与える要素の変化を検出し、
    前記要素変化の実測値と予め決めた要素の基準値から要素の変化率を求め、
    前記要素の変化率を温度変化に対応する比例帯に反映させた補正比例帯を求め、
    PID制御の比例帯(P)に前記補正比例帯を代入してコントロールゲインを操作する
    ことを特徴とする重合温度制御方法。
  2. 請求項1に記載の重合温度制御方法において、
    前記伝熱特性に影響を与える要素の変化は、攪拌槽内に投入したモノマー混合物への熱伝達効率を示す伝熱係数であることを特徴とする重合温度制御方法。
  3. 請求項1に記載の重合温度制御方法において、
    前記伝熱特性に影響を与える要素の変化は、槽内のモノマー混合物の粘度変化であることを特徴とする重合温度制御方法。
  4. 請求項1に記載の重合温度制御方法において、
    前記伝熱特性に影響を与える要素の変化は槽内に投入したモノマー混合物の攪拌速度の変化であることを特徴とする重合温度制御方法。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の重合温度制御方法において、
    前記補正比例帯をリアルタイムに求めることを特徴とする重合温度制御方法。
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